(好適な実施形態の詳細な説明)
本発明に対するより完全な理解は、詳細な説明および特許請求の範囲を、その図面を考慮しながら参照することによって得られ得る。図面中、類似の参照符号は、類似の構成要素を示す。
本明細書中、本発明は、機能ブロック構成要素および様々な処理工程を用いて説明され得る。このような機能ブロックは、特定の機能を行うように構成された任意の数のハードウェア構成要素によって実現可能であることが理解されるべきである。例えば、本発明では、1つ以上のマイクロプロセッサまたは他の制御デバイスの制御下において様々な機能を実行することができる様々な集積回路構成要素(例えば、メモリ素子、デジタル信号処理素子、論理素子、ルックアップテーブルおよびそのようなもの)を用い得る。加えて、当業者であれば、本発明が任意の数のデータ通信の文脈において実施可能であることと、本明細書中において記載されているモデムシステムは、本発明の例示的アプリケーションの1つに過ぎないこととを理解する。さらに、本発明ではデータ送信、信号送信、信号処理およびコンディショニングならびにそのようなもののための任意の数の従来技術を用いることが可能である点にも留意されたい。このような当業者に公知であり得る一般的な技術については、本明細書中、説明を控える。
本明細書中に図示および説明する特定のインプリメンテーションは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定することをいかようにも意図していないことが理解されるべきである。実際、分かり易くするために、従来の符号化および復号化、タイミングの回復、自動利得制御(「AGC」)、同期化、訓練、およびデータ通信システムの他の機能局面(ならびに本システムの個々の動作構成要素の構成要素)については、本明細書中、詳細な説明は控える場合がある。さらに、本明細書中に含まれる様々な図に示す接続線は、例証的な機能関係および/または様々な素子間の物理的結合を示すことを意図している。実際の通信システムでは、多くの代替のまたは追加の機能関係または物理的接続が存在し得る点に留意されたい。
図1は、本発明の技術を実施することが可能な一般的なモデムシステム100を示すブロック図である。これから説明を行うために、モデムシステム100は、上層プロトコルと関連付けられた接続(例えば、ポイント・ツー・ポイントプロトコル(「PPP」)接続)をサポートすることができると仮定する。PPP接続は典型的には、例えば、個々のエンドユーザとインターネットサービスプロバイダとの間のインターネット通信と関連付けられる。この点において、モデムシステム100は、複数のサーバモデム(参照符号102a、102bおよび102nで示す)とクライアントモデム104とを含む。サーバモデム102はそれぞれ、インターネットサービスプロバイダまたは任意の適切なデータソースと関連付けられ得る。クライアントモデム104は、適切なデータソース(例えば、ホストソフトウェア105を動作させることが可能なパーソナルコンピュータ)と関連付けられ得る。これから説明を行うために、ホストソフトウェア105は、オペレーティングシステム(例えば、MICROSOFT WINDOWS(登録商標))であるか、または、モデムシステム100と連係して機能することが可能な任意のアプリケーションプログラムであり得る。図1中では図示していないが、クライアントモデム104は、パーソナルコンピュータと一体化され得る。
この説明の文脈において、モデムシステム100は、V.90推奨、レガシーの56kbpsのプロトコル、V.34推奨またはそのようなものとの互換性を持つ56kbpsのモデムを用い得る。本明細書中において、本発明についてV.90モデムシステムの文脈において説明するが、説明される技術は、V.34モデムシステムまたは任意の数のレガシーモデムシステムにも等価に適用可能である。V.90のモデムデバイスまたは56kbpsのモデムデバイスが、デジタル電話ネットワーク108へのデジタル接続106が所与のサーバモデム102によって用いられるモデムシステム100における用途に適切である。クライアントモデム104は、アナログローカルループ112を介して、ローカル中央オフィス110に接続される。従って、クライアントモデム104と任意のサーバモデム102との間において確立された通信チャンネルは、中央オフィス110までデジタルである。その後、これらのデジタル信号をアナログ信号に変換して、ローカルループ112を介した送信用とする。
エンドユーザがインターネット接続を確立することを望むと、ホストソフトウェア105は、ユーザのコマンドに応答して、任意の数の動作を行い得る。例えば、ホストソフトウェア105は、クライアントモデム104をプロンプトして、サーバモデム102a(これは、この例では、ユーザのインターネットサービスプロバイダと関連付けられたサーバモデムである)と関連付けられた電話番号をダイヤルさせ得る。サーバモデム102aおよびクライアントモデム104は、ハンドシェーキングルーチンを行う。このハンドシェーキングルーチンにより、等化器、エコーキャンセラー、送信パワーレベル、データ速度、および現在の通信チャンネルと関連付けられた他の可能な動作パラメータが初期設定される。加えて、ホストソフトウェア105は、クライアントモデム104に、ユーザがサービスプロバイダを介してインターネットにログオンすることをイネーブルする認証データを送受信させ得る。上述したように、この認証データは、公知のCHAP技術またはPAP技術に従って、サーバモデム102aとクライアントモデム104との間で交信され得る。非PPP上層プロトコルを用いた別の実施形態において、CHAPプロシージャまたはPAPプロシージャの代わりに、適切なログインプロシージャが実施され得る。
上述したように、従来のモデムシステムに関連するダイヤルアップ接続時間(および再接続時間)は、望ましくないくらいに長時間にわたり得る。本発明は、モデムデバイス間の通信チャンネル(例えば、サーバモデム102aとクライアントモデム104との間に確立された通信チャンネル)を繰り返し使用することにより、利点を得る。クライアントモデム104が、特定のロケーションに常駐するデスクトップパーソナルコンピュータと関連付けられていると仮定すると、所与の任意のサーバモデム102への接続を、同じアナログ通信チャンネルを介して確立することが必要となる。言い換えれば、クライアントモデム104は、ユーザの居場所と中央オフィス110との間に常時アナログチャンネルを確立することとなる。温度および他の環境による影響によるアナログチャンネルのわずかな変化を無視すると、(アナログチャンネルに対する)クライアントモデム104の初期設定は、どの接続においても、実質的に一定である。
図2は、データ通信システム(例えば、モデムシステム100)によって実行され得る一般的なクイックスタートアッププロセス200のフロー図である。実際のシステムでは、プロセス200は、サーバモデム102、クライアントモデム104、ホストソフトウェア105、および/またはモデムシステム100の任意の機能構成要素によって連係して行われ得る。加えて、プロセス200は、任意の数の従来のモデムプロトコルの後に続く全体初期設定プロシージャの文脈において実現され得る。
クイックスタートアッププロセス200は、タスク202から始まり得る。このタスク202は、クライアントモデム104とサーバモデム102との間でのコールの確立に関連する。本実施例の文脈において、クライアントモデム104をコール元デバイスとして見なす。従って、ホストソフトウェア105および/またはクライアントモデム104は、例えばサーバモデム102bと関連付けられた電話番号をダイヤルする。サーバモデム102bがさらなる接続を行うことができると仮定すると、サーバモデム102bはオフフック状態となり、適切な返答音を従来の方法で生成する。双方のモデムデバイスがオフフック状態となり、互いに通信すると、デジタル接続106、電話ネットワーク108、中央オフィス110およびアナログローカルループ112を介して、通信チャンネルが確立される。タスク202の間において用いられるダイヤル動作プロシージャ、リンギング(ringing)プロシージャおよび返答プロシージャは、従来のプロトコルに従い得る。
タスク202に従って、モデムシステム100によってクエリタスク204が行なわれ、これにより、クイック接続プロトコルがサポートされているか否かを確認することができる。クエリタスク204は、異なるサーバモデムおよび異なるクライアントモデムを共同利用可能かつ互換可能にするために必要であり得る。例えば、サーバモデム102bは、本発明のクイック接続機能をサポートするV.90モデムデバイスであり得、一方、クライアントモデム104は、本発明のクイック接続機能をサポートしないレガシーの56kbpsのモデムデバイスであり得る。クエリタスク204の部分を、サーバモデム102bまたはクライアントモデム104によって行うことが可能である。クエリタスク204を行うための例示的技術について、以下に詳細に説明する。クライアントモデム104がコールを開始したときまたはサーバモデム102がコールを開始したとき、タスク204は、同等に行なわれ得る。
クエリタスク204が当該クイック接続プロトコルがどちらのモデムデバイスによってもサポートされていないと判定すると、タスク206が行われ得る。タスク206は、モデムシステム100をプロンプトして、従来の初期設定ルーチンを開始させる。例えば、V.34のまたはV.90のモデムシステムの文脈において、タスク206は、プロトコル(例えば、V.8bis)を交信する能力を開始し得る。あるいは、いくつかのモデムシステムが、V.8能力交信プロトコルのみをインプリメントし得る。旧型のレガシーモデムシステムは、V.8プロシージャおよびV.8bisプロシージャを完全に省略して、レガシーモードに従って、適切な初期設定ルーチンを行い得る。タスク206の後、モデムシステム100は、適用可能なモデム仕様に従って、公知のスタートアッププロシージャを行い得る。例えば、モデムシステム100がV.90をサポートする場合、タスク208は、従来のV.90等化器訓練、エコーキャンセラー訓練、コンステレーション設計、パワーレベル確認、および他のスタートアップ動作と関連付けられ得る。タスク206および208を行う場合、通信セッションと関連付けられるスタートアップ時間は、従来のV.90接続のスタートアップ時間と実質的に同じである。
クエリタスク204が当該クイック接続プロトコルが完全にサポートされていると判定した場合、クエリタスク210も行われ得る。クエリタスク210は、確立された通信チャンネルの特性が以前に確立された通信チャンネルの対応する特性と類似するか否かについて試験する。簡潔に言うと、クエリタスク210は、受信されたシーケンスの1つ以上の属性を、既に確立されたチャンネルと関連付けられた以前に受信されたシーケンスの格納された属性と比較する。この受信信号は、当該通信チャンネルの特性に関する情報を搬送する。詳細には、この受信信号は、アナログローカルループ112に対する情報を搬送する。
本明細書中に説明する例示的実施形態において、1つのモデムデバイスがデジタル電話ネットワーク108にデジタルに接続された場合、アナログローカルループ112は、各接続ににおいて、実質的に一貫した様式で信号に影響を与える。アナログ特性は、同じサーバモデム102への接続を繰り返す点において類似するが、温度、湿度、他の環境変化、システムハードウェアにおける物理的変化、および他の動作パラメータがわずかに変化すると、これは、比較目的のために用いられる現在のチャンネル特性のランダムな変動に寄与する。それにもかかわらず、クエリタスク210の間に行なわれる比較プロシージャは好適には、このような変動に対応するように設計される。これから説明を行うために、「類似の」特性は、上述した制御不可能でかつ予測不可能なファクターによる通常の変化に関係無く、クエリタスク210が、現在のチャンネルが以前のチャンネルと整合すると見なしたことを意味するものであるとする。
クエリタスク210が、現在の通信チャンネルのパラメータが以前の通信チャンネルのパラメータと整合しないと判定した場合、タスク212が行われ得る。タスク212は、タスク206と同様に、モデムシステム100をプロンプトして、従来の初期設定ルーチンを開始させる。好適な実施形態において、モデムシステム100が、クイック接続プロトコルが完全にサポートされていることを確認した場合(クエリタスク204)、V.8bisプロシージャの殆ど(ただし、その全てではない)が省略され得る。従って、V.8能力交信プロトコルは、タスク212によってプロンプトされ得る。その後、タスク214が行なわれ得、これにより、モデムシステム100を、従来のV.90スタートアッププロシージャに入らせることが可能となる。タスク214は、上述したタスク208に類似する。タスク212および214が行なわれると、通信セッションと関連するスタートアップ時間を約3秒間だけ低減することが可能となる。この約3秒間という時間は、V.8bisプロシージャを行うために必要な典型的な時間の長さである。従って、クエリタスク210が、現在のチャンネルが以前のチャンネルと類似していないと判定した場合にでも、クイックスタートアッププロセス200は、モデムシステム100の初期設定時間全体を低減させる。
