次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による大便器ユニットの斜視図である。
大便器ユニット1は、使用者の排泄物を受けて下水に排出する洋風大便器11と、尿量推定手段を含む各種機能が組み込まれた機能ケース2とを有し、これらが一体に形成されている。さらに、大便器ユニット1は、その上面に使用者が着座する便座23と、その便座23を覆い、回動自在に配置された便ふた24とを有する。大便器ユニット1は、付属装置として、使用者を特定するためのIDカード21と、操作・表示部22とを有する。大便器ユニット1の各種機能は、IDカード21に格納されている個人認証情報を読み取ることや、使用者の接近の検知、或いは準備スイッチの操作によって起動され、スタンバイ状態となり、操作・表示部22の操作によって測定などの動作を行う。また、大便器ユニット1による測定結果は、操作・表示部22に表示され、使用者に向けて開示される。さらに、機能ケース2は、使用者の尿量を計算する尿量算出手段(図示せず)、使用者の尿流率を計算する尿流率算出手段(図示せず)、使用者の排尿時間を算出する排尿時間算出手段(図示せず)を内蔵している。
使用者特定手段は、無線通信電波に駆動電力を重畳しているIDカード21に限定されない。即ち、操作・表示部22の特定のスイッチを操作したり、暗証番号を入力したり、指紋や体重など個人を特定する生体情報を使用したりすることによって使用者を特定してもよい。また、操作・表示部22と機能ケース2の間の情報伝送は赤外線を媒体として行われる。他の実施例として、電波を使用した無線通信や、有線の信号伝送であっても良い。
図2は、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1における溜水排出手段の一例を示す断面図である。
洋風大便器11の内側にはボール12が設けられ、溜水13が汚物を受ける媒体として溜まっている。ボール12は水封構造を有したトラップ部15、およびトラップ部15の先端に接続された排水接続管16を介して図示しない下水管と連通している。ボール12の底部には、ゼット吐水ノズル31が配置されている。ボール12の上端にはリム14が形成され、リム14近傍にはリム吐水ノズル32が配置されている。そして、このゼット吐水ノズル31およびリム吐水ノズル32には、洋風大便器11の上部後方に設けられた水路切替手段(水路切替バルブ)3から導水管を介して水が供給される。リム吐水ノズル32は略円形状のボール12の上端内周に対して接線方向に配置されており、そこからの吐水はボール12の内周面を旋回しながら溜水13に達するので溜水13は渦を巻いて溜水13中の汚物が渦に沿って中央に集まる機能を果たしたり、水位低下した溜水13を溢流水位41に戻したりする機能を果たしている。
ゼット吐水ノズル31から吐出された水が20L/min程度の流量でトラップ部15に打ち込まれてトラップ部15が満水となることによってサイホン現象が発生し、溜水13は下水管に向けて一気に流出し、排出される。したがって、ゼット吐水ノズル31は、溜水排出手段として機能する。ゼット吐水ノズル31の流速・吐水時間が適切でない場合には、溜水13が全て流出してしまい、封水切れを起こし、下水臭気の逆流が発生する可能性がある。本実施形態では、サイホン現象が発生した後も溜水13の水位が封水切れ水位43を下回らないようにゼット吐水ノズル31の適切な流速・吐水時間を設定している。本実施形態においては、ゼット吐水ノズル31からの吐水によって、トラップ部15の頂上位置である溢流水位41にあった溜水13はサイホン現象によって所定水位42まで低下する。溢流水位41と所定水位42間の溜水量は、測定を実施する排泄尿量の最大値以上となるように設定している。なお、洋風大便器11が焼成品である場合は、形状寸法精度を高めることは、技術的な難易度が高く、洋風大便器11の形状特性的に溜水切れ水位43を下回らないような設定を行うことが難しい。その場合は、後述する図13のシーケンスで示すように、溜水13の水位を封水水位以上に上昇させる溜水復帰手段を設けても良い。また、洋風大便器11を封水水位以下で使用する場合には、同じく後述する図15で示す下水管起因の臭気の逆流を防止するための脱臭手段を施す必要がある。
一般に人間の排泄尿量は1回あたり最大で1000mL程度であるため、前述した溢流水位41と所定水位42間の溜水量は1000mL以上を設計値としておけば、便器に排泄される尿が下水に溢れることはなく、排泄された尿全体を測定対象とすることができる。このように、トラップ部に発生するサイホン現象を利用して溜水の量を制御すれば、溜水水位を下げるために、排泄物や洗剤が内在している可能性のある溜水をポンプを用いて吸引する必要が無く、接水機能部材の動作信頼性が低下する恐れがない。
図3は、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1に使用することができる溜水排出手段の変形例を示す断面図である。この変形例では、ゼット吐水を行ってサイホン現象を発生させる代わりに、排水口33から溜水13を排出している。
洋風大便器11の内側にはボール12が設けられ、溜水13が汚物を受ける媒体として溜まっている。ボール12は水封構造を有したトラップ部15、およびトラップ部15の先端に接続された排水接続管16を介して図示しない下水管と連通している。ボール12の上端にはリム14が形成されている。溜水13が溜まっているトラップ部15の所定水位42の位置には、溜水13を排水接続管16に排出するための排水口33が設けられている。排水口33の開口位置は使用者の排泄物が直接接触する可能性のない、トラップ部15に設けられ、下水からの臭気等の逆流を配慮し、封水切れ水位43より上方となっている。排水口33と排水接続管16の間は排水路34で結ばれており、その途中に排水弁35が配置されている。
排水弁35の水路が開放されると、溜水13は所定水位42となるまで溢流水位41から水を排水する。排水路34および排水弁35には、排泄物や洗剤が内在している溜水13が通過する可能性があるため、動作信頼性を配慮した材質選定や、電装部材が直接溜水と接しないように、シリコンチューブとピンチバルブ方式の組合せが適する。
次に、図4を参照して、本発明の第1実施形態による大便器ユニットにおける尿量推定を説明する。
前述した溜水排出手段によって所定水位42とされた溜水13に尿17が排泄された場合、溜水13は尿量の分だけ水位が上昇する。一般的な洋風大便器の場合、その変化量は尿量100mLに対して2mmから5mm程度となる。水位が1mm変化すると溜水の水圧は9.8068Pa変化する。このように、ボールに貯まる尿量と、溜水水位と、溜水水圧とは、相関関係を持っており、これを利用して尿量を推定することができる。ところで、洋風大便器11のボール12の形状は便器のデザインや製造時の製造条件によってバラつくため、尿量に対する溜水13の水位の変化は常に一定にはならない。本実施形態においては、便器毎に溜水13の溜水量変化と水位変化との関係が、尿量算出手段(図示せず)に設定入力されている。或いは、施工時に一定量のダミー尿に対する水位変化を測定して溜水量と水位の関係を示す検量線を設定するようにしてもよい。これにより、溜水13の単位時間毎の水位変化を測定して溜水量変化を求め、単位時間当たりの尿流率(尿流速)が測定できる。
ボール12の底部に設けられた水位測定手段である圧力センサ44で溜水の圧力変化を測定する。尿量算出手段(図示せず)は、その圧力変化量を水位変化量に換算し、その結果を尿量として推定演算する。或いは、図4に二点差線で示すように、ボール12の底部に接続された導圧路45を介して圧力を導き、その圧力を圧力センサ46で測定するように構成することもできる、なお、導圧路45を利用した場合、水位測定手段である圧力センサ46を溢流水位41の上方に配置することができるので、圧力センサ46が直接溜水13と接することが無く、動作信頼性を向上させることができる。ここで、圧力センサ44は、溜水13の水圧を直接検出するが、圧力センサ46の場合は導圧路45内部の溜水13から空気を介して水圧を検出することになる。従って、圧力センサ44の方がSN比等の測定精度面では優れ、圧力センサ46は動作の信頼性の面で優れている。圧力センサの形式としては、差圧センサタイプとすると大気圧の変化による誤差の発生を防止することができる。圧力センサとして、血圧計や気圧計などに使用されているタイプのセンサを使用することができる。これらの圧力センサの測定原理としては、例えばシリコンウエハーに発生する圧力起因の歪み量をブリッジ回路で読み取るものや、静電容量変化を測定するものがある。圧力センサの導圧路の一部にシリコンオイルなどを充填すると、感圧素子であるシリコンウエハーと、汚物や洗剤を含んだ溜水と接している空気が直接接触しないため、センシング素子やその接続部材に対して腐食等が発生する恐れが少なく、より圧力センサの動作信頼性を向上させることができる。
図5は、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1のシステムブロック図である。
機能部に入ってきた水(市水)は、給水部を介して水路切替手段3に導かれる。この水路切替手段3は、洋風大便器11の溜水水位を下げる溜水排出手段としてのサイホン現象発生手段(ゼット吐水ノズル31)と、溜水水位を元に戻すための水補給手段(リム吐水ノズル32)が洋風大便器11に接続されると共に、尿量推定のための溜水の水位測定手段、洋風大便器11に配置された図示せぬ採尿手段、および洋風大便器11と機能部の尿に含まれる特定成分のセンシング手段にも接続されて、各々を洗浄する水が供給される。各々の電装部品は機能部の制御手段によって駆動され、制御手段は通信手段を介して操作・表示部22に動作内容を伝達すると共に、測定結果が開示されるようになっている。
なお測定値は使用者に開示されるだけでなく、医療機関との連携や、食事・運動サービスや、インセンティブ面を配慮した保険サービスなどとの連携を配慮して、通信を介して伝送されるものであっても良い。
次に、図6を参照して、本発明の第1実施形態による大便器ユニットの動作シーケンスを説明する。
使用者が測定開始スイッチを操作すると、溜水排出手段が溜水の排出を行う。本実施形態においては、溜水排出手段はゼット吐水でサイホン現象を発生させるものであり、変形例では排水路34に設けられた排水弁35を開放して、共に溜水を排水接続管16を介して下水に排出し、溜水の水位を低下させるものである。ここでは、ゼット吐水でサイホン現象を発生させるものについて説明する。溜水排出手段で溜水を排出後、リム吐水ノズル32から少量の給水を行い溜水13の所定水位42までの復水が終了すると測定準備が完了する。準備が整った状態で使用者は溜水13に向けて排尿すると、溜水13の水位が上昇する。水位変化は排泄尿量を推定する基礎データとなる。本実施形態では、測定準備の開始は、使用者が実施する測定開始スイッチを起点として実施される。変形例として、大便器ユニットに人体検知センサを取り付けておき、この人体検知センサが使用者を検知することによって自動的に測定準備が開始されるように構成してもよい。更には、医療機関で使用される場合には、個人認証のため使用者が保有しているIDカード等を検知して測定準備動作を行う構成としても良い。サイホン現象を発生させて水位を下げる準備を実施するのに、出願人が行った実験では10秒程度必要であることを確認したが、人体検知を起因として準備を実施すれば、脱衣に要する時間を配慮すると、脱衣した時には概ね準備が完了していることになり、排尿を待たなければならないタイムラグ時間を抑制できる。この場合の動作シーケンスについては後述する。
水位変化が無くなることによって排尿完了を検知すると、測定手段の水位変化測定値から尿量が演算され、使用者に開示され、合わせて測定系の洗浄動作が実施される。或いは、他のセンシングに供するために使用者の尿を採取する採尿器の尿検知が無くなったこと、または、排尿終了スイッチの操作によって排尿完了を検知するように構成することもできる。水補給手段(リム吐水ノズル32)によって、溜水13は元の溢流水位41に戻される。これは、溜水13が溢流水位より相当量少ない場合には、通常の便器洗浄動作ではトラップ部15にサイホン現象が発生しないことがあり、排泄物が流しきれないことがあるため、それを防止するものである。この復水動作後に、使用者が便器洗浄操作スイッチを操作すると、リム吐水によって溜水13が旋回して排泄物を中央に集め、そのタイミングでゼット吐水されてトラップ部15にサイホン現象が発生し、排泄物が下水に排出された後に再びリム吐水されて水位が溢流水位41となる。
次に、図7を参照して、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1の動作フローを説明する。
使用者が測定開始スイッチを操作すると、溜水排出手段が溜水の排出を行う。測定中は大便の排泄やトイレットペーパーの大便器11への投入禁止を使用者に促すよう報知手段である操作・表示部22に表示して報知する。所定位置までの排水が終了すると測定準備が完了し、使用者は溜水に向けて排尿し、溜水の水位が上昇する。水位変化が無くなる、採尿器の尿検知が無くなる、または、排尿終了スイッチの操作によって排尿完了を検知すると、測定手段の水位変化測定値から尿量が演算され、使用者に開示され、合わせて測定系の洗浄動作が実施される。尚、本動作フローでは後述するように、測定中に大便が排泄された可能性の有無を判断・報知することも行っている。
図8は、使用者の排尿中における溜水の水位変化の一例を示すグラフである。本実施形態においては、水位変化を圧力に換算して直接モニターしているため、図8のように不連続な圧力変化が挙動を示した時は、尿という連続体だけでなく大便の同時排泄がされたことを示し、排尿量測定値に誤差が生じていることを使用者や測定値の管理・活用者に開示することもできる。なお同一の排尿行為を行うことは不可能であることから、大便が混入された場合においても、後述する図12の方法で尿量測定値を補正したものを開示しても良い。補正を実施した場合は、所定の尿量推定精度が確保されていない恐れがあるため、治療方針・管理方針などを誤る恐れがないよう、補正済であることを使用者や測定値の管理・活用者に開示する。水補給手段(リム吐水ノズル32)によって、溜水13は元の溢流水位41に戻される。溜水水位が溢流水位41に戻ると、大便の排泄やトイレットペーパーの投入禁止表示は消灯となる。操作・表示部22への表示により、測定をするに対しての留意事項を使用者に報知することができ、測定系に排泄物が侵入して動作不良を起すことがない。そして、使用者が便器洗浄操作を実施すると、リム吐水によって溜水13が旋回して排泄物を中央に集め、そのタイミングでゼット吐水されてサイホン現象が発生し、排泄物が下水に排出された後に再びリム吐水されて水位が溢流水位41となる。測定系の洗浄も完了すると、使用者に対して次回の測定が可能となったことが表示される。
図8は、本発明の大便器ユニットの溜水の圧力変化挙動の模式図であり、基準となっている圧力から、圧力センサ44によって圧力変化として測定された差分が排泄された尿量を示すものである。また圧力変化開始時から、圧力変化終了までの時間が排尿時間を示すことになる。単位時間当りの尿量、つまり尿量変化を時間微分したものが単位時間当たりの排尿量である尿流率になるが、その点は図12で詳述する。一般に前立腺肥大などの泌尿器系疾患は、尿量・排尿時間・最大尿流率などで管理値となっている。本実施形態による大便器ユニット1では、平常通りトイレで排尿をするだけで前立腺肥大をはじめとする泌尿器系疾患の指標である尿流率を測定することができる。トイレというパーソナル空間で測定が実施可能であることから、羞恥心無く繰返し測定が実施でき、尿意を感じた時の状態を測定できるため、継続的な治療効果の確認などで信頼性の高い管理を行うことができる。
尿だけが排泄された場合に対して、大便が途中で排泄された場合は圧力変化挙動が不連続になっている。大便が排泄された場合、固形物の落下に伴う大振幅・低周波数の圧力値が測定されることになるが、その点に関しても図12で詳述する。
図9は、本発明の第1実施形態の大便器ユニット1に使用される尿の特定成分濃度を測定する尿検体採取装置を示す。
尿検体採取装置である採尿器52は便器ボール内を回動するよう、リムカバー51を介して洋風大便器11に係止される。使用者から排泄された尿は採尿部52でその一部を直接採取されると共に、採取できなかった尿は溜水13に落下する。落下した尿は前述の機構で尿量が測定される。採尿器52で採取された尿は、採尿器52の内部に配置されたセンシング手段や、採尿器52から計測部に吸引された後にセンシング手段によって特定成分の濃度が測定されるようになっている。尿検体採取装置で尿を採取した場合には、尿検体採取装置で採取された尿の量と、溜水13に落下した尿量を加算することによって、排泄された尿量を計算する。また、尿が膀胱に溜まるまでには時間がかかるため、尿量・尿流率などの情報を測定する時と、他の臨床検査を実施するための検体採取は同時に実施するべきであり、尿を他の臨床検査に使用したい場合は、検体として備蓄容器54に尿を吸引して採取すればよい。本実施形態の大便器ユニット1によれば、一回の排尿に対する排尿状態、排尿量に関する測定と、尿に含まれる特定成分の定量および/または定性測定を同時に実施することができる。
尿量と特定成分濃度を乗じたものは排泄実量である。例えば尿塩分濃度に尿量を乗じたものは塩分排泄量であり高血圧症の指標になる。また、尿糖濃度に尿量を乗じたものは糖排泄量であり、糖尿病の指標になる。
次に、図16を参照して、備蓄容器54に尿を採取する機構について説明する。
図16は、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1に使用される尿採取システムの一例を示す模式図である。この尿採取システムは、採尿器52で採取された尿を、負圧発生手段が採尿アーム53経由で備蓄容器54に対して吸引する。負圧発生手段としては、検体の顕微鏡検査を配慮し、細胞がダメージを受ける恐れが少ないシリンジポンプが好適である。
図17は、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1に使用される尿採取システムの第二の例を示す模式図である。この尿採取システムは、採尿器52で採取された尿を、採尿アーム53と開閉弁経由で備蓄容器54に吸引する。備蓄容器54の内部は負圧になっており、その入り口部にはダックビルなどと称される逆止弁58が設けられる。吸引配管系にセットされた備蓄容器54は管路の接合によって逆止弁58が開放される。採尿器52に設けられた尿検知手段の信号で、管路に設けられた開閉弁が開き、尿が備蓄容器54に対して自動吸引されるようになっている。本構成は採血シリンジなどで実用化されている方式であり、負圧発生のための機構部分を必要としないというメリットがある。
次に、図10を参照して、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1における特定成分濃度の測定を説明する。
図10に示すように、溜水測定部6は、その外郭を構成するケース61が洋風大便器11に係止されている。使用者が排泄した尿は、洋風大便器11のボール12に溜まった溜水13に落下する。採水部62に特定成分の濃度測定手段が配置されている場合、前記特定成分は水位を下げた状態の溜水量によって希釈される。採水部62に配置される図示しない特定成分濃度測定手段によって濃度が測定された後、前記溜水量と尿量を勘案して濃度が測定されることになる。測定された濃度は前述と同じく、尿量を乗じることによって排泄実量となる。
