以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU(Electronic Control Unit)で制御されるエンジンシステムの概略構成図を示す。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンであって、筒内に直接燃料を噴射する筒内噴射用インジェクタと吸気通路に燃料を噴射する吸気通路噴射用インジェクタとを有するエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではない。少なくとも筒内に直接燃料を噴射する筒内噴射用インジェクタを有するエンジンであれば本発明の適用は可能である。
図1に示すように、エンジン10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU300の出力信号に基づいてその開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90に連結されている。
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。また、各気筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されており、この燃料分配管130は燃料分配管130に向けて流通可能な逆止弁140を介して、機関駆動式の高圧燃料ポンプ150に接続されている。なお、本実施の形態においては、2つのインジェクタが別個に設けられた内燃機関について説明するが、本発明はこのような内燃機関に限定されない。たとえば、筒内噴射機能と吸気通路噴射機能とを併せ持つような1個のインジェクタを有する内燃機関であってもよい。
図1に示すように、高圧燃料ポンプ150の吐出側は電磁スピル弁152を介して高圧燃料ポンプ150の吸入側に連結されており、この電磁スピル弁152の開度が小さいときほど、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130内に供給される燃料量が増大され、電磁スピル弁152が全開にされると、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130への燃料供給が停止されるように構成されている。なお、電磁スピル弁152はエンジンECU300の出力信号に基づいて制御される。
より詳しくは、カムシャフトに取り付けられたカムによりポンププランジャーが上下することにより燃料を加圧する高圧燃料ポンプ150における、ポンプ吸入側に設けられた電磁スピル弁152を、加圧行程中に閉じるタイミングを、燃料分配管130に設けられた燃料圧センサ400を用いて、エンジンECU300でフィードバック制御することにより、燃料分配管130内の燃料圧力(燃圧)が制御される。すなわち、エンジンECU300により電磁スピル弁152を制御することにより、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130への供給される燃料量および燃料圧力が制御される。
一方、各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通する低圧側の燃料分配管160に接続されており、燃料分配管160および高圧燃料ポンプ150は共通の燃料圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ190を介して燃料タンク200に接続されている。燃料圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されており、したがって吸気通路噴射用インジェクタ120に供給されている燃料圧および高圧燃料ポンプ150に供給されている燃料圧が上記設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
エンジンECU300は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RAM(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力ポート350および出力ポート360を備えている。
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧は、A/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
燃料分配管130には燃料分配管130内の燃料圧に比例した出力電圧を発生する燃料圧センサ400が取付けられ、この燃料圧センサ400の出力電圧は、A/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧は、A/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧は、A/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、機関回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られる機関負荷率および機関回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
なお、サージタンク30内の圧力は、圧力センサ31にて検知される。サージタンク30内の圧力に比例した出力電圧を発生する圧力センサ31の出力電圧は、A/D変換器431を介して入力ポート350に入力される。
図2に、図1の部分拡大図を示す。図2は、図1の各気筒112における筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の位置関係、ならびにインテークマニホールド20、吸気バルブ122、排気バルブ121、点火プラグ119およびピストン123の位置関係を説明する図である。
インテークマニホールド20の燃焼室側には吸気バルブ122が設けられており、その吸気バルブ122の上流側に吸気通路噴射用インジェクタ120が配置されている。吸気通路噴射用インジェクタ120は、吸気通路であるインテークマニホールド20の内壁にに向けて燃料を噴射する。
