JP2006265212A - Il−21産生誘導剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規メカニズムに基づくアレルギー性疾患等の免疫疾患の予防・治療薬等を提供すること。
【解決手段】TLRリガンド等の樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を有効成分として含有してなる、IL−21産生誘導剤が提供される。本発明の剤は特にNKT細胞におけるIL−21産生を強力に誘導し、アレルギー性疾患等の免疫疾患の予防・治療に有用である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を有効成分として含有してなるIL−21産生誘導剤及びその医薬用途、IL−21産生を誘導し得る物質のスクリーニング方法、アレルギー性疾患等の免疫疾患の予防・治療に有用な物質のスクリーニング方法等に関する。
過去20年以上に渡り、喘息、花粉症、及び湿疹のようなイムノグロブリン(Ig)Eにより調節されたアレルギー性疾患の流行が、特に工業国において、劇的に増加した。例えば、喘息の発症率は、合衆国のみならず日本においても1980年からおよそ倍増し、今では5〜10人に1人が冒されている。しかしながら、アレルギー性疾患の有意な増加の正確な理由や、IgE抗体産生の制御のためのメカニズムは十分には決定されてこなかった。アレルギー性疾患の流行の有意な増加のための説明として、衛生仮説(Hygiene Hypothesis)がよく受け入れられてきた。この仮説は、工業国における改善された衛生と、感染の発生率を減少させる多くの抗生物質の使用が、IgE産生を増強し得るTヘルパー(Th)型反応の発生と、アレルギー性障害の増加した発生率とに関係していることを示唆している。逆に、この仮説を支持する幾つかの疫学的な研究が、感染性の物質への曝露がアレルギー性障害の発生率を減少させることを示してきている。後者の状況は、通常、Th1型反応のような防御性免疫反応を駆動し、この反応はお互いにTh2反応に対して抑制的である。従って、菌体産物による幾つかの治療戦略が、Th2反応及びアレルギー反応の発生を抑制すると提唱されてきた。
Mycobacterium bovis bacillus Calmette Guerin (BCG)ワクチン接種とアレルギー性疾患の発生とが、特に出生直後に投与されたものでは、逆相関することが示唆されてきた(非特許文献1)。事実、BCGワクチン接種はIgE産生を抑制し、マウスモデル、及びヒト喘息において、アレルギー性疾患の発生を抑制することが報告されている(非特許文献1〜5)。BCGは生きた菌体であり、Th1反応を誘導すると報告されていることから(非特許文献4)、これらの現象は上述の仮説にて主張された免疫反応によりたびたび説明されている。しかしながら、BCG調節IgE抑制のメカニズムに関して、BCG投与後のTh1シフトの所見については異論のあるところである(非特許文献3、6)。従って、IgE抑制のための他のエフェクター細胞が考慮されるべきである。
ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)は、T細胞受容体(TCR)とNK受容体の2つの抗原レセプターを発現しているリンパ球の一つであり、免疫系において制御的な役割を担っている。NKT細胞は、当該細胞上のT細胞受容体がCD1(例えばCD1d)分子上に提示されたα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)やイソグロボトリヘキソシルセラミドなどの糖脂質を認識することを特徴とする(Science, 278, p.1626-1629, 1997; J Exp Med, 188, p.1521-1528, 1998; Science, 306, p.1786-1789, 2004)。通常のT細胞とは異なり、NKT細胞上のT細胞受容体のレパートリーは非常に限られている。例えばマウスNKT細胞(Vα14NKT細胞という場合がある)上のT細胞受容体のα鎖は、非多型性のVα14及びJα281遺伝子セグメントによりコードされており(Proc Natl Acad Sci USA, 83, p.8708-8712, 1986; Proc Natl Acad Sci USA, 88, p.7518-7522, 1991; J Exp Med, 180, p.1097-1106, 1994)、β鎖の90%以上はVβ8であり、他にVβ7やVβ2という限られたレパートリーが含まれ得る。また、ヒトNKT細胞上のT細胞受容体は、マウスのVα14と相同性の高い非多型性のVα24、及びVβ8.2に近縁のVβ11の組み合わせであることが知られている。過去の研究は、NKT細胞は、自己免疫疾患発生からの保護、移植寛容の維持、IFN‐γ、IL−4、IL−10又はIL−13等のサイトカイン産生を介した癌のための免疫学的監視等、多様な免疫反応において重要な役割を果たしていることを示した(非特許文献7)。IgE産生の制御に関しては、α−GalCer活性化NKT細胞により産生された、IL−4ではなくIFN−γが、Th2発生及びIgE産生を抑制することによって、Th1細胞分化に対して優位な機能的効果を誘導した。しかしながら、多くの他の研究は、Th2に偏った免疫反応やインビボにおけるIgE産生の増強におけるNKT細胞の役割が見出されている(非特許文献8〜10)。従って、IgE産生及びアレルギー性障害へのNKT細胞の寄与は、個々の状態において注意深く評価されるべきである。
幾つかの過去の報告がBCGとNKT細胞との間の相関を示している。例えば、BCGに由来する脂質抗原がNKT細胞により認識され、グラニュローマ形成を誘導した(非特許文献11)。更に、BCG処理はNKT細胞の増殖(非特許文献12)、及び抗炎症反応(非特許文献13)を引き起こした。
BCG等の菌体産物は、一般にToll様受容体(TLR)と呼ばれる一群の膜受容体により認識され、樹状細胞(DC)を刺激し、IL−12等のサイトカインの産生や、共刺激分子の発現を増強し、免疫応答を誘導する。TLRは細胞外領域にロイシンに富む繰り返し構造を有し、また細胞質内領域にはIL−1受容体とも共通する構造であるToll/IL−1受容体相同性領域(Toll/IL-1 homologous domain, TIRドメイン)を有する。現在、ヒトのTLRとして10種類同定されている。TLRの多くはTIRドメインを介して、細胞内に存在するアダプター分子であるMyD88と会合する。この会合は最終的にはNF−κB、MAPKカスケードの活性化に至るシグナル伝達経路を活性化する。
一方、IL−21は最近既述されたサイトカインであり、活性化CD4T細胞から産生されることが知られている(非特許文献14)。IL−21はリンパ球系細胞機能を制御する幅広い能力を有している(非特許文献15〜20)。Bリンパ球による抗体産生に関しては、IL−21はIgE産生の負のレギュレーターである(非特許文献21、22)。なぜなら、IL−21は、CD40L及びIL−4の両者により活性化されたB細胞のIgE産生を直接遮断し、IL−21受容体(IL−21R)欠損マウスは増強されたIgE産生を示すからである。従って、IL−21はアレルギー反応を制御し得るサイトカインの一つであるが、どのような刺激がIL−21発現を効果的に誘導させるのか、またインビボにおいて真に機能的なIL−21産生細胞は何なのかについては、明らかでない点が多い。
Science, 275巻, p.77-79, 1997年 J Allergy Clin Immunol, 102巻, p.867-874, 1998年 Immunology, 93巻, p.307-313, 1998年 J Exp Med, 187巻, p.561-569, 1998年 Arch Otolaryngol Head Neck Surg, 128巻, p.1058-1060, 2002年 Am J Respir Cell Mol Biol, 27巻, 244-249, 2002年 Annu Rev Immunol, 21巻, p.483-513, 2003年 J Exp Med, 190巻, p.783-792, 1999年 J Exp Med, 197巻, p.997-1005, 2003年 Curr Opin Immunol, 15巻, p.627-633, 2003年 Proc Natl Acad Sci USA, 96巻, p.5141-5146, 1999年 Eur J Immunol, 29巻, p.650-659, 1999年 J Immunol, 171巻, p.1961-1968, 2003年 Nature, 408巻, p.57-63, 2000年 J Immunol, 171巻, p.608-615, 2003年 J Immunol, 169巻, p.3600-3605, 2002年 J Leukoc Biol, 72巻, p.856-863, 2002年 J Allergy Clin Immunol, 112巻, p.1033-1045, 2003年 Immunology, 112巻, p.177-182, 2004年 Blood, 102巻, p.4090-4098, 2003年 Blood, 100巻, p.4565-4573, 2002年 Science, 298巻, p.1630-1634, 2002年
本発明の目的は、BCG等のTLRのリガンドによるアレルギー性疾患の抑制メカニズムを詳細に解明し、当該メカニズムに基づくアレルギー性疾患等の免疫疾患の予防・治療薬や、アレルギー性疾患等の免疫疾患の予防・治療に有用な物質のスクリーニング方法を提供することである。
