JP2006261017A - プラズマ表面処理装置の電極構造 - Google Patents

プラズマ表面処理装置の電極構造 Download PDF

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尚 梅岡
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Abstract

【課題】 電極の端面と誘電部材の延出部とで作るコーナー部での異常放電を防止できるプラズマ表面処理装置の電極構造を提供する。
【解決手段】
プラズマ表面処理装置の電極11のプラズマ空間形成面を固体誘電体層としての誘電部材13で覆う。この誘電部材13を電極11のプラズマ空間形成面より延出させ、この延出部13aと電極11の端面とで作るコーナー部Cに高誘電率の電界拡散部材40を設ける。この電界拡散部材40にてコーナー部Cでの電界を拡散させ、異常放電を阻止する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、処理ガスを略常圧のプラズマ空間でプラズマ化し基材を表面処理する装置に関し、特に前記プラズマ空間を形成するための電極構造に関する。
この種のプラズマ処理装置には一対の電極が設けられている。これら電極間に電界を印加して大気圧プラズマ空間を形成し、このプラズマ空間に処理ガスを導入してプラズマ化する。このプラズマガスを基材に接触させ、表面処理を行なう。
少なくとも一方の電極の対向面には固体誘電体の層が設けられている。この固体誘電体層は、溶射膜(特許文献1等参照)やセラミック板等(特許文献2、3等参照)にて構成されている。
特開2003−93869 特開2004−285396 特開2004−362890
図13(a)に示すように、固体誘電体層がセラミック板等の誘電部材3で構成されている場合、誘電部材3には、電極1のプラズマ空間2を形成する面より延出する延出部3aが設けられている。この延出部3aと電極1とで作るコーナー部では、電界集中が起き、異常放電が発生する可能性がある。そうすると、電極や誘電部材をはじめ付近の部材がダメージを受け、パーティクルが発生するおそれがある。このようなパーティクルは被処理基材の汚染を招き、歩留まりが低下してしまう。また、異常放電によって電力ロスを招く。
発明者は、上記問題点に鑑みて電界集中のシミュレーションを行なった。
それによると、図13(a)に示すように、現行の電極構造の場合、電極1の角部の直近ポイントP1での電界強度は9.4×10V/mとなった。なお、誘電部材3及びスペーサ4は共に比誘電率εrがεr=7〜11のアルミナ(Al)にて構成し、プラズマ空間2の電界強度は7.1×10V/mに設定した(後記(b)〜(e)において同じ)。
図13(b)に示すように、電極1の端面を誘電部材3の延出部3aに沿って断面円弧状に突出させた場合、突出端の直近ポイントP2での電界強度は12.7×10V/mとなった。
図13(c)に示すように、電極端面の突出部を断面三角形にした場合、突出端の直近ポイントP1’での電界強度は12.5×10V/mとなった。
図13(d)に示すように、電極1の角にRを形成した場合、このR部が誘電部材に接する直近ポイントP1”での電界強度は14.5×10V/mとなった。
図13(e)に示すように、電極1の端面と誘電部材3の延出部3aとで作るコーナー部に高誘電率の材料2を設けた場合、この高誘電率材料の比誘電率に対する電極1の角部の直近ポイントP1での電界強度と高誘電率材料の外端部P2での電界強度は下表1及び図14のグラフの通りとなり、コーナー部の電界集中が拡散されることが判明した。
Figure 2006261017
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、
処理ガスを略常圧のプラズマ空間にてプラズマ化し基材を表面処理する装置において、
前記プラズマ空間を形成するための電極と、
この電極のプラズマ空間形成面を覆う固体誘電体層としての誘電部材と、を備え、
前記誘電部材が前記電極のプラズマ空間形成面より延出する延出部を有し、この延出部と前記電極の端面とで作るコーナー部を埋めるようにして電界拡散部材が設けられ、
この電界拡散部材が、前記コーナー部での異常放電を阻止する程度に電界を拡散可能な高誘電率を有していることを特徴とする。