クエリタスク210が、現在のチャンネル特性が以前に確立されたチャンネルの格納された特性と「整合する」ことを発見した場合、タスク216が行われ得る。タスク216の間、短縮された訓練プロシージャが行なわれる。以下により詳細に説明するように、モデムシステム100は、現在のチャンネルの既知の特性を利用して、これにより、モデムデバイスを敏速に訓練できるようにする。例えば、デジタル障害(例えば、ロブドビット(robbed bit)信号送信)の特定のタイミングフェーズは未知であり得るが、接続を繰り返しても、デジタル障害の種類は一貫する。従って、V.90モデムシステムの文脈において、長期にわたるデジタル障害学習プロシージャを全てインプリメントする必要は無い。加えて、等化器およびエコーキャンセラーの初期訓練と、PCMコーデック(codec)の送信レベルおよびデータ速度の初期判定とは、行なわなくてもよい。
タスク218は、モデムシステム100をイネーブルして、初期データ速度を動作させるように、行われ得る。タスク216に関連する訓練の部分が、タスク218と関連する初期データ速度で行われ得ることが、理解されるべきである。モデムシステム100は、以前に格納されたチャンネルと関連付けられた初期設定パラメータをリコールすることにより、初期データ速度で敏速に動作することができる。タスク218の間、モデムシステム100は、等化器およびエコーキャンセラーの最終訓練を行い、変調パラメータを交信し、フル速度のデータモードにおいて使用されるコンステレーション信号ポイントを交信し得る。本発明によれば、PPPデータは、タスク218の間、1つ以上の最終訓練シーケンスと連係して送信され得る。例えば、PPPデータは、ログイン認証情報(例えば、CHAP情報またはPAP情報)の交信と関連付けられうる。タスク218の間のデータ送信を考慮すると、このクイックスタートアッププロセス200の部分は、第1のデータモードまたはデータフェーズ1として見なすことができる。
タスク218の後、クイックスタートアッププロセス200は、モデムシステム100を最終データ速度(タスク220)で動作させる。この実施形態の文脈において、このプロセス200の部分を、第2のデータモードまたはデータフェーズ2として見なすことができる。初期データ速度から最終データ速度への移行(transition)は好適には、シームレスな様式で行なわれる;すなわち、モデムシステム100は、適切な信号タイミングまたは同期化技術を用いて、このようなデータ速度の移行をイネーブルする。フルデータモードの間、モデムシステム100は、タスク218の間に交信された信号ポイントコンステレーションを用いる。モデムシステムが最終データモードに入った後、クイックスタートアッププロセス200は終了する。
図3は、本発明に従って構成された例示的モデムシステム300を示すブロック図である。モデムシステム300は好適には、クイックスタートアッププロセス200と、本明細書中に説明したような他のプロセスとを実行するように構成される。例示目的のため、本明細書中、モデムシステム300について、56kbpsのシステムもしくはV.90のシステム(または、V.90システムに実質的に類似するシステム)の文脈において説明する。しかし、図3に示すこの特定のインプリメンテーションは、本発明の範囲を限定することをいかようにも意図していないことが、理解されるべきである。
一般的には、モデムシステム300は、第1のモデム(例えば、モデム302)と、第2のモデム(例えば、モデム304)とを含む。この説明の文脈において、モデム302をサーバモデムと見なし、モデム304をクライアントモデムと見なす(図1を参照)。モデム302および304は類似に構成可能であり、これにより、これらのモデムはどちらとも、送信モードまたは受信モードのいずれにおいても機能可能であることが、理解されるべきである。モデム302および304は一般的には、公知の原理に従って構成され、これにより、電気通信ネットワーク(例えば、公衆通信電話ネットワーク(「PSTN」)306を通じて、少なくとも1つの通信チャンネル(例えば、チャンネル308および310)を介して、通信を行う。これから説明を行うために、モデム302はPSTN306にデジタルに接続され、一方、モデム304は、図1に関連して上述したように、中央オフィス(図示せず)およびアナログローカルループを介してPSTNに接続される。分かり易くするため、図3中、様々な符号器と、復号器と、実際のモデムシステムにおいて存在することの多い他の機能素子とは図示していない。
モデム302は、プロセッサ素子312を含み得る。一方、モデム304はプロセッサ素子314を含み得る。本明細書中において説明する特定の動作に加えて、プロセッサ312および314は、モデムシステム300の動作と関連付けられた様々なタスクを実行するように適切に構成される。実際、モデムシステム300には、モデムシステム300の機能をサポートするために必要なだけの任意の数のプロセッサ、制御素子およびメモリ素子を組み込むことが可能である。このようなプロセッサ素子、制御素子およびメモリ素子は、モデム302および304の他の機能構成要素と適切に相互作用することができ、これにより、データのアクセスおよび操作を行うか、または、モデムシステム300の動作をモニタリングまたは統制し得る。
プロセッサ312は、クイック接続確認ルーチンと動作可能に関連付けられ得る。このクイック接続確認ルーチンを、機能ブロック322として図示する。クイック接続確認ルーチン322は、クエリタスク204(図2を参照)の間に用いられ得る。プロセッサ312もまた、複数の訓練ルーチン324と動作可能に関連付けられ得る。訓練ルーチン324は、モデムシステム300の初期訓練および/または最終訓練の際に用いられ得る。訓練ルーチン324は、上述したようなタスク216の間に用いられ得る。プロセッサ312はまた、ダイヤルアップ認証スキーム326(例えば、PAPまたはCHAPに従った情報交信)と連係して動作し得る。上記に代わって(または上記に加えて)CHAP/PAP機能は、モデム302に対応するサーバによって保持される1つ以上のソフトウェアアプリケーションにおいて、実現され得る。これらの例示的動作は、処理素子312の適用可能性を限定することを意図していない。処理素子312は好適には、任意の数のさらなる動作をサポートするように構成される。
モデム302は、送信器316を含む。送信器316は、従来のデータ送信技術に従って符号化された記号を送信するように構成される。このような記号は、データ、訓練シーケンス、同期化信号、制御信号、情報交信シーケンス、およびモデムシステム300によって用いられる任意の適切な通信信号を表し得る。モデム302はまた、受信器318も含む。受信器318は、任意の数の公知のモデム技術に従って構成され得る。受信器318は、モデム304からの通信信号を受信するように構成される。このような通信信号を挙げると、符号化された情報ビット、制御信号、情報交信シーケンス、訓練シーケンスおよびそのようなものがある。受信器318は、等化器構造317およびエコーキャンセラー構造319を含み得るかまたはこれらと機能的に関連付けられ得る。等化器構造317およびエコーキャンセラー構造319の構成および動作は、任意の数の従来の技術(例えば、適応可能なフィルタリングアルゴリズム)と一貫し得る。
モデム302は好適には、モデムシステム300の動作と関連付けられた異なるデータおよび信号を生成、処理および送信するように構成される。このようなデータ、信号およびシーケンスは、任意の数のマイクロプロセッサによって制御される構成要素によって、適切に格納され、フォーマットされ、生成され得る。例示目的のため、図3では、モデムシステム300の異なる動作機能に関連する複数のブロックを示している;このような動作機能は、自身と関連付けられた特定のデータシーケンス、制御信号またはそのようなものを有し得る。実際のシステムでは、任意の量のさらなるまたは別のデータが処理および送信され得るが、本明細書中に説明するこの特定の実施形態は、少なくとも以下の種類のデータと連係して機能する:すなわち、移行シーケンス328、返答信号ポイントシーケンス330、認証情報332、クイック接続識別子334、訓練情報336、およびユーザデータ338。以下、このデータと、モデムシステム300によるデータの処理とについて詳細に説明する。
モデム302はまた、自身の動作をサポートするために必要な適切な量のメモリ320も含む。メモリ素子320は、ランダムアクセスメモリ、読出し専用メモリまたはこれらの組み合わせであり得る。メモリ素子320は、本発明に関連する1つ以上のプロセスと連係して、モデムシステム300によって用いられる情報を格納するように構成され得る。例えば、メモリ素子320は、適切な返答信号ポイントシーケンス338を格納するように構成され得る。メモリ320は、特定の信号ポイント、送信レベル、シーケンスを送信用としてフォーマットする際に用いられるパターンまたはそのようなものを含み得る。この好適な実施形態において、返答信号ポイントシーケンス338は、(上述した)シーケンス330に対応する。メモリ素子320は、受信器318の訓練に関連する複数のパラメータを格納するようにも構成され得る。これらの受信器パラメータ(ブロック340として示す)は、等化器構造317および/またはエコーキャンセラー構造319の初期設定と関連付けられ得る。実際的事項として、メモリ素子320は、等化器構造317およびエコーキャンセラー構造319のアナログおよび/またはデジタル特性(例えば、フィルタタップ係数)に関連する情報を格納し、コーデックレベルの概算値(estimate)を送信し得る。
本発明の好適な実施形態によれば、メモリ素子320はまた、以前に確立されたチャンネル(以前のチャンネルブロック342として示す)の複数のパラメータ、属性および/または特性を格納することもできる。以前のチャンネルパラメータ342は、通信セッションの間の任意の適切な時間に格納してもよいし、または、セッション中に定期的に更新してもよい。実際、モデム302およびモデム304はどちらとも、現在のチャンネルパラメータを保存するように構成可能であり、これにより、現在の通信セッションと関連する一時的割込み(interruption)、遅延または切断を予測する(anticipate)(これは、このような割込み、遅延または切断が意図的または非意図的であるかどうかに関わらない)。以下により詳細に説明するように、モデムデータ送信モードにおける一時的切断または休止に応答して、通信セッションが再開されるまで、モデム302を「保留」状態にすることができる。そのとき、モデム302および304は、長時間にわたる再訓練プロシージャを行うのではなく、格納されているチャンネルパラメータにアクセスし得る。
モデム304は受信器350を含み、この受信器350は、等化器構造352およびエコーキャンセラー構造354と動作可能に関連付けられる。受信器350は、モデム302からの通信信号を受信するように構成される。モデム304はまた送信器356も含み、この送信器356は、通信信号をモデム302に送信するように構成される。モデム304のこれらの構成要素は、モデム302の対応する構成要素と類似し得る。従って、簡潔にするために、モデム302および304に共通する機能に関して重複する詳細部分については、モデム304の説明において、その説明を控える。
プロセッサ314は、クイック接続確認ルーチン358、1つ以上の訓練ルーチン360およびダイヤルアップ認証スキーム362と動作可能に関連付けられ得る。これらの処理機能は、プロセッサ312に関連して上述した対応する機能に類似する。これらの機能に加えて、プロセッサ314は、デジタル障害学習ルーチン364と動作可能に関連付けられ得る。デジタル障害学習ルーチン364は、従来のV.90モデムによって実行されるデジタル障害学習プロシージャと互換性を持ち得る。ルーチン364を用いて、モデム304をイネーブルして、モデム304に、モデム302によって送信されるデジタル障害学習シーケンスを分析させ、通信チャンネル中に存在するデジタル障害の種類と、このようなデジタル障害と関連するあらゆるタイミングフェーズとを判定させることが可能である。ルーチン364は、メモリ素子366を相互作用して、これにより、モデム304が所与の通信チャンネルと関連するデジタル障害プロファイルを格納することを可能にする。ルーチン364は、モデム304をイネーブルして、チャンネル中に存在するロブドビット信号送信を照明または強調表示するように機能する適切な信号ポイント(または1つの信号ポイント)を選択させることができる。例えば、ネットワークによりロブドビット(典型的には、最下位ビットの記号)がゼロにされたとモデム304が判定した場合、ロブドビットの信号送信フェーズを容易に検出できるように、最下位ビットの記号を有する信号ポイントを選択することが可能である。
プロセッサ314はまた、チャンネル比較ルーチン368を行うようにも構成され得る。このチャンネル比較ルーチン368は、図2と関連して上述したタスク210の間に行われ得る。チャンネル比較ルーチン368は好適には、現在の通信チャンネルの特性が、以前に確立された通信チャンネルと関連する格納中の特性と類似するか否かを判定する。この説明の文脈において、現在のチャンネルは、以前に確立されたチャンネルと繰り返し接続され、複数の格納中の特性がメモリ素子366中に常駐し得る。ルーチン368について、以下により詳細に説明する。
プロセッサ312の場合と同様に、本明細書中に説明する例示的動作は、任意の数のさらなる動作をサポートするように好適に構成された処理素子314の適用可能性を限定することを意図していない。