また、このインテークマニホールド20には、スワールコントロールバルブなどであって、燃焼室内に渦流を形成するものが設けられない。このスワールコントロールバルブなどが設けられると、流量係数を低下せしめることになり、WOT時に必要十分な空気を燃焼室に流入させることができない。ところが、本実施の形態における内燃機関においては、流量係数を高くするようにして、高流量ポートを実現した。なお、高流量を実現できるのであれば、タンジェンシャル型(tangential type)の吸気ポートであってもよい。このタンジェンシャル型ポートは、吸気バルブ122の周辺で渦巻状となって左右に振れた形状とはならず、真っ直ぐに伸びて上下に大きく円弧を画いた先端部を有する。したがって吸気ポート内での流れに対する抵抗が小さく、吸気ポートの流量係数はスワールポートに比しはるかに大きくなり、エンジン10の体積効率が高くなり、多量の空気が燃焼室内に吸入することができるものである。
図2に示すように、ピストン123の頂部には、筒内噴射用インジェクタ110に対向する位置に緩やかな曲線から形成されるくぼみであるキャビティ123Cが設けられている。このキャビティ123Cに向けて筒内噴射用インジェクタ110から燃料が噴射される。このとき、筒内噴射用インジェクタ110に対向するピストン123の頂部は角部を有しないので、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成された噴霧が角部により分裂されることがない。このような分裂があると燃焼に悪影響を与えるローカルリッチ(ここでいうローカルリッチとは、点火プラグ119近傍以外でリッチな混合気が形成されることを意味する)の状態になる場合があり得るが、そのような状態になることを回避できる。なお、図2に示すように配置された筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との燃料分担比率の詳細については、後述する。
図2に示すように、ピストン123においては、ピストン123とコネクティングロッド(図示しない)とは、ピストンピン123Aで連結される。ピストン123には、このピストンピン123Aを収めるためのピストン・ピン・ボス部123Bが設けられる。
図3を参照して、このキャビティ123Cの詳細を説明する。図3は、キャビティ123Cを側面から見た図である。
図3に示すように、ピストン123をその側面側から見ると、キャビティ123Cの底面は、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料噴霧が当たって、その方向をシリンダ孔の軸心(点火プラグ119)側に向かうようになだらかな曲面を有する。さらに、図示しないが、ピストン123をその上面側から見た場合には、キャビティ123Cの最外周は、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料噴霧が当たって、その方向がシリンダ孔の軸心(点火プラグ119)側に向かうようになだらかな曲面を有している。このため、実線の矢印で示されるように、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される噴霧は、点火プラグ119近傍に集められる。
すなわち、図3に示すように、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される燃料噴霧がピストン123の頂面に当接する位置においては、角部を有さないキャビティ123Cが形成されている。そして、その形状は角部を有さないことに加えて、側面側も上面側も、キャビティ123Cから点火プラグ119近傍に燃料噴霧が向かうように設計されている。この燃料噴霧は、圧縮上死点において、点火プラグ119近傍に位置して、その後の膨張行程においても点火プラグ119近傍からそれほど分散することはない。こうすることにより、点火時期を大幅に遅角しても噴霧燃料を確実に着火させることができる。
なお、三元触媒コンバータ90の早期暖機することを目的として、大幅に点火時期を遅角させるために成層燃焼を行なうべく、このようなキャビティ123Cが設けられることに限定されるものではない。点火プラグ123C近傍に濃い混合気を集めて、その周りに薄い混合気を形成して弱成層燃焼を行なう場合にも、このような形状を有するキャビティ123Cにより燃料噴霧を点火プラグ119近傍に集めて、理想的な混合気を形成できる。このようにして、三元触媒コンバータ90を早期にかつ急速に暖機する場合をファーストアイドルと呼ばれる。このファーストアイドル時においては、点火時期を大きく遅角させて、三元触媒コンバータ90において燃料を後燃えさせることにより、三元触媒コンバータ90の温度を早期にかつ急速に上昇させることができる。
また、均質燃焼を行なう場合には、このようなキャビティ123Cにより、点火プラグ119近傍以外でリッチな混合気が形成されるローカルリッチになることを回避できる。
このように、図2に示す吸気通路および図3に示すキャビティ123Cの形状により、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料噴霧が点火プラグ近傍に向かうように設計されている。
しかしながら、吸気通路にデポジットが堆積すると、吸気流にタンブル渦(縦渦)が形成される傾向がある。吸気流にタンブル渦が形成されると、図3の点線の矢印で示されるように、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成された噴霧と、タンブル流とが衝突して、実線のように燃料噴霧を点火プラグ119近傍に集めないで、逆に拡散させてしまうことがある。このような状態では、成層燃焼も弱成層燃焼も安定して行なうことができない傾向になる。このため、本実施の形態に係るエンジン10を制御する制御装置であるエンジンECU300は、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期、点火プラグ119の点火時期、筒内噴射用インジェクタ110の燃料分担比率(DI比率rと記載する場合がある)を制御して、このようなタンブル流が発生している場合であっても、安定的な成層燃焼あるいは弱成層燃焼を実現することが特徴である。
