JP2006271748A - 変質しない注射剤包装 - Google Patents

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Asako Nakanishi
麻子 中西
Eriko Akita
秋田恵理子
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Abstract

【課題】医療過誤や破損の観点より現在では医療現場ではプラスチック容器が汎用されている。しかし、プラスチック製の容器に封入したH2ブロッカー溶液は温度、光などにより経時的に変質を起こすことが知られている。
【解決手段】H2ブロッカー溶液を含んだプラスチック製容器を酸素のない環境下、具体的には脱酸素剤と共に遮蔽性のあるピローで包装する。これにより、温度、光などの外界からの刺激よりH2ブロッカー溶液の変質を防ぐことができる。
【選択図】なし

Description

本発明はH2拮抗剤、特にN-[2-[[5-[(ジメチルアミノ)メチル]フルフリル]チオ]エチル]-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミン又はその誘導体若しくはその塩について経時的に変化がしないための包装に関する。
現在、ストレス、アルコール、薬物などで胃若しくは十二指腸潰瘍になる事例が増加している。これらの症状は日常生活において支障をきたすばかりか胃ガンへの移行率が高く治癒しなければならない致命的な病気である。これらを治癒するために様々な手段が知られている。そのうち、最近では酸の分泌を抑えるH2ブロッカーなどが使用されている。
また、一般的に薬物は経口投与されることが多いが、より即効性を求める場合や患者が嚥下困難な場合などは注射を用いて薬物を投与する場合もある。このように、注射での投与は経口での投与と同様、非常に重要な手段である。勿論、H2ブロッカーについても同様であり、注射製剤が数多く存在する。そのうち、N-[2-[[5-[(ジメチルアミノ)メチル]フルフリル]チオ]エチル]-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミン(以下、化合物Iとする、特許文献1)は下記の構造を示し、錠剤、散剤、注射剤と様々な剤形の製剤が存在する。
Figure 2006271748