次に、図11を参照して、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1における特定成分濃度の測定を説明する。図11は、特定成分濃度の測定の数学的モデル図である。
洋風大便器11中の溜水は、水位をさげることによって容積Q0となっている。膀胱4に溜まった尿の容量をR、特定成分濃度をη1とする。また、溜水の特定成分濃度をη2とする。両者が混合されることによって、容積は(R+Q0)となり、特定成分濃度はη3となる。両者を等式で表すと、
R×η1+Q0×η2=(R+Q0)×η3 ・・・・[数1]
という[数1]式で表されるため、尿の特定成分濃度η1は次の[数2]式によって推定されることになる。
η1={(R+Q0)η3−Q0×η2}/R ・・[数2]
図12は、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1で測定された尿量と尿流率の時間あたりの変化を示す模式図であり、図8において測定された圧力変化挙動を、水位変化挙動経由で尿量・尿流率測定値に換算したものである。上段のグラフは尿量の時間変化挙動を測定したもので、大便が途中で排泄された場合を示している。大便が途中で排泄された場合には、尿だけが排泄された場合のグラフに対して、グラフ上に大振幅・低周波数の波動が測定される。溜水容量3.5Lの便器で実験を行ったところ、大便落下に伴う周波数は5Hz程度であった。中段のグラフは、上述の特性を配慮し、上段のグラフに大便の溜水落下に起因する1から10Hz程度の周波数に対して周波数バンドパスフィルターをかけたものである。即ち、中段のグラフは、上段のグラフから1Hzよりも低い周波数成分と、10Hzよりも高い周波数成分を除去したものである。バンドパスフィルターの特性としては、便器毎の特性に合わせて調整すればよい。中段のグラフにおいて、時間当りの尿量変化カーブに変曲点が発生しており、カーブがジャンプしている量が大便量を表すことになる。尿だけが排泄された場合は変化量そのものが尿量になるが、大便が途中で排泄された場合は前述の大便量を差し引けば尿量ということになる。尿量算出手段(図示せず)に内蔵されている大便排泄検知手段(図示せず)は、水位変化波形に含まれる周波数成分および/または水位変化波形の振幅変化挙動に基づいて大便の排泄を検知する。尿量算出手段(図示せず)は、大便排泄による溜水水位の変化量を推定し、この推定した変化量に基づいて算出した尿量を補正する。このように、本実施形態の大便器ユニット1では、尿量測定中に大便を誤って排泄した場合でも、大便量を含んだ尿量を測定値として出力することがない。この場合、測定された尿量は、精度面では懸念される部分があるため、使用者、および、そのデータを活用する方に対しては、懸念事項のあるデータであることを合わせて開示する。このように、尿量測定時の大便排泄は尿量測定に対して誤差となることが考えられるが、誤差存在の可能性を使用者、および/または測定データの管理する医療関係者に開示して注意を仰ぐことができるため、医学的判断において誤りの発生防止を図ることができる。
下段のグラフは、尿流率算出手段(図示せず)によって算出された単位時間当りの尿量、つまり尿量変化を時間で微分したもので、尿流率の時間変動を表している。微係数が極端に大きい不連続部分は、大便の落下による部分であり、その部分を除外したカーブが尿流率を示すものである。また、排尿時間算出手段(図示せず)は、尿流率の時間変動に基づいて、排尿時間を算出する。最大尿流率や排尿時間などは、前立腺肥大などの泌尿器疾患の管理・治療に使用することができる。
次に、図13を参照して、尿量測定が途中で中断された場合の作用を説明する。図13は、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1において、測定を途中で中止した場合の動作シーケンス図である。使用者が測定開始スイッチを操作すると、ゼット吐水でサイホン現象を発生し、溜水の水位を低下させる。所定位置までの給水が終了すると測定準備が完了し、使用者の排尿を待つ。排尿を待機する状態において、所定時間経っても水位が上昇しない場合には使用者が測定を中止したものと判断し、水補給手段は溜水を溢流位置まで増やし、その後に便器洗浄を実施している。仮に事前準備中にゼット吐水の水圧変動やトラップ側の圧力変動等の原因で封水切れが発生している場合は下水配管内の臭気がトイレ内に逆流する恐れがある。加えて、溜水水位が下がった状態で便器洗浄を実施した場合には、充分なサイホン現象が発生しないため、所定時間以内に溜水は復帰するように配慮されている。好ましくは、所定時間として、一般的なトイレにおける排泄時間を配慮し、1〜2分程度とする。本実施形態の大便器ユニット1では、測定を途中で中止したような場合において、溜水水位を封水水位以上に復帰させるので、以降の便器装置としての使い勝手に影響を与えたり、下水管からの臭気に対する脱臭手段作動を永続的に実施する必要がない。
次に、図14を参照して、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1の別の動作シーケンスを説明する。図14は、大便器ユニット1の別の動作シーケンスを示す図であり、通常状態において溜水を所定位置まで下げた状態で待機させたものである。すなわち、測定後の準備動作において、通常の便器洗浄工程(リム吐水、ゼット吐水、リム吐水の順次洗浄)後にゼット吐水を短時間行い溜水の一部を排出して、溜水を低い水位に保持する。この場合、使用者は特別な操作無しで尿量をはじめとする特性値を、トイレ入室後すぐに測定することができる。この動作シーケンスでは、使用者がトイレに入室した時点で測定準備が完了しており、待ち時間を全く無くした尿量測定を行うことができる。また、開始時にスイッチ操作等を行わなくてもよい。なお、溜水水位が下がり、封水面が下がった状態で待機しているため、便器の乾燥面に汚物汚れが付着する可能性が高くなるため、使用者数が多く、かつ、便器の清掃等に関するメンテナンス従事者が充実している施設において推奨される準備方法である。
次に、図15を参照して、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1の脱臭手段を説明する。図15は、本実施形態による大便器ユニット1の脱臭手段である脱臭装置55、送風装置56及び送水装置57を示す断面図である。洋風大便器11が接続される下水管からは封水が切れると下水管内部の臭気が逆流するので、封水は切れないよう配慮するべきであるが、便器のサイホン状態によっては封水切れが発生してしまうので完全を期すことができない。またボール12に排泄された尿量当りの水位変化量を考えると、ボール12の底部では尿量当りの水位変化量が大きいので、溜水13の量は少ないほど高精度が期待できる。従って、本実施形態では、所定水位42を尿量測定時に封水切れとなる低水位の溜水量とし、脱臭手段との組合せで測定実施中に臭気の問題が発生しないようになっている。吸引装置である脱臭装置55は、ボール12の臭気を吸引し、活性炭等の吸着材、あるいはオゾンによる酸化分解および酸化還元触媒等の脱臭装置で処理して排出するものである。排水接続管に接続された送風装置56は、排水接続管16経由で下水に向けて空気を流すことで、臭気の逆流を防止している。これらの脱臭手段は洋風大便器11の性能に影響を与えることが無く、便器としての使い勝手が低下することがない。洋風大便器11に設けた脱臭手段を駆動することにより、洋風大便器11の溜水水位が下がった状態であっても、下水管から逆流する臭気によって使用者が不快感を感じることがない。送水装置57は、排水接続管16経由で下水に水を流すことで、トラップ部15に負圧を発生させて臭気の逆流を防止している。使用者に対する準備動作と合わせて作動するだけでなく、複数の脱臭装置を組み合わせても、単独の脱臭装置を採用しても良い。
本発明の第1実施形態による大便器ユニット1は、医療機関における治療や、家庭における健康管理に有用性の高い尿量、および、その関連指標をトイレで排尿を行うだけで測定しようとするものである。本実施形態の大便器ユニット1によれば、トイレとしての使い勝手を低下させることなく、信頼性の高い測定を行うことができる。また、本実施形態の大便器ユニット1は、トイレというパーソナル空間での測定を可能とするものであるため、疾病を持った患者が測定することに対して羞恥心をはじめとする心理的弊害を与えることもなく、また、医療従事者も複数回数の測定を指示・確認することによって、治療効果の促進を図ることができる。
また、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1によれば、排泄された尿を下水に流出させずにボール内に貯めて尿量を測定することができ、簡単な構成で高精度に排泄尿量を測定することができる。さらに、本実施形態の大便器ユニット1によれば、尿量を測定する作業自体はトイレで排尿することの一連の動作で実施でき、特別な対応を必要としない。また、本実施形態の大便器ユニット1によれば、サイホン現象を利用して溜水水位を低下させているので、ポンプなどで溜水水位を低下させる場合に比べ、排泄物自体を吸引する恐れが無く測定系の信頼性を高めることができる。
さらに、本発明の第1実施形態による大便器ユニット1によれば、測定準備に要する時間が、使用者がトイレ入室から排尿までに要する時間と同程度であるので、測定に対する使用者の心理的負担発生が発生しにくい。また、準備時間の長さは選定した方法によって変化するため、設置場所の使用者数・メンテナンス頻度に関する施設条件や、使用者の疾病等に関する身体条件に合わせた準備方法を選定することができる。
次に、本発明の第2実施形態による大便器ユニットを説明する。
図18は、本発明の第2実施形態による尿量測定機能を備えた大便器ユニットを示す斜視図である。
大便器ユニット201は洋風大便器211と便座221と便ふた222を回動自在に係止した機能ケース202によって構成されている。機構占有スペースが不足する場合は、大便器ユニット201の背部や配管部材で連結された機構ユニットキャビネット205内に機器を収納する。洋風大便器211の内側には、使用者の排泄物を受ける溜水213を貯えるボール212が構成されている。ボール212の上方には、便座221と当接するリム面214が形成されている。
またボール212の内外を連通する切欠に上面をリム面214と同一高さにして設けられた採尿ユニット250は、ボール内で採取した尿を、排泄された尿中に含まれる特定成分の定性・定量測定に関するセンシング手段に送出するようになっている。センシング手段は便器ユニット201の内部にバイオセンサや電気化学センサや物理量計測センサをはじめとする各種生化学センサとして組み込まれても良いし、他の大型臨床検査装置で測定すべく検体を採取して容器に所定量だけ備蓄するような方法であっても良い。
採尿ユニット250は、便器や下水の詰まり等が発生した場合以外は水没しない位置に配置されているため、特別な防水・防滴対策を施す必要がない。また、採尿ユニット250の外郭は、洋風大便器211の外形に配置されることになる使用者の下肢裏側と干渉しない範囲内で構成されているため、採尿機能が組付けられた便器であっても用便行為自体を行う限りにおいて、一般便器との間で使い勝手面の支障が発生することがない。下肢と機能部材が干渉しない範囲は、洋風大便器211の外郭に対して概ね50mm以内程度の突起寸法までである。
図19は、本発明の第2実施形態による尿量測定機能付を備えた大便器ユニット201の断面図である。
洋風大便器211の内側にはボール212が形成され、底部に設けられたゼット吐水ノズル231はトラップ部215に吐水方向を向けている。ゼット吐水ノズル231からの吐水はトラップ部215に対して負圧を発生させ、生じたサイホン現象によって、溜水213を排水接続管216を介して下水管に送出するようになっている。ボール212の上部にはリム吐水ノズル232が設けられ、溜水を補給するようになっている。同じくボール212の上方には、便座221と当接するリム面214が形成されている。ゼット吐水ノズル231とリム吐水ノズル232への給水は、水路切替手段となる給水バルブ203から供給されるようになっている。水路切替手段203とゼット吐水ノズル231をつなぐ水路の途中には分岐口233が設けられ、ボール212に排出された尿204の水位ヘッドを測定すべく、圧力センサ243との間に導圧路242が構成されている。なお電解物質である塩化ナトリウムなどを多量に含む尿を取扱う場合、小さな隙間に尿を通すと、特に金属部品を腐食させやすく、動作信頼性が低下しがちである。しかし、この実施例では、ゼット吐水によって水位を変化させるようにしているため、腐食等による機構部分の動作信頼性低下が発生しにくくなっている。
測定前の溜水水位(Y)は溢流水位(H)より、人の1回あたりの最大排泄尿量より多い水量分下方である。そこに尿が排泄されると、水位は溜水水位(Z)に上昇する。水位差(Z−Y)が排泄された尿量部分であり、水位測定値を基に予め記憶されている水位と溜水量の関係を表す水位変化曲線より尿量が算出されることになる。ボール212の形状は固定であるから、水位の測定値が溜水量を介して尿量に換算演算できるのである。なお、便器は一般的に陶器製であるから精密な寸法精度を確保することは難しいため、施工時に一定水量を便器に投入した時の水位変化を学習させて、水位位置毎の検量線を設定する方式が精度確保のための手法として推奨される。
導圧路242の途中には、拡大管242aを設けている。ボール212には大便も排泄されるため、導圧路242の中に大便の成分が侵入することが稀にあるが、拡大管242aによって侵入速度が低下することを利用して拡大管242aの下方に貯めることにより、圧力センサ243の内部に大便成分が侵入しないようになっている。定期的に拡大管242aの清掃・洗浄または交換を行えば、測定系の長期信頼性確保に有益である。拡大管242a上部には空気抜き栓242bが設けられており、配管内に空気が残ることを防止している。導圧路242の水圧は開閉弁242cを介して圧力センサ243に導かれる。
下水管中に他の設備器具などに起因する排水流れによって負圧が発生したとしても、水合流部216aには通気弁216cが設けられており、空気が吸気管216bから送り込まれ負圧量が緩和・抑制されるようになっている。通気弁216cは大気と下水管内の圧力差を利用した空気を供給するものであるが、他の送気ポンプなどの手段であっても効果は同じである。測定中は空気の流入によって負圧がトラップ側に加わらないため、本発明の溜水水位測定に誤差が発生しないようになっている。空気調和衛生工学会規格の給排水衛生設備規準によると、下水管の設計は下水管内で40mm水頭が上限とされているが、空気の供給量としては毎秒25L程度を供給すると負圧がトラップ側に加わらないようになる。
この本実施形態による大便器ユニット201における尿量測定は封水状態で実施されるため、下水管内の臭気がトイレ内に上昇することを防止するための臭気防止対策は不要である。測定準備のためにいちいち溜水の水位を下げる準備動作も不要であるから、水使用量削減による測定コストの低減が可能である。
次に、測定系の配管内を洗浄する機構について説明する。
市水に接続される止水栓301から供給される水は、給水バルブ203と洗浄系とに、分岐金具302によって分岐される。分岐された水は逆流を防止するための吐水口空間を確保して、開閉弁303よりタンク304に向けて給水されている。給水水位は特に図示しない水位検知手段によって、常に一定水位が貯えられるようになっている。万一、水位検知手段が故障した時には、オーバーフロー管308によってリム吐水ノズル232から溜水213に向けて流出し、便器外への拡大被害が防止されるようになっている。タンク304内の水は内部に異物除去のためのストレーナーを有する取水ユニット305を介して、ポンプ306で吸引された後、測定系の導圧路242に導かれるようになっている。合流部の手前には開閉弁307が配置されており、測定時には閉じられるとともに、洗浄時には測定系配管に通水すべく開放されるようになっている。
次に、尿成分測定装置について説明する。
採尿器251は採尿アーム252の回動動作によってボール212内部を移動して排尿経路に達し、直接、尿を採取する。位置Aについて、便器前方側が男性の採尿位置であり、後方側が女性の採尿位置である。特に女性の排尿範囲は個人差があることから、前後方向に位置調節機能を設けても良い。位置Bについて、便器洗浄実施時には、採尿器251は便器に給水される水と干渉することを防止して、排水に対して弊害が発生しないよう便器洗浄水が流れるリム面214の凹部から逃げる。位置Cについて、採尿しない時には、採尿器251はリム面214近傍に収納されている。便器の排出動作の完了後に、溜水を補給する段階でこの位置に配置されると補給水の水流によって採尿器251が洗浄される収納位置ということになる。
図20は本発明の第2実施形態による大便器ユニット201に使用されている通気弁216cの動作原理を示す断面図である。図上、向かって左側は下水管内に負圧が無い状態、また向かって右側は下水管内で負圧が発生した場合を示す。
排水接続管に接続された吸気管216bの他端には、通気弁216cが接続されている。弁体361は本体363のガイド364によって、上下に移動可能となっている。弁体361の中央部には穴が形成されており、弁体の上部には圧力室362が構成されている。下水管内に負圧がない場合、圧力室362内部の圧力は下水管内と同じ圧力であり、かつ、大気圧とも同じである。従って弁体361は自重によって本体363側に落下しており、弁体は本体363と圧力室363を押さえている形となり、下水管内で発生した臭気がトイレ内に上昇・拡散することがない。下水管内で負圧が発生した場合、圧力室362内部の圧力は下水管内と同じ圧力となるため、弁体361を押さえている圧力は大気圧より減少する。この圧力差によって弁体361は上方に引き上げられ、外側から通気弁216cの内部に向けて負圧が解消されるまで空気が流入することになる。負圧がトラップ部を介して溜水部に伝わらないため、溜水水位を測定するときに水位変化が発生せず、結果として高精度の尿量測定ができることになる。
図21は、本発明の第2実施形態による尿量測定機能を備えた大便器ユニット201を示すブロック図である。
大便器ユニット201は、大きく便器部(洋風大便器211)と機能部(機能ケース202)に分割することができる。便器部は、排水接続管216(排水ソケット)、リム吐水ノズル232、ゼット吐水ノズル231、採尿器251等を備えている。機能部には、リモコン等の操作・表示部から制御信号を受けて操作指令を行なう制御手段、市水から大便器ユニット201の各機構に給水を行なう給水系、ボールに連通して溜水213の水圧を測定する圧力センサ243、ボール水位測定手段、採尿器に殺菌用の電解水を供給する電解水供給手段等を備えている。なお、圧力センサ243の検出圧力は制御手段に送信されて、尿量算出手段である演算部(図示せず)にて圧力値から溜水水位を定めて尿量を算出する。