以下、このような特徴について説明するが、その説明の前に、タンブル比の定義および算出方法について詳述する。
タンブル比Trの定義は、「エンジンシリンダ内に流入空気により生成された縦渦の角速度/エンジン回転数(角速度)」である。その計測方法は、図4および図5に示すように、シリンダヘッドからの吸気流動をヘッドと垂直方向に延びた管に引き込み、管内の渦により生成されるモーメントから角速度を算出する。それをエンジン回転数(角加速度)で除算することにより求める。他には、羽根車から回転速度を算出したり、空気流動を実測して角速度を算出している。
なお、図5に示すように、エンジン燃焼室断面において、インテークマニホールドからエキゾーストマニホールド〜ピストン側へ向かう流れを正方向の流れとする。詳しくは、エンジン燃料室断面の側面視において、右にインテークマニホールド、左にエキゾーストマニホールドを見て、反時計周りを縦渦の正方向とする。
図6〜図10を参照して、本実施の形態に係るエンジン10の制御装置であるエンジンECU300のROM320またはRAM330に記憶される各種マップについて説明する。
図6に、エアフローメータ42により検知された吸気流量と圧力センサ31により検知されたサージタンク30内の圧力(サージタンク内圧力)との関係を示す。図6に示す関係は、インテークマニホールド20(吸気通路)にデポジットが堆積すると、同じエアーフローメータ流量に対して、サージタンク30内の圧力がデポジットの堆積量に応じて上昇することを示している。すなわち、図6の太線が吸気通路(吸気ポート)にデポジットが堆積していない場合を示し、細線が吸気通路(吸気ポート)にデポジットが堆積している場合を示している。エンジンECU300は、図6に示すデポジットの有無により生じる圧力変化delpを算出して、その圧力変化delpに基づいて、タンブル比estrを推定する。なお、図6に示すこれらの関係は、たとえば、予め実験的または模擬的に算出することによりマップを作成して、このマップがエンジンECU300内に記憶されている。
図7に、デポジットの有無により生じる圧力変化delpと、推定されるタンブル比estrとの関係を示す。図7に示すように、デポジットが多く堆積するほど、圧力変化delpが大きくなり、圧力変化delpが大きくなるほど、タンブル比estrが大きな値に推定される。図7における初期とは、吸気流に発生するタンブル流が、弱成層燃焼や成層燃焼に影響しない時点を示している。この初期状態よりもさらにデポジットが堆積してタンブル比が上昇すると、弱成層燃焼や成層燃焼に影響を与えだすので、後述するように、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期や点火プラグ119の点火時期や筒内噴射用インジェクタ110の分担比率を制御して、燃焼の安定化を実現する。なお、図7に示すこれらの関係も、たとえば、予め実験的または模擬的に算出することによりマップを作成して、このマップがエンジンECU300内に記憶されている。
図8に、推定されたタンブル比estrと、要求直噴比率(全燃料量に対する筒内噴射用インジェクタ110から噴射される燃料量の比率であるDI比率r)との関係を示す。タンブル比estrが大きくなるほど(タンブル比が大きくなり縦渦が大きくなるほど)要求されるDI比率rが大きくなり、吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射される燃料よりも筒内噴射用インジェクタ110から噴射される燃料が多くなる。これは、縦渦が大きくなるほど、タンブル流と筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される噴霧との衝突が激しくなり、より拡散される。このため、点火プラグ119近傍の混合気がよりリーンになりやすい傾向があるので、筒内噴射用インジェクタ110から噴射される燃料の比率を高めて、筒内噴射用インジェクタ110から噴射される燃料量自体を多くして、タンブル比が高くなって点火プラグ119近傍がリーンになる傾向を抑制している。なお、図8に示すこれらの関係も、たとえば、予め実験的または模擬的に算出することによりマップを作成して、このマップがエンジンECU300内に記憶されている。
図9に、推定されたタンブル比estrと、要求噴射時期(筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期)との関係を示す。タンブル比estrが大きくなるほど(タンブル比が大きくなり縦渦が大きくなるほど)進角側への変化量が少なくなるようにされる。すなわち、タンブル比estrが大きくなるほど、要求される噴射時期が、圧縮上死点手前から圧縮上死点近くになるように遅らされる。これは、縦渦が大きくなるほど、タンブル流と筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される噴霧との衝突が激しくなり、より拡散される。しかしながら、このタンブル流の影響は、時間の経過にしたがって小さくなる。すなわち、吸気バルブ122を閉じてから圧縮行程に入り、その後の時間の経過にしたがって、吸気バルブ122を閉じられているので吸気流がさらに燃焼室に加えられることがなく、吸気流の速度ベクトルの大きさも、その中のタンブル流を形成するベクトル成分の大きさも次第に低下する。このため、点火プラグ119近傍の混合気がよりリーンになりやすい傾向は、圧縮行程の後期になるほど(圧縮上死点に近づくほど)、低下するので、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期をできるだけ遅くする(進角量を減少させる)。これにより、たとえタンブル比が大きくなって、縦渦の影響が大きくなることにより噴射された燃料により形成される噴霧と吸気流との衝突による拡散の影響を、燃料の噴射時期を遅らせて抑制している。なお、図9に示すこれらの関係も、たとえば、予め実験的または模擬的に算出することによりマップを作成して、このマップがエンジンECU300内に記憶されている。