上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、Vα14NKT細胞欠損(NKT KO)マウスを用いて、Vα14NKT細胞が、BCGにより誘導される抗原特異的IgE産生の抑制に必要であることが見出された。驚くべきことに、それはTh1/Th2のインバランスにより調節されてはおらず、NKT細胞がそのIL−21発現を通してIgE産生を抑制したことを示した。IL−21が通常のT細胞よりもVα14NKT細胞においてより多量に発現されており、NKT細胞によるサイトカイン産生がBCGワクチン接種により誘導されるIgE抑制のために機能的に必須であった。BCGによるNKT細胞の活性化は樹状細胞(DCs)からのIL−12産生を必要とし、これは自然免疫シグナリング経路により調節されていた。以上のような知見に基づき、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に関する。
[1]樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を有効成分として含有してなる、IL−21産生誘導剤。
[2]樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質が、TLRリガンド、可溶性CD40リガンド、及びTNF−αからなる群から選択される、上記[1]記載の剤。
[3]TLRリガンドが、LPS、ペプチドグリカン、リポアラビノマンナン、ザイモザン、リポペプチド、リポテイコ酸、RSV F タンパク質、ファイブロネクチンEDAドメイン、HSP60、フラジェリン、非メチル化CpG DNA、二本鎖RNA、ポリイノシンポリシチジン酸、イミダゾキノリン系化合物、βグルカン、丸山ワクチン、マイコバクテリウムボビス、及びOK−432からなる群から選択される、上記[2]記載の剤。
[4]NKT細胞におけるIL−21産生誘導用である、上記[1]記載の剤。
[5]免疫疾患の予防・治療剤である、上記[1]記載の剤。
[6]該免疫疾患はアレルギー性疾患である、上記[5]記載の剤。
[7]IL−21産生を誘導し得る物質のスクリーニング方法であって、被験物質を樹状細胞に適用し、該樹状細胞におけるIL−12産生を評価し、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導した物質を、IL−21産生を誘導し得る物質として選択することを含む方法。
[8]免疫疾患の予防・治療に有用な物質のスクリーニング方法であって、被験物質をNKT細胞に適用し、該NKT細胞におけるIL−21産生の誘導を評価し、NKT細胞におけるIL−21産生を誘導した物質を、免疫疾患の予防・治療に有用な物質として選択することを含む方法。
[9]樹状細胞の存在下で、被験物質がNKT細胞に適用される、上記[8]記載の方法。
[10]樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質による免疫疾患の治療に対する感受性を判定する方法であって、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を被検者由来のNKT細胞に適用し、該NKT細胞におけるIL−21産生を評価することを含む方法。
[11]樹状細胞の存在下で、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質が被検者由来のNKT細胞に適用される、上記[10]記載の方法。
[12]樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質による免疫疾患の治療に対する感受性を判定するためのキットであって、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質、NKT細胞を調製するための試薬、及びIL−21産生を評価するための試薬を含むキット。
[13]更に樹状細胞を調製するための試薬を含む、上記[11]記載のキット。
本発明のIL−21産生誘導剤は、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を有効成分として含有してなり、特にNKT細胞におけるIL−21産生を強力に誘導し得る。また、本発明のIL−21産生を誘導し得る物質のスクリーニング方法によれば、、特にNKT細胞におけるIL−21産生を強力に誘導し得る物質を獲得することができる。NKT細胞はインビボにおける真に機能的なIL−21産生細胞であることから、NKT細胞におけるIL−21産生を誘導し得る物質は、アレルギー性疾患や腫瘍等の免疫疾患の予防・治療に極めて有用である。また、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質によるアレルギー性疾患等の免疫疾患の治療に際して、当該物質を被検者由来のNKT細胞に適用し、該NKT細胞におけるIL−21産生を評価することにより、当該治療に対する感受性を判定することが可能であることから、当該治療方法に対して感受性が高く、有効性がより期待出来る患者を選択することが可能となる。
(1.IL−21産生誘導剤)
後述の実施例から明らかなように、BCG等のTLRリガンドや、可溶性CD40リガンド等の樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質により、NKT細胞におけるIL−21産生が強力に誘導される。従って、本発明は樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を有効成分として含有してなる、IL−21産生誘導剤を提供するものである。
本発明において、樹状細胞は、任意の哺乳動物由来のものを用いることが出来る。哺乳動物としては、ヒト及びヒトを除く哺乳動物を挙げることが出来る。ヒトを除く哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、サル、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類を挙げることが出来る。
樹状細胞とは、リンパ系組織等に存在する抗原提示細胞であり、細胞表面上に発現されたMHC ClassI、MHC ClassI様分子(CD1等)、MHC ClassII等を介して抗原を提示し、T細胞又はNKT細胞を活性化させる。樹状細胞は種々の刺激により活性化され、様々なサイトカインを産生する。特に、樹状細胞はインビボにおける主要なIL−12産生細胞であり、樹状細胞から放出されたIL−12は周囲の細胞に作用し、免疫反応を修飾し得る。
本明細書において、「IL−12産生」、「IL−21産生」とは、サイトカインポリペプチドの産生を意味する。また、「サイトカイン産生の誘導」は、サイトカインを産生していない状態にある対象を、該サイトカインを産生する状態へ変化させることのみならず、既にサイトカインを産生している対象における該サイトカインの産生量を増強させることをも含む概念である。
IL−12は、公知のサイトカインであり、ジスルフィド結合した約40kDa(p40)と約35kDa(p35)のサブユニットからなる約75kDa のヘテロ二量体性サイトカインである。IL−12のそれぞれのサブユニットのアミノ酸配列やポリヌクレオチド配列も公知であり、例えばヒト(J. Immunol., vol.146, p.3074, 1991; Proc Natl Acad Sci USA, vol.88, p.4143, 1991)、マウス(J. Immunol., vol.148, p.3433, 1992)の配列が報告されている。IL−12は樹状細胞、B細胞、貪食細胞等において産生されるが、特に樹状細胞は強力なIL−12産生細胞である。樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質としては、例えば、TLRリガンド、可溶性CD40リガンド、TNF−α等を挙げることができる。
TLRリガンドとしては、哺乳動物のTLRにより認識される物質であれば特に限定されない。哺乳動物には、複数種類のTLRが存在することが知られており、例えばヒトにおいては10種類(TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9及びTLR10)のTLRが知られているが、いずれのTLRに対するリガンドも、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る限り、本発明に包含される。
具体的には、TLRリガンドとしては、LPS、ペプチドグリカン、リポアラビノマンナン、ザイモザン、リポペプチド、リポテイコ酸、RSV F タンパク質、ファイブロネクチンEDAドメイン、HSP60、フラジェリン、非メチル化CpG DNA、二本鎖RNA、ポリイノシンポリシチジン酸、イミダゾキノリン系化合物、βグルカン、丸山ワクチン、マイコバクテリウムボビス、OK−432等の物質を挙げることができる。
TLRリガンドの多くは、生物、ウイルス等に由来する物質であるので、TLRリガンドを含有する生物等から自体公知の方法で抽出を行うことによって単離・精製することが出来る。
また、TLRリガンドが、生物、ウイルス等に由来する物質である場合、TLRリガンドを含有する生物、ウイルス等や、それらの一部、あるいはそれらからの抽出物等もTLRリガンドに含まれるものと解する。この場合、TLRリガンドを含有する生物の生死は特に限定されない。例えばLPS(リポ多糖)はグラム陰性菌に共通して存在し、グラム陰性菌の菌体外膜の主成分であるので、グラム陰性菌やその菌体外膜もTLRリガンドに包含される。また、ペプチドグリカンはグラム陽性菌の外膜を構成するので、グラム陽性菌やその外膜もTLRリガンドに包含される。同様に、結核菌等の抗酸菌やその細胞壁(これらはリポアラビノマンナンを含有する)、酵母やその細胞壁(これらはザイモザンを含有する)、種々のバクテリアやマイコプラズマ、あるいはそれらの細胞膜(これらはリポペプチドを含有する)、グラム陽性菌やその細胞壁(これらはリポテイコ酸を含有する)、呼吸器多核体ウイルス(これはRSV F タンパク質を含有する)、腸内細菌等の運動性細菌やその鞭毛繊維(これらはフラジェリンを含有する)、バクテリアやそのDNA(これらは非メチル化CpG DNAを含有する)、アガリクス、マイタケ、サルノコシカケなどの茸類(これらはβグルカンを含有する)、マイコバクテリウムボビス、溶連菌等もTLRリガンドに包含される。