便器部に溜水に対してサイホン現象を発生させるためのゼット吐水ノズル231が溜水中に設けられ、溜水を補給する目的でリム吐水ノズル232が設けられている。機能部に供給された市水は機構系に影響を与えないよう異物を除去するストレーナを内在する給水部を介して、給水バルブ203に供給される。給水バルブ203および切替弁は便器部の排泄物下水排出のためのゼット吐水ノズル231と尿検体採取のための採尿器251を洗浄するための電解水供給手段に水を順次供給する。図20には封水状態で測定する構成を示したが破封状態で測定を行うためには開閉弁307と水合流部216aの間に通水路を構成して切替えを行うことで、下水配管内臭気のトイレ内への逆流を防止する。電解水供給手段には、次亜塩素酸の生成効率を向上させるための塩素供給手段を接続しても良い。水中の塩素量と必要としている次亜塩素酸濃度が適合している場合は不要であるが、より高い殺菌性能・尿石防除性能を求めたい時などには、塩素供給手段が必要となる。採尿器251に配置されたイオンセンサの校正液に含まれる塩素イオンを流用するものであったり、塩化ナトリウムの備蓄部材であったり、尿の一部を貯えておいて溶存塩素イオンを利用するものなどが塩素供給手段として推奨される。本出願人の実験によれば、次亜塩素酸濃度1〜5ppm程度で殺菌および尿石防除効果があることを確認した。制御手段は給水バルブ203、電解水供給手段、水位測定手段、採尿手段、および、採尿手段と連通するセンシング手段をコントロールすると共に、測定演算結果を通信手段経由で操作・表示部に伝送する。通信手段は有線伝送だけでなく、赤外線や電波などを利用した無線伝送であっても良い。なおセンシング手段は機能部中に存在しても良いが、他の大型臨床検査器などと連携するための検体容器を介したものであっても良い。
図22は、本実施形態の大便器ユニット201の給水系を示すシステムブロック図である。
供給された市水を便器洗浄系と衛生洗浄系に分岐するとともに、使用者の尿を受ける溜水の水位を圧力センサ243によって測定するとともに、各配管の接続状態と、各動作手段の接続関係が示されている。本図において尿の侵入が考えられる部分を破線で示したが、破線部分は市水によって洗浄されるようになっている。尿は塩分を含むものであるため配管・機構部品を腐食しがちであるが、洗浄によって長期の動作信頼性が確保されている。市水だけでなく電解水を通水すると、より洗浄効果は高い。
図23は、本発明の第2実施形態による尿量測定機能付き大便器の動作シーケンス図である。
最初、溜水水位は溢流水位(H)以下の水位(Y)で保持されている。水位(Y)は使用者の尿の排泄によって、水位(H)を越えない位置に設定される。一般に人間の最大排尿量は1000mLとされているから、水位(H)から1000mLを差し引いた位置を水位(Y)と設定すればよい。なお、排尿量は500mLを超える頻度が少ないことから、実質的な尿量測定範囲から水位(Y)を設定してもよい。装置の測定範囲仕様をどう設定するかで、水位(Y)の位置は変更可能である。尿量測定に対して水位を変化させる準備時間が不要であるため、使用者は準備のための待ち時間なく排尿が可能である。準備時間が不要であるから、使用者にとって使い勝手がよい。
使用者が測定準備開始スイッチ操作を実施すると、水位測定手段である圧力センサが起動され、溜水水位の絶対値が測定されるるよう配管を連通させる。尿採取手段は尿採取位置(A)に移動する。測定中表示に合わせて使用者が排尿すると、ボール中の尿による水位上昇が発生する。合わせて他のセンシング手段に尿を送出したり、検体容器に尿を備蓄するための尿採取手段がボール内を移動して尿を所定量分だけ採取・吸引し、センシングに必要な尿検体が採取される。尿検体の採取が完了すると、尿採取手段は採尿器を収納位置(C)に移動する。
便器ボール内の水位変化は圧力センサなどの水位測定手段で測定され、予め記憶している水位と溜水量の関係を表す水位変化曲線より溜水量変化に換算される。溜水量の排尿前後の差が排泄尿量として測定される。水位変化から換算した尿量の時間毎の変化量は、尿流率または尿流速と称される指標であり、前立腺肥大に代表される泌尿器系疾病の管理に使用することもできる。測定された尿量は、尿検体のセンシング手段によって測定された特定成分濃度を乗じることによって、使用者が排泄した特定成分の実排泄量としてもよい。
例えば特定成分をナトリウムイオン濃度とすると、ナトリウムイオン濃度測定値を塩化ナトリウム量に換算し、尿量を乗じることによって、塩分排泄量を演算することができるが、ヒトは摂取塩分量の約80〜90%を排泄するという特質から摂取塩分量を推定することが可能である。この摂取塩分量は健康日本21運動で提唱されている一般の方は10g以下、高血圧症患者は7g以下に管理するべきとされる摂取塩分量のコントロールに使用することができる。
なお尿検体に対するセンシングを実施すべく排尿している時に、誤って大便を排泄してしまった時は水位測定値の振幅・周波数が尿だけの時と比べてことなるため、検体採取を中止したり、大便量の推定を行って尿量を補正することにより、尿量測定動作の信頼性低下を防止することができる。
溜水の水位変化を圧力センサで測定し、制御手段内の演算部にて、圧力値の変化を基に尿量を算出する。このように、尿量による水位変化を圧力ヘッドとして高精度に測定することにより、高精度の尿量推定を行うことができる。
なお、排尿終了を使用者が操作入力するようにしているが、水位変化が所定時間内に安定したことを検知して自動終了するものであってもよい。排尿終了操作の後、測定系には市水がポンプによって供給されて尿と接した部分は洗浄される。本実施形態においては、給水源を市水から吐水間隙を設けて縁切りしたタンク304としているため、万一の市水への汚水逆流防止の確実化が図られている。
次いで、使用者が表示された測定値を確認したり、本発明には含まれない他のサービスなどとの連携に向けて測定データを通信したり、あるいは測定結果を測定時間などと共に他の医療・健康関係従事者の指導を仰ぐべくプリントアウトされる。使用者が便器洗浄操作を実施すると、表示は再び準備中に変わる。リム吐水が行われると、採尿器はリム吐水と干渉しない位置(B)に移動して、便器洗浄性能に影響が出ないようにする。リム吐水によって溜水水位が溢流水位に上昇しきった状態で、ゼット吐水によるサイホン現象が発生して溜水と共に尿が下水に排出される。その後、リム吐水によって溜水水位が上昇することになるが、制御手段は、水位(Y)に水面を設定すべく給水時間と水位変化量を水位測定手段によって測定しながら、給水バルブ203に制御信号を送ってリム側の吐水を停止させる。このように水位を制御することによって、溜水水位位置を毎回一定位置とすることができるため、尿量による水位変化を毎回同じ条件で測定することができ、結果として高精度の尿量推定を行うことができる。また、給水圧力によって水位上昇カーブは変化することが予測されるため、給水時間と水位(Y)の関係を学習しながら、常に所定の水位(Y)が得られるよう制御してもよい。リム吐水されている段階で、採尿器はリム部の収納位置(C)に格納され、その位置で採尿器の外殻はリム吐水によって洗浄される。単位時間当りの流量が多いため、採尿器の洗浄力が高い。
便器洗浄に合わせて、尿採取手段の採尿器とセンシング手段をつなぐ吸引配管に次亜塩素イオンを含む電解水を供給すべく、電解水供給手段が駆動される。前述の尿量測定系配管内にも電解水を供給すると、配管系にカビや細菌などの増殖を抑える効果も期待できる。洗浄工程が完了すると、準備中表示は測定可表示に切り替わることになる。
本発明の第2実施形態による大便器ユニットによれば、電解物質である塩化ナトリウムなどを多量に含む尿を機能部材内部に吸引しないので、各種構成部材の動作に弊害を与えることがない。また、本実施形態による大便器ユニットでは、測定準備のために溜水を排出することがないので、1回当りの測定単価が安価になる。さらに、本実施形態による大便器ユニットによれば、ボール内の溜水水位を下げた状態で待機しているので、測定準備に要するタイムラグが小さく、排尿動作に関する使い勝手を良くすることができる。
次に、本発明の第3実施形態による大便器ユニットを説明する。
図24は本発明の第3実施形態による大便器ユニット全体を示す斜視図であり、図25は側面断面図である。
本実施形態による大便器ユニット401は、洋風大便器402と、大便器ユニット401を作動させる種々の機能部を収納したキャビネット404と、を有する。
洋風大便器402は、使用者の尿、便等を受けるボール406と、このボール406のリム部分から洗浄水を吐水させるリム吐水ノズル407と、ボール406の底部と連通し、ボール406を水封するトラップ部408と、を有する。また、洋風大便器402は、ボール406の底部に配置され、トラップ部408に向けて洗浄水を噴出するゼット吐水ノズル409と、ボール406の上部に配置された便座410と、便ふた412と、ボール406のリム部分に設けられた採尿装置414を有する。また、ボール406の上方には、便座410と当接するリム面406aが形成されている。
また、キャビネット404には、市水から供給された洗浄水をリム吐水ノズル407及びゼット吐水ノズル409から吐出させる給水バルブである水路切替手段416と、ボール406底部の静水圧を測定する水位測定手段である圧力センサ418と、水路切替手段416を制御し、使用者の尿量を計算する制御手段420が収納されている。また、制御手段420を操作する信号を送る操作・表示部422が壁面に取り付けられている。
洋風大便器402は、陶器製であり、その上部には、樹脂製の便座410及び便ふた412が回動自在に取り付けられている。トラップ部408の出口側端部は、排水ソケット424を介して下水管426に接続されている。ボール406には、最大で、トラップ部408の頂部408aの高さの溢流水位まで溜水を保持することができる。また、ボール406内の水位がトラップ部入口408bの高さよりも低くなると、トラップ部408がボール406内の溜水によって封鎖されなくなるので、封水切れが起きる。
リム吐水ノズル407は、ボール406の上部から、リムの接線方向に洗浄水を吐出させ、ボール406の壁面を洗浄するように構成されている。ゼット吐水ノズル409は、ボール406の底部からトラップ部408に向けて洗浄水を噴出させ、トラップ部408内にサイホン現象を誘発するように構成されている。
採尿装置414は、使用者の尿を採取する採尿器414a、ボール406内部を回動させる採尿アーム414b、および、駆動動作を行う採尿ユニット414cで構成されている。採尿装置414は、排泄された尿をキャビネット404に収納された尿成分測定部414dに送出し、この尿成分測定部414dで尿中に含まれる特定成分の定性・定量測定を行うように構成されている。また、採尿装置414には、廃液をボール406内に戻すための配管部材(図示せず)、機構部を動作させるための制御配線(図示せず)が内蔵されている。本実施形態では、尿成分測定部414dはキャビネット404外に設置されているが、尿成分測定の測定項目の一部は採尿器414a中で実施しても良く、尿温度のような項目は採尿器414a中で測定するのが良い。また、尿成分測定部414dは、キャビネット404の内部、又はキャビネット404の外の大便器ユニット401が設置されているトイレ室内、或いはトイレ室とは別の室内に配置することができる。尿成分測定部414dには、バイオセンサや電気化学センサや物理量計測センサをはじめとする各種センサが組み込まれても良いし、他の大型臨床検査装置で測定すべく検体を採取して容器に所定量だけ備蓄するように構成されていても良い。好ましくは、採尿装置414の外郭は、排泄物や水との接触を配慮して、抗菌性のある材質で形成し、表面に撥水性のある処理を施しておく。これにより、採尿装置414の清掃性がより向上する。
採尿装置414の外郭は、洋風大便器402の一部に切り欠きを設けて配置されている。採尿装置414の上面には便座412が当接し、採尿装置414の内側はボール406と接するように構成されている。また、採尿装置414の便座当接面は、中央に向けて3°程度傾斜しており、当接面を撥水処理することにより飛沫がボール406に戻りやすくなり、トイレ床を汚しにくくなる。洋風大便器402と採尿装置414の間には、シール剤であるゴムパッキン(図示せず)が配置され、排泄物飛沫の侵入を防止している。外郭サイズは洋風大便器402の外形シルエットと略同様の形状であり、使用者の下肢裏側と干渉しない。このため、採尿機能が組付けられた便器であっても用便行為自体を行う限りにおいて、一般便器と同様に使用することができる。また配管・配線部材は洋風大便器402の中空部に配置されているため、すっきりした外観が得られている。また、尿成分測定部414dをキャビネット404内に配置することにより、尿成分測定部414dがトイレの床面を占有していないため、清掃の度ごとに尿成分測定部414dを移動させる必要もない。このため、尿成分測定部414dによってトイレのスペースを狭めることがなく、トイレを衛生に保つためにも有効である。
水路切替手段416は、制御手段420の制御信号に従って、市水から供給された洗浄水を、リム吐水ノズル407及びゼット吐水ノズル409から交互に吐水させるように構成されている。
圧力センサ418は、ゼット吐水ノズル409と連通した圧力導管418aによって導かれた、ボール406底部の静水圧を測定するように構成されている。
制御手段420は、使用者の操作及び内蔵しているプログラムに従って、水路切替手段416を制御するように構成されている。また、制御手段420は、尿量算出手段428を内蔵しており、この尿量算出手段428は、圧力センサ418によって測定された圧力に基づいて、ボール406内の水位を求め、使用者が排泄した尿量を計算するように構成されている。さらに、制御手段420は、尿量算出手段428によって計算された尿量を補正する補正手段430を有する。
また、壁に設けられた操作・表示部422は、操作性を良好にするため、洋風大便器402の先端位置に合わせて取付けられている。操作・表示部422は、使用者の局部を衛生的に洗浄にする機能を操作するための衛生洗浄装置リモコン432、使用者の尿成分測定に関する機能を操作するための尿成分測定部リモコン434、及び尿成分測定結果を出力し、使用者がデータを確認したり、医療スタッフが医療行為に使用するためのプリンター436を有する。
図26は、本発明の第3実施形態による大便器ユニット401の圧力センサ部分の詳細を示す断面図である。図26に示すように、ゼット吐水ノズル409と連通した圧力導管418aは、水路拡大部418b及び第1開閉弁418cを介して圧力センサ418に接続されている。水路拡大部418bは、圧力導管418aの途中に設けられ、圧力導管418aよりも十分に大きな流路断面積を有するように構成されている。このため、万一、溜水中の汚物がゼット吐水ノズル409と連通した圧力導管418aを通って圧力センサ418の方へ流れた場合にも、水路拡大部418bで流速が低下するので、汚物は水路拡大部418bで沈殿され、圧力センサ418に到達することはない。この水路拡大部418bは定期的な清掃作業が可能なように構成するのが良い。また、水路拡大部418bと圧力センサ418の間に接続された第1開閉弁418cは、制御手段420によって、圧力センサ418による水位測定を行う際には開放され、水位測定を行わない時には閉鎖されるように構成されている。
さらに、図26に示すように、下水管内で発生した負圧を逃がすための通気弁438と、下水管内の圧力変動をモニターするための下水管圧力センサ440が、排水ソケット424に連通するように設けられている。本実施形態においては、通気弁438として森永エンジニアリング株式会社製「ドルゴ」(商標)又は株式会社キッツ製「通気番」(商標)を使用している。この通気弁438として、一般的に下水管経路の圧抜きに使用されている任意の通気弁を使用することができる。下水管圧力センサ440は、下水管内に連通するように排水ソケットに接続され、下水管内の圧力を測定するように構成されている。ボール406内の溜水の水位は、下水管内の圧力が正圧になったときは上昇し、負圧になったときは下降する。本実施形態の大便器ユニット401では、ボール406内の溜水の水位に基づいて尿量を測定しているので、下水管内の圧力によって溜水の水位が変化すると尿量の測定値に誤差を生じることになる。そこで、本実施形態の大便器ユニット401では、下水管圧力センサ440によって下水管内の圧力を測定し、この圧力に基づいて溜水量の測定値を補正している。なお、下水管内の圧力が低下すると、通気弁438を介して大気が下水管内に導入されるので、下水管内に大きな負圧が発生することはない。
次に、図27乃至図30を参照して、本発明の第3実施形態による大便器ユニット401の作用を説明する。図27は大便器ユニット401の作用を時系列で表すグラフであり、図28は大便器ユニット401の各部分の関係を表すブロック図である。
図27に示すように、待機時においては、大便器ユニット401のボール406内の溜水の水位は、図26にHで示す溢流水位になっており、また、操作・表示部422には「測定可」と表示されている。次に、大便器ユニット401の使用者が、操作・表示部422の準備スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)を操作すると、制御手段420は、水路切替手段416に制御信号を送り、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。また、操作・表示部422の表示は「準備中」になる。ゼット吐水ノズル409から吐水されると、トラップ部408においてサイホン現象が発生してボール406内の溜水が吸引され、ボール406内の水位が、図26にXで示す水位まで低下する。次いで、制御手段420は、水路切替手段416に制御信号を送り、リム吐水ノズル407から吐水させる。これと同時に、制御手段420は、圧力センサ418及び下水管圧力センサ440を作動させ、第1開閉弁418cを開放する。
リム吐水ノズル407から吐水された洗浄水は、ボール406内に流入し、ボール406内の水位が上昇する。制御手段420は、リム吐水ノズル407から所定時間吐水させた後、水路切替手段416に制御信号を送り、リム吐水ノズル407からの吐水を止める。
図29は、ボール406内の溜水量Qと水位hの関係の一例を示す水位変化曲線である検量線のグラフであり、本実施形態に使用された洋風大便器402である東陶機器株式会社製品番C950Bの或るサンプルにおいて、溜水量Qと水位hは、
の関係を有する。洋風大便器402は陶器製であり個体差が大きいため、制御手段420に内蔵された補正手段430は、図29に示すような、ボール406内の溜水量と水位の関係である検量線を予め記憶している。この検量線は製造時または施工時に、ボール406内に所定量ずつ水を投入し、そのときの水位を測定することによって求められる。この洋風大便器402において、水位hが最下点水位Xにあるときの溜水量は120mL、溢流水位Hにあるときの溜水量は2500mL、下水管がトラップ部408によって水封されるときの溜水量は700mLとなる。
本実施形態においては、リム吐水ノズル407からの所定時間の吐水終了後の溜水量が1300mL、溜水の水位がY(図26参照)となるように設計されている。この尿量測定のスタート水位となる水位Yは、空気調和・衛生工学会規格「集合住宅の排水立て管システムの排水能力試験法」(HASS218−1999)で定められた負圧40mmAqaが加わっても溜水が溢れることのない溜水量を考慮して設定されている。即ち、この溜水のスタート水位Yによれば、使用者が最大で約800mLの排尿をした後、排水配管に負圧40mmAqaが加わったとしても、ボール406内の溜水がトラップ部408を越えて排水されることがない。