図10に、推定されたタンブル比estrと、要求点火時期(点火プラグ119による点火時期)との関係を示す。タンブル比estrが大きくなるほど(タンブル比が大きくなり縦渦が大きくなるほど)進角側への変化量が少なくなるようにされる。すなわち、タンブル比estrが大きくなるほど、要求される点火時期が、圧縮上死点直後から圧縮上死点からより後ろ側になるように遅らされる。これは、図9に示したように、縦渦が大きくなるほど、タンブル流と筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される噴霧との衝突が激しくなり、より拡散される影響を、燃料の噴射時期を遅らせて抑制しているため、この燃料噴射時期を遅らせることに対応して点火時期も遅らせるものである。なお、図10に示すこれらの関係も、たとえば、予め実験的または模擬的に算出することによりマップを作成して、このマップがエンジンECU300内に記憶されている。
図11を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU300で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、このフローチャートは、予め定められた計算時間サイクルや、予め定められたエンジン10のクランク角度の時に実行される。
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、エンジンECU300は、エアフローメータ42からの信号を用いて、吸気流量を検知する。S200にて、エンジンECU300は、サージタンク30内の圧力を検知する圧力センサ31からの信号を用いて、サージタンク30内の圧力を検知して、このようなサージタンク30内の圧力の検知に基づいてサージタンク30内の圧力変化delpを検知する。このとき、吸気ポートのデポジットの有無で、図6に示すような圧力変化delpが発生する。
S300にて、エンジンECU300は、サージタンク30内の圧力変化delpと、図7に示すマップとに基づいて、タンブル比estrを推定する。
S400にて、エンジンECU300は、推定されたタンブル比estrと、図8に示すマップとに基づいて、全燃料量に対する筒内噴射用インジェクタ110の要求燃料量の比率である要求直噴比率(DI比率r)を算出する。
S500にて、エンジンECU300は、推定されたタンブル比estrと、図9に示すマップとに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期である要求噴射時期を算出する。
S600にて、エンジンECU300は、推定されたタンブル比estrと、図10に示すマップとに基づいて、点火プラグ119の点火時期である要求点火時期を算出する。
なお、上述したフローチャートは、S400、S500およびS600の3つの処理を実行するものであるが、S400を実行してS500およびS600を実行しないようなフローチャートであっても、S500およびS600を実行してS400を実行しないようなフローチャートであってもよい。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU300で制御されるエンジン10の動作について説明する。
冷間時においてエンジン10が始動されると、吸気通路も冷えており、吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射された燃料や、吸気通路に存在するオイルにより、吸気ポートにデポジットが堆積していることがある。このような場合には、このデポジットにより吸気が乱れて縦渦流(タンブル流)が発生していることがある。
吸気通路を介して吸入される吸気流量がエアフローメータ42からの信号を用いて検知される(S100)とともに、サージタンク30内の圧力が検知され、図6に示すようなマップに基づいて、サージタンク30内における圧力変化delpが検知される(S200)。吸気ポートにデポジットが堆積しているほど、大きなサージタンク30内における圧力変化delpが検知される。このサージタンク30内における圧力変化delpと図7のマップとに基づいてタンブル比estrが推定される(S300)。
吸気ポートに多くのデポジットが堆積しているほど、サージタンク30内における圧力変化delpが大きく検知され、サージタンク30内における圧力変化delpが大きいほどタンブル比estrが大きく推定される。推定されたタンブル比estrに基づいて、全燃料量に対する筒内噴射用インジェクタ110の要求燃料量の比率である要求直噴比率(DI比率r)が算出される(S400)。
推定されたタンブル比estrに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期である要求噴射時期が算出され(S500)、推定されたタンブル比estrに基づいて、点火プラグ119の点火時期である要求点火時期が算出される(S600)。
このように、タンブル比を推定して、タンブル比が大きいほど、DI比率rを大きく、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を遅らせて、点火時期を遅らせるように、DI比率r、噴射時期および点火時期の要求値が算出される。このため、タンブル比estrが大きく、大きなタンブル流(縦渦)が発生していても、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射分担率を上昇させてより多くの割合の燃料を筒内噴射用インジェクタ110から噴射して、その噴射時期をできるだけ遅らせて(たとえば圧縮上死点直前まで)、点火プラグ119による点火時期をできるだけ遅らせて(たとえば圧縮上死点直後よりもさらに遅くまで)、タンブル流の影響を燃料噴霧が受けないようにして、できるだけ点火プラグ119近傍に、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成された噴霧が集まるようにできる。
