JP2006303208A - フレキシブルプリント回路用基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】芳香族ポリアミドからなるシート状基材と銅の薄膜層との間の密着性を向上することにある。
【解決手段】芳香族ポリアミドからなるシート状基材の表面に特定の条件でコロナ放電処理を実施するフレキシブルプリント回路用基板。
【選択図】なし

Description

本発明は、フレキシブルプリント回路用基板に関するものであり、さらに詳しくは、基材として芳香族ポリアミドからなるシートを用いかつ銅の薄膜層を有するフレキシブルプリント回路用基板に関するものである。
フレキシブルプリント回路用基板としては、従来よりプラスチックフィルム基材に有機系接着剤層を介して導電性金属層としての銅箔を貼り合せた3層構造のものが知られている。このタイプのフレキシブルプリント回路用基板は、一般に用いられる有機系接着剤の耐熱性がプラスチックフィルム基材に比べて低いために、加工後の寸法精度が低下するという問題がある。また用いられる銅箔の厚さが通常10μm以上であるため、ピッチの狭い高密度配線用のパターニングを行うためのエッチングが難しいという欠点も指摘されている。
一方、プラスチックフィルム基材上に有機系接着剤を用いることなく、湿式めっき法や乾式めっき法(例えば、真空蒸着法、スパッタリング製膜法、イオンプレーティング法など)により、導電性金属層を形成させた2層構造タイプのフレキシブルプリント回路板用基板が提案されている。
例えば特許文献1には、シート状基材と銅の薄膜層との間にニッケル−クロム合金からなる密着層を用いたことが記載されている。また特許文献2には、そのような密着層としてクロム系セラミックスを用いたことが記載されている。
しかしながらこのような2層構造タイプの場合、導電性金属層を10μmよりも薄くすることができるため、高密度配線が可能なものの、厳しい熱負荷試験を行ったり、スズ、ニッケル、はんだ、または金などの無電解めっき処理を行うと、プラスチックフィルム基材と導電性金属層との間の密着力が低下してしまうという問題がある。またニッケルークロム合金を密着層に用いた場合、エッチングの際に、銅の薄膜層とのエッチング速度に大きな差があるため、エッチング条件やエッチング液をそれらの層ごとに変えたりする必要が生じるので、プリント回路の生産性が低下するという問題がある。
一方、特許文献3には、シート用基材として芳香族ポリアミドを用いることが提案されている。しかしながら、芳香族ポリアミドのシート基材は、一般に銅からなる金属層との密着性に難点がある。
特開平9−83134号公報 特公平8−8400号公報 特許第2626049号公報
本発明の目的は、芳香族ポリアミドからなるシート状基材と銅の薄膜層との間の密着性を向上させることにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討し、特に芳香族ポリアミドからなるシート状基材の表面処理に焦点をしぼったところ、驚くべきことに、該シート状基材の表面にコロナ放電処理を施すことにより薄膜層と芳香族ポリアミドからなるシート状基材との密着性が改善され、プリント回路の生産性をより向上させうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下のとおりのものである。
[1]芳香族ポリアミドからなるシート状基材上にニッケルとクロムからなる合金を主成分とする金属薄膜層、および銅の薄膜層を有するフレキシブルプリント回路用基板であって、該シート状基材の該金属薄膜層と接している表面に、放電量が0.1W・min./m以上200W・min./m以下の範囲のコロナ放電処理が施されているフレキシブルプリント回路用基板。
本発明によれば、芳香族ポリアミドのシート状基材の表面にコロナ放電処理を施すことで、銅の薄膜層との間に設けられた、主としてニッケルおよびクロムを含む薄膜層と、該シート状基材とが強固に密着し、耐久性に優れ、高い信頼性を有するフレキシブルプリント回路用基板を提供することができる。