補正手段430は、圧力センサ418による圧力測定値と、記憶している溜水量と水位の関係に基づいて、スタート水位Yを較正している。リム吐水ノズル407から吐水される洗浄水は、定流量弁(図示せず)によって、その流量が一定に保たれている。本実施形態においては、1秒間に300mLの洗浄水がリム吐水ノズル407から吐水されるようになっている。従って、本実施形態において、水路切替手段416及び定流量弁(図示せず)は、定量水投入/排出手段を構成する。
一方、圧力センサ418によって測定される圧力測定値は、ボール406内の水位に比例する。従って、リム吐水ノズル407からの吐水の停止1秒前に圧力センサ418によって測定された圧力をP1、吐水停止時の圧力をP2とすると、これらの間の圧力差P2−P1は、吐水停止1秒前の水位と吐水停止時の水位の差Δhに対応する。このことから、1秒間に300mL溜水が増加したときの水位の変化量Δhがわかる。図30に模式的に示すように、溜水が一定量ΔQ増加したときの水位の変化量Δhは、ボール406内の水位の絶対値によって変化するので、増加した溜水量ΔQ、水位の変化量Δh、及び図29に示すボール406内の溜水量と水位の関係から絶対的な水位を計算することができる。
例えば、リム吐水ノズル407からの吐水の停止1秒前の第1水位と、吐水停止時の第2水位の差が20.1mmである場合、補正手段430は、300mLの給水で水位が20.1mm上昇するという関係から、[数3]式に基づいて、溜水の水位を67.9mm、溜水量を850mLと算出する。また、補正手段430は、水位の差が19.0mmである場合、[数3]式に基づいて、溜水の水位を73.9mm、溜水量を950mLと算出する。このように計算される溜水の水位は、圧力センサ418によって測定される圧力にオフセット誤差を生じていたとしても、圧力差は正確に測定されるため、圧力センサ418のオフセット誤差の影響を受けることがない。また、本実施形態では所定量の水の投入を、水路切替手段416によって行っているが、変形例として、専用の調整用ポンプ(図示せず)を使用して水を投入するように構成することもできる。
次いで、大便器ユニット401の使用者が、操作・表示部422の測定開始スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)による認証操作を行うことによって、操作・表示部422の表示が「測定中」に変化する。表示が「測定中」に変化した後、使用者はボール406に排尿する。使用者が排尿すると、図27に示すように、ボール406内の水位は上昇し、水位Zとなる。
排尿が終わった後、使用者が、操作・表示部422の排尿終了スイッチ(図示せず)を操作し、または溜水水位変化がなくなることにより排尿終了が検知されると、制御手段420は、圧力センサ418及び下水管圧力センサ440をOFFにし、第1開閉弁418cを閉鎖する。これと同時に、制御手段420に内蔵されている尿量算出手段428は、圧力センサ418によって測定されたスタート水位Yにおける圧力と、排尿後の水位Zにおける圧力の圧力差に基づいて、スタート水位Yと水位Zの水位差を計算する。次に、尿量算出手段428は、計算された水位差と、補正手段430によって予め求められたスタート水位Yに基づいて、水位Zを計算する。さらに、尿量算出手段428は、計算された水位Zと、予め記憶されている図29の関係から、水位Zにおける溜水量を計算し、この溜水量からスタート水位Yにおける溜水量を差し引くことによって、尿量を計算する。計算された尿量は、操作・表示部422に表示され、プリンター436からプリントアウトされ、又は電子記憶媒体や施設内LANなどに電子情報として出力される。
また、上述した尿量測定においては、下水管内の圧力が大気圧である場合について説明したが、下水管圧力センサ440によって正圧又は負圧が検出されている場合には、尿量算出手段428は、圧力センサ418によって測定された水位を、下水管圧力センサ440による圧力測定値に基づいて補正する。
尿量測定終了後、使用者が、操作・表示部422の便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、操作・表示部422の表示が「準備中」に変化する。これと同時に、制御手段420は、リム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、図27に示すように、ボール406内の水位が溢流水位Hまで上昇すると共に、旋回流で汚物が中央に集められる。次いで、制御手段420は、リム吐水ノズル407からの吐水を停止し、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。ゼット吐水ノズル409からの吐水により、トラップ部408にサイホン現象が発生し、ボール406内の洗浄水及び尿がトラップ部408に吸い込まれ、ボール406内の水位が低下する。サイホン現象終了後、制御手段420は、再びリム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、ボール406内の水位を溢流水位Hまで上昇させて、待機状態に戻る。その後、操作・表示部422の表示が「測定可」に変化する。
本発明の第3実施形態による大便器ユニットによれば、予め測定され、記憶された検量線に基づいて圧力センサによる水位測定値を補正するので、圧力センサにオフセット誤差等の誤差がある場合にも精度良く尿量測定を行うことができる。
また、上述した実施形態では、補正手段が検量線に基づいて正確なスタート水位を求め、このスタート水位を基に尿量算出手段が尿量を計算しているが、変形例として、設計上のスタート水位と実際のスタート水位の間の誤差を、検量線に基づいて補正手段によって求め、この誤差に基づいて尿量算出手段によって計算された尿量に所定の係数を加減乗除することによって測定された尿量を補正するように構成することもできる。
さらに、上述した実施形態では、定量水投入/排出手段を、定流量弁を通過した水を所定時間吐出させることによって実現しているが、変形例として、一定量の水を貯めることができる定量タンクを設けておき、この定量タンク内の水をボール内に投入することによって定量水投入/排出手段を実現することができる。
或いは、ボール内の水を、空の定量タンクが満たされるまで定量タンクに流出させることによって定量水投入/排出手段を実現することもできる。例えば、ボール内を第1水位である溢流水位にした後、定量水投入/排出手段によって所定量の溜水を排出し、溢流水位と排出後の第2水位との差、及び水位変化曲線に基づいてスタート水位を求めても良い。
次に、本発明の第4実施形態による大便器ユニットを説明する。本発明の第4実施形態による大便器ユニットは、尿量測定を開始するボール内のスタート水位の設定機構が、第3実施形態の大便器ユニットとは異なる。従って、ここでは、本発明の第4実施形態による大便器ユニットの第3実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
図31は本発明の第4実施形態による大便器ユニットの断面図であり、図32はそのスタート水位の設定機構部分の拡大断面図である。また、図33は、本実施形態の大便器ユニットの各部の関係を示すブロック図である。
図31乃至図33に示すように、本発明の第4実施形態による大便器ユニット501は、洋風大便器402と、大便器ユニット501を作動させる種々の機能部を収納したキャビネット(図示せず)と、を有する。
洋風大便器402は、ボール406と、洗浄水を吐水させるリム吐水ノズル407と、ボール406を水封するトラップ部408と、トラップ部408に向けて洗浄水を噴出するゼット吐水ノズル409と、を有する。
また、キャビネット(図示せず)には、市水から供給された洗浄水を吐出させる給水バルブである水路切替手段416と、ボール406底部の静水圧を測定する水位測定手段である圧力センサ418と、水路切替手段416を制御し、使用者の尿量を計算する尿量算出手段を内蔵した制御手段420が収納されている。また、制御手段を操作する信号を送る操作・表示部422が壁面に取り付けられている。
トラップ部408の出口側端部は、排水ソケット424を介して下水管426に接続されている。
リム吐水ノズル407は、ボール406の上部から、リムの接線方向に洗浄水を吐出させ、ボール406の壁面を洗浄するように構成されている。ゼット吐水ノズル409は、ボール406の底部からトラップ部408に向けて洗浄水を噴出させ、トラップ部408内にサイホン現象を誘発するように構成されている。
水路切替手段416は、制御手段の制御信号に従って、市水から供給された洗浄水を、リム吐水ノズル407及びゼット吐水ノズル409から交互に吐水させるように構成されている。
圧力センサ418は、ゼット吐水ノズル409と連通した圧力導管418aによって導かれた、ボール406底部の静水圧を測定するように構成されている。図31に示すように、ゼット吐水ノズル409と連通した圧力導管418aは、水路拡大部418b、開閉弁418cを介して圧力センサ418に接続されている。水路拡大部418bは、圧力導管418aの途中に設けられ、圧力導管418aよりも十分に大きな流路断面積を有するように構成されている。また、水路拡大部418bには、鉛直上方に延びる鉛直導管502が接続されている。さらに、水路拡大部418bと圧力センサ418の間に接続された第1開閉弁418cは、制御手段420によって、圧力センサ418による水位測定を行う際には開放され、水位測定を行わない時には閉鎖されるように構成されている。また、水路拡大部418bと圧力導管418aの間に接続された第2開閉弁418dは、制御手段によって、通常は開放されるように構成されている。
図32に示すように、水路拡大部418bから鉛直上方に延びる鉛直導管502の上端には、水位設定弁である電磁弁504が接続されている。この電磁弁504の上方には、鉛直上方に向けて開口し、大気に開放された排水出口505が設けられている。この排水出口505は、尿量測定を開始すべきボール406内のスタート水位の高さに配置されている。排水出口505から溢れ出た水は、排水受け部506aに落下し、戻り管506を通って排水ソケット424に排水されるように構成されている。即ち、ボール406内の水は、ゼット吐水ノズル409から、これに連通した圧力導管418a、水路拡大部418b、鉛直導管502、電磁弁504を経て排水出口505から排水される。このゼット吐水ノズル409から排水出口505に到る経路は排水導管を構成し、また、ゼット吐水ノズル409のゼット噴出口は、排水導管の排水入口を兼ねる。また、戻り管506と排水ソケット424の間には、戻り管トラップ部506bが形成されており、排水配管内の臭気が開口から漏れないようになっている。
制御手段420は、使用者の操作及び内蔵しているプログラムに従って、水路切替手段416を制御するように構成されている。また、制御手段は、尿量算出手段(図示せず)を内蔵しており、この尿量算出手段は、圧力センサ418によって測定された圧力に基づいて、ボール406内の水位を求め、予め記憶している水位と溜水量との関係を表す水位変化曲線により、使用者が排泄した尿量を計算するように構成されている。
さらに、図31に示すように、下水管内の圧力変動をモニターするための下水管圧力センサ510が、三方弁508を介して、排水ソケット424に連通するように設けられている。下水管圧力センサ510は、下水管内に連通するように排水ソケット424に接続され、下水管内の圧力を測定するように構成されている。本実施形態の大便器ユニット501では、下水管圧力センサ510によって下水管内の圧力を測定し、この圧力に基づいて溜水量の測定値を補正している。
次に、図34を参照して、本発明の第4実施形態による大便器ユニット501の作用を説明する。図34は大便器ユニット501の作用を時系列で表すグラフである。
図34に示すように、待機時においては、大便器ユニット501のボール406内の溜水の水位は、図31にHで示す溢流水位になっており、また、操作・表示部422には「測定可」と表示されている。次に、大便器ユニット501の使用者が、操作・表示部422の準備スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)による認証操作を行うことによって、制御手段420は電磁弁504に制御信号を送り、電磁弁504を開放させる。また、操作・表示部422の表示は「準備中」になる。電磁弁504が開放されると、ボール406内の溜水は、ゼット吐水ノズル409、圧力導管418a、水路拡大部418b、鉛直導管502、電磁弁504を通って、排水出口505から流出する。排水出口505から流出した水は、排水受け部506aに落下し、戻り管506、戻り管トラップ部506bを通って、排水ソケット424から排出される。排水出口505は、溢流水位Hよりも低いスタート水位Yに配置されているので、ボール406内の溜水は、水位がスタート水位Yになるまで排水出口505から流出する。
制御手段420は、電磁弁504を開放して、ボール406内の溜水水位がスタート水位Yになると、電磁弁504を閉鎖する。これと同時に、制御手段420は、開閉弁418cを開放して圧力センサ418を測定可能状態にする。また、三方弁508に制御信号を送って、大気に開放されていた管路を下水配管に切換え、下水管圧力センサ510による下水配管内圧力の測定を開始する。即ち、大気圧で較正を行った後、下水配管圧力の監視を開始することにより、オフセット誤差等の発生を防止している。
さらに、制御手段420は、スタート水位Yを利用して圧力センサ418の較正を行う。スタート水位Yは、排水出口505の高さによって正確に設定されるので、この水位を利用して圧力センサ418を較正することにより、圧力センサ418のオフセット誤差等を補正することができる。また、圧力センサ418の較正は、トラップ部408の形状によって予め定められる溢流水位Hを使用して行うこともできる。或いは、圧力センサ418の較正を溢流水位H及びスタート水位Yの両方で行っても良い。この場合には、圧力センサ418のゲイン誤差等も補正することができる。このように、圧力センサ418の較正は、尿量測定の1回のサイクルごとに行っても良いし、或いは、大便器ユニット501の使用者が操作・表示部422の較正スイッチ(図示せず)を操作することによって実行されるように構成することもできる。
次いで、大便器ユニット501の使用者が、操作・表示部422の測定開始スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)による認証操作を行うことによって、操作・表示部422の表示が「測定中」に変化する。表示が「測定中」に変化した後、使用者はボール406に排尿する。使用者が排尿すると、図34に示すように、ボール406内の水位は上昇し、水位Zとなる。
排尿が終わった後、使用者が、操作・表示部422の排尿終了スイッチ(図示せず)を操作し、または溜水水位変化がなくなることにより排尿終了が検知されると、制御手段420は、圧力センサ418及び下水管圧力センサ440をOFFにし、開閉弁418cを閉鎖する。これと同時に、制御手段420に内蔵されている尿量算出手段(図示せず)は、圧力センサ418によって測定されたスタート水位Yにおける圧力と、排尿後の水位Zにおける圧力の圧力差に基づいて、スタート水位Yと水位Zの水位差を計算する。次に、尿量算出手段は、計算された水位差と、排水出口505の高さに正確に設定されたスタート水位Yに基づいて、水位Zを計算する。さらに、尿量算出手段は、計算された水位Zと、予め記憶されている水位と溜水量の関係から、水位Zにおける溜水量を計算し、この溜水量からスタート水位Yにおける溜水量を差し引くことによって、尿量を計算する。計算された尿量は、操作・表示部422に表示され、プリンター(図示せず)からプリントアウトされ、又は電子記憶媒体や施設内LANなどに電子情報として出力される。
また、上述した尿量測定の間に、下水管圧力センサ510によって正圧又は負圧が検出されている場合には、尿量算出手段は、圧力センサ418によって測定された水位を、下水管圧力センサ510による圧力測定値に基づいて補正する。
尿量測定終了後、使用者が、操作・表示部422の便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、操作・表示部422の表示が「準備中」に変化する。これと同時に、制御手段420は、リム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、図34に示すように、ボール406内の水位が溢流水位Hまで上昇すると共に、旋回流で汚物が中央に集められる。次いで、制御手段420は、リム吐水ノズル407からの吐水を停止し、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。ゼット吐水ノズル409からの吐水により、トラップ部408にサイホン現象が発生し、ボール406内の洗浄水及び尿がトラップ部408に吸い込まれ、ボール406内の水位が低下する。サイホン現象終了後、制御手段420は、再びリム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、ボール406内の水位を溢流水位Hまで上昇させて、待機状態に戻る。その後、操作・表示部422の表示が「測定可」に変化する。
本発明の第4実施形態による大便器ユニットによれば、尿量測定を開始するスタート水位が、排水出口が配置された高さによって正確に設定されるので、高精度の尿量測定を行うことができる。
上述した本発明の第4実施形態による大便器ユニットでは、ゼット吐水ノズルのゼット噴出口が排水入口を兼ね、圧力導管が排水配管の一部を兼ねているが、変形例として、排水入口をボール内の適当な位置にゼット吐水ノズルとは別に設け、この排水入口に連通した排水配管を圧力導管とは別に設けても良い。
次に、本発明の第5実施形態による大便器ユニットを説明する。本発明の第5実施形態による大便器ユニットは、尿量測定を開始するボール内のスタート水位を設定する排水導管の構造、及び制御手段によるスタート水位の設定手順が、第4実施形態の大便器ユニットとは異なる。従って、ここでは、本発明の第5実施形態による大便器ユニットの第4実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
図35は本発明の第5実施形態による大便器ユニットの断面図である。
図35に示すように、本発明の第5実施形態による大便器ユニット550においては、水路拡大部418bから上方に延びる鉛直導管502の上端に、水位設定弁である第1三方弁552の第1の出入口552aが接続されている。この第1三方弁552の第2の出入口552bには、鉛直上方に延び、上端が開放された水柱554が接続されている。さらに、第1三方弁552の第3の出入口である排水出口552cは、戻り管556に接続されている。戻り管556は、排水出口552cから水平方向に延び、続いて下方に折れ曲がり、排水ソケット424に連通している。また、戻り管556には、排水出口552cよりも低い位置に配置された逆U字型の戻り管トラップ部556aが設けられ、排水配管内の臭気が逆流しないようになっている。この構成によれば、第1三方弁552の第1の出入口552aと排水出口552cが連通されると、ボール406内の水は、ゼット吐水ノズル409から、これに連通した圧力導管418a、水路拡大部418b、鉛直導管502、第1三方弁552を経て排水出口552cから戻り管556に流出される。従って、ボール406内の水位は、排水出口552cの高さ(水位Y)まで低下する。このゼット吐水ノズル409から排水出口552cに到る経路は排水導管を構成し、また、ゼット吐水ノズル409のゼット噴出口は、排水導管の排水入口を兼ねる。
