JP2006287069A - 半導体装置の製造方法、および電子機器の製造方法 - Google Patents

半導体装置の製造方法、および電子機器の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単にチャネル長を短くし、かつ、製造コストを低減することができる半導体装置の製造方法、および、かかる製造方法を用いた電子機器の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1の物質を溶媒に溶解または分散媒に分散した第1の液体の液滴70を基板48上に付与する工程と、基板48上に付与された液滴70における第1の部分とこれとは異なる第2の部分とに温度差を生じさせつつ、液滴70から溶媒または分散媒を除去することにより、基板48上の第2の部分側に第1の物質を偏在させて第1の膜75を形成する工程と、第2の物質を主材料として構成された第2の膜を基板48上で第1の膜75により2つの部分に分割されるようにして形成して、第2の膜の2つの部分のうち、一方の部分をトランジスタのソース電極とするとともに、他方の部分をドレイン電極とする工程とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体装置の製造方法、および電子機器の製造方法に関するものである。
MOSトランジスタなどの薄膜トランジスタの開発においては、いかにして動作速度の高速化を図るかが重要な技術課題となっている。図10は、一般的なMOSトランジスタ1の構成を示す図である。MOSトランジスタ2001は、例えばガラス基板2002の上に形成されるものであり、半導体膜2003、絶縁膜2004、ゲート絶縁膜2005、ゲート電極2006、ソース電極2007、ドレイン電極2008、絶縁膜2009を含んで構成されている。
かかるMOSトランジスタ2001においては、ゲート電極2006の直下のチャネル領域の距離(図10に示すチャネル長Lc)が短ければ、それだけ動作速度が高速化されることになる。
このような動作速度の高速化を実現するために、従来はフォトリソグラフィ技術を利用して、短いチャネル長を実現していた(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、フォトリソグラフィ技術を用いた場合には、歩留まりが悪く、また、高価な露光装置等が必要となるために高コスト化を招く等の問題が生じる。さらに、基板全面にレジスト材料等を塗布した後に大部分を削り取るためムダになる材料が多く、これによっても高コスト化を招くといった問題があった。
特開2002−76358号公報
本発明の目的は、簡単にチャネル長を短くし、かつ、製造コストを低減することができる半導体装置の製造方法、および、かかる製造方法を用いた電子機器の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の半導体装置の製造方法は、第1の物質を溶媒に溶解または分散媒に分散した第1の液体の液滴を基板上に付与する工程と、
前記基板上に付与された前記第1の液体の液滴における第1の部分とこれとは異なる第2の部分とに温度差を生じさせつつ、前記第1の液体の液滴から溶媒または分散媒を除去することにより、前記基板上の前記第2の部分側に前記第1の物質を偏在させて第1の膜を形成する工程と、
第2の物質を主材料として構成された第2の膜を前記基板上で前記第1の膜により2つの部分に分割されるようにして形成し、前記第2の膜の前記2つの部分のうち、一方の部分をトランジスタのソース電極とするとともに、他方の部分をドレイン電極とする工程とを有することを特徴とする。
本発明にあっては、第1の膜を形成するに際し、基板上の第1の液体の液滴内に、第1の部分では第1の物質が流動し、第2の部分では第1の物質が析出または凝集するような対流を生じさせ、第2の部分側に第1の物質を偏在させることができる。その結果、第1の膜の幅を、基板上に付与された第1の液体の液滴の幅よりも極めて小さくし、第1の膜の幅に対応して、ソース電極とドレイン電極との間の距離、すなわちチャネル長を設定することができる。そのため、簡単に、チャネル長を短くすることができる。
また、第1の膜を形成するに際し、基板上に付与する第1の液体の液滴の幅を小さくしなくても、第1の膜の幅を小さくすることができるため、フェムトリットルインクジェット装置のような描画速度の遅い装置を用いる必要がない。そのため、半導体装置の製造工程に要する時間を短縮することができ、その結果、半導体装置の製造コストを低減することができる。
また、フォトレジスト等を用いることなく、チャネル長を短くすることができるので、この点でも、半導体装置の低コスト化を図ることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第2の膜を形成するに際して、前記第2の物質を溶媒に溶解または分散媒に分散した第2の液体を前記第1の膜に重なるように前記基板上に付与し、前記第2の液体から溶媒または分散媒を除去することにより、前記第1の膜の両側のそれぞれで、前記第2の物質を析出または凝集させて前記第2の膜を形成することが好ましい。
これにより、フォトレジストや現像液、剥離液等の化学薬品や、酸素プラズマ、CFプラズマなどのプラズマ処理を用いることなく、第2の膜を形成することができる。そのため、基板や基板上の各種材料の変質や劣化を確実に防止することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第1の部分および前記第2の部分は、前記第1の液体の液滴の周縁側部に位置していることが好ましい。
これにより、基板上の第1の液体の液滴内に好適な対流を生じさせ、第2の部分側に第1の物質をより確実に偏在させることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記基板に前記第1の液体の液滴を付与するに際して、前記第1の液体の液滴は前記基板に沿って線状をなしており、前記線状の第1の液体の液滴の幅方向での端部のうち、一端部を前記第1の部分とし、他端部を前記第2の部分とすることが好ましい。
これにより、線状の第1の液体の液滴の幅方向での他端部に沿って、第1の膜を形成することができる。そのため、第1の膜の幅をより確実かつ簡単に小さくすることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第1の膜を形成するに際して、前記第1の部分の温度が前記第2の部分の温度よりも高いことが好ましい。
これにより、基板上の第1の液体の液滴内に好適な対流を生じさせ、第2の部分側に第1の物質をより確実に偏在させることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第1の膜を形成するに際して、前記第1の部分を加熱することが好ましい。
これにより、基板上の第1の液体の液滴内に好適な対流を生じさせ、第2の部分側に第1の物質をより確実に偏在させることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第1の膜を形成するに際して、前記第2の部分を冷却することが好ましい。
これにより、基板上の第1の液体の液滴内に好適な対流を生じさせ、第2の部分側に第1の物質をより確実に偏在させることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第2の膜を形成した後に、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に半導体層を形成する工程と、前記半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記半導体層に対応する前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを有することが好ましい。
これにより、基板上に薄膜トランジスタを製造することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第2の膜を形成した後に、前記半導体層を形成するに先立ち、前記第1の膜を除去して、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に間隙を形成する工程を有し、前記間隙を埋めるように前記半導体層を形成することが好ましい。
これにより、第1の物質と、半導体層の構成材料とのそれぞれに最も適した材料を選択することができる。その結果、より確実にチャネル長を小さくするとともに、より優れた特性を有する薄膜トランジスタを得ることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第1の物質は、半導体材料であり、前記第2の膜を形成した後に、前記第1の膜は、除去されずに、前記半導体層の一部を構成することが好ましい。
