JP2006277652A - サーボゲイン算出方法、サーボゲイン算出プログラム及びサーボゲイン算出装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 フィードバック制御系の伝達関数に対応する理想的な特性を持つ伝達関数を用いてフィードバック制御系のサーボゲインを算出するに当たり、フィードバック制御系の伝達関数と理想的な特性を持つ伝達関数とを等置させ、ラプラス演算子の係数に関する連立方程式を得て、この連立方程式から、正の実数解が得られる係数の条件式を算出する一方、フィードバック制御系の各種定数を決定し、決定された各種係数を正の実数解が得られる係数の条件式に代入してフィードバック制御系のサーボゲインを算出する。
【選択図】 図7
Description
NC工作機械の形状創成を支配する、送り駆動系の制御系をチューニングするに当たり、まず、サーボ系のゲイン余裕及び位相余裕が経験的に定められた範囲内となるように速度ループ及び位置ループの制御ゲインを決定し、その後、目標値に対する追従誤差がゼロになるようにフィードフォワードゲインを計算によって求める(下記の非特許文献1参照)。
外乱抑制特性に優れた積分−比例微分型の補償器の制御ゲインを、従来から用いられている比例−積分型補償器と同じ感覚で調整しようとして、従来型補償器での速度ループゲインと呼ばれるパラメータと同様の意味を持つパラメータαを定義し、このパラメータαを指定すると、制御ゲインを四則演算により計算することができる(下記の特許文献1参照)。
制御ゲインの調整時にオーバシュートを生じさせずに安全に調整することを目的として、スライディングモード制御を適用し、ゲイン自動調整時には自動的にスライディングモード制御へ移行し、スライディングモード制御時の可変ゲインの切替回数を求め、この切替回数に基づいて調整部の値を自動的に調整する(下記の特許文献2参照)。
設計アルゴリズムが提案されている複雑な補償器の採用を可能にするために、制御対象のモデルを作成し、このモデルと実際の制御対象とを同じ構造・パラメータを有する補償器で制御し、両方の制御量の特徴量を比較し、その比較結果から推論を行って上記モデルを修正して実機に近いモデルとし、制御系のゲインを決定し直すことを繰り返して、最終的なゲインを決定する(下記の特許文献3参照)。
数値制御工作機械の送り駆動系においては、複数の軸が高精度に同期して運動する必要があり、モデルマッチング法と呼ばれる手法を用いることで、機構部の特性が異なる2つの制御軸の特性を揃えることができる。その際、モータとテーブルとから構成される送り駆動機構を1つの機械システムと考え、これにモデルマッチング法を用いて設計した制御装置を適用して送り駆動系を構成し、XYテーブルの各軸の性能を一致させると同時に速応化して、送り駆動系の運動精度向上を図る(下記の非特許文献2参照)。
除振台のような固有振動数の低いベース上に搭載されている位置決めサーボ系を調整するに当たり、実際の調整現場で比較的多く用いられている限界感度法に代わって、最初にゲインを投入して閉ループ系を安定化し、かつ定常位置偏差をゼロにしていく調整順序、すなわち初期チューニングの適用を試み、除振台に搭載の精密ステージを暴走させる危険を少なくする(下記の非特許文献3参照)。
同時に2方向の変位を測定することのできるグリッドエンコーダと呼ばれる装置の測定結果に基づき、数値制御工作機械の様々なパラメータを調整するとき、機械本体の100Hz以下の振動を対象とし、速度ループの特性を無視し、位置ループ及びフィードフォワードゲインをチューニングする(下記の非特許文献4参照)。
制御方式を供給するまでに制御対象を何度も動作させることなく、制御対象により近い特性式を用いてゲインチューニングを実施し、制御対象を暴走させることなく最適なゲインチューニングを行うことを可能にするために、制御装置内部にあらかじめ数種類の数学モデルを用意しておき、ユーザが制御対象の構造に合わせてモデルを選択し、その後、制御装置内部で実際に測定される位置や角度などの特徴量とモデルのそれらとを比較してモデルのパラメータを自動的に調整し、そのモデルを使って遺伝的アルゴリズムなどにより制御ゲインを決定し、シミュレーションにより制御性能を確認しながら制御ゲインを決定する(下記の特許文献4参照)。