これによって、コーナー部での異常放電を防止してパーティクルの発生を防止できるとともに、電力ロスを低減ないし解消することができる。
前記電界拡散部材の誘電率は、当該電界拡散部材における前記電極及び誘電部材を向く側とは逆側の部位に接すべき物の誘電率より高いことが望ましい。前記電界拡散部材における電極及び誘電部材を向く側とは逆側の部位に接すべき物は、電極のホルダや筐体などの装置構成部材であったり、空気等の雰囲気ガス(前記電界拡散部材の前記逆側部位が露出している場合)であったりする。
前記電極が樹脂製のホルダにて保持されており、前記電界拡散部材の誘電率が、少なくとも前記ホルダの誘電率より高いことが望ましい。樹脂の比誘電率は一般に2〜4程度である。前記ホルダは、好ましくは、前記電界拡散部材の前記電極及び誘電部材を向く側とは逆側の部位に被さっている。
前記電界拡散部材の比誘電率εrは、εr=5〜1500であることが望ましい。5以上とするのは樹脂より高誘電率にするためである。1500以下とするのは、これより大きいと、上記表1及び図14のグラフに示すように、電界拡散部材の外端部(電極の端面を向く内端側とは反対側の端部)での電界強度が大きくなり過ぎ、そこで異常放電が起きるおそれがあるからである。より好ましくはεr=10〜1500である。例えばεr=10程度の材料としてアルミナが挙げられる。
前記電界拡散部材は、アルミナやジルコニア等のセラミックからなる一定形状の硬質部材(ブロック体)にて構成してもよく、アルミナ系シール剤やシリコン系シール剤等からなる非定形の軟質材料にて構成してもよい。少なくとも当該電界拡散部材における前記電極及び誘電部材を向く側とは逆側の部位に接すべき物より高い誘電率を有しているのであれば、樹脂にて構成してもよい。
前記電界拡散部材は、耐電圧性が良好で絶縁破壊し難いことが好ましい。
前記誘電部材は、アルミナ等のセラミック等により板状に形成されていてもよく、軟性のシート状ないしフィルム状であってもよく、電極を収容可能なケース状であってもよい。
前記電界拡散部材は、例えばアルミナにて構成され、断面四角形状をなしている。この電界拡散部材における幅(前記誘電部材の延出方向に沿う寸法)は5mm以上であり、厚さ(前記電極の端面に添って前記プラズマ形成面と直交する方向に沿う寸法)は2mm以上であることが望ましい。これによって、電界を十分に分散でき、異常放電を確実に防止できる。
前記誘電部材の延出部には前記電極の端面に添うように突出する凸部が一体に設けられ、この凸部が、前記電界拡散部材として提供されていてもよい。この場合、電界拡散部材は、誘電部材と同一材料にて構成され、誘電部材と同等の誘電率を有する。誘電部材と電界拡散部材が別体になっていて、これら部材が互いに同一材料にて構成され、同等の誘電率を有していてもよい。電界拡散部材が、誘電部材より高い誘電率を有していてもよい。
前記電界拡散部材が、前記誘電部材の延出部に密着する誘電部材密着面と、前記電極の端面に密着する電極密着面とを有していることが望ましい。これによって、コーナー部での異常放電を一層確実に防止することができる。
前記電界拡散部材の誘電部材密着面と電極密着面とのなす角は、実質的に面取りされていないことが好ましく、前記電極のプラズマ空間形成面と端面とのなす角は、実質的に面取りされていないことが好ましい。これによって、コーナー部での異常放電を一層確実に防止することができる。「実質的に」であるから製造上の公差程度の丸みは許容される。
前記電界拡散部材の誘電部材密着面と電極密着面とのなす角は、直角であるのが好ましく、前記電極のプラズマ空間形成面と端面とのなす角は、直角であるのが好ましい。
電界拡散部材の外端面と誘電部材の外端面どうしは、実質的に面一になっているのが望ましい。これによって、外端部での異常放電を確実に防止することができる。「実質的に」であるから製造・組立て上の公差程度の段差は許容される。
前記電界拡散部材と前記電極の端面との間に充填剤を充填することにしてもよい。これによって、設計上の公差等があっても電極と電界拡散部材の間に隙間が出来るのを防止でき、異常放電をより確実に防止できる。前記充填剤は、絶縁性を有しているのが好ましく、接着性を有しているのがより好ましい。また、充填剤は、前記電界拡散部材と同等以上の誘電率を有していることが好ましい。誘電率が小さすぎると、充填剤に電界が集中し、絶縁破壊を起こす場合があるからである。例えばアルミナ系やシリコン系等の接着剤が好ましい。