このうち、マイコバクテリウムボビス(ウシ型結核菌)に関しては、その菌株の種類は限定されないが、安全性等を考慮すると、弱毒菌であるカルメット−ゲラン(BCG)菌株が好ましい。マイコバクテリウムボビスは生菌であっても死菌であってもよい。また、マイコバクテリウムボビスの菌体の一部(例えば細胞壁骨格(CWS)、細胞壁(CW)等)も、本発明の範囲に包含される。マイコバクテリウムボビスのCWSは公知文献(Cancer Res., 33, 2187-2195(1973); J. Natl. Cancer Inst., 48, 831-835(1972); J. Bacteriol., 94, 1736-1745(1967); Gann, 69, 619-626(1978); J. Bacteriol., 92, 869-879(1966); J. Natl. Cancer Inst., 52, 95-101(1974)等)に基づき単離・製造することが可能である。マイコバクテリウムボビスは、ペプチドグリカン、リポアラビノマンナン、非メチル化CpG DNA等のTLRリガンド化合物を含有する。
TLRリガンドは、化学的に合成されたものであってもよい。例えば、非メチル化CpG DNA、二本鎖RNA、ポリイノシンポリシチジン酸等は市販の核酸合成装置により合成することが可能である。また、イミダゾキノリン系化合物は、自体公知の方法により製造することが可能である(Chemical & Pharmaceutical Bulletin, 44(4), p.709-714, 1996)。RSV F タンパク質、ファイブロネクチンEDAドメイン、HSP60、フラジェリン等のポリペプチドは、公知のペプチド合成法(固相合成法、液相合成法等)に従って製造することもできる。
CD40リガンド(CD40Lと略記する場合がある)はTNFファミリー分子の一員であるII型膜蛋白質(N−末端が細胞質にあり、C−末端が細胞外にある)である。CD40Lは公知のタンパク質であり、ヒトCD40Lは、J.Exp.Med.176:1543(1992)および米国特許出願第07/969,703号明細書に記載されたように、末梢血T細胞からクローン化され、マウスCD40Lのクローニングは、Nature 357:80,1992に記載されている。可溶性CD40LはCD40Lの細胞外ドメインからなるか、或いはCD40Lの細胞外ドメインと他の可溶性タンパク質(例えば抗体のFc部分)との融合タンパク質等であり得る。可溶性CD40Lは市販もされており、例えば可溶性マウスCD40LはR&D社より入手可能である。
より効率的にIL−21産生を誘導するという観点からは、上述のTLRリガンドのうち、特に非メチル化CpG DNA、LPS、ペプチドグリカン、リポアラビノマンナン、マイコバクテリウムボビス等が好ましい。また、より効率的にIL−21産生を誘導するという観点から、マイコバクテリウムボビスとしては、BCGの生菌、BCG−CW、BCG−CWS、BCGに含まれ得るリポアラビノマンナン等が好ましい。
IL−21は、公知のサイトカインであり、そのアミノ酸配列やポリヌクレオチド配列等も公知である(WO99/61617;WO2002/010393;Nature, 408, p.57-63, 2000等)。IL−21は活性化CD4T細胞から産生されることが知られていたが(Nature, 408, p.57-63, 2000)、後述の実施例から明らかなように、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質は、CD4陽性T細胞と比較して、NKT細胞におけるIL−21産生をより強力に誘導し得る。従って本発明のIL−21産生誘導剤は、NKT細胞におけるIL−21産生誘導用であり得る。
NKT細胞は、T細胞受容体(TCR)とNK受容体の2つの抗原レセプターを発現しているリンパ球の一つである。NKT細胞は、当該細胞上のT細胞受容体がCD1(例えばCD1d)分子上に提示されたα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)やイソグロボトリヘキソシルセラミドなどの糖脂質を認識する(Science, 278, p.1626-1629, 1997; J Exp Med, 188, p.1521-1528, 1998; Science, 306, p.1786-1789, 2004)。通常のT細胞とは異なり、NKT細胞上のT細胞受容体のレパートリーは非常に限られている。例えばマウスNKT細胞(Vα14NKT細胞という場合がある)上のT細胞受容体のα鎖は、非多型性のVα14及びJα281遺伝子セグメントによりコードされており(Proc Natl Acad Sci USA, 83, p.8708-8712, 1986; Proc Natl Acad Sci USA, 88, p.7518-7522, 1991; J Exp Med, 180, p.1097-1106, 1994)、β鎖の90%以上はVβ8であり、他にVβ7やVβ2という限られたレパートリーが含まれ得る。また、ヒトNKT細胞上のT細胞受容体は、マウスのVα14と相同性の高い非多型性のVα24、及びVβ8.2に近縁のVβ11の組み合わせであることが知られている。
本発明のIL−21産生誘導剤は、有効量の樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質に加え、任意の担体、例えば医薬上許容され得る担体を含むことができる。
医薬上許容され得る担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
本発明のIL−21産生誘導剤は、所望の効果を奏するような投与剤型にすることが好ましい。例えば、経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水のような希釈液に有効量の物質を溶解させた液剤、有効量の物質を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤または錠剤、適当な分散媒中に有効量の物質を懸濁させた懸濁液剤、有効量の物質を溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。
非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容され得る担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
本発明のIL−21産生誘導剤の有効成分としてマイコバクテリウムボビス等の生菌を用いる場合には、これを凍結乾燥させた生ワクチン製剤とすることもまた好ましい。生ワクチン製剤は、適切な分散溶媒(例えば蒸留水、生理食塩水等)を用いて分散され、管針法にて接種される。更に、有効成分として菌体の一部(例えば細胞壁骨格、細胞壁、細胞膜、外膜等)を用いる場合には、エマルション製剤(例えば水中油型(o/w)エマルション製剤等)の剤型をとることが好ましい。エマルション製剤の構成成分である油状物質としては鉱物油や動植物油等が挙げられる。エマルション製剤は必要に応じて界面活性剤、安定化剤、賦形剤等を含むことが出来る。また、エマルション製剤は凍結乾燥製剤の形とすることも可能である。その際、凍結乾燥製剤を分散するために使用される分散溶媒は、エマルション粒子の分散媒体となるものであり、蒸留水、生理食塩水等が挙げられるが、注射可能な分散溶媒であれば特に限定されない。
本発明のIL−21産生誘導剤における有効成分の含有量は、所望の薬理効果を奏することが出来る範囲で、有効成分の種類、剤型等を考慮し、適宜設定することが出来るが、通常、0.0001〜100重量%である。
本発明のIL−21産生誘導剤の適用量は、有効成分の活性や種類、病気の重篤度、適用対象となる動物種、適用対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に設定することは出来ないが、通常、成人1日あたり有効成分量として約0.0001〜約5000mg/kgである。