また、水路切替手段416とリム吐水ノズル407の間には、第2三方弁558が設けられている。この第2三方弁558の第1の出入口558aは水路切替手段416に接続され、第2の出入口558bはリム吐水ノズル407に接続されている。従って、第2三方弁558の第1の出入口558aと第2の出入口558bが連通されている状態においては、リム吐水ノズル407から吐水される。また、第2三方弁558の第3の出入口558cは、水路拡大部418bと圧力センサ418の間に接続された第3三方弁560の第1の出入口560aに接続されている。さらに、この第3三方弁560の第2の出入口560bは水路拡大部418bに接続され、第3の出入口560cは圧力センサ418に接続されている。従って、第2三方弁558の第1の出入口558aと第3の出入口558cが連通され、第3三方弁560の第1の出入口560aと第2の出入口560bが連通されている状態においては、水路切替手段416から流出した水は、第2三方弁558及び第3三方弁560を通って水路拡大部418bに流入するように構成されている。
次に、図36を参照して、本発明の第5実施形態による大便器ユニット550の作用を説明する。図36は大便器ユニット550の作用を時系列で表すグラフである。
図36に示すように、待機時においては、大便器ユニット550のボール406内の溜水の水位は、図35にHで示す溢流水位になっており、また、操作・表示部422には「測定可」と表示されている。次に、大便器ユニット550の使用者が、操作・表示部422の準備スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)による認証操作を行うことによって、操作・表示部422の表示は「準備中」になる。これと同時に、制御手段420は、水路切替手段416に制御信号を送り、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。ゼット吐水ノズル409から吐水されると、トラップ部408にサイホン現象が発生し、ボール406内の水が吸引され、ボール406内の水位が低下する。所定時間ゼット吐水ノズル409からの吐水を行った後、制御手段420は、水路切替手段416、第1三方弁552、第2三方弁558、及び第3三方弁560に制御信号を送る。この制御信号により、水路切替手段416はリム吐水に切り替えられ、第1三方弁552は第1の出入口552aと第3の出入口552cが連通され、第2三方弁558は第1の出入口558aと第2の出入口558bの連通が継続され、第3三方弁560は第2の出入口560bと第3の出入口560cが連通される。さらに、制御手段420は、圧力センサ418及び下水管圧力センサ510に制御信号を送り、これらを作動させる。
リム吐水ノズル407からの吐水により、ボール406内の水位は上昇する。これと同時にボール406内の水は、排水導管を通って排水出口552cから排水される。本実施形態においては、リム吐水ノズル407は水補給手段として機能する。所定時間リム吐水ノズル407から吐水を行った後、制御手段420は、リム吐水を停止させる。リム吐水ノズル407からの吐水が停止した後も、排水出口552cからの排水は行われるので、ボール406内の水位は、排水出口552cと同一の高さのスタート水位Yまで低下する。第1三方弁552は、所定時間排水を行った後、第1の出入口552aと第3の出入口552cが連通する状態に復帰される。
次いで、大便器ユニット501の使用者が、操作・表示部422の測定開始スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)による認証操作を行うことによって、操作・表示部422の表示が「測定中」に変化する。表示が「測定中」に変化した後、使用者はボール406に排尿する。使用者が排尿すると、図36に示すように、ボール406内の水位は上昇し、水位Zとなる。排尿が終了すると制御手段420は第3三方弁560に制御信号を送る。この制御信号により、第3三方弁560の第1の出入口560aと第2の出入口560bが連通される。制御手段420に内蔵された尿量算出手段によって実行される使用者が排尿した尿量の計算については、第4実施形態と同様であるので説明を省略する。
尿量測定終了後、使用者が、操作・表示部422の便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作し、または溜水水位変化がなくなることにより排尿終了が検知されると、操作・表示部422の表示が「準備中」に変化する。これと同時に、制御手段420は、リム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、図36に示すように、ボール406内の水位が溢流水位Hまで上昇すると共に、旋回流で汚物が中央に集められる。次いで、制御手段420は、リム吐水ノズル407からの吐水を停止し、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。ゼット吐水ノズル409からの吐水により、サイホン現象が発生し、ボール406内の水位が低下する。サイホン現象終了後、制御手段420は、再びリム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、ボール406内の水位を溢流水位Hまで上昇させる。
次いで、制御手段420は、第2三方弁558に制御信号を送る。この制御信号により、第2三方弁558は第1の出入口558aと第3の出入口558cが連通される。これにより、水路切替手段416から流出した水は、第2三方弁558及び第3三方弁560を通って水路拡大部418bに流入し、さらに、圧力導管418a、ゼット吐水ノズル409を通ってボール406内に流入する。これにより、尿等の汚物が流入する可能性があるこれらの経路を洗浄することができる。その後、操作・表示部422の表示が「測定可」に変化し、待機状態に復帰する。
本発明の第5実施形態による大便器ユニットによれば、尿量測定を開始するスタート水位が、排水出口が配置された高さによって正確に設定されるので、高精度の尿量測定を行うことができる。
また、本実施形態による大便器ユニットによれば、排水出口からの排水を、サイホン現象によってボール内の水位を低下させた後、リム給水と共に行うので、ボール内の水位がスタート水位に到達するまでの時間を短縮することができる。
さらに、本実施形態による大便器ユニットによれば、圧力導管等の流水路を洗浄することができるので、大便器ユニットの作動の信頼性を向上させることができる。
上述した実施形態では、排水導管の排水入口と排水出口を連通させ又は遮断させる水位設定弁として、第1三方弁552を使用しているが、変形例として、本発明の第4実施形態による大便器ユニット501のように、水位設定弁として、電磁弁504等の三方弁以外の弁を使用することもできる。また、逆に、本発明の第4実施形態による大便器ユニット501の水位設定弁として、三方弁を使用することもできる。
次に、本発明の第6実施形態による大便器ユニットを説明する。本発明の第6実施形態による大便器ユニットは、尿量測定を開始するボール内のスタート水位を設定する排水導管の構造、及び制御手段によるスタート水位の設定手順等が、第5実施形態の大便器ユニットとは異なる。従って、ここでは、本発明の第6実施形態による大便器ユニットの第5実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
図37は本発明の第6実施形態による大便器ユニットの断面図である。
図37に示すように、本発明の第6実施形態による大便器ユニット600においては、第5実施形態における第1三方弁の代わりに、水位設定弁として、ロータリー弁608を使用している。まず、水路切替手段416とリム吐水ノズル407の間には、第2三方弁602が設けられている。この第2三方弁602の第1の出入口602aは水路切替手段416に接続され、第2の出入口602bはリム吐水ノズル407に接続されている。従って、第2三方弁602の第1の出入口602aと第2の出入口602bが連通されている状態においては、リム吐水ノズル407から吐水される。また、第2三方弁602の第3の出入口602cは、洗浄用タンク604の流入管604aに接続されている。この流入管604aは、その末端が洗浄用タンク604の上部で終わっており、流入管604aの末端は、洗浄用タンク604内に貯められた洗浄水に接触していない。従って、第2三方弁602の第1の出入口602aと第3の出入口602cが連通されている状態においては、水路切替手段416から流出した水は洗浄用タンク604に流入する。また、洗浄用タンク604の流入管604aは、洗浄用タンク604の水と接触せず、吐水口間隙を設けているので、洗浄用タンク604から水路切替手段416の方へ水が逆流することはない。
さらに、洗浄用タンク604には、流出管604bが接続されており、この流出管604bは洗浄用タンク604の底部から外部に延びている。洗浄用タンク604内から延びる流出管604bは、ポンプ606に接続されている。ポンプ606の流出管606aは、水位設定弁であるロータリー弁608の第1の出入口608aに接続されている。このロータリー弁608の第2の出入口608bは、尿量測定のスタート水位である水位Yの高さに配置されており、この第2の出入口608bは、排水ソケット424に接続されている。従って、ロータリー弁608の第1の出入口608aと第2の出入口608bが連通されている状態において、ポンプ606を作動させると、洗浄用タンク604内の水が、排水ソケット424を通って下水管に排水され、この水流によってトラップ部408の空気も一緒に下水管に引かれるため、下水配管中の臭気はトイレ内に拡散しない。本実施形態においては、スタート水位Yは、封水水位よりも低い水位、即ち、破封水位に設定される。
また、ロータリー弁608の第3の出入口608cは、第3三方弁560の第1の出入口560aに接続されている。さらに、第3三方弁560の第2の出入口560bは、水路拡大部418bに接続され、第3の出入口560cは圧力センサ418に接続されている。従って、ロータリー弁608の第1の出入口608aと第3の出入口608cが連通され、第3三方弁560の第1の出入口560aと第2の出入口560bが連通されている状態において、ポンプ606を作動させると、洗浄用タンク604内の水は、ロータリー弁608及び第3三方弁560を通って水路拡大部418bに流入し、溜水をスタート水位にセットし、又は、溜水と接触した測定配管を洗浄してボール面に排出されるモードとなる。また、水路拡大部418bには、鉛直上方に延びる水柱610が接続され、この水柱610の大気に開放された上端から空気抜きを行っている。また、水柱610の上端は、溢流水位Hよりも高い位置に配置されている。
次に、図38を参照して、本発明の第6実施形態による大便器ユニット600の作用を説明する。図38は大便器ユニット600の作用を時系列で表すグラフである。
図38に示すように、待機時においては、大便器ユニット600のボール406内の溜水の水位は、図37にHで示す溢流水位になっており、また、操作・表示部422には「測定可」と表示されている。次に、大便器ユニット600の使用者が、操作・表示部422の準備スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)による認証操作を行うことによって、操作・表示部422の表示は「準備中」になる。これと同時に、制御手段420は、水路切替手段416に制御信号を送り、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。ゼット吐水ノズル409から吐水されると、トラップ部408にサイホン現象が発生し、ボール406内の水が吸引され、ボール406内の水位が水位Xまで低下する。所定時間ゼット吐水ノズル409からの吐水を行った後、制御手段420は、水路切替手段416、第2三方弁602、第3三方弁560、及びロータリー弁608に制御信号を送る。この制御信号により、水路切替手段416はゼット吐水を停止し、第2三方弁602は第1の出入口602aと第2の出入口602bの連通を維持し、第3三方弁560は第1の出入口560aと第2の出入口560bの連通を維持し、ロータリー弁608は第2の出入口608bと第3の出入口608cが連通される。さらに、制御手段420は、圧力センサ418に制御信号を送り、これらを作動させる。圧力センサ418は、排尿終了操作又は水位変化がなくなるまで水位を圧力値として出力する。
ゼット吐水ノズル409からの吐水が終了した後において、トラップ部408の頂部408aを越えていない水がボール406の底部に戻るため、ボール406内の水位は上昇に転じる。一方、第3三方弁560の第1の出入口560aと第2の出入口560bが連通し、ロータリー弁608の第2の出入口608bと第3の出入口608cが連通しているので、ボール406内の水は、ゼット吐水ノズル409、これに連通する圧力導管418a、水路拡大部418b、第3三方弁560、ロータリー弁608を通って排水ソケット424に排水される。このゼット吐水ノズル409から排水出口であるロータリー弁608の第2の出入口608bに到る経路は排水導管を構成し、また、ゼット吐水ノズル409のゼット噴出口は、排水導管の排水入口を兼ねる。ロータリー弁608の第2の出入口608bは、尿量測定のスタート水位である水位Yの高さに配置されているので、ボール406内の水位がスタート水位Yになるまで排水される。
水位がYにセットされると、制御手段420は、水路切替手段416、第3三方弁560、及びロータリー弁608に制御信号を送る。この制御信号により、第3三方弁560は第2の出入口560bと第3の出入口560cが連通され、ロータリー弁608は第1の出入口608aと第2の出入口608bが連通される。さらに、制御手段420は、ポンプ606に制御信号を送り、これを作動させる。ポンプ606が作動されると、洗浄用タンク604内の水が流出管604bを通って吸引され、ポンプ606の流出管606a、ロータリー弁608を通って排水ソケット424から排水される。この排水によるエジェクタ効果により、ボール406内の空気が排水配管に吸引される。これにより、排水配管内の臭気が逆流することはない。
次いで、大便器ユニット600の使用者が、操作・表示部422の測定開始スイッチ(図示せず)を操作すると、操作・表示部422の表示が「測定中」に変化する。表示が「測定中」に変化した後、使用者はボール406に排尿する。使用者が排尿すると、図38に示すように、ボール406内の水位は上昇し、水位Zとなる。制御手段420に内蔵された尿量算出手段によって実行される使用者が排尿した尿量の計算については、第4実施形態と同様であるので説明を省略する。
尿量測定終了後、使用者が、操作・表示部422の便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、操作・表示部422の表示が「準備中」に変化する。これと同時に、制御手段420は、ポンプ606に制御信号を送り、その作動を停止させる。また、制御手段420は、リム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、図38に示すように、ボール406内の水位が溢流水位Hまで上昇する。次いで、制御手段420は、リム吐水ノズル407からの吐水を停止し、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。ゼット吐水ノズル409からの吐水により、サイホン現象が発生し、ボール406内の水位が低下する。サイホン現象終了後、制御手段420は、再びリム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、ボール406内の水位を溢流水位Hまで上昇させる。
次いで、制御手段420は、第2三方弁602、第3三方弁560、及びロータリー弁608に制御信号を送る。この制御信号により、第2三方弁602は第1の出入口602aと第3の出入口602cが連通され、第3三方弁560は第1の出入口560aと第2の出入口560bの連通が維持され、ロータリー弁608は、第1の出入口608aと第3の出入口608cが連通される。また、制御手段420は、ポンプ606に制御信号を送り、これを作動させる。これにより、水路切替手段416から流出した水は、まず洗浄用タンク604内に流入する。また、洗浄用タンク604内の水は、ポンプ606により、ロータリー弁608、第3三方弁560を通って水路拡大部418bに流入される。さらに、水路拡大部418bに流入した水は、圧力導管418a、ゼット吐水ノズル409を通ってボール406内に排水される。これにより、尿等の汚物が流入する可能性があるこれらの経路を洗浄することができる。その後、操作・表示部422の表示が「測定可」に変化し、ポンプ606は停止され、各弁は、待機状態に復帰する。
本発明の第6実施形態による大便器ユニットによれば、尿量測定を開始するスタート水位が、排水出口が配置された高さによって正確に設定されるので、高精度の尿量測定を行うことができる。
また、本実施形態による大便器ユニットによれば、測定準備中及び測定中において、ロータリー弁を介して排水ソケットに排水を行っているので、尿量測定のスタート水位を封水水位以下に設定しても、下水管内の臭気が逆流することがない。
さらに、本実施形態による大便器ユニットによれば、圧力導管等の流水路を洗浄することができるので、大便器ユニットの作動の信頼性を向上させることができる。
次に、本発明の第7実施形態による大便器ユニットを説明する。本発明の第7実施形態による大便器ユニットは、尿量測定を開始するボール内のスタート水位の設定機構が、第5実施形態の大便器ユニットとは異なる。従って、ここでは、本発明の第7実施形態による大便器ユニットの第5実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
図39は本発明の第7実施形態による大便器ユニットの断面図であり、図40はそのスタート水位の設定に使用される溜水タンクの断面図である。
図39及び図40に示すように、本発明の第7実施形態による大便器ユニット700は、洋風大便器402と、大便器ユニット700を作動させる種々の機能部を収納したキャビネット404(図39には図示せず)と、を有する。
洋風大便器402は、ボール406と、洗浄水を吐水させるリム吐水ノズル407と、ボール406を水封するトラップ部408と、トラップ部408に向けて洗浄水を噴出するサイホン現象発生手段であるゼット吐水ノズル409と、を有する。
また、キャビネット404には、市水から供給された洗浄水を吐出させる給水バルブである水路切替手段416と、ボール406底部の静水圧を測定する水位測定手段である圧力センサ418と、水路切替手段416を制御し、使用者の尿量を計算する制御手段420(図39には図示せず)が収納されている。また、制御手段を操作する信号を送る操作・表示部422(図39には図示せず)が壁面に取り付けられている。
トラップ部408の出口側端部は、排水ソケット424を介して下水管426に接続されている。