前記電界拡散部材の前記電極の端面を向く面に導電性の膜(端面膜)を設けることにしてもよい。
これによって、電極と電界拡散部材の間に隙間が出来たとしても、導電性膜(端面膜)のどこか一箇所が電極と接していれば、電極と導電性膜が等電位になり、電極と導電性膜との間ひいては電極と電界拡散部材との間に異常放電が起きるのを防止することができる。導電性膜は、電界拡散部材の電極を向く面の全域にわたって設けられているのが好ましい。導電性膜は、例えば、銀などの金属ペースト、ITO膜、導電性接着剤、金属蒸着膜、スパッタ、金属溶射膜、ロウ剤塗布膜等を用いるとよい。
前記誘電部材の前記電極のプラズマ形成面を向く面にも導電性の膜(主面膜)を設けることにしてもよい。
これによって、電極又は誘電部材が部分的に撓む等して隙間が形成されたとしても、電極と導電性膜(主面膜)がどこか一箇所において接触していれば電極と導電性膜を等電位に出来、電極と誘電部材との間に異常放電が起きるのを防止することができる。誘電部材の電極を向く面に微細な凹凸が形成されていた場合でも、異常放電を防止することができる。
前記導電性の主面膜の材質は、前記端面膜と同様のものを用いるとよい。
前記端面膜と主面膜の両方を設けるのが、より好ましい。すなわち、前記周縁絶縁部材の前記電極を向く面と、前記誘電部材の前記電極を向く面とに、それぞれ導電性の膜を形成するのが、より好ましい。
前記導電性の主面膜又は端面膜は、接着性を有していることが好ましい。これによって、導電性膜を電極と確実に接触させて等電位にすることができ、異常放電を確実に防止できる。また、主面膜を介して誘電部材を電極に接着でき、これにより、誘電部材の変形を防止でき、プラズマ流が不均一になるのを防止でき、処理のバラツキを防止することができる。
接着性の導電膜は、例えばエポキシ系等の接着剤に金属粉末を混入することによって構成することができる。
更に、本発明のプラズマ表面処理装置は、一対の前記電極と、これら電極の対向面すなわちプラズマ形成面にそれぞれ設けられた一対の前記誘電部材を有し、これら誘電部材が、それぞれ前記電極のプラズマ形成面より延出されるとともに互いの延出部どうしの間に互いの間隔を維持するスペーサを挟んでおり、このスペーサの前記プラズマ空間を向く内端面が、前記電極のプラズマ形成面の周縁より前記延出方向に沿って外側に配置されていることが望ましい。
これによって、スペーサの内端面付近での電界集中を緩和して異常放電を防止でき、パーティクルの発生を一層確実に防止することができる。
前記スペーサの内端面は、前記電極のプラズマ形成面の周縁より0.1〜30mm離れて配置されていることが好ましい。0.1mm以上としたのは、これより小さいとスペーサの内端面付近での電界集中があまり緩和されず、異常放電のおそれがあり、30mm以下としたのは、これより大きくすると、処理ガスの無駄が多くなるからである。より好ましくは0.5mm以上離れている。これにより、スペーサの内端面での異常放電をより確実に防止できる。
また、本発明は、処理ガスを略常圧のプラズマ空間にてプラズマ化し基材を表面処理する装置において、
前記プラズマ空間を形成するための電極と、
この電極のプラズマ空間形成面を覆う固体誘電体層としての誘電部材と、を備え、
前記誘電部材と電極の端面どうしが面一をなし、これら端面どうし間に跨るように電界拡散部材を設け、
この電界拡散部材が、少なくとも当該電界拡散部材における前記電極及び誘電部材を向く側とは逆側の部位に接する物より高い誘電率を有していることを特徴とする。
これによって、電極と誘電部材の端面どうしの境目での電界集中を緩和して異常放電を防止できる。これによって、パーティクルの発生を防止できるとともに、電力ロスを低減することができる。
本発明は、略常圧(略大気圧)でグロー放電等のプラズマ放電を起こす大気圧プラズマ放電処理に好適である。ここで、「略常圧ないしは略大気圧」とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調節の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、好ましくは、1.333×10〜10.664×10Paであり、より好ましくは、9.331×10〜10.397×10Paである。