化合物I
しかし、H2ブロッカーである化合物Iは溶液にすると非常に安定性が悪くなることが知られている。そのために、溶液のpHを6.5〜7.5に調整することにより安定化できることが知られている(特許文献2)。
また、通常注射剤には内容物との反応性の少ないガラスが用いられることが多かった。しかし、ガラスは輸送時や使用時において破損しやすく、更にはアンプル製剤の場合は中の溶液を取り出すときにガラスを割るが、その際に細かい破片が溶液内に入り、結果的に人体に入り込むことになる。従って、昨今ではプラスチック製のアンプル、バイアル、シリンジ等を使用することが多くなっている。我々も上記のpHになるような化合物Iの溶液を製造し、上記のような理由を加味してプラスチック製の容器で保存した結果、非遮光下で着色変化を起こした。通常は遮光性のあるプラスチック製の容器か若しくはその容器を包装する容器を遮光性のある材質を用いる場合が多いが、注射剤の場合、微生物の繁殖や製造中の異物混入などは製薬企業でも十分に確認すべきではあるが、最前線の医療機関でも確認されるべきである。このような視点より、注射剤に遮光性のある材質を用いることは好ましいことではない。
英国特許第1565966号 特開昭59−219225号
このように、H2ブロッカーの溶液を入れるための容器にプラスチック製を用いると、光によって変色が起きる。このような容器は医療現場の環境を考えると好ましくない。従って、我々は透明なプラスチック製の容器にH2ブロッカーの溶液を入れても変色せず経時的に安定な製剤を得ることを本発明の目的とした。
発明者らは様々な検討の結果、H2ブロッカーである塩酸ラニチジン溶液含有の容器を実質的に酸素がない環境下で保管することにより、通常の状態に比べ格段に色の変色や純度の低下を抑えることができることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は以下の内容をその要旨とするものである。
(1)実質的に酸素の無い状態で包装されたH2ブロッカー溶液製剤
(2)H2ブロッカーがN-[2-[[5-[(ジメチルアミノ)メチル]フルフリル]チオ]エチル]-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの塩である(1)の製剤
(3)H2ブロッカーの溶液を充填した容器を脱酸素剤と共に空気を透過しない包装資材で包装した製剤
(4)H2ブロッカーがN-[2-[[5-[(ジメチルアミノ)メチル]フルフリル]チオ]エチル]-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの塩である(3)の製剤
(5)H2ブロッカーの溶液が人体に注射するために作られた(3)の製剤
(6)H2ブロッカーの溶液がシリンジに封入された(3)の製剤
本発明はH2ブロッカーの溶液を透明なプラスチック製の容器に入れ、酸素のない環境下を作り出すような包装をしたとき、光に対して経時的に安定である。従って、どのような環境下においても内容物であるH2ブロッカーが変質せず経時的に安定な状態を保つことができる。
本発明に用いる医薬品有効成分はH2ブロッカーであれば特段どのような薬物でも良い。例えば、化合物I、ファモチジン、ニザチジン、シメチジン、ロキサチジン若しくはこれらの誘導体又はその塩である。また、これらの薬物の量は特に限定されないが、化合物Iの場合、好ましくは2〜2000mg/mL、更に好ましくは10〜1000mg/mLである。
また、薬物を溶解するための溶媒としては特に限定されることはない。しかし、人体や環境の影響等を加味して精製水、注射溶液若しくはエタノール若しくはこれらの混液が好ましく、更に好ましくは注射用水若しくは精製水である。
また、本発明に影響しない程度に、溶液の安定化、pH調整剤等添加することも可能である。このような添加剤として安定化剤、界面活性剤、可溶化剤、緩衝剤、抗酸化剤、消泡剤、乳化剤、pH調整剤、防腐剤、保存剤、溶解補助剤、溶剤を目的とした添加剤を添加することができる。
安定化剤としてはアジピン酸、アスコルビン酸、安息香酸、イノシトール、エチレンジアミン、エデト酸ナトリウム、酢酸トコフェロール等が、界面活性剤としてはポリソルベート、マクロゴール400等が、可溶化剤としてはグリセリン、精製大豆レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、マクロゴール4000等が、緩衝剤としては塩化ナトリウム、氷酢酸、無水クエン酸、リン酸等が挙げられる。抗酸化剤としてはパラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ブチルヒドロキシアニソール、ピロ亜硫酸ナトリウム等が、消泡剤としてはエタノール、ソルビタン脂肪酸エステル等が、乳化剤としては高度精製卵黄レシチン、D-ソルビトール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が、pH調整剤としてはクエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム液、リン酸水素ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。防腐剤としては安息香酸、エデト酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル等が、保存剤としてはフェノールなどが挙げられる。
このように製造された溶液はシリンジ、バイアル、アンプルなどの容器に入れられる。本発明の場合、直接の容器であるこれらの材質については特段規定は無いが、好ましくはポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン等が挙げられる。
実質的に酸素の無い状態とは、酸素に不安定な薬物をある容器に充填した場合、容器内に存在する酸素により薬物が酸化等による化学変化しない程度に酸素がない状態を示す。具体的には化合物Iの場合、包装容器内の酸素の量は容器全体の5%以下、更に好ましくは1%以下の状態であればよい。このような状態にするためには何らかの方法で酸素を除かなければならない。酸素を除く方法としては特に限定することはない通常は酸素により変質しやすい薬物を溶解した溶液を窒素等の不活性化ガスでバブリング等をし、更に溶液を入れる容器に存在する気体を先に提示した不活性ガスで置換する方法が一般的である。しかし、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン等は空気の遮断能力に乏しいため既存の方法では化合物の変質を抑えることは難しい。そのため、薬物の溶液を入れた容器を包装する容器内の環境を実質的に酸素のない状態にすることにより薬物の安定性は確保される。更によりよい方法としては脱酸素剤を容器と共に包装する方法である。不活性ガスを混入する場合はその量、時間等を厳密に調整する必要性があるが、脱酸素剤を包装容器中に加えることは容易にでき、且つ確実に酸素を除くことが可能であることからも最良の方法であると考える。また、其れ以上にプレフィルドシリンジはガス充填ができないため、脱酸素剤を添加する方法は非常に有効である。
薬液が充填された容器を包装するための容器の材質としては薬液が経時的に変化しない環境であればよい。即ち、薬液を充てんした容器を包装する容器内の環境は酸素がほとんどない状態であればよい。この場合、実質的に外気との遮断できればよい。実質的に外気との遮断ができる状態とは、薬液が変色しなければよい。H2ブロッカーの場合は酸素が存在することにより薬液の経時的な変化が生じることは既に先に述べている。従って、最終的な包装内の環境が酸素の量として容器全体の5%以下、更に好ましくは1%以下の状態が経時的に保たせることができる包装資材であればよい。このような資材として好ましくはアルミ、アルミナやシリカなどを蒸着させたフィルム、塩化ビニルデン等が挙げられる。
以下、実施例を挙げ本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
比較例
化合物I 57g、フェノール10gを注射用水に溶解させた。この溶液をリン酸二水素カリウムと無水リン酸一水素ナトリウムを用い、pH7.0に調整し、全量2Lになるように注射用水を加えた。この溶液2mLを環状ポリオレフィン製のプラスチックシリンジに充填した。
実施例
比較例で充填したシリンジを脱酸素剤エージレス(三菱ガス化学株式会社製)と共に透明蒸着ガスバリアピロー(カイト化学社製)の袋に包装した。なお、包装後、8時間経過後の酸素残存量は0.32%であった。
試験例1
比較例のシリンジと実施例のシリンジを共に500luxで1ヶ月間照射した。これらについて
それぞれ性状と純度について測定した。その結果を表1に示す。
なお、それぞれの試験は下記のように実施した。
性状:白色の紙にシリンジをおき、その時の性状を確認した。
透過度:420nmの透過度を測定した。
類縁物質:薄層クロマトグラフィー法を用い、類縁物質の量を測定した。
Figure 2006271748
試験例2
比較例のシリンジと実施例のシリンジを共に40度の環境下で1ヶ月間放置した。これら
についてそれぞれ性状と純度について測定した。その結果を表2に示す。
なお、試験方法については試練例1と同様の方法で実施した。
Figure 2006271748
本発明は酸素に弱い薬物の溶液をどのような材質の容器に充填しても変質しないため、今までの製剤にくらべ格段に安定な製剤として有用である。

Claims (6)

  1. 実質的に酸素の無い状態で包装されたH2ブロッカー溶液製剤
  2. H2ブロッカーがN-[2-[[5-[(ジメチルアミノ)メチル]フルフリル]チオ]エチル]-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの塩である請求項1の製剤
  3. H2ブロッカーの溶液を充填した容器を脱酸素剤と共に更に空気を透過しない包装資材で包装した製剤
  4. H2ブロッカーの溶液をガスバリア性のあるプラスチック製容器に充填するか、プラスチック製容器のガスバリア性が乏しい場合には、更にガスバリア性のある素材で方法すると共に脱酸素剤を当該第二の包装中に同封する、安定なH2ブロッカー溶液製剤
  5. H2ブロッカーの溶液が人体に注射するために作られた請求項3の製剤
  6. H2ブロッカーの溶液がシリンジに封入された請求項3の製剤
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Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS59219225A (ja) * 1983-05-13 1984-12-10 グラクソ・グル−プ・リミテツド 医薬組成物
WO2003055483A1 (fr) * 2001-12-27 2003-07-10 Terumo Kabushiki Kaisha Solution d'injection de famotidine

Patent Citations (2)

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