JP2006317290A - 放射性廃棄物の核種分離方法、核種試料作製方法、およびウラニウム分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 放射性廃棄物中に含まれる核種の新規な分離方法および上記放射性廃棄物中の簡便なウラニウム定量分析の方法を提供する。
【解決手段】 ステップS1において、放射性廃棄物の核種が溶存するフッ酸水溶液を調製し作製する。ステップS2において、上記フッ酸水溶液中に溶存する核種をフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂を用いてイオン交換吸着させる。ステップS3において、上記陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着した核種を所定の化学薬液により選択的に溶離し分離する。ステップS4において、例えばサマリウムを添加して上記核種を共沈分離する。そして、ステップS5において、上記共沈物のα線スペクトル測定を行なう。このようにして、例えば上記放射性廃棄物中のウラニウム同位体の同定とその定量分析が簡便に行なえるようになる。
【選択図】 図1
【解決手段】 ステップS1において、放射性廃棄物の核種が溶存するフッ酸水溶液を調製し作製する。ステップS2において、上記フッ酸水溶液中に溶存する核種をフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂を用いてイオン交換吸着させる。ステップS3において、上記陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着した核種を所定の化学薬液により選択的に溶離し分離する。ステップS4において、例えばサマリウムを添加して上記核種を共沈分離する。そして、ステップS5において、上記共沈物のα線スペクトル測定を行なう。このようにして、例えば上記放射性廃棄物中のウラニウム同位体の同定とその定量分析が簡便に行なえるようになる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、放射性廃棄物の核種の分離方法およびその分析方法に係り、特に超ウラン元素を含む放射性廃棄物の核種分離方法、核種試料作製方法、およびウラニウム分析方法に関する。
原子力施設から発生する放射性廃棄物、例えば放射性廃液物中には、核燃料、核分裂生成物、放射化物等、多くの核種が含まれる。この放射性廃棄物は、廃棄体処理を行なって処分する際に、必要な核種についてその放射能濃度を求め、廃棄確認申請を行ない、核種組成を明らかにすることが求められている。
そして、例えば発電所のような原子力施設からの廃棄物においては、六ヶ所埋設センターにおいて所定の核種の受入上限値が定められている。このために、上記発電所廃棄物の受入上限値の定められた核種については、その分析手法は確立されておりルーチンワーク化した分析作業が行なわれている。
そして、例えば発電所のような原子力施設からの廃棄物においては、六ヶ所埋設センターにおいて所定の核種の受入上限値が定められている。このために、上記発電所廃棄物の受入上限値の定められた核種については、その分析手法は確立されておりルーチンワーク化した分析作業が行なわれている。
一方、燃料加工施設や再処理施設等の原子力施設から発生する超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物においては、上記発電所廃棄物に含まれる核種以外にも処分評価上重要と考えられる核種が多々存在する。そして、その中でも特に、放射線被曝の観点から厳しく規制されているウラニウム(U)、超ウラン元素、トリウム(Th)などのα線放出核種を管理することが重要になっている。このため、上記原子力施設からの放射性廃棄物の場合には、ウラニウム(同位体を含む)超ウラン元素の種類およびその量に関して同定し定量分析することが必須になってくる。
これまで、核種の元素を定量化する方法として、溶媒抽出分離および共同沈殿(共沈)分離などによって化学分離した後、α線スペクトル測定によって同定し定量分析する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平06−160540号公報
しかし、燃料加工施設や再処理施設等の原子力施設から発生する超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物中に含まれる主要核種については、それらの核種の分離方法および分析手法は必ずしも確立されていない。
例えば、上記放射性廃棄物には、ウラニウム、超ウラン元素であるアメリシウム(Am)、プルトニウム(Pu)、ネプツニウム(Np)、そしてユーロピウム(Eu)が主要核種として混在する場合が多い。しかし、これ等の元素は、現在、上記放射性廃棄物から分析用に調製される試料溶液において、当該試料溶液中のウラニウムとの分離が難しい状況にある。しかも、上記元素は、例えばα線スペクトル測定によるウラニウムおよびその同位体元素の同定あるいは定量分析の妨害元素になっている。
