JP2006257461A - 高張力熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

高張力熱延鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 製造条件、特に、熱延条件の変動による材質変化の小さい高張力熱延鋼板の製造方法を提案する。
【解決手段】 フェライト組織を主相とする高張力熱延鋼板の製造方法において、熱間仕上圧延終了後の鋼板を圧延終了温度から巻取温度まで冷却するに際し、予め求めた上記鋼板の成分系におけるCCT図のフェライト変態開始温度が冷却速度に依存して変化することのないフェライト組織安定領域を通過するよう冷却することを特徴とする高張力熱延鋼板の製造方法。
【選択図】 図5

Description

本発明は、高張力熱延鋼板の製造方法に関し、特に、ラインパイプ用の電縫鋼管等の素材に用いて好適な、コイル長手方向の材質変動の小さい高張力熱延鋼板の製造方法に関するものである。
ラインパイプに用いられている電縫鋼管等の素材としては、高張力熱延鋼板が主に用いられている。従来、熱延鋼板を高強度化する手段としては、合金元素を添加して固溶強化する方法が一般的であった。しかし、この方法は、多量の合金元素の添加が必要であることから、製造コストの上昇や低温靭性の低下を招くという問題がある。
そこで、他の高強度化の手段として、合金添加量を低減して低合金化した鋼を熱間圧延した後、加速冷却して低温変態相を生成させて変態強化する方法や、Nb,Ti,V等の炭窒化物形成元素を添加して熱間圧延後に炭窒化物を析出させ、析出強化する方法、あるいはこれらの技術を併用して強化する方法などが開発されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、上記技術で製造される熱延鋼板は、製造条件、特に熱延条件の変動による影響を受け易く、材質変動が大きいという問題がある。そのため、熱延コイルの端部で測定した強度試験では基準を満たしていても、これを電縫鋼管等の製品に加工後、強度試験を行った場合には、大部分は基準をクリアするものの、基準値を満たさない部分が発生することがあった。
特開平10−298645号公報
上記問題点に対しては、熱延条件を厳しく管理することや、材質の変動を予測し、余裕をもって基準を満たすように合金添加元素を増やす成分設計が行われている。しかし、熱延条件を単に厳しくするだけでは、材質変動を抑制するには限界があり、また、生産性の低下を招くことにもなる。一方、合金元素の添加量の増加は、製造コストの上昇や靭性の低下を招くため、好ましくない。
そこで、本発明の目的は、従来技術が抱える上記問題点を解決し、製造条件、特に、熱延条件の変動による材質変化の小さい高張力熱延鋼板の製造方法を提案することにある。
発明者らは、ラインパイプ用高張力熱延鋼板における長手方向の材質変動の原因を究明するため、熱間圧延後の鋼板が冷却過程で起こす変態挙動と材質との関係について詳細な調査を行った。その結果、フェライト組織を主体とする高張力熱延鋼板の場合には、フェライト変態開始温度やフェライト粒径が熱間圧延後の冷却速度に依存することなく一定であるフェライト組織安定領域が存在すること、そして、上記フェライト組織安定領域を通過するよう熱間圧延後の鋼板を冷却してやれば、材質変動の小さい高張力熱延鋼板を製造し得ること見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、フェライト組織を主相とする高張力熱延鋼板の製造方法において、熱間仕上圧延終了後の鋼板を巻取温度まで冷却するに際し、CCT図のフェライト組織安定領域を通過するように冷却することを特徴とする高張力熱延鋼板の製造方法である。
本発明における上記フェライト組織安定領域は、CCT図のフェライト変態開始曲線上において、フェライト変態開始温度およびフェライト粒径が冷却速度に依存して変化することのない領域であることを特徴とする。