前記フィードバック制御系の伝達関数と前記理想的な特性を持つ伝達関数とを等置させ、ラプラス演算子の係数に関する連立方程式を得るステップと、
前記連立方程式から、正の実数解が得られる係数の条件式を算出するステップと、
前記フィードバック制御系の各種定数を決定するステップと、
決定された前記各種係数を正の実数解が得られる前記係数の条件式に代入して前記フィードバック制御系のサーボゲインを算出するステップとを、
備えたことを特徴とする。
前記フィードバック制御系の伝達関数と前記理想的な特性を持つ伝達関数とを等置させ、ラプラス演算子の係数に関する連立方程式を得るステップと、
前記連立方程式から、正の実数解が得られる係数の条件式を算出するステップと、
前記フィードバック制御系の各種定数を決定するステップと、
決定された前記各種係数を正の実数解が得られる前記係数の条件式に代入して前記フィードバック制御系のサーボゲインを算出するステップとを、
順次実行することを特徴とする。
前記フィードバック制御系の伝達関数を記憶させた第1の伝達関数記憶手段と、
前記理想的な特性を持つ伝達関数を記憶させた第2の伝達関数記憶手段と、
前記第1の伝達関数記憶手段に記憶させた伝達関数と前記第2の記憶手段に記憶させた伝達関数とを等置させ、ラプラス演算子の係数に関する連立方程式を作成する方程式作成手段と、
前記方程式作成手段で作成された前記連立方程式から、正の実数解が得られる係数の条件式を算出する第1の演算手段と、
前記フィードバック制御系の各種定数を決定する定数決定手段と、
前記定数決定手段で決定された各種定数を前記第1の演算手段で算出された前記係数の条件式に代入して前記フィードバック制御系のサーボゲインを算出する第1のサーボゲイン演算手段とを、
備えたことを特徴とする。
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る駆動機構10の概略構成を示す斜視図である。図1において、平面形状が長方形をなす基板11の表面の両側部には、リニアボールベアリング用のガイドレール12、12が互いに平行に装着され、長手方向の一端部にはモータ固定台13が装着されている。モータ固定台13の外側端面にサーボモータ14が装着され、このサーボモータ14の出力軸が、ガイドレール12、12の中間部に突出している。サーボモータ14の出力軸の延長上には、1対の軸支持台15、15が離隔して装着されている。これらの軸支持台15、15にはボールねじのナット17と係合するねじ軸16の端部がそれぞれ、ラジアル軸受を介して、支承されている。そして、ねじ軸16のモータ固定台13側の端部がサーボモータ14の出力軸に結合されている。また、ガイドレール12、12の長手方向の一部に重なるように作業テーブル18が搭載されている。この作業テーブル18の図面に示す裏側の両側部には不図示のリニアボールベアリングが装着され、さらに、中央部にはナット17が装着されている。以下、この駆動機構10を含むサーボ系のブロック線図、サーボゲインの算出方法、サーボゲインの実際の算出例について説明することとする。
図1に示した駆動機構10は、サーボモータ14の回転をねじ軸16及びナット17によって作業テーブル18の直進運動に変換するもので、一般的なNC工作機械のサーボ系の一部として使用される。このようなサーボ系においては、駆動機構10の固有振動数がサーボ系の固有振動数と比較して十分に大きいため、図2に示すような力学モデルで表現することができ、さらに、この力学モデルは下記の(1)式に示す運動方程式で表現することができる。
サーボ系には、目標値追従特性と外乱抑制特性とが求められる。図1に示す駆動機構10を持つサーボ系においては、摩擦力が最も大きな外乱要素となる。本発明では、まず外乱抑制特性に着目して速度ループ比例ゲインKvpと速度ループ積分ゲインKviとを算出する。また、特に工作機械においては、目標位置より行き過ぎるオーバシュートが生じると材料を削り過ぎてしまうため、位置フィードバックループにはオーバシュートが生じない特性が求められる。本発明は、外乱抑制特性に対して設計した速度フィードバックループの特性から、オーバシュートを生じさせない位置ループ比例ゲインを求める方法をも提供するものである。