そこで、上記超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物中に含まれる核種の分離方法およびその分析手法の早期確立が強く望まれるようになってきた。そして、上記放射性廃棄物中のウラニウムの定量分析方法が簡便にできるようになり、それ等の分析作業のルーチンワーク化が可能となることが期待されている。
例えば、上記放射性廃棄物には、ウラニウム、超ウラン元素であるアメリシウム(Am)、プルトニウム(Pu)、ネプツニウム(Np)、そしてユーロピウム(Eu)が主要核種として混在する場合が多い。しかし、これ等の元素は、現在、上記放射性廃棄物から分析用に調製される試料溶液において、当該試料溶液中のウラニウムとの分離が難しい状況にある。しかも、上記元素は、例えばα線スペクトル測定によるウラニウムおよびその同位体元素の同定あるいは定量分析の妨害元素になっている。
そこで、上記超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物中に含まれる核種の分離方法およびその分析手法の早期確立が強く望まれるようになってきた。そして、上記放射性廃棄物中のウラニウムの定量分析方法が簡便にできるようになり、それ等の分析作業のルーチンワーク化が可能となることが期待されている。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物中に含まれる主要核種の新規な分離法および分析手法を提供すると共に、上記放射性廃棄物中の簡便なウラニウム定量分析方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明にかかる放射性廃棄物の核種分離方法は、超ウラン元素を含有する放射性廃棄物中の核種をフッ酸水溶液に溶存させて調製する工程と、前記フッ酸水溶液に溶存させた前記核種をフッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる工程と、前記フッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着した核種を所定の化学薬液により溶離する工程と、を有する構成になっている。
そして、本発明にかかる放射性廃棄物の核種試料作製方法は、超ウラン元素を含有する放射性廃棄物中の核種をフッ酸水溶液に溶存させて調製する工程と、前記フッ酸水溶液に溶存させた前記核種をフッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる工程と、前記フッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着した核種を所定の化学薬液により溶離する工程と、前記核種の溶離した前記化学薬液にサマリウム−147を添加し前記核種を共沈させる工程と、を有し、前記核種と前記サマリウム−147の共沈物から前記核種分析用の試料を作製する、という構成になっている。
そして、本発明にかかる放射性廃棄物のウラニウム分析方法は、超ウラン元素を含有する放射性廃棄物中の核種をフッ酸水溶液に溶存させて調製する工程と、前記フッ酸水溶液に溶存させた前記核種をフッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる工程と、前記フッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着した核種を所定の化学薬液により溶離する工程と、前記核種のうちウラニウムを溶離した塩酸水溶液にサマリウム−147を添加しウラニウムの共沈物を作製する工程と、前記共沈物のα線スペクトル測定によりウラニウムの同定定量分析をする工程と、を有する構成になっている。
本発明により、超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物中の主要核種の分離、ウラニウム同位体の同定とその定量分析が簡便にできるようになる。そして、上記放射性廃棄物中の主要核種の分析手法の確立が可能になる。
本発明の好適な実施形態について、図1ないし図6を参照して以下に説明する。図1は、本発明の実施形態の核種分析方法の一例を説明するための処理工程図となっている。そして、図2ないし図6は、上記分析のための処理操作を説明するための模式図およびその処理結果を示した図表である。
図1に示すように、本発明の実施形態の処理操作における主要手順では、ステップS1の工程において、放射性廃棄物の核種が溶存するフッ酸水溶液を調製する。そして、ステップS2の工程において、上記フッ酸水溶液中に溶存した核種をフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂を用いてイオン交換吸着させる。次に、ステップS3の工程において、上記陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着し共存する核種を所定の化学薬液により選択的に溶離し分離させる。