本発明における上記鋼板は、C:0.01〜0.20mass%、Si:0.05〜0.5mass%、Mn:0.5〜2.5mass%、P:0.030mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.050mass%以下、Nb:0.020〜0.060mass%、N:0.0070mass%以下、O:0.0060mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するものであることを特徴とする。
また、本発明における上記鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Mo:0.4mass%以下、Ca:0.0050mass%以下、Ti:0.005〜0.1mass%、Cu:0.5mass%以下、Ni:1.0mass%以下およびV:0.15mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする。
本発明によれば、新しい製造ラインの建設や設備の増強を行うことなく、既存の設備で安価に、圧延方向で材質変動の小さい高張力熱延鋼板を製造することができるので、本発明の熱延鋼板を素材とするラインパイプは、材質が安定し、製品不良率を低減することができる。また、本発明によれば、素材鋼板の合金添加量の低減が可能となる他、特別な熱延条件の規制も必要がないので、製造コストの低減にも寄与する。
本発明に契機となった実験について説明する。
発明者らは、コイル長手方向の材質変動が比較的大きい、C:0.16mass%、Si:0.2mass%、Mn:1.1mass%、Nb:0.03mass%の成分組成を有する中炭系の熱延鋼板Aを対象として、材質に及ぼす熱延条件の影響を調査した。材質調査は、熱延鋼板の圧延長手方向数箇所からサンプルを採取し、圧延方向に対して直角方向(C方向)の引張試験を行い、降伏応力(YS)および引張強度(TS)を測定した。その結果、図1に示すように、熱延鋼板Aでは、CTの上昇に伴い、YSおよびTSが低下する傾向が認められた。
そこで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、巻取温度(CT)による板厚中心部の鋼板組織変化を調べた。その結果、図2の写真に示すように、熱延鋼板Aの組織は、いずれのCTにおいても、主相であるフェライトと、第2相のパーライトおよびベイナイトからなるが、フェライト粒径は、CTが高いほど大きく成長していることがわかった(図3参照)。これから、熱延鋼板Aにおける、CTによる材質変動の原因は、フェライト粒径が変化したためであることがわかった。
そこでさらに、巻取温度が熱延鋼板の材質に及ぼす影響を調べるために、熱延鋼板Aから、8mmφ×12mmhの試験片を切り出し、この試験片に、サーメックマスター(熱間加工再現試験装置)を用いて、図4に示したように、1200℃に加熱後、950℃で30%の圧縮加工を行い、引き続き、730〜830℃の温度(熱間仕上圧延終了温度(FDT)に相当する温度)で50%の圧縮加工をで行い、その後、5〜30℃/sの冷却速度で試験片を冷却して変態挙動を調べた。そして、この結果をもとに、連続冷却変態図(CCT図)を作成した。
上記のようにして得た熱延鋼板AのCCT図の中から、FDT相当温度が830℃と780℃のときのフェライト変態開始温度曲線を図5に示した。この図から、熱延鋼板Aの場合、FDT相当温度が830℃と780℃とでは、CCT図におけるフェライト変態開始温度曲線はほとんど違いはなく、いずれもS字を横方向に伸長させたような形状をしており、しかも急速冷却側および緩速冷却側の両側に、冷却速度によらず変態開始温度がほぼ一定となる領域があり、その中間に、冷却速度によってフェライト変態開始温度が大きく変化する遷移領域があることが明らかとなった。
また、図6は、熱間加工後の冷却速度がフェライト変態開始温度およびフェライト粒径に及ぼす影響を示したものである。図6から、急速冷却側のフェライト変態開始温度が一定となる領域では、フェライト粒径も冷却速度によらず一定となる、つまりフェライト組織が冷却速度によらず安定していることがわかる。以降、この領域を「フェライト組織安定領域」と称することとする。これは、熱間圧延後の熱延鋼板を、フェライト組織安定領域を通過するよう冷却した場合には、フェライト組織が安定化して材質の変動が小さくなるが、フェライト組織安定領域よりも緩速冷却した場合には、フェライト組織が不安定化し、材質変動が大きくなることを意味する。