図12に示すように、従来においては、吸気ポートに堆積したデポジットに起因して発生するタンブル流により、筒内噴射用インジェクタから噴射された燃料により形成された燃料噴霧を点火プラグ119近傍に集めることができないで、タンブル比が大きくなると燃焼変動が大きくなってトルク変動も大きくなっていた。本発明においては、タンブル比が大きくなっても、DI比率を高めたり、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期および点火プラグ119の点火時期を遅らせることにより、タンブル流による影響を少なくして、燃焼を安定化させて、トルク変動を抑制できる。
また、図13に示すように、従来においては、吸気ポートに堆積したデポジットに起因して発生するタンブル流により、筒内噴射用インジェクタから噴射された燃料により形成された燃料噴霧を点火プラグ119近傍に集めることができないで、燃焼しないで排出される未燃焼分のHC(THC)も大きくなりエミッションが悪化していた。本発明においては、タンブル比が大きくなっても、DI比率を高めたり、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期および点火プラグ119の点火時期を遅らせることにより、タンブル流による影響を少なくして、未燃焼分のHC(THC)を抑制して、エミッションの悪化を抑制できる。
以上のようにして、吸気通路にデポジットが堆積すると、燃焼室内に縦渦流が発生して、筒内噴射用インジェクタから噴射された燃料による燃料噴霧を点火プラグ近傍に集めることができなくて弱成層燃焼や成層燃焼が困難になる。このような傾向を、エアフローメータにより検知された吸気流量とサージタンク内圧力の変化とからタンブル比を推定してタンブル比が上昇すると、DI比率r、燃料噴射時期および点火時期を制御して、タンブル比の上昇の影響を抑制するようにした。その結果、少なくとも筒内に直接燃料を噴射する燃料噴射手段を有するエンジンにおいて、吸気流が渦流成分を有するように変動した場合であっても安定的な燃焼、および排気エミッションの悪化の抑制を実現することができる。
なお、スロットルバルブ70の開度とエアフローメータ42により検知された流量とに基づいて、タンブル比estrを推定するようにしてもよい。また、図8〜図10に示したようなマップを用いるのではなく、数式を用いて、推定されたタンブル比estrから筒内噴射用燃料噴射弁110の燃料分担比率(DI比率r)、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射時期、点火プラグ119の点火時期を算出するようにしてもよい。
また、吸気通路にデポジットが堆積すると、燃焼室内に縦渦流が発生して、タンブル比が上昇することについて説明したが、タンブル比が下降した場合には、上述とは制御量を逆にすることで対応できることを確認的に記載しておく。
<この制御装置が適用されるに適したエンジン(その1)>
以下、本実施の形態に係る制御装置が適用されるに適したエンジン(その1)について説明する。
図14および図15を参照して、エンジン10の運転状態に対応させた情報である、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率(以下、DI比率(r)とも記載する。)を表わすマップについて説明する。これらのマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図14は、エンジン10の温間用マップであって、図15は、エンジン10の冷間用マップである。
図14および図15に示すように、これらのマップは、エンジン10の回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率がDI比率rとして百分率で示されている。
図14および図15に示すように、エンジン10の回転数と負荷率とに定まる運転領域ごとに、DI比率rが設定されている。「DI比率r=100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味し、「DI比率r=0%」とは、吸気通路噴射用インジェクタ120からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味する。「DI比率r≠0%」、「DI比率r≠100%」および「0%<DI比率r<100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料噴射が分担して行なわれる領域であることを意味する。なお、概略的には、筒内噴射用インジェクタ110は、出力性能の上昇に寄与し、吸気通路噴射用インジェクタ120は、混合気の均一性に寄与する。このような特性の異なる2種類のインジェクタを、エンジン10の回転数と負荷率とで使い分けることにより、エンジン10が通常運転状態(たとえば、アイドル時の触媒暖気時が、通常運転状態以外の非通常運転状態の一例であるといえる)である場合には、均質燃焼のみが行なわれるようにしている。
さらに、これらの図14および図15に示すように、温間時のマップと冷間時のマップとに分けて、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120のDI分担率rを規定した。エンジン10の温度が異なると、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が異なるように設定されたマップを用いて、エンジン10の温度を検知して、エンジン10の温度が予め定められた温度しきい値以上であると図14の温間時のマップを選択して、そうではないと図15に示す冷間時のマップを選択する。それぞれ選択されたマップに基づいて、エンジン10の回転数と負荷率とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。
図14および図15に設定されるエンジン10の回転数と負荷率について説明する。図14のNE(1)は2500〜2700rpmに設定され、KL(1)は30〜50%、KL(2)は60〜90%に設定されている。また、図15のNE(3)は2900〜3100rpmに設定されている。すなわち、NE(1)<NE(3)である。その他、図14のNE(2)や、図15のKL(3)、KL(4)も適宜設定されている。