本発明によれば、電極端部と誘電部材とのコーナー部等での異常放電を防止してパーティクルの発生を防止できるとともに電力ロスを低減することができる。
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって詳述する。
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る大気圧プラズマ処理装置Mには、一対の電極11,11が設けられている。これら電極11,11は、それぞれ平板状をなすとともに互いに前後(図1において上下)に対向して配置され、平行平板電極を構成している。なお、本発明は、かかる平行平板電極に限定されるものではなく、円筒形状や断面円弧形状等の種々の形状の電極構造に適用できる。
これら電極11,11は、ホルダ12にて保持されている。このホルダ12によって各電極11が絶縁されている。ホルダ12は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)を主原料にガラス短繊維とマイカ等を充填複合した樹脂等にて構成されている。その比誘電率は、2〜4程度である。
図1に示すように、各電極11の対向面には誘電部材13が設けられている。誘電部材13は、セラミックにて構成されている。具体的にはアルミナにて構成されている。誘電部材13は、電極11よりひとまわり大きな平板状をなし、その周縁部が電極11の対向面より延出されている(延出部13a)。
一対の誘電部材13の左右の端部どうし間にスペーサ14がそれぞれ挟まれている。スペーサ14は、誘電部材13と同様にアルミナにて構成されている。このスペーサ14によって一対の誘電部材13どうしの間隔(ひいては電極11,11どうしの間隔)が維持されている。そして、誘電部材13どうしの間にスリット状の空間10aが形成されている。上記スペーサ14によってスリット状空間10aの左右両側の内端面が画成されている。スリット状空間10a内は略大気圧になっている。
図2に示すように、一対の電極11のうち一方は電源30に接続されてホット電極になり、他方は接地されてアース電極になっている。(以下、これら電極を区別するときはホット電極に符号11Hを付し、アース電極に符号11Eを付す。)電源30からの電圧供給によってスリット状空間10a内に大気圧グロー放電が生成されるようになっている。これによって、スリット状空間10aが、プラズマ空間10aとなる。電極11の対向面すなわち誘電部材13との当接面11aは、「プラズマ形成面」を構成している。
処理ガス供給源20からガスライン21が延び、プラズマ空間10aの上端部に接続されている。これによって、プラズマ空間10aに処理ガスが導入され、プラズマ化されるようになっている。
プラズマ空間10aの下端に吹出し口10bが設けられている。この吹出し口10bからプラズマガスが吹出され、下方の被処理基材90に照射されるようになっている。これによって被処理基材90のプラズマ表面処理を行なうことができるようになっている。
図1及び図3に示すように、電極11の周端面11bと誘電部材13の延出部13aの裏面とで作るコーナー部Cには、電界拡散部材40が設けられている。電界拡散部材40は、高誘電率材料にて構成され、例えばアルミナやジルコニア等のセラミックにて構成されている。アルミナの比誘電率は、10程度であり、ジルコニアの比誘電率は、30程度であり、樹脂ホルダ12の比誘電率2〜4より十分に高い。また、耐電圧性においても優れている。
電界拡散部材40の材料は、比誘電率が5〜1500であればよい。或いは、少なくともホルダ12(当該電界拡散部材における電極11及び誘電部材13を向く側とは逆側の部位に接すべき物)より誘電率が高い材料であればよい。アルミナとジルコニアの複合セラミックを用いてもよく、他のセラミック材料を用いてもよく、セラミック以外の高誘電率材料を用いてもよい。
電界拡散部材40は、電極11の周縁に沿って環状に延びるとともに、断面四角形状をなし、電極11の周端面11bと誘電部材13の延長部13aの裏面とに密着されている。
図3に拡大して示すように、この電界拡散部材40の誘電部材密着面41と電極密着面42とのなす角43は、面取りされておらず、直角に尖っている。同様に、電極11の誘電部材当接面11a(プラズマ空間形成面)と周端面11bとのなす角11cは、面取りされておらず、直角に尖っている。これによって、コーナー部Cが電界拡散部材40にて完全に埋められ、電極11と誘電部材13と電界拡散部材40の3つの部材間に隙間が無い状態になっている。