本発明のフレキシブルプリント回路用基板は、芳香族ポリアミドからなるシート状基材、ニッケルおよびクロムを主として含む金属薄膜層および銅からなる薄膜層が順に積層されてなる。
本発明に用いるシート状基材は芳香族ポリアミドからなる。かかる芳香族ポリアミドとしては、例えば、次の構成単位からなる群から選択された単位により構成される。
−NH−Ar1−NH− (1)
−CO−Ar2−CO− (2)
−NH−Ar3−CO− (3)
ここでAr1、Ar2、Ar3は同一でも異なっていてもよく、いずれも少なくとも1個の芳香環を含む。かかる芳香環としては、炭素数6〜12で、スルホニル結合やエーテル結合を有していてもよい2価の炭化水素基、例えばp−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニレン基、4,4′−ジフェニレンエーテル、3,4′−ジフェニレンエーテル等を挙げることができる。これらの基の芳香環には、例えばハロゲン基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。これらの代表例としては上記式(1)及び(2)で表される単位からなるような、下記に示すものが挙げられる。すなわち、実質的に下記式(4)
−(−CO−Ar11−CONH−Ar21−NH−)− (4)
で表わされる繰り返し単位からなる芳香族ポリアミドが好適である。特にパラ配向性の芳香族ポリアミドが好ましい(ポリフェニレンテレフタルアミド、以下PPTAと言うことがある)。ここで、Ar11、Ar21はともにp−フェニレン基である。PPTAは、熱、湿度、外力に対して極めて寸法安定性の優れたシート状のもの(フィルム)が得られ、またこのフィルムは熱膨脹係数が極めて小さいため、寸法変化が小さく、全層薄膜を積層させたときに熱によってカーリング等の変形を生じにくいという優れた特性を有する。特に、25℃から250℃までの熱膨脹係数が(0〜15)ppm/℃であったり、250℃における熱収縮率が0.1%以下であったり、また25℃における吸湿膨脹係数が30ppm/%Rh以下であったり、25℃、50%RHにおける吸湿率が2.5重量%以下であるものは、フレキシブルプリント回路用基板のシート状基材として極めて有用である。これらの特性は複数有していてもよいことは言うまでもない。
本発明に用いられる芳香族ポリアミドには、本発明の目的、効果を損なわない限り、易滑剤、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、その他の添加剤などや改質剤、ならびに他のポリマーが含まれていてもよい。
本発明に用いられる芳香族ポリアミドの重合度は、あまり低いと機械的性質の良好なフィルムが得られなくなるため3.5以上、好ましくは4.5以上の対数粘度ηinh(硫酸100mlにポリマー0.5gを溶解して30℃で測定した値)を与える重合度のものが選ばれる。
芳香族ポリアミドからなるシート状基材の製造方法としては、芳香族ポリアミドが有機溶剤可溶のものの場合では、直接溶剤中で重合するか、一旦ポリマーを単離した後再溶解するなどして溶液とし、ついで乾式法または湿式法にて製膜することができる。また、PPTA等の有機溶剤に難溶のものについては、濃硫酸などに溶解して溶液とし、ついで乾湿式法または湿式法にて製膜できる。湿式法では、溶液はダイから直接凝固液中に押し出されるか、乾式と同様に金属ドラムまたはエンドレスベルト上にキャストされた後、凝固液中に導かれ、凝固される。ついでこれらのフィルムはフィルム中の溶剤や無機塩などを洗浄され、延伸、乾燥、熱処理などの処理を受ける。
具体的にPPTAからなるシート状基材の製法については、例えば特許第2664959号公報に記載された方法を用いることができる。