これにより、より確実に、チャネル長を小さくするとともに、薄膜トランジスタの製造工程の簡略化を図ることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第1の物質は、半導体材料であり、前記第1の膜が半導体層を構成し、前記第2の膜を形成した後に、前記第1の膜を除去することなく、前記半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記半導体層に対応する前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを有することが好ましい。
これにより、より確実に、チャネル長を小さくするとともに、薄膜トランジスタの製造工程をより簡略化することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記第1の部分に第1の温度を付与する第1の温度供給部と、前記第2の部分に前記第1の温度と異なる第2の温度を付与する第2の温度供給部との間に、前記第1の液体の液滴が付与された前記基板を渡すことにより、前記温度差を生じさせることが好ましい。
これにより、比較的簡単な工程で、第1の部分と第2の部分とに温度差を生じさせることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記基板に前記第1の液体の液滴を付与した直後における前記基板に対する前記第1の液体の液滴の静的接触角は、20〜50°であることが好ましい。
これにより、基板上に第1の液体の液滴を付与する際に、当該液滴の形状を所望のものとしつつ、第2の部分側に第1の物質をより確実に偏在させることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記基板に前記第1の液体の液滴を付与した直後における前記基板に対する前記第1の液体の液滴の後退接触角は、前記第1の物質が前記第2の部分に偏在を開始する時点における前記基板に対する前記第1の液体の液滴の静的接触角より小さいことが好ましい。
これにより、基板上に第1の液体の液滴を付与する際に、当該液滴の形状を所望のものとしつつ、第2の部分側に第1の物質をより確実に偏在させることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、基板上に付与された前記第1の液体の液滴は複数であり、複数の液滴は、隣接する液滴同士の第1の部分と第2の部分とを対向させるように前記基板上に配列されており、前記複数の液滴の配列方向における前記基板の一端部と他端部とで温度差を生じさせることにより、前記複数の液滴に対し一括して前記温度差を生じさせることが好ましい。
これにより、基板上に第1の液体の液滴を複数形成し、それぞれを第1の膜とする場合であっても、比較的簡単な工程で、各液滴にて第1の部分と第2の部分とに温度差を生じさせることができる。
本発明の電子機器の製造方法は、本発明の半導体装置の製造方法を用いて、電子機器を製造することを特徴とする。
これにより、簡単にチャネル長を短くすることができ、かつ、製造コストを低減することができる。
以下、本発明の半導体装置の製造方法、および、かかる製造方法を用いた電子機器の製造方法を説明する。
<半導体装置>
まず、本発明の半導体装置の製造方法の説明に先立ち、かかる製造方法により製造される半導体装置を説明する。なお、以下では、半導体装置の一例としてアクティブマトリクス装置を説明する。
図1は、本実施形態にかかるアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図であり、図2は、本実施形態のアクティブマトリクス装置が備える薄膜トランジスタの構成を示す図(縦断面図および平面図)である。なお、以下の説明では、図2中上側を「上」、下側を「下」として説明する。
図1に示すアクティブマトリクス装置100は、基板48と、いずれも基板48上に設けられ、互いに直交する複数のデータ線101および複数の走査線102と、これらのデータ線101と走査線102との各交点付近に設けられた薄膜トランジスタ1および画素電極103とを有している。
図2に示すように、本実施形態の薄膜トランジスタ1は、トップゲート型の薄膜トランジスタであり、基板48上に、互いに分離して設けられたソース電極76aおよびドレイン電極76bと、ソース電極76aおよびドレイン電極76bに接触して設けられた半導体層78と、ソース電極76a、ドレイン電極76bおよび半導体層78を覆うように設けられたゲート絶縁膜79と、半導体層78に対応するゲート絶縁膜79上に設けられたゲート電極80とを有している。
このような薄膜トランジスタ1では、ゲート電極80が走査線102に、ソース電極76aがデータ線101に、ドレイン電極76bが画素電極(個別電極)103に、それぞれ接続されている。
このようなアクティブマトリクス装置100では、ソース電極76aとドレイン電極76bの間の距離(離間距離)、すなわち、チャネル長Wは、リーク電流やトンネル電流が顕著にならない範囲であれば短いほど好ましい。チャネル長Wがより小さいほうが、より大きなドレイン電流を制御でき、さらに、ゲート電極80の容量をより小さくできる。しかしながら、チャネル長Wを小さくしすぎると、ソース電極76aとドレイン電極76b間におけるリーク電流やトンネル電流の影響により期待する効果に届かないこともある。一方、チャネル長Wを大きくしすぎると、ドレイン電流の値が小さくなり、薄膜トランジスタ1の特性が不十分となるおそれがある。
チャネル幅Lは、0.1〜5mm程度であるのが好ましく、0.3〜3mm程度であるのがより好ましい。チャネル幅Lを前記下限値より小さくすると、ドレイン電流の値が小さくなり、薄膜トランジスタ1の特性が不十分となるおそれがある。一方、チャネル幅Lを前記上限値より大きくすると、薄膜トランジスタ1が大型化してしまうとともに、寄生容量の増大や、ゲート絶縁膜79を介したゲート電極80へのリーク電流の増大を招くおそれがある。
このようなアクティブマトリクス装置100は、次のようにして製造することができる。
<半導体装置の製造方法>
以下、本発明の半導体装置の製造方法の一例としてアクティブマトリクス装置100の製造方法を説明する。
以下では、薄膜トランジスタ1の製造方法を中心に説明する。
本実施形態における薄膜トランジスタ1の製造方法は、第1の物質を溶媒に溶解または分散媒に分散した第1の液体の液滴を基板48上に付与する工程(以下、第1の液滴付与工程という)と、第1の液体の液滴を乾燥することにより基板48上に第1の物質を析出または凝集させて第1の膜を形成する工程(以下、第1の膜形成工程という)と、基板48上で第1の膜を挟むようにしてトランジスタのソース電極76aおよびドレイン電極76bを形成する工程(以下、ソース電極およびドレイン電極形成工程という)と、第1の膜を除去する工程(以下、第1の膜除去工程という)と、ソース電極76aとドレイン電極76bとの間の間隙に半導体層78を形成する工程(以下、半導体層形成工程という)と、半導体層78上にゲート絶縁膜79を形成する工程(以下、ゲート絶縁膜形成工程という)と、ゲート絶縁膜79上にゲート電極80を形成する工程(以下、ゲート電極形成工程という)とを有する。
以下、図3ないし図7を参照しつつ、各工程について順次説明する。
図3は、本実施形態のアクティブマトリクス装置100(半導体装置)の製造方法における第1の液滴付与工程および第1の膜形成工程を説明するための図(平面図および断面図)、図4は、第1の液滴付与工程を詳細に説明するための図、図5は、第1の液滴付与工程に用いる液滴吐出装置の概略構成を示す図、図6は、図5に示す液滴吐出装置のヘッド部の概略構成を示す図、図7および図8は、本実施形態のアクティブマトリクス装置100(半導体装置)の製造方法におけるソース電極およびドレイン電極形成工程、第1の膜除去工程、半導体層形成工程、ゲート絶縁膜形成工程、およびゲート電極形成工程を説明するための図である。なお、以下の説明に用いる各図面では、説明の便宜上、各部の縮尺を適宜変更している。
[A1]第1の液滴付与工程
本工程では、第1の物質を溶媒に溶解または分散媒に分散した第1の液体を用いて、図3(a)に示すように、基板48上に線状の液滴70を形成する。
より具体的には、まず、基板48を用意する。
基板48には、例えば、ガラス基板、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。薄膜トランジスタに可撓性を付与する場合には、基板48には、樹脂基板が選択される。
なお、基板48上には、下地層が設けられていてもよい。下地層としては、例えば、基板48表面からのイオンの拡散を防止する目的、ソース電極76aおよびドレイン電極76bと基板48との密着性(接合性)を向上させる目的等により設けられる。
下地層の構成材料としては、特に限定されないが、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、ポリイミド、ポリアミド、あるいは架橋されて不溶化された高分子等が好適に用いられる。