リム吐水ノズル407は、ボール406の上部から、リムの接線方向に洗浄水を吐出させ、ボール406の壁面を洗浄するように構成されている。ゼット吐水ノズル409は、ボール406の底部からトラップ部408に向けて洗浄水を噴出させ、トラップ部408内にサイホン現象を誘発するように構成されている。
水路切替手段416は、制御手段の制御信号に従って、市水から供給された洗浄水を、リム吐水ノズル407及びゼット吐水ノズル409から交互に吐水させるように構成されている。
圧力センサ418は、ゼット吐水ノズル409と連通した圧力導管418aによって導かれた、ボール406底部の静水圧を測定するように構成されている。図39に示すように、ゼット吐水ノズル409と連通した圧力導管418aは、水路拡大部418b、第1開閉弁418cを介して圧力センサ418に接続されている。水路拡大部418bは、圧力導管418aの途中に設けられ、圧力導管418aよりも十分に大きな流路断面積を有するように構成されている。さらに、水路拡大部418bと圧力センサ418の間に接続された第1開閉弁418cは、制御手段420によって、圧力センサ418による水位測定を行う際には開放され、水位測定を行わない時には閉鎖されるように構成されている。
また、図39に示すように、水路切替手段416とリム吐水ノズル407の間には、第1三方弁702が設けられている。この第1三方弁702の第1の出入口702aと第2の出入口702bが連通されると、水路切替手段416から直接リム吐水ノズル407に吐水されるようになっている。また、第1三方弁702の第3の出入口702cは逆流防止のための吐水口間隙を設けて、溜水タンク704に接続されている。第1三方弁702の第1の出入口702aと第3の出入口702cが連通されると、水路切替手段416から溜水タンク704に水が供給されるようになっている。従って、本実施形態において、水路切替手段416及び第1三方弁702は、溜水タンク給水手段を構成する。
図40に示すように、洗浄用タンク706が、溜水タンク704を取り囲むように設けられており、溜水タンク704から溢れた水が洗浄用タンク706に流入するようになっている。また、第1三方弁702の第3の出入口702cに接続された給水管702dは、溜水タンク704の上端より間隙を設けた位置にその吐水口を開口しており、溜水タンク704側から給水側への逆流を防止している。溜水タンク704の底部には、流出管704aが接続されており、溜水タンク704内の水が、流出管704aに接続された第3開閉弁710を介してリム吐水ノズル407から吐水されるようになっている。
また、洗浄用タンク706には、水位検出手段であるフロートスイッチ706bが設けられている。このフロートスイッチ706bは、溜水タンク704に供給された水が洗浄用タンク706に溢れ出て、洗浄用タンク706内の水位が所定水位に到達すると、溜水タンク704への給水を停止させるように構成されている。このため、溜水タンク704に貯められる水の量は溜水タンク704の容積によって決まり、溜水タンク704には一定量の水が貯められることになる。さらに、洗浄用タンク706には、フロートスイッチ706bによって設定される所定水位よりも高い位置にオーバーフロー管706cが接続されている。このオーバーフロー管706cは、第4開閉弁714(図39)を介してリム吐水ノズル407に接続されている。これにより、万一、溜水タンク704への給水がフロートスイッチ706bの不具合等によって停止されなくなったとき、洗浄用タンク706の水をボール406へ排出し、洗浄用タンク706から水が溢れるのを防止している。
さらに、洗浄用タンク706の底部には、流出管706aが接続されている。図39に示すように、この流出管706aは、ポンプ708、第5開閉弁712を介して水路拡大部418bに接続されている。従って、第5開閉弁712を開放した状態でポンプ708を作動させると、洗浄用タンク706内の水が水路拡大部418bに流入する。
さらに、図39に示すように、下水管内で発生した負圧を逃がすための通気弁716が、718を介して排水ソケット424に連通するように設けられている。また、下水管内の圧力変動をモニターするための下水管圧力センサ720が、第2三方弁722を介して排水ソケット424に連通するように設けられている。本実施形態においては、通気弁716として森永エンジニアリング株式会社製「ドルゴ」(商標)又は株式会社キッツ製「通気番」(商標)を使用している。この通気弁716として、一般的に下水管経路の圧抜きに使用されている任意の通気弁を使用することができる。下水管圧力センサ720は、下水管内に連通するように排水ソケット424に接続され、下水管内の圧力を測定するように構成されている。本実施形態の大便器ユニット700では、下水管圧力センサ720によって下水管内の圧力を測定し、この圧力に基づいて溜水水量の測定値を補正している。また、下水管内の圧力が低下すると、通気弁716を介して大気が下水管内に導入されるので、下水管内に大きな負圧が発生することはない。
次に、図41を参照して、本発明の第7実施形態による大便器ユニット700の作用を説明する。図41は大便器ユニット700の作用を時系列で表すグラフである。
図41に示すように、待機時においては、大便器ユニット700のボール406内の溜水の水位は、図39にYで示すスタート水位になっており、また、操作・表示部422には「測定可」と表示されている。次に、大便器ユニット700の使用者が、操作・表示部422の準備スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)による認証操作を行うことによって、操作・表示部422の表示は「準備中」になる。これと同時に、制御手段420は、第1開閉弁418c及び第2三方弁722に制御信号を送る。これにより、水路拡大部418bと圧力センサ418、及び下水管圧力センサ720と下水管が連通される。また、制御手段420は、圧力センサ418及び下水管圧力センサ720に制御信号を送り、これらを作動させる。
所定時間経過すると、操作・表示部422の表示が「測定中」に変化する。表示が「測定中」に変化した後、使用者はボール406に排尿する。使用者が排尿すると、図41に示すように、ボール406内の水位は上昇し、水位Zとなる。制御手段420は、圧力センサ418によって測定される圧力変化がなくなると、使用者の排尿が終了したと判定し、使用者の排尿量の計算を開始する。制御手段420に内蔵された尿量算出手段によって実行される使用者が排尿した尿量の計算については、第4実施形態と同様であるので説明を省略する。
また、排尿量の計算開始と同時に、制御手段420は、圧力センサ418及び下水管圧力センサ720に制御信号を送り、これらをOFFにし、第1開閉弁418cに制御信号を送り、これを閉鎖する。さらに、制御手段420は、第6開閉弁718に制御信号を送ってこれを閉鎖し、通気弁716からの大気の吸入を遮断する。また、制御手段420は、第5開閉弁712を開放して、ポンプ708を作動させる。これにより、洗浄用タンク706タンク内の水は、ポンプ708、第5開閉弁712、水路拡大部418b、第2開閉弁418d、圧力導管418aを通ってゼット吐水ノズル409から吐水され、これらの経路が洗浄される。
尿量測定終了後、使用者が、操作・表示部422の便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、操作・表示部422の表示が「準備中」に変化する。これと同時に、制御手段420は、水路切替手段416に制御信号を送って、リム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、図41に示すように、ボール406内の水位が溢流水位Hまで上昇する。この際、水路切替手段416から流出した水は、第1三方弁702の第1の出入口702aから流入して第2の出入口702bから流出し、リム吐水ノズル407を通って吐水される。次いで、制御手段420は、リム吐水ノズル407からの吐水を停止し、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。ゼット吐水ノズル409からの吐水により、サイホン現象が発生し、ボール406内の水位が、水位Xに低下して、ボール406内の溜水量はほぼゼロになる。従って、本実施形態において、ゼット吐水ノズル409は溜水排出手段として機能する。
所定時間ゼット吐水を行った後、制御手段420は、ゼット吐水を停止させる。これと同時に、制御手段420は、第3開閉弁710に制御信号を送ってこれを開放し、溜水タンク704内に貯められた所定量の水を、第3開閉弁710、リム吐水ノズル407を介してボール406内に吐水させる。所定時間第3開閉弁710を開放すると、溜水タンク704内の水が全てボール406内に流入する。ここで、溜水タンク704からの給水を行う前のボール406内の溜水量はほぼゼロであるので、所定量の水が貯められた溜水タンク704内の水を全てボール406内に流入させた後のボール406内の溜水量は常にほぼ一定となり、この時の水位がスタート水位Yとなる。本実施形態においては、スタート水位Yは、封水水位よりも25mm高い水位に設定されている。
溜水タンク704内の水が全てボール406内に流入すると、制御手段420は、第3開閉弁710を閉鎖させる。同時に、制御手段420は、第1三方弁702に制御信号を送り、第1三方弁702の第1の出入口702aと第3の出入口702cを連通させる。これにより、水路切替手段416から流出した水は、第1三方弁702を通って空になっていた溜水タンク704に流入する。溜水タンク704に水が流入すると、溜水タンク704内の水位が上昇する。溜水タンク704が満杯になると、水は溜水タンク704から溢れて洗浄用タンク706に流入する。洗浄用タンク706の水位が上昇し、所定の水位に達すると、洗浄用タンク706に設けられたフロートスイッチ706bが作動して制御手段420に信号が送られ、制御手段420は、水路切替手段416からの給水を停止させる。水路切替手段416からの給水が停止すると、操作・表示部422の表示が「測定可」に変化し、大便器ユニット700は待機状態に復帰する。
また、制御手段420は、溜水タンク704への給水が開始されたとき、第4開閉弁714を開放させる。これにより、万一、フロートスイッチ706bによって給水が停止されなかった場合には、洗浄用タンク706内の水を、第4開閉弁714、リム吐水ノズル407を介してボール406内に排水し、洗浄用タンク706から溢れることがないようにしている。
また、待機状態において、下水管内に所定値(本実施形態においては25mmAqa)以上の圧力変動が生じ、封水が破れる恐れがあるときは、制御手段420は、リム吐水ノズル407から溜水を補給し、ボール内の水位を上昇させる。従って、本実施形態において、制御手段420、及びリム吐水ノズル407は、水補給手段として機能する。
さらに、本実施形態の大便器ユニット700を尿量測定ではなく、大便の用途で使用する場合には、使用者が操作・表示部422の大便使用スイッチ(図示せず)を押してから使用する。大便使用スイッチ(図示せず)が押されると、制御手段420は、リム吐水ノズル407からリム給水を行い、ボール406内の溜水水位を、溢流水位Hまで上昇させる。リム給水は毎分20L程度の流量で行われるため、水位を溢流水位Hまで上昇させるために要する時間は約10秒以内であり、使用者の使い勝手が悪くなることはない。また、水位を溢流水位Hまで上昇させることにより、十分な溜水面積を確保することができ、また、ゼット吐水によるサイホン現象を有効に発生させることができる。また、大便使用の認定を着座検知機構と連動させて、例えば、着座されて一定時間以内に準備スイッチが押されなかった場合に、大便使用と認定するようにしても良い。
また、本実施形態の大便器ユニット700では、待機状態において、ボール406内の水位がスタート水位Yにあるため、長時間使用しない場合には、蒸発によってボール406内のスタート水位Yが低下してしまうことが考えられる。一般に、この水位低下は24時間で1mm程度であるため、本実施形態においては、大便器ユニット700が12時間使用されない場合には、制御手段420は、便器洗浄を行い、スタート水位Yを再び設定しなおす。
本発明の第7実施形態による大便器ユニットによれば、尿量測定を開始するスタート水位が、溜水タンクの容量によって正確に設定されるので、高精度の尿量測定を行うことができる。
また、本実施形態による大便器ユニットによれば、待機状態において、ボール内の水位がスタート水位に設定されているので、測定開始の準備に要する時間を短縮することができる。
さらに、本実施形態による大便器ユニットによれば、圧力導管等の流水路を洗浄することができるので、大便器ユニットの作動の信頼性を向上させることができる。
上述した本発明の第7実施形態による大便器ユニットにおいては、溜水排出手段であるゼット吐水ノズルによってサイホン現象を誘発し、ボール内の溜水を排出していたが、変形例として、ボール底部に排水口(図示せず)を設けておき、この排水口に接続された開閉弁を開放することによりボール内の水量をゼロとし、その後、溜水タンク内の水をボールに導入することによってスタート水位を設定するように構成することもできる。
次に、本発明の第8実施形態による大便器ユニットを説明する。本発明の第8実施形態による大便器ユニットは、尿量測定を開始するボール内のスタート水位の設定機構が、第7実施形態の大便器ユニットとは異なる。従って、ここでは、本発明の第8実施形態による大便器ユニットの第7実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
図42は本発明の第8実施形態による大便器ユニットの断面図であり、図43はそのスタート水位の設定に使用される溜水タンクの断面図である。
図42及び図43に示すように、本発明の第8実施形態による大便器ユニット800においては、水路切替手段416のリム給水側に第7開閉弁804及び第8開閉弁802が接続されている。この第8開閉弁802の他端802aは、リム吐水ノズル407に接続されている。また、第7開閉弁804の他端804aには、溜水タンク805が接続されている。図43に示すように、この溜水タンク805は、密封構造になっている。この溜水タンク805の底部には、第3開閉弁806の一端806aが接続され、この第3開閉弁806の一端806aは、第5開閉弁712に接続されている。また、第3開閉弁806の他端806bは、リム吐水ノズル407に接続されている。さらに、溜水タンク805の側面にはオーバーフロー管808aが接続されており、このオーバーフロー管808aは、第4開閉弁808を介してリム吐水ノズル407に接続されている。また、溜水タンク805の上部には、第9開閉弁812を介して圧送手段であるコンプレッサー810が接続されている。
次に、図44を参照して、本発明の第8実施形態による大便器ユニット800の作用を説明する。図44は大便器ユニット800の作用を時系列で表すグラフである。
図44に示すように、待機時においては、大便器ユニット800のボール406内の溜水の水位は、図42にHで示すスタート水位になっており、また、操作・表示部422には「測定可」と表示されている。次に、大便器ユニット800の使用者が、操作・表示部422の準備スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)による認証操作を行うことによって、操作・表示部422の表示は「準備中」になる。これと同時に、制御手段420は、水路切替手段416に制御信号を送り、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。ゼット吐水ノズル409から吐水されると、トラップ部408にサイホン現象が発生し、ボール406内の水が吸引され、ボール406内の水量がほぼゼロになる。従って、本実施形態において、ゼット吐水ノズル409は溜水排出手段として機能する。
また、制御手段420は、第9開閉弁812を開放して溜水タンク805内の圧力を高める。所定時間ゼット吐水ノズル409からの吐水を行った後、制御手段420は、第9開閉弁812を閉鎖し、第1開閉弁418c及び第3開閉弁806を開放する。第3開閉弁806が開放されると、溜水タンク805内に貯められていた所定量の水が、リム吐水ノズル407から吐水される。ここで、溜水タンク805内は、圧送手段であるコンプレッサー810によって加圧されているので、溜水タンク805の水は急速にリム吐水ノズル407から吐水される。溜水タンク805内の水が全て吐水されると、ボール406内の水位はスタート水位Yとなる。ここで、溜水タンク805内の水を吐水させる前のボール406内の水量(水位X)はほぼゼロであるため、スタート水位Yは、溜水タンク805内に貯められていた水量によって設定される。
溜水タンク805内の水が全て吐水された後、制御手段420は、第3開閉弁806を閉鎖する。また、制御手段420は、第2三方弁722に制御信号を送り、下水管圧力センサ720と下水管を連通させる。これと同時に、制御手段420は、圧力センサ418及び下水管圧力センサ720に制御信号を送り、これらを作動させる。
さらに、操作・表示部422の表示は「測定中」に変化する。表示が「測定中」に変化した後、使用者はボール406に排尿する。使用者が排尿すると、図44に示すように、ボール406内の水位は上昇し、水位Zとなる。制御手段420は、圧力センサ418によって測定される圧力変化がなくなるか、又は排尿終了スイッチを操作すると、使用者の排尿が終了したと判定し、使用者の排尿量の計算を開始する。制御手段420に内蔵された尿量算出手段によって実行される使用者が排尿した尿量の計算については、第4実施形態と同様であるので説明を省略する。
また、排尿量の計算開始と同時に、制御手段420は、圧力センサ418及び下水管圧力センサ720に制御信号を送ってこれらをOFFにし、第1開閉弁418cに制御信号を送ってこれを閉鎖する。さらに、制御手段420は、第6開閉弁718に制御信号を送ってこれを閉鎖し、通気弁716からの大気の吸入を遮断する。
尿量測定終了後、使用者が、操作・表示部422の便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、操作・表示部422の表示が「準備中」に変化する。これと同時に、制御手段420は、水路切替手段416及び第8開閉弁802に制御信号を送って、リム吐水ノズル407から所定時間吐水させ、図44に示すように、ボール406内の水位が溢流水位Hまで上昇する。この際、水路切替手段416から流出した水は、第8開閉弁802を通ってリム吐水ノズル407から吐水される。次いで、制御手段420は、リム吐水ノズル407からの吐水を停止し、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。ゼット吐水ノズル409からの吐水により、サイホン現象が発生し、ボール406内の水位が低下する。
所定時間ゼット吐水を行った後、制御手段420は、ゼット吐水を停止させ、リム吐水を再開してボール406内の水位を溢流水位Hまで上昇させる。ボール406内の水位が溢流水位Hまで上昇した後、制御手段420は、第8開閉弁802を閉鎖させ、第7開閉弁804及び第4開閉弁808を開放させる。第7開閉弁804を開放させることによって、水路切替手段416から流出した水は、溜水タンク805に流入し、溜水タンク805内の水位が上昇する。溜水タンク805内の水位がオーバーフロー管808aの設けられた高さまで上昇すると、溜水タンク805内の水は、第4開閉弁808を通ってリム吐水ノズル407からボール406内へ排水されるので、溜水タンク805内に貯められている水量は一定になる。