一方、熱間圧延後の熱延鋼板Aは、仕上圧延機出側のランナウトテーブルに設置された冷却ゾーンの前段において、10℃/s以上の冷却速度で巻取温度付近まで急速冷却された後、冷却ゾーンの後段において所定の巻取温度まで緩速冷却され、その後、コイルに巻き取られる。
そこで、FDT相当温度を830℃と780℃とした場合において、冷却ゾーン前段の冷却速度を15℃/sと20℃/sのしたときの冷却曲線を、図5のCCT図に重ねて示した。この図5から、FDT相当温度が780℃の場合には、前段の冷却速度が15℃/s,20℃/sいずれでも、冷却曲線が上記フェライト組織安定領域を通過しているのに対し、FDT相当温度が830℃の場合には、冷却速度が20℃/sではフェライト組織安定領域を通過しているが、15℃/sでは、フェライト組織安定領域を外れてフェライト組織が不安定な遷移領域を通過していることがわかる。
以上のことから、熱延鋼板Aにおける材質変動の原因は、熱間圧延後、仕上圧延終了温度(FDT)から巻取温度(CT)まで冷却される際の冷却曲線が、熱延仕上温度や冷却条件(速度)の変動によって、フェライト組織が安定な領域を通過したり、不安定な領域を通過したりしているためであることが明らかとなった。
発明者らは、CCT図におけるフェライト組織安定領域が、上記熱延鋼板A以外の成分系の熱延鋼板においても出現するかどうか確認するために、C:0.04mass%、Si:0.15mass%、Mn:1.0mass%、Nb:0.045mass%、Mo:0.2mass%の成分組成を有する低炭系の熱延鋼板Bを対象として、熱延鋼板Aと同様の調査を行った。その結果、熱延鋼板Bにおいても、フェライト組織安定領域が存在しており、熱間圧延後の冷却曲線を、この領域を通過させれば、安定したフェライト組織が得られることが判明した。
以上の結果、フェライト組織を主相とする熱延鋼板を製造するにあたっては、熱間圧延後の鋼板を冷却する際の冷却曲線を、CCT図上における上記フェライト組織安定領域を通過するよう冷却すれば、仕上圧延終了温度やその後の冷却速度の変動に影響されることなく、フェライト粒径が一定で材質変動の小さい熱延鋼板を製造できることがあきらかとなった。なお、上記知見は、全く新規な知見である。
次に、本発明が対象としている高張力熱延鋼板について説明する。
本発明によって製造される熱延鋼板は、フェライト相を主相とする熱延鋼板であることが必要である。フェライト相を主相とすることによって初めて、本発明の効果、即ち、CCT図におけるフェライト組織安定領域を通過させることによって、製造条件の変動を受けることなく、材質変動の少ない熱延鋼板を得ることができるからである。なお、フェライト相以外の第2相は、主としてパーラートやベイナイトであることが好ましい。ただし、マルテンサイトは、鋼板強度を大きく上昇させて伸びを劣化させるだけでなく、造管性も著しく低下させるので、好ましくない。
次に、本発明により製造される熱延鋼板の成分組成を限定する理由について説明する。
C:0.01〜0.20mass%
Cは、強度を確保するのに必要な元素であり、その効果を発揮させるためには、0.01mass%以上含有することが好ましい。一方、0.20mass%を超えて含有すると、溶接性や靭性の劣化を招く。よって、Cは、0.01〜0.20mass%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、C:0.04〜0.16mass%の範囲である。
Si:0.05〜0.5mass%
Siは、脱酸剤として添加する元素であり、その効果を発揮させるためには、0.05mass%以上含有することが好ましい。一方、0.5mass%を超えて含有すると、電縫溶接時に、Mn−Si系酸化物の介在物を形成して溶接部の靭性を劣化させる。よって、Siは、0.05〜0.5mass%の範囲が好ましい。より好ましくは、Si:0.1〜0.25mass%の範囲である。
Mn:0.5〜2.5mass%