一方、第1の物質(後述する第1の膜の構成材料)を溶媒に溶解または分散媒に分散させた第1の液体を調製する。
第1の物質としては、後述するような第1の膜75を形成することができるものであれば、特に限定されず、各種無機材料および各種有機材料を用いることができる。
また、第1の液体の溶媒または分散媒としては、後述するような第1の膜75を形成することができるものであれば、特に限定されない。
そして、この第1の液体を後述するような液滴吐出装置を用いて基板48上に吐出して第1の液体の液滴70を形成する。
より具体的に説明すると、液滴70を線状に形成するに際しては、図4(a)に示すように、基板48上に、半球状の微小液滴70aを所定間隔で配置する。この際、微小液滴70aの間隔は、これらが基板48上に付与された際に、隣接する微小液滴同士が繋がる程度の幅とする。これにより、各微小液滴70aが濡れ広がって、図4(b)に示すように、線状の液滴70が形成される。
(液滴吐出装置)
ここで、図5、図6に基づいて、前述した液滴70の形成に用いる液滴吐出装置を説明する。
図5に示す液滴吐出装置10は、ベース12、第1移動手段14、第2移動手段16、重量測定手段である電子天秤(不図示)、ヘッド20、キャッピングユニット22、およびクリーニングユニット24を備えている。第1移動手段14および第2移動手段16を含む液滴吐出装置10の動作は、制御装置23により制御されるようになっている。なお図5において、X方向はベース12の左右方向であり、Y方向は前後方向であり、Z方向は上下方向である。
第1移動手段14は、ベース12の上面に設置されY方向に延びる1対のガイドレール40、40と、ガイドレール40、40に沿って移動可能なスライダ42とを有している。このスライダ42をガイドレール40、40に沿って移動させるための駆動手段として、例えばリニアモータを採用することができる。これにより、スライダ42をY方向に沿って移動可能とするとともに、スライダ42をY方向での任意の位置で位置決めすることができる。
スライダ42の上面には、モータ44が固定され、このモータ44のロータには、テーブル46が固定されている。このテーブル46は、基板48を保持しつつ位置決めするものである。すなわち、図示しない吸着保持手段により、テーブル46の穴46Aを負圧とすることによりテーブル46上に基板48を吸着して、基板48をテーブル46上に保持することができる。また、モータ44は、例えばダイレクトドライブモータである。このモータ44に通電することにより、モータ44のロータの回転に伴ってテーブル46がθz方向に回転して、テーブル46をインデックス(回転割り出し)することができるようになっている。また、テーブル46には、ヘッド20が第1の液体を捨打ち、あるいは試し打ち(予備吐出)するための予備吐出エリアが設けられている。
また、ベース12上には、キャッピングユニット22およびクリーニングユニット24が設けられている。キャッピングユニット22は、ヘッド20におけるインク吐出面20Pの乾燥を防止するため、液滴吐出装置10の待機時にインク吐出面20Pをキャッピングするものである。また、クリーニングユニット24は、ヘッド20におけるノズルの目詰まりを取り除くため、ノズルの内部を吸引するものである。なお、クリーニングユニット24は、ヘッド20におけるインク吐出面20Pの汚れを取り除くため、インク吐出面20Pのワイピングを行うことも可能である。
また、ベース12上の後方側部分には、支柱16A、16Aが立設され、その支柱16A、16Aの上端部にコラム16Bが架設されている。そして、そのコラム16Bの前面に第2移動手段16が設けられている。この第2移動手段16は、X方向に沿って配置された1対のガイドレール62A、62Aと、またガイドレール62A、62Aに沿って移動可能なスライダ60とを有している。このスライダ60をガイドレール62A、62Aに沿って移動させるための駆動手段として、例えばリニアモータを採用することができる。これにより、スライダ60をX方向に沿って移動可能とするとともに、スライダ60をX方向での任意の位置で位置決めすることができる。
スライダ60には、ヘッド20が設けられている。ヘッド20には、モータ62、64、66、68が接続されている。モータ62は、ヘッド20をZ方向に移動可能とし、またヘッド20を任意の位置で位置決め可能とするものである。モータ64は、ヘッド20をY方向に平行な軸線まわりのβ方向に揺動可能とし、またヘッド20を任意の位置で位置決め可能とするものである。モータ66は、ヘッド20をX方向に平行な軸線まわりのγ方向に揺動可能とし、またヘッド20を任意の位置で位置決め可能とするものである。モータ68は、ヘッド20をZ方向に平行な軸線まわりのα方向に揺動可能とし、またヘッド20を任意の位置で位置決め可能とするものである。
以上のように、基板48は、Y方向に移動および位置決め可能で、かつ、θz方向に揺動および位置決め可能となっている。また、ヘッド20は、X、Z方向に移動および位置決め可能で、かつ、α、β、γ方向に揺動および位置決め可能となっている。したがって、本実施形態の液滴吐出装置10は、ヘッド20の吐出面20Pと、テーブル46上の基板48との相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールすることができるようになっている。
図6に示すように、ヘッド20は、第1の液体2をノズル91から吐出するものである。このヘッド20は、液体の吐出方式として、ピエゾ素子を用いたピエゾ方式を採用している。このピエゾ方式は、液体に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。なお、液体の吐出方式として、液体を加熱して発生した泡(バブル)により液体を吐出させる方式など、公知の種々の技術を適用することもできる。
ヘッド20のヘッド本体90には、リザーバ95およびリザーバ95から分岐された複数のインク室93が形成されている。リザーバ95は、各インク室93に第1の液体2を供給するための流路になっている。また、ヘッド本体90の下端面には、吐出面20Pを構成するノズルプレート20Aが装着されている。このノズルプレート20Aには、第1の液体2を吐出するための複数のノズル91が、各インク室93に対応して開口形成されている。そして、各インク室93から対応するノズル91に向かって、インク流路が形成されている。
また、ヘッド本体90の上端面には、振動板94が装着されている。なお、振動板94は各インク室93の壁面を構成している。その振動板94の外側には、各インク室93に対応して、ピエゾ素子92が設けられている。ピエゾ素子92は、水晶等の圧電材料を一対の電極(不図示)で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路99に接続されている。
そして、駆動回路99からピエゾ素子92に電圧を印加すると、ピエゾ素子92が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子92が収縮変形すると、インク室93の圧力が低下して、リザーバ95からインク室93に第1の液体2が流入する。一方、ピエゾ素子92が膨張変形すると、インク室93の圧力が増加して、ノズル91から第1の液体2が吐出される。なお、ピエゾ素子92への印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子92の変形量を制御することができる。また、ピエゾ素子92への印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子92の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子92への印加電圧を制御することにより、第1の液体2の吐出条件を制御しうるようになっている。
[A2]第1の膜形成工程
次に、図3(b)に示すように、基板48上に付与された線状の第1の液体の液滴70の幅方向での一端部と他端部とで温度差を生じさせつつ、第1の液体の液滴70から溶媒または分散媒を除去することにより、図3(c)に示すように、基板48上の前記他端部分側に第1の物質を偏在させて第1の膜75を形成する。
より具体的に説明すると、図3(b)に示すように、線状をなす液滴70の幅方向での一端部(以下、液滴70の一端部という)から他端部(以下、液滴70の他端部という)にかけて、液滴70の表面の温度が下降するように、第1の液体の液滴70に温度勾配を付与する。すなわち、液滴70の一端部を第1の部分、液滴70の他端部を第2の部分とし、第1の部分の温度を第2の部分の温度より高くするように、これらに温度差を生じさせる。
