JP2006306746A - ピリジン−3−イルカルバメート誘導体 - Google Patents

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Abstract

【課題】頻尿・尿失禁治療用及び/又は過活動膀胱治療用医薬組成物を提供する。
【解決手段】脂肪酸アミド加水分解酵素FAAHの活性を阻害する物質をスクリーニングする方法を構築し、この方法によりスクリーニングされた物質が頻尿・尿失禁及び/又は過活動膀胱の治療に有用であることを見いだした。このスクリーニング方法により副作用や常用性の懸念のない頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングすることができ、頻尿・尿失禁治療用及び/又は過活動膀胱治療用医薬組成物を提供することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、医薬特に、脂肪酸アミド加水分解酵素(以下FAAH)阻害活性を有する頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤であるピリジン−3−イル カルバメート誘導体又はその製薬学的に許容される塩に関する。
脂肪酸アミド加水分解酵素(Fatty acid amide hydrolase;FAAH)は、エンドカンナビノイドを加水分解することで、その活性を消失させることが知られている(非特許文献1-4参照)。エンドカンナビノイド(endocannabinoid)とは、カンナビノイド受容体に作用して生理作用を発揮する生体内物質の総称である。代表的なエンドカンナビノイドとしてアナンダミド、パルミトイルエタノールアミド、オレアミド、2-アラキドン酸グリセロールがある。また、大麻(マリファナ)の活性成分であると考えられているΔ9-テトラヒドロカンナビノールは、カンナビノイド受容体を活性化することが知られている(非特許文献5参照)。
哺乳動物にはこれまで2種類のカンナビノイド受容体CB1、CB2が知られている。CB1は中枢及び末梢神経系に発現しており、その活性化により精神作用及び鎮痛作用等が惹起される。CB2は免疫系組織に発現し、その活性化により抗炎症作用及び鎮痛(炎症性)作用等が惹起される。
FAAH阻害活性を有する化合物としては、鎮痛剤、抗不安薬、抗てんかん薬、抗鬱剤、制吐剤、循環器疾患治療剤又は緑内障治療剤になりうる化合物が知られている[芳香環若しくはフェニル置換脂肪族炭化水素カルバミン酸 C1-4アルキル若しくは多環式芳香環エステル誘導体(特許文献1)及びシクロヘキシルカルバミン酸 フェニルエステル(特許文献2)]。また、FAAH阻害活性を有する化合物であるジオキサン−2−アルキルカルバメート誘導体が多数の羅列した疾患の一態様として尿失禁の治療薬が記載されている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3には頻尿・尿失禁治療薬及び/又は過活動膀胱治療効果を裏付ける実験成績はなく示唆もない。
また、ピリジン−3−イル カルバメート誘導体としてベンジルを有する化合物が記載されている(特許文献4)。しかしながら、当該化合物は農園芸用殺菌剤等に有用なものである。
国際公開パンフレットWO2003/065989号 国際公開パンフレットWO2004/033422号 国際公開パンフレットWO2004/020430号 特公昭50-16411号 「プロスタグランディンズ・ロイコトリエンズ・アンド・エッセンシャル・ファティ・アシッズ(Prostaglandins Leukotrienes and Essential Fatty Acids)」、(英国)、2002年、第66巻、p.143-160 「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)」、(英国)、2004年、第141巻、p.253-262 「ネイチャー(Nature)」、(英国)、1996年、第384巻、p.83-87 「バイオケミカル・ファーマコロジー(Biochemical Pharmacology)」、(米国)、2001年、第62巻、p.517-526 「カレント・メディシナル・ケミストリー(Current Medicinal Chemistry)」、(米国)、1999年、第6巻、p.635-664
本発明の課題は、大麻様の副作用や常用性の懸念がないか又は軽減された頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤を提供することにある。
本発明者らは、FAAH阻害活性を有する化合物を創製すべく鋭意検討を行った結果、従来とは基本骨格が異なるピリジン−3−イル カルバメート誘導体を見出した。
更に本発明者らは、シクロフォスファミド(Cyclophosphamide)あるいは脳虚血により誘発した頻尿ラットに対し、ピリジン−3−イル カルバメート誘導体を投与すると、有効膀胱容量が増加することを明らかにし、頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤として有用であることを見出した。
すなわち、本発明は、
[1] 一般式(I)に示されるピリジン−3−イル カルバメート誘導体及びその製薬学的に許容される塩
Figure 2006306746
[式中の記号は、以下の意味を示す。
1:(1)ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいcALK(cALK:シクロアルキル)、
(2)ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル、
(3)式R6−ALK1
(R6:ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいcALK、及び
ALK1:低級アルキレン)、
(4)式R7−ALK2
(R7:ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されたAr1、及び
Ar1:アリール、又はALK2:C4−7アルキレン)、
(5)式R8−O−ALK1
(R8:(i)H,(ii)ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいAr1、又は(iii) ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいcALK)、
(6)式R8−ALK3−O−ALK1
(ALK3:低級アルキレン)、
(7)式R8−ALK4−CONH−ALK1
(ALK4:低級アルキレン、又は低級アルケニレン)、
2,R3,R4及びR5:同一又は異なって、(1)H,(2)ハロゲン,(3)エステル化されていてもよいカルボキシ,(4)基R910N[CO]n−で置換されていてもよいAr2(R9及びR10:同一又は異なって、(i)H,又は(ii)低級アルキル、Ar2:アリール及びn:0又は1)、又は(5)低級アルキル];
[2]上記[1]記載の一般式(I)で示されるピリジン−3−イル カルバメート誘導体及びその製薬学的に許容される塩を有効成分とする医薬組成物;
[3]頻尿・尿失禁治療用及び/又は過活動膀胱治療用医薬組成物である上記[2]記載の医薬組成物;
[4] (1)(a) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列、(b) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列、(c) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列との相同性が70%以上であるアミノ酸配列、或いは(d) 配列番号1、配列番号3、配列番号5、若しくは配列番号7で表されるポリヌクレオチド又はその相補配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列における全部若しくは少なくとも膜貫通領域を含むアミノ末端領域を除いたアミノ酸配列を含み、しかも基質を加水分解することができるポリペプチドに試験物質を接触させる工程、(2)前記ポリペプチドの活性の変化を分析する工程、並びに(3)前記ポリペプチドの活性を阻害する物質を選択する工程を含む、頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングする方法 (ここでFAAH若しくは機能的FAAHに接触させる「基質」とは、FAAH若しくは機能的FAAHにより加水分解されるエンドカンナビノイドであれば、いずれのものも用いることが可能である。具体的にはアナンダミド、パルミトイルエタノールアミド、2-アラキドン酸グリセロール、オレアミドなどを基質として用いることができる。また、これらの基質を3Hや14Cなどで標識したもの、若しくは標識したものと未標識のものの混合物を用いることができる。以下同様);
[5] (1)(a) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列、(b) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列、(c) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列との相同性が70%以上であるアミノ酸配列、或いは(d) 配列番号1、配列番号3、配列番号5、若しくは配列番号7で表されるポリヌクレオチド又はその相補配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列における全部若しくは少なくとも膜貫通領域を含むアミノ末端領域を除いたアミノ酸配列を含み、しかも基質を加水分解することができるポリペプチドと、試験物質とを、前記ポリペプチドの基質存在下で接触させる工程、(2)該基質から加水分解産物への変換量を測定する工程、並びに(3)該基質の加水分解を阻害する物質を選択する工程を含む、頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングする方法;
[6] (1)(a) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列、(b) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列、(c) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列との相同性が70%以上であるアミノ酸配列、或いは(d) 配列番号1、配列番号3、配列番号5、若しくは配列番号7で表されるポリヌクレオチド又はその相補配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列における全部若しくは少なくとも膜貫通領域を含むアミノ末端領域を除いたアミノ酸配列を含み、しかも基質を加水分解することができるポリペプチドを発現している細胞若しくは組織、又は該細胞若しくは該組織の溶解液若しくは破砕液と、試験物質とを、前記ポリペプチドの基質存在下で接触させる工程、(2)該基質から加水分解産物への変換量を測定する工程、並びに(3)該基質の加水分解を阻害する物質を選択する工程を含む、頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングする方法;