モデム302と同様に、モデム304は、モデムシステム300の動作と関連付けられた異なるデータおよび信号を生成、処理および送信するように構成される。このようなデータ、信号およびシーケンスは、任意の数のマイクロプロセッサにより制御される構成要素によって、適切に格納され、フォーマットされ、生成され得る。実際のシステムは任意の量のさらなるまたは別のデータを処理および送信し得るが、送信器セクション356については、以下の種類のデータ(すなわち、クイック接続識別子370、移行シーケンス信号ポイント識別子372、訓練情報374、認証情報376およびユーザデータ378)と関連して図示している。このデータと、モデムシステム300によるデータ処理とについて、以下に詳細に説明する。
上述したように、モデム304は、自身の動作をサポートするために必要な適切な量のメモリ366を含む。メモリ素子366は、メモリ素子320に類似する。この好適な実施形態において、メモリ素子366は、モデム302によって用いられる対応する返答信号ポイントシーケンス338に関連する返答信号ポイントシーケンス380を格納するように構成される。この実施形態において、モデム302および304の両方において、同じ返答信号ポイントシーケンスが事前規定され、既知である。メモリ素子366はまた、以前に確立されたチャンネル(以前のチャンネルブロック382として図示)の複数のパラメータ、属性および/または特性も格納し得る。以前のチャンネルパラメータ382は、通信セッションの間の任意の適切な時間において格納してもよいし、または、セッションの間に定期的に更新してもよい。メモリ素子320と同様に、メモリ素子366も、受信器350の訓練に関連する複数のパラメータ384を格納するように構成され得る。これらの格納された受信器パラメータ384は好適にはモデム304によってアクセスされ、これにより、従来のV.90モデムシステムにつきもののスタートアップ待ち時間を有効に低減する。
本発明の複数の機能は、従来のV.90モデムのスタートアップ時間および/または再接続時間の低減(例えば、V.8bisプロシージャの排除または短縮と、初期訓練プロシージャの排除または短縮と、(フルデータ速度が達成されるまで待機するのではなく)初期設定プロセスの早期においてログイン認証データを交信することと)に貢献する。一実施形態において、モデムシステムが中間データ速度と関連付けられた初期訓練モードである間、ログイン認証データが交信される。本発明のこれらの(および他の)機能の入力にのものが、モデムシステム300においてインプリメンドされ得る。
図4は、2つのモデムデバイスによって行なわれるクイックスタートアッププロセス400の部分を示すフロー図であり、図5は、2つのモデムデバイスによって行なわれる例示的クイックスタートアッププロセスに対応するタイミング図500である。タイミング図500は、頭字語および略語を含み、これらの頭字語および略語は、V.8、V.8bis、V.34、V.90、および他のデータ通信プロトコルの文脈においてしばしば用いられる。本明細書においてこのような用語を用いるのは、1つの実際的な実施形態の文脈において本発明のコンセプトを説明するためである。しかし、本発明は、任意の適切な文脈において用いることが可能であり、特定の信号、シーケンスの数、シーケンスのタイミング、データ速度、および図5に示すこれらの2つのモデムデバイス間の相互作用は、本発明の範囲を限定することをいかようにも意図しない。
クイックスタートアッププロセス400を、クライアントモデム(例えば、アナログパルスコード変調モデム(「APCM」))およびサーバモデム(例えば、デジタルパルスコード変調モデム(「DPCM」))と関連付けられたタスクを示すように、示す。同様に、タイミング図500は、APCMおよびDPCMによって送信される信号の一般的なシーケンス化を示す。図5において、2つの主要シーケンス間の矢印は、APCMとDPCMとの間の相互作用を表す。
クイックスタートアッププロセス400は、タスク402と共に開始し得る。タスク402は、APCMに、DPCMと関連付けられた電話番号をダイヤルさせる。上述したように、このコールは、ローカルループ112、中央オフィス110およびデジタル電話ネットワーク108(図1を参照)を介して確立される。この初期リング音に応答して、DPCMは、オフフック状態にされ得る(タスク404)、すなわち、DPCMは、このコールに返答する。もちろん、APCMおよびDPCMは、従来の電話技術プロトコルに従って、コールの実施、コールへの返答およびコールの処理を行うように構成され得る。タスク404の後、タスク406を行って、能力交信プロトコル(例えば、V.8またはV.8bis)を初期設定することができる。本明細書中に説明する実施形態において、タスク406の間、能力リクエスト信号(図5中にCReとして示す)が送信され得る。このCRe信号は、DPCMがクイック接続プロシージャをサポートすることをAPCMに知らせる機能をし得る。CRe信号は、従来のV.8bis信号送信音を変更したもの(例えば、V.8bis音を振幅変調したもの)であり得る。あるいは、信号送信音と関連する周波数に定期的にジッターが生じ得るか、または、低レベルの広帯域信号が信号送信音に加えられ得る。このようにして、レガシーモデムシステムに、CRe信号をas上記通常のV.8bis CRe信号を認識させる。
現在の通信チャンネルと関連するコールが確立されるのに応答して、APCMは、タスク408を行って、クイック接続識別子(QC)をDPCMに適切に送信し得る。本明細書中に説明する実際的な実施形態において、APCMによってCRe信号が検出されるのに応答して、クイック接続識別子の送信がプロンプトされ得る。QC信号は好適には、レガシーモデムとクイック接続プロトコルをサポートしないモデムとがQC信号による悪影響を受けないように(すなわち、QC信号が、互換性の無いデバイスには無視されるように)設計される。(APCMが本明細書中に説明するクイック接続技術をサポートしない場合、当該APCMはQC信号を生成せず、スタートアップは、図2に関連して上述したような従来の様式で進行する)。好適な一実施形態において、QC信号は、信号ポイント識別子も搬送する。この信号ポイント識別子は、移行シーケンス(図5中にQTSおよびQTS\として示す)においてDPCMによって用いられる複数の信号ポイント(または1つの信号ポイント)を識別する。この際、信号ポイントは、通信チャンネル中に存在するデジタル障害を強調表示、照明または明確にするように機能する。従って、QC信号シーケンスは2重機能を行う。
DPCMがクイック接続方法論もサポートすると仮定すると、当該DPCMは好適には、QC信号の受信に応答してタスク410を行う。タスク410に関連して、DPCMは、クイック接続肯定応答(図5中にQCA信号として示す)を送信する。図2に関連して上述したように、DPCMがQC信号に肯定応答しない場合またはAPCMがなんらかの形でQCA信号を受信しなかった場合、モデムシステムは、従来のスタートアッププロシージャで進行する。QC信号およびQCA信号のフォーマット、構成および処理は、モデムシステム300(図3を参照)に関連して上述したように、個々のモデムの各部分によって実行され得る。
DPCMおよびAPCMがどちらともクイック接続技術をサポートする場合、特定のアプリケーションに応じて、任意の数の初期設定ルーチンを排除、変更または短縮することが可能である。例えば、V.90に互換性を持つモデムシステムの文脈において、APCMがV.90に対応することを、QC信号の送信に内在的に示させることができる。同様に、DPCMもV.90に対応することを、QCA信号の送信に内在的に示させることができる。その結果、モデムシステムは、通常の能力交信プロトコル(単数または複数)(例えば、V.8および/またはV.8bis)の部分または全体を排除することができる。この機能は、その存在自体により、スタートアップ待ち時間を(代表的な接続において)5秒も削減することが可能である。
DPCMがAPCMへのコールを開始したとき、タスク402〜タスク410に関連して上述したクイック接続識別および確認スキームは、同等に適用可能であることが可能であることが理解されるべきである。このような状況が生じ得るのは、APCMからの初期コールまたはリクエストに応答して、DPCMがAPCMをコールして通信チャンネルを確立したときである。この状況において、APCMはCRe信号を送信し、DPCMはQC信号を送信し、APCMはQCA信号を送信する。APCMがコールを開始する際の上記の説明とは対照的に、APCMは、さらなる信号またはさらなるシーケンスを送信して、(信号ポイントをCReシーケンスまたはQCAシーケンス中に埋設するのではなく)DPCMに対する移行シーケンス信号ポイントを適切に識別することができる。
タスク410の後、DPCMは、タスク412を行って、移行(または同期化)シーケンスにおいて用いられる信号ポイント(単数または複数)を入手し得る。上述したように、QC信号は好適には、APCMがロブドビット信号送信の存在を容易に検出できるようにするための信号ポイントを識別する情報を搬送する。特定の信号ポイントの判定は、デジタル障害学習プロシージャ364(図3を参照)に関連して上述したように、APCMによって実行され得る。この判定は、同じチャンネルを介した以前の接続に関連するデジタル障害の過去の分析に基づき得る。タスク412は、APCMがQC信号を受信した後に、プロセッサ312によって行なわれ得る。
タスク412に応答して、タスク414が行なわれ、これにより、適切な移行シーケンスがDPCMによって送信され得る。例証的な一実施形態において、この移行シーケンスは、タスク412において得られた信号ポイントの正の値および負の値を含む。従って、DPCMは、APCMによって選択された信号ポイントと、適切な符号パターン(これは、事前規定可能である)とを用いて、移行シーケンスを生成し得る。この移行シーケンスは、構成およびフォーマットされ、これにより、APCMが、送信シーケンスを検出すると、後続信号またはDPCMによって送信されるシーケンスに自身を同期させることができるようにする。このようにして、APCM受信器は、移行シーケンスから自身のタイミングを得ることができる。送信シーケンスは、任意の事前規定された長さであり、任意の事前規定された符号パターンを有し得る。例えば、図5に示す実施形態において、移行シーケンスは、クイックタイミングシーケンス(QTS)およびQTS\信号によって表され、ここで、QTSは特定の信号ポイントシーケンスを示し、QTS\は、反対の符号を有する同じシーケンスである。図5において、810個の記号についてQTSシーケンスを繰り返し、30個の記号についてQTS\シーケンスを繰り返している。
本発明の1つの実際的な実施形態において、QTSシーケンスをフォーマットして、これにより、QTSルート(root)シーケンス期間と、ネットワーク接続と関連付けられたロブドビット信号の送信(「RBS」)期間とが、(1つ以外の)共通分母を持たないようにする。例えば、1つの適切なQTSルートシーケンスは、0、+A、−A、+A、−A(ここで、Aは、RBSの存在を強調表示する信号ポイントを表す)である。従って、図5に示す実施形態において、5つの部分からなる期間を有するこのQTSルートシーケンスを162回繰り返し、一方、QTS\シーケンスでは、反転符号でのルートQTSシーケンスw6回繰り返す。
上記の実施例において、RBS期間が6であると仮定すると、受信された移行シーケンスに、30ポイントの離散フーリエ変換(「DFT」)が行なわれ、これにより、DPCMのタイミングフェーズを得ることができる。加えて、RBSの存在は、このDFTの結果と関連する特定の離散周波数において、明らかとなる。このようにして、タイミング情報およびRBS情報を、受信された移行シーケンスから抽出することが可能となる。加えて、タイミングフェーズ情報は、RBS情報から独立して入手される。 DPCMは好適には、タスク416の間に特定の信号ポイントシーケンスを送信するように構成される。信号ポイントシーケンスは、モデムプロトコルの当業者にとって分かり易く言うと、返答音に変更を施したものであると見なすことができる。図5において、この信号ポイントシーケンスは、ANSpcm信号によって表される。図3において上述したように。事前規定されたANSpcmシーケンス338を、送信器セクション316による送信用として、メモリ素子320に格納することができる。実際的な実施形態において、DPCMは、移行シーケンスの後、ANSpcm信号を送信する。これは、APCMをイネーブルして、APCMが移行シーケンスを検出した後、APCMが信号ポイントシーケンスを予測する点において、所望され得る。言い換えれば、APCMによって移行シーケンスが検出されることは、次に信号ポイントシーケンスが来ることを示すものである。
好適な一実施形態において、ANSpcm信号は、パルスコード変調信号ポイントのシーケンスか、または、パルスコード変調信号ポイントと関連付けられた信号ポイントのシーケンスかを含む。例えば、ANSpcm信号は、mu−lawコードワードもしくはAlawコードワードのシーケンスとして、または、ユニバーサルコードワード(U−コード)のシーケンスとして、フォーマットされ得る。APCMおよびDPCMは好適には、クイックスタートアッププロセス400が開始される前にANSpcm信号が事前規定されて既知となるように、構成される。別の実施形態において、複数の異なるANSpcm信号を適切にルックアップテーブル中に格納することか、または、モデムデバイスの1つを用いてANSpcm信号を設計して、タスク416の前にANSpcm信号を他のモデムデバイスと適切な様式で通信させることが可能である。例えば、ANSpcm信号は、APCMが受信したANSpcm信号を分析することによりRBSの存在を容易に検出できるように、設計され得る。このような実施形態において、移行シーケンス(QTSおよびQTS\)がRBSを識別または強調表示することは不要であり得る。
