JP2006262893A - 口腔内疾患予防用及び/又は治療用の発酵乳、並びに口臭予防用及び/又は抑制用の発酵乳 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】発酵乳に、口臭抑制、歯周病関連菌の増殖及び酵素抑制などがないか、種々の乳酸菌株を組み合わせて総合的に探索し、その結果、ブルガリア菌OLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株)とサーモフィラス菌OLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS3294株)で調製した発酵乳をヒトに投与することで、口臭抑制と歯肉の腫れが抑制できることを見出した。
【選択図】 なし
Description
従来より、ヨーグルトなどの発酵乳は、乳及び乳製品を主原料として調製した原料乳(ヨーグルトミックス)に、ラクトバチルス・ヘルベティクス、ラクトバチルス・カゼイなどの単一菌種のスターターを接種すること、又はラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスなどの二菌種以上のスターターを接種することにより製造されている。
ヨーグルトの製造工程は通常、
I.(1)原料乳などの混合・調製、(2)均質化・殺菌、(3)冷却、(4)スターターの添加、(5)容器への充填、(6)発酵、(7)カードの形成、及び(8)冷蔵、又はII−1.(1)原料乳などの混合・調製、(2)均質化・殺菌、(3)冷却、(4)スターターの添加、(5)発酵、(6)カードの形成、(7)カードの破砕、(8)冷却、(9)容器への充填、及び(10)冷蔵、若しくは
II−2.(1)原料乳などの混合・調製、(2)均質化・殺菌、(3)冷却、(4)スターターの添加、(5)発酵、(6)カードの形成、(7)カードの破砕、(8)容器への充填、(9)冷却、及び(10)冷蔵よりなる。均質化・殺菌工程において均質化は、殺菌前にされることも、殺菌後にされることもある。できるだけ、工程数が複雑とならないことが商業的生産には重要である。
歯周病は、歯肉に炎症をおこす歯肉炎と、歯を支えている歯槽骨が破壊される歯周炎に分けられる。いわゆる歯槽膿漏は、成人性歯周炎に分類されている。歯肉炎は、歯肉縁上プラークにより引き起こされ、歯周炎は歯肉縁下プラークにより引き起こされ、これらに関与する病原菌としては、Porphyromonas gingivalis(P.g.)、Porphyromonas interumedia(P.i.)、Tannerella forsythensis(T.f.)など、数種類の細菌があると言われている。これらは嫌気性細菌、通性嫌気性細菌が多く、特に、Porphyromonas gingivalis(P.g.)が主要な原因であると言われている。
本願発明者らは、口臭を抑制し、歯周病関連菌の増殖を抑制し、歯周病の症状を抑制する発酵乳の製造を目的として、発酵乳の調製に用いる乳酸菌株の組み合わせを、総合的に探索した。また、発酵乳は治療薬として接種するのではなく、日常の食品としても摂取可能な味覚上の欠点がないことが必要であり、好適には、毎日喫食できるような嗜好上の優れた特性を有することが望ましいので、製造した発酵乳の官能検査も行った。
本願発明は、(イ)口腔内疾患、例えば、歯周病の予防及び/又は治療に有効なLactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株及びStreptococcus thermophilus OLS3294株を含有する発酵乳、(ロ)口腔内疾患、例えば、歯周病の予防及び/又は治療に有効なLactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株及びStreptococcus thermophilus OLS3294株を含有する前記発酵乳の製造方法、(ハ)口腔内疾患、例えば、歯周病の予防及び/又は治療に有効な旨の表示を付したLactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株及びStreptococcus thermophilus OLS3294株を含有する発酵乳を包含する。
(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
(2)連絡先:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
電話番号0438-20-5580
(3)受領番号:NITE AP-76
(4)識別のための表示:Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255
(5)寄託日(受領日): 平成17年2月10日
また、Streptococcus thermophilus OLS3294株は下記の条件で寄託されている。
(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
(2)連絡先:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
電話番号0438-20-5580
(3)受領番号:NITE AP-77
(4)識別のための表示:Streptococcus thermophilus OLS3294
(5)寄託日(受領日): 平成17年2月10日
本願発明は、(イ)口臭予防用及び/又は抑制用のLactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株及びStreptococcus thermophilus OLS3294株を含有する発酵乳、(ロ)口臭予防用及び/又は抑制用のLactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株及びStreptococcus thermophilus OLS3294株を含有する前記発酵乳の製造方法、(ハ)口臭予防及び/又は抑制に有効な旨の表示を付したLactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株及びStreptococcus thermophilus OLS3294株を含有する発酵乳を包含する。