[7] (1)脂肪酸アミド加水分解酵素に試験物質を接触させる工程、(2)前記酵素の活性の変化を分析する工程、及び(3)前記酵素の活性を阻害する物質を選択する工程を含む、頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングする方法;
[8] 脂肪酸アミド加水分解酵素の活性を阻害する物質を含有する、頻尿・尿失禁治療用医薬組成物及び/又は過活動膀胱治療用医薬組成物;
[9] 上記[4]から[8]に記載の方法によって得られる物質を含有する、頻尿・尿失禁治療用医薬組成物及び/又は過活動膀胱治療用医薬組成物;
に関する。
実施例35から実施例38の薬理試験において、本発明の代表的な化合物は優れたFAAH 阻害作用を有することを見出した。また代表的な表1及び表2に記載の実施例化合物は特許文献2には開示されていない頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療薬として有用であることが確認された。 また、本発明化合物は優れたFAAH 阻害作用を有するため、特許文献2には開示されていない間質性膀胱炎、慢性前立腺炎、慢性骨盤痛症候群、疼痛性膀胱症候群等の下部尿路疾患治療剤として効果的である。加えて鎮痛剤、抗不安薬、抗てんかん薬、抗欝剤、制吐剤、循環器疾患治療剤又は緑内障治療剤としても有用である。さらに、大麻様の副作用や常用性の懸念のないか軽減される化合物である。
また本発明スクリーニング方法により、過活動膀胱治療剤をFAAH の活性の制御に基づいてスクリーニングすることができる。
更に本発明スクリーニング方法により、大麻様の副作用や常用性の懸念のないか軽減される、頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動騰脆治療剤をFAAH の活性の制御に基づいてスクリーニングすることができる。上記スクリーニング方法により得られた物質やFAAH の活性を阻害する物質は有用な頻尿,尿失禁治療用及び/又は過活動膀胱治療用医薬組成物となる。
以下に本発明を詳細に説明する。
以下、本発明化合物につき詳細に説明する。
[定義等]
本明細書の構造式の定義において、特に断わらない限り「低級」なる用語は炭素数が1〜6個の直鎖又は分岐状の炭素鎖を意味する。
「低級アルキル」とは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等であり、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチルである。
「低級アルケニル」とは、少なくとも一の二重結合を有する脂肪族炭化水素基を意味し、例えば、ビニル、プロペニル、アリル、イソプロペニル、1,3−ブタジエニル、ヘキセニル等である。
「シクロアルキル」とは、炭素数が3〜14個の1〜3環系脂肪族飽和炭化水素環基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロヘプチル、ビシクロオクチル、トリシクロドデカニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル等が挙げられ、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルである。
「アリール」とは、炭素数が6〜14個の1〜3環系芳香族炭化水素環基を意味し、さらに、フェニルにシクロアルキルが縮合していてもよい。例えば、フェニル、インデニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、インダニル、テトラヒドロナフチル等が挙げられ、好ましくは、フェニル、ナフチルである。
「低級アルキレン」、及び「低級アルケニレン」とは、上記低級アルキル、低級アルケニルの任意の水素原子を1個除いた2価基である。
「エステル化されたカルボキシル」とは低級アルキル−O−C(=O)−、又はアリール−低級アルキル−O−C(=O)−、である。
「ハロゲン」としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードが挙げられ、好ましくは、フルオロ、クロロである。
本発明化合物(I)は、置換基の種類によっては光学異性体(光学活性体、ジアステレオマー等)又は幾何異性体が存在する。従って本発明化合物(I)には、これらの光学異性体又は幾何異性体の混合物や単離されたものも含まれる。
また、本発明化合物(I)は酸付加塩又は塩基との塩を形成することができる。例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基や、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩を挙げることができる。さらに、本発明化合物(I)又はその製薬学的に許容されるその塩は水和物、エタノール等の溶媒和物や結晶多形を形成することができる。
さらに、本発明化合物(I)には、生体内において代謝されて本発明化合物(I)又はその製薬学的に許容される塩に変換される化合物、いわゆるプロドラッグもすべて含まれる。本発明化合物(I)のプロドラッグを形成する基としては、Prog. Med. 5:2157-2161(1985)に記載されている基や、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163〜198頁に記載されている基が挙げられる。具体的には、加水分解、加溶媒分解により、又は生理学的条件の下で本発明における1級アミン又は2級アミン、HO−、HO−CO−等に変換できる基であり、HO−のプロドラッグとしては、例えば、置換されてもよい低級アルキル−COO−、置換されてもよいアリール−CO−O−、RO−CO−置換されてもよい低級アルキレン−CO−O−(RはH−又は低級アルキルを示す。以下同様)、RO−CO−置換されてもよい低級アルケニレン−CO−O−、RO−CO−低級アルキレン−O−低級アルキレン−CO−O−、RO−CO−CO−O−、ROS(=O)2−置換されてもよい低級アルケニレン−CO−O−、フタリジル−O−、5−メチル−1,3−ジオキソレン−2−オン−4−イル−メチルオキシ等が挙げられる。
本明細書における「頻尿」とは、排尿回数が正常範囲を越えて増加した状態のことをいう。頻尿を呈する疾患には、間質性膀胱炎および慢性前立腺炎などが含まれる。間質性膀胱炎とは、麻酔下水圧拡張を行い点状出血を確認することで診断できる疾患であり、慢性前立腺炎とは、National Institutes of Health (NIH) による前立腺炎の分類でカテゴリーIIIに分類される疾患を指す。また前記「尿失禁」とは、社会的、衛生的に問題となる不随意の尿漏出状態のことをいう。
本明細書における「過活動膀胱」とは、頻尿及び尿意切迫感といった自覚症状によって診断される症候群のことをいう(「ニューロウロロジー・アンド・ウロダイナミクス(Neurourology and Urodynamics)」、(米国)、2002年、第21巻、p.167−178)。その発症原因として神経障害(例えば神経因性膀胱、脳梗塞に起因するもの)、下部尿路閉塞(例えば前立腺肥大)、加齢などがあり、これらに共通する発症メカニズムとして、カプサイシン感受性求心性神経の活動亢進が考えられている。
頻尿・尿失禁、尿意切迫感などの症状を改善することにより、過活動膀胱を治療することができる。それは、例えば抗コリン薬である塩酸オキシブチニン(日本標準商品分類番号87259;アベンティス ファーマ株式会社)が過活動膀胱の患者に1日3回、一回2〜3 mg投与し頻尿、尿失禁、尿意切迫感などの症状を改善することで過活動膀胱を治療できることからも明らかである。
頻尿・尿失禁治療効果及び/又は過活動膀胱治療効果があることの確認は、当業者に公知の方法、あるいはそれを改良した方法を用いることにより実施することができる。例えば、ラット、モルモット、イヌ等にシクロフォスファミド(CPA)を50〜200 mg投与することにより誘発する病態モデルが当分野においては非常によく用いられる(Ozawaら、The Journal of Urology、第162巻、第2211−2216頁、1999年;Boucherら、The Journal of Urology、第164巻、第203−208頁、2000年)。このモデルは出血性膀胱炎に伴う病態モデルであるが、この頻尿発症機序にカプサイシン感受性求心性神経が関与することから、本モデルは各種過活動膀胱に即した病態モデルであると考えられる(Carlo Alberto Maggiら、Journal of the Autonomic Nervous System、第38巻、第201−208頁、1992年)。頻尿状態は有効膀胱容量の減少により確認することができる。この病態モデル動物に対し、有効用量の医薬組成物を経口、腹腔内又は静脈内投与で、単回又は反復投与することにより、有効膀胱容量の増加をもって頻尿・尿失禁治療効果及び/又は過活動膀胱治療効果を確認することができる。また、より直接的に病態を反映した脳虚血誘発頻尿モデル(日本医学館、2000年刊、神経泌尿器科学研究法、脳梗塞ラットモデルを用いた研究法、149〜157頁)を用いることで、神経因性膀胱による頻尿・尿失禁及び/又は過活動膀胱における治療効果を確認することができる。
[製造法]
本発明化合物及びその製薬学的に許容される塩は,その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し,種々の公知の合成法を適用して製造することができる。
その際,官能基の種類によっては,当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基,水酸基又はカルボキシル基等であり,それらの保護基としては例えばグリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著,「Protective Groups in Organic Synthesis(第2版)」に記載の保護基を挙げることができ,これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。
このような方法では,当該保護基を導入して反応を行った後,必要に応じて保護基を除去することにより,所望の化合物を得ることができる。また,本発明有効成分が公知化合物である場合は市販若しくは種々の公知文献に基づき容易に入手可能である。
以下,本発明化合物又はその中間体の代表的な製造法を説明する。
(以下の文章中の記号は,次の通りである。
DMF: N,N−ジメチルホルムアミド;DMSO:ジメチルスルホキシド;THF:テトラヒドロフラン;TFA:トリフルオロ酢酸;Tol:トルエン;EtOAc:酢酸エチル;DCE:1,2−ジクロロエタン;TEA:トリエチルアミン;Compound:化合物)
以下に本発明化合物の代表的な製造法について説明するが,これらの製造法に限定されるものではない。
また,本発明化合物中に同様な置換基が当該製造法の反応式中以外の位置に存在していれば置換基修飾反応により,容易に本発明に包含される化合物が製造される。
第一製造法(カルバメート化反応)
Figure 2006306746
(式中、Xは、本反応において有利な脱離基を意味する。以下同様。)