電界拡散部材40における電極11及び誘電部材13を向く側とは逆側の部位には、ホルダ12が被せられている。ホルダ12には、電界拡散部材40を収容するための凹部12aが形成されている。
電界拡散部材40の幅w(誘電部材13の延出方向に沿う寸法)は、w≧5mmになっており、厚さt(電極11の周端面に添ってプラズマ形成面と直交する方向に沿う寸法)は、t≧2mmになっている。
電界拡散部材40の左右の外端面は、誘電部材13の左右の外端面と面一をなしている。なお、図2に示すように、電界拡散部材40の上下の外端面については、それより誘電部材13の上下の外端面が突出しているが、面一になるようにしてもよい。
上記構成の電極構造によれば、コーナー部Cを電界拡散部材40で埋めることにより、コーナー部Cにおける電界を拡散させて電界集中を緩和し、電界強度を低減することができる。これによって、コーナー部C(特に電極11の角11cの直近ポイントP1(図3))で異常放電が起きるのを防止することができる。また、電界拡散部材40と誘電部材13の外端面どうしが面一になっているので、これら部材40,13の外端部どうしの境のポイントP2においても電界集中を緩和し異常放電を防止することができる。これによって、電極11、誘電部材13、ホルダ12等がダメージを受けるのを防止できる。ひいては、パーティクルの発生を防止でき、被処理基材90が汚染されるのを防止することができ、この結果、歩留まりを高めることができる。また、異常放電の防止によって電力ロスを低減することができる。
次に本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の実施形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
電界拡散部材40の角43は、実質的に面取りが無ければよく、製造上の公差程度の丸みは許容される。すなわち、電界拡散部材40の角43は、上記第1実施形態(図3)のように面取り無しの真直角が理想であるが、実際には図4に示すように、製造上の公差等により微小なRが形成され得る。そうすると、この電界拡散部材40の角43と電極11及び誘電部材13との間に微小な隙間sが形成される。この隙間sの内部では電界強度が増大傾向になる。しかし、角43の丸みが製造上の公差程度であれば、隙間s内の異常放電を十分防止でき、問題はない。
電界拡散部材40の角43の許容可能な曲率半径は、約0.5mm以下であり、この範囲内であれば「実質的に面取り無し」と言うことができる。
例えば、全く面取りされておらず完全な直角をなす理想的な角43における電界強度が3.48×10V/mであるとした場合、この角43に曲率半径0.2mmのRを付けると、電界強度は3.98×10V/mになる。
同様に、電極11の角11cは、実質的に面取りが無ければよく、製造上の公差程度の丸みは許容される。
電極11の角11cの許容可能な曲率半径は、約0.5mm以下であり、この範囲内であれば「実質的に面取り無し」と言うことができる。
また、電界拡散部材40と誘電部材13の外端面どうしは、実質的に面一になっていればよく、図4に示すように、製造・組立て上の公差程度のギャップgは許容される。図4では製造・組立て上の公差によって電界拡散部材40の外端面が誘電部材13の外端面より引っ込んでいるが、突き出ていることもある。
電界拡散部材40と誘電部材13の外端面どうしのギャップgの許容範囲は、g=±0.2mm程度以下である。この範囲内であれば、部材40,13の外端部どうしの段差P2での異常放電を十分防止することができ、問題はない。
例えば、電界拡散部材40と誘電部材13の外端面どうしが完全に面一になった理想状態におけるこれら部材40,13の外端部どうしの境のポイントP2での電界強度が1.78×10V/mであるとした場合、電界拡散部材40の外端面を誘電部材13の外端面より0.5mmだけ引っ込ませたとすると、電界強度は2.49×10V/mになる。
電界拡散部材は、セラミック等の硬質部材だけに限定されるものではない。図5に示すように、硬質部材40に代えて、シリコン系シール剤やアルミナ系シール剤等の軟質材料40Xを用い、これをコーナー部Cに塗布することにより、電界拡散部材を構成してもよい。シリコン系シール剤の比誘電率は2〜4であり、アルミナ系シール剤の比誘電率は6〜9である。シール剤は、電極11及び誘電部材13に確実に密着させることができ、これによって、異常放電を確実に防止できる。上記製造上の公差を考慮する必要もない。