このようにして、例えばウラニウム(同位体を含む)の同定定量する場合には、ウラニウムを他の核種から分離・抽出し、主にウラニウムが溶解した試料溶液を作製する。次に、ステップS4の工程において、上記試料溶液に例えばサマリウム(Sm)を添加して上記ウラニウムを共沈分離する。そして、ステップS5の工程において、上記ウラニウムを含む共沈物のα線スペクトル測定を行なう。このようにして、上記放射性廃棄物中のウラニウム同位体の同定とその定量分析を行なう。
以下、上記分析処理における主要な操作手順について、それぞれ上記工程に対応した操作別に詳細に説明する。
[核種溶存のフッ酸水溶液調製]
超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物は、例えば、原子力施設の種々の部材の固形物あるいは放射性廃液物のガラス固化体のような固体物、そして放射性廃液のような液体物から成る。そこで、上記放射性廃棄物の固体物は、初めに塩酸、硝酸、フッ酸、硫酸を希釈した酸水溶液あるいはこれ等を混合した酸水溶液により洗浄あるいは溶解させる。そして、上記固体物に付着あるいは含まれる主要核種が溶解した酸水溶液が作製される。このようにした後に、上記放射性廃液を含めた核種が溶解した上記酸水溶液にフッ酸を添加し、上記核種の溶存したフッ酸水溶液を調製する。ここで、上記フッ酸水溶液は、2mol/dm3のフッ酸濃度を含むフッ酸水溶液(試験液)にすると好適である。
このようにすることにより、後述するフッ素イオン型陰イオン交換樹脂における主要核種のイオン交換吸着が生じ易くなる。
[核種溶存のフッ酸水溶液調製]
超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物は、例えば、原子力施設の種々の部材の固形物あるいは放射性廃液物のガラス固化体のような固体物、そして放射性廃液のような液体物から成る。そこで、上記放射性廃棄物の固体物は、初めに塩酸、硝酸、フッ酸、硫酸を希釈した酸水溶液あるいはこれ等を混合した酸水溶液により洗浄あるいは溶解させる。そして、上記固体物に付着あるいは含まれる主要核種が溶解した酸水溶液が作製される。このようにした後に、上記放射性廃液を含めた核種が溶解した上記酸水溶液にフッ酸を添加し、上記核種の溶存したフッ酸水溶液を調製する。ここで、上記フッ酸水溶液は、2mol/dm3のフッ酸濃度を含むフッ酸水溶液(試験液)にすると好適である。
このようにすることにより、後述するフッ素イオン型陰イオン交換樹脂における主要核種のイオン交換吸着が生じ易くなる。
そして、さらに、図2に模式的に示したように、上記フッ酸水溶液に過酸化水素(H2O2)を添加する。ここで、上記添加する過酸化水素量は、フッ酸水溶液20mlに対して0.1ml程度の添加量でよい。また、上記過酸化水素水の添加は、上記フッ酸の添加によりフッ酸水溶液が加温された状態において行なうと好適である。
この過酸化水素の添加により、上記フッ酸水溶液中に溶存する核種のイオン原子価が、フッ酸水溶液中においてそれぞれに均一になる。すなわち、上記フッ酸水溶液中において溶存する核種は、III価、IV価、V価等それぞれの核種により一律のイオン価数を有するようになる。
このようにすることにより、後述する陰イオン交換樹脂への核種のイオン交換吸着が極めて安定化し、フッ酸水溶液中の核種の全て、あるいは、ほとんど全てが上記イオン交換樹脂に吸着するようになる。
この過酸化水素の添加により、上記フッ酸水溶液中に溶存する核種のイオン原子価が、フッ酸水溶液中においてそれぞれに均一になる。すなわち、上記フッ酸水溶液中において溶存する核種は、III価、IV価、V価等それぞれの核種により一律のイオン価数を有するようになる。
このようにすることにより、後述する陰イオン交換樹脂への核種のイオン交換吸着が極めて安定化し、フッ酸水溶液中の核種の全て、あるいは、ほとんど全てが上記イオン交換樹脂に吸着するようになる。
[核種の陰イオン交換樹脂による吸着]
次に、図2に模式的に示すように、上記核種が溶存し過酸化水素を添加したフッ酸水溶液をフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂に通液し、それぞれ一律のイオン価数でイオン化した核種を上記陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる。あるいは、上記フッ酸水溶液にフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂を浸漬して、上記イオン化した核種を上記陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる。上記フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂は、例えばDower 1−X8(商品名)のような塩素型の陰イオン交換樹脂を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し水酸イオン(OH−)型のイオン交換樹脂にした後に、フッ酸の水溶液を通液してコンディショニングして形成する。