本反応は、一般式(II)で示されるケトン誘導体とその反応対応量の一般式(III)で示されるヒドロキシピリジン誘導体とを反応に不活性な溶媒中、冷却下又は室温下乃至加温下攪拌してエステル化することにより行われる。脱離基Xとしては、例えば、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、フェノキシ基、イミダゾリル基等を包含する。不活性溶媒としては、例えばDMF、ジメチルアセトアミド、THF、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ベンゼン、Tol又はキシレン等やこれらの混合溶媒が挙げられる。本反応を促進させるために、塩基(例えばナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等)を添加するのが好ましい。
第二製造法(カルバメート化反応)
Figure 2006306746
本反応は一般式(IV)で示されるアミン化合物とその反応対応量の一般式(V)で示されるピリジン誘導体とを前記反応に不活性な溶媒中、冷却下又は室温乃至加温下攪拌することにより行われる。本反応を促進させるために塩基(例えばナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、トリエチルアミン、ピリジン等)を添加するのが好ましい。
第三製造法(カルバメート化反応)
Figure 2006306746
本反応は一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物とその反応対応量の一般式(III)で示されるヒドロキシピリジン誘導体とを前記反応に不活性な溶媒中、室温乃至加熱下攪拌することにより行われる。本反応を促進するために塩基(例えば、水素化ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等)を添加するのが好ましい。
(原料化合物の製造法)
本発明化合物を製造するための原料化合物は既知化合物を所望により,前記製造法記載の反応,あるいは,以下の製法により製造される。
製法(i):アミド化反応
種々のカルボン酸とアミンから、それに対応する種々のアミド化合物が製造できる。反応は縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)、1,1'-カルボニルビス-1H-イミダゾール(CDI)等)、場合によっては、更に添加剤(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)等)の存在下行うことができる。カルボン酸の反応性誘導体としては、酸ハライド、酸無水物、活性エステル等が使用できる。反応は、例えば日本化学会編「実験化学講座(第4版)」22巻(1992年)(丸善)等に記載の方法により行うこともできる。
製法(ii):加水分解反応
エステル化されたカルボキシ基を有する化合物を、加水分解反応により、例えばグリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著,「Protective Groups in Organic Synthesis(第2版)」に記載の脱保護反応に準じて行うことができる。
製法(iii):カップリング反応
ハロゲンあるいは−O−SO2CF3を有する芳香環と、−B(OH)2、ジアルキルホウ素、ジアルコキシホウ素あるいはトリアルキルスズを有する芳香環との組み合わせからなる2つの芳香環を、好ましくは遷移金属触媒及び適当な添加剤の存在下反応させ、ビアリール化合物を合成する反応である。代表的な方法としては、丸善1991年刊「実験科学講座」第25巻有機合成VII 353〜366項、396〜427項に記載されている方法が挙げられる。遷移金属触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等種々のパラジウム錯体や、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルなどの種々のニッケル錯体等を好適に用いることができる。添加剤としてはトリフェニルホスフィン、炭酸ナトリウム、亜鉛等を好適に用いることができるが、適用する方法に応じ適宜選択するのが好ましい。
通常、前記反応は、溶媒中において、室温〜加熱下行われる。また、ここに記載の反応以外でも、ビアリール構造を形成する反応、例えば、適当な遷移金属触媒存在下におけるハロゲン化アリール化合物とアリールグリニャール試薬との反応等、を好適に用いることが可能である。
製法(iv):置換反応
1級アミン,2級アミン,アルコール,チオール,1級アミド,及び2級アミド等とその反応対応量の脱離基を有する化合物とを,反応に不活性な溶媒中,等量または一方を過剰量用いて,冷却下乃至加熱下攪拌しながら行われる。塩基(例えば炭酸カリウム,炭酸ナトリウム及び炭酸セシウム等の無機塩基,又はTEA及びジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基,カリウムtert−ブトキシド及びナトリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド,又は水素化ナトリウム及び水素化リチウム等),添加剤(ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウム,ヨウ化カリウム又はヨウ化ナトリウム等)の存在下に反応させるのが,反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
上述の反応に不活性な溶媒としては,例えばジクロロメタン,DCE,クロロホルム,ベンゼン,Tol,キシレン,エーテル,THF,ジオキサン,EtOAc,エタノール,メタノール,2−プロパノール,アセトニトリル,DMF,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドン,ジメチルイミダゾリジノン,DMSO,アセトン,メチルエチルケトン又は水等や,これらの均一系及び不均一系混合溶媒が挙げられるが,種々の反応条件に応じて適宜選択される。
[1]本発明のスクリーニング方法
脂肪酸アミド加水分解酵素(fatty acid amide hydrolase;以下FAAHと称する)には、アナンダミド、パルミトイルエタノールアミド,オレアミド、及び/若しくは2−アラキドン酸グリセロールを加水分解する活性を有する酵素が含まれ、同じ分子種として同定されるものである限り、いずれの種由来のものであってもよく、例えばヒト(GenBankアクセッション番号NM_001441)、マウス(GenBankアクセッション番号NM_010173)、ラット(GenBankアクセッション番号NM_024132)、ブタ(GenBankアクセッション番号AB027132)、ウサギ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコ、ハムスター、リス、クマ、シカ、サルなど哺乳動物由来のものが含まれる。また、天然のポリペプチドに限定されず、人工的に製造した変異体も含まれる。(a)配列番号2(ヒト)、配列番号4(マウス)、配列番号6(ラット)、若しくは配列番号8(ブタ)で表されるアミノ酸配列における全部若しくは少なくとも膜貫通領域を含むアミノ末端領域を除いたアミノ酸配列を含み、しかもアナンダミド、パルミトイルエタノールアミド、オレアミド、及び/若しくは2−アラキドン酸グリセロールを加水分解することができるポリペプチド;
(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列において、1〜10個、好ましくは1〜7個、更に好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列における全部若しくは少なくとも膜貫通領域を含むアミノ末端領域を除いたアミノ酸配列を含み、しかもアナンダミド、パルミトイルエタノールアミド、オレアミド、及び/若しくは2−アラキドン酸グリセロールを加水分解することができるポリペプチド;
(c)配列番号2、配列番号4、配列番号6、若しくは配列番号8で表されるアミノ酸配列との相同性が70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列における全部若しくは膜貫通領域を含むアミノ末端領域を除いたアミノ酸配列を含み、しかもアナンダミド、パルミトイルエタノールアミド、オレアミド、及び/若しくは2−アラキドン酸グリセロールを加水分解することができるポリペプチド;
(d)配列番号1(ヒト)、配列番号3(マウス)、配列番号5(ラット)、若しくは配列番号7(ブタ)で表されるポリヌクレオチド又はその相補配列に、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列における全部若しくは少なくとも膜貫通領域を含むアミノ末端領域を除いたアミノ酸配列を含み、しかもアナンダミド、パルミトイルエタノールアミド、オレアミド、及び/若しくは2−アラキドン酸グリセロールを加水分解することができるポリペプチド;
について、(a)〜(d)を総称して、以下では「機能的FAAH」と称する。
なお、本明細書における前記「膜貫通領域を含むアミノ末端領域」とは、アミノ末端にある細胞外領域と、細胞外領域と細胞内領域に挟まれた細胞膜に埋め込まれている膜貫通領域を含むアミノ末端領域をいう。膜貫通領域がどこに存在するかは膜蛋白構造予測プログラムTMpred、PSORT、SOSUIなどを用いて、アミノ酸配列から予測することができる。「膜貫通領域を含むアミノ末端領域」は、具体的には、例えば配列番号2の第1番目から第30番目、配列番号6の第1番目から第29番目で表される領域である。配列番号6の第1番目から第29番目で表される領域を除いた配列番号6の第30番目から579番目のアミノ酸で表されるポリペプチドも、前記領域を除いていないポリペプチドと同等の酵素活性を有することが知られている(Matthewら、Biochemistry、第37巻、第15177−15187頁、1998年)。
本明細書における前記「相同性」とは、Clustal V program (HigginsとSharp、Gene、第73巻、第237−244頁、1998年;Thompsonら、Nucleic Acid Res.、第22巻、第4673−7680頁、1994年)検索によりデフォルトで用意されているパラメータを用いて得られた値Identitiesを意味する。前記のパラメータは以下のとおりである。
Pairwise Alignment Parametersとして
K tuple 1
Gap Penalty 3
Window 5
Diagonals Saved 5
本明細書における前記「ストリンジェントな条件」でのハイブリダイゼ−ションとは、非特異的な結合が起こらない条件を意味し、具体的には、例えばハイブリダイゼーションを50% ホルムアミド、5×SSC(0.75 M NaCl、0.075 M クエン酸ナトリウム、pH 7)、5×デンハルト溶液(0.1% フィコール400、0.1% ポリビニルピロリドン、0.1% BSA)、変形サケ精子DNA(50 g/ml)、0.1% SDS、及び10% 硫酸デキストランよりなる溶液中で、37〜42℃の温度条件下、約12〜18時間行い、洗浄溶液(0.2×SSC、0.1% SDS)で必要に応じて予備洗浄を行った後、50〜60℃の温度条件下で洗浄するハイブリダイゼーションをいう。