図14および図15を比較すると、図14に示す温間用マップのNE(1)よりも図15に示す冷間用マップのNE(3)の方が高い。これは、エンジン10の温度が低いほど、吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が高いエンジン回転数の領域まで拡大されるということを示す。すなわち、エンジン10が冷えている状態であるので、(たとえ、筒内噴射用インジェクタ110から燃料を噴射しなくても)筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しにくい。このため、吸気通路噴射用インジェクタ120を使って燃料を噴射する領域を拡大するように設定され、均質性を向上させることができる。
図14および図15を比較すると、エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいてはKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいてはKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。すなわち、高回転領域や高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射しても、エンジン10の回転数や負荷が高く吸気量が多いので筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすいためである。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
図14に示す温間マップでは、負荷率KL(1)以下では、筒内噴射用インジェクタ110のみが用いられる。これは、エンジン10の温度が高いときであって、予め定められた低負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。これは、温間時においてはエンジン10が暖まった状態であるので、筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しやすい。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110を使って燃料を噴射することにより噴口温度を低下させることができるので、デポジットの堆積を回避することも考えられ、また、筒内噴射用インジェクタの最小燃料噴射量を確保して、筒内噴射用インジェクタ110を閉塞させないことも考えられ、このために、筒内噴射用インジェクタ110を用いた領域としている。
図14および図15を比較すると、図15の冷間用マップにのみ「DI比率r=0%」の領域が存在する。これは、エンジン10の温度が低いときであって、予め定められた低負荷領域(KL(3)以下)では吸気通路噴射用インジェクタ120のみが使用されるということを示す。これはエンジン10が冷えていてエンジン10の負荷が低く吸気量も低いため燃料が霧化しにくい。このような領域においては筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射では良好な燃焼が困難であるため、また、特に低負荷および低回転数の領域では筒内噴射用インジェクタ110を用いた高出力を必要としないため、筒内噴射用インジェクタ110を用いないで、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを用いる。
また、通常運転時以外の場合、エンジン10がアイドル時の触媒暖気時の場合(非通常運転状態であるとき)、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような触媒暖気運転中にのみ成層燃焼させることで、触媒暖気を促進させ、排気エミッションの向上を図る。
<この制御装置が適用されるに適したエンジン(その2)>
以下、本実施の形態に係る制御装置が適用されるに適したエンジン(その2)について説明する。なお、以下のエンジン(その2)の説明において、エンジン(その1)と同じ説明については、ここでは繰り返さない。
図16および図17を参照して、エンジン10の運転状態に対応させた情報である、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率を表わすマップについて説明する。これらのマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図16は、エンジン10の温間用マップであって、図17は、エンジン10の冷間用マップである。
図16および図17を比較すると、以下の点で図14および図15と異なる。エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいては低回転数領域を除くKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいては低回転数領域を除くKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用される領域が多いことを示す。しかしながら、低回転数領域の高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される混合気のミキシングが良好ではなく、燃焼室内の混合気が不均質で燃焼が不安定になる傾向を有する。このため、このような問題が発生しない高回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタの噴射比率を増大させるようにしている。また、このような問題が発生する高負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させるようにしている。これらのDI比率rの変化を図16および図17に十字の矢印で示す。このようにすると、燃焼が不安定であることに起因するエンジンの出力トルクの変動を抑制することができる。なお、これらのことは、予め定められた低回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させることや、予め定められた低負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を増大させることと、略等価であることを確認的に記載する。また、このような領域(図16および図17で十字の矢印が記載された領域)以外の領域であって筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射している領域(高回転側、低負荷側)においては、筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすい。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