本発明のIL−21産生誘導剤は、例えば、医薬または研究用試薬として有用である。IL−21は、Cε生殖系列転写(germline transcript)を阻害することによるIgE産生の遮断(Blood, 100, p.4565-4573, 2002)、IgE産生B細胞に対するアポトーシスの誘導等の免疫を調節し得る作用を有するので、本発明のIL−21産生誘導剤は、種々の免疫疾患、例えば、アレルギー性疾患(特にアレルギー性喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎、湿疹、食物過敏症、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等などのIgE調節アレルギー性疾患(I型アレルギー反応が関与する疾患))、自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、クローン病、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、多発性軟骨炎、結節性動脈周囲炎、強直性脊椎炎、リウマチ熱、シェーグレン症候群、ベーチェット病、甲状腺炎、I型糖尿病、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、グレーブス病、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性血液疾患(溶血性貧血、真性赤血球性貧血、特発性血小板減少症、再生不良性貧血等)、乾癬、糸球体腎炎、ループス腎炎、ウェゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、橋本病、川崎病、膠原病)、移植による拒絶、炎症状態(関節及び筋肉における炎症及び疼痛(慢性関節リウマチ、リウマチ様骨髄炎、骨関節症、尿酸性関節炎等)、皮膚の炎症性状態(湿疹等)、眼の炎症性状(結膜炎等)、炎症を伴う肺の障害(喘息、気管支炎等)、炎症を伴う消化器の状態(アフタ性潰瘍、クローン病、萎縮性胃炎、いぼ状胃炎、潰瘍性大腸炎、脂肪便症、限局性回腸炎、過敏性腸症候群等)、歯肉炎、(手術又は障害後の炎症、疼痛、腫脹)、炎症に関連した発熱や疼痛、炎症性慢性腎状態(糸球体腎炎、ループス腎炎、膜性腎炎等)、ぶどう膜炎、接触皮膚炎等)、ショック(敗血性ショック、アナフィラキシー性ショック、成人型呼吸窮迫性症候群等)、癌(肺癌、胃癌、結腸癌、肝癌、ホジキン症等)、ウイルス疾患(肝炎等)等の予防・治療に有用である。
(2.IL−21産生を誘導し得る物質のスクリーニング方法)
上述のように、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質は、NKT細胞等におけるIL−21産生を強力に誘導する。従って、本発明は、IL−21産生を誘導し得る物質のスクリーニング方法であって、被験物質を樹状細胞に適用し、該樹状細胞におけるIL−12産生を評価し、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導した物質を、IL−21産生を誘導し得る物質として選択することを含む方法を提供するものである。
本発明のスクリーニング方法においては、まず被験物質及び樹状細胞が提供される。被験物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。
樹状細胞は自体公知の方法によって、上述の哺乳動物の組織(例えばリンパ節、脾臓、末梢血等)から単離することが可能である。例えば、樹状細胞上に特異的に発現する細胞表面マーカー(例えばCD11c、CD8α、CD85k、FDL−M1、DEC−205等)に対する抗体を用いて、セルソーター、パニング、抗体磁気ビーズ法等により樹状細胞を単離することができる。また、樹状細胞は、上述の哺乳動物の骨髄細胞等を適切な樹状細胞分化条件で培養することにより製造することも出来る。例えば、骨髄細胞はGM−CSF(場合によっては更にIL−4)の存在下で約6日間程度培養されることにより、樹状細胞(骨髄由来樹状細胞:BMDC)へと分化する(Nature, 408, p.740-745, 2000)。
次に被験物質が樹状細胞に適用される。樹状細胞への被験物質の適用は、適切な培養培地中で行われ得る。当該培養培地としては、例えば、約5〜20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地などをあげることが出来る。培養条件としては、例えば、培地のpHは約6〜約8であり、培養温度は通常約30〜約40℃であり、培養時間は約1〜約96時間である。
次に、被験物質が適用された樹状細胞におけるIL−12産生が定量される。IL−12産生は、IL−12の転写産物(mRNA等)又は翻訳産物(ポリペプチド、タンパク質等)を対象として自体公知の方法により定量できる。例えば、転写産物の発現量は、細胞からtotal RNAを調製し、RT-PCR、ノザンブロッティング等により測定され得る。また、翻訳産物の産生量は、種々の免疫学的手法により測定され得る。例えば、培養上清や細胞からの抽出物中の翻訳産物の量は、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、ウェスタンブロッティング法などにより測定することが出来る。また、細胞中の翻訳産物をフローサイトメトリー等により直接測定することも出来る。
そして、被験物質が適用された樹状細胞におけるIL−12産生量が、被験物質が適用されていない対照樹状細胞におけるIL−12産生量と比較される。産生量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被験物質を適用しない対照細胞におけるIL−12産生量は、被験物質を適用した細胞におけるIL−12産生量の測定に対し、事前に測定した産生量であっても、同時に測定した産生量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した産生量であることが好ましい。
最後に、比較結果に基づいて、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導した物質が、IL−21産生を誘導し得る物質として選択される。上述の様に、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質は、CD4陽性T細胞と比較して、NKT細胞におけるIL−21産生をより強力に誘導し得る。従って本発明の方法により得られるIL−21産生を誘導し得る物質は、NKT細胞におけるIL−21産生を誘導し得る物質であり得る。本発明の方法により得られるIL−21産生を誘導し得る物質は、上述の種々の免疫疾患(例えばアレルギー性疾患)の予防・治療薬になり得る。従って、樹状細胞におけるIL−12産生を指標として、免疫疾患の予防・治療剤等の医薬、又は研究用試薬のための候補物質を選択することが可能となる。
本発明のスクリーニング方法はまた、被験物質の動物への投与により行われ得る。該動物としては、例えば、上述の非ヒト哺乳動物が挙げられる。動物を用いて本発明のスクリーニング方法が行われる場合、例えば、被験物質を樹状細胞に到達し得るように動物へ投与することにより、被験物質を樹状細胞に適用し、該動物から単離された樹状細胞におけるIL−12産生を評価することができる。動物を用いたスクリーニング方法は、インビボにおいて所望の効果を奏する物質を得ることが出来る点で優れている。
(3.免疫疾患の予防・治療に有用な物質のスクリーニング方法)
後述の実施例から明らかなように、BCG投与により誘導されるIL−21産生の量は、通常のT細胞よりもNKT細胞の方が圧倒的に高いこと、またNKT KOマウスにおいてはBCG投与により誘導されるIL−21産生が激減すること等から、NKT細胞がインビボにおいて真に機能的なIL−21産生細胞であることが理解される。従って、NKT細胞においてIL−21産生を誘導し得る物質は、NKT細胞からのIL−21産生を介して、アレルギー性疾患等の免疫疾患を予防・治療し得る。そこで、本発明は、免疫疾患の予防・治療に有用な物質のスクリーニング方法であって、被験物質をNKT細胞に適用し、該NKT細胞におけるIL−21産生の誘導を評価し、NKT細胞におけるIL−21産生を誘導した物質を、免疫疾患の予防・治療に有用な物質として選択することを含む方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、まず被験物質及びNKT細胞が提供される。被検物質としては、上述のスクリーニング方法と同様のものを用いることが出来る。NKT細胞は自体公知の方法によって、NKT細胞を含有する上述の哺乳動物の組織(例えば、リンパ節、脾臓、末梢血、胸腺、肝臓、肺等)から、NKT細胞の形質に基づいて単離することが可能である。NKT細胞は、T細胞受容体(TCR)とNK受容体の2つの抗原レセプターを発現しているので、これらの受容体に対する抗体を用いて、T細胞受容体とNK受容体の二重陽性細胞をセルソーター、抗体磁気ビーズ法等により単離することで、NKT細胞を得ることができる。例えばマウスにおいては、NKT細胞はTCRβNK1.1細胞、CD3NK1.1細胞であり得る。また、NKT細胞は、当該細胞上のT細胞受容体がCD1(例えばCD1d)分子上に提示されたα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)やイソグロボトリヘキソシルセラミドなどの糖脂質を認識するので、当該糖脂質がロードされた可溶性のCD1多量体(例えば四量体)が特異的に結合する細胞をセルソーター等により単離することで、NKT細胞を得ることができる(J Exp Med, 192, p.741-754, 2000; J Exp Med, 191, p.1895-1903, 2000)。更に、NKT細胞上のT細胞受容体のレパートリーは非常に限られているので、NKT細胞に特異的なT細胞受容体のレパートリーを特異的に認識する抗体を用いて、セルソーター等により単離することで、NKT細胞を得ることもできる。例えば、ヒトにおいては、NKT細胞はVα24Vβ11細胞であり得る。
NKT細胞は、生体中の組織から単離された後に、インビトロで増殖された細胞や、株化された細胞をも含む。NKT細胞は、自体公知の方法によりインビトロで増殖させることが可能であり、例えば、α−ガラクトシルセラミドがパルスされた樹状細胞の存在下で培養されることにより、NKT細胞は増殖する。また、NKT細胞の株化は、自体公知の方法(J Exp Med, 191, p.105-114, 2000)を用いて行うことが可能である。