その後、制御手段420は、第7開閉弁804及び第4開閉弁808を閉鎖する。さらに、制御手段420は、第9開閉弁812を所定時間開放させて、溜水タンク805内の圧力を高める。
次いで、制御手段420は、第5開閉弁712を開放する。第5開閉弁712が開放されると、溜水タンク805内の水は、その内圧により、第5開閉弁712、水路拡大部418b、第2開閉弁418d、圧力導管418a、ゼット吐水ノズル409を通ってボール406内に排水される。これにより、尿等の汚物が流入する可能性があるこれらの経路を洗浄することができる。
さらに、制御手段420は、第5開閉弁712を閉鎖し、第7開閉弁804及び第4開閉弁808を再び開放させて、溜水タンク805内に水を貯める。制御手段420は、溜水タンク805内に所定量の水が貯まった後、水路切替手段416からの給水を停止して待機状態に復帰する。
本発明の第8実施形態による大便器ユニットによれば、尿量測定を開始するスタート水位が、溜水タンクの容量によって正確に設定されるので、高精度の尿量測定を行うことができる。
また、本実施形態による大便器ユニットによれば、溜水タンク内の水が圧送手段によって急速にリム吐水ノズルから吐水されるので、スタート水位の設定に要する時間を短縮することができる。
さらに、本実施形態による大便器ユニットによれば、圧力導管等の流水路を洗浄することができるので、大便器ユニットの作動の信頼性を向上させることができる。
次に、本発明の第9実施形態による大便器ユニットを説明する。本発明の第9実施形態による大便器ユニットは、尿量測定を開始するボール内のスタート水位の設定機構が、第8実施形態の大便器ユニットとは異なる。従って、ここでは、本発明の第9実施形態による大便器ユニットの第8実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
図45は本発明の第9実施形態による大便器ユニットの断面図である。図45に示すように、本発明の第9実施形態による大便器ユニット900は、洋風大便器402と、大便器ユニット900を作動させる種々の機能部を収納したキャビネット404(図24参照)と、を有する。
洋風大便器402は、ボール406と、洗浄水を吐水させるリム吐水ノズル407と、ボール406を水封するトラップ部408と、トラップ部408に向けて洗浄水を噴出するゼット吐水ノズル409と、を有する。
また、キャビネット404には、市水から供給された洗浄水を吐出させる給水バルブである水路切替手段416と、ボール406底部の静水圧を測定する水位測定手段である圧力センサ418と、水路切替手段416を制御し、使用者の尿量を計算する尿量算出手段を内蔵した制御手段420が収納されている。また、制御手段を操作する信号を送る操作・表示部422が壁面に取り付けられている。
トラップ部408の出口側端部は、排水ソケット424を介して下水管426に接続されている。
リム吐水ノズル407は、ボール406の上部から、リムの接線方向に洗浄水を吐出させ、ボール406の壁面を洗浄するように構成されている。ゼット吐水ノズル409は、ボール406の底部からトラップ部408に向けて洗浄水を噴出させ、トラップ部408内にサイホン現象を誘発するように構成されている。
圧力センサ418は、ゼット吐水ノズル409と連通した圧力導管418aによって導かれた、ボール406底部の静水圧を測定するように構成されている。図45に示すように、ゼット吐水ノズル409と連通した圧力導管418aは、第1開閉弁418cを介して圧力センサ418に接続されている。さらに、第1開閉弁418cは、制御手段420によって、圧力センサ418による水位測定を行う際には開放され、水位測定を行わない時には閉鎖されるように構成されている。さらに、第1開閉弁418cと圧力センサ418の間の導管には、第10開閉弁910を介して等圧手段であるシリコンオイルタンク908が接続されている。
このシリコンオイルタンク908は、圧力センサ418よりも上方に配置され、シリコンオイルを保持している。シリコンオイルは水よりも比重が小さく、水と混ざり合わない性質を有するので、第10開閉弁910とシリコンオイルタンク908の間の導管で水とシリコンオイルが直接接触しても、これらは常に分離した状態に保たれる。また、シリコンオイルは、揮発成分の少ないものを使用しているので蒸発等による減量が殆どないため、シリコンオイルタンク908中のシリコンオイルは長期間にわたって一定量を保ちつづける。このため、第1開閉弁418cを閉鎖し、第10開閉弁910を開放した場合には、圧力センサ418には、シリコンオイル及び導管内の水の圧力ヘッドにより常に一定の圧力が作用することになる。本実施形態の大便器ユニットでは、この一定の圧力を利用して、圧力センサ418を較正している。
制御手段420は、使用者の操作及び内蔵しているプログラムに従って、水路切替手段416を制御するように構成されている。また、制御手段は、尿量算出手段(図示せず)を内蔵しており、この尿量算出手段は、圧力センサ418によって測定された圧力に基づいて、ボール406内の水位を求め、使用者が排泄した尿量を計算するように構成されている。
水路切替手段416は、制御手段の制御信号に従って、市水から供給された洗浄水を、リム吐水ノズル407及びゼット吐水ノズル409から交互に吐水させるように構成されている。また、水路切替手段416のリム吐水ノズル407側の流出口には第1三方弁902の第1の出入口902aが接続されている。この第1三方弁902の第2の出入口902bは、リム吐水ノズル407に接続されている。また、給水弁である電磁弁904の流入口904aが、第2の出入口902bとリム吐水ノズル407の間の水路に接続されている。即ち、電磁弁904の流入口904aはボールに給水される水の供給源に接続されている。また、電磁弁904の流出口904bは、U字形に曲げられた給水トラップ906の一端に接続されている。この給水トラップ906の他端は、排水ソケット424を介して下水管に連通するように接続されている。一方、第1三方弁902の第3の出入口902cは、第5開閉弁712を介して圧力導管418aに連通するように接続されている。
さらに、図45に示すように、下水管内の圧力変動をモニターするための下水管圧力センサ720が、第2三方弁722を介して、排水ソケット424に連通するように設けられている。この第2三方弁722の第1の出入口722aと第2の出入口722bが連通されている場合には、下水管圧力センサ720は、第2三方弁722及び排水ソケット424を介して下水管内に連通し、下水管内の圧力を測定することができるように構成されている。本実施形態の大便器ユニット900では、下水管圧力センサ720によって下水管内の圧力を測定し、この圧力に基づいて溜水量の測定値を補正している。また、第2三方弁722の第2の出入口722bと第3の出入口722cが連通されている場合には、下水管圧力センサ720は、第2三方弁722を介して大気に連通する。本実施形態の大便器ユニット900では、大気圧を利用して下水管圧力センサ720を較正している。
次に、図46及び図47を参照して、本発明の第9実施形態による大便器ユニット900の作用を説明する。図46は尿量測定を行う場合の大便器ユニット900の作用を時系列で表すグラフであり、図47は大便器ユニット900を通常の大便器として使用する場合のグラフである。
図46に示すように、待機時においては、大便器ユニット900のボール406内の溜水の水位は、図45にYで示すスタート水位になっており、また、操作・表示部422には「測定可」と表示されている。次に、大便器ユニット900の使用者が、操作・表示部422の準備スイッチ(図示せず)を操作すると、操作・表示部422の表示は「準備中」になる。これと同時に、制御手段420は、圧力センサ418を作動させる。さらに、制御手段420は、第2三方弁722及び第10開閉弁910に制御信号を送って、第2三方弁722を第2の出入口722bと第3の出入口722cが連通する状態にし、第10開閉弁910を開放する。これにより、下水管圧力センサ720には大気圧が作用し、圧力センサ418にはシリコンオイル及び導管内の水の圧力ヘッドによる圧力が作用する。これらの常にほぼ一定に保たれた圧力を利用して、制御手段420は、下水管圧力センサ720及び圧力センサ418を較正する。
所定時間経過すると、操作・表示部422の表示が「測定中」に変化し、使用者に排尿しても良いことを知らせる。これと同時に、制御手段420は、第10開閉弁910を閉鎖し、第2三方弁722を第1の出入口722aと第2の出入口722bが連通する状態にする。また、制御手段420は、第1開閉弁418cに制御信号を送り、これを開放させる。この第10開閉弁910及び第1開閉弁418cの開閉の前後を通じて、等圧手段であるシリコンオイルタンク908内の液面に変化は生じない。表示が「測定中」に変化した後、使用者はボール406に排尿する。すると、図46に示すように、ボール406内の水位は上昇し、水位Zとなる。
使用者の排尿が終わり、圧力センサ418によって測定される水位が所定時間変化しなくなると、制御手段420は、排尿が終了したと判断し、尿量の計算を開始する。尿量の算出については、本発明の第4実施形態と同様であるので、説明を省略する。
また、制御手段420は、排尿が終了したと判断すると、第1開閉弁418cを閉鎖させ、第5開閉弁712を開放させる。さらに、制御手段420は、圧力センサ418及び下水管圧力センサ720をOFFにする。これと同時に、制御手段420は水路切替手段416に制御信号を送り、そのリム側流出口からの給水を開始する。水路切替手段416のリム側流出口から吐水された水は、第1三方弁902の第1の出入口902a、第3の出入口902cを経て、第5開閉弁712に達する。さらに、第5開閉弁712に達した水は、圧力導管418a、ゼット吐水ノズル409を通ってボール406内に吐水される。これにより、圧力導管418a及びゼット吐水ノズル409が洗浄される。
尿量測定終了後、使用者が、操作・表示部422の便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、操作・表示部422の表示が「準備中」に変化する。これと同時に、制御手段420は、第5開閉弁712を閉鎖させ、電磁弁904を閉鎖させる。さらに、制御手段420は、第1三方弁902を、第1の出入口902aと第2の出入口902bが連通するように切り替える。これにより、水路切替手段416のリム側流出口から吐水された水は、電磁弁904が閉鎖されているので、第1三方弁902を通ってリム吐水ノズル407から吐水される。このリム給水により、図46に示すように、ボール406内の水位は溢流水位Hまで上昇する。
所定時間リム給水を行った後、制御手段420は、水路切替手段416をゼット給水側に切り替え、ゼット吐水ノズル409から吐水させる。このゼット吐水によりサイホン現象が発生し、ボール406内の水が吸引され、ボール406内の溜水量はほぼゼロになる。
所定時間ゼット吐水を行った後、制御手段420は、水路切替手段416をリム給水側に切り替え、再びリム給水を開始する。所定時間リム給水を行い、ボール406内の水位がスタート水位Yに達すると、制御手段420は、電磁弁904に制御信号を送り、電磁弁904を開放させる。また、電磁弁904は制御信号を受けると急速に開放されるので、所定時間のリム給水によって流入する水量は一定になり、精度良くスタート水位Yが設定される。即ち、電磁弁904が開放されると、第1三方弁902の第2の出入口902bから流出した水は、給水トラップ906側に流れ込み、排水ソケット424を通って下水管426に排水される。このように、電磁弁904を開放したときは、電磁弁904に流入した水が、給水トラップ906に流れ込んで下水管426に排出されるので、ボール406内への給水は急激に停止される。
リム給水が終了すると、操作・表示部422の表示が「測定可」に戻り、大便器ユニット900は、待機状態に戻る。
次に、図47を参照して、本発明の第9実施形態による大便器ユニット900を通常の大便器として使用する場合の作用を説明する。
まず、大便器ユニット900の待機状態において、使用者が、操作・表示部422の準備スイッチ(図示せず)を操作し、又はIDカードやタグなどの個人認証手段(図示せず)による認証操作を行うことなく、用便のため着座すると、操作・表示部422の表示は「準備中」になる。これと同時に、制御手段420は、水路切替手段416をリム給水側に切り替え、電磁弁904を閉鎖させ、さらに、第1三方弁902を、第1の出入口902aと第2の出入口902bが連通するように切り替える。これにより、リム給水が行われ、ボール406内の水位は、溢流水位Hまで上昇する。
所定時間後、制御手段420は、リム給水を停止させ、操作・表示部422の表示を「排便可」に変化させる。排便後、使用者が、操作・表示部422の便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、操作・表示部422の表示が「準備中」に変化し、便器洗浄作用が開始される。便器洗浄作用は、上述した尿量測定時の作用と同様であるので、説明を省略する。
本発明の第9実施形態の大便器ユニットによれば、給水弁である電磁弁によりリム給水を急激に停止させることができるので、尿量測定のスタート水位Yを精度良く設定することができる。
また、上述した本発明の第9実施形態の大便器ユニットにおいては、所定時間リム給水を行った後、電磁弁を開放することによってスタート水位Yを設定しているが、変形例として、リム給水時に圧力センサを作動させておき、圧力センサがスタート水位Yを検出した瞬間に電磁弁を開放させるように構成することもできる。この構成によれば、リム給水の流量が一定でない場合にも精度良くスタート水位Yを設定することができる。
さらに、上述した本発明の第9実施形態の大便器ユニットにおいては、所定時間のリム給水のみによってスタート水位Yを設定しているが、変形例として、さらに補助給水手段(図示せず)を使用してスタート水位Yを微調整するように構成することもできる。この変形例においては、リム給水によって大まかなスタート水位Yを設定しておき、その後、補助給水手段(図示せず)によって圧力センサで水位を測定しながらボール内に給水を行って、スタート水位Yを微調整する。局部洗浄装置付(図示せず)の大便器ユニットにおいては、補助給水手段(図示せず)として、局部洗浄装置のノズルのセルフクリーン動作時等にボール内に排出される水を利用することができる。
また、本発明の大便器ユニットを、以下のように構成することもできる。
本発明の大便器ユニットは、使用者の尿を受けるボールと、このボールに連通し且つボール内の溜水を下水管に排出し、この下水管を水封するトラップ部と、ボール内の溜水の水位を、トラップ部の溢流水位よりも低い所定の水位まで低下させる溜水排出手段と、この溜水排出手段によって低下された溜水の水位と使用者が排尿を終えた後のボール内の水位の変化を測定する水位測定手段と、この水位測定手段によって測定された水位変化測定値から、使用者がボールに排泄した尿量を算出する尿量算出手段と、ボール内に水を流入させ、ボール内の溜水の水位を溢流水位に復水させる水補給手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、溜水排出手段が、溜水を保持しているボールから溜水を排出し、ボール内の溜水水位を低下させる。次いで、使用者は、溜水水位が低下したボールに排尿を行う。このとき、ボール内の溜水水位は、予め溢流水位よりも低下されているので、使用者の排尿によって、溜水又は尿がトラップ部を通って流出することがない。水位測定手段は、溜水排出手段によって低下された排尿前の水位と、使用者が排尿した後の水位を測定する。尿量算出手段は、使用者の排尿前後のボール内の水位に基づいて、使用者の尿量を測定する。測定後、水補給手段は、ボール内に水を流入させ、ボール内の溜水の水位を溢流水位に復水させて、下水管を確実に水封する。
このように構成された本発明によれば、従来の水洗大便器の構造に大きな変更を加えることなく、尿量測定を行うことができる。また、このように構成された本発明によれば、溜水排出手段によって排出される溜水には尿が混入していないので、尿が接触することによる故障が発生しにくく、大便器ユニットの信頼性を高めることができる。
本発明において、好ましくは、溜水排出手段は、トラップ部の所定の水位の高さに設けられた排水口と下水とを連通させる排水路と、この排水路に設けられた排水弁と、を有する。
このように構成された本発明においては、ボール内の溜水は、排水弁を開放すると、溜水の水位が排水口の高さになるまで排水路を通って下水に排水される。
このように構成された本発明によれば、排水口を形成する高さによって、尿量測定を開始する前の溜水の水位を正確に設定することができるので、尿量測定精度を高くすることができる。
本発明において、好ましくは、溜水排出手段は、トラップ部の中に水を流入させ、トラップ部内にサイホン現象を発生させてボール内の水を排出するサイホン現象発生手段である。
このように構成された本発明においては、ボール内の溜水は、サイホン現象発生手段によって引き起こされるサイホン現象によって、トラップ部から排出される。
このように構成された本発明によれば、従来の水洗大便器に備えられているゼット吐水ノズル等を、溜水排出手段と兼用にすることも可能になると共に、大便器ユニットの信頼性を高めることもできる。
本発明において、好ましくは、溜水排出手段は、使用者の操作によって又は大便器ユニットの使用者を自動的に検知することによって作動される。
このように構成された本発明においては、使用者の操作又は使用者自動検知により溜水排出手段が作動され、ボール内の水位が所定の水位に低下される。
本発明において、好ましくは、溜水排出手段は、1回の尿量測定が完了すると、次回の尿量測定のために自動的に作動される。
このように構成された、本発明においては、1回の尿量測定が完了した後、溜水排出手段が次回の尿量測定のために自動的に作動され、ボール内の水位が所定の水位に低下される。
このように構成された本発明によれば、大便器ユニットの使用者が尿量測定開始前に排尿を我慢しなければならない時間を短縮することができる。
本発明において、好ましくは、さらに、下水管から逆流した臭気を脱臭する脱臭手段を有し、溜水排出手段が、ボール内の溜水の水位をトラップ部の封水水位よりも低い所定の水位まで低下させる。
このように構成された本発明においては、溜水排出手段は、ボール内の溜水の水位を、トラップ部が封水されない水位まで低下させ、これにより下水管から逆流した臭気を脱臭手段が脱臭する。
このように構成された本発明によれば、測定可能な最大の尿量を大きくすることができる。加えて、断面積の小さいボール下部を使用して尿量測定をすることになり、特に少量の排尿時には単位排尿量当たりの溜水水位変化が大きくなるため、測定精度が向上する。
本発明において、好ましくは、脱臭手段は、ボール内の空気を吸引する吸引装置、下水管の中に空気を送風する送風装置、又は下水管の中に水を流入させる送水装置である。
このように構成された本発明によれば、大便器ユニットの性能に影響を与え、又は、使い勝手を低下させることがない。
本発明において、好ましくは、さらに、少なくとも溜水排出手段が水の排出を開始した後、水補給手段がボールに水を流入させて溢流水位に水位を復水させるまでの間、使用者に対してボールに尿以外の投入を禁じる旨を表示する報知手段を有する。