そこで、まず、速度ループ比例ゲインKvp及び速度ループ積分ゲインKviの算出方法について説明する。速度フィードバックループの設計には、部分的モデルマッチング法と呼ばれる方法を用いる(北森俊行:制御対象の部分的知識に基づく制御系の設計方法、計測自動制御学会論文集、第15巻、第4号、(1979)pp549-555)。この部分的モデルマッチング法は、ある理想的な特性を持つ伝達関数と、調整対象の伝達関数とが一致するようにサーボゲインを決定する方法である。本発明はこの方法を応用している。
次に、位置フィードバックループの比例ゲインKppを求める手順について説明する。位置フィードバックループの位置ループ比例ゲインKppは、速度フィードバックループの特性に基づいてオーバシュートを生じさせないように決定する。速度ループの速度指令からモータ回転速度までの伝達関数を分母系列で表現すると下記の(11)式のように書くことができる。
速度ループの応答周波数よりも十分に大きい任意の周波数をω′とすると、周波数ω′におけるゲイン[dB]は下記の(14)式となる。
図7は上述したサーボゲイン算出方法の具体的な処理手順を示すフローチャートであり、以下、このフローチャートにしたがって説明する。まず、最初のステップ101では駆動機構を表現する力学モデルに制御系を付加した速度フィードバック系を構成して(3)式に示す速度フィードバックループの伝達関数Gfθ(s)及び(11)式に示す位置フィードバックループの伝達関数GVrθ(s)を決定し、ステップ102で伝達関数Gfθ(s)に対応してこれまで望ましいとして提案されていた(5)式に示す伝達関数GR(s)を探索する。次に、ステップ103にて伝達関数Gfθ(s)と伝達関数GR(s)とを分母系列表現の形で等置させて(7)式に示すようなラプラス演算子の係数に関する連立方程式を作成し、ステップ104では作成された連立方程式から、(9)式に示すように正の実数解が得られる係数の条件式を算出する。次に、ステップ105でフィードバック制御系の各種定数を決定し、ステップ106では正の実数解が得られる係数の条件式に、決定された各種定数を代入して速度フィードバックループのサーボゲインKvp、Kviを算出する。最後のステップ107で速度フィードバックループのサーボゲインKvp、Kviに基づいて位置フィードバックループの比例ゲインKppを算出する。
そこで、ステップ1051で慣性モーメントJを計算し、ステップ1052でフィルタ時定数Tf、トルク制御系の遅れT、D−A変換器のゲインDA、トルク指令調整ゲインTrgを調べ、ステップ1053で粘性係数cを同定する。
図12は本発明の第2の実施の形態に係る駆動機構の概略構成を示す斜視図である。この駆動機構は前述した駆動機構10が、作業テーブルとしてもう一つの駆動機構20上に搭載されたもので、駆動機構10が作業テーブル18をX軸方向に駆動するX軸用の駆動機構であるとすれば、駆動機構20は駆動機構10をY軸方向に駆動するY軸用の駆動機構になっており、これらがXYテーブルを構成している。なお、駆動機構20の詳細については、基本的に駆動機構10と同様に構成されているのでそれらの詳しい説明を省略する。
ここでは、速度フィードバックループを積分−比例制御系及び比例−積分系とした場合についてサーボゲインを計算し、位置指令をステップ状に変化させた場合のステップ応答と、X軸とY軸を同時に動かして、円弧補間運動を行った場合の軌跡誤差とを調べた。また、比較のために、従来から一般的に用いられている比例−積分制御系のサーボゲインを試行錯誤により調整した場合と比較した。
[α0,α1,α2,α3]=[1,1,0.375,0.0625] (20)
なお、参照モデルの係数αは、別の特性を持つ参照モデル(重政隆、高木康夫ほか:制御系設計のための実用的な汎用参照モデル、計測自動制御学会論文集、第19巻、第7号,(1983)pp.592-594)の係数を使用することも可能である。
11 基板
12 ガイドレール
13 モータ固定台
14 サーボモータ
15 軸支持台
16 ねじ軸
17 ナット
18 作業テーブル
30、40 サーボゲイン算出装置
31 第1の伝達関数記憶手段
32 第2の伝達関数記憶手段
33 方程式作成手段
34 条件式演算手段
35 定数決定手段
36 第1のサーボゲイン演算手段
37 第2のサーボゲイン演算手段