本明細書における前記「アナンダミド、パルミトイルエタノールアミド、オレアミド、及び/若しくは2−アラキドン酸グリセロールを加水分解する」とは、具体的には、実施例1〜4に記載の方法により、pH 7〜9の緩衝液中で4℃〜37℃で30分間〜90分間の加水分解反応により、アナンダミド(N−arachidonoyl ethanolamine)をアラキドン酸(arachidonic acid)とエタノールアミン(ethanolamine)に、パルミトイルエタノールアミド(N−palmitoyl ethanolamine)をパルミチン酸(palmitic acid)とエタノールアミンに、オレアミド(Cis−9,10−octadecenoamide)をオレイン酸(oleic acid)とアンモニアに、2−アラキドン酸グリセロール(2−arachidonoyl glycerol)をアラキドン酸とグリセロール(glycerol)に分解する反応をいう。
本発明のスクリーニング方法には、(1) FAAH若しくは機能的FAAHに試験物質を接触させる工程、(2) FAAH若しくは機能的FAAHの活性の変化を分析する工程、(3) FAAH若しくは機能的FAAHの活性を阻害する物質を選択する工程により、頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングする方法が含まれる。
(1) FAAH若しくは機能的FAAHに試験物質を接触させる工程
FAAH若しくは機能的FAAHに試験物質を接触させるには、
a) FAAH若しくは機能的FAAHを発現している細胞若しくは組織
b) FAAH若しくは機能的FAAHをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターにより形質転換された形質転換体
c) a)若しくはb)の溶解液若しくは破砕液
d) c)より精製したFAAH若しくは機能的FAAHの精製物
のいずれかに試験物質を添加して一定時間インキュベートしてもよく、或いは
e) 試験物質を投与した実験動物の組織破砕液又は血液を用いてもよい。
a) FAAH若しくは機能的FAAHを発現している細胞若しくは組織
FAAH若しくは機能的FAAHを発現している細胞としては、具体的には、神経細胞、グリア細胞、上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、マクロファージ、血小板、マスト細胞、単球、樹状細胞、肝細胞、腎細胞、腸細胞、膵細胞、子宮細胞、胎盤細胞、膀胱細胞、前立腺細胞、角化細胞、及び筋細胞が挙げられる。これらの細胞は、FAAH若しくは機能的FAAHを発現している限り、いずれの種由来のものであってもよく、例えば、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコ、ハムスター、リス、クマ、シカ、サル由来のものなど哺乳動物由来の細胞を用いることができる。
細胞には樹立された細胞株を用いてもよく、動物の組織から剥離し、又は単離した細胞を用いてもよい。樹立された細胞株としては、ヒト膀胱上皮癌由来細胞株5637細胞、ヒト前立腺癌由来細胞株PC−3細胞、ラット好塩基球性白血病細胞株RBL−2H3細胞、ラット神経芽細胞腫株N18TG2細胞、ラット神経膠腫細胞株C6細胞、ラットマクロファージ細胞株J774細胞、ラット副腎髄質由来親クロム性細胞腫株PC−12細胞、ヒト単球様細胞株U937細胞、ヒト乳癌細胞株MCF−7細胞、ヒト乳癌細胞株EFM−19細胞、ヒト大腸癌由来細胞株CaCo−2細胞(以上の細胞株はいずれもAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能)、ヒト表皮角化細胞株HaCaT細胞、及びヒト神経芽細胞種株CHP100細胞を用いることができる。好ましくはヒト膀胱上皮癌由来細胞株5637細胞やラット好塩基球性白血病細胞株RBL−2H3細胞を用いることができる。
FAAH若しくは機能的FAAHを発現している組織としては、具体的には、脳、膀胱、前立腺、腎臓、肝臓、精巣、筋肉、血管、膵臓、消化管、肺、子宮、胎盤、皮膚、リンパ球、血小板、マクロファージ、単球、マスト細胞、及び前立腺が挙げられる。好ましくは脳、肝臓、単球を用いることができる。これらの組織はFAAH若しくは機能的FAAHを発現している限り、いずれの種由来のものであってもよく、例えば、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコ、ハムスター、リス、クマ、シカ、サル由来のものなど哺乳動物由来の組織を用いることができる。
細胞及び組織にFAAH若しくは機能的FAAHが発現しているか否かを調べるには、細胞若しくは組織の抽出液を用い、検討対象のポリペプチドを検出できる抗体を使用したウエスタンブロッティング、又は検討対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを特異的に検出するプライマーを使用したPCR(Polymerase Chain Reaction)などにより確認することができる。或いは、細胞若しくは組織の溶解液若しくは破砕液をアナンダミド、パルミトイルエタノールアミド、オレアミド、及び/若しくは2−アラキドン酸グリセロールなどの基質と、pH 7〜9の緩衝液中で4℃〜37℃で30分間〜90分間反応させ、これらの基質が加水分解されるか否かを調べることにより確認することができる。
b) FAAH若しくは機能的FAAHをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターにより形質転換された形質転換体
FAAH若しくは機能的FAAHをコードするポリヌクレオチドは、既知のアミノ酸配列や塩基配列の情報などをもとに設計し合成したプライマーやプローブを用いて、PCR法やハイブリダイゼーションによるスクリーニングにより、cDNAライブラリーから単離できる。
単離されたポリヌクレオチドを含む断片は、適当な発現ベクターに組み込むことにより、真核生物及び原核生物の宿主細胞に形質移入することができるようになり、宿主細胞において形質移入したポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを発現させることが可能である。発現ベクターには、宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターを用いることができる他、宿主細胞に応じて適宜選択したベクタープラスミドに適当なプロモーター及び形質発現にかかわる配列を導入したものを用いることができる。また組み込んだポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドが発現する際にグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)やFlag、Hisなどのタグが融合された状態で発現するように特定の配列を導入した発現ベクターを用いることもできる。数種類のポリヌクレオチドで同時に一つの細胞を形質転換する場合は、数種類のポリヌクレオチドが一つの発現ベクターに含まれるように構成してもよく、または各々別々の発現ベクターに含まれるように構成してもよい。或いは、このような構成が染色体DNAに組み込まれた細胞を取得してこれを用いてもよい。
所望のポリヌクレオチドを導入した発現ベクターは、DEAE−デキストラン法(Luthmanら、Nucleic Acids Res.、第11巻、第1295−1308頁、1983年)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Grahamら、Virology、第52巻、第456−457頁、1973年)、市販のトランスフェクション試薬であるLipofectamine 2000(Invitrogen社)やFuGENE 6(Roche Molecular Biochemicals社)を用いた方法、及び電気パルス穿孔法(Neumannら、EMBO J.、第1巻、第841−845頁、1982年)等により宿主細胞に取り込ませ、形質転換させることができる。宿主細胞として大腸菌を用いる場合は、大腸菌をHanahanの方法(Hanahanら、Mol. Biol.、第166巻、第557−580頁、1983年)に従い、CaCl2、MgCl2、又はRbClを共存させてコンピテント細胞に調製し、所望のポリヌクレオチドを導入した発現ベクターを加えることで形質転換させることができる。
c) 前記a)、b)の溶解液若しくは破砕液
細胞の破砕液は、細胞を緩衝液で数回洗浄した後、緩衝液中で摩砕型ホモジナイザーなどを用いて均一になるまで破砕することにより作製できる。組織破砕液は、組織重量の5〜10倍容の氷冷した緩衝液を加え、氷中で摩砕型ホモジナイザーにより均一な溶液になるまで摩砕し、さらに数秒間、超音波破砕することにより作製できる。前記緩衝液としては、Tris緩衝液(50 mM Tris−HCl(pH 8.0)、1 mM EDTA)やHepes緩衝液(1 mM EDTA、100 mM NaCl、12.5 mM Hepes、pH 8.0)などを用いることができる。例えば、実施例35及び実施例36の試験法が挙げられる。 FAAH若しくは機能的FAAHをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターにより形質転換された大腸菌の溶解液は、大腸菌を遠心分離により回収し、溶菌緩衝液(例えば、20 mM Tris−HCl(pH 8.0)、500 mM NaCl、10% Glycerol、0.2 mM EDTA、0.5 mM DTT、10 mM Imidazole、1% n−Octyl−β−D−glucopyranoside)にて溶解することで作製できる。
d) 前記c)より精製したFAAH若しくは機能的FAAHの精製物
FAAH若しくは機能的FAAHの精製物は、a) FAAH若しくは機能的FAAHを発現している細胞若しくは組織、又はb) FAAH若しくは機能的FAAHをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターにより形質転換された形質転換体の溶解液若しくは破砕液から、アフィニティークロマトグラフィー、電気クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び分配クロマトグラフィーなどを用いた一般的な方法により精製することができる。
具体的には、FAAH若しくは機能的FAAHを発現している細胞若しくは組織をスクロースを含む溶媒中でホモジネートした後、遠心分離、超高速遠心分離することで、マイクロソーム画分を取得し、Triton−Xを含む溶媒で溶解した後、更に遠心分離することで沈殿物を除いた蛋白質溶解液を高速蛋白液体クロマトグラフィー(FPLC)システム(Pharmacia社)で処理することで、精製することができる(Uedaら、J. Biol. Chem.、第270巻、第23823−23827頁、1995年)。
或いは、Hisタグを融合させたFAAH若しくは機能的FAAHを発現するように形質転換された大腸菌を溶菌緩衝液で溶解し、超音波処理を行った後、遠心分離(例えば、10000×gで20分間)し、得られた上清を溶菌緩衝液にて予め平衡化したHisタグに高い結合力を有するレジンと低温で12時間以上混合し、レジンを洗浄した後、レジンからHisタグを融合させたFAAH若しくは機能的FAAHを溶出させることで、精製することができる。