次に、図2に模式的に示すように、上記核種が溶存し過酸化水素を添加したフッ酸水溶液をフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂に通液し、それぞれ一律のイオン価数でイオン化した核種を上記陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる。あるいは、上記フッ酸水溶液にフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂を浸漬して、上記イオン化した核種を上記陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる。上記フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂は、例えばDower 1−X8(商品名)のような塩素型の陰イオン交換樹脂を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し水酸イオン(OH−)型のイオン交換樹脂にした後に、フッ酸の水溶液を通液してコンディショニングして形成する。
このようにすることにより、陰イオン交換樹脂には、後述するように上記フッ酸水溶液中に溶存する主要核種のウラニウム、アメリシウム、ユーロピウムのほぼ100%、そして、ネプツニウム、プルトニウムの95%以上が吸着する。
ここで、上記核種をフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる場合、具体的にはその他に種々の方法がある。例えば、上記陰イオン交換樹脂をフッ酸水溶液に浸漬し攪拌するようにしてもよい。
ここで、上記核種をフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる場合、具体的にはその他に種々の方法がある。例えば、上記陰イオン交換樹脂をフッ酸水溶液に浸漬し攪拌するようにしてもよい。
[吸着核種の溶離・分離]
上記主要核種がイオン交換吸着したフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂に対して、選択的に溶離する対象核種に合わせて所定の化学薬液を通液する。あるいは、上記溶離の対象核種に合わせた所定の化学薬液中に、主要核種がイオン交換吸着したフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂を浸漬させる。これについて図3を参照して具体的に説明する。
上記主要核種がイオン交換吸着したフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂に対して、選択的に溶離する対象核種に合わせて所定の化学薬液を通液する。あるいは、上記溶離の対象核種に合わせた所定の化学薬液中に、主要核種がイオン交換吸着したフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂を浸漬させる。これについて図3を参照して具体的に説明する。
図3に示しているように、初めに、好ましくは上記主要核種がイオン交換吸着したフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂に、例えば2mol/dm3のフッ酸濃度の(1)2M−HF水溶液を通液する。この通液によって先ず上記陰イオン交換樹脂を洗浄する。次に、48体積%の濃フッ酸である(2)48%HF水溶液を上記陰イオン交換樹脂に通液する。そして、この(2)48%HF水溶液の通液により、後述するように、上記陰イオン交換樹脂に吸着し共存している主要核種の分離が確実に行なえるようにする。ここで、上記通液に替えて、フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂を(1)2M−HF水溶液あるいは(2)48%HF水溶液に浸漬するようにしてもよい。
このようにした後に、図3に示すように、主要核種がイオン交換吸着し共存している上記陰イオン交換樹脂に、例えば9mol/dm3の塩酸濃度の(3)9M−HCl水溶液を通液する。あるいは、上記陰イオン交換樹脂を(3)9M−HCl水溶液に浸漬する。この塩酸水溶液により、上記陰イオン交換樹脂に吸着しているアメリシウムおよびユーロピウムが選択的に溶離する。
続いて、上記陰イオン交換樹脂に、例えば、9mol/dm3の塩酸濃度の塩酸水溶液と0.1mol/dm3のヨウ化水素濃度のヨウ化水素水溶液との混合水溶液である(4)9M−HCl+0.1M−HI水溶液を通液する。あるいは、上記陰イオン交換樹脂を(4)9M−HCl+0.1M−HI水溶液に浸漬する。この混合水溶液により、上記陰イオン交換樹脂に吸着していたプルトニウムが選択的に溶離するようになる。