Claims (7)
- フィードバック制御系の伝達関数に対応する理想的な特性を持つ伝達関数を用いて前記フィードバック制御系のサーボゲインを算出するサーボゲイン算出方法において、
前記フィードバック制御系の伝達関数と前記理想的な特性を持つ伝達関数とを等置させ、ラプラス演算子の係数に関する連立方程式を得るステップと、
前記連立方程式から、正の実数解が得られる係数の条件式を算出するステップと、
前記フィードバック制御系の各種定数を決定するステップと、
決定された前記各種係数を正の実数解が得られる前記係数の条件式に代入して前記フィードバック制御系のサーボゲインを算出するステップとを、
備えたことを特徴とするサーボゲイン算出方法。 - 前記フィードバック制御系は、速度フィードバックループを備え、前記速度フィードバックループの伝達関数は速度ループ比例ゲイン及び速度ループ積分ゲインを含み、サーボゲインとして前記速度ループ比例ゲイン及び前記速度ループ積分ゲインを算出することを特徴とする請求項1に記載のサーボゲイン算出方法。
- 前記フィードバック制御系は、さらに、位置フィードバックループを備え、前記位置フィードバックループの伝達関数は位置ループ比例ゲインを含み、算出された前記速度ループ比例ゲイン及び前記速度ループ積分ゲインに基づいて前記速度フィードバックループの周波数特性の折点周波数を検出し、検出された折点周波数に基づいて前記位置ループ比例ゲインを算出することを特徴とする請求項2に記載のサーボゲイン算出方法。
- コンピュータに、フィードバック制御系の伝達関数と前記フィードバック制御系の伝達関数に対応する理想的な特性を持つ伝達関数とを記憶させて前記フィードバック制御系のサーボゲインを算出するサーボゲイン算出プログラムにおいて、
前記フィードバック制御系の伝達関数と前記理想的な特性を持つ伝達関数とを等置させ、ラプラス演算子の係数に関する連立方程式を得るステップと、
前記連立方程式から、正の実数解が得られる係数の条件式を算出するステップと、
前記フィードバック制御系の各種定数を決定するステップと、
決定された前記各種係数を正の実数解が得られる前記係数の条件式に代入して前記フィードバック制御系のサーボゲインを算出するステップとを、
順次実行することを特徴とするサーボゲイン算出プログラム。 - フィードバック制御系の伝達関数に対応する理想的な特性を持つ伝達関数を用いて前記フィードバック制御系のサーボゲインを算出するサーボゲイン算出装置において、
前記フィードバック制御系の伝達関数を記憶させた第1の伝達関数記憶手段と、
前記理想的な特性を持つ伝達関数を記憶させた第2の伝達関数記憶手段と、
前記第1の伝達関数記憶手段に記憶させた伝達関数と前記第2の記憶手段に記憶させた伝達関数とを等置させ、ラプラス演算子の係数に関する連立方程式を作成する方程式作成手段と、
前記方程式作成手段で作成された前記連立方程式から、正の実数解が得られる係数の条件式を算出する第1の演算手段と、
前記フィードバック制御系の各種定数を決定する定数決定手段と、
前記定数決定手段で決定された各種定数を前記第1の演算手段で算出された前記係数の条件式に代入して前記フィードバック制御系のサーボゲインを算出する第1のサーボゲイン演算手段とを、
備えたことを特徴とするサーボゲイン算出装置。 - 前記フィードバック制御系は、速度フィードバックループを備え、前記速度フィードバックループの伝達関数は速度ループ比例ゲイン及び速度ループ積分ゲインを含み、サーボゲインとして前記速度ループ比例ゲイン及び前記速度ループ積分ゲインを算出することを特徴とする請求項5に記載のサーボゲイン算出装置。
- 前記フィードバック制御系は、さらに、伝達関数が位置ループ比例ゲインを含む位置フィードバックループを備え、算出された前記速度ループ比例ゲイン及び前記速度ループ積分ゲインに基づいて前記速度フィードバックループの周波数特性の折点周波数を検出し、検出された折点周波数に基づいて前記位置ループ比例ゲインを算出する第2のサーボゲイン演算手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載のサーボゲイン算出装置。
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