V.8の文脈において、返答音は、振幅変調された2100Hzの音として生成される。それとは対照的に、本発明では、ANSpcm信号を用いて、パルスコード変調信号ポイントを用いて、音(例えば、2100Hzの音)をデジタルに生成する。言い換えると、ANSpcm信号は、アナログ信号をデジタルで表したものである。ANSpcm信号は好適には、公知のパルスコード変調ポイントで構築され、これにより、ANSpcm信号を、単なる返答音以外の用途にも用いることができるようにする。好適な一実施形態において、ANSpcm信号は、特定の電話ネットワークと関連付けられた利用可能なパルスコード変調ポイントの多くを含む。ANSpcm信号のこの局面は、ANSpcm信号を用いて現在の通信チャンネル(特にデジタルパッド)の特性を判定または識別することが可能になる点において、望ましい。可能なコードワードを大量に用いると、2つの入力レベルを1つの出力レベルに結合させることができるデジタルパッドをANSpcm信号によって検出することが確実になる。ANSpcm信号はまた、ネットワークエコーキャンセラーをディセーブルする用途およびネットワークエコーサプレッサーをディセーブルする用途に適切な音を提供するようにも構成される。
ANSpcm信号がルックアップテーブルを用いて定義された場合、複数の送信レベルが予想または必要とされる実際的なインプリメンテーションは困難となり得る。例えば、ITU−T推奨V.90は、DPCMが32個の異なる送信レベルを指定することを可能にする。そのため、各送信レベルについて別個のテーブルを格納すると、メモリ要件が過剰に多くなり得る。従って、別の一実施形態において、プロシージャは、1つの送信レベルと関連付けられた複数のコードワードを、残りの送信レベルと関連付けられた対応する複数のコードワードとマッピングするように、定義され得る。例えば、−0.5dBm0のレベルのANSpcm信号を定義するPCMコードワードのテーブルが与えられると、そのプロシージャは、各個々のPCMコードワードをその対応するPCMレベルにマッピングする工程と、所望の送信レベルの削減量に従ってそのレベルをスケーリングする工程と、その結果得られたレベルを最接近PCMレベルにまで戻すように量子化する工程と、対応するPCMコードワードに変換する工程と、を含み得る。これにより、(DPCM送信器およびAPCM受信器のどちらにおいても同じメカニズムを用いて)対応するANSpcm信号を構築することが可能となり、よって、各側において、PCMコードワードの同一のシーケンスを生成することができる。この実施形態に従えば、この量子化規則は、量子化における「関係(tie)」を取り扱う際、(2つのPCMレベルがスケーリングされたレベルから等距離にあるかのように)正確でなければならない点に留意されたい。例えば、この規則によって、ある関係において、ゼロに近いPCMレベルが選択されることが決定され得る。
さらに別の実施形態によれば、ANSpcm信号を規定する方法全体が、事前規定されたアルゴリズムに基づき得る。この事前規定されたアルゴリズムは、ANSpcm信号を表すPCMコードワードのシーケンスを生成する。例えば、ANSpcm信号は、最大で2100Hzの音の集合として規定され得る。この場合、これらの音は、事前定義された振幅とおよび初期フェーズとを有する。次いで、これらの音の総計を所望の送信レベルに従ってスケーリングし、その結果得られた信号を、(ここでも1つの関係における正確な量子化規則を用いて)最接近PCMレベルにまで量子化する。しかし、この方法ではまた、正弦関数または余弦関数のいずれかの正確な定義と、音の総計を取る際に累積ビット量とをも用いて、これにより、両端において計算が一貫した方法で進行することを確実にして、ANSpcm信号を適切に検出できるようにする。
上述したように、APCMは、ANSpcm信号の送信を予測する。デジタル障害と、通信チャンネルと関連付けられたアナログ特性とは、ANSpcm信号に影響を与える。なぜならば、ANSpcm信号は、DPCMからAPCMへと送信されるからである。タスク418はAPCMによって行なわれ得、これにより、ANSpcm信号ポイントシーケンスに関連する受信されたシーケンスが得られる。次いで、APCMは、タスク420を行って、受信されたシーケンスの複数の属性と、以前に確立された通信チャンネルと関連する以前に受信されたシーケンスの複数の格納された属性とを比較し得る。例示的な一実施形態において、以前に受信されたシーケンスはデジタル障害学習(「DIL」)シーケンスであり、これは線プロービングシーケンスである。この点において、タスク420は、現在のチャンネルの特性が、以前に確立されたチャンネルの対応する特性に類似するか否かを判定する。好適な一実施形態において、タスク420において比較されたチャンネル特性を、当該チャンネル中のデジタル障害と関連付ける。言い換えると、タスク420は、格納されているデジタル障害チャンネルプロファイルを用いて、現在のデジタル障害チャンネルプロファイルを有効化する。タスク420は、APCMの適切なプロセッサ素子(図3を参照)によって行なわれ得る。
タスク420の間、ポイント/レベルの任意の測定可能な特性、受信されたシーケンス全体の任意の測定可能な特性、および/または当該ポイント/レベルと関連する任意の測定可能な信号もしくは数量とを、APCMを用いて分析することができる。例えば、受信されたシーケンス中に含まれる任意の数の個々のポイントまたはレベルを、APCMにおいて格納された対応するポイントまたはレベル(格納されたポイントまたはレベルは、先行DILプロシージャと関連付けられ得る)と比較することが可能である。受信されたポイント/レベルが格納されたポイント/レベルと「整合した」場合または受信されたポイント/レベルと格納されたポイント/レベルとの間の差が特定の閾値内である場合、APCMは、現在のチャンネル属性が格納されているチャンネル属性と整合していると仮定し得る(図2のクエリタスク210を参照)。
APCMは、プロシージャ421を行って、現在のチャンネルへの以前に確立された接続の複数の属性または特性を適切に入手および保存し得る。上述したように、プロシージャ421は、APCMを、受信されたDILシーケンス中に含まれるポイント/レベルの特性を格納させ得る。その後、これらの過去の値は、タスク420の間に用いられる。この点において、プロシージャ421は、タスク420における比較が終了した後(例えば、現在の接続と関連する後続のDILプロシージャに応答して)、以前の値を新規のDIL値で更新し得る。
図2に関連して上述したように、タスク420がチャンネル特性が十分に整合しないと判定した場合、モデムシステムは、従来のV.90スタートアッププロシージャに復帰(revert)し得る。図5は、APCMがV.8プロトコルまで伝送速度を落とし、従来のV.8コールメニュー(CM)メッセージをDPCMに送る様子を示す。次いで、APCMに対する従来のV.8スタートアップが、シーケンス502に沿って行なわれる。CMメッセージに応答して、DPCMは、従来のV.8ジョイントメニュー(JM)メッセージを生成し、従来のV.8初期設定(シーケンス504として示す)に従って進行する。例示目的のため、クイックスタートアッププロセス400では、タスク420が、現在の通信チャンネルと以前に確立された通信チャンネルとが類似すると判定したと仮定する。
APCMが現在のチャンネル特性を以前のチャンネルと共に有効化すると、クイックスタートアップルーチンがトリガされ、これにより、モデムシステムに関連する初期設定時間をさらに削減することができる。あるいは、クイックスタートアップルーチンをトリガするようにDPCMを構成してもよい。従って、タスク422が初期設定され得、その間、モデムシステムに初期訓練を行う。(分かり易くかつ簡潔にするため、タスク422の部分および後続タスクの部分は、APCMおよびDPCMのどちらによっても実行され得る;クイックスタートアッププロセス400は、このような機能の組み合わせを、単一のプロセスタスクの文脈において示す)。タスク422により、以前に確立された通信チャンネルと関連する複数の格納されたパラメータに応答して、APCMおよびDPCMは、初期設定され得る。上述したように、格納されたパラメータは、等化器、エコーキャンセラー、送信パワーレベル、初期信号ポイントコンステレーションまたはそのようなものの初期設定または訓練と関連付けられ得る。タスク422は、プロシージャ421と連係して動作し得る。プロシージャ421は好適には、以前の接続と関連する初期設定パラメータを入手および格納するように機能する。この点において、プロシージャ421は、以前の接続の通常のデータモードの間、再交渉プロセスの後、または以前の通信セッションと関連する任意の状態またはイベントに応答して、このようなパラメータを定期的に保存するように適切に設計され得る。プロシージャ421はまた、異常な設定パラメータまたは初期設定パラメータが不適切に保存されないようにも、構成され得る。
典型的なV.90接続の文脈において、タスク422は、2つのジョイントの訓練フェーズに関連付けられ得る。以前のパラメータを用いて、モデムシステムは、従来のV.90のフェーズ2のプロービングプロシージャおよびレンジングプロシージャを省略または短縮し、従来のV.90のフェーズ3のデジタル障害学習プロシージャおよび初期訓練プロシージャを省略または短縮することができ得る。図5に示すように、APCMおよびDPCMはそれぞれ、タスク422の間、訓練シーケンス(TRN1信号として示す)を送信し得る。これらの訓練信号を用いて、等化器タップおよびエコーキャンセラタップを適応可能に調節し、別の場合にモデムシステムの訓練を容易化することができる。従って、V.90のスタートアップの最も時間のかかるプロシージャの1つ(APCM等化器の訓練)を、効率的に行うことができ、これにより、微調整および訓練の時間を十分に得ることが可能となる。
タスク422の間に生じる初期訓練に加えて、タスク424も行われ得る。タスク424の間、モデムシステムは、エラー修正および/またはデータ圧縮プロトコルを行い得る。従来のV.90モデムシステムにおいて、エラー修正の目的の場合、V.42推奨を遵守し、データ圧縮目的の場合、V.42bis推奨を遵守する。例えば、PPP接続と関連付けられた通常のV.90動作モードにおいて、最終訓練の後でかつCHAP/PAP認証プロシージャの前に、V.42プロシージャおよびV.42bisプロシージャを行う。V.42およびV.42bisをCHAP/PAPプロシージャの前に行うのは、CHAP/PAPプロシージャが「エラーフリー」チャンネルについてより適切だからである。従来のV.90システムとは対照的に、タスク424は、V.90のスタートアップのフェーズ3の間、V.42bisを行い得る。スタートアッププロセスにおいてV.42bisを前方シフトさせると、接続時間を削減するのに有用である。図5において、XID信号は、従来のV.42XID信号に変更を加えたものを示す。例えば、XID信号は、圧縮およびそのようなものについて交渉する際に用いられるXIDパラメータのサブセットを利用することができる。V.42bisプロシージャの部分はまた、図5に示す様々な変更信号シーケンスと連係して実施され得る。例えば、CPt信号は、1つ以上のV.42bis信号と関連付けられた従来のV.90CPt信号を示し得る。
この好適な実施形態において、V.42bisプロシージャを行って、実質的に「エラーフリーの」チャンネルを提供する。タスク424の後、CONNECTメッセージをホストソフトウェアに発行する。このCONNECTメッセージは、モデムシステムがこの時点において初期データ速度でのデータ送信の準備が出来ていることを示す。CONNECTメッセージは、公知の技術でフォーマット、生成およびおよび送信され得る。
CONNECTメッセージに応答して、ホストソフトウェアは、上層プロトコルログインプロシージャ(例えば、CHAPプロシージャまたはPAPプロシージャ)を「同時に」開始する(タスク428)。タスク428は、ホストソフトウェアによって自動的に開始してもよいし、または、ユーザの入力に応答して開始してもよい。CHAP/PAPデータ送信は、最終訓練プロセスと連係して発生する。この好適な実施形態において、APCMおよびDPCMは、通信チャンネルを介して、CHAP/PAP認証データをスクランブルされたデジタルデータとして送信する。認証データをスクランブルすると、モデムデバイスが認証データ上に最終訓練を行うことが可能となる。従来のV.90モデムシステムにおいて、最終訓練信号は、スクランブルされた「信号」としてフォーマットされる。スクランブルされた信号は、全く情報を搬送しない;すなわち、最終訓練信号は、スペクトル的な白色光源として用いられるに過ぎない。本発明は、これらの最終訓練信号を用いて、ユーザデータを搬送し、一方、モデムデバイスが訓練プロセスを終了する。CHAP/PAPデータは1つの好適な形態のユーザデータであるが、本発明は、認証データの送信または交信に限定されない。加えて、特定のスクランブル化アルゴリズムは、アプリケーションによって異なり得る。