このような温度差を生じさせるには、例えば、図3(b)に示すように、第1の温度を液滴70の一端部に与えるためのホットプレート51(第1温度供給部)と、第1の温度よりも低い第2の温度を液滴70の他端部に与えるための冷却板52(第2温度供給部)との間に、線状の液滴70が付与された基板48を渡すようにする。これにより、比較的簡単な工程で、液滴70の一端部と他端部とに温度差を生じさせることができる。このとき、液滴70の一端部(以下、液滴70の高温側である一端部ともいう)をホットプレート51側、液滴70の他端部(以下、液滴70の低温側である他端部ともいう)を冷却板52側とするように、基板48を付与する。なお、ホットプレート51と冷却板52との間の領域の上方に液滴70の全体が収まっていなくてもよく、液滴70の一端部または他端部がホットプレート51および冷却板52の一方の上方に位置していてもよいし、液滴70の一端部がホットプレート51の上方に位置し、液滴70の他端部が冷却板52の上方に位置していてもよい。
図3では、説明の便宜上、基板48上に1つの液滴70を示しているが、基板48上に付与された第1の液体の液滴70が複数である場合には、複数の液滴は、隣接する液滴同士の第1の部分と第2の部分とを対向させるように基板48上に配列し、複数の液滴の配列方向における基板48の一端部と他端部とで温度差を生じさせることにより、複数の液滴に対し一括して前記温度差を生じさせることができる。これにより、基板48上に第1の液体の液滴70を複数形成し、それぞれを第1の膜75とする場合であっても、比較的簡単な工程で、各液滴にて第1の部分と第2の部分とに温度差を生じさせることができる。
前述したような温度差を生じさせるという観点では、基板48の熱伝導率はできるだけ高い方がよい。基板48の熱伝導率が高ければ、ホットプレート51と冷却板52との温度差を小さくしても、液滴70内に前述したような温度差を生じさせることができるからである。なお、基板48の熱伝導率が低い場合でも、ホットプレート51と冷却板52との温度差を大きくすれば、液滴70内に前述したような温度差を生じさせることができる。
また、液滴70の高温側である一端部、もしくは、液滴70の高温側である一端部に所望の温度を付与できる基板48の部分に、レーザ等の光を照射することによっても、液滴70内に前述したような温度差を生じさせることができる。
図3(b)に示すように、液滴70内に前述したような温度差を生じさせると、液滴70の高温側である一端部から液滴70の低温側である他端部に向かって熱毛管流191が発生する。これにともなって、基板48の表面には逆方向の流れ192が生じ、液滴70の内部にはマランゴニ対流190が発生する。このとき、液滴70に付与する温度を適切に定めることで、液滴70の高温側である一端部から流出した熱毛管流191を、液滴70の低温側である他端部まで届かせることなく、その手前で基板48に向かって下降するような流れとすることが可能であるのが発明者の実験により確認されている。これは、液滴70の端部がくさび状をなしているため、液滴70の端部では液体の出入りが困難であること、および、熱毛管流191は液滴70の低温側である他端部に向かう際に液滴70の表面に沿って下降するため、その手前で液滴70の表面から離れ基板48に向かって下降し易いことが原因であると考えられる。
したがって、液滴70の低温側である他端部では、マランゴニ対流190の流路に含まれない領域が生じて、第1の液体が滞留するため、基板48に第1の物質(溶質または分散質)が析出または凝集しやすくなる。そのため、液滴70の低温側である他端部では、ピニングが発生しやすくなる。
一方、液滴70の高温側である一端部では、マランゴニ対流190によって第1の液体が流動しているため、第1の物質(溶質または分散質)が基板48上に析出または凝集しにくくなる。したがって、液滴70の高温側である一端部では、ディピニングが発生しやすくなる。
なお、本明細書では、「ピニング」とは、液滴70の周縁部に析出または凝集した固形分によって、乾燥に伴う液滴70の収縮が抑制される現象をいう。また、「ディピニング」とは、液滴70の乾燥時にピニングすることなく液滴70が収縮する現象をいう。
ここで、液滴70の高温側である一端部をディピニングさせるという観点では、さらに以下の点に留意するのが好ましい。
まず、液滴70に含まれる固形分(すなわち、第1の物質)が微粒子の場合には、その粒径はできるだけ小さい方が好ましい。固形分の微粒子の粒径が小さいほど、対流によって運搬されやすいので、液滴70の高温側である一端部における固形分の析出または凝集が抑制される。これにより、液滴70の高温側である一端部がディピニングしやすくなるからである。
また、液滴70中における固形分の濃度はできるだけ低い方が好ましい。固形分濃度が低いほど、液滴70の高温側である一端部における固形分の析出または凝集が抑制される。これにより、液滴70の高温側である一端部がディピニングしやすくなるからである。
また、液滴70中の固形分と基板48との付着速度および付着力はできるだけ弱い方が好ましい。付着速度および付着力が弱いほど、液滴70の高温側である一端部がピニングしにくくなり、ディピニングしやすくなるからである。また、ディピニング途中において、基板48上に固形分が残渣のように残るのを防止することができるからである。
また、液滴70中の固形分が微粒子の場合、液滴70中の固形分と基板48との付着力を弱めるには、微粒子相互の凝集を防止するための有機物等からなる保護層を微粒子表面に設け、この保護層の厚さをできるだけ厚くするのが好ましい。この保護層の厚さが厚いほど、固形分の微粒子と基板48との付着も防止することができる。
また、液滴70中の固形分と基板48とを同じ電荷に帯電させておくことにより、両者の付着力を弱めることができる。一般に、固形分の微粒子はマイナスに帯電しているので、基板48をマイナスに帯電させておけばよい。基板48を帯電させるには、自己組織化膜(SAM膜)を利用することが好ましい。具体的には、自己組織化膜として、R−Si−(O−Et)4−nで表されるシランカップリング剤を用いるのが好ましい。このようなシランカップリング剤は、エチル基が基板48に吸着するので、基板48上に単分子膜が形成される。そして、R部にカルボキシル基(−COO)を採用すれば、基板48の表面をマイナスに帯電させることができる。なお、液滴70中の固形分の微粒子がプラスの電荷を有する場合には、R部にアミノ基(−NH )を採用することにより、基板48の表面をプラスに帯電させればよい。
一方、液滴70に含まれる分散媒または溶媒の沸点は、できるだけ高い方が好ましく、より具体的には、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。分散媒または溶媒の沸点が低い場合には、強制温度勾配によるマランゴニ対流を発生させる前に液滴70が乾燥して、液滴70の高温側である一端部がピニングするおそれがあるからである。
また、分散媒または溶媒の熱伝導率は、できるだけ高い方が好ましく、より具体的には、1×10−4cal/cm・s・deg以上が好ましく、3×10−4cal/cm・s・deg以上がより好ましい。分散媒または溶媒の熱伝導率が高いほど、液滴70の表面に温度勾配を付与し易くなるからである。さらに、表面張力の温度依存性が大きい分散媒または溶媒を用いるのが好ましい。表面張力の温度依存性が大きいほど、液滴70の表面の温度勾配に基づいて表面張力差が発生し易くなり、所望のマランゴニ対流を発生させることができる。これにより、液滴70の高温側である一端部がディピニングしやすくなるからである。
また、分散媒または溶媒の粘性は、できるだけ低い方が好ましく、より具体的には、10cp以下が好ましく、5cp以下がより好ましい。分散媒または溶媒の粘性が高い場合には、マランゴニ対流を発生させることが困難になり、液滴70の高温側である一端部がピニングするおそれがあるからである。これに加えて、前述した液滴吐出装置10により第1の液体を安定的に吐出するためには、第1の液体の粘度を0.1〜30cps程度に設定するのが好ましい。これにより、液滴吐出装置10から吐出形成された液滴で、所望のマランゴニ対流を発生させることができる。
一方、基板48の表面はできるだけ均一(平坦)に仕上げられているのが好ましい。基板48の表面が均一であれば、液滴70の高温側である一端部は、均一に収縮するので、ピニングしにくくなり、ディピニングしやすくなるからである。さらに、基板48の表面が均一であれば、液滴70に含まれる固形分がディピニングの最中に基板48上に残渣として残りにくくなる。
基板48に第1の液体の液滴70を付与した直後における基板48に対する第1の液体の液滴70の静的接触角は、20〜50°であるのが好ましく、30〜40°であるのがより好ましい。これにより、基板48上に第1の液体の液滴70を付与する際に、液滴70の形状を所望のものとしつつ、後述する第1の膜形成工程にて液滴70の他端部側に第1の物質をより確実に偏在(析出または凝集)させることができる。