従来より、錠剤として歯周病予防/治療効果があると言われている乳酸菌では、発酵乳を製造するためには、別のスターター乳酸菌を添加する必要がある。これに対し、本願発明の発酵乳は、通常の発酵乳を製造するために用いられているラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスを用いることから、他のスターターを添加する必要はなく、通常の発酵乳の製造工程を改変することなしに製造することができる。
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株)及びストレプトコッカス・サーモフィルスOLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS3294株)の菌学的性質は、次のとおりである。
1.供試菌
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルス菌株として、それぞれ以下の菌株の組み合わせを用いた。
(2)ヨーグルト調製用の菌株(ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株)及びストレプトコッカス・サーモフィルスOLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS3294株)、以下、それぞれOLL1255株及びOLS3294株、または、Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株及びStreptococcus thermophilus OLS3294株と略記することもある。)
(3)ヨーグルト調製用の標準菌株(JCM 1002T株(L.bulgaricus)及びNCIMB 8510株(S.thermophilus))
(4)植物から分離された菌株(L.bulgaricus MEP170803株及びS.thermophilus MEP170803株、L.bulgaricus MEP170804株及びS.thermophilus MEP170803株、L.bulgaricus MEP170805株及びS.thermophilus MEP170803株、L.bulgaricus MEP170804株及びS.thermophilus MEP170804株、L.bulgaricus MEP170805株及びS.thermophilus MEP170804株)
また、ラクトバチルス・ロイテリ菌としては、ATCC53608を用いた。
ヨーグルトミックスの組成は、牛乳857mL、脱脂粉乳25g、精製水98mLである。
ヨーグルトミックスの殺菌は、温度95℃、時間2分間とした。
菌液濃度はLactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株で0.4%(v/v)、Streptococcus thermophilusで1.6%(v/v)、L. reuteri ATCC53608で0.4%(v/v)である。これらの菌液から、前記した組合せでスターターを調製し、ヨーグルトを製造した。ヨーグルトミックスへの菌液の添加濃度は3%(w/w)とした。
調製された発酵乳の酸度及びpHを図1に示す。
実施例1で調製された発酵乳について歯周病原因菌(P. gingivalis、P. intermedia)に対する抗菌活性を次のように測定した。
実施例1で調製された発酵乳について、ジンジパイン阻害活性を次のように測定した。
ジンジパインは基質のBenzoyl-L-Arginine-p-Nitroanilineを分解してp-Nitroanilineを生成するが、その活性は、p-Nitroanilineを比色定量して調査できる。そこで、反応液に上記実施例1で調整した発酵乳を添加した際に、どの程度分解反応が阻害されるかを測定した。
メチルメルカプタン発生基質(L-メチオニン)を0.05%(w/v)含むTodd Hewitt Broth(Difco)をバイアル瓶(125mL容)に30mL分注し、更に、健常成人から得た唾液0.5mLと当該発酵乳0.012mLを添加し、pH 7.8に調整後、37℃で14時間培養した。培養後、バイアル瓶のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度を炎光光度検出器付きガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製)にて測定した。結果を図3及び表6に示す。
1.発酵乳の製造方法
ヨーグルトミックスの組成は、牛乳857mL、脱脂粉乳25g、精製水98mLである。
ヨーグルトミックスの殺菌は、温度95℃、時間2分間とした。
脱脂粉乳培地にて前培養した菌液を、それぞれ以下の接種菌量で添加した。
菌液(b) Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255株では0.4%(v/v)
菌液(c) L. reuteri ATCC53608では0.4%(v/v)
前記した3種類の菌液から、以下のスターターを調製し、ヨーグルトを製造した。ヨーグルトミックスへの菌液の添加濃度は3%(w/w)とした。
試料(2) Streptococcus thermophilus OLS3294株とL. reuteri ATCC53608の混合菌液
試料(3) L. reuteri ATCC53608の単独菌液(ロイテリ・ヨーグルト)
発酵温度はL. reuteriの生育温度を考慮し、全て37℃とした。
6名のパネルにより、(イ) 酸味の好み(好き:嫌い)、(ロ) 甘さの好み(好き:嫌い)、(ハ)酸味・甘さのバランス(良い:悪い)、(ニ) 口に含んだときの香り(良い:悪い)、(ホ)コク(ある:ない)、(ヘ) おいしさ(まずい:おいしい)の6項目をビジュアルアナログスケール法により官能検査の実施項目した。大きい数値が「好き」、「良い」、「ある」、「おいしい」に対応する。
試料(1)では約4時間の発酵でカードを形成したが、試料(2)および(3)では8時間の発酵でもカードを形成しなかった。
今回の試験では、ヨーグルトミックスを通常の殺菌条件である温度95℃、時間2分間で処理し、発酵条件では温度37℃とした。発酵時間が8時間の試料を官能検査に用いることとした。このとき、前記したように、試料(1)ではカードを形成していたが、試料(2)および(3)ではカードを形成しておらず、液体状であった。