上記の細胞若しくは組織、上記のように作製した細胞若しくは組織の溶解液若しくは破砕液、又はFAAH若しくは機能的FAAHの精製物に試験物質を接触させるには、それらに試験物質を添加又は非添加して一定時間インキュベートする方法がある。具体的には試験物質をその試験物質の溶解性に応じて適宜選択した蒸留水、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの溶解液を用いて溶解し、前記の細胞若しくは組織、それらの溶解液若しくは破砕液、又はFAAH若しくは機能的FAAHの精製物に、0.003 nM〜10 μMになるように添加し、細胞若しくは組織の場合はCO2インキュベーター内で37℃で30〜60分間、それ以外の場合は4℃〜37℃で30〜90分間、インキュベートさせることにより、試験物質と接触させることができる。
e) 試験物質を投与した実験動物の組織破砕液又は血液
実験動物に試験物質を投与することによっても、当該実験動物の組織又は血液にあるFAAH若しくは機能的FAAHに試験物質を接触させることができる。実験動物には、例えばマウス、ラット、イヌなどの哺乳動物を用いることができる。これらの実験動物に試験物質を投与するには、試験物質をその試験物質の性質に応じて通常用いられる担体である生理食塩水やジメチルホルムアミド溶液、10% メチルセルロース溶液などに懸濁、溶解し、例えば経口投与、皮下投与、腹腔内投与、静脈内投与することができる。投与後組織を摘出し、それらの組織を上記c)に記載の方法により破砕し、組織破砕液を作製することができる。具体的には例えば、9週齢のラットに試験物質を1〜3 mg/kgで経口投与し、30分後に摘出した脳、肝臓、単球などの組織から組織破砕液を作製することができる。或いは、13〜18ヶ月齢のイヌに試験物質を0.3〜3 mg/kgで静脈内投与し、30分後に摘出した脳、肝臓、単球などの組織から組織破砕液を作製することができる。より具体的には例えば、実施例37に記載の方法により組織破砕液を作製することができる。また血液は上記の試験物質を投与した実験動物の心臓や下大動脈などから採取することができる。
(2) FAAH若しくは機能的FAAHの活性の変化を分析する工程
FAAH若しくは機能的FAAHの活性の変化を分析するには、試験物質の接触の有無によるFAAH若しくは機能的FAAHの酵素活性の変化を測定する方法がある。FAAH若しくは機能的FAAHの酵素活性は、FAAH若しくは機能的FAAHに基質を一定時間接触させ、その基質の分解産物の量を測ることにより測定することができる。或いは、実験動物の組織や血液中に含まれるFAAHの生体内基質であるエンドカンナビノイドの量を測ることにより測定することができる。
試験物質依存的な酵素活性の変化を分析するには、試験物質存在下、非存在下でFAAH若しくは機能的FAAHと基質を一定時間接触させ、試験物質非存在下での基質の分解産物の量に対する試験物質存在下での基質の分解産物の量の比を求めることにより分析することができる。
或いは、あらかじめ試験物質と接触させたFAAH若しくは機能的FAAH及び試験物質と接触させなかったFAAH若しくは機能的FAAHに基質を一定時間接触させ、試験物質と接触させなかったFAAH若しくは機能的FAAHによる基質の分解産物の量に対する、あらかじめ試験物質と接触させたFAAH若しくは機能的FAAHによる基質の分解産物の量の比を求めることによっても、試験物質依存的な酵素活性の変化を測定することができる。
更には、実験動物に試験物質を投与する前後の組織又は血液中のエンドカンナビノイドの量を測定し、試験物質投与前のエンドカンナビノイド量に対する試験物質投与後のエンドカンナビノイド量の比を求めることによって、或いは試験物質を投与、非投与の実験動物の組織又は血液中のエンドカンナビノイドの量を測定し、試験物質非投与の実験動物の組織又は血液中のエンドカンナビノイドの量に対する試験物質を投与した実験動物の組織又は血液中のエンドカンナビノイドの量の比を求めることによっても、試験物質依存的な酵素活性の変化を測定することができる。
FAAH若しくは機能的FAAHと基質は、FAAH若しくは機能的FAAHの状態に応じて、以下の条件下で接触させることができる。
前記(1)a)、b)の細胞、組織に発現しているFAAH若しくは機能的FAAHを基質と接触させるには、pH 7〜9の緩衝液中の培養細胞若しくは組織に、前記基質を添加し、CO2インキュベーター内で37℃若しくは室温で好ましくは30〜60分間反応させる方法がある。反応の停止は当該細胞若しくは当該組織を氷上に移し急冷することにより、FAAH阻害剤を十分な濃度で接触させることにより、又はクロロホルムとメタノールの1:1(容量比)溶液を加えることにより行うことができる。これらの細胞、組織を前記(1)c)に記載の方法により、溶解、破砕し、溶解液若しくは破砕液を作製することができる。
前記(1)c)、e)の細胞、組織の溶解液若しくは破砕液中のFAAH若しくは機能的FAAHと基質とを接触させるには、pH 7〜9の緩衝液で、好ましくは蛋白質濃度を10〜100 μg/mlに希釈した溶解液、破砕液に前記基質を添加し、4℃〜37℃の温度条件下、反応させる方法がある。反応時間は添加した酵素量、基質量及び反応温度等の条件に応じて、適宜設定することができる。例えば、室温で反応させる場合には、反応時間を30〜90分間で行うことができる。
前記(1)d)のFAAH若しくは機能的FAAHの精製物を基質と接触させるには、pH 7〜9の緩衝液を用いて希釈した溶解液若しくは破砕液に前記基質を添加し、4℃〜37℃の温度条件下、反応させる方法がある。反応時間は添加した酵素量、基質量及び反応温度等の条件に応じて、適宜設定することができる。例えば、室温で反応させる場合には、反応時間を30〜90分間で行うことができる。
基質の分解産物の量を測定するには、上記の酵素反応液中の未反応の基質と分解産物を分離し、分解産物の量を測定すればよい。未反応基質と分解産物を分離するには、分解産物であるエタノールアミン等が水溶性であることを利用して、例えば、酵素反応液に2倍量のクロロホルムとメタノールの1:1(容量比)溶液を加え撹拌した後、遠心分離することで、上層の水/エタノール層に含まれる分解産物と、下層のクロロホルム層に含まれる未反応基質とに分離することができる。または吸水性のない液体シンチレーションカクテル剤と混合することにより、脂溶性の未反応放射性基質をカクテル剤に取り込ませ、分解産物と未反応基質を分離することができる。或いは、薄層クロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーなどにより、未反応基質と分解産物を分離することができる。
基質に3Hや14Cなどで標識したもの、若しくは標識したものと未標識のものの混合物を用いている場合は、分解産物の量又は未反応基質の量を液体シンチレーションカウンターを用いて測定したり、或いはイメージングプレートにX線潜像として記録させ、イメージングプレート読みとり装置により測定することができる。
基質に未標識のものを用いている場合は、高速液体クロマトグラフィーで205 nmの吸光度をモニターすることにより、分解産物量又は未反応基質の量を測定することができる(Langら、Anal. Biochem.、第238巻、第40−45頁、1996年)。
未反応基質の量を測定した場合、反応前に添加した基質の量から未反応基質の量を差し引くことで、分解産物の量を求めることができる。またFAAH若しくは機能的FAAHの基質の分解産物量から、FAAH若しくは機能的FAAHを含まない緩衝液のみを添加して測定した基質の分解産物量をコントロールとして差し引くことで、FAAH若しくは機能的FAAHによる正味の基質の分解産物量を求めることができる。
組織破砕液中のエンドカンナビノイドの量は、例えば採取した組織をクロロホルムとメタノールと50 mM Tris(pH 8.0)の2:1:1(容量比)溶液中で破砕し、有機層(クロロホルム層)に含まれるエンドカンナビノイドを液体クロマトグラフィー−同位体希釈質量分析(isotope dilution mass spectrometry)により測定することができる(Cravattら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第98巻、第9371−9376頁、2001年)。
血液中のエンドカンナビノイドの量は、例えば以下のように測定することができる。採取した血液から血漿を分離し、血漿に含まれるタンパク質を等量のアセトン(−20℃)を加え遠心することにより除く。窒素ガスを吹き付けることによりアセトンを蒸発させた後、メタノールとクロロホルムの1:2(容量比)溶液を加え、有機層(クロロホルム層)に含まれるエンドカンナビノイドを液体クロマトグラフィー−同位体希釈質量分析により測定することができる(Giuffridaら、Eur. J. Pharmacol.、第408巻、第161−168頁、2000年)。
(3) FAAH若しくは機能的FAAHの活性を阻害する物質を選択する工程
FAAH若しくは機能的FAAHの活性を阻害する物質を選択するには、FAAH若しくは機能的FAAHに試験物質を接触させることにより、試験物質を接触させなかった場合と比較して、基質の分解産物量を減少させるような物質を選択すればよい。
具体的には、FAAH若しくは機能的FAAHに試験物質を接触させた場合、試験物質を接触させなかった場合と比較して、基質の分解産物量が好ましくは1/2倍以下に減少するような物質、すなわち頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングすることができる。
また、FAAH若しくは機能的FAAHに各種濃度の試験物質を接触させ、試験物質を接触させなかった場合の基質の分解産物量を100%としたときの、各濃度の試験物質を接触させた場合の基質の分解産物量の相対値(%)を求め、又は試験物質を接触させなかった場合の基質の分解産物量を100%とし、既存のFAAH阻害物質を十分な濃度、時間でFAAH若しくは機能的FAAHに接触させた場合の基質の分解産物量を0%としたときの、各濃度の試験物質を接触させた場合の基質の分解産物量の相対値(%)を求め、基質の分解産物量の相対値(%)を縦軸に、試験物質の濃度を横軸として表した阻害曲線で、分解産物量の相対値が50%となる試験物質の濃度(IC50値)を算出し、IC50値が好ましくは1μM以下、より好ましくは100 nM以下である物質、すなわち頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングすることができる。例えば実施例35から実施例38の試験が挙げられる。
或いは、実験動物に投与することにより組織若しくは血液中のエンドカンナビノイドの量を投与前と比較して又は非投与の実験動物と比較して、好ましくは1.5倍に増加させるような試験物質を選択することによっても、FAAH若しくは機能的FAAHの活性を阻害する物質、すなわち頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングすることができる。
[2] 試験物質
本発明のスクリーニング法で使用する試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、市販の化合物(ペプチドを含む)、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrettら、J. Steele. Tetrahedron、第51巻、第8135−8173頁、1995年)によって得られた化合物群、微生物の培養上清、植物や海洋生物由来の天然成分、動物組織抽出物、あるいは本発明のスクリーニング法により選択された化合物(ペプチドを含む)を化学的、又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を挙げることができる。