本発明における芳香族ポリアミドからなるシート状基材の厚さとしては、通常3〜25μm、好ましくは4〜12μmであり、PPTAのシート基材の場合は、特に薄いものを製造できるのでフレキシブルプリント回路用基板の用途には好適であり、4〜12μmのものが好ましい。
本発明のフレキシブルプリント回路用基板は、上記芳香族ポリアミドからなるシート状基材の上に、ニッケルとクロムの合金からなる薄膜層を形成させるが、それに際して、一般には該シート状基材面を脱脂、ごみ等除去のための一次的前処理を施してもよい。また必要によっては更にプラズマ処理、オゾン処理、例えばアルカリ水溶液を用いた化学的処理、除湿処理、熱処理などの二次的処理を行ってもよい。
本発明においては、ニッケルとクロムからなる金属薄膜層を積層させる芳香族ポリアミドからなるシート状基材の表面に、低周波コロナ放電、高周波コロナ放電等の方法を用いてコロナ放電処理を行う。これによって、ニッケルとクロムからなる合金金属薄膜層とシート状基材の層間の密着性が改善される。ここで、コロナ放電処理を行う際の放電量は、0.1W・min./m以上200W・min./m以下の範囲である。0.1W・min./m未満であると、実質コロナ放電処理の効果が得られ難い。また、200W・min./mを超えるとであると、設備上実用的ではない。好ましくは0.5〜100W・min./mの範囲であり、1〜80W・min./mの範囲の出力が実用上より有益である。
コロナ放電処理は、バッチ式でもよく、連続式でもよい。また、圧力は常圧でもよく、減圧してもよい。電極形状は一般的に棒状、山型、針状などがあり、これらは目的に応じて選択できる。さらには複数の組み合わせによる2回以上のコロナ放電処理を行っても良い。
本発明においては、前記ニッケルクロム合金からなる金属薄膜層の上に銅の薄膜層が形成されてなる。この銅薄膜層の形成方法としては、緻密で均質な膜を安定して生産できるという特徴から、スパッタリング法を使って行うことが好適である。該法におけるスパッタ製膜法は、真空熱蒸着法とかイオンプレーティング法とは異なり、低圧ガス中で加速させた荷電粒子をターゲットに照射し、ターゲット表面の原子、分子を反跳せしめてシート状基体面に薄膜状に沈着せしめる方法であり、荷電粒子の発生法の違いになどよって2極〜3極DCスパッタ、2極RFスパッタ、イオンビームスパッタ、マグネトロンスパッタの各方法がある。ニッケルークロム合金の場合にはいずれの方法でも用いることができるが、特にニッケルクロム合金に対しては、低温で高速のスパッタ蒸発が可能である直流マグネトロンスパッタリング法を用いることが望ましい。またターゲットにおける異常放電の影響を最小限に留める方法として数kHzないしは数十kHzの周波数で、かつスパッタ時のターゲットにおける電源電圧の数十%の電圧を交流電源で印加する方法を併用することも有用である。
例えば、直流マグネトロンスパッタリングは、一般に高純度のアルゴンガス雰囲気でその動作圧を5×10−4〜5×10−2Torrに調整し、直流電源によって電圧を印加することによって行う。現実に実用化されている装置としては、シリンドリカルタイプ、スパッタガンタイプ及びプレーナータイプがあるが、本発明における基材は芳香族ポリアミドのシートであり、これを平行に供給しつつ連続生産することが可能であることと、目的とする密着力確保のために十分な出力を保持しているがためにプレーナータイプが望ましい。
銅の薄膜層の厚さは、後工程(電解銅めっき等)に必要な導電性の点から検討して決めればよいが、大略50〜600nm、好ましくは100〜400nmである。50nmよりも薄いと銅の薄膜層上に後で銅層を形成するための電解メッキに必要なだけの導電性が十分に得られない。また600nmより厚くすることは、製膜時の応力を基材フィルムに多大に与えるがためにその取扱易さを損ねることがあり、またそれだけの膜厚で銅薄膜をスパッタリング製膜することは生産性の点でも有利とはいえない。
以上に説明するニッケルクロムを主成分とする金属薄膜層及び銅の薄膜層の形成は、シート状基材の両面にも同様に行うことができるので、この場合には両面フレキシブルプリント回路用基板として得られる。
