JP2006265303A - 研磨用バフ材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 研磨対象物に対して十分かつ効率良く研磨を行うことができる研磨用バフ材の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、触媒及びポリエチレングリコール又はその誘導体を含むポリウレタン発泡体の原料を反応させ、発泡及び硬化させてポリウレタン発泡体を製造する。得られたポリウレタン発泡体を加熱プレスし、そのプレス面に皮膜14を形成することにより研磨用バフ材19が得られる。前記ポリエチレングリコール又はその誘導体の配合量は、ポリオール類100質量部当たり0.5〜10質量部であることが好ましい。また、加熱プレスによる圧縮倍率が5〜10倍であることが好ましい。ポリウレタン発泡体は、JIS K6400に規定されているセル数が好ましくは40〜100個/25mmである。
【選択図】 図2

Description

本発明は、例えば半導体として用いられるシリコンウェハの外周縁を研磨してばりを取り除くための研磨用バフ材の製造方法に関するものである。
この種のシリコンウェハにおいては、加工上その結晶軸の方向を明確にしておく必要がある。この結晶軸の方向を示すため、円板状をなすシリコンウェハの一部を結晶軸の方向に切欠くオリエンテーションフラット(いわゆるオリフラ)を形成するか、或いは単にシリコンウェハの周縁の一部を切欠いたノッチ部を形成する工程が設けられる。一方、近年ではウェハが大型化し、直径8インチのウェハも出現している。そのような大径のウェハにおいては、オリフラを設けると廃棄される無駄な部分が多くなることから、オリフラは設けられず、ノッチ部が設けられる傾向にある。
また、ウェハの外周縁に形成されるばりを除去するために、従来不織布が用いられていた。すなわち、酸化セリウムの微粉末を水に分散させた研磨用スラリーを不織布に染み込ませ、それを用いてウェハの外周縁が研磨される。しかし、不織布は吸水性に優れているが、ばりを除去する研磨中に繊維がほつれ、ウェハに傷を付ける場合がある。しかも、不織布全体が吸水することから、研磨対象物に向けて押えたとき、押圧部以外から放水されて研磨効率が低下する。そこで、研磨用バフ材として硬質発泡ウレタンを使用したものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この研磨用バフ材は、内周面に突周部が周設された筒状に形成され、ウェハのノッチ部を前記突周部に向けてノッチ部内に突周部を進入、当接させ、研磨用バフ材を回転させてノッチ部内端面を研磨するようになっている。
特開平7−68461号公報(第2頁及び第5頁)
ところで、一般的に硬質発泡ウレタンは、独立気泡構造を有していることから吸水性が低く、また吸水性は全体に均一である。このため、硬質発泡ウレタンを研磨用バフ材として使用した場合には、研磨用スラリーの吸水性が悪く、ウェハ外周縁の研磨を十分に行うことができず、さらに吸水性が全体に均一であるため吸水及び吐水を有効に行うことができず、研磨効率が悪いという問題があった。
そこで本発明の目的とするところは、研磨対象物に対して十分かつ効率良く研磨を行うことができる研磨用バフ材の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の研磨用バフ材の製造方法は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、触媒及びポリエチレングリコール又はその誘導体を含むポリウレタン発泡体の原料を反応させ、発泡及び硬化させて得られるポリウレタン発泡体を加熱プレスし、そのプレス面に皮膜を形成することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明の研磨用バフ材の製造方法は、請求項1に係る発明において、前記ポリエチレングリコール又はその誘導体の配合量は、ポリオール類100質量部当たり0.5〜10質量部であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明の研磨用バフ材の製造方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記ポリウレタン発泡体は、JIS K6400に規定されているセル数が40〜100個/25mmであることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明の研磨用バフ材の製造方法は、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明において、前記加熱プレスによる圧縮倍率が5〜10倍であることを特徴とするものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の研磨用バフ材の製造方法においては、ポリエチレングリコール又はその誘導体を含むポリウレタン発泡体の原料を反応させ、発泡及び硬化させて得られるポリウレタン発泡体を加熱プレスし、そのプレス面に皮膜を形成することにより行われる。