シール剤からなる電界拡散部材40Xは、大略断面三角形状をなしている。これに合わせてホルダ12の凹部12aは、斜めの切欠き状になっている。
なお、セラミック等の硬質の電界拡散部材40を図5のような断面三角形状に形成してもよい。
電界拡散部材は、誘電部材13と一体構成になっていてもよい。
すなわち、図6に示すように、誘電部材13の延出部13aには、裏側(プラズマ空間10aの形成面とは逆側)へ突出する凸部13bが設けられている。凸部13bの内端面は、電極11の周端面に密着されている。この凸部13bが、電界拡散部材40として提供されている。凸部13bの突出高さtは、2mm以上であり、電極11の厚さよりは小さい。凸部13bの幅wは5mm以上である。
この一体構造の場合、電界拡散部材40は、誘電部材13と同一材料(例えばアルミナ)にて構成され、誘電部材13と同等の比誘電率を有している。
図7に示すように、電界拡散部材40と電極11の周端面の間に軟質充填剤50を充填してもよい。これによって、電極11と電界拡散部材40の間に空気層が出来るのを防止でき、異常放電を確実に防止することができる。電界拡散部材40の製造上の公差も吸収できる。
充填剤50は、絶縁性を有するだけでなく電界拡散部材40と同等以上の誘電率を有している。このような材料としてアルミナ系接着剤(比誘電率=6〜9)が挙げられる。シリコン系接着剤(比誘電率=2〜4)を用いてもよい。その他、電界拡散部材40と同等以上の誘電率を有していればエポキシ等の樹脂系の接着剤を用いてもよい。そうすると電界拡散部材40と電極11をくっ付けることができる。
なお、図7において、電界拡散部材40は、誘電部材13の凸部13bにて構成され、誘電部材13と一体になっているが、これに代えて第1実施形態のように誘電部材13とは別体に構成してもよい。後記の図8〜図9においても同様である。
図8に示すように、電界拡散部材40の内端面(電極11を向く面42)に導電性の膜62を設けてもよい。この導電性膜62は、電界拡散部材40の内端面の全域に設ける。これによって、プラズマ処理時のクーロン力等によって電極11と電界拡散部材40の間に隙間が出来たとしても、膜62のどこか一箇所が電極11と接していれば、電極11と膜62が等電位になる。この結果、電極11と電界拡散部材40との間に異常放電が起きるのを防止することができる。
膜62は、銀などの金属ペースト、ITO膜、導電性接着剤、金属蒸着膜、スパッタ、金属溶射膜、ロウ剤塗布膜等にて構成されており、好ましくは導電性接着剤にて構成されている。これによって、導電性膜62を電極11の端面に接着させることができ、異常放電を一層確実に防止できる。
図9に示すように、誘電部材13の裏面(電極11のプラズマ形成面11aとの当接面)にも導電性の膜61を設けることにしてもよい。この膜61は、上記電界拡散部材40の内端面の膜62と同様の材質によって構成し、誘電部材13の裏面の全域に設ける。これによって、プラズマ処理時のクーロン力等によって電極11又は誘電部材13が部分的に撓んで隙間が形成されたとしても、どこか一箇所において電極11と膜61,62が接触していれば、電極11と膜61,62を等電位にすることができ、電極11と電界拡散部材40との間に加えて電極11と誘電部材13との間においても異常放電が起きるのを防止することができる。また、誘電部材13の電極11を向く面に微細な凹凸が形成されていた場合でも、異常放電を防止することができる。
さらに、膜61を導電性接着剤で構成すれば、この膜61を介して誘電部材13を電極11に接着でき、誘電部材13の変形を防止することができる。これにより、プラズマ空間10aにおけるプラズマ流が不均一になるのを防止でき、ひいては処理のバラツキを防止することができる。
なお、図9では、誘電部材13の裏面の膜61に加えて、電界拡散部材40の内端面にも膜62が設けられているが、膜62を省略し、膜61だけを設けることにしてもよい。
図10の実施形態では、スペーサ14が、誘電部材13の延出部13aどうし間だけに配置されている。スペーサ14の内端面は、電極11の角11cより外側に位置されている。これによって、スペーサ14の内端面付近での電界集中を低減して異常放電を防止することができる。この結果、スペーサ14の損傷によるパーティクル発生を防止することができる。