このようにした後、さらに、上記陰イオン交換樹脂に、例えば4mol/dm3の塩酸濃度の(5)4M−HCl水溶液を通液する。あるいは、上記陰イオン交換樹脂を(5)4M−HCl水溶液に浸漬する。この塩酸水溶液により、陰イオン交換樹脂に吸着していたネプツニウムが選択的に溶離する。
続いて、上記陰イオン交換樹脂に、例えば、9mol/dm3の塩酸濃度の塩酸水溶液と0.1mol/dm3のヨウ化水素濃度のヨウ化水素水溶液との混合水溶液である(4)9M−HCl+0.1M−HI水溶液を通液する。あるいは、上記陰イオン交換樹脂を(4)9M−HCl+0.1M−HI水溶液に浸漬する。この混合水溶液により、上記陰イオン交換樹脂に吸着していたプルトニウムが選択的に溶離するようになる。
このようにした後、さらに、上記陰イオン交換樹脂に、例えば4mol/dm3の塩酸濃度の(5)4M−HCl水溶液を通液する。あるいは、上記陰イオン交換樹脂を(5)4M−HCl水溶液に浸漬する。この塩酸水溶液により、陰イオン交換樹脂に吸着していたネプツニウムが選択的に溶離する。
上述のようにして、所定の化学薬液により、フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂から選択的な上記核種の溶離を行なった後に、上記フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂からウラニウム(同位体を含む)を溶離し抽出する。上記主要核種を溶離したフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂は、例えば0.1mol/dm3の塩酸濃度の(6)0.1M−HCl水溶液により容易に溶離できるようになる。
このようにして、従来の技術では難しかった、上記主要核種を含む試料溶液中からウラニウムを分離することが極めて容易にできる。そして、ウラニウムの分析における妨害元素が簡便に除去でき、後述するようにウラニウム同位体の同定および定量分析が可能になる。
図4は、フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着した主要核種を上記化学薬液により溶離する場合の結果の一例を示した表である。ここで、主要核種であるウラニウム、ネプツニウム、アメリシウム、ユーロピウムおよびプルトニウムの溶存量が既知であるフッ酸水溶液を標準溶液として作製した。そして、上述したのと同様な工程を経て、フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂への通液あるいは浸漬により、上記主要核種をイオン交換吸着させた。このようにして主要核種がイオン交換吸着し共存する上記陰イオン交換樹脂に対して、上述したのと同じ化学薬液による一連の溶離の操作を行なった。図4はその溶離操作の結果を示している。ここで、溶離した核種の量は、ICP原子吸光分析法により求め、上記標準溶液に溶解させた核種の溶存量に対する割合(%)で示した。また、ウラニウムの量の測定では、α線スペクトル測定の方法も併用した。
図4に示すように、上記(1)2M−HF水溶液による上記陰イオン交換樹脂の洗浄では、溶離するウラニウム、ネプツニウム、アメリシウム、ユーロピウムおよびプルトニウムは数%と僅かである。同様に、上記(2)48%HF水溶液を上記陰イオン交換樹脂に通液し溶離する核種の量も数%である。
これに対して、化学薬液(3)9M−HCl水溶液により、上記イオン交換吸着したアメリシウムのほぼ90%(89.4%)が選択的に溶離する。同様に、上記化学薬液(3)9M−HCl水溶液により、ほぼ90%(88.8%)のユーロピウムが選択的に溶離する。また、化学薬液(4)9M−HCl+0.1M−HI水溶液により、プルトニウムのほぼ90%(88.6%)が選択的に溶離する。
さらに、化学薬液(5)4M−HCl水溶液により、ネプツニウムのほぼ80%程度(82.3%)が選択的に溶離する。そして、化学薬液(6)0.1M−HCl水溶液によって、上記イオン交換吸着したウラニウムのほぼ85%程度(83.2%)が選択的に溶離することが判る。
さらに、化学薬液(5)4M−HCl水溶液により、ネプツニウムのほぼ80%程度(82.3%)が選択的に溶離する。そして、化学薬液(6)0.1M−HCl水溶液によって、上記イオン交換吸着したウラニウムのほぼ85%程度(83.2%)が選択的に溶離することが判る。
ここで、上記(1)〜(6)の化学薬液の全てを通して溶離するそれぞれの核種の全量を総計すると、上記フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂にほぼ全量イオン交換吸着していたウラニウムのほぼ100%(99.2%)が上記化学薬液により溶離することが判る。同様に、アメリシウムおよびユーロピウムのほぼ全量(Am:100%およびEu:99.4%)が上記化学薬液により溶離する。そして、ネプツニウムおよびプルトニウムのほぼ95%(Np:93.9%およびPu:93%)が上記化学薬液により溶離することが判る。