ポリウレタン発泡体の原料中にはポリエチレングリコール又はその誘導体が含まれていることからポリウレタン発泡体に親水性が付与され、しかもそのポリウレタン発泡体が加熱プレスされることからポリウレタン発泡体のセルに毛細管現象により水が吸収される。そのようなポリウレタン発泡体を研磨用バフ材として用いることにより、研磨用スラリー中の水がポリウレタン発泡体に吸収又は放出され、研磨対象物に対して十分な研磨を行うことができる。さらに、ポリウレタン発泡体のプレス面には皮膜が形成されており、その皮膜は非吸水性であることから、研磨時において吸水や放水を研磨対象物に対向する部分に限定することができ、研磨を効率良く行うことができる。
請求項2に記載の発明の研磨用バフ材の製造方法においては、ポリウレタン発泡体の原料にはポリエチレングリコール又はその誘導体がポリオール100質量部当たり0.5〜10質量部配合されていることから、請求項1に係る発明の効果を十分に発揮させることができる。
請求項3に記載の発明の研磨用バフ材の製造方法では、ポリウレタン発泡体のJIS K6400に規定されているセル数が40〜100個/25mmに設定され、十分な吸水性を得ることができるため、請求項1又は請求項2に係る発明の効果を向上させることができる。
請求項4に記載の発明の研磨用バフ材の製造方法では、加熱プレスによる圧縮倍率が5〜10倍であることから、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明の効果に加え、ポリウレタン発泡体の吸水性を向上させることができるとともに、皮膜の非吸水性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1(a)は、連続気泡構造のセル11を有するとともに、親水性が付与されたポリウレタン発泡体よりなる成形体12を模式的に示す説明図である。ポリウレタン発泡体は連続気泡構造を有するものであり、圧縮荷重に対する復元性を発揮できるもの、すなわち軟質の発泡体である。セル11は成形体12の厚さ方向に長い長円状をなし、均一な大きさで存在している。
図1(b)は、ポリウレタン発泡体よりなる成形体12を加熱プレスし、そのプレス面(表面近傍)13に密度の高い皮膜14が形成され、それら皮膜14間に密度の低い中間部15が形成されたプレス成形体16を模式的に示す説明図である。成形体12は加熱プレスにより3〜10倍程度圧縮され、そのプレス面13側が加熱により圧縮されやすく、高密度層の皮膜14となり、中間部15が圧縮倍率に応じて皮膜14より密度の低い低密度層となっている。従って、高密度の皮膜14では非吸水性を示し、低密度の中間部15では吸水性を示す。プレス成形体16のセル11は板面方向に長い長円状をなし、皮膜14のセル11の方が中間部15のセル11より偏平に形成されている。
図2(a)及び(b)に示すように、半導体として用いられる研磨対象物のシリコンウェハ17は円板状をなし、その一部には逆V字状に切欠かれたノッチ部18が設けられている。シリコンウェハ17の外周縁及びノッチ部18のばりを除去処理するために研磨用バフ材19が用いられる。その研磨用バフ材19として前記のプレス成形体16が使用される。研磨用バフ材19は、前述のような中間部15の両表面に皮膜14を有するプレス成形体16により円板状に形成されている。研磨用バフ材19の外周面には断面円弧状に形成された膨出部20が設けられ、その膨出部20で研磨を行うことができるようになっている。研磨用バフ材19の両面には研磨用バフ材19を保持する保持用治具21が設けられ、研磨用バフ材19を回転させてシリコンウェハ17の研磨を行うことができるようになっている。研磨用バフ材19の上方位置には研磨用スラリー23の吐出部22が配置され、研磨用スラリー23を吐出しながら研磨を行うように構成されている。