また、基板48に対する液滴70の後退接触角を、液滴70の低温側である他端部に固形分が偏在(析出または凝集)を開始する時点における基板48に対する液滴70の静的接触角(より具体的には、液滴70の高温側である一端部と基板48とのなす角度)より、小さく設定することが好ましい。これにより、基板48上に第1の液体の液滴70を付与する際に、液滴70の形状を所望のものとしつつ、後述する第1の膜形成工程にて液滴70の他端部側に第1の物質をより確実に析出または凝集させることができる。この場合、液滴70の低温側である他端部に固形分が析出を開始する前には、基板48に対する液滴70の接触角(より具体的には、液滴70の高温側である一端部と基板48とのなす角度)が前記後退接触角より大きいので、液滴70の低温側である他端部が収縮することはない。なお、液滴70の低温側である他端部に固形分が析出を開始した後には、その析出した固形分によって液滴70の他端部がピン止めされたような状態となり、それ以降の乾燥に伴う液滴70の収縮が抑制される。したがって、固形分、すなわち第1の物質を所定位置(すなわち、第2の部分側)に析出させることが可能になり、所定位置に高精細な第1の膜75を形成することができる。
ここで、後退接触角とは、液滴70を基板48の表面に載置した状態で、基板48の表面を水平状態から徐々に傾斜させた際に、液滴70が基板48に対して移動を開始した時点における液滴70の移動方向と反対側にて測定される接触角のことをいう。
基板48の表面に対する液滴70の後退接触角の調整は、自己組織化膜(SAM膜)で基板48を表面処理することによって行うことができる。自己組織化膜として、例えばC18(オクタデシルトリメトキシシラン)等を採用することが可能である。なお、C18の分子が基板48の表面に最密パッキングされると、その表面を液滴70が移動し易くなるため、基板48の表面に対する液滴70の後退接触角が大きくなる。したがって、基板48の表面におけるC18の分子密度を低く設定することにより、基板48の表面に対する液滴70の後退接触角を低下させることができる。
また、液滴70の後退接触角を低下させることは、液滴70の乾燥途中におけるバルジの発生を防止するためにも好ましい。液滴70がその表面張力の影響で球状に収縮しようとする際に、本来ならピニングによってバルジの発生を抑制できるが、本実施形態では液滴70の高温側である一端部をディピニングさせるので、ピニングにより液滴70の乾燥途中におけるバルジの発生を抑制することに乏しいからである。
また、液滴70の周辺温度はできるだけ低い方が好ましい。液滴70の周辺温度が高い場合には、液滴70の乾燥が促進され、対流の影響が及ぶ前に液滴70の端部が高濃度になって、液滴70の高温側である一端部がピニングしやすくなるからである。
また、液滴70を吐出してから液滴70の強制的に温度勾配を付与するまでの時間はできるだけ短い方が好ましい。この時間が長いと、液滴70の乾燥が不本意に進行して、液滴70の高温側である一端部がピニングするおそれがあるからである。
また、液滴70の高温側である一端部において、ピニングを抑制してディピニングを発生させるためには、液滴70の乾燥速度を低下させて、液滴70の高温側である一端部における蒸発を抑制すればよい。
液滴70の乾燥速度は、基板48上に付与される液滴70同士の間隔(液滴間距離)や、複数の液滴70の配列または付与のタイミング、基板48が搭載されるステージの移動速度、基板48の表面に対する液滴70の接触角などに応じて変化する。
液滴70の乾燥時、液滴70からその外部へ生じる蒸気は、液滴70を中心に3次元に拡散して、蒸気拡散層を形成する。基板48上に複数の液滴70が付与されるとき、一の液滴70が他の液滴70の蒸気拡散層内に配置されると、その蒸気拡散層の影響により一の液滴70の表面における蒸気濃度が高くなって、一の液滴70の乾燥速度が低下する。具体的には、液滴70同士の間の距離が短く、蒸気拡散層の重なりが大きいほど、液滴70の蒸発速度(乾燥速度)が低下して、乾燥時間が長くなる。
また、一の液滴70に対してある方向のみに他の液滴70が配置されている場合には、他の液滴70の蒸気拡散層による影響を同方向から受けるので、一の液滴70の乾燥速度は同方向についてのみ低下する。したがって、液滴70の配列によって乾燥速度は変化する。さらに、他の液滴70が付与されてから一の液滴70が付与されるまでの時間が長いと、他の液滴70の蒸気拡散層による影響が小さくなるので、液滴70の乾燥速度が低下し難くなる。したがって、各液滴70を付与する時間間隔が短いほど、液滴70の乾燥速度は低下する。
また、基板48を搭載したステージが移動すると、液滴70近傍の気相の蒸気濃度が低下するなどにより、液滴70の乾燥が促進される。したがって、液滴70が付与された基板48を移動させない場合には、液滴70の乾燥速度が低下する。
以上を踏まえた上で、液滴70の低温側である他端部をピニングさせるとともに、液滴70の高温側である一端部をディピニングさせる。これにより、液滴70の低温側である他端部では、固形分、すなわち第1の物質が局所的に析出または凝集して、それ以降の乾燥に伴う液滴70の収縮が抑制される。一方、液滴70の高温側である一端部では、固形分の析出または凝集が防止され、液滴70の乾燥に伴って、液滴70の低温側である他端部に向け液滴70が収縮する。そして、液滴70の乾燥が終了すると、図3(c)に示すように、液滴70の低温側である他端部に沿って、乾燥膜である第1の膜75が形成される。
なお、液滴70の固形分が微粒子である場合には、第1の膜75を熱処理(アニール)することにより、第1の膜75中の凝集体同士を接合することができる。その際、微粒子の表面に、微粒子相互の凝集を防止するための保護層が設けられていても、熱処理により保護層を分解して、第1の膜75中の微粒子同士を接合することができる。また、第1の膜75の直線部分75aのみを後述する工程で利用する場合には、前述した熱処理を直線部分75aのみに施し、他の部分は分散媒等に再分散させて除去することができる。
本実施形態では、第1の膜75の線幅は液滴70に含まれる固形分の濃度に依存しており、この濃度を低くすることで第1の膜75の線幅を容易に細くできる。
また、本実施形態では第1の液体の液滴70を線状に形成して、直線部分を有する第1の膜75を得る場合を例にして説明したが、第1の液体の液滴の形状を任意に設定することにより、所望パターンの第1の膜を得ることが可能である。例えば、第1の液体の液滴をドット状(半球状)に形成すれば、三日月状の第1の膜を得ることも可能である。
以上に詳述したように、第1の膜形成工程では、液滴70の一端部と他端部とで温度差を生じさせて、マランゴニ対流を発生させ、液滴70の低温側である他端部をピニングさせるとともに、液滴70の高温側である一端部をディピニングさせて、液滴70の低温側である他端部側に第1の膜75を形成する。これにより、液滴70のサイズ(幅)より微細な乾燥膜である第1の膜75を形成することが可能になる。
その際、本実施形態では、液滴70の第1の部分および第2の部分が第1の液体の液滴70の周縁側部に位置しているので、基板48上の第1の液体の液滴70内に好適な対流を生じさせ、第2の部分側に第1の物質をより確実に析出または凝集させることができる。
また、基板48上の第1の液体の液滴70は基板48に沿って線状をなしており、線状の第1の液体の液滴70の幅方向での端部のうち、一端部を第1の部分とし、他端部を第2の部分としているので、線状の第1の液体の液滴70の他端部に沿って、第1の膜75を形成することができる。そのため、第1の膜75の幅をより確実かつ簡単に小さくすることができる。
また、第1の膜75を形成するに際して、液滴70の一端部(第1の部分)の温度が液滴70の他端部(第2の部分)の温度よりも高いので、基板48上の第1の液体の液滴70内に好適な対流を生じさせ、液滴70の他端部(第2の部分)側に第1の物質をより確実に析出または凝集させることができる。
その際、液滴70の一端部(第1の部分)を加熱し、また、液滴70の他端部(第2の部分)を冷却するので、基板48上の第1の液体の液滴70内に好適な対流を生じさせ、液滴70の他端部(第2の部分)側に第1の物質をより確実に析出または凝集させることができる。
このような第1の膜形成工程では、例えば、線幅0.5〜1.0μm程度の高精細な第1の膜75を形成することが可能である。
この点、フェムトリットルインクジェット装置等を用いてサブミクロンサイズの液滴を形成すれば、サブミクロンサイズの乾燥膜を形成することは可能である。しかしながら、サブミクロンサイズの液滴によりパターンを描画するには、かなりの長時間を要することになる。これに対して、本実施形態の第1の膜形成工程では、ピコリットルサイズの液滴を吐出する一般的なインクジェット装置を用いて、より速い速度でパターンを描画することができる。具体的には、フェムトリットルインクジェット装置の10倍程度の速度でパターンを描画することが可能である。したがって、製造コストおよび製造時間を低減することができる。
また、本実施形態の第1の膜形成工程では、温度領域の高低にかかわらず、液滴70の一端部と他端部とで前述したような温度差を生じさせれば、第1の膜75として所定の乾燥膜を形成することができる。これにより、基板48に対する熱履歴を低減することができる。
[A3]ソース電極およびドレイン電極形成工程