Mnは、強度の向上に有効な元素であり、その効果を発揮させるためには、0.5mass%以上含有することが好ましい。一方、2.5mass%を超えて含有すると、Cと同様、靭性および溶接性が劣化するという問題がある。よって、Mnは、0.5〜2.5mass%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、Mn:0.5〜1.5mass%の範囲である。
P:0.030mass%以下
Pは、鋼の靭性に有害な元素であり、0.030mass%を超えて含有すると、その影響が顕著となる。よって、Pは、0.030mass%以下とすることが好ましい。より好ましくは、P:0.020mass%以下である。
S:0.010mass%以下
Sは、Pと同様、鋼の靭性に有害な元素であり、0.010mass%を超えて含有すると、その影響が顕著となる。よって、Sは、0.010mass%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、S:0.005mass%以下である。
Nb:0.020〜0.060mass%
Nbは、析出強化作用を有するため、鋼の高強度化に有効な元素であり、その効果を発揮させるためには、0.020mass%以上含有することが好ましい。一方、0.060mass%を超えて含有すると、溶接性が劣化するという問題がある。よって、Nbは、0.020〜0.060mass%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、Nb:0.030〜0.045mass%の範囲である。
Al:0.050mass%以下
Alは、脱酸元素として添加する成分である。しかし、0.050mass%を超えて含有すると、アルミナ系介在物を生成して鋼の靭性を劣化させるという問題がある。よって、Alは、0.050mass%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、Al:0.035mass%以下である。
N:0.0070mass%以下
Nは、不純物として混入する元素であり、0.0070mass%を超えて含有すると、靭性劣化を招く。よって、Nは、0.0070mass%以下とすることが好ましい。より好ましくは、N:0.0050mass%以下である。
O:0.0060mass%以下
Oは、酸化物系介在物として鋼中に存在し、靭性等の機械的性質や溶接性、耐食性等の劣化を招くので、0.0060mass%以下にすることが好ましい。より好ましくは、0.0050mass%以下である。
本発明の熱延鋼板は、上記成分以外に、必要に応じて、Mo,Ca,Ti,Cu,NiおよびVのうちから選ばれる1種または2種以上を下記の範囲で添加することができる。
Mo:0.4mass%以下
Moは、強度および靭性の向上に有効な元素である。しかし、0.4mass%を超えて添加しても、その効果が飽和するので、0.4mass%の範囲で添加することができる。
Ca:0.0050mass%以下
Caは、MnS系介在物を形態制御し無害化するのに有効な元素である。しかし、0.0050mass%を超えて含有すると、靭性の劣化を招く。よって、Caは、0.0050mass%以下の範囲で添加することができる。
Ti:0.005〜0.1mass%
Tiは、析出強化作用を有するため、鋼の高強度化に有効な元素であり、また、鋼の靭性を向上する効果もある。この効果は、0.005mass%以上で出現する。一方、0.1mass%を超えて含有すると、溶接性が劣化する。よって、Tiは、0.005〜0.1mass%の範囲で添加することができる。
Cu:0.5mass%以下
Cuは、焼入れ性を向上する作用を有し、また、鋼を高強度化する上でも有効な元素である。しかし、0.5mass%を超えて含有すると、溶接性および靭性の劣化を招く。よって、Cuは、0.5mass%以下の範囲で添加することができる。
Ni:1.0mass%以下
Niは、焼入れ性を向上する作用を有し、また、鋼を高強度化する上でも有効な元素である。しかし、1.0mass%を超えて含有すると、溶接性および靭性の劣化を招く。よって、Niは、1.0mass%以下の範囲で添加することができる。
V:0.15mass%以下