前記ポリウレタン発泡体は親水性を付与する化合物で親水化処理されるとともに、上記のように圧縮されているため、連続気泡構造を有するポリウレタン発泡体のセル11内に毛細管現象により水が吸収されるようになるものと考えられる。そのため、ポリウレタン発泡体の中間部15では十分に吸水及び放水され、皮膜14では発泡体が高密度になっているため非吸水性であり、吸水及び放水が規制される。そして、このプレス成形体16を研磨用バフ材19として用いる場合には、プレス成形体16の中間部15が研磨対象物に接触するように配置することにより、その中間部15が研磨用スラリー23中の水を吸収し、放出するとともに、皮膜14が水の出入りを規制するように機能する。
連続気泡構造のセル11を有する多孔質のポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤及び触媒を含むポリウレタン発泡体の原料を反応させ、発泡及び硬化させて得られる。この場合、ポリウレタン発泡体の原料には親水性を付与するためのポリエチレングリコール又はその誘導体がポリオール類100質量部当たり0.5〜10質量部配合されていることが好ましい。この配合量が0.5質量部未満の場合には、ポリウレタン発泡体に十分な親水性を付与することができず、吸水性が得られにくくなる。一方、10質量部を越える場合には、ポリウレタン発泡体に過剰な親水性が付与され、成形性が悪くなったりして好ましくない。
前記ポリオール類としては、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールが用いられる。ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、それらの変性体、グリセリンにアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。このポリオール類は、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、水酸基の数や水酸基価を変えることができる。
ポリオール類としては、ポリエステルポリオールがポリエチレングリコール又はその誘導体と相溶性を示さないことから、ポリウレタン発泡体中でポリエチレングリコール又はその誘導体に基づく単位が表面に出て親水性を効果的に発現できる点から好ましい。
ポリオール類の水酸基価は、250(mgKOH/g)未満であることが好ましく、50〜70(mgKOH/g)であることがより好ましい。このような水酸基価を有するポリオール類を用いることにより、ポリイソシアネート類との反応性に優れ、適度に架橋されたポリウレタン発泡体を得ることができる。ポリオール類の水酸基価が250(mgKOH/g)以上の場合、架橋密度が高くなり過ぎて発泡体が硬くなり、吸水性も低下する。一方、水酸基価が50(mgKOH/g)未満の場合、水酸基価が小さくなり過ぎ、ポリウレタン発泡体の架橋密度が低くなって発泡体の強度が低下しやすくなる傾向を示す。
次に、ポリオール類と反応させるポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が用いられる。
ここで、ポリイソシアネート類のイソシアネートインデックスは好ましくは100〜120である。すなわち、イソシアネートインデックスは、ポリオール類の水酸基及び発泡剤(水)に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比を百分率で表したものであるが、その値が100を越えるということはイソシアネート基が水酸基より過剰であることを意味する。イソシアネートインデックスが100未満の場合には、ポリオール類に対するポリイソシアネート類の反応が不足し、発泡体が軟らかくなって強度が低下する傾向を示す。一方、イソシアネートインデックスが120を越える場合には、発泡体が硬くなる傾向を示し、吸水性が低下するようになる。
発泡剤はポリウレタンを発泡させてポリウレタン発泡体とするためのものである。この発泡剤としては、水のほか酸アミド、炭酸ガス等が用いられる。発泡剤の配合量は、通常より少なくして硬化反応の進行を抑えるために、ポリオール類100質量部に対して1.0〜5.0質量部であることが好ましい。発泡剤の配合量が1.0質量部未満では泡化反応が不十分となり、5.0質量部を越えると泡化反応及び架橋反応が過剰となり、発泡体が硬くなりやすい。
この発泡剤に加えて補助発泡剤を配合することもできる。補助発泡剤は、ポリオール類とポリイソシアネート類とに対して非反応性の有機溶剤であり、発泡体の硬度を下げるために用いられる。この補助発泡剤としては、塩化メチレン(メチレンクロライド、CHCl)、n−ペンタン、シクロヘキサン、フロン系化合物(トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等)が挙げられる。