発酵乳は4種類調製した。すなわち、Lactobacillus bulgaricus(L. bulgaricus)OLL1255とStreptococcus thermophilus(S. thermophilus) OLS3294(OLL1255-OLS3294のヨーグルトスターター)、L. bulgaricusMEP170801とS. thermophilus MEP170801、L. bulgaricus MEP170802とS. thermophilusMEP170802、標準菌株(L.bulgaricus ATCC11842とS.thermophilus ATCC19258、)を用いて共通のヨーグルトミックスを発酵させた。ヘミンを0.05%とビタミンKを0.01%で添加したGAMブロスにてPGを37℃、18時間で培養した。遠心分離(3000rpm、15分)により上清を除去しながら、PG(菌体)をPBSで2回洗浄した後に、PBSにてPGを約1×108 cfu/mlとなるよう調製した。このとき、調製したPG数(菌数)を計測し、これを「PG添加菌数」とした。
調整された発酵乳がS. mutansによるバイオフィルム形成の抑制効果に及ぼす影響
Streptococcus mutans(S. mutans)OLS3288(JCM 5705T)をBrain Heart Infusion(BHI)(237500 Difco,Sparks,MD,USA)にて37℃、24時間で培養した。遠心分離(5000g、10min、4℃)によりS. mutans(菌体)を回収した。回収したS. mutansはChemically defined medium(CMD)(組成は後述する)で2回洗浄した後に、ショ糖(sucurose)を1%(w/v)で含むCDMの100mlに添加した。
Claims (11)
- ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255)及びストレプトコッカス・サーモフィルスOLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS3294)を含有する口腔内疾患予防用及び/又は治療用の発酵乳。
- ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255)及びストレプトコッカス・サーモフィルスOLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS3294)を用いて調製した口腔内疾患予防用及び/又は治療用の発酵乳。
- 前記口腔疾患が歯周病である請求項1又は2のいずれか1項に記載の発酵乳。
- ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255)及びストレプトコッカス・サーモフィルスOLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS3294)を含有する口臭予防用及び/又は抑制用の発酵乳。
- ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255)及びストレプトコッカス・サーモフィルスOLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS3294)を用いて調製した口臭予防用及び/又は抑制用の発酵乳。
- 歯周病の予防及び/又は治療に有効な旨の表示を付したラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255)及びストレプトコッカス・サーモフィルスOLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS 3294)を含有する発酵乳。
- 口臭の予防及び/又は抑制に有効な旨の表示を付したラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255)及びストレプトコッカス・サーモフィルスOLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS3294)を含有する発酵乳。
- (1)原料乳などを混合・調製し、(2)均質化・殺菌し、(3)冷却した後に、(4)ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)をスターターとして添加し、(5)容器へ充填し、(6)発酵させて、(7)カードを形成させた後に、(8)冷蔵することを特徴とするラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)を含有する、歯周病予防及び/又は抑制用発酵乳又は口臭予防及び/又は抑制用発酵乳の製造方法。
- (1)原料乳などを混合・調製し、(2)均質化・殺菌し、(3)冷却した後に、(4)ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)をスターターとして添加し、(5)発酵させて、(6)カードを形成させた後に、(7)カードを破砕し、(8)容器へ充填し、(9)冷蔵することを特徴とするラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)を含有する、歯周病予防及び/又は抑制用発酵乳又は口臭予防及び/又は抑制用発酵乳の製造方法。
- (7)カードを破砕した後、又は(8)容器へ充填した後に冷却することを特徴とする請求項9記載の歯周病予防及び/又は抑制用発酵乳又は口臭予防及び/又は抑制用の発酵乳の製造方法。
- 前記ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)がラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1255株(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus OLL1255)及びストレプトコッカス・サーモフィルスOLS3294株(Streptococcus thermophilus OLS3294)である請求項8、9又は10のいずれか1項に記載の発酵乳の製造方法。
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