次に、被験物質がNKT細胞に適用される。樹状細胞への被験物質の適用は、適切な培養培地中で行われ得る。当該培養培地としては、例えば、約5〜20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地などをあげることが出来る。培養条件としては、例えば、培地のpHは約6〜約8であり、培養温度は通常約30〜約40℃であり、培養時間は約1〜約96時間である。
後述の実施例から明らかなように、BCG刺激により誘導されるNKT細胞におけるIL−21産生には、樹状細胞の共存が重要であることが理解される。従って、被験物質は、樹状細胞の存在下でNKT細胞へ適用されることが好ましい。また、IL−12に対する抗体や、CD1dに対する抗体の添加によって、BCG刺激により誘導されるNKT細胞におけるIL−21産生が阻害されることから、樹状細胞はNKT細胞へCD1を介して接触し、かつ樹状細胞から産生されたIL−12がNKT細胞に作用し得るような態様で、樹状細胞は培養物中に存在することが好ましい。
次に、被験物質が適用されたNKT細胞におけるIL−21産生が定量される。IL−21産生は、IL−21の転写産物(mRNA等)又は翻訳産物(ポリペプチド、タンパク質等)を対象として自体公知の方法により定量できる。例えば、転写産物の発現量は、細胞からtotal RNAを調製し、RT-PCR、ノザンブロッティング等により測定され得る。また、翻訳産物の産生量は、種々の免疫学的手法により測定され得る。例えば、培養上清や細胞からの抽出物中の翻訳産物の量は、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、ウェスタンブロッティング法などにより測定することが出来る。また、細胞中の翻訳産物をフローサイトメトリー等により直接測定することも出来る。
そして、被験物質が適用されたNKT細胞におけるIL−21産生量が、被験物質が適用されていない対照NKT細胞におけるIL−21産生量と比較される。産生量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被験物質を適用しない対照細胞におけるIL−21産生量は、被験物質を適用した細胞におけるIL−21産生量の測定に対し、事前に測定した産生量であっても、同時に測定した産生量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した産生量であることが好ましい。
最後に、比較結果に基づいて、NKT細胞におけるIL−21産生を誘導した物質が、免疫疾患(例えばアレルギー性疾患等)の予防・治療に有用な物質として選択される。このようにして得られた物質を用いれば、上述の本発明のIL−21産生誘導剤と同様にして、上述の免疫疾患(例えばアレルギー性疾患等)の予防・治療剤を製造することが出来る。従って、NKT細胞におけるIL−21産生を指標として、上述の種々の免疫疾患の予防・治療剤等の医薬、又は研究用試薬のための候補物質を選択することが可能となる。
(4.樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質による免疫疾患の治療に対する感受性を判定する方法)
後述の実施例に示されるように、BCG投与によるIgE抑制は、NKT細胞において産生されたIL−21が重要な役割を果たしていることから、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質により刺激された被検者由来のNKT細胞におけるIL−21産生を評価することにより、当該物質による免疫疾患(例えばアレルギー性疾患等)の治療に対する感受性を判定することができる。従って、本発明は樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質による免疫疾患の治療に対する感受性を判定する方法であって、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を被検者由来のNKT細胞に適用し、該NKT細胞におけるIL−21産生を評価することを含む方法を提供する。
本発明の判定方法においては、通常、まず被検者よりNKT細胞が提供される。上述と同様に、NKT細胞は、被検者(好ましくはヒト)のNKT細胞を含有する組織(例えば、リンパ節、脾臓、末梢血、胸腺、肝臓、肺等)から、NKT細胞の形質に基づいて単離することが可能であるが、採取の容易性を考慮すれば、被検者の末梢血からNKT細胞を単離することが好ましい。末梢血中のNKT細胞の数は肝臓等と比較すると非常に少ないので、単離されたNKT細胞をインビトロで増殖させて用いてもよい。
次に、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質がNKT細胞に適用される。NKT細胞への当該物質の適用は、適切な培養培地中で行われ得る。当該培養培地としては、例えば、約5〜20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地などをあげることが出来る。培養条件としては、例えば、培地のpHは約6〜約8であり、培養温度は通常約30〜約40℃であり、培養時間は約1〜約96時間である。
上述と同様に、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質は、樹状細胞の存在下でNKT細胞へ適用されることが好ましい。また、樹状細胞はNKT細胞へCD1を介して接触し、かつ樹状細胞から産生されたIL−12がNKT細胞に作用し得るような態様で、用いられることがより好ましい。
次に、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質が適用されたNKT細胞におけるIL−21産生が定量される。IL−21産生は、IL−21の転写産物(mRNA等)又は翻訳産物(ポリペプチド、タンパク質等)を対象として自体公知の方法により定量できる。例えば、転写産物の発現量は、細胞からtotal RNAを調製し、RT-PCR、ノザンブロッティング等により測定され得る。また、翻訳産物の産生量は、種々の免疫学的手法により測定され得る。例えば、培養上清や細胞からの抽出物中の翻訳産物の量は、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、ウェスタンブロッティング法などにより測定することが出来る。また、細胞中の翻訳産物をフローサイトメトリー等により直接測定することも出来る。
そして、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質が適用されたNKT細胞におけるIL−21産生量が、該物質が適用されていない対照NKT細胞におけるIL−21産生量と比較される。産生量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。対照NKT細胞におけるIL−21産生量は、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を適用した細胞におけるIL−21産生量の測定に対し、事前に測定した産生量であっても、同時に測定した産生量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した産生量であることが好ましい。以上により、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質により刺激されたときの、被検者由来のNKT細胞のIL−21産生能力を評価することが可能となる。
樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質による刺激時の、被検者由来のNKT細胞におけるIL−21産生が、相対的に高い場合には、当該被検者は、当該物質による免疫疾患(例えばアレルギー性疾患等)の治療に対する感受性が高いと判定することが出来る。一方、被検者由来のNKT細胞におけるIL−21産生が、相対的に低い場合には、当該被検者は、当該物質による免疫疾患(例えばアレルギー性疾患等)の治療に対する感受性が低いと判定することが出来る。
被検者由来のNKT細胞におけるIL−21産生が、相対的に高いか或いは低いかの判断は、例えば、予め統計学的解析に十分な数の被検者集団を用いて、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質によるNKT細胞におけるIL−21産生を測定し、その標準値(平均値)等に基づき判断することが出来る。例えば、被検者由来のNKT細胞におけるIL−21産生が、標準値+標準誤差の値よりも高い場合は、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質によるアレルギー性疾患等の免疫疾患の治療に対する感受性が高いと判断し、逆に、被検者由来のNKT細胞におけるIL−21産生が、標準値−標準誤差の値よりも低い場合は、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質によるアレルギー性疾患等の免疫疾患の治療に対する感受性が低いと判断することができる。
本発明の判定方法において、被検者由来のNKT細胞への樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質の適用は、インビトロのみならずインビボにおいて行われてもよい。例えば、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質をNKT細胞に到達し得るように被検者に投与することにより、該物質をNKT細胞に適用した後に、当該被検者から単離されたNKT細胞におけるIL−21産生を評価してもよい。