図5において、2重機能信号を、TRN2A/PPP信号およびTRN2D/PPP信号によって表す。この点において、モデムデバイス中の受信器セクションを、第1の期間の間(例えば、データフェーズ1の間)に初期データ速度で訓練して、これにより、これらの受信器セクションが、後続の時間期間の間(例えば、データフェーズ2の間)に最終データ速度での動作にシームレスに移行することができるようにする。さらに、(モデムシステムが完全に初期設定された後ではなく)第1の期間の間にPPPログインプロシージャを初期データ速度で行うことができる。
初期データ速度期間の間、タスク430を行って、APCMおよびDPCMをイネーブルして、コンステレーションパラメータおよび変調パラメータ(図5中にCP信号およびMP信号として示す)を適切な様式で交信させることが可能である。タスク430は、従来のV.90の様式で行われ得る。これらのパラメータは、後続のデータモードの間、モデムデバイスによって用いられ得る。訓練プロシージャおよび認証プロシージャが終了した後、モデムシステムは好適には、シームレスな様式でフルデータ速度に移行する。タスク432を行って、データ送信をフルデータ速度で行うことが可能である。この期間は、データフェーズ2として好適であり得る。モデムシステムがフルデータモードに入った後、クイックスタートアッププロセス400は終了する。
表1にまとめた従来のV.90モデムスタートアップとは対照的に、本発明によるモデムシステムでは、以下の表2に示すように、スタートアップ待ち時間が短い。特に、表2に概要を示すスタートアップ時間は、表1に概要を示すスタートアップ時間の約半分である。スタートアップ待ち時間の大幅な低減は、多くの状況において(特に、V.90のモデムシステムまたはレガシー56kbpsのモデムシステムを用いたPPPダイヤルアップインターネット接続の文脈において)望ましいことである。
表2−クイックV.90モデムのスタートアップ
本発明の技術は、線を崩壊させる(corrupting)イベントまたはチャンネル割込みの後の再接続に関連する再初期設定時間を削減する際の他の文脈において、インプリメントされ得る。例えば、多くの電話利用者は、コール待機サービス、コール元識別サービスおよび他の電話技術サービスに加入している。しかし、このようなサービスは、モデム接続のために電話線が使用中である間、ディセーブルされるかまたは機能しなくなり得る。モデム接続の間にコール待機がディセーブルされない場合、信号音がモデム接続に割込み得る。ユーザが待機中の線に返答しようとすると、上記オフフックおよびオンフックがフラッシュし、これにより、モデムシステムは自身の受信器を再訓練するか、または、フル再接続プロシージャをプロンプトし得る。
時間のかかる再接続プロシージャまたは再訓練プロシージャを行う代わりに、モデムシステムを、格納されたアナログ障害情報およびデジタル障害情報、等化器設定、パワーレベル、エコーキャンセラー設定、コンステレーションおよびそのようなものを用いるように構成することが可能である。コール待機プロシージャによって、内線(extension)電話デバイスにある保留オフ状態によって、コール元識別リクエストによって、または任意のチャンネル崩壊イベントによって(このようなイベントが計画的なものであるかまたは非意図的なものであるかは問わない)チャンネル接続が割り込まれた場合、このような格納情報を用いて、モデムシステムパラメータを迅速に再設定することが可能である。このシナリオにおいて、クライアントモデムおよびサーバモデムの両方が、関連を持つシステム属性、モデム動作パラメータ、チャンネル特性および/またはネットワーク特性を格納し得る。
1つの実際的な例において、クライアントモデムは、コール待機音に応答して、信号を用いて、サーバにスタンバイモードに入るように伝え得る。次いで、サーバモデムは、FSKモードに切り換わって、サーバがアイドル状態である間、クラス2のコール元識別情報を適切に検出し得る。ユーザが第2のコールに返答したいと望むと、クライアントモデムは、スタンバイ信号または心搏音をサーバに定期的に送信して、サーバに保留状態を継続するように命令し得る。第2のコールが終了し、ユーザがデータコールを開始することを望む場合、クライアントモデムは、クイック再接続ハンドシェーキングプロトコル(これについては、後述する)を開始する。一方、ユーザが第1のコールを終了したいと望むと、クリアダウンメッセージが送られ得る(あるいは、定期的な保留信号が終了し得る)。
上記のクイック再接続ハンドシェーキングにより、モデムデバイスは、以前のチャンネルパラメータ342および382に関連して簡単に上述したように、「保留」チャンネルの保存されているパラメータおよび属性と、モデムデバイスと関連付けられた保存中の動作パラメータとをリコールする。この技術により、モデムシステムをほんの数秒で再接続することが可能となる。従って、データモードのユーザは、入来コールの待機またはコール元識別信号を処理した後に時間のかかる再接続による不利益を被ることがなくなる。このような様式のコール待機を用いれば、データモードのユーザは、モデム接続に関連する遅延が顕著な長さになることなく、断続的な割込みを受けることができる。
この機能を用いて、従来のPPPモデム接続で「常時接続」モードをシミュレートすることができる。例えば、クライアントモデムとサーバモデムとの間の所与の接続に対して、関連するチャンネルの補償情報を定期的に保存することが可能である。クライアントユーザは、上述するようにデータモードを休止している間に、返答入来する第2のラインコールに返答することができる。加えて、クライアントユーザが送出音声コールを開始した場合、データモードを適切に終了することができる。音声コールが終了した後、クライアントモデムは、サーバモデムに再ダイヤルまたは別の場合において再接触して、格納されたパラメータを用いて接続を確立することができる。
図7は、2つのモデムデバイスによって行なわれるクイック再接続プロセス700の部分を示すフロー図であり、図6は、2つのモデムデバイスによって行なわれる例示的クイック再接続プロセスに対応するタイミング図600である。タイミング図600は、従来のデータ通信プロトコルの文脈において用いられることの多い頭字語および略語を含み得る。本明細書においてこのような専門用語を用いるのは、実際的な一実施形態の文脈において本発明の概念を説明することを意図してのことである。しかし、本発明は任意の適切な文脈において用いることも可能であり、特定の信号、シーケンス数、シーケンスのタイミング、データ速度、および図6中に示す2つのモデムデバイス間の相互作用は、本発明の範囲を限定することをいかようにも意図していない。
クイック再接続プロセス700は、このようなモデムシステムが通信セッションを確立した後(典型的には、モデムシステムがフル速度でのデータモードに入った後)に、このようなモデムシステムによって行なわれ得る。これから説明を行うために、モデムシステムが上述したように構成されている(または、後述する様々なプロセスタスクをサポートするように適切に構成されている)と仮定することができる。プロセス700を行う2つのモデムデバイスは本明細書中に説明するクイック再接続技術と互換性を有すると仮定することができる。従って、プロセス700は、クイック再接続プロシージャを行うことが可能か否かを判定するために、いずれの確認または信号送信も行う必要は無い。
これはクイック再接続プロセス700の要件ではないものの、モデムシステムは、上述したクイックスタートアップ技術に従って初期設定され得る。従って、プロセス700は、双方のモデムデバイスが任意の数の適切なチャンネル特性、受信器パラメータならびに(モデムシステムの初期設定、訓練および同期化に関連する)他の情報を格納したと仮定する。上述したように、このような情報は、スタートアッププロシージャの間または適切なデータモードの間に定期的に適切に保存され得る。プロセス700を用いて、モデムデータモードの一時休止の後または任意の割込みイベントの後に、現在のモデム接続をイネーブルして、クイック再確立することができる。この文脈において、実際的なシステムは、クライアントモデムデバイスのユーザがモデム接続(またはモデムデータ通信モード)を一時的に休止している間、モデムデバイス間の通信リンクまたは接続を保持することができる。この一時的保留期間の間、ユーザは、クライアント側のモデムデバイスがアイドル状態である間、コール待機信号に応答して別の入来コールに返答し、新規の送出コールまたはそのようなものを開始することができる。
クイック再接続プロセス700は、タスク702と共に開始され得る。タスク702の間、再接続指示(indication)が、DPCM(例えば、図3に示すモデム302)によって受信される。再接続指示は、リクエスト(例えば、ユーザが開始したリクエスト)に応答して生成され得、これにより、モデム通信セッションにおける一時休止が終了する。例えば、適切な再接続信号が、APCMのユーザによって開始されたフックフラッシュに応答してまたはAPCMと関連付けられたアプリケーションソフトウェアによって生成された命令に応答して、APCM(例えば、モデム304)によって生成され得る。あるいは、APCMまたはAPCMと関連付けられたデータアクセス構成(DAA)が、電話セットの保留オンステータスと関連する線電流の変化に応答して、再接続信号を生成し得る。このような使用中の線(line−in−use)を検出する技術は一般的には、当業者に公知である。この再接続指示は、ユーザが一時的に保留状態にされている現在のモデム接続を再確立することを望んでいる旨をDPCMに伝える。実際的な一実施形態において、DPCMは、再接続指示を受信し、この再接続指示に応答して、タスク704を開始する。
タスク704の間、DPCMは、適切な返答信号を送信する。返答信号は好適には、クイック再接続プロシージャがサポートされていることをAPCMに伝える。本明細書中に説明する例示的実施形態において、このような返答信号は、上述したように適切な移行シーケンスを含み得る。従って、クイック再接続プロセスは、タスク704を行い得る。タスク704は、図4と関連して上述したタスク414と類似し得る。例えば、タスク704によって、DPCMは、QTS信号を送信し、APCMをイネーブルして、DPCMのタイミングフェーズを再度判定し得る(QTS信号は、図6中の参照符号602によって識別される)。加えて、QTS信号の再送信により、APCMがイネーブルされ、これにより、データ通信ネットワークのRBS特性を入手する(ただし、そうすることが必要な場合またはそうすることが望ましい場合)。
多くの実際的なモデム接続において、ネットワーク接続(デジタルパッドおよびRBSの関連する影響)は、モデム保留期間の間、一貫した状態のままである点が留意されるべきである。もちろん、ネットワークリソースを節約するために、モデム保留期間の間、ネットワーク接続をクリアダウンする状況もあり得る。このような状況の場合(特に、同じネットワーク接続が再確立されない場合)、ネットワークのデジタル障害プロファイルは、一貫した状態を保持し得ない。さらに、ネットワーク特性が変化しなかったとしても、モデム接続が保留にされた場合(特に、APCMが保留期間の間DPCMからの信号を受信しない場合)、APCMは、そのRBS同期を失い得る。この点において、APCMが保留期間の後に自身をネットワーククロックに適切に再同期できたとしても、その特定のRBSフェーズはそれでも不明であり得る。従って、クイック再接続プロセス700は好適には、ネットワーク接続およびRBSタイミングが変化した場合を想定して構成される。
返答信号はまた、移行シーケンスに続く適切な信号ポイントシーケンスも含み得る。従って、タスク704の後、DPCMは、タスク706を行って、信号ポイントシーケンスをAPCMに適切に送信することができる。タスク416に関連して上述したように、信号ポイントシーケンスは、返答音を変更したもの(例えば、ANSpcm信号(これを、図6中の参照符号604として示す))と見なすことができる。このANSpcm信号604は、上述したように構成可能であり、例えば、ANSpcm信号604は、APCMをイネーブルして、現在の通信チャンネルまたはネットワーク(特に、デジタルパッドおよび/または他のデジタル障害)の特性を判定または識別させるように、適切にフォーマットされ得る。ANSpcm信号604はまた、ネットワークエコーキャンセラーをディセーブルするのに適切な音およびネットワークエコーサプレッサーをディセーブルするのに適切な音を提供するようにも構成される。
実際的な一実施形態において、APCMは、ANSpcm信号604の送信を予期する(anticipate)。例えば、APCMは、再接続指示をDPCMに送信した後、自身の受信器をANSpcm信号604を受信するように調整するように構成され得る。したがって、クイック再接続プロセス700は、クエリタスク708を含み得る。クエリタスク708は好適には、ANSpcm信号604がAPCMによって受信されたか否かおよび/またはAPCMがANSpcm信号604を受信したことを示す適切な肯定応答をDPCMが受信したか否かを判定する。ANSpcm信号604がAPCMによって受信されず、APCMがANSpcm信号604を受信したことを示す適切な肯定応答をDPCMが受信しなかった場合、プロセス700は終了し得、モデムシステムは、従来の再接続ルーチンをと共に進行し得る。ANSpcm信号706が適切に受信されたとクエリタスク708が判定した場合、APCMは、受信された信号を上述したように処理して、APCMをイネーブルし、再確立されたチャンネルと関連するデジタル障害を判定させることができる。