上記イオン交換吸着した主要核種の溶離に使用できる化学薬液は、上記化学薬液に限定されるものではない。その他に塩酸水溶液を含む化学薬液を用いることにより、上記選択的な溶離が行なえる。ここで、核種の選択的な溶離とは、イオン交換樹脂にイオン交換吸着し共存している核種の80%以上が選択的に溶離する場合をいう。
[核種の共沈]
例えば、上記ウラニウム(同位体を含む)が溶離した化学薬液(6)0.1M−HCl水溶液中の上記ウラニウムを共沈させる。ここで、図4に示すように上記化学薬液(6)0.1M−HCl水溶液中に溶離し溶存する他の核種(ネプツニウム、アメリシウム、ユーロピウムおよびプルトニウム)の量は1%以下となる。以下、核種の共沈の操作手順について図5を参照して説明する。
例えば、上記ウラニウム(同位体を含む)が溶離した化学薬液(6)0.1M−HCl水溶液中の上記ウラニウムを共沈させる。ここで、図4に示すように上記化学薬液(6)0.1M−HCl水溶液中に溶離し溶存する他の核種(ネプツニウム、アメリシウム、ユーロピウムおよびプルトニウム)の量は1%以下となる。以下、核種の共沈の操作手順について図5を参照して説明する。
図5に示すように、ステップS6の工程において、例えばα線を放出する核種を含む溶液を準備する。ここで、上記ウラニウム(同位体を含む)の溶離した化学薬液(6)0.1M−HCl水溶液が上記α線を放出する核種を含む溶液になる。
次に、ステップS7の工程において、上記核種を含む溶液にサマリウム−147を所定の量だけ添加する。サマリウム添加は、原子吸光用サマリウム標準溶液(1.0mg/ml)を用いた滴下により行ない、精度の高い既知量になるようにする。ここで、サマリウムの添加量は、50μg〜100μgの範囲が好適である。サマリウムの添加量が50μg未満であると、上記ウラニウムの共沈回収率が低下しそのα線スペクトル測定によるウラニウム同位体の同定が難しくなる。また、サマリウムの添加量が100μgを超えてくると、α線の自己吸収によりウラニウムのα線スペクトルの波形弁別が難しくなる。
次に、ステップS7の工程において、上記核種を含む溶液にサマリウム−147を所定の量だけ添加する。サマリウム添加は、原子吸光用サマリウム標準溶液(1.0mg/ml)を用いた滴下により行ない、精度の高い既知量になるようにする。ここで、サマリウムの添加量は、50μg〜100μgの範囲が好適である。サマリウムの添加量が50μg未満であると、上記ウラニウムの共沈回収率が低下しそのα線スペクトル測定によるウラニウム同位体の同定が難しくなる。また、サマリウムの添加量が100μgを超えてくると、α線の自己吸収によりウラニウムのα線スペクトルの波形弁別が難しくなる。
次に、ステップS8の工程において、2価鉄イオンなどによりα核種であるウラニウムの還元を行なう。続いて、ステップS9の工程において、フッ化水素酸を添加する。そして、ステップS10において、フッ化サマリウムと共にウラニウムを共沈させる。続いて、ステップS11の工程において共沈物を吸引濾過し、ステップS12の工程において、フィルタの乾燥を行なう。ここで、上記共沈物は、例えばポアサイズが0.1μm、47mφのメンブレンフィルタ(ニュークリポアフィルタ)を用い、濾過径25mφで吸引濾過した後に、赤外線ランプにより乾燥されることになる。このようにして、ステップS13の工程において、上記共沈物のα線スペクトル測定を行なうことになる。
上記核種の共沈では、ウラニウム以外にも、上記主要核種とサマリウム−147の共沈物を同様にして作製することができる。
上記核種の共沈では、ウラニウム以外にも、上記主要核種とサマリウム−147の共沈物を同様にして作製することができる。
[α線測定]
図5に示したように、ステップS13の工程において、上記共沈物がα線測定の試料として用いられる。上記α線測定では、例えば表面障壁型半導体検出器によりα線スペクトル測定を行なう。あるいは、荷電粒子検出器を用いた高分解能のα線スペクトル測定を行なう。これ等のα線スペクトル測定においては、共沈物中の例えばウラニウムの量とα線エネルギーピークチャネルにおけるα粒子のカウント数との間には比例関係がある。ここで、共沈物中のサマリウム−147が、α線エネルギーおよびウラニウムの測定量を校正する内部標準線源となる。また、共沈物中のサマリウムは、α線スペクトル測定においてα線のエネルギー損失を低減させる。なお、上記サマリウムから放射するα線ピークエネルギーは2.2MeVとして既知である。
図5に示したように、ステップS13の工程において、上記共沈物がα線測定の試料として用いられる。上記α線測定では、例えば表面障壁型半導体検出器によりα線スペクトル測定を行なう。あるいは、荷電粒子検出器を用いた高分解能のα線スペクトル測定を行なう。これ等のα線スペクトル測定においては、共沈物中の例えばウラニウムの量とα線エネルギーピークチャネルにおけるα粒子のカウント数との間には比例関係がある。ここで、共沈物中のサマリウム−147が、α線エネルギーおよびウラニウムの測定量を校正する内部標準線源となる。また、共沈物中のサマリウムは、α線スペクトル測定においてα線のエネルギー損失を低減させる。なお、上記サマリウムから放射するα線ピークエネルギーは2.2MeVとして既知である。