次に、図7(a)に示すような第1の膜75の幅方向での両側を挟むようにして、第2の膜76を形成する(図7(b)参照)。すなわち、基板48上で第1の膜75によって2つの部分(76a、76b)に分割されるようにして、第2の膜76を形成する。このとき、第2の膜76の前記2つの部分のうち、一方をソース電極76aとし、他方をドレイン電極76bとする。
第2の膜76は、前述した液滴吐出装置10と同様の装置を用いて、第2の物質を溶媒に溶解または分散媒に分散した第2の液体を吐出し、これを乾燥することにより、形成する。
より具体的には、第2の膜76を形成するに際して、第2の物質を溶媒に溶解または分散媒に分散した第2の液体を第1の膜75に重なるように基板48上に付与し、その第2の液体から溶媒または分散媒を除去することにより、第1の膜75の両側のそれぞれで、第2の物質を析出または凝集させて第2の膜76を形成する。
これにより、フォトレジストや現像液、剥離液等の化学薬品や、酸素プラズマ、CF4プラズマなどのプラズマ処理を用いることなく、第2の膜76を形成することができる。そのため、基板48や基板48上の各種材料の変質や劣化を確実に防止することができる。
なお、第2の膜76の形成方法としては、第1の膜75の幅方向での両側で第1の膜75を挟むようにして形成することができれば、特に限定されず、前述したような方法以外にも、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等により形成することができる。この場合、ソース電極76aおよびドレイン電極76bの形状に対応する形状のマスクを用いて、ソース電極76aおよびドレイン電極76bを形成することができる。
第2の物質(すなわちソース電極76aおよびドレイン電極76bの構成材料)としては、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、Pd、Pt、Au、Ag、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の導電性材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記導電性高分子材料は、通常、酸化鉄、ヨウ素、無機酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。これらの中でも、第2の物質としては、それぞれ、Ni、Cu、Co、Au、Ag、Pdまたはこれらを含む合金を主とするものが好適に用いられる。これらの金属材料を用いると、無電解メッキ法を用いて、容易かつ安価に、成膜精度の高い第2の膜76を形成することができることから、高い特性を有する薄膜トランジスタ1を得ることができる。
また、第2の液体の溶媒または分散媒としては、前述したような第2の膜76を形成することができるものであれば、特に限定されず、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
なお、図7(b)に示すように、前述した第1の膜75を形成するに際しては、第1の膜75の膜厚H0が第2の膜76の膜厚H1よりも厚くなるように第1の物質の選定や第1の液体中の第1の物質の濃度等が設定されるのが好ましい。また、第1の膜75の上から第2の膜76を形成した場合、第1の膜75上に第2の物質が若干堆積する場合もある。その場合は、その堆積した分だけ第2の膜76全体をエッチングすることで、第2の膜76を所望の形とすることができる。
また、このとき、データ線101および画素電極103も形成する。
[A4]第1の膜除去工程
次に、第1の膜75を基板48から除去する。その結果、ソース電極76aとドレイン電極76bとの間には、図7(c)に示すように、第1の膜75の幅W0に応じた間隙77が形成される。
第1の膜75の除去方法としては、前述したように第1の膜75を基板48から除去して間隙75を形成することができるものであれば、特に限定されず、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、第1の物質が半導体材料である(すなわち、第1の膜75が主として半導体材料で構成されている)場合や、第1の膜75の高さが比較的低く、第1の膜75上に後述する半導体層78を形成することができる場合などには、本工程を省略することができる。
第1の物質が半導体材料である場合、第1の膜75を除去せずに後述する半導体層78の一部とすることができる。これにより、より確実に、チャネル長Wを小さくするとともに、薄膜トランジスタ1の製造工程の簡略化を図ることができる。この際、第1の膜75の上端は、第1の液体に対して撥液性を有している(第2の膜76(ソース電極76a及びドレイン電極76b)の構成材料に対して低い親和性を有する)のが好ましい。
第1の物質が半導体材料である場合、第1の膜75が半導体層78の全部を構成することができる。この場合、後述する半導体形成工程も省略することができる。これにより、より確実に、チャネル長Wを小さくするとともに、薄膜トランジスタ1の製造工程の簡略化をより図ることができる。
[A5]半導体層形成工程
次に、図8(a)に示すように、ソース電極76aとドレイン電極76bとの間の間隙77を埋めるように、チャネル領域となる半導体層78を形成する。
半導体層78は、前述した液滴吐出装置10と同様の装置を用いて、半導体層78の構成材料またはその前駆体を溶媒に溶解または分散媒に分散した液体を間隙77に供給し、これを乾燥(必要に応じて焼成)することにより、形成することができる。なお、半導体層78の形成方法としては、特に限定されず、前述したような方法以外にも、例えば、前述した第2の膜76の形成方法と同様の方法を用いることができる。
半導体層78の構成材料としては、特に限定されず、各種有機半導体材料および各種無機半導体材料を用いることができる。
有機半導体材料としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、フタロシアニン、ペリレン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、スチルベン、アリールビニル、ピラゾリン、トリフェニルアミン、トリアリールアミン、オリゴチオフェン、フタロシアニンまたはこれらの誘導体のような低分子の有機半導体材料や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ポリアリールアミン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂、フルオレン−ビチオフェン共重合体、フルオレン−アリールアミン共重合体またはこれらの誘導体のような高分子の有機半導体材料(共役系高分子材料)が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、高分子の有機半導体材料(共役系高分子材料)を主とするものを用いるのが好ましい。共役系高分子材料は、その特有な電子雲の広がりにより、キャリアの移動能が特に高い。このような高分子の有機半導体材料は、簡易な方法で成膜することができるとともに、比較的容易に配向させることができる。
また、これらの中でも、有機半導体材料は、フルオレン−ビチオフェン共重合体のようなフルオレンとビチオフェンとを含む共重合体、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体のようなアリールアミンを含む重合体またはこれらの誘導体のうちの少なくとも1種を主成分とするものがより好ましく、ポリアリールアミン、フルオレン−ビチオフェン共重合体またはこれらの誘導体のうちの少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。このような有機半導体材料で構成される半導体層78は、一時的に高温多湿な環境下に晒されても、耐水性および耐酸化性が高いことから、品質劣化が防止され、特に化学的に安定なものとすることができる。
無機半導体材料としては、例えば、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン、ゲルマニウム、ヒ素化ガリウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。液滴吐出装置10を用いて半導体層78を形成する場合には、例えば、シクロペンタシランを含む液体シリコンを液滴吐出装置10により間隙77に供給し、これを乾燥・焼成することにより、半導体層78を形成することができる。
[A6]ゲート絶縁層形成工程
次に、図8(b)に示すように、ソース電極76a、半導体層78、ドレイン電極76bを覆うように基板48上にゲート絶縁膜79を形成する。その際、必要に応じて、ゲート絶縁膜79を研磨等することにより平坦性の高い面を得る。
ゲート絶縁膜79の形成方法としては、半導体層78の形成方法と同様の方法を用いることができる。