タスク710は好適には、双方のモデムデバイスに、以前のチャンネル接続(すなわち、モデム接続が一時的保留状態にされる前のチャンネル)と関連付けられた特性およびパラメータをリコールおよび入手させるように、行なわれる。タスク710は、DPCMを以前のチャンネル情報342にアクセスさせ、APCMを以前のチャンネル情報384にアクセスさせることができる。上述したように、この情報は、(以前判定された)現在のチャンネル条件、モデム受信器と関連付けられた任意の数の設定、通信ネットワークの特性またはそのようなもの)に関連する1つ以上のパラメータを含み得る。タスク710は、モデムシステムをイネーブルして、これらの格納されたパラメータをクイック検索させ、かつ、チャンネルの独立的基再評価およびフル再訓練プロセスの代わりに適切な様式で、モデムデバイスを再設定させる。タスク710は、DPCMがAPCMから再接続識別子を受信した後、DPCMによって行われ得、また、タスク710は、APCMがANSpcm信号604を受信する前に、APCMによって行われ得る。タスク710がAPCMによって行なわれる場合、APCM等化器は、以前のチャンネル情報384に従って初期設定され、これにより、ANSpcm信号604の適切な受信分析が可能となる。
DPCMは、任意の数の技術(例えば、ITU−T推奨V.34(国際電気通信連合、1994年9月)に記載された、従来のV.34半2重1次チャンネルの再同期化プロシージャ。本明細書中、同文献を参考のため援用する)に従って、自身のタイミング同期化を再度獲得することができる。言い換えると、図6に示すように、APCMは、PP信号610を送信してDPCM受信器をイネーブルし、これにより、自身のタイミング回復およびキャリア回復とDPCM受信器とが同期するように、構成され得る。Sプリアンブル信号およびS\プリアンブル信号(それぞれ、参照符号606および608として示す)を用いて、自動利得制御素子またはそのようなものを初期設定することができる。B1信号612は、DPCMスクランブル化器、トレリス符号器およびそのようなものを初期設定する際に用いることが可能なプリアンブルシーケンスとして見なされ得る。これらの信号およびシーケンスについては、V.34推奨に詳細な記載があるため、本明細書中では説明を省く。
同時に、DPCMは、R信号616を送信することが可能であり、このR信号616の後、R\信号618およびB1信号620が続く。これらのシーケンスはまた、APCMをイネーブルしてデータモードに備えさせる適切なプリアンブルシーケンスとしても機能する。これらの信号およびシーケンスについてはV.90推奨に詳細な記載があるいるため、本明細書中では説明を省く。
再同期化シーケンスに応答して、モデムシステムはデータモードに入り、システムは、データの送信をフルデータ速度で開始し得る(タスク712)。言い換えると、データ送信モードは、以前の接続を完全にクリアダウンすることなく、再確立される。データモードは、図6におけるシーケンス614および620によって識別される。特筆すべきは、クイックスタートアッププロセス400とは異なり、クイック再接続プロセス700では、チャンネル特性(タスク420を参照)、初期訓練プロシージャ(タスク422を参照)、エラー修正およびデータ圧縮プロシージャ(タスク424を参照)、最終訓練プロシージャ(タスク428を参照)と、認証交信(タスク428を参照)またはコンステレーションおよびモデムパラメータの交信(タスク430を参照)の間で比較を行う必要が無い点である。PAP/CHAP認証情報に関して、モデムシステムは、保留期間の間にPPP/TCP/IPプロトコル層を維持するように適切に構成可能であり、これにより、PPP認証データを再送信する必要が無くなる。従って、モデムシステムは、複数の従来の初期設定タスクを行って時間を無駄にすることなく、自身のモデム接続を再確立することができる。典型的かつ実際的なシステムにおいて、クイック再接続プロセスを用いて、1.5秒未満でデータモードを再確立することが可能である。
クイック再接続プロシージャの別のバージョンでは、タイミング図500(図5を参照)に類似するタイミング図を用いることが可能である。しかし、このような実施形態において、タイミング図500と関連して上述した信号セグメントのうちいくつかの長さを低減させ、これにより、従来の再接続時間を低減することが可能である。例えば、様々なTRN訓練シーケンスおよびパラメータ交信信号を大幅に短くすることが可能である。なぜならば、これらのTRN訓練シーケンスおよびパラメータ交信信号は、基本的な情報を搬送する必要が無いからである。実際的なインプリメンテーション上の理由のため、(セグメントをタイミング図500から排除する代わりに)一般的なシーケンス構造をこのような様式で完全なまま保持することが望まれる場合がある。実際、ソフトウェアのインプリメンテーションの観点から、セグメントの長さを比較的直接的な方法で調節することができ、一方、セグメント全体を既存のプロトコルから除去するのは、時間がかかり、厳しいタスクであり得る。このような別の上述したようにの再接続時間はタイミング図600に関連して上述した再接続時間(例えば、〜2.5秒)よりも長い場合があるが、それでも、その再接続時間は、従来の再初期設定プロシージャを行うのに必要な時間よりも有意に短い。
上述したように、コール待機および関連する電話機能は、線がモデム接続のために使用中である場合、問題になり得る。コール待機警告信号に応答して、モデム接続が頻繁に中断され、その際、モデムデバイスは、中断の原因に気付かない。待機コール警告信号は、モデムデバイスを切断させるかまたは長時間の保持モードに入らせ得る。さらに、多くのシナリオにおいて、消費者は、コール待機サービスそのものの利点を利用することができない。一般的には、本発明は、以下のようにして、この問題に対して取り組む:すなわち、(1)いずれのモデムデバイスも待機コール警告に応答してすぐにクリアダウンすることを可能にし;(2)第1のモデムデバイスが第2のモデムデバイスを保留状態にさせるようにとリクエストし、第2のモデムデバイスがそのリクエストを承認(grant)するかまたは拒否するかを可能にし;かつ、(3)いずれのモデムも(上述したような)クイック再接続をリクエストすることを可能にする。この信号送信技術を実施すれば、警告信号(例えば、コール待機警告)に応答して、モデム接続をクリアダウンするか、保留状態にするか、またはクイック接続することが可能となる。同様に、モデム接続が保留にされた場合、保留期間が経過した後、同じ信号送信メカニズムを用いて、モデムセッションを再接続することが可能である。
双方の終端デバイス(例えば、V.90システムにおけるDPCMおよびAPCM)がこのモデム保留機能との適合性を有すると仮定すると、適切な信号送信スキームを用いて終端デバイスをイネーブルして、動作ノードを必要に応じて切り換えさせることができる。本明細書中、信号送信スキームおよび様々なプロセスについて、クライアント終端部においてAPCMを有し、サーバサイト終端部または中央サイト終端部においてDPCMを有するモデムシステムの文脈において説明するが、本発明は、この文脈に限定されない。例えば、本明細書中に記載の技術は、2つのクライアントモデム間の通信セッションの文脈またはV.34モデムシステムの文脈にも、同様に適用可能である。
図16は、モデムシステム1600を動作させることが可能な例示的実施形態を模式的に示したものである。モデムシステム1600は一般的には、中央サイトと関連付けられ得る第1のモデムデバイス1602と、顧客サイト分1670に常駐し得る第2のモデムデバイス1604とを含む。典型的なV.90システムの文脈において、第1のモデムデバイス1602はDPCMであり得、第2のモデムデバイス1604はAPCMであり得る。DPCM1602は、デジタルリンクを介して中央オフィス1606に結合され、APCM1604は、アナログリンク(例えば、ローカルループ)を介して、中央オフィス1606に結合される。モデムシステム1600は、上述したようなクイックスタートアップルーチンおよび/またはクイック再接続プロシージャと関連付けられたさらなる素子および機能を有し得ることが理解されるべきである。
図16はまた、(入来コールを顧客サイトに提供することが可能な)コール元デバイス1608と、顧客サイトに配置されたパラレル返答デバイス1610と、顧客サイトに配置されたシリーズ返答デバイス1611とも示す。図16に示すように、パラレル返答デバイスは、APCM1604と同じコールを同時に受信するように、接続される。それとは対照的に、シリーズ返答デバイス1611は、APCM1604がコールをシリーズ返答デバイス1611に経路設定するように、接続される;すなわち、APCM1604は、従来の様式で、シリーズ返答デバイス1611を出入りするコールのトラフィックを制御または調整することができる。コールは、コール元デバイス1608と返答デバイス1610および1611との間で中央オフィスを介して確立され得、モデム接続は、DPCM1602とAPCM1604との間で中央オフィスを介して確立され得る。
一般的には、モデムシステムは、コール待機と、モデム接続の中断を必要にし得る他の状況に応答する信号生成メカニズムとをサポートするように構成される。例えば、APCM1604は、適切にフォーマットされた信号を送信して、モデム保留状態を開始し得る。DPCM1602は、異なる信号を送信して、モデム保留リクエストを肯定応答し得る。APCM1604は、さらに別の信号を送信して、(上述したような)クイック再接続プロシージャを開始するようにとのリクエストし得、いずれのモデムデバイスも、クリアダウンリクエストを示す信号を送信し得る。分かり易くかつ簡潔にするため、図16では、上述した例示的プロセスに関連する様式で、APCM1604およびDPCM1602を図示している。実際的な実施形態において、これらのモデムデバイスはそれぞれ、送信モデムまたは受信モデムとして機能することができ、かつ、上述したような様々な信号を生成することができる。
DPCM1602は、送信器セクション1612および受信器セクション1614を含む。送信器セクション1612および受信器セクション1614はどちらとも、従来の技術とモデムシステム300(図3を参照)の上記記載とに従って構成可能である。DPCM1602は、初期設定プロシージャ、データモード、保留モードおよび移行モードの間、複数の信号、シーケンスおよび音を送信することが可能である。上述したように、DPCM1602は、クイックスタートアップルーチンまたはクイック再接続プロシージャと関連付けられた適切な移行シーケンス1616および特性信号ポイントシーケンス(例えば、ANSpcm信号1618)を送信するように構成され得る。データモードの間、DPCM1602は、適切なデータ送信スキームに従って、データ1620を送信する。
DPCM1602はまた、APCM1604および/または中央オフィス1606によって受信され得る複数の信号を送信することもできる。例えば、DPCM1602は、上述したような「A」音1622および「B」音1624を送信することができる。実際的な一実施形態において、(ITU−T推奨V.34に記載のように)「A」音1622は2400Hzであり、「B」音1624は1200Hzである。もちろん、モデムデバイスは、これらの事前規定された音の代わりに(またはこれらの事前規定された音に加えて)、任意の適切な音または信号を生成および処理することができる。DPCM1602はまた、モデム保留モードの開始と、保留期間の後のモデムセッションの再接続と、モデム接続のクリアダウンと関連付けられた複数のさらなる信号を送信するようにも構成される。例えば、DPCM1602は、モデム保留リクエスト1626と、モデム保留肯定応答1628と、クイック再接続リクエスト1630と、切断信号1632(本明細書中、この信号を「モデムステータス信号」と呼ぶ)とを送信することができる。これらの信号のフォーマットおよび機能について、以下により詳細に説明する。
DPCM1602はまた、信号検出素子1634も含み得る。この信号検出素子1634は、任意の数の公知の技術を用いて、APCM1604および/または中央オフィス1606によって送信された制御信号、リクエストおよび音を検出、分析および解釈することができる。例えば、信号検出素子1634は、従来の音検出器および/または本明細書中に記載された異なる信号を検出および識別するように構成された従来のV.34またはV.90の差分位相シフトキーイング(DPSK)受信器を用いることができる。
本明細書中に記載の信号送信スキームの目的のため、APCM1604は好適には、DPCM1602と同様に構成される。言い換えれば、APCM1604は、「A」音1642と、「B」音1644と、モデム保留リクエスト1646と、モデム保留肯定応答1648と、クイック再接続リクエスト1650と、切断信号1652とを送信することができる。加えて、APCM1604は、顧客サイトがコール元のID機能(例えば、コール元構成要素1656によって示すようなコール元のID機能)をサポートすることを中央オフィス1606に伝えるコール元ID音1654を生成するようにも構成され得る。現在の規格によれば、コール元ID音1654は、長さが約55〜65ミリ秒のDTMF「D」音である。もちろん、APCM1604は、データモードの間、データ1658を送信する。
DPCM1602と関連して上述したように、APCM1604は好適には、信号送信検出素子1660を含む。この信号送信検出素子1660は、APCM1604をイネーブルして、DPCM1602によって送信された様々な信号送信音およびシーケンスの受信、検出および分析を行なわせる。このようにして、APCM1604およびDPCM1602の両方が、信号を受信し、かつ、受信した特定の信号(単数または複数)に応答して動作モードを切り換えることができる。