なお、図14〜図17を用いて説明したこのエンジン10においては、均質燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程とすることにより、成層燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることにより実現できる。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることで、点火プラグ周りにリッチ混合気が偏在させることにより燃焼室全体としてはリーンな混合気に着火する成層燃焼を実現することができる。また、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程としても点火プラグ周りにリッチ混合気を偏在させることができれば、吸気行程噴射であっても成層燃焼を実現できる。
また、ここでいう成層燃焼には、成層燃焼と以下に示す弱成層燃焼の双方を含むものである。弱成層燃焼とは、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程で燃料噴射して燃焼室全体にリーンで均質な混合気を生成して、さらに筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程で燃料噴射して点火プラグ周りにリッチな混合気を生成して、燃焼状態の向上を図るものである。このような弱成層燃焼は触媒暖気時に好ましい。これは、以下の理由による。すなわち、触媒暖気時には高温の燃焼ガスを触媒に到達させるために点火時期を大幅に遅角させ、かつ良好な燃焼状態(アイドル状態)を維持する必要がある。また、ある程度の燃料量を供給する必要がある。これを成層燃焼で行なおうとしても燃料量が少ないという問題があり、これを均質燃焼で行なおうとしても良好な燃焼を維持するために遅角量が成層燃焼に比べて小さいという問題がある。このような観点から、上述した弱成層燃焼を触媒暖気時に用いることが好ましいが、成層燃焼および弱成層燃焼のいずれであっても構わない。
また、図14〜図17を用いて説明したエンジンにおいては、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、以下のような理由により、圧縮行程で行なうことが好ましい。ただし、上述したエンジン10は、基本的な大部分の領域には(触媒暖気時にのみに行なわれる、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程噴射させ、筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程噴射させる弱成層燃焼領域以外を基本的な領域という)、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、吸気行程である。しかしながら、以下に示す理由があるので、燃焼安定化を目的として一時的に筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程噴射とするようにしてもよい。
筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮行程中とすることで、筒内温度がより高い時期において、燃料噴射により混合気が冷却される。冷却効果が高まるので、対ノック性を改善することができる。さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮行程中とすると、燃料噴射から点火時期までの時間が短いことから噴霧による気流の強化を実現でき、燃焼速度を上昇させることができる。これらの対ノック性の向上と燃焼速度の上昇とから、燃焼変動を回避して、燃焼安定性を向上させることができる。
さらに、温間時および冷間時のいずれの場合であっても、図14または図16に示すマップを用いて、吸気通路噴射用インジェクタ120のみで燃料を噴射する領域(DI比率r=0%)の領域がないものであってもよい。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110が噴射していない領域が存在しないことを示す。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 エンジン、20 インテークマニホールド、30 サージタンク、31 圧力センサ、40 吸気ダクト、42 エアフローメータ、50 エアクリーナ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド、90 三元触媒コンバータ、100 アクセルペダル、110 筒内噴射用インジェクタ、112 気筒、120 吸気通路噴射用インジェクタ、130 燃料分配管、140 逆止弁、150 高圧燃料ポンプ、152 電磁スピル弁、160 燃料分配管(低圧側)、170 燃料圧レギュレータ、180 低圧燃料ポンプ、190 燃料フィルタ、200 燃料タンク、300 エンジンECU、310 双方向性バス、320 ROM、330 RAM、340 CPU、350 入力ポート、360 出力ポート、370,390,410,430,431,450 A/D変換器、380 水温センサ、400 燃料圧センサ、420 空燃比センサ、440 アクセル開度センサ、460 回転数センサ。