例えば、このゲート絶縁膜79を形成するに際しては、スピンコート法によりソース電極76a、半導体層78、ドレイン電極76bを覆うように基板48の略全面に、ゲート絶縁膜79の構成材料を含む液体材料を塗布し、これを焼成して固化させる。この場合、例えば、液体材料として、ペルヒドロポリシラザンを有機溶媒(例えば20%キシレン溶液)で溶解したものを用い、このような液体材料をスピンコート法(例えば、2000rpm、20秒間)で塗布した後、450℃程度の温度で大気中で焼成することにより、厚膜の酸化シリコン膜(すなわち、ゲート絶縁膜79)を形成することができる。
ゲート絶縁膜79の構成材料は、有機材料(特に有機高分子材料)であるのが好ましい。有機高分子材料を主材料としてゲート絶縁膜79を形成すると、ゲート絶縁膜79の形成が容易であるとともに、半導体層78が有機半導体材料で構成されている場合には、ゲート絶縁膜79と半導体層78との密着性の向上を図ることもできる。
このような有機高分子材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ゲート絶縁膜79の構成材料には、例えば、SiO等の無機絶縁材料を用いることもできる。この場合、ゲート絶縁膜79は、ポリシリケート、ポリシロキサン、ポリシラザンのような溶液を塗布して、塗布膜を酸素、または水蒸気の存在下で加熱することによって、溶液材料からSiOを得ることができる。また、金属アルコキシド溶液を塗布した後、これを酸素雰囲気で加熱することによって無機絶縁材料を得る(ゾル・ゲル法として知られる)ことができる。
なお、ゲート絶縁膜79の構成材料としては、上記以外の材料、例えば樹脂、セラミックス等で構成されてもよいことは、言うまでもない。
そして、形成したゲート絶縁膜79を研磨し、膜厚を減少させることにより平坦性の高い面を得る。この膜厚を減少させる方法としては、例えばCMP法(化学的機械的研磨法)を採用することができ、具体的な条件としては、例えば軟質ポリウレタン製のパッドと、アンモニア系又はアミン系のアルカリ溶液にシリカ粒子を分散させた研磨剤(スラリー)を組み合わせて用い、圧力30000Pa、回転数50回転/分、研磨剤の流量を200sccm、といった条件を採用することができる。
なお、酸化シリコン膜を形成する方法としては、上述した方法のほか、例えば基板48上に液体材料として感光性ポリシラザンを適量滴下した後に、スピンコート法(例えば、1000rpm、20秒間)で塗布し、100℃程度で焼成することによって酸化シリコン膜を得るようにしても良い。
また、液体材料を用いて酸化シリコン膜を形成する代わりに、例えばCVD法を用いて酸化シリコン膜を形成しても良い。CVD法を用いる場合には、特にプラズマ励起CVD法(PECVD法)が好適であり、以下のような成膜条件を適用可能である。例えば、原料ガスとしてテトラエトキシシラン(TEOS)および酸素(O)を用い、それぞれの流量を200sccm、5slmとし、雰囲気温度を350℃、RFパワーを1.3kW、圧力を200Paという条件にすることにより、約300nm/minという高速な成膜速度で酸化シリコン膜を成膜することが可能である。また、原料ガスとしてモノシラン(SiH)、亜酸化窒素(NO)およびアルゴン(Ar)を用い、それぞれの流量を160sccm、3slm、5slmとし、雰囲気温度を400℃、RFパワーを800W、圧力を170Paという条件にすることによっても、約300nm/minという高速な成膜速度で酸化シリコン膜を成膜することが可能である。
[A7]ゲート電極形成工程
次に、図8(c)に示すように、ソース電極76aとドレイン電極76bとの間の領域、すなわち半導体層78に対応してゲート絶縁膜79上にゲート電極80を形成する。
ゲート電極80は、前記ソース電極76aおよびドレイン電極76bと同様にして形成することができる。
また、ゲート電極80の構成材料としては、ソース電極76aとドレイン電極76bと同様のものを用いることができる。
また、このとき、走査線102を形成する。
なお、本実施形態では、走査線102は、ゲート電極80とは別途形成されるが、隣接する薄膜トランジスタ1のゲート電極80を連続して形成することにより走査線102としてもよい。
以上説明したような各工程を経ることにより、半導体層78、ゲート絶縁膜79、ゲート電極80等を積層した電界効果型の薄膜トランジスタ1が得られる。
この薄膜トランジスタ1の製造方法にあっては、前述したように、第1の膜75を形成するに際し、基板48上の第1の液体の液滴70内に、液滴70の一端部では第1の物質が流動し、液滴70の他端部では第1の物質が析出または凝集するような対流(すなわちマランゴニ対流190)を生じさせ、液滴70の他端部側に第1の物質を析出または凝集させることができる。その結果、第1の膜75の幅を、基板48上に付与された第1の液体の液滴70の幅よりも極めて小さくし、第1の膜75の幅に対応して、ソース電極76aとドレイン電極76bとの間の距離、すなわちチャネル長Wを設定することができる。そのため、簡単に、チャネル長Wを短くすることができる。
特に、本実施形態では、第2の膜76を形成した後に、半導体層78を形成するに先立ち、第1の膜75を除去して、ソース電極76aとドレイン電極76bとの間に間隙77を形成し、この間隙77を埋めるように半導体層78を形成するので、第1の物質と、半導体層78の構成材料とのそれぞれに最も適した材料を選択することができる。その結果、より確実にチャネル長Wを小さくするとともに、より優れた特性を有する薄膜トランジスタ1を得ることができる。
また、第1の膜75を形成するに際し、基板48上に付与する第1の液体の液滴70の幅を小さくしなくても、第1の膜75の幅を小さくすることができるため、フェムトリットルインクジェット装置のような描画速度の遅い装置を用いる必要がない。そのため、アクティブマトリクス装置(半導体装置)の製造工程に要する時間を短縮することができ、その結果、アクティブマトリクス装置(半導体装置)の製造コストを低減することができる。
また、フォトレジスト等を用いることなく(高価な露光装置等を用いることなく)、チャネル長Wを短くすることができるので、この点でも、アクティブマトリクス装置(半導体装置)の低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態では、基板48の上に第2の膜76を基板48の上に直接形成しているため、イオンの打ち込み工程(半導体層78に対してドナーやアクセプターとなる不純物イオンを打ち込むことによって電極を形成する場合に必要となる工程)を省くことができる。
なお、上述した実施形態では、第2の物質として導電性材料を用いてソース電極およびドレイン電極を形成する場合について説明したが、例えば、第2の物質として半導体材料を用い、第2の膜を形成した後に、これに対し不純物をドープするなど(いわゆるイオン打ち込み等)の方法によってソース電極およびドレイン電極を形成してもよい。
上述した実施形態においては、第1の膜75の膜厚H0が第2の膜76の膜厚H1よりも厚くなるように第1の物質の選定や第1の液体中の第1の物質の濃度等を設定したが、第2の膜76(ソース電極76a及びドレイン電極76b)の構成材料に対して低い親和性を有する自己組織化単分子膜を第1の膜75の上に形成して、第2の液体を用いて第2の膜を形成する場合に、第1の膜75の両側で第1の膜75を挟むようにしてソース電極76aおよびドレイン電極76bを形成することができる。ここで、自己組織化単分子膜(SAMs: Self‐Assembled Monolayer)とは、固体表面へ分子を固定する方法であって高配向・高密度な分子層が形成可能な自己組織化(SA: Self‐Assembly)法により作製される膜(表面修飾膜)である。なお、自己組織化単分子膜は、CVD法等の気相成長法によって形成してもよく、またスピンコート法やディップ法等の液相を用いた方法によって形成してもよい。
[電子機器]
次に、本発明を用いて製造された電子機器を、図9に基づいて説明する。
図9は、本発明を用いて製造された電子機器の一例である携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204、送話口1206、表示部1000を備えている。表示部1000は、前述したアクティブマトリクス装置100を備えるものである。
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