中央オフィス1606は、モデムコール、音声コールおよびファクシミリコールと関連する回路切換えを従来の方法で行うように構成される。中央オフィス1606は、任意の数の顧客サイトをサポートし得る。中央オフィス1606が任意の数の他の中央オフィス、中央サイトモデムまたはそのようなものと操作可能に結合され得る。上記にて簡潔に説明したように、APCM1604、返答デバイス1610およびコール元ID構成要素1656は、顧客サイト1670に常駐し得る。従って、APCM1604、返答デバイス1610およびコール元ID構成要素1656は全て、中央オフィス1606によってサポートされる。
中央オフィス1606は、コールを適切なパーティ間に経路設定するための適切な切換えファブリック1672を含む。例えば、切換えファブリック1672は、第1の状態に切り換わってDPCM1602とAPCM1604との間にモデム接続を確立し、第2の状態に切り換わってコール元デバイス1608と返答デバイス1610との間に音声接続を確立することができる。さらに、切換えファブリック1672は、接続に一時的に割り込んで、制御信号、データ、または音を現在の回路または線上に押し付ける(impress)こともできる。この点において、中央オフィス1606は、特定の状況に応じて、複数のリング信号1674、警告信号1676、コール元IDデータ1678および他の情報を送信することができる。例えば、現在の方法に従って、中央オフィス1606は、音声コールを一時的に中断し、コール待機警告信号1676を顧客サイト1670に送信し得る。顧客がその入来コールを受け入れると、切換えファブリック1672は、オリジナルのコールが保留にされている間、入来コールを顧客サイト1670に経路設定するように再構成され得る。以下により詳細に説明するように、類似のルーチンを用いて、モデムコールを保留にすることが可能である。
上述したように、信号送信スキームは好適には、フェーズ2の信号送信音を用いる。このフェーズ2の信号送信音は、従来のV.34およびV.90のモデムシステムによっても用いられる。加えて、信号送信スキームでは、信号送信をV.34再訓練プロシージャおよびV.90再訓練プロシージャとシームレスに一体化させることが可能なDPSK送信技術も用いる。信号は、V.34受信器/V.90DPSK受信器または比較的単純な音検出器のいずれによっても検出され得るように、構成される。実際的な一実施形態において、モデム保留リクエスト、モデム保留肯定応答、クイック再接続リクエストおよび切断信号は、ある期間(例えば、少なくとも50ミリ秒)の音Aまたは音Bのいずれかによって先行される。この技術は、従来のV.34モデムシステムおよびV.90モデムシステムによって用いられるA音およびB音の使用を利用し、モデムシステムによって既に使用されている変調スキームの利点を活かしたものである。従って、DPCM1602は典型的には、DPSK信号を受信するように調整されるため、この信号送信メカニズムは容易にインプリメントされる。
A音またはB音に追随するモデムステータス信号は好適にはビットパターンの繰り返しに基づいて、DPSK信号として送信される。好適な実施形態において、モデムステータス信号は、異なるパターンが異なるモデムステータス信号に対応する4ビットの8個のパターンの繰り返しと関連付けられたDPSK信号である。4ビットのパターンの使用は、信号送信検出素子1634および1660のために単純な音検出器を用いるため、望ましい;なぜならば、ビットパターンが短くなると、DPSK信号と関連付けられた周波数構成要素の数が減少するからである。その結果、この信号検出スキームは、大量の周波数をスペクトル内容について分析する複雑な処理ルーチンを用いる必要を無くす。以下の表3中に、異なるモデムステータス信号のための例示的ビットパターンを示す。
表3−モデムステータス信号
特定のビットパターンは好適には、当該ビットパターンから得られるDPSK信号が他のデータ通信プロトコルが使用される文脈において「確保された(reserved)」DPSK信号を介して識別可能となるように、選択される。例えば、全てゼロのDPSKパターンはA音またはB音に相当し、全て1のDPSKパターンは、V.34INFOMARK信号に相当する。加えて、特定のビットパターンを、当該ビットパターンから得られるDPSK信号が音検出器によって容易に検出されるように、適切に選択することが可能である。例えば、表3に示すビットパターンの場合、モデムステータス信号は、以下の表4および表5にリストされる周波数内容を有する。表4および表5において、周波数はヘルツを表し、「X」は、閾値レベルよりも高いスペクトルの内容を示し、スラッシュ(slash)は、閾値レベルよりも低いスペクトルの内容を示す。例えば、表3に示すDPSKビットパターンの場合、同じ周波数において、低い方のスペクトルのエネルギー構成要素は、高い方のスペクトルのエネルギー構成要素よりも少なくとも8dB低い。その結果、なんらかの共有された周波数構成要素の存在に関係無く、異なるモデムステータス信号を識別することが可能となる。
表4−モデムステータス信号の周波数成分(APCM)
表5−モデムステータス信号の周波数成分(DPCM)
APCMおよびDPCMによって用いられる異なる周波数範囲は、異なるキャリアが2つのモデムデバイスによって用いられる例証的アプリケーションに関連する。例えば、従来のV.90システムにおいて、DPCMは、およそ2400Hz(音「B」およびDPSKキャリア)の信号送信を用い、一方、APCMは、およそ1200Hzの信号送信を用いる。この機能は、コール元モデムにおよそ1200Hzの信号送信を用いさせ、かつ、返答モデムにおよそ2400Hzの信号送信を用いさせる従来のV.34スキームから導出されたものである。その結果、2つのスペクトルのパターンは、1200Hzと2400Hzとの間のシフトを除けば、同じである。この方法論により、双方の終端部が同じ種類の信号を送信する場合にでも、終端デバイスが信号を適切に検出することが確実になる。
実際的な1つのシステムにおいて、モデムステータス信号検出では、所与の信号について、「スペクトルの指紋」全体を検出する必要は無い。そうではなく、信号検出素子1634および1660は、整合するものを指示する目的のため、特徴的な数のスペクトルの構成要素を検出および分析するように構成され得る。例えば、表4に示すように、信号が1050Hzおよび1350Hzにおいて比較的高いスペクトルのエネルギーを含む場合、その信号は、切断信号またはモデム保留リクエストであり得る。従って、信号検出ルーチンは、900Hz、1200Hzおよび/または1500Hzにおけるスペクトルの内容について信号を分析し、適切な決定を行い続ける。
図8は、入来コールがクライアント終端部により返答されている間、現在のモデム接続がコール待機指示による割込みを受け、モデム接続が保留にされている状況を示すタイミング図である。図8は、顧客サイト1670がパラレル返答デバイス1610またはシリーズ返答デバイス1611を用いるかに関係無く、適用可能である。信号、シーケンス、音、コマンドおよびそのようなものの進行を、APCM、DPCMおよび中央オフィスに関して図示する(中央オフィスは、APCMへの信号およびDPCMへの信号に関連付けられ得る)。便宜上、本明細書中、図8と関連するプロセスについて、モデムシステム1600の文脈において説明する。
データモードの間、中央オフィス1606は、モデム接続に一時的に割り込み、警告信号802をAPCM1604に送る。この警告信号は、従来のコール待機警告であり得、人間の耳に聞こえる成分(例えば、可聴周波音)およびデータ通信デバイスまたはマシンによって検出可能な成分を含み得る。ほとんどのコール待機プロトコルによれば、警告信号成分は、連続して送信される。警告信号802に応答して、APCM1604は、DTMF音804を送信して、中央オフィス1606からコール元ID情報をリクエストし得る。上述したように、音804は、短く破裂するDTMF「D」音であり得、その継続時間は約55〜65ミリ秒であり得る。中央オフィス1606がDTMF音804を受信および認識すると仮定すると、中央オフィス1606は、コール元IDデータ805をフォーマットし、そのコール元IDデータ805を顧客サイト1670に返送する。図16に示すように、コール元IDデータ805(図16中に参照符号1678として示す)は、コール元ID構成要素1656による表示または分析に適切な様式で、受信および処理され得る。
中央オフィス1606によるAPCM1604からの切換えに応答して、DPCM1602は、適切な信号(例えば、「B」音806)を送信することにより、再訓練プロシージャを開始する。実際的なアプリケーションにおいて、「B」音806は通常は、コール元IDリクエスト804およびコール元IDデータ805の中央オフィス1606による受信、処理および送信が行なわれている間、送信される。この「B」音806は、DPCM1602が、APCM1604が「A」音808で返答するのを待機している間、連続的に送信される。APCM1604は、DPCM1604から「B」音806を受信した場合、「A」音808を送信し得る。上述したように、「A」音808は好適には、DPCM1602が「A」音808を受信する機会を得ることができるよう、少なくとも最短時間(例えば、50ミリ秒)にかけて送信される。DPCM1602が特定の時間内に「A」音808を受信しない場合、DPCM1602は最終的には、自身を切断し得る。
APCM1604のユーザが入来コールに返答することを望むと仮定すると、「A」音808の後に続いて、モデム保留リクエスト810が送信される。モデム保留リクエスト810は、顧客サイト1670に常駐する適切なデバイスによって自動的にプロンプトされ得るか、または、ユーザコマンドに応答してプロンプトされ得る。モデム保留リクエスト810は、上述したようにフォーマット可能であり、好適には、少なくとも最短時間にわたって送信される。実際的な一実施形態において、モデム保留リクエスト810は、約53ミリ秒にわたって送信される(本明細書中に記載のモデムステータス信号は全て、類似の最短時間を有し得る)。従来のV.34モデムシステムまたはV.90モデムシステムと対照的に、実際の再訓練プロシージャは、DPCM1602が「A」音808を受信した際、行なわれない。そうではなく、DPCM1602は、モデム保留リクエスト810に応答して、最短時間(例えば、約53ミリ秒)にわたってモデム保留肯定応答812を送信し得る。
DPCM1602がモデム保留肯定応答812を送信した後、DPCM1602は好適には、自身が保留状態を保持している間、「B」音806を送信し続ける。モデム保留肯定応答812に応答して、APCM1604は、適切なフラッシュ信号814を生成して、これにより、中央オフィス1606に命令して、モデム接続の切換えをオフにし、入来コール816の切換えをオンにさせることができる。加えて、ハンドセット(または他の適切な返答デバイス)は、入来コールの受信を開始する;APCM1604は、入来信号をパラレル返答デバイス1610またはシリアル返答デバイス1611に適切な様式で経路設定するように構成され得る。加えて、APCM1604は、ハンドセットが接続されている間(期間818の間)、アイドル状態または「保留オン」状態にされ得る。従って、顧客サイト1670にいるユーザは、DPCM1602が保留のままである間、入来コール816を再開(proceed with)することができる。モデム接続は、クイックモデム再接続プロシージャ(これについては、後述する)を用いて再確立され得る。
図9は、入来コールの終結(termination)に応答してDPCM1602を再接続する状況を示すタイミング図である。図9に示すプロセスは、:(1)DPCM1602が保留状態であり;(2)返答デバイス1610がAPCM1604とパラレルに接続され、;かつ(3)返答デバイス1610が入来コールを終結する(例えば、コール元デバイス1608が「保留オン」にされる前に返答デバイス1610が「保留オン」にされる場合を仮定している。これから説明を行うために、このパラレル接続は、APCM1604および返答デバイス1610が中央オフィス1606から同じ信号を同時に受信することを意味する。
入来コールの終結に応答して、中央オフィス1606は、従来の様式で(例えば、周知の線検出技術を用いて)「ハングアップ」を検出する。その結果、中央オフィス1606は、入来コールをオフに切り換えるかまたは切断し、DPCM1602をオンに切り換え、適切な信号(例えば、リング信号902)を生成する。リング信号902は、オリジナルのコールが未だ保留状態であり、再接続を待っている旨を顧客サイト1670にいるユーザに警告する役割を果たす。リング信号902に応答して、APCM1604は「オフフック」状態にされ、これにより、APCM1604は、中央オフィス1606から再度信号を受信することができるようになる。従って、リング信号902は、入来コールがクリアされたことおよび/またはAPCM1604がモデム再接続プロシージャによって再開可能であることをAPCM1604に伝達し得る。図8に関連して上述したように、APCM1604は、「B」音906の検出に応答して、「A」音904を(少なくとも50ミリ秒にわたって)生成する。「A」音904の後、APCM1604は、クイック再接続リクエスト908を送信して、(図6および図7の文脈において上述したような)クイック再接続プロシージャを開始し得る。従って、クイック再接続リクエスト908の検出に応答して、DPCM1602は好適には、QTS信号910を送信し、このQTS信号910の後にANSpcmシーケンス912が追随する。QTS信号910およびANSpcmシーケンス912の特性、フォーマットおよび機能は上述した通りである。双方のモデムデバイスが上述したクイック再接続機能をサポートすると仮定すると、保留モデム接続は、比較的短持間で再確立が可能である。