Vは、析出強化作用を有するため、鋼の高強度化に有効な元素である。しかし、0.15mass%を超えて含有すると、溶接性が劣化する。よって、Vは、0.15mass%以下の範囲で添加することができる。
本発明の熱延鋼板は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなるものである。
次に、本発明に係る熱延鋼板の製造方法について説明する。
熱延鋼板素材
本発明において用いる熱延鋼板の素材は、上記好適な成分組成を有する鋼を、転炉−脱ガス処理等の2次精錬を経る通常公知の方法で溶製し、鋼スラブとしたものであることが好ましい。鋼スラブの製造方法としては、鋳造−分塊圧延法、連続鋳造法のいずれでもよいが、偏析が少なく、品質が安定している連続鋳造法がより好ましい。
熱間圧延工程
鋼スラブの再加熱温度は、通常公知の温度範囲でよく、1100〜1300℃の温度範囲であることがより好ましい。1100℃未満では、例えば、鋳造時に生成したNbC等の粗大炭化物を固溶することができないので、強度確保の点からは好ましくない。一方、1300℃超では、オーステナイト粒が粗大化して、靭性の劣化を招いたり、加熱時のスケール生成量が増加して表面性状の劣化を招く虞がある。再加熱したスラブは、必要に応じて、幅プレスあるいは幅圧下圧延を行った後、通常公知の方法で、粗圧延を行いシートバーとし、その後、熱間仕上圧延を行い所定寸法の熱延鋼板とする。
熱間圧延における仕上圧延終了温度(FDT)は、通常公知の温度で構わないが、760〜840℃の範囲とすることが好ましい。FDTが840℃を超えると、結晶粒が大きくなるため好ましくない。また、760℃未満では、圧延中に変態を起こしてしまう虞があるほか、鋼板の靭性低下を招くからである。
また、既に説明したように、FDTが高いことは、熱延鋼板の冷却曲線を、フェライト組織安定領域を通過させために必要な冷却速度が大きくなることを意味する。そのため、板厚が厚い熱延鋼板では、上記冷却速度を確保することができる虞があるので、熱延板厚が厚い場合には、仕上圧延終了温度(FDT)は低めの方が好ましい。しかし、あまりに低下し過ぎると、熱間圧延後にフェライト変態が十分に進行せずに加工歪が残留した微細な展伸フェライトとなり、材質劣化を招くので好ましくない。このような点から、より好ましい仕上圧延終了温度(FDT)は760〜830℃の範囲である。
熱延後の冷却
熱間仕上圧延後の冷却は、本発明において最も重要な工程であり、熱延鋼板の材質変動を小さく抑えるためには、熱間圧延後の鋼板の冷却曲線が、CCT図のフェライト組織安定領域を通過するよう冷却することが必要である。すなわち、熱間圧延終了後の鋼板を、仕上圧延終了温度(FDT)から巻取温度(CT)まで冷却するに際しては、予め求めたCCT図において、フェライト変態開始温度とフェライト粒径の大きさが冷却速度に依存することなく一定となるフェライト組織安定領域を通過するように冷却を制御することが必要である。なお、上記CCT図は、熱間圧延後の鋼板の変態挙動は、圧延条件の影響を大きく受けるため、先述したように、サーメックマスター(熱間加工再現試験装置)を用いて、熱間圧延を模した温度と加工歪を付与して求めることが好ましい。
フェライト組織安定領域を通過させるための冷却速度は、鋼板の成分組成や仕上圧延終了温度、冷却ゾーンにおける冷却パターンなどによっても変化するが、本発明の上記好適な成分組成を有する熱延鋼板の場合には、仕上圧延終了温度が830℃のときは20℃/s以上、仕上圧延温度が780℃のときは15℃/s以上である。なお、冷却速度を高め過ぎた場合、第2相としてマルテンサイト相が出現するので、急冷速度の上限は50℃/s程度とすることが好ましい。
巻取温度
熱間圧延終了後、冷却ゾーン前段においてフェライト組織安定領域を通過するよう急速冷却された熱延鋼板は、その後、急速冷却を停止し、所定の巻取温度まで緩冷却してコイルに巻き取る。この時の巻取温度は、上記フェライト組織安定領域におけるフェライト変態開始温度以下でかつマルテンサイト変態開始温度以上の温度であることが好ましい。本発明の上記好適な成分組成を有する熱延鋼板における上記温度範囲は、670℃以下450℃以上である。