触媒はポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応を促進するためのものである。係る触媒としては、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N−エチルモルホリン等の3級アミン、オクチル酸スズ等の有機金属化合物、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。
次に、ポリエチレングリコール又はその誘導体は、ポリウレタン発泡体に親水性を付与するための成分である。この成分は、ポリイソシアネート類と反応したとき、ポリウレタン発泡体の骨格となるポリウレタン部分、特にポリエステルポリオールから得られるポリウレタン部分に対して非相溶性を示して表面に配向し、ポリウレタン発泡体に親水性を付与するものと考えられる。その具体例としては、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)のほかに、その誘導体としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数が11〜50、通常12〜18、エチレンオキシドの付加モル数3〜40)等が用いられる。その水酸基数(官能基数)は1又は2以上であってもよい。また、分子量は、200〜600程度である。
その他、ポリウレタン発泡体の原料としては、界面活性剤等の整泡剤、縮合リン酸エステル等の難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤等を添加することもできる。
そして、ポリウレタン発泡体の原料を反応させて発泡及び硬化させることによりポリウレタン発泡体が製造されるが、その際の反応は複雑であり、基本的には次のような反応が主体となっている。すなわち、ポリオール類とポリイソシアネート類との付加重合反応(ウレタン化反応)、ポリイソシアネート類と発泡剤としての水との泡化(発泡)反応及びこれらの反応生成物とポリイソシアネート類との架橋(硬化)反応である。ここで、上記のポリオール類はポリイソシアネート類と反応してポリウレタンの基本骨格を形成するものであり、ポリエチレングリコール又はその誘導体も水酸基を有してポリイソシアネート類と反応するが、ポリウレタンの基本骨格とは非相溶性を示して表面に配向し、親水性を発現する成分である。
ポリウレタン発泡体を製造する場合には、ワンショット法又はプレポリマー法が採用される。ワンショット法は、ポリオール類とポリイソシアネート類とを直接反応させる方法である。プレポリマー法は、ポリオール類とポリイソシアネート類との各一部を事前に反応させて末端にイソシアネート基又は水酸基を有するプレポリマーを得、それにポリオール類又はポリイソシアネート類を反応させる方法である。ワンショット法はプレポリマー法に比べて製造工程が一工程で済み、製造条件の制約も少ないことから好ましい方法であり、製造コストを低減させることができる。
ポリウレタン発泡体としては、スラブポリウレタン発泡体が好ましい。スラブポリウレタン発泡体は上記ワンショット法により混合攪拌された反応原料(反応混合液)をベルトコンベア上に吐出し、該ベルトコンベアが移動する間に反応原料が常温、大気圧下で自然発泡し、硬化することで得られる。その後、乾燥炉内で硬化(キュア)し、所定形状に裁断される。その他、モールド成形法、現場施工スプレー成形法等によってポリウレタン発泡体を得ることができる。
得られるポリウレタン発泡体は、JIS K6400に規定されているセル数が40〜100個/25mmであることが好ましい。このセル数が40個/25mm未満の場合には、ポリウレタン発泡体を圧縮したときに毛細管現象が起こりにくく、吸水性が低下する。一方、セル数が100個/25mmを越える場合には、ポリウレタン発泡体の強度等の物性が低下する。
係るポリウレタン発泡体の成形体12は加熱プレスされてプレス成形体16となるが、加熱プレスは180〜220℃の温度で3〜10分程度の条件にて行われる。加熱プレスの温度が180℃未満では圧縮の効果が弱く、220℃を越えるとポリウレタン発泡体の強度等の物性が低下して好ましくない。このような条件下で加熱プレスを行い、ポリウレタン発泡体の成形体12が通常3〜10倍に圧縮される。
さて、ポリウレタン発泡体を製造する場合には、ポリオール類及びポリイソシアネート類を、触媒及び発泡剤としての水の存在下に反応させ、発泡させるとともに、硬化させることによって行なわれる。この場合、ポリウレタン発泡体の原料にはポリエチレングリコール等の親水性を付与する化合物がポリオール類100質量部当たり0.5〜10質量部配合される。これにより、連続気泡構造のセル11を有するとともに、親水性が付与されたポリウレタン発泡体の成形体12が得られる。この成形体12は加熱プレス成形により3〜10倍に圧縮される。圧縮されたプレス成形体16には、その両表面に高密度の皮膜14が形成され、それらの中間部15には低密度の発泡体層が形成される。