本発明は、また、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質による免疫疾患の治療に対する感受性を判定するためのキットであって、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質、NKT細胞を調製するための試薬、及びIL−21産生を評価するための試薬を含むキットを提供する。本発明のキットを用いれば、上述の本発明の判定方法により容易に樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質による免疫疾患の治療に対する被検者の感受性を判定することが出来る。
樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質としては上述の物質(TLRリガンド、可溶性CD40リガンド、TNF−α等)を挙げることが出来る。
NKT細胞を調製するための試薬としては、例えば、T細胞受容体に対する抗体(抗TCRβ抗体、抗CD3抗体等)、NK受容体に対する抗体(抗NK1.1抗体)、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)やイソグロボトリヘキソシルセラミドなどの糖脂質がロードされた可溶性のCD1多量体(例えば四量体)、NKT細胞に特異的なT細胞受容体のレパートリーを特異的に認識する抗体(例えば抗Vα24抗体、抗Vβ11抗体)等を挙げることが出来る。
IL−21産生を評価するための試薬としては、抗IL−21抗体、IL−21遺伝子を特異的に認識し得る核酸プローブ、IL−21遺伝子を特異的に増幅し得るプライマーセット等を挙げることが出来る。
本発明のキットは更に樹状細胞を調製するための試薬を含んでいてもよい。樹状細胞を調製するための試薬としては、例えば、樹状細胞上に特異的に発現する細胞表面マーカー(例えばCD11c、CD8α、CD85k、FDL−M1、DEC−205等)に対する抗体、骨髄細胞等から樹状細胞を誘導するための試薬(GM−CSF、IL−4等)を挙げることが出来る。更に、本発明のキットは、本発明の判定方法のプロトコールが記載された指示書を含むこともできる。
本発明の上記判定方法及びキットは、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質によりアレルギー性疾患等の免疫疾患に罹患した患者を治療するのに先立ち、当該治療の効果を予測したり、当該治療に対する感受性が高く、治療効果がより期待出来る患者を選別することが可能となり、臨床における治療方針決定の基礎となる情報を提供し得る。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
〔1〕実験方法
(マウス)
6〜10週齢の雌BALB/cマウスがJapan CREA Incから購入された。Jα281欠損マウスの作成は既述されている(Science, 278, p.1623-1626, 1997)。Jα281欠損マウスはBALB/cマウスへ10回戻し交配された。IRAK−4 KOマウスは既述されている(Nature, 416, p.750-756, 2002)。全てのマウスは特定病原不在条件下で、本願発明者らの動物実験施設にて維持され、オボアルブミン(OVA)不含餌により飼育された。マウスはRIKEN RCAIの動物保護のガイドラインに従って処置された。
(アレルギー感作手順及びBCGワクチン接種)
アレルギー皮上感作は、幾つかの変更が加えられ、既述の通り行われた(Int Arch Allergy Immunol, 124, p.461-469, 2001)。即ち、OVA(grade V, Sigma-Aldrich)を含有する、或いは含有しない100μlのPBSを染込ませた1cmの無菌パッチが、剃毛された背中の皮膚の上に置かれ、生物閉塞性の包帯及び弾性包帯により固定された。パッチは48時間に渡りそのまま置かれ、そして除去された。各感作過程が同一の皮膚部位において3〜4週間の全週繰り返された。BCGワクチン接種のために、臨床における幼児へのワクチン接種において通常用いられている、500μgの弱毒化されたBCG(strain Tokyo; Japan BCG Laboratory)が、マウスの腹腔内へ注入された。対照マウスは生理食塩水のみが投与された。
(フローサイトメトリー)
通常、100万個の細胞がそれぞれの抗体により染色された。使用された抗体は、FITC−抗CD19、FITC−抗TCRβ、PE−抗CD11c、及びPerCP−抗IL−12(BD PharMingen)である。PEが結合され、α−GalCerがロードされたCD1d四量体(CD1d−tet)は、既述のように調製された(J Exp Med, 191, p.1895-1903, 2000)。細胞内染色のために、DCsは固定され、BD Cytofix CytopermTMkit(BD PharMingen)により透過処理され、PerCP−抗IL−12により染色された。染色された細胞はFACS Calibur(BD PharMingen)により解析された。
(細胞調製及び培養)
肝臓MNCsは既述されたように調製された(J Exp Med, 191, p.105-114, 2000)。TCRβ陽性細胞は、肝臓MNCsをFITC−抗TCRβにより染色し、抗FITC磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)及びAuto MACSTM sorter(Miltenyi Biotec)を用いて精製することにより獲得された。回収精度は>98%であった。一部の試験においては、通常のT細胞(TCRβCD1d−tet)及びVα14NKT細胞(TCRβCD1d−tet)がMoFlo(Cytomation)によりソートされた。骨髄由来DCsは、GM−CSF添加骨髄培養物から既述のように調製された(Nature, 408, p.740-745, 2000)。全ての細胞は、10%胎仔ウシ血清を含有する完全RPMI培地中で、BCG(5〜500μg/ml)の存在下又は非存在下において、37℃で72時間培養された。ブロッキング試験においては、CD1d又はIL−12に対する精製された抗体(BD PharMingen, クローンはそれぞれ1B1、C8.6である)又はアイソタイプコントロールが、Fcブロッキングのための2.4G2抗体(BD PharMingen)の添加の後で、20μg/mlの濃度で添加された。
IgE産生B細胞は、脾臓CD19陽性細胞から、可溶性マウスCD40L(R&D)及び組換え型IL−4(200U/ml、Peprotec)を用いて、既述(J.Immunol., 155, p.5637, 1995)の様に生成された。B細胞は肝臓MNCsと共に、あるいは肝臓MNCsなしで、抗マウスIL−21中和抗体(20μg/ml、クローンAF594、R&D)の存在下又は不在下で、インキュベートされた。
(ELISA)
培養上清中及びヘパリン化血漿中のサイトカイン及びIgサブクラスはキット或いは抗体のセット(BD PharMingen)を用いて、製造者の指示書に従って測定された。特異的な抗OVA−IgE抗体は既述のように測定された(J Exp Med, 187, p.561-569, 1998)。
(RT−PCR)
全RNAがTrizol(GIBCO)により抽出され、cDNAがオリゴdTプライマーを用いて合成された。以下のプライマーセットがRT−PCRのために用いられた:
(IL−21)
5’ -CCCTTGTCTGTCTGGTAGTCATC-3’(配列番号1)
5’ -ATCACAGGAAGGGGCATTTAGC-3’(配列番号2)
(CD19)
5’ -ACCAGTACGGGAATGTGCTC-3’(配列番号3)
5’ -TTCATAGGCCTCCCCTTCTT-3’(配列番号4)
(IgE)
5’ -AGGAACCCTCAGCTCTACCC-3’(配列番号5)
5’ -GCCAGCTGACAGAGACATCA-3’(配列番号6)
(IgM)
5’ -TCCACTACGGAGGCAAAAAC-3’(配列番号7)
5’ -TGTGATCGGTTTTGGAGTGA-3’(配列番号8)
(IL−21R)
5’ -TGTCAATGTGACGGACCAGT-3’(配列番号9)
5’ -CAGCATAGGGGTCTCTGAGG-3’(配列番号10)
(γc)
5’ -GTCGACAGAGCAAGCACCATGTTGAAACTA-3’(配列番号11)
5’ -GGATCCTGGGATCACAAGATTCTGTAGGTT-3’(配列番号12)
(HPRT)
5’ -AGCGTCGTGATTAGCGATG-3’(配列番号13)
5’ -CTTTTATGTCCCCCGTTGAC-3’(配列番号14)
上述の転写物を検出するためのPCRサイクルの数は以下の通りである。
IL−21:35サイクル
CD19:30サイクル
IgE:30サイクル
IgM:30サイクル
IL−21R:35サイクル
γc:35サイクル
HPRT:35サイクル
PCR産物はエチジウムブロマイド染色により可視化され、確実性を確認するためにDNAシークエンシングに供された。全ての試験において、cDNAの量はハウスキーピング遺伝子であるHPRTを、プライマー、Taqmanプローブ(Applied Biosystem)、及びPRISM7000TM real-time PCR system(Applied Biosystem)を用いて定量することにより標準化された。
(核抽出物の調製及びEMSA)