本発明の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態のアクティブマトリクス装置が備える薄膜トランジスタの構成を示す図(縦断面図および平面図)である。 本発明の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置100(半導体装置)の製造方法における第1の液滴付与工程および第1の膜形成工程を説明するための図(平面図および断面図)である。 本発明の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置100(半導体装置)の製造方法における第1の液滴付与工程を詳細に説明するための図である。 本発明の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置100(半導体装置)の製造方法における第1の液滴付与工程に用いる液滴吐出装置の概略構成を示す図である。 図5に示す液滴吐出装置のヘッド部の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置100(半導体装置)の製造方法におけるソース電極およびドレイン電極形成工程、第1の膜除去工程、半導体層形成工程、ゲート絶縁膜形成工程、およびゲート電極形成工程を説明するための図である。 本発明の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置100(半導体装置)の製造方法におけるソース電極およびドレイン電極形成工程、第1の膜除去工程、半導体層形成工程、ゲート絶縁膜形成工程、およびゲート電極形成工程を説明するための図である。 本発明を用いて製造された電子機器の一例である携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。 一般的なMOSトランジスタの構成を示す図である。
符号の説明
1……薄膜トランジスタ 10……液滴吐出装置 12……ベース 14……第1移動手段 16……第2移動手段 16A……支柱 16B……コラム 2……第1の液体 20……ヘッド 20A……ノズルプレート 20P……インク吐出面 22……キャッピングユニット 23……制御装置 24……クリーニングユニット 40……ガイドレール 42……スライダ 44……モータ 46……テーブル 46A……穴 48……基板 51……ホットプレート(第1の温度供給部) 52……冷却板(第2の温度供給部) 60……スライダ 62……モータ 62A……ガイドレール 64、66、68……モータ 70……液滴 70a……微小液滴 75……第1の膜 75a……直線部分 76……第2の膜 76a……ソース電極 76b……ドレイン電極 77……間隙 78……半導体層 79……ゲート絶縁膜 80……ゲート電極 90……ヘッド本体 91……ノズル 92……ピエゾ素子 93……インク室 94……振動板 95……リザーバ 99……駆動回路 100……アクティブマトリクス装置(半導体装置) 101……データ線 102……走査線 103……画素電極 190……マランゴニ対流 191……熱毛管流 192……流れ 1000……表示部 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 2001……MOSトランジスタ 2002……ガラス基板 2003……半導体膜 2004……絶縁膜 2005……ゲート絶縁膜 2006……ゲート電極 2007……ソース電極 2008……ドレイン電極 2009……絶縁膜

Claims (16)

  1. 第1の物質を溶媒に溶解または分散媒に分散した第1の液体の液滴を基板上に付与する工程と、
    前記基板上に付与された前記第1の液体の液滴における第1の部分とこれとは異なる第2の部分とに温度差を生じさせつつ、前記第1の液体の液滴から溶媒または分散媒を除去することにより、前記基板上の前記第2の部分側に前記第1の物質を偏在させて第1の膜を形成する工程と、
    第2の物質を主材料として構成された第2の膜を前記基板上で前記第1の膜により2つの部分に分割されるようにして形成し、前記第2の膜の前記2つの部分のうち、一方の部分をトランジスタのソース電極とするとともに、他方の部分をドレイン電極とする工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  2. 前記第2の膜を形成するに際して、前記第2の物質を溶媒に溶解または分散媒に分散した第2の液体を前記第1の膜に重なるように前記基板上に付与し、前記第2の液体から溶媒または分散媒を除去することにより、前記第1の膜の両側のそれぞれで、前記第2の物質を析出または凝集させて前記第2の膜を形成する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
  3. 前記第1の部分および前記第2の部分は、前記第1の液体の液滴の周縁側部に位置している請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
  4. 前記基板に前記第1の液体の液滴を付与するに際して、前記第1の液体の液滴は前記基板に沿って線状をなしており、前記線状の第1の液体の液滴の幅方向での端部のうち、一端部を前記第1の部分とし、他端部を前記第2の部分とする請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  5. 前記第1の膜を形成するに際して、前記第1の部分の温度が前記第2の部分の温度よりも高い請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  6. 前記第1の膜を形成するに際して、前記第1の部分を加熱する請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
  7. 前記第1の膜を形成するに際して、前記第2の部分を冷却する請求項5または6に記載の半導体装置の製造方法。
  8. 前記第2の膜を形成した後に、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に半導体層を形成する工程と、前記半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記半導体層に対応する前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを有する請求項1ないし7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  9. 前記第2の膜を形成した後に、前記半導体層を形成するに先立ち、前記第1の膜を除去して、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に間隙を形成する工程を有し、前記間隙を埋めるように前記半導体層を形成する請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
  10. 前記第1の物質は、半導体材料であり、前記第2の膜を形成した後に、前記第1の膜は、除去されずに、前記半導体層の一部を構成する請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
  11. 前記第1の物質は、半導体材料であり、前記第1の膜が半導体層を構成し、前記第2の膜を形成した後に、前記第1の膜を除去することなく、前記半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記半導体層に対応する前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを有する請求項1ないし7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  12. 前記第1の部分に第1の温度を付与する第1の温度供給部と、前記第2の部分に前記第1の温度と異なる第2の温度を付与する第2の温度供給部との間に、前記第1の液体の液滴が付与された前記基板を渡すことにより、前記温度差を生じさせる請求項1ないし11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  13. 前記基板に前記第1の液体の液滴を付与した直後における前記基板に対する前記第1の液体の液滴の静的接触角は、20〜50°である請求項1ないし12のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  14. 前記基板に前記第1の液体の液滴を付与した直後における前記基板に対する前記第1の液体の液滴の後退接触角は、前記第1の物質が前記第2の部分に偏在を開始する時点における前記基板に対する前記第1の液体の液滴の静的接触角より小さい請求項1ないし13のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  15. 基板上に付与された前記第1の液体の液滴は複数であり、複数の液滴は、隣接する液滴同士の第1の部分と第2の部分とを対向させるように前記基板上に配列されており、前記複数の液滴の配列方向における前記基板の一端部と他端部とで温度差を生じさせることにより、前記複数の液滴に対し一括して前記温度差を生じさせる請求項1ないし14のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  16. 請求項1ないし15のいずれかに記載の半導体装置の製造方法を用いて、電子機器を製造することを特徴とする電子機器の製造方法。
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