このプレス成形体16を研磨用バフ材19として使用する場合には、円板状に形成されその両面が保持用治具21に支持される。そして、図2(a)及び(b)に示すように、研磨用バフ材19が回転され、研磨用スラリー23が吐出部22から吐出された状態で研磨用バフ材19の膨出部20がシリコンウェハ17のノッチ部18に接触することにより、ノッチ部18のばりが除去され、鏡面に研磨される。このとき、研磨用バフ材19を構成するプレス成形体16の中間部15ではセル11間の連通性が高まることから、研磨用スラリー23中の水が毛細管現象によりセル11内に容易に吸収され、また放出されながら研磨が効率良く行われる。一方、プレス成形体16の皮膜14は非吸水性であることから、研磨用バフ材19の両面から水が逃げるのが防止され、水の吸放出をシリコンウェハ17のノッチ部18に対向する膨出部20に限定することができ、研磨効率を上げることができる。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態の研磨用バフ材19の製造方法においては、ポリエチレングリコール又はその誘導体を含むポリウレタン発泡体の原料を反応させ、発泡及び硬化させて得られる成形体12を加熱プレスし、そのプレス面13に皮膜14を形成することにより行われる。ポリウレタン発泡体の原料中にはポリエチレングリコール又はその誘導体が含まれることから成形体12に親水性が付与され、しかもその成形体12が加熱プレスされて得られたプレス成形体16のセル11に水が十分に吸収される。
そのようなプレス成形体16を研磨用バフ材19として用いることにより、研磨用スラリー23中の水がプレス成形体16に吸収又は放出され、研磨対象物に対して十分な研磨を行うことができる。さらに、プレス成形体16のプレス面13には皮膜14が形成されており、その皮膜14は非吸水性であることから、研磨時において吸水や放水を研磨対象物に対向する部分に限定することができ、研磨を効率良く行うことができる。
・ また、ポリウレタン発泡体の原料にポリエチレングリコール又はその誘導体をポリオール100質量部当たり0.5〜10質量部配合することにより、ポリウレタン発泡体に親水性を十分に付与できて吸水性を高めることができ、研磨を良好に行うことができる。
・ さらに、ポリウレタン発泡体のJIS K6400に規定されているセル数を40〜100個/25mmの範囲に設定することにより、ポリウレタン発泡体の吸水性を向上させることができる。
・ 加えて、加熱プレスによる圧縮倍率を5〜10倍の範囲にすることによって、プレス成形体16における中間部15の吸水性の向上と、皮膜14の非吸水性の向上を図ることができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜5及び比較例1)
表1に示すポリオール類としてポリエステルポリオール及びポリイソシアネート類としてトリレンジイソシアネートを、アミン触媒としてN−エチルモルホリン、発泡剤として水の存在下に常法に従って反応させ、発泡及び硬化させることによりポリウレタン発泡体を製造した。表1に示す配合量は、いずれも質量部である。得られたポリウレタン発泡体(成形体12)を加熱プレス装置により200℃、5分の条件で3倍圧縮、5倍圧縮及び10倍圧縮し、圧縮されたサンプル(プレス成形体16)を得た。表1における略号の意味を次に示す。
N2200:ポリエステルポリオール、水酸基価60mgKOH/g、日本ポリウレタン工業(株)製
SE232:シリコーン界面活性剤、日本ユニカー(株)製
PEG200:ポリエチレングリコール、分子量200、水酸基価561mgKOH/g、官能基(水酸基)数2
LS106P:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、水酸基価106mgKOH/g、官能基(水酸基)数1、花王(株)製
T−80:トリレンジイソシアネート(2,4-トリレンジイソシアネート80質量%と2,6-トリレンジイソシアネート20質量%の混合物)、日本ポリウレタン工業(株)製
得られたポリウレタン発泡体について、密度、セル数及び吸水性を下記に示す方法で測定し、それらの結果を表1に併せて記載した。
密度(kg/m)及びセル数(個/25mm): いずれもJIS K6400の規定に準じて測定した。