DCs(2×10個)が回収され、10mM HEPES-KOH, pH7.8, 10mM KCl, 0.1mM EDTA, pH8.0, 0.1% NP-40中において、低浸透圧溶解により、氷上で破裂させた。核が、30分間、4℃にて50mM HEPES-KOH, pH7.8, 420mM KCl, 0.1mM EDTA, pH8.0, 5mM MgCl2, 2% Glycerol中でローテーターによりゆっくりと攪拌しながらのインキュベーションにより抽出された。全ての緩衝液はプロテアーゼ阻害剤(1mM DTT, 0.5mM PMSF, 2μg/ml aprotinin, 2μg/ml pepstatin, 2μg/ml leupepsin)を含有した。抽出物は分注され、直ちに凍結され、−80℃にて保存された。NF−κBコンセンサス配列(5’ -AGTTGAGGGGACTTTCCCAGGC-3’:配列番号15)からなるオリゴペプチドがPromegaより購入された。該オリゴヌクレオチドは[γ-32P]ATPにより、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて末端標識され、EMSAアッセイがGel Shift Assay Systems(Promega)を用いて行われた。
〔2〕結果
(BCGワクチン接種はVα14NKT細胞を活性化し、OVAパッチにより誘導されたIgE産生を、Vα14NKT細胞依存的な様式で抑制する)
本試験において、通常の蛋白質抗原パッチ感作プロトコールが、BCGワクチン接種と共に、或いはBCGワクチン接種をせずに行われた。本願発明者らは、初めに、BCGワクチン接種が、このモデルにおいてVα14NKT細胞を活性化し得るか調べた。500μgのBCGが、1週間に1回、3週間にわたり、オボアルブミン(OVA)感作と共に、或いはOVA感作なしで、野生型(WT)BALB/cへ腹腔内投与され、最終投与の1週間後に、肝臓単核細胞(MNCs)が回収され、解析された。α−GalCerがロードされたCD1d四量体により検出されたVα14NKT細胞は、BCGワクチン接種のない場合は、MNCsの約8〜12%に相当した(図1、左及び中央)。しかしながら、BCGワクチン接種はVα14NKT細胞の集団を30〜35%にまで有意に増大させた(図1、右)。BCGワクチン接種後のVα14NKT細胞の増大は、脾臓においても観察された(データ示さず)。これらの結果は、BCGワクチン接種がVα14NKT細胞を活性化し、増殖させることを示唆する。
BCG接種の相対的なIgE抑制能力を決定するために、最終感作の1週間後に血漿が採集され、全体の及び抗原特異的なIgEの量が測定された。WTマウスにおいては、OVA感作(Sensitiz., OVA; BCG, -)は、非感作(Sensitiz., O; BCG, -)と比較して、効果的に全体の及びOVA特異的な血漿IgEを誘導した(図2)。しかしながら、BCGワクチン接種はIgE産生を有意に阻害した(図2)。IgE産生の阻害へのVα14NKT細胞の影響を決定するために、本願発明者らは、BCGワクチン接種の抑制効果を、WTマウスとVα14NKT欠損(NKT KO)マウスとの間で比較し、NKT KOマウスにおいては、BCGワクチン接種は、WTマウスにおけるように、血漿IgE濃度を抑制することができないことを見出した(図2)。これらのデータは、Vα14NKT細胞はBCGワクチン接種によるIgE抑制に決定的な役割を果たしていることを示す。
(BCG投与によるTh1/Th2反応の変化)
B細胞のアイソタイプIgクラススイッチへの運命付けは、Th1/Th2細胞バランスによって、厳格に制御されていることがよく知られている。例えば、IgE及びIgG1反応は抗原特異的Th2細胞により調節され、IgG2a反応はTh1細胞に依存する(Annu Rev Immunol, 21, p.579-628, 2003)。同様にVα14NKT細胞はTh細胞分化を制御する役割を有することが報告されている(J Exp Med, 190, p.783-792, 1999、J Exp Med, 197, p.997-1005, 2003、Curr Opin Immunol, 15, p.627-633, 2003)。従って、本願発明者らは、血清中のIgG1、IgG2a、及びIgMの濃度を評価し、このBCGワクチン接種モデルにおけるTh1及びTh2細胞の寄与を調べた。驚くべきことに、BCG投与は、WTマウスにおいては、IgG1産生(Th2反応)を強く増強した(図3)。同様に、IgG2aレベル(Th1反応)はWTマウスにおいてBCG処理により増加したが、IgM産生における影響は観察されなかった(図3c)。対照的に、NKT KOマウスにおいては、これらのIg産生に対するBCG投与の影響はほとんどなかった(図3)。本願発明者らは、抗CD3モノクローナル抗体(mAb)により活性化された、感作されたマウスの脾細胞からのIFN−γ及びIL−4の産生を試験した。驚くべきことに、IFN−γ(Th1タイプ)のみならずIL−4(Th2タイプ)産生もBCG処理により用量依存的に増強された(図4)。これらの結果は、BCG処理によるIgE産生の阻害は、Th1/Th2バランスをコントロールすることを経ていないことを示唆する。むしろ、BCGワクチン接種は、IgE抑制へ寄与するVα14NKT細胞の機能的変化を生じさせ得る。
(IRAK−4調節シグナル経路を介した、BCGワクチン接種による樹状細胞(DCs)の活性化)
BCG誘導Vα14NKT細胞活性化のメカニズムに迫るため、本願発明者らは次に、BCG処理後のDCsからのIL−12産生を評価した。BCG処理後に血漿中IL−12の明らかな上昇が観察された(図5)。骨髄(BM)由来DCs(BMDCs)が、インビトロにおいて、50μg/mlのBCGで刺激され、そのIL−12産生が、細胞内染色によって単一細胞レベルで試験された。BCG刺激によって、多数のCD11c細胞がIL−12を産生したが、CD11c画分はそうではなかった(図6左)。更に、BCG刺激は、CpGと同様にDCsにおいて、IL−12の発現を誘導するのに決定的な転写因子であるNF−κBの活性化を導き、これは電気泳動度シフトアッセイ(EMSA)により証明された(図6右)。これらの結果は、BCGは、NF−κB活性化と共に、DCにおけるIL−12産生を直接誘導できることを示す。
次に、BCG誘導IL−12産生のために責任のある細胞内シグナリング経路が試験された。これに取り組むために、本願発明者らは、WTマウス又はIRAK−4 KOマウスのBMに由来するDCsを刺激し、IL−12産生を試験した。BCG又はCpGへの反応において、IRAK−4 KOマウスからのBMDCsは、WTマウスからのBMDCsと比較して、極めて少ない量のIL−12しか産生しなかったが、TNF−α刺激に対しては、同等レベルのIL−12を産生した(図7)。同様に、MyD88 KOマウスからのBMDCはBCG刺激に対してほとんどIL−12を産生しなかった(データ示さず)。これらの結果は、BCGにより誘導されるDCsからのIL−12産生には、TNF−α調節活性化のためには必ずしも必要ではない、IRAK−4及びMyD88を経るシグナル経路が必要であることを示す。
(BCGにより誘導されたVα14NKT細胞におけるIL−21の発現)
これまでに得られたBCGワクチン接種によるIgE抑制の結果は、Vα14NKT細胞及びDCsの両方の寄与を示している。最近、T細胞から産生された、コモンγ鎖(γc)依存的サイトカインファミリーのメンバーの一つであるIL−21が、Th2細胞分化に影響を与えずに、B細胞のIgE産生を抑制するが、IgG1は抑制しないことが示された(Blood, 100, p.4565-4573, 2002)。そこで、本願発明者らは、活性化されたVα14NKT細胞により誘導されたIL−21がBCGワクチン接種によるIgE抑制のための鍵となり得る分子であるか、試験した。これを確認するために、本願発明者らは、まず、インビボでのBCGによる処理後のT細胞受容体発現細胞(通常のT細胞及びVα14NKT細胞の両方を含んでいる)におけるIL−21発現を評価した(図8)。BCGがWT及びNKT KOマウスの腹腔内に投与され、示した時点において、肝臓MNCsが調製され、TCRβ細胞が単離された。これらの細胞におけるIL−21転写が、HPRT発現による厳密なcDNAの標準化の後で、半定量的RT−PCR解析により検出された。IL−21転写は、WTマウスの肝臓TCRβ細胞において、BCG注入後6時間以内に検出された(図8a)。対照的に、NKT KOマウスからのこれらの細胞においてはIL−21の転写は検出されず(図8a)、BCG投与に反応して、Vα14NKT細胞がIL−21を産生したことが強く示唆された。これと一致して、Vα14NKT細胞のための特異的活性化剤である、α−GalCerの投与は、実質的にIL−21転写を誘導した(図8a)。Vα14NKT細胞における優位なIL−21の産生を確認するために、本願発明者らは、TCRβ画分からこれらの細胞をソートした。期待された通り、BCG注入後の全ての時点において、通常のT細胞よりもVα14NKT細胞においてより容易にIL−21転写が検出された(図8b)。これらの結果は、BCGは特にVα14NKT細胞におけるIL−21産生を強力に誘導するを意味する。
(BCG投与によるIgE抑制のためのIL−21の必要性)
IL−21を産生しているNKT細胞が実際にB細胞のIgE産生を抑制するかを試験するために、本願発明者らは共培養アッセイを行った。WTマウスから獲得された、ナイーブな精製された脾臓B細胞が、インビトロでIgE産生形質細胞にするために、IL−4の存在下で可溶性CD40L(sCD40L)により刺激された。BCG又はビヒクル処理されたマウスからの、Vα14NKT細胞が支配的である肝臓MNCsがB細胞の培養物に添加され、IgE産生が評価された。BCG処理されたマウスからの肝臓MNCsの添加は、IgE産生を有意に阻害したが、ビヒクル処理されたマウスからの該細胞はそのような効果を示さなかった(図9左)。この阻害はIL−21依存的であった。なぜなら、抗IL−21中和mAb抗体の添加によりこの阻害が完全に取り消されたからである(図9左)。肝臓MNCsの源としてNKT KOマウスを用いたときは、BCG処理によってさえ、IgE産生の抑制は誘導されず(図9右)、IgE抑制においてVα14NKT細胞は必須の役割を果たしており、これはIL−21により調節されていることが示された。