図6(a)は、表面障壁型半導体検出器を用いて上記共沈物のα線測定をしたときのα線スペクトル分布の波形図である。この図では、α線エネルギーが3.0MeV〜5.5MeVにおけるα線スペクトルを示している。図6(a)に示すように、ウラニウム−238(4.19MeV)、ウラニウム−235、ウラニウム−236、ウラニウム−233、ウラニウム−234およびウラニウム−232のウラニウム同位体からのα線が検出される。ここで、ウラニウム−232は、既知濃度としてサマリウム−147と共に添加し、上記α線エネルギー領域の測定における校正用核種として使用したものである。
図6(b)は、荷電粒子検出器を用いて上記共沈物の高分解能のα線測定をしたときのα線スペクトル分布の波形図である。この図では、α線エネルギーが4.2MeV〜4.7MeVにおけるα線スペクトルを示している。図6(b)に示すように、上記同位体であるウラニウム−235とウラニウム−236の充分な弁別が可能になる。
これは、上記共沈物中のサマリウムが、α線スペクトル測定におけるα線のエネルギー損失を低減させる効果に因っている。このために、α線スペクトロメトリーにおいてその分解能が大きく向上した。例えば、これまでできなかったウラニウム−236からのα線エネルギー4.494MeVのピーク位置を分離・計測できるようになった。このように、ウラニウムの同位体の定量分析が極めて容易にできることが明らかになった。
上記α線測定では、ウラニウム以外にも、上記主要核種(同位体を含む)のうちα線放出核種であれば同様にして同定定量分析することができる。
上記α線測定では、ウラニウム以外にも、上記主要核種(同位体を含む)のうちα線放出核種であれば同様にして同定定量分析することができる。
上記実施の形態においては、超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物中に含まれるウラニウムを含む主要核種を酸水溶液に溶解させ、そのほぼ全てをフッ素イオン型の陰イオン交換樹脂に吸着させる。ここで、ウラニウムのような核種はほぼ全てイオン交換吸着される。そして、上記陰イオン交換樹脂に吸着した上記主要核種を、所定の化学薬液により選択的に溶離し分離する。
また、上記ウラニウムのような核種を定量的に分離して、α線スペクトル測定を用いて、上記放射性廃棄物に含まれていたウラニウムの同定定量分析をする。このように、図1に示した一連の分析方法における操作手順を採ることにより、超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物中に含まれるウラニウムの分析における妨害元素となる主要核種が簡便に分離され除去できる。そして、上記放射性廃棄物中に含まれるウラニウム同位体の精確な同定定量が極めて簡便にできるようになる。
ここで、超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物中のウラニウム同位体の定量化においては、図4で説明した化学薬液による溶離の定量的な分離を勘案する。すなわち、上記放射性廃棄物中のウラニウム同位体の量は、基本的には、上記α線スペクトル測定により定量化したウラニウム量に対して、上記溶離の割合を掛け合わせることにより求められる。
ここで、超ウラン廃棄物や放射性同位体廃棄物等の放射性廃棄物中のウラニウム同位体の定量化においては、図4で説明した化学薬液による溶離の定量的な分離を勘案する。すなわち、上記放射性廃棄物中のウラニウム同位体の量は、基本的には、上記α線スペクトル測定により定量化したウラニウム量に対して、上記溶離の割合を掛け合わせることにより求められる。
図1に示した一連の分析方法は好適な一例について説明している。ここで、上記分析方法についてはその他に種々の変形例がある。その第1の変形例は、主要核種を選択的に溶離するときに、上記操作項目(吸着核種の選択的溶離)において説明したもの以外の化学薬液を使用する場合である。そのような化学薬液であっても、その分離効率は少し低下するものの、塩酸水溶液を含む化学薬液に調製することにより選択的に溶離することが可能である。
その第2の変形例は、上記フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させた主要核種を上記所定の化学薬液により選択的に溶離し、その溶離した上記主要核種のそれぞれを定量分析する例である。例えば、希釈した塩酸水溶液によりウラニウムを選択的に溶離し、上記塩酸水溶液中に溶存するウラニウムを同定定量する。あるいは、ウラニウム以外の上記主要核種であっても、上記化学薬液により選択的に溶離した核種(その同位体を含む)を同定定量する。