[3] 頻尿・尿失禁治療用及び/又は過活動膀胱治療用医薬組成物
本発明の医薬組成物における有効成分としては、FAAH若しくは機能的FAAHを活性を阻害する物質を用いることができ、前記阻害物質は、例えば本発明のスクリーニング方法により選択することができる。
本発明の医薬組成物は、本発明のスクリーニング方法で得られた物質を有効成分とする医薬組成物に限定されず、FAAH若しくは機能的FAAHの活性を阻害する物質を有効成分とする頻尿・尿失禁治療用及び/又は過活動膀胱治療用医薬組成物であれば全て包含され、好ましくは頻尿・尿失禁治療用及び過活動膀胱治療用医薬組成物である。
なお、頻尿・尿失禁治療効果及び/又は過活動膀胱治療効果があることの確認は、前記の通りである。
FAAH若しくは機能的FAAHの活性を阻害する物質である例えば、DNA、蛋白質(抗体又は抗体断片を含む)、ペプチド、又はそれ以外の化合物を有効成分とする製剤は、前記有効成分のタイプに応じて、それらの製剤化に通常用いられる薬理学上許容される担体、賦形剤、及び/又はその他の添加剤を用いて、医薬組成物として調製することができる。
投与としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、又は経口用液剤などによる経口投与、あるいは静注、筋注、若しくは関節注などの注射剤、坐剤、経皮投与剤、又は経粘膜投与剤などによる非経口投与を挙げることができる。特に胃で消化されるペプチドにあっては、静注等の非経口投与が望ましい。
経口投与のための固体組成物においては、1又はそれ以上の活性物質と、少なくとも一つの不活性な希釈剤、例えば、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどと混合することができる。前記組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば、滑沢剤、崩壊剤、安定化剤、又は溶解若しくは溶解補助剤などを含有することができる。錠剤又は丸剤は、必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質などのフィルムで被覆することができる。
経口投与のための液体組成物は、例えば、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はエリキシル剤を含むことができ、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば、精製水又はエタノールを含むことができる。前記組成物は、不活性な希釈剤以外の添加物、例えば、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、芳香剤、又は防腐剤を含有することができる。
非経口のための注射剤としては、無菌の水性若しくは非水性の溶液剤、懸濁剤、又は乳濁剤を含むことができる。水溶性の溶液剤又は懸濁剤には、希釈剤として、例えば、注射用蒸留水又は生理用食塩水などを含むことができる。非水溶性の溶液剤又は懸濁剤の希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、アルコール類(例えば、エタノール)、又はポリソルベート80等を含むことができる。前記組成物は、更に湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解若しくは溶解補助剤、又は防腐剤などを含むことができる。前記組成物は、例えば、バクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、又は照射によって無菌化することができる。また、無菌の固体組成物を製造し、使用の際に、無菌水又はその他の無菌用注射用媒体に溶解し、使用することもできる。
投与量は、有効成分すなわち本発明のスクリーニング方法により得られる物質の活性の強さ、症状、投与対象の年齢、又は性別等を考慮して、適宜決定することができる。
例えば、経口投与の場合、その投与量は、通常、成人(体重60kgとして)において、1日につき約0.1〜100 mg、好ましくは0.1〜50 mgである。非経口投与の場合、注射剤の形では、1日につき0.01〜50 mg、好ましくは0.01〜10 mgである。
以下,実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また原料化合物の製法を参考例に示す。なお、特に断りがない場合は、公知の方法に従って実施可能である。また、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従っても実施可能である。
なお、明細書中の略号は,以下の通りである。
REX:参考例;EX:実施例;Str:構造式; 1H−NMR δ(ppm), solvent :核磁気共鳴スペクトル;MS m/z:質量分析値;Ph:フェニル;Me:メチル;Et:エチル;HEX:ヘキシル;cPEN:シクロペンチル;cHEX:シクロヘキシル;Cl:クロロ;diCl:ジクロロ;diClPh:ジクロロフェニル;F:フルオロ;MeO:メトキシ;COOMe:メトキシカルボニル;HO:ヒドロキシ;TEA:トリエチルアミン;Sal:付加塩;HCl:塩酸塩;oxal:シュウ酸塩;fum:フマル酸塩;fre:フリー体
なお、表4から表7中の一般式は、各表に記載された実施例化合物を表すために掲記した。
参考例1
3−(ベンジルオキシ)−5−ブロモピリジン(5.89g)と[3−(エトキシカルボニル)フェニル]ボロン酸(4.91g)を含むジメトキシエタン(60ml)溶液中に、水(12ml)、炭酸ナトリウム(7.09g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(1.29g)を順次添加した後、70℃にて20時間加熱した。反応溶液を冷却後、酢酸エチルにて希釈し、有機層を水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=1:1(V/V))で精製して、淡黄色油状物(6.79g)を得た。
得られた化合物(6.57g)を含むエタノール(100ml)溶液に10%パラジウム−カーボン(触媒量)を添加し、水素ガス雰囲気下、常温常圧にて8時間攪拌した。触媒を濾去し、得られた濾液を減圧濃縮して、淡褐色固体(3.81g)を得た。
得られた化合物(3.78g)を含むエタノール(100ml)、テトラヒドロフラン(100ml)混合溶液に1mol/l水酸化ナトリウム水溶液(32ml)を添加し、加熱還流下2時間攪拌した。反応溶液を冷却後、溶媒を減圧留去し、残留物に1mol/l塩酸水溶液にて中和し、得られてくる固体を乾燥して、3−(5−ヒドロキシピリジン−3−イル)安息香酸(3.03g)を得た。
得られた3−(5−ヒドロキシピリジン−3−イル)安息香酸(300mg)を含むジメチルホルムアミド(10ml)溶液に40%メチルアミン水溶液(0.232ml)、1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−オール(281mg)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(399mg)を順次添加し、室温にて14時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルにて希釈し、有機層を水、飽和食塩水にて順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して、3−(5−ヒドロキシピリジン−3−イル)−N−メチルベンズアミド(368mg)を得た。
参考例2
参考例1の合成で得られた3−(5−ヒドロキシピリジン−3−イル)安息香酸(300mg)を含むピリジン(10ml)溶液に塩化アセチル(0.109ml)を添加し、室温にて1.5時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、残留物を酢酸エチルにて希釈し、有機層を1mol/l塩酸水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、残留物をテトラヒドロフラン(10ml)に溶解し、ジメチルホルムアミド(触媒量)、塩化チオニル(0.304ml)を順次添加し、室温にて1.5時間攪拌した。この溶液を濃アンモニア水溶液に添加し、更に0℃にて1.5時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、残留物を酢酸エチルにて希釈し、有機層を水、飽和食塩水にて順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して、3−(5−ヒドロキシピリジン−3−イル)ベンズアミド(155mg)を得た。
参考例3
メチル6-アミノヘキサノエート塩酸塩(2.5g)、ケイ皮酸(2.0g)、1-[3‐(ジメチルアミノ)プロピル]‐3‐エチルカルボジイミド塩酸塩(3.9g)を含むDMF(100ml)溶液中に、トリエチルアミン(2.8ml)を添加後、室温にて終夜攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を1M塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られてくる固形物をヘキサン/酢酸エチルから再結晶して、白色粉末(3.2g)を得た。
得られた粉末(3.0g)を含むTHF(30ml)中に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液(20ml)を加え、室温にて3時間攪拌した。反応溶液に1mol/l塩酸水溶液を加え酸性にし、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、白色粉末6-{[(2E)-3-フェニルプロペノル]アミノ}ヘキサン酸(2.8g)を得た。
参考例4
アルゴン雰囲気下、4-ベンジルアルコール(1.63ml)およびγ-ブチロラクトン(360mg)の混合物を75℃にて2日間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルにて希釈し、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液にて抽出した。水層を1mol/l塩酸水溶液により中和して酢酸エチルに逆抽出した後、有機層を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して、3-[(4-フルオロベンジル)オキシ]プロパン酸(440mg)を得た。
参考例4と同様にして、参考例5、6、7の化合物を得た。
参考例8