そしてかかるフレキシブルプリント回路用基板は、銅からなる薄膜層の上にさらに電解めっき法あるいは無電解めっき法などによって銅めっき層が形成されプリント回路用の基板が提供される。
かくして得られたプリント回路用基板は、特にフレキシブルプリント回路基板として有効に使用されるが、そのためのプリント回路作成法は、一般の銅箔張りFPCの場合と特に差はない。つまり、印刷法、ドライフィルム法等によりエッチングレジスト膜を作製し、塩化第二鉄等で不必要な銅膜とニッケルクロム合金膜をエッチングして除去する工程、得られた銅回路を絶縁膜でマスキングする工程、端子を半田付けする工程、更には穴明け加工する工程などは同様に行われる。但し、銅箔とは異なり、銅層が薄いのでエッチングが早く、また平滑性にも優れる。従って回路パターンの再現性に極めて優れ、より微細回路が作製できるという大きなメリットがある。
以下本発明の実施例を述べるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[エッチング特性]
実施例において作製したプリント用基板を、JIS C−5016に基づいて作成したテストパターンの形状にマスキングし、40重量%濃度の塩化鉄水溶液を40℃に保持した状態で攪拌しながら非マスキング部分のエッチングを行った。非マスキング部分の銅層が目視にて除去を確認した後にさらに30秒エッチングし、マスク除去、洗浄の後、2電極間に500Vの直流電圧を印加し、フラッシュオーバーが無きことを以てエッチング特性良好とした。
[密着力の測定]
JIS C−5016(1994)に基づき、50mm/minの速度にて90度剥離の方法にて引きはがし強さの測定を行った。本規定に示す引きはがし強さを密着力とする。
[実施例1]
ポリマー基材として厚み9μmポリアミドフィルム「アラミカ」(帝人アドバンストフィルム社製:ポリパラフェニレンテレフタルアミド)を用い、該ポリアミドフィルムの表面を40kHzの高周波コロナ放電にて大気圧下、放電量30W・min./mで照射した。
続いて同系内において、アルゴンガス1×10−1Pa、13MHzの高周波スパッタリングスパッタリング製膜法により、金属薄膜層として20nmの厚みのクロム濃度7%のニッケルクロム合金からなる金属薄膜層を積層し、次いで該金属薄膜層上にスパッタリング方法によって200nmの厚みの銅薄膜層を形成した。さらにこの積層フィルムを硫酸銅水溶液下で電解めっきし上記銅薄膜層上に8μmの厚みの銅層を積層した。
この電解めっきについては、めっき液として銅含有量70g/リットル、硫酸含有量200g/リットル、の硫酸銅水溶液に、添加剤として塩化物イオン含有量50mg/リットル相当、奥野製薬工業(株)製「トップルチナ」SF−Mを標準規定量添加したものを用い、めっき装置として山本鍍金試験器(株)製4インチウェーハ用精密めっき装置を使用し、25℃の温度下で攪拌を行いながら、電流密度2A/dmにて電解めっきを行い、8μmの厚みになるまで銅の積層を行った。
こうして得られた芳香族ポリアミドからなるシート状基材と金属薄膜層の90度剥離力(密着力)は0.46N/mmであった。
本発明のフレキシブルプリント回路用基板は、耐久性に優れるので、高信頼性を有し、したがって、携帯電話や液晶用途等のフレキシブルプリント回路基板用の材料として極めて有用である。

Claims (1)

  1. 芳香族ポリアミドからなるシート状基材上にニッケルとクロムからなる合金を主成分とする金属薄膜層、および銅の薄膜層を有するフレキシブルプリント回路用基板であって、該シート状基材の該金属薄膜層と接している表面に、放電量が0.1W・min./m以上200W・min./m以下の範囲のコロナ放電処理が施されているフレキシブルプリント回路用基板。
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