このように構成された本発明によれば、尿量測定時の留意事項を使用者に報知することができるので、尿量測定を行う機能部に排泄物が侵入して動作不良を起こすことがない。さらに、トイレットペーパー等の尿以外のものが誤って溜水の中に投入されることによる測定誤差の発生を未然に防止することができる。
本発明において、好ましくは、さらに、水位測定手段によって測定される水位の単位時間当りの変化に基づいて尿流率を算出する尿流率算出手段を有する。
このように構成された本発明によれば、平常通りトイレで排尿するだけで前立腺肥大をはじめとする泌尿器系疾患の指標である尿流率を測定することができる。また、トイレというパーソナル空間で測定が実施可能であることから、羞恥心無く繰返し測定が実施できるため、継続的な治療効果の確認などで信頼性の高い管理を行うことができる。また、尿意を感じた時に直ちに測定が行えるため、日常活動状態でのデータを得ることができる。
本発明において、好ましくは、さらに、水位測定手段によって測定される水位の単位時間当りの変化に基づいて排尿時間を算出する排尿時間算出手段を有する。
このように構成された本発明によれば、平常通りトイレで排尿するだけで前立腺肥大をはじめとする泌尿器系疾患の指標である排尿時間を測定することができる。また、トイレというパーソナル空間で測定が実施可能であることから、羞恥心無く繰返し測定が実施できるため、継続的な治療効果の確認などで信頼性の高い管理を行うことができる。
本発明において、好ましくは、さらに、水位測定手段によって測定される経時的な水位変化波形に基づいて使用者による大便の排泄を検知する大便排泄検知手段を有し、この大便排泄検知手段は、水位変化波形に含まれる周波数成分および/または水位変化波形の振幅変化挙動に基づいて大便の排泄を検知する。
このように構成された本発明によれば、尿量測定に対する誤差となる大便の排泄を検知することができ、また、これを表示することによって、測定データに誤差が存在する可能性を使用者、および/または医療関係者に知らせ注意を喚起することができるため、医学的判断において誤りの発生防止を図ることができる。
本発明において、好ましくは、尿量算出手段は、大便排泄検知手段が大便の排泄を検知した場合、大便排泄による溜水水位の変化量を推定し、この推定した変化量に基づいて算出した尿量を補正する。
このように構成された本発明によれば、尿量測定中に大便を誤って排泄した場合でも、大便量を含んだ尿量を測定値として出力することがない。また、大便排泄によって測定機会を失うことが少なくなるため、データの欠落なく長期間の継続的測定が可能になる。
本発明において、好ましくは、水補給手段は、溜水排出手段によってボール内の溜水の水位が低下された状態が所定時間以上継続した場合、測定を中断し、ボール内に水を流入させて溜水の水位を溢流水位まで上昇させる。
このように構成された本発明によれば、尿量測定を途中で中止したような場合においても、溜水の水位を溢流水位に復帰させるので、以降の便器装置としての使い勝手に影響を与えたり、下水管からの臭気の逆流を防止するために脱臭手段作動を永続的に実施する必要がない。
本発明において、好ましくは、さらに、使用者が排泄した尿の一部を直接採取する尿検体採取装置を有し、尿量算出手段は、ボール内に排泄された尿の量と尿検体採取装置に採取された尿の量を加算することによって、排泄された尿量を算出する。
このように構成された本発明によれば、一回の排尿について、排尿状態に関する測定と、尿に含まれる特定成分の定量および/または定性測定の両方を実施することができる。
また、本発明の大便器ユニットは、使用者の尿を受けるボールと、このボールに連通し且つボール内の溜水を下水管に排出し、この下水管を水封するトラップ部と、ボール内の溜水の水位を測定する水位測定手段と、ボール内に水を給水する給水バルブと、使用者の尿量測定を開始する前のボール内の溜水の水位が、トラップ部の溢流水位よりも低く、封水水位よりも高い所定の水位になるように、給水バルブを制御する制御手段と、所定の水位と、水位測定手段によって測定された使用者が排尿を終えた後のボール内の水位に基づいて、使用者がボールに排泄した尿量を算出する尿量算出手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、制御手段によって制御された給水バルブが、ボール内の溜水の水位が、トラップ部の溢流水位よりも低く、封水水位よりも高い所定の水位になるように給水する。次いで、使用者は、溜水水位が低下したボールに排尿を行う。このとき、ボール内の溜水水位は、溢流水位より低いので、使用者の排尿によって、溜水又は尿がトラップ部を通って流出することがない。水位測定手段は、使用者の排尿前の水位と、排尿後の水位を測定する。尿量算出手段は、排尿前後のボール内の水位に基づいて、使用者の尿量を測定する。
このように構成された本発明によれば、電解物質である塩化ナトリウムなどを多量に含む尿がボール内にある状態で尿量測定を行うことができるので、尿量測定を行う各構成部の動作に弊害を与えることがない。また、ボール内の溜水の水位が、予め所定の水位に設定されているので、測定準備のために溜水を排出する必要がなく、これにより1回当りの測定単価が安価になり、かつ、測定準備に要する時間が短いので排尿を長時間我慢する必要がない。
本発明において、好ましくは、水位測定手段が、ボール内の溜水の水圧を測定する圧力センサである。
このように構成された本発明によれば、尿がボール内にある状態で尿量測定を行うことができるので、尿量測定を行う各構成部の動作に弊害を与えることがなく、動作の信頼性を高めることができる。
本発明において、好ましくは、制御手段が、ボールの洗浄作用を終えた後、水位測定手段によって測定されたボール内の溜水の水位に基づいて給水バルブを制御して、次回の尿量測定のためにボール内の溜水を所定の水位に復帰させる。
このように構成された本発明においては、給水バルブは、水位測定手段によって測定されたボール内の溜水の水位に基づいて、ボール内の溜水が所定の水位になるように給水を行う。
このように構成された本発明によれば、尿量測定を開始する溜水の所定の水位を精度良く設定することができるので、より高精度に尿量測定を行うことができる。
また、本発明の大便器ユニットは、使用者の尿を受けるボールと、このボールに連通し且つボール内の溜水を下水管に排出し、この下水管を水封するトラップ部と、ボール内の溜水の水位を測定する水位測定手段と、水位測定手段によって測定された水位に基づいて、使用者が排泄した尿量又は尿流率を算出する尿量算出手段と、ボール内に所定量の水を投入し、又は、ボール内から所定量の水を排出する定量水投入/排出手段と、定量水投入/排出手段によって水が投入され又は排出された際の水位の変化に基づいて、尿量算出手段による計算値を補正する補正手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、定量水投入/排出手段がボール内に所定量の水を投入し、又は、ボール内から所定量の水を排出し、そのときのボール内の水位の変化が記憶される。次いで、水位測定手段は、使用者が排尿した後の溜水水位を測定し、尿量算出手段は、使用者の排尿前後のボール内の水位に基づいて、使用者の尿量を計算する。補正手段は、予め記憶されている定量水投入/排出前後の水位の変化に基づいて、尿量算出手段によって計算された使用者の尿量を補正する。
このように構成された本発明によれば、ボール内に所定量の水を投入し、又は、排出したときの水位変化に基づいて、尿量算出手段による尿量の計算値を補正するので、尿量測定前のボール内の水位が正確に設定されておらず、又は、水位測定手段の測定値に誤差がある場合においても、精度良く尿量測定を行うことができる。
本発明において、好ましくは、補正手段は、ボール内の溜水の量とボール内の溜水の水位との関係を表す水位変化曲線を記憶しており、補正手段は、水位測定手段によって測定された水投入/排出手段が所定量の水を投入する前の第1水位と所定量の水を投入した後の第2水位との差、及び水位変化曲線に基づいて、使用者が排尿する前のボール内の溜水の水位を求め、この水位に基づいて尿量算出手段による計算値を補正する。
このように構成された本発明においては、補正手段は、ボール内の溜水の量とボール内の溜水の水位との関係を表す水位変化曲線を予め記憶している。この補正手段は、水投入/排出手段が所定量の水を投入する前後の水位の差と、予め記憶している水位変化曲線に基づいて、使用者が排尿する前の溜水の水位を求める。
このように構成された本発明によれば、水位測定手段によって測定された水位の差に基づいて溜水の水位を求めているので、水位測定手段の測定値にオフセット誤差等が含まれている場合でも、精度良く尿量測定を行うことができる。
本発明において、好ましくは、補正手段は、ボール内の溜水の量とボール内の溜水の水位との関係を表す水位変化曲線を記憶しており、補正手段は、水位測定手段によって測定された水投入/排出手段が所定量の水を排出する前の溢流水位と所定量の水を排出した後の第2水位との差、及び水位変化曲線に基づいて使用者が排尿する前のボール内の溜水の水位を求め、この水位に基づいて尿量算出手段による計算値を補正する。
このように構成された本発明においては、補正手段は、ボール内の溜水の量とボール内の溜水の水位との関係を表す水位変化曲線を予め記憶している。この補正手段は、溢流水位と水投入/排出手段が所定量の水を排出した後の水位の差と、予め記憶している水位変化曲線に基づいて、使用者が排尿する前の溜水の水位を求める。
このように構成された本発明によれば、水位測定手段によって測定された水位の差に基づいて溜水の水位を求めているので、水位測定手段の測定値にオフセット誤差等が含まれている場合でも、精度良く尿量測定を行うことができる。
また、本発明の大便器ユニットは、使用者の尿を受けるボールと、このボールに連通し且つボール内の溜水を下水管に排出し、この下水管を水封するトラップ部と、ボール又はトラップ部の溢流水位よりも低い位置に設けられた排水入口から、この排水入口よりも高く溢流水位よりも低い所定の高さに開口した排水出口まで延びる排水導管と、この排水導管の排水入口と排水出口を連通させ又は遮断させる水位設定弁と、この水位設定弁を開放することにより所定の高さにされたボール内の溜水の水位と、水位設定弁を閉鎖し使用者が排尿を終えた後のボール内の水位の変化を測定する水位測定手段と、この水位測定手段によって測定された水位変化測定値から、使用者がボールに排泄した尿量を算出する尿量算出手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、水位設定弁を開放することにより、ボール内の溜水は、排水入口から排水導管を通って排水出口へ排水される。これにより、ボール内の溜水の水位は、排水出口が開口した所定の高さになるまで低下する。水位設定弁が閉鎖された後、使用者は、溜水水位が低下したボールに排尿を行う。このとき、ボール内の溜水水位は、予め溢流水位よりも低下されているので、使用者の排尿によって、溜水又は尿がトラップ部を通って流出することがない。水位測定手段は、水位設定弁によって設定された排尿前の水位と、使用者が排尿した後の水位を測定する。尿量算出手段は、使用者の排尿前後のボール内の水位に基づいて、使用者の尿量を測定する。
このように構成された本発明によれば、溜水の水位が、排水出口が開口している高さによって設定されるため、尿量測定開始前の水位を正確に設定することができ、これにより、精度良く尿量測定を行うことができる。
本発明おいて、好ましくは、さらに、トラップ部の中に水を流入させ、トラップ部内にサイホン現象を発生させてボール内の水を排出するサイホン現象発生手段を有し、サイホン現象発生手段によりボール内の溜水の水位を低下させた後、水位設定弁を開放してボール内の溜水の水位を所定の高さにする。
このように構成された本発明においては、サイホン現象発生手段によりボール内の溜水の水位をある程度低下させた後、水位設定弁を開放して溜水の水位を所定の高さに正確に設定するので、水位設定に要する時間を短縮することができる。
本発明において、好ましくは、さらに、ボール内に水を流入させ、ボール内の溜水の水位を上昇させる水補給手段を有し、サイホン現象発生手段によってボール内の溜水の水位を低下させた後、水補給手段によってボールに水を流入させると共に、水位設定弁を開放してボール内の溜水の水位を所定の高さにする。
このように構成された本発明においては、サイホン現象発生手段によりボール内の溜水の水位を低下させた後、水補給手段によってボールに水を流入させると共に、水位設定弁を開放して溜水の水位を所定の高さに正確に設定するので、水位設定に要する時間を短縮することができる。
本発明において、好ましくは、水位測定手段は、ボールに連通した圧力導管と、この圧力導管に接続された圧力センサとを有し、排水導管の一部又は全部が、圧力導管と兼用にされ、ボール内の水が圧力導管を通って排水される。
このように構成された本発明においては、ボール内の水位は、圧力導管によって伝達されるボール内の水圧を、圧力センサで測定することによって求められる。この圧力導管は、排水導管の一部又は全部と兼用にされる。
このように構成された本発明によれば、単純な構造により排水導管を構成することができる。
本発明において、好ましくは、尿量算出手段は、ボール内の溜水の水位が所定の高さであるとき、又は溢流水位であるとき、水位測定手段の較正を行う。
このように構成された本発明においては、大便器ユニットの構造により正確に再現性高く設定される溢流水位又は所定の高さの水位を利用して水位測定手段の較正を行うので、精度良く尿量測定を行うことができる。
また、本発明の大便器ユニットは、使用者の尿を受けるボールと、このボールに連通し且つボール内の溜水を下水管に排出し、この下水管を水封するトラップ部と、ボール内の溜水を排出する溜水排出手段と、この溜水排出手段によって溜水が排出されたボールに流入させる所定量の水を貯める溜水タンクと、この溜水タンクから所定量の水が流入された後のボール内の溜水の水位と使用者が排尿を終えた後のボール内の水位の変化を測定する水位測定手段と、この水位測定手段によって測定された水位変化測定値から、使用者がボールに排泄した尿量を算出する尿量算出手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、まず、溜水排出手段によって溜水量が概ねゼロになるようにボール内の溜水を排出し、次いで、所定量の水を貯めた溜水タンクからボール内に水を流入させることによって、尿量測定前のボール内の水位を設定する。次いで、使用者は、溜水水位を設定したボールに排尿を行う。水位測定手段は、設定された排尿前の水位と、使用者が排尿した後の水位を測定する。尿量算出手段は、使用者の排尿前後のボール内の水位に基づいて、使用者の尿量を測定する。
このように構成された本発明によれば、溜水タンク貯めた水の量によって尿量測定前のボール内の水位を設定するので、水位を正確に設定することができる。これにより、精度良く尿量測定を行うことができる。
本発明において、好ましくは、溜水排出手段は、トラップ部の中に水を流入させ、トラップ部内にサイホン現象を発生させてボール内の水を排出するサイホン現象発生手段である。
このように構成された本発明によれば、ゼット吐水ノズルを溜水排出手段として利用することができるので、単純な構造により溜水排出手段を構成することができる。
本発明において、好ましくは、さらに、溜水タンク内の水をボール内に圧送する圧送手段を有する。
このように構成された本発明によれば、溜水タンク内の水を急速にボール内に流入させることができるので、尿量測定前の準備に要する時間を短縮することができる。
本発明において、好ましくは、さらに、溜水タンクに水を供給する溜水タンク給水手段を有し、この溜水タンク給水手段は、溜水タンクから水が溢れるように溜水タンクに水を供給することによって、溜水タンクに貯める水の量を規定する。
このように構成された本発明によれば、溜水タンクに貯められる水の量が、溜水タンクの構造によって正確に決定されるので、尿量測定前のボール内の水位を正確に設定することができる。
本発明において、好ましくは、さらに、下水管内の圧力を測定する下水管圧力センサと、この下水管圧力センサが所定値以上の圧力変動を検出するとボール内に水を流入させてボール内の溜水水位を上昇させる水補給手段と、を有する。
このように構成された本発明によれば、ボール内の水位を溢流水位よりも低い水位にして待機状態とする大便器ユニットにおいても、下水管内の圧力変動によって、破封されることがない。
また、本発明の大便器ユニットは、使用者の尿を受けるボールと、このボールに連通し且つボール内の溜水を下水管に排出し、この下水管を水封するトラップ部と、ボール内の溜水の水位を測定する水位測定手段と、ボールに水を給水する給水口に接続された流出口、及びボールに給水される水の供給源に接続された流入口を備え、これら流出口と流入口の間を連通又は遮断する給水弁と、一端が流入口に接続され、他端が下水管に連通するように接続され、給水弁が連通状態にあるときは一端と他端との間を遮断し、給水弁が遮断されたときは供給源から供給された水を下水管に逃がす給水トラップ管と、ボール内の溜水の水位が所定の水位となるように給水弁を制御する制御手段と、所定の水位と、水位測定手段によって測定された使用者が排尿を終えた後のボール内の水位に基づいて、使用者がボールに排泄した尿量を算出する尿量算出手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、供給源から供給された水は給水弁を通ってボール内に供給され、制御手段は、ボール内の溜水の水位が所定の水位になったとき給水弁が遮断される。給水弁が遮断されたとき、供給源から供給された水は、給水トラップ管を通って下水管に排出される。使用者は、所定の溜水水位に設定されたボールに排尿を行う。水位測定手段は、設定された排尿前の所定の水位と、使用者が排尿した後の水位を測定する。尿量算出手段は、使用者の排尿前後のボール内の水位に基づいて、使用者の尿量を測定する。
このように構成された本発明によれば、給水弁として急速に遮断することができる弁を使用することにより、ボール内の溜水の水位を正確に設定することができる。また、給水弁を急速に遮断した場合にも、供給源から供給された水は、給水トラップ管を通って下水管に排出されるので、ウォーターハンマー現象等が発生することがない。
本発明において、好ましくは、制御手段が、水位測定手段によって測定されたボール内の水位に基づいて給水弁を制御する。
このように構成された本発明によれば、水位測定手段によって測定された水位に基づいて給水弁が制御されるので、溜水水位の設定精度をより向上させることができる。
本発明において、好ましくは、さらに、衛生洗浄装置を有し、制御手段が、給水弁を遮断した後、衛生洗浄装置からボール内に排出される水を利用してボール内の水位を調整する。
このように構成された本発明においては、給水弁による給水が終了した後、衛生洗浄装置からボール内に排出される水を利用して、ボール内の水位を微調整するので、溜水水位の設定精度をより向上させることができる。
本発明において、好ましくは、さらに、圧力ヘッドが常に一定に保持された等圧手段を有し、水位測定手段はボール内の溜水の水圧を測定する圧力センサであり、この圧力センサと等圧手段を連通させることにより、圧力センサを較正する。
このように構成された本発明においては、圧力ヘッドが常に一定に保持された等圧手段の圧力を、圧力センサに作用させることによって、圧力センサを較正するので、尿量の測定精度をより向上させることができる。