2-フェニルエタノール(1.22g)を含むベンゼン(20ml)溶液に硫酸水素テトラメチルアンモニウム(849mg)、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液(10ml)を順次添加した後、0℃にて30分間撹拌した。この溶液にブロモ酢酸tert-ブチル(2.20ml)を添加し、更に室温にて24時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルにて希釈し、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液にて抽出した。溶媒を減圧留去した後、残留物をクロロホルムにて希釈し、有機層を水、飽和食塩水にて順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=9:1(V/V))で精製して、淡黄色油状物(1.02g)を得た。
得られた化合物(993mg)を4mol/l塩化水素−酢酸エチル溶液(2.10ml)に溶解させ、室温にて3時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。残留物をジエチルエーテルにて希釈し、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液にて抽出した。水層を1mol/l塩酸水溶液により中和してジエチルエーテルに逆抽出した後、有機層を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して、(2-フェニルエトキシ)酢酸(570mg)を得た。
参考例8と同様にして、参考例9の化合物を得た。
参考例10
フェノール(847mg)を含むジメチルホルムアミド(10ml)溶液中に、4-ブロモブタン酸エチル(1.29ml)と炭酸カリウム(2.48g)を順次添加した後、60℃にて18時間撹拌した。炭酸カリウムを濾去し、得られた濾液を酢酸エチルにて希釈し、有機層を水、飽和食塩水にて順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=9:1(V/V))で精製して、無色油状物(1.40g)を得た。
得られた化合物(1.40g)を含むエタノール(15ml)溶液に1mol/l水酸化ナトリウム水溶液(7.40ml)を添加し、室温にて3日間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルにて希釈し、1mol/l塩酸水溶液にて中和し、有機層を水、飽和食塩水にて順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して、4-フェノキシブタン酸(1.17g)を得た。
実施例1
3-ヒドロキシピリジン(2.0g)を含むTHF(30ml)溶液中に、シクロヘキシルイソシアネート(3.9g)とトリエチルアミン(4.4ml)を順次添加した後、50℃にて10時間加熱した。反応溶液を冷却後、水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られてくる固形物をヘキサン/酢酸エチル/メタノールから再結晶して、白色粉末ピリジン-3-イル‐シクロヘキシルカルバメート(2.7g)を得た。
実施例1と同様にして、実施例2〜9の化合物を得た。
実施例10
4-フェニルブチルアミン(470mg)を含むトルエン(10ml)溶液中に、1,1’-カルボニルジイミダゾール(766mg)を加え、100℃にて5時間加熱した。反応溶液を冷却後、3-ヒドロキシピリジン(250mg)を加え、60℃にてさらに10時間加熱した。反応溶液を冷却後、水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水にて順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル)で精製して、無色油状物を得た。得られた油状物を酢酸エチルに溶解させ、その溶液中に4mol/l塩酸−酢酸エチル溶液を加え、析出してくる固形物を濾取した。得られた固形物を酢酸エチルで洗浄後、乾燥して、白色粉末ピリジン-3-イル‐(4-フェニルブチル)カルバメート 塩酸塩(118mg)を得た。
実施例11
6-フェニルヘキサン酸(758mg)を含むトルエン(15ml)溶液中に、ジフェニルホスホリルアジド(1.30g)とトリエチルアミン(0.66ml)を順次添加した後、100℃にて3時間加熱した。反応溶液を冷却後、3-ヒドロキシピリジン(250mg)を加え、60℃にてさらに10時間加熱した。反応溶液を冷却後、水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=1:6(V/V))で精製して、無色油状物を得た。得られた油状物をエタノールに溶解させ、その溶液中にシュウ酸(235mg)を加え、析出してくる固形物を濾取した。得られた固形物をエタノールとイソプロピルエーテルより再結晶し、白色粉末ピリジン-3-イル‐(5-フェニルペンチル)カルバメート シュウ酸塩(297mg)を得た。
実施例11と同様にして、実施例12〜34の化合物を得た。
実施例35
ラット脳破砕液を用いたFAAH活性を阻害する物質のスクリーニング
(1)ラット脳破砕液の調製
10週齢のSD系雄性ラット(日本SLC社)をエーテル麻酔下にて断頭し、大脳を摘出し重量を測定した。重量の5倍容の氷冷した緩衝液(50 mM Tris−HCl(pH7.4)、0.32 M Sucrose)を加え、氷中でホモジナイザーにより均一な懸濁液になるまで摩砕した。遠心分離(1500×g, 4℃, 15分間)後,その上清をさらに遠心分離(15000×g, 4℃, 20分間)し沈殿を得た.さらに超音波発生機(UR−20P;トミー精工社)により、5秒間、超音波破砕(Power dial 4)した。得られた破砕液の蛋白質濃度を色素結合法(プロテインアッセイCBB溶液;ナカライテスク社)により測定した。緩衝液(50 mM Tris−HCl(pH 8.0)、1 mM EDTA、0.1 mg/ml BSA、100 mM NaCl)を用いて、蛋白質の濃度が60 μg/mlになるようにラット脳破砕液を希釈し酵素液を調製した。
(2)FAAH活性を阻害する物質のスクリーニング
2 μCi/ml 放射標識アナンダミド(Anandamide [ethanolamine 1−3H](American Radiolabeled Chemical社))、8 μM アナンダミド(フナコシ社)、50 mM Tris−HCl(pH 8.0)、1 mM EDTA、0.1 mg/ml BSA及び100 mM NaClよりなる基質液を調製した。1 nM〜100 μMになるようにDMSOに溶解した試験物質溶液を調製した.50 μlの酵素液に50 μlの上記基質液,1 μlの試験物質溶液を加え、1時間放置した。また、コントロールとしてはDMSOを試験物質溶液の代わりに添加した。これに200 μlのクロロホルムとメタノールの1:1(容量比)溶液を加え攪拌した。遠心分離(15000回転/分、2 分間)することにより、上層(水/メタノール層)に分解産物のエタノールアミン(ethanolamine 1−3H)が、下層(クロロホルム層)に未反応の放射標識アナンダミド(Anandamide [ethanolamine 1−3H])が分離された。上層の30 μlを96ウェルの有機溶媒耐性白色マイクロプレート(PicoPlate−96;PerkinElmer社)に移し、150 μlのマイクロシンチ20(PerkinElmer社)を加えマイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCountTM;Beckman社)にて測定した。コントロールと比較して測定値を減少させる物質を、FAAH活性を阻害する物質として選択した。
(3) FAAH活性阻害物質のIC50値の測定
化合物を1 nM〜100 μMになるようにDMSOに溶解して試験物質溶液を調製し、上記に記載の方法で、FAAH活性に及ぼす影響を調べた。コントロールとしてDMSOを用いた。各測定値より、酵素液の代わりに緩衝液(50 mM Tris−HCl(pH 8.0)、1 mM EDTA、0.1 mg/ml BSA、100 mM NaCl)を用いて反応させた場合の測定値を差し引いた。コントロールの測定値を100%としてIC50値を求めた。例えば実施例16、19及び20の化合物では、それぞれIC50値が、0.25 nM,0.081 nM、及び2.1 nMであった。
以上の結果より、FAAH若しくは機能的FAAHを発現している組織破砕液に試験物質を接触させ、試験物質依存的なFAAH活性の変化を測定することにより、FAAH活性を阻害する物質、すなわち頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングできることが示された。
実施例36
ヒト膀胱上皮癌由来細胞を用いたFAAH活性を阻害する物質のスクリーニング
(1) FAAH活性を阻害する物質のスクリーニング
ヒト膀胱上皮癌由来細胞株5637細胞(HTB−9;ATCC)を48ウェルの細胞培養プレートに1ウェルあたり1×105個、10%ウシ胎児血清(HyClone社)を含有するRPMI1640培地(Invitrogen社)を用いて播種した。37℃で12時間以上培養した後、細胞を1ウェルあたり400 μlの緩衝液(Hank’s Balanced Salt Solution、20 mM Hepes−NaOH(pH 7.4))で洗浄した。基質液(3 μCi/ml 放射標識アナンダミド(Anandamide [ethanolamine 1−3H])、10 μMアナンダミドを含む前記緩衝液)にDMSOに溶解した試験物質を0.003 nM〜30 nMになるように添加した。コントロールとしてDMSOのみを添加した。上記細胞に1ウェルあたり100 μlの基質液を加え、CO2インキュベーター内で、37℃で30分間インキュベートした。その後、細胞培養プレートを氷上に移し、基質液を吸引除去し、1ウェルあたり75 μlの氷冷した細胞溶解用の溶液(0.5% TritonX−100、10 μMのFAAH阻害活性を有する化合物cyclohexylcarbamic acid 3≡−carbamoylbiphenyl−3−yl ester(URB597;Cayman chemical社;Kathuriaら、Nature Med.、第9巻、第76−81頁、2003年)を含む前記緩衝液)を加え攪拌した。得られた細胞溶解液をウェルごとに1.5 ml容のサンプルチューブに移し、150 μlのクロロホルムとメタノールの1:1(容量比)溶液を加え攪拌した。遠心分離(15000 回転/分、2分間)すると、上層(水/メタノール層)に分解産物のエタノールアミン(ethanolamine 1−3H)が、下層(クロロホルム層)に未反応の放射標識アナンダミドが分離される。上層の25 μlを96ウェルの有機溶媒耐性白色マイクロプレート(PicoPlate−96;PerkinElmer社)に移し、150 μlのマイクロシンチ20(PerkinElmer社)を加えマイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCountTM;Beckman社)にて測定した。コントロールと比較して測定値を減少させる物質を、FAAH活性を阻害する物質として選択した。
(2) FAAH活性阻害物質のIC50値の測定
DMSOに10 mMになるように溶解した化合物を0.003 nM〜30 nMになるように、基質液に加え、上記に記載の方法でFAAH活性に及ぼす影響を調べた。ネガティブコントロールとしてDMSOを、ポジティブコントロールとしてURB597を10 μMになるように基質液に添加し、ポジティブコントロールの測定値を0%、ネガティブコントロールの測定値を100%としてIC50値を求めた。試験結果を表1に示す.