図10は、パラレル返答デバイス1610が「オンフック」状態にされる前に入来コールが終結する状況を示すタイミング図である。このシナリオにおいて、入来コールの終結がコール元デバイス1608によって開始されると、中央オフィス1606は、顧客サイト1670をオリジナルのコールに再接続する(この例の場合この接続はモデム接続である)。その結果、DPCM1602によって送信された「B」音がAPCM1604において再度利用可能にされる。APCM1604が現在「オンフック」状態であるかまたは「オフフック」状態であるかに関係無く、APCM1604は好適には、DPCM1602が再接続されたことを検出する。APCM1604はは、任意の数の公知技術(公知技術は、特定のインプリメンテーションによって異なり得る)を用いて、再接続を検出することが可能である点が理解されるべきである。例えば、DPCM1602は、DPCM1602から「B」音を検出し得るか、事前規定されたタイムアウト期間の後に自動的に反応し得るか、または、使用中線の技術を用いて、入来コールの終結を感知し得る。2つのモデムデバイスが互いに通信を再開した後、クイック再接続ルーチンが、図9に関連して上述したように進行する。
図10に示す状況に関連して、中央オフィス1606が再接続試行(attempt)をフックフラッシュまたは切断と見なすことのないように、APCM1604を特定の時間内で反応させる必要がある場合があり得る。例えば、好適な実施形態において、中央オフィス1606が遅延を電話会議リクエスト(これは、DPCM1602を保留にさせ得る)または切断(これは、接続をクリアダウンさせ得る)と見なして遅延に割込むことのないよう、APCM1604は、200ミリ秒以内の入来コールの終結に応答するように構成される。任意の適切な電気通信推奨、規格または動作プロトコル(例えば、(一般的な電気通信信号送信に関連する)BELLCORE Technical Reference GR−506−COREおよびBELLCORE Technical Reference TR−NWT−000575)に従って、特定の時間を選択することが可能である。本明細書中、これらの参考文献の内容を参考のため援用する。
一般的には、パラレル返答デバイス1610を用いたシステムの文脈において用いられるプロシージャのうち任意のものも、シリーズ返答デバイス1611を用いたシステムの文脈において用いることが可能である。しかし、その逆は必ずしもあてはまらない。例えば、図11は、入来コールがシリーズ返答デバイス1611によって終結される状況を示すタイミング図である。上述したように、顧客サイト1670における通信線は先ずAPCM1604に中央オフィス1606からの信号を提供し、APCM1604は、その信号を返答デバイス1610に経路設定する。最も実際的なアプリケーションにおいて、APCM1604は、APCM1604が単にそのコールをシリーズ返答デバイス1611に経路設定している場合にも、「オフフック」のままである。従って、APCM1604は、「B」音の存在について線をモニタリングするか、または、DPCM1602と関連する適切な信号をモニタリングすることができる。このシナリオにおいて、入来コールが(コール元デバイス1608によってまたはシリーズ返答デバイス1611によって)終結された場合、APCM1604は、中央オフィス1606からの信号を受信することができる。さらに、中央オフィス1606は、DPCM1602を切り換えて顧客サイト1670と通信させることにより、コール終結の検出に応答する。従って、「B」音がAPCM1604によって検出された場合、APCM1604は、即座にシリーズ返答デバイス1611を結合解除することができる。2つのモデムデバイスが通信セッションを再開した後、クイック再接続ルーチンは、図9に関連して上述したように進行する。
図12は、DPCM1602がクリアダウン命令を用いてモデム保留リクエストに応答する状況を示すタイミング図である(図12は、シリアル返答デバイス1611またはパラレル返答デバイス1610のいずれかを用いるシステムに適用可能である)。このプロセスは、モデム保留リクエスト1202がAPCM1604からDPCM1602へと送信されるポイントまでは、図8に関連して上述したプロセスと同様である。DPCM1602がモデム保留リクエスト1202に肯定応答するシナリオとは対照的に、図12に示す状況は、DPCM1602からの切断信号1204の送信を必要とする。DPCM1602は、任意の数の動作パラメータ(例えば、現在のコールトラフィック、DPCM1602の機能能力、チャンネル特性またはそのようなもの)を想定または考慮した後、切断信号1204を送信し得る。
DPCM1602は、切断信号1204を送信した後、いかなる意味のある信号を送信することなく、アイドル状態になるかまたは待機状態となる。切断信号1204に応答して、APCM1604は、適切な様式でモデム接続をクリアダウンする。適切なタイムアウト期間(例えば、1550ミリ秒)の経過後に中央オフィス1606がAPCM1604からの活動を検出しなかった場合、中央オフィス1606は、APCM1604が切断されたと仮定し得る。その後、中央オフィス1606は、DPCM1602をオフに切り換えて、リング信号1206およびコール元IDデータ1208を顧客サイト1670に生成し、これにより、入来コールが返答可能となる。DPCM1602は、DPCM1602がAPCM1604からの信号を受信しない期間である適切なタイムアウト期間(例えば、2秒間)が経過した後、自身のモデム接続をクリアダウンし得る。従って、DPCM1604は典型的には、中央オフィス1606が一旦リング信号1206の生成を開始した後は、ハングアップする。上述したように、クリアダウンの前に、APCM1604および/またはDPCM1602は、任意の数の関連する動作パラメータを保存して、後続接続のクイックスタートアップを容易化することができる。
特定の条件下において、エンドユーザは、モデム接続を即座に終結し、入来コールを受け入れることを望み得る。図13は、APCM1604が警告信号1302に応答してモデム保留リクエストではなく切断信号1304を送信する状況を示すタイミング図である。図13は、シリアル返答デバイス1611またはパラレル返答デバイス1610のいずれかを用いるシステムに適用可能である。APCM1604は、ユーザコマンドに応答してまたは事前規定されたプロトコルもしくは設定に従って自動的に、切断信号1304を生成し得る。図13に関連する信号および動作の進行は、図12に関連する進行と実質的に同様である。しかし、図12に示すプロセスと異なり、APCM1604は、切断信号1304をDPCM1602に送信する。
図14は、APCM1604が警告信号1401に応答してクイック再接続プロシージャをプロンプトし、入来コールを無視するシナリオを示すタイミング図である。図14は、シリアル返答デバイス1611またはパラレル返答デバイス1610のいずれかを用いるシステムに適用可能である。このような状況は、モデム接続の質が重要な場合、エンドユーザが入来コールによる中断を受けたくない場合および/またはモデム接続が警告信号1401により大きく影響を受ける場合に発生し得る。さらに、このような状況は、コール元IDデータに応答して発生し得る(すなわち、返答側パーティは、特定のコール元パーティからの入来コールを無視することを選択し得る)。図14のプロシージャは、「A」音1402が送信されるポイントまでは、図8のプロシージャと同様である。「A」音1402の送信の後、APCM1604はクイック再接続リクエスト1404を生成し、このクイック再接続リクエスト1404はその後DPCM1602によって受信される。クイック再接続リクエスト1404に応答して、DPCM1602は、QTS信号1406を送信し得る。このQTS信号1406はANSpcm信号1408によって追随され、これにより、クイック再接続ルーチン(例えば、図6および図7に関連して上述したようなクイック再接続ルーチン)が容易化される。APCM1604は適切なモデムステータス信号(例えば、クイック再接続プロシージャではなくフル再訓練プロシージャを示すフェーズの反転)を送信することもできる点が留意されるべきである。このような実施形態の場合、再訓練プロシージャは従来の様式で進行する。
いくつかの条件下において、DPCM1602は、警告信号に応答して「自動的に」初期再訓練モードに入らない場合があり得る。言い換えると、DPCM1602は、割込みが発生していない状況であるかのように、データ送信を継続し得る。図15は、この状況を示すタイミング図である(図15は、シリアル返答デバイス1611またはパラレル返答デバイス1610のいずれかを用いるシステムに適用可能である)。図8に関連して上述したように、APCM1604は、データモードにおいて割込みが生じている間に(コール元IDリクエストと関連付けられた)DTMF「D」音1504を送信することにより、警告信号1502に応答し得る。割込みの結果DPCM1602が「B」音の送信を開始する図8の状況と異なり、DPCM1602は、データ1506をAPCM1604に送信し続ける。APCM1604が中央オフィス1606によって再接続された場合、APCM1604は好適には、「A」音1508を適切な時間にわたって送信し、これにより、DPCM1602が「B」音1510で応答することを可能にする。APCM1604がDPCM1602から「B」音1510を検出した場合、APCM1604は、SIGNALA 1512を用いて「A」音1508に追随する。ここで、SIGNALA 1512は、モデム保留リクエスト、クイック再接続リクエストまたは切断信号であり得る。SIGNALA 1512に応答して、DPCM1602は、SIGNALD 1514をする。ここで、SIGNALD は、モデム保留肯定応答、QTS信号およびANSpcmシーケンスの前の短時間の沈黙または切断信号であり得る。このようにして、DPCM1602が初期に「B」音の送信によって再訓練モードに入らなくても、上述の異なる状況を処理することが可能となる。
図8〜16に関連して上述した信号送信ルーチンおよびプロシージャは、顧客サイト1670において発生する様々なリクエストに対応できるよう、同等に適用可能である。例えば、APCM1604のユーザは、現在のモデム接続を保留にすること、クイック再接続をプロンプトすることまたはフル再訓練を独立した様式でプロンプトすることを望み得る。実際的な一実施形態において、モデム保留リクエストおよびモデム保留肯定応答信号を従来のフェーズ4つのCPシーケンスおよびMPシーケンスに組み込むことが可能である。従って、いずれのモデムデバイスが他のモデムデバイスを保留したいと望む場合(例えば、三路コール元の場合に)、リクエスト元のモデムデバイスは、速度について再交渉を行い、その保留信号を適切な様式で送信することができる。この技術は、特殊なコード(データ速度=0)を用いてクリアダウンを示す従来のV.34およびV.90クリアダウンプロシージャと同様の様式で行うことが可能である。しかし、このモデム保留信号送信技術は、異なるビットの組み合わせを用いることまたは複数の反転ビットを用いることも可能である。
このようなユーザリクエストに応答して、APCM1604は、「A」音を生成し得る。この「A」音は、適切なモデムステータス信号(例えば、モデム保留リクエスト、クイック再接続リクエストまたはそのようなもの)によって追随され、DPCM1602によって受信される。図15に関連して上述したように、その場合、DPCM1602は、「B」音で応答し得る。この「B」音は、適切なステータス信号返答(例えば、モデム保留肯定応答、QTS信号またはそのようなもの)によって追随される。このようにして、本発明の技術を、コール待機警告イベント、線割込みイベントまたは線崩壊イベントに関係無く、任意の数の状況に適用することが可能となる。
要約すると、本発明は、通常はV.90モデムシステムと関連付けられる初期設定期間および再接続期間を短縮する技術を提供する。クイックスタートアップ技術およびクイック再接続技術により、以前の接続の公知のチャンネル特性を利用して、後続の試行と関連付けられた訓練時間を短縮し、これにより、同じ接続を確立する。このクイックスタートアッププロシージャはもちろん任意の特定のモデムアプリケーションに限定されるものではないが、このクイックスタートアッププロシージャを用いて、通常56kbpsモデムによって用いられる初期設定プロトコルまたは初期設定プロセスの部分(例えば、V.8bis、V.8.デジタル障害学習、初期訓練、プロービング、レンジングまたはそのようなもの)を排除することが可能である。加えて、このクイックスタートアップ技術は、従来のスタートアップ技術と異なり、特定の動作を異なるタイミングまたは異なる順序で行うことができる。
本発明について、好適な実施形態を参照して説明してきた。しかし、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなくこの好適な実施形態に変更および変更を為すことが可能であることを認識する。上記および他の変更または変更は、本明細書中の特許請求項に示されるような本発明の範囲に含まれるものとして意図される。