スペーサ14の内端面と電極11の角11cとの離間距離Lは、好ましくはL=0.1〜30mmとし、より好ましくはL=0.5mm以上にする。これにより、スペーサ14の内端面での異常放電を確実に防止できる。
図11に示すように、一方の電極11(例えばアース電極11E)の角11cが他の電極11(例えばホット電極11H)より突出している場合、突出する側の電極11Eの角11cよりスペーサ14が外側に位置するようにする。そして、スペーサ14の内端面と突出側の電極11Eの角11cとの離間距離Lを、好ましくはL=0.1〜30mmとし、より好ましくはL=0.5mm以上にする。
この場合、引っ込んでいる側の電極11Hの角11c付近にかかる電界強度が、突出側の電極11Eの角11c付近の電界強度より大きくなるが、電界拡散部材40を設けることによって、引っ込んでいる側の角11cは勿論、突出側の角11cにおいても異常放電を十分に防止することができる。
図12に示す実施形態では、誘電部材13が電極11より突出されておらず、電極11と誘電部材13の端面が面一になっている。更に、一対の電極11,11及び一対の誘電部材13,13並びにスペーサ14の端面どうしが互いに面一になっている。電界拡散部材40は、これら面一をなす部材11,13,14,13,11の端面どうし間に跨り、これら端面に密着されている。
この電界拡散部材40によって、面一部材11,13,14,13,11の端部付近での電界を拡散させることができる。特に電極11と誘電部材13の当接面の境付近のポイントP3での電界集中を緩和し、電界強度を低減することができる。これによって、上記境付近のポイントP3で異常放電が起きるのを防止することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をなすことができる。
例えば、電界拡散部材40の断面形状及び大きさは種々選定できる。これに合わせて、誘電率の設定範囲も異常放電を阻止可能なように調節する。
上記実施形態のプラズマ処理は、基材を一対の電極間のプラズマ空間の外に配置し、これに向けてプラズマガスを吹付ける所謂リモート式であったが、本発明は、基材を一対の電極間のプラズマ空間の内部に配置して処理する所謂ダイレクト式にも適用可能である。
この発明は、例えば半導体基材の洗浄、表面改質、成膜等の表面処理に適用可能である。
本発明の第1実施形態に係る大気圧プラズマ処理装置の電極構造の平面図である。 図1のII−II線に沿う前記大気圧プラズマ処理装置の縦断面図である。 図1の電極構造の要部を拡大して示す平面図である。 図3において製造上等の公差を考慮した平面図である。 前記電極構造の変形例を示す平面図である。 前記電極構造の変形例を示す平面図である。 前記電極構造の変形例を示す平面図である。 前記電極構造の変形例を示す平面図である。 前記電極構造の変形例を示す平面図である。 前記電極構造の変形例を示す平面図である。 前記電極構造の変形例を示す平面図である。 前記電極構造の変形例を示す平面図である。 (a)〜(e)は、本発明をなす過程で行なった電界強度のシミュレーションに適用した電極構造の平面図である。 高誘電率材料の比誘電率に対する電極の角での電界強度と高誘電率材料の外端部での電界強度を示すグラフである。
符号の説明
M 大気圧プラズマ処理装置
C コーナー部
10a プラズマ空間
10b 吹出し口
11 電極
11a 電極の誘電部材当接面(プラズマ空間形成面)
11b 電極の端面
11c 電極の角
12 ホルダ(電界拡散部材の逆側部位に接すべき物)
13 誘電部材
13a 延出部
13b 凸部(電界拡散部材)
14 スペーサ
20 処理ガス供給源
21 ガスライン
30 電源
40,40X 電界拡散部材
41 電界拡散部材の誘電部材密着面
42 電界拡散部材の電極密着面(電極を向く内端面)
43 電界拡散部材の角
50 軟性の充填剤
61 誘電部材の裏面の導電性膜
62 電界拡散部材の内端面の導電性膜
90 被処理基材

Claims (15)

  1. 処理ガスを略常圧のプラズマ空間にてプラズマ化し基材を表面処理する装置において、
    前記プラズマ空間を形成するための電極と、
    この電極のプラズマ空間形成面を覆う固体誘電体層としての誘電部材と、を備え、