Figure 2006306746
以上の結果より、代表的な本発明化合物において、優れたFAAH阻害活性を有することが確認できた。また、FAAH若しくは機能的FAAHを発現している細胞に試験物質を接触させ、試験物質依存的なFAAH活性の変化を測定することにより、FAAH活性を阻害する物質、すなわち頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングできることが示された。
実施例37
試験物質を投与したラットの組織破砕液を用いたFAAH活性を阻害する物質のスクリーニング
(1) ラットへの投与、及び組織破砕液の調製
2匹の9週齢のWistar系雄性ラット(日本SLC社)に0.5% メチルセルロース(MC)溶液に懸濁した試験物質を1〜3 mg/kgで経口投与した。コントロールとして2匹のラットには0.5% MC溶液を経口投与した。30分後に、エーテル麻酔下にて下大動脈から血液を採取した。その後、断頭し、大脳を採取した。
採取した血液 3 mlを等量の生理食塩水で希釈し、遠心チューブ内の3 mlの血球分離剤(Nycoplep;AXIS−SHIELD社)の上に静かに重層した。遠心分離(400×g、20分間)し、単球層を採取した。得られた単球を生理食塩水で2回洗浄し、測定まで−20℃で凍結保存した。
採取したラット脳に、重量の5倍容の氷冷した緩衝液(50 mM Tris−HCl(pH 8.0)、1 mM EDTA)を加え、氷中でホモジナイザーにより、均一な溶液になるまで摩砕した。さらに超音波発生機(UR−20P(Power dial 4);トミー精工社)により、5秒間、超音波破砕した。前記の凍結保存した単球には、氷冷した緩衝液(50 mM Tris−HCl(pH 8.0)、1 mM EDTA)を100 μl加え、超音波発生機(UR−20P(Power dial 4);トミー精工社)により5秒間、超音波処理した。脳、 単球の破砕液について、色素結合法(プロテインアッセイCBB溶液;ナカライテスク社)により蛋白質濃度を測定した。脳、単球の破砕液を緩衝液(50 mM Tris−HCl(pH 8.0)、1 mM EDTA、0.1 mg/ml BSA、100 mM NaCl)を用いて、蛋白質濃度がそれぞれ80 μg/ml、200 μg/mlになるように希釈し酵素液とした。
(2) FAAHの活性の測定
50 μlの酵素液に50 μlの基質液(2 μCi/ml 放射標識アナンダミド(Anandamide [ethanolamine 1−3H](American Radiolabeled Chemical社))、8 μM アナンダミド(フナコシ社)、50 mM Tris−HCl(pH8.0)、1 mM EDTA)を加え室温にて1時間反応させた。200 μlのクロロホルムとメタノールの1:1(容量比)溶液を加え攪拌した。遠心分離(12000×g、2分間)により、上層(水/メタノール層)に分解産物のエタノールアミン(ethanolamine 1−3H)が、下層(クロロホルム層)に未反応の放射標識アナンダミド(Anandamide [ethanolamine 1−3H])が分離された。上層の25 μlを96ウェルの有機溶媒耐性白色マイクロプレート(PicoPlate−96;PerkinElmer社)に移し、150 μlのマイクロシンチ20(PerkinElmer社)を加えマイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCountTM;Beckman社)にて測定した。
試験物質を投与していないコントロールラットの脳、単球の破砕液におけるFAAH活性を100%とし、組織破砕液を含まない緩衝液(50 mM Tris−HCl(pH 8.0)、1 mM EDTA、0.1 mg/ml BSA、100 mM NaCl)のFAAH活性を0%とし、試験物質を投与したラット組織破砕液のFAAH活性の相対値(%)を求めた。FAAH活性の相対値を低下させる物質を、FAAH活性を阻害する物質として選択した。
以上の結果より、試験物質を実験動物に投与した後、摘出した組織の破砕液における試験物質依存的なFAAH活性の変化を測定することにより、FAAH活性を阻害する物質、すなわち頻尿・尿失禁治療剤及び/又は過活動膀胱治療剤をスクリーニングできることが示された。
実施例38
シクロフォスファミド(CPA)誘発頻尿ラットに対する化合物の作用
化合物の膀胱刺激症状改善作用を病態モデルを用いて検討した。シクロフォスファミド(CPA)は全身投与により代謝物であるアクロレインに変換され、尿中から膀胱粘膜を傷害することが知られている。ラットにおいては、CPA投与により出血性膀胱炎に伴う膀胱痛あるいは頻尿状態が誘発されるため、これら症状に対する薬効評価が可能である。実験には9週齢のWistar系雌性ラット(チャールスリバー社)を用いた。CPA(100 mg/kg)を腹腔内投与し、その2日後に実験を行った。化合物を経口投与(p.o.)し15分後に、蒸留水(30 ml/kg)を強制的に経口投与した。ラットを代謝ケージに入れ、排尿重量を1時間連続的に測定した。総排尿量を総排尿回数で割ることにより、有効膀胱容量を算出した。その結果、溶媒である0.5% メチルセルロース(MC)投与群においては有効膀胱容量が減少し、頻尿状態が認められた。有効経口投与量は、実施例1の化合物では0.3mg/kg、実施例8の化合物では3mg/kgであった。これらの化合物は減少した有効膀胱容量を増加させ、頻尿状態を改善した。
実施例39
脳虚血誘発過活動膀胱ラットに対する作用
化合物の過活動膀胱改善作用を病態モデルを用いて検討した。脳卒中は日本における主要死因のひとつであり、寝たきり老人の原因疾患の約1/3を占めるが、これら患者の50%から70%が尿失禁を経験すると報告されている。一方、動物実験において、脳虚血モデルは過活動膀胱治療薬の薬効評価に有用であることが知られている。実験には8週齢のSD系雄性ラット(チャールスリバー社)を用いた。左側中大脳動脈にナイロン糸を挿入することにより脳虚血を誘発し、その後4〜6時間に実験を行った。化合物を経口投与(p.o.)し15分後に、蒸留水(30 ml/kg)を強制的に経口投与した。ラットを代謝ケージに入れ、排尿重量を1時間連続的に測定した。総排尿量を総排尿回数で割ることにより、有効膀胱容量を算出した。その結果、溶媒である0.5% メチルセルロース(MC)投与群においては有効膀胱容量が減少し、頻尿状態が認められた。一方、実施例化合物1の化合物シュウ酸塩は減少した有効膀胱容量を増加させ、過活動膀胱を改善した。したがって、脳梗塞等の神経因性膀胱による頻尿・尿失禁及び/又は過活動膀胱における化合物の治療効果を確認することができた。
Figure 2006306746
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Figure 2006306746

Claims (3)

  1. 一般式(I)に示されるピリジン−3−イル カルバメート誘導体及びその製薬学的に許容される塩
    Figure 2006306746

    [式中の記号は、以下の意味を示す。
    1:(1)ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいcALK(cALK:シクロアルキル)、
    (2)ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル、
    (3)式R6−ALK1
    (R6:ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいcALK、及び
    ALK1:低級アルキレン)、
    (4)式R7−ALK2
    (R7:ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されたAr1、及び
    Ar1:アリール、又はALK2:C4−7アルキレン)、
    (5)式R8−O−ALK1
    (R8:(i)H,(ii)ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいAr1、又は(iii) ハロゲン、低級アルキル、HO若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいcALK)、
    (6)式R8−ALK3−O−ALK1
    (ALK3:低級アルキレン)、
    (7)式R8−ALK4−CONH−ALK1
    (ALK4:低級アルキレン、又は低級アルケニレン)、
    2,R3,R4及びR5:同一又は異なって、(1)H,(2)ハロゲン,(3)エステル化されていてもよいカルボキシ,(4)基R910N[CO]n−で置換されていてもよいAr2(R9及びR10:同一又は異なって、(i)H,又は(ii)低級アルキル、Ar2:アリール及びn:0又は1)、又は(5)低級アルキル]。
  2. 請求項1記載の一般式(I)で示されるピリジン−3−イル カルバメート誘導体及びその製薬学的に許容される塩を有効成分とする医薬組成物。
  3. 頻尿・尿失禁治療用及び/又は過活動膀胱治療用医薬組成物である請求項2記載の医薬組成物。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPWO2011136308A1 (ja) * 2010-04-28 2013-07-22 アステラス製薬株式会社 泌尿器疼痛を伴う疾患の予防又は治療剤
JP2019172618A (ja) * 2018-03-29 2019-10-10 東ソー株式会社 ブロックポリイソシアネート組成物及びその製造方法

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