表1に示す、中炭系および低炭系の2種類の鋼を通常公知の方法で溶製し、連続鋳造法により鋼スラブとした。この鋼スラブを熱間圧延するに先立って、該スラブから試験片を採取し、サーメックマスターを用いてCCT図を求めた結果、上記鋼の冷却曲線がフェライト組織安定領域を通過するための冷却速度はいずれも、仕上圧延終了温度(FDT)が830℃の場合には、20℃/s以上、仕上圧延終了温度(FDT)が780℃の場合には、15℃/s以上であった。この結果に基き、上記鋼スラブを、1200℃に再加熱した後、表2に示した条件で熱間圧延を行い、熱間圧延後の冷却を、本発明に従い、冷却曲線がフェライト組織安定領域を通過するよう冷却速度を制御した冷却条件(No.1,2,4および5)と、巻取温度を規定しただけで、冷却速度については規制を設けない従来方法(No.3および6)の2条件で行い、巻き取って熱延鋼板とした。
Figure 2006257461
Figure 2006257461
上記のようにして製造した高張力熱延鋼板のコイル長手方向の先端部、中間部および後端部から、材質測定用サンプルを採取し、圧延方向に対して直角方向に、平行部長さ:58mm、R:26mm、平行部幅:38.2mm、標点間距離:50.8mmの試験片を切り出して引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強度(TS)を測定した。その結果から、各冷却条件におけるYS,TSの最大値、最小値、平均値およびバラツキの大きさを比較した。なお、バラツキの大きさは、YSとTSの最大値と最小値の差とした。
上記引張試験の結果を、表2中に併記して示した。この結果から、本発明に従って製造した熱延鋼板は、従来法で製造した熱延鋼板と比較して、YS,TSの最大値に変化はないが、最小値が引き上げられた結果、平均値が上昇すると共に、バラツキが従来法と比較して1/2以下に低減している。以上の結果から、本発明は、熱延鋼板の材質変動の抑制に、極めて有効であることが確認された。
熱延鋼板の材質(YS,TS)に及ぼす巻取温度の影響を示すグラフである。 熱延鋼板の組織に及ぼす巻取温度の影響を示す組織写真である。 巻取温度とフェライト粒径との関係を示すグラフである。 サーメックマスターで付与する熱間加工条件を説明する図である。 サーメックマスターにより求めたCCT図(フェライト変態開始曲線)である。 熱延後の鋼板冷却速度がフェライト変態開始温度およびフェライト粒径に及ぼす影響を示すグラフである。

Claims (4)

  1. フェライト組織を主相とする高張力熱延鋼板の製造方法において、熱間仕上圧延終了後の鋼板を巻取温度まで冷却するに際し、CCT図のフェライト組織安定領域を通過するように冷却することを特徴とする高張力熱延鋼板の製造方法。
  2. 上記フェライト組織安定領域は、CCT図のフェライト変態開始曲線上において、フェライト変態開始温度およびフェライト粒径が冷却速度に依存して変化することのない領域であることを特徴とする請求項1に記載の高張力熱延鋼板の製造方法。
  3. 上記鋼板は、C:0.01〜0.20mass%、Si:0.05〜0.5mass%、Mn:0.5〜2.5mass%、P:0.030mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.050mass%以下、Nb:0.020〜0.060mass%、N:0.0070mass%以下、O:0.0060mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の高張力熱延鋼板の製造方法。
  4. 上記鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Mo:0.4mass%以下、Ca:0.0050mass%以下、Ti:0.005〜0.1mass%、Cu:0.5mass%以下、Ni:1.0mass%以下およびV:0.15mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の高張力熱延鋼板の製造方法。
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