    前記誘電部材が前記電極のプラズマ空間形成面より延出する延出部を有し、この延出部と前記電極の端面とで作るコーナー部を埋めるようにして電界拡散部材が設けられ、
    この電界拡散部材が、前記コーナー部での異常放電を阻止する程度に電界を拡散可能な高誘電率を有していることを特徴とするプラズマ表面処理装置の電極構造。
  2. 前記電極が樹脂製のホルダにて保持されており、前記電界拡散部材の誘電率が、少なくとも前記ホルダの誘電率より高いことを特徴とする請求項1に記載の電極構造。
  3. 前記電界拡散部材の比誘電率εrが、εr=5〜1500であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極構造。
  4. 前記電界拡散部材が、アルミナにて断面四角形状に形成され、前記誘電部材の延出方向に沿う寸法が5mm以上であり、前記電極の端面に添って前記プラズマ形成面と直交する方向に沿う寸法が2mm以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電極構造。
  5. 前記誘電部材の延出部には前記電極の端面に添うように突出する凸部が一体に設けられ、この凸部が、前記電界拡散部材として提供されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電極構造。
  6. 前記電界拡散部材が、前記誘電部材の延出部に密着する誘電部材密着面と、前記電極の端面に密着する電極密着面とを有していること特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電極構造。
  7. 前記電界拡散部材の誘電部材密着面と電極密着面とのなす角が、実質的に面取りされていないことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の電極構造。
  8. 前記電極のプラズマ空間形成面と端面とのなす角が、実質的に面取りされていないことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の電極構造。
  9. 前記電界拡散部材と前記誘電部材の外端面どうしが、実質的に面一になっていることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の電極構造。
  10. 前記電界拡散部材と前記電極の端面との間に充填剤を充填したことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の電極構造。
  11. 前記充填剤が、前記電界拡散部材と同等以上の誘電率を有していることを特徴とする請求項10に記載の電極構造。
  12. 前記電界拡散部材の前記電極の端面を向く面に導電性の膜を設けたことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の電極構造。
  13. 前記誘電部材の前記電極のプラズマ形成面を向く面にも導電性の膜を設けたことを特徴とする請求項12に記載の電極構造。
  14. 前記導電性の膜が、接着性を有していることを特徴とする請求項11又は12に記載の電極構造。
  15. 処理ガスを略常圧のプラズマ空間にてプラズマ化し基材を表面処理する装置において、
    前記プラズマ空間を形成するための電極と、
    この電極のプラズマ空間形成面を覆う固体誘電体層としての誘電部材と、を備え、
    前記誘電部材と電極の端面どうしが面一をなし、これら端面どうし間に跨るように電界拡散部材を設け、
    この電界拡散部材が、前記誘電部材と電極の境目での異常放電を阻止する程度に電界を拡散可能な高誘電率を有していることを特徴とするプラズマ表面処理装置の電極構造。
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JP2012217761A (ja) * 2011-04-13 2012-11-12 Hitachi Ltd プラズマ滅菌装置
JP2017010617A (ja) * 2015-06-16 2017-01-12 国立大学法人名古屋大学 大気圧プラズマ照射装置

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