その第3の変形例では、上記(核種の共沈)の項目において説明したサマリウム以外に例えばランタン(La)を使用する。その他、放射性核種およびその同位体の同定定量の分析では、α線スペクトル測定以外に核種からのβ線、γ線を測定する方法を使用することもできる。
以上、この発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
例えば、上記放射性廃棄物に含まれる核種が、上記アメリシウム、プルトニウム、ネプツニウム、ユーロピウム以外であって、ウラニウムと混在して存在する場合においても、本発明は同様に適用できる。また、フッ素イオン型の陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させた核種の溶離においては、化学薬液として塩酸水溶液以外の酸水溶液、例えば、硝酸水溶液あるいは硫酸水溶液を用いることができる。
Claims (10)
- 超ウラン元素を含有する放射性廃棄物中の核種をフッ酸水溶液に溶存させて調製する工程と、
前記フッ酸水溶液に溶存させた前記核種をフッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる工程と、
前記フッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着した核種を所定の化学薬液により溶離する工程と、
を有することを特徴とする放射性廃棄物の核種分離方法。 - 前記核種を溶存させたフッ酸水溶液に過酸化水素を添加した後に、前記イオン交換吸着させることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物の核種分離方法。
- 前記核種がウラニウムと共に、アメリシウム、プルトニウム、ネプツニウム、ユーロピウムからなる群より選択された少なくとも一種の核種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の放射性廃棄物の核種分離方法。
- 前記化学薬液は、塩酸水溶液あるいは塩酸とヨウ化水素の混合水溶液であることを特徴とする請求項3に記載の放射性廃棄物の核種分離方法。
- 前記所定の化学薬液による前記核種の溶離は、前記フッ素イオン型陰イオン交換樹脂を塩酸水溶液によるアメリシウムとユーロピウムの溶離の工程と、塩酸とヨウ化水素の混合水溶液によるプルトニウムの溶離の工程と、塩酸水溶液によるネプツニウムの溶離の工程と、塩酸水溶液によるウラニウムの溶離の工程と、を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の放射性廃棄物の核種分離方法。
- 超ウラン元素を含有する放射性廃棄物中の核種をフッ酸水溶液に溶存させて調製する工程と、
前記フッ酸水溶液に溶存させた前記核種をフッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる工程と、
前記フッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着した核種を所定の化学薬液により溶離する工程と、
前記核種の溶離した前記化学薬液にサマリウム−147を添加して前記核種を共沈させる工程と、を有し、
前記核種と前記サマリウム−147の共沈物から前記核種分析用の試料を作製することを特徴とする放射性廃棄物の核種試料作製方法。 - 前記サマリウム−147の添加量を50μgないし100μgの範囲にすることを特徴とする請求項6に記載の放射性廃棄物の核種試料作製方法。
- 超ウラン元素を含有する放射性廃棄物中の核種をフッ酸水溶液に溶存させて調製する工程と、
前記フッ酸水溶液に溶存させた前記核種をフッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着させる工程と、
前記フッ素イオン型陰イオン交換樹脂にイオン交換吸着した核種を所定の化学薬液により溶離する工程と、
前記核種のうちウラニウムを溶離した塩酸水溶液にサマリウム−147を添加しウラニウムの共沈物を作製する工程と、
前記共沈物のα線スペクトル測定によりウラニウムの同定定量分析をする工程と、
を有することを特徴とする放射性廃棄物のウラニウム分析方法。 - 前記所定の化学薬液による前記核種の溶離は、前記フッ素イオン型陰イオン交換樹脂を塩酸水溶液によるアメリシウムとユーロピウムの溶離の工程と、塩酸とヨウ化水素の混合水溶液によるプルトニウムの溶離の工程と、塩酸水溶液によるネプツニウムの溶離の工程と、塩酸水溶液によるウラニウムの溶離の工程と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の放射性廃棄物のウラニウム分析方法。
- 前記サマリウム−147の添加量を50μgないし100μgの範囲にすることを特徴とする請求項8または9に記載の放射性廃棄物のウラニウム分析方法。
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