IL−21はIgEへのクラススイッチを阻害することにより、IgE産生を遮断することが報告されている(Blood, 100, p.4565-4573, 2002)。そこで、本願発明者らは、Vα14NKT細胞の添加によるIL−21抑制のタイミングを試験した。sCD40L及びIL−4により処理されたB細胞の半定量的RT−PCR解析において、処理に伴ってIgE及びIL−21R発現の有意な増大が検出されたが、コモンγのそれは有意には変化しなかった(図10a)。これは、少なくともクラススイッチ誘導の3日後では、B細胞の幾つかはIgE産生形質細胞へなることを示す。そこで、本願発明者らは、B細胞培養物へのNKT細胞を含む肝臓MNCsの添加のタイミングを変化させた。驚くべきことに、BCG処理されたマウスからのVα14NKT細胞の遅延した添加によって、培養の始めからそれらを添加したとき(図10b、前)と同様に、IgE産生は強力に阻害された(図10b、後)。Vα14NKT細胞の遅延した添加によって見られたこの阻害は、依然IL−21依存的であった。なぜなら、抗IL−21mAbにより完全に該阻害がキャンセルされてしまうからである(図10b)。IL−21と培養されたB細胞の生存率を評価すると、最近報告されたとおり、アポトーシスの頻度の増大が検出された(データ示さず)。これらの結果は、Vα14NKT細胞から産生されたIL−21は、ナイーブB細胞のみならず、既にクラススイッチをしたB細胞のIgE産生を抑制し、該抑制は、少なくとも一部は、アポトーシス誘導の結果であることを示す。
(BCGにより誘導されるVα14NKT細胞でのIL−21発現におけるDCの関与)
BCGにより活性化されたDCがVα14NKT細胞におけるIL−21発現を誘導するか、試験を行った。本願発明者らは、BCGの存在下で、Vα14NKT細胞を含有する肝臓TCRβ細胞及びBMDCsを培養し、IL−21発現を半定量的PCRにより解析した。この培養は、実質的にIL−21発現を誘導したが(図11a)、一方、BMDCsの不在下では、IL−21の発現は誘導されなかった(データ示さず)。従って、BCG刺激におけるIL−21の誘導にはDCsが必要である。BCGによるVα14NKT細胞の活性化におけるDCsの必要性の基礎となる分子メカニズムに迫るため、本願発明者らは共培養系におけるIL−12及びCD1d分子の関与を試験した。IL−21発現は抗IL−12mAb或いは抗CD1dmAbの添加により阻害されたが、アイソタイプmAbは効果がなかった(図11b)。従って、細菌感染時のヒトNKT細胞のIFN−γ産生を支配するメカニズムと同様に(Nat Immunol, 4, p.1230-1237, 2003)、DCのIL−12及びCD1dが、Vα14NKT細胞におけるIL−21発現に重要である。これは、BCGはDCsにおけるIL−12産生を誘導し得ることを示したデータと一致している(図6、7)。
本発明のIL−21産生誘導剤は、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を有効成分として含有してなり、特にNKT細胞におけるIL−21産生を強く誘導し得る。また、本発明のIL−21産生を誘導し得る物質のスクリーニング方法によれば、、特にNKT細胞におけるIL−21産生を強く誘導し得る物質を獲得することができる。NKT細胞はインビボにおける主要なIL−21産生細胞であることから、NKT細胞におけるIL−21産生を誘導し得る物質は、アレルギー性疾患や腫瘍等の免疫疾患の予防・治療に極めて有用である。また、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質によるアレルギー性疾患等の免疫疾患の治療に際して、当該物質を被検者由来のNKT細胞に適用し、該NKT細胞におけるIL−21産生を評価することにより、当該治療に対する感受性を判定することが可能であることから、当該治療方法に対して感受性が高く、有効性がより期待出来る患者を選択することが可能となる。
BCGワクチン接種によるVα14NKT細胞数の増加を示す図である。 BCGワクチン接種によるIgE抑制においてVα14NKT細胞が重要であることを示す図である。左グラフは血漿中の抗OVA IgE濃度(unit)を、右グラフは血漿中の全IgE濃度(ng/ml)を示す。 BCGワクチン接種によるTh1/Th2反応の変化を、血清中の各アイソタイプ抗体の濃度を指標に示した図である。左グラフは血清中IgG1濃度(μg/ml)を、中央グラフは血清中IgG2a濃度(μg/ml)を、右グラフは血清中IgM濃度(μg/ml)をそれぞれ示す。 BCGワクチン接種の脾臓細胞サイトカイン産生への影響を示す図である。 BCGワクチン接種による血漿中IL−12濃度上昇を示す図である。 BCG刺激による樹状細胞におけるIL−12産生誘導を示す図である。左図はフローサイトメトリーによる解析結果を示し、右図はEMSA解析の結果を示す。矢印はNF−κBのバンドを示す。 野生型マウス又はIRAK4 KOマウスから樹立された樹状細胞におけるIL−12産生を示す図である。左図はBCG又はCpG刺激によるIL−12 p40産生量(ng/ml)を、右図はTNF−α刺激によるIL−12 p40産生量(ng/ml)をそれぞれ示す。 半定量的RT−PCRにより、BCG刺激によるIL−21発現誘導を解析した結果を示す図である。aは野生型マウス(WT)又はNKT KOマウスのT細胞受容体発現細胞におけるIL−21発現を、bはVαNKT細胞又はT細胞におけるIL−21発現を示す。 野生型マウス(左グラフ)又はNKT KOマウス(右グラフ)の血漿中全IgE濃度(ng/ml)を示した図である。 B細胞におけるIgE産生に対する、肝臓単核球の影響を示す図である。aは半定量的RT−PCRによりインビトロにおけるB細胞のクラススイッチ誘導を解析した結果を示す図である。bは肝臓単核球の添加前後における培養上清中のIgE濃度(ng/ml)を示すグラフである。 BCG刺激によるVα14NKT細胞におけるIL−21発現誘導を示す図である。aはBCG刺激による肝臓TCRβ細胞におけるIL−21発現誘導を示す図である。bはBCG刺激により誘導された肝臓TCRβ細胞におけるIL−21発現に対する、抗IL−12抗体又は抗CD1d抗体の効果を示す図である。

Claims (13)

  1. 樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を有効成分として含有してなる、IL−21産生誘導剤。
  2. 樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質が、TLRリガンド、可溶性CD40リガンド、及びTNF−αからなる群から選択される、請求項1記載の剤。
  3. TLRリガンドが、LPS、ペプチドグリカン、リポアラビノマンナン、ザイモザン、リポペプチド、リポテイコ酸、RSV F タンパク質、ファイブロネクチンEDAドメイン、HSP60、フラジェリン、非メチル化CpG DNA、二本鎖RNA、ポリイノシンポリシチジン酸、イミダゾキノリン系化合物、βグルカン、丸山ワクチン、マイコバクテリウムボビス、及びOK−432からなる群から選択される、請求項2記載の剤。
  4. NKT細胞におけるIL−21産生誘導用である、請求項1記載の剤。
  5. 免疫疾患の予防・治療剤である、請求項1記載の剤。
  6. 該免疫疾患はアレルギー性疾患である、請求項5記載の剤。
  7. IL−21産生を誘導し得る物質のスクリーニング方法であって、被験物質を樹状細胞に適用し、該樹状細胞におけるIL−12産生を評価し、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導した物質を、IL−21産生を誘導し得る物質として選択することを含む方法。
  8. 免疫疾患の予防・治療に有用な物質のスクリーニング方法であって、被験物質をNKT細胞に適用し、該NKT細胞におけるIL−21産生の誘導を評価し、NKT細胞におけるIL−21産生を誘導した物質を、免疫疾患の予防・治療に有用な物質として選択することを含む方法。
  9. 樹状細胞の存在下で、被験物質がNKT細胞に適用される、請求項8記載の方法。
  10. 樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質による免疫疾患の治療に対する感受性を判定する方法であって、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質を被検者由来のNKT細胞に適用し、該NKT細胞におけるIL−21産生を評価することを含む方法。
  11. 樹状細胞の存在下で、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質が被検者由来のNKT細胞に適用される、請求項10記載の方法。
  12. 樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質による免疫疾患の治療に対する感受性を判定するためのキットであって、樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得る物質、NKT細胞を調製するための試薬、及びIL−21産生を評価するための試薬を含むキット。
  13. 更に樹状細胞を調製するための試薬を含む、請求項12記載のキット。
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