吸水性: 0.05mlの水滴をポリウレタン発泡体表面に塗布した後、発泡体表面から内部へ完全に吸収されるまでの時間(秒)を測定した。この吸水性は、発泡体の表面(皮膜14)とその中間部15について行った。
Figure 2006265303
表1に示した結果から、実施例1のポリウレタン発泡体においては、親水性を付与する化合物としてポリエチレングリコールを用いて製造され、得られた発泡体の圧縮によりその表面に皮膜14が形成されている(5倍圧縮及び10倍圧縮)。このため、中間部15では連続気泡構造を形成するセル11内への吸水性が向上し、しかも皮膜14と中間部15との間に吸水性の差を設けることができた。従って、そのプレス成形体16を研磨用バフ材19として使用できることが明らかとなった。実施例2においても、親水性を付与する化合物としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることにより、実施例1と同様の結果を得ることができた。
実施例3では、ポリエチレングリコールの配合量を増加させたことから、発泡体の親水性が高まり、圧縮倍率が3倍でも中間部における吸水性が向上し、皮膜14と中間部15との間に吸水性の差を設けることができた。実施例4でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量を増加させたことから、発泡体の親水性が高まり、圧縮倍率が3倍でも吸水性が向上し、皮膜14と中間部15との間に吸水性の差を設けることができた。実施例5においては、発泡剤としての水の配合量を減少させ、発泡体の密度を高めたが、実施例3及び実施例4と同様の結果が得られた(但し、圧縮倍率3倍では、吸水性が実施例3及び実施例4より向上した)。
一方、比較例1においては、ポリウレタン発泡体が親水性を有していないことから、3〜10倍に圧縮しても吸水性の発現は見られなかった。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ポリエチレングリコールの誘導体として、ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等を用いることもできる。
・ 研磨用バフ材19の膨出部20の断面形状を三角形状、台形状等に変更することができる。
・ ポリウレタン発泡体の原料として親水性親油性比(HLB)が8〜18の界面活性剤を配合し、ポリウレタン発泡体の親水性を高めるように構成することも可能である。
・ 研磨対象物として、磁気ディスク、光磁気ディスク等を用いることもできる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記ポリオール類はポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の研磨用バフ材の製造方法。この製造方法によれば、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、ポリウレタン発泡体の親水性をより向上させることができる。
(a)は実施形態におけるポリウレタン発泡体の成形体を破断して示す説明図、(b)は加熱プレスして得られたプレス成形体を破断して示す説明図。 (a)は研磨用バフ材でシリコンウエハを研磨している状態を一部破断して示す平面図、(b)は研磨用バフ材でシリコンウエハを研磨している状態を示す断面図。
符号の説明
12…成形体、13…プレス面、14…皮膜、16…プレス成形体、19…研磨用バフ材。

Claims (4)

  1. ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、触媒及びポリエチレングリコール又はその誘導体を含むポリウレタン発泡体の原料を反応させ、発泡及び硬化させて得られるポリウレタン発泡体を加熱プレスし、そのプレス面に皮膜を形成することを特徴とする研磨用バフ材の製造方法。
  2. 前記ポリエチレングリコール又はその誘導体の配合量は、ポリオール類100質量部当たり0.5〜10質量部であることを特徴とする請求項1に記載の研磨用バフ材の製造方法。
  3. 前記ポリウレタン発泡体は、JIS K6400に規定されているセル数が40〜100個/25mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨用バフ材の製造方法。
  4. 前記加熱プレスによる圧縮倍率が5〜10倍であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の研磨用バフ材の製造方法。
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