JP2006248022A - 平版印刷版用支持体の製造方法 - Google Patents

平版印刷版用支持体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】平版印刷版としたときに耐汚れ性および耐刷性に優れる平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体が得られる平版印刷版用支持体の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム板416に、以下の処理を任意の順序で行う平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法:(1)塩酸濃度5g/L〜12g/L未満、および、塩化アルミニウムイオン濃度1g/L〜13g/Lを含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理工程(2)塩酸濃度12g/L〜18g/L、および、塩化アルミニウムイオン濃度10g/L〜21g/Lを含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理工程。
【選択図】図4

Description

本発明は、平版印刷版用支持体の製造方法に関する。詳しくは、耐汚れ性および耐刷性に優れる平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体の製造方法に関する。
平版印刷版に用いられる平版印刷版用アルミニウム支持体(以下、単に「平版印刷版用支持体」ともいう。)の表面は、非画像部を担うように使用されるために親水性および保水性が優れていることや、その上に形成される画像記録層との密着性が優れていることなど、相反する種々の性能が要求される。平版印刷版用支持体は、表面の親水性が低すぎると、印刷時に非画像部にインキが付着するようになり、ブランケット胴の汚れ、ひいてはいわゆる地汚れが発生する。すなわち、耐汚れ性が悪くなる。また、画像記録層との密着性が低すぎると、画像記録層がはがれやすくなり、印刷枚数が多い場合の耐久性(耐刷性)が悪化する。
そこで、耐汚れ性や、耐刷性などの各種性能を向上させるために、平版印刷版用支持体の表面には、各種粗面化処理が施され、凹凸が形成される。
粗面化処理の方法としては、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理、化学的粗面化処理(化学的エッチング)、これらを組み合わせた方法が知られている。
中でも、電気化学的粗面化処理において、酸性溶液を含有する水溶液中でアルミニウム板に交流を流す方法は、微細な凹凸をアルミニウム板表面に生成させることができる点で、広く用いられている。
例えば、特許文献1には、アルミニウム板またはアルミニウム合金板を、1〜3%塩酸に硝酸を添加してなる溶液中において10A/dmをこえた電流密度で交流電解し粗面とする工程と、アルカリ水溶液中で軽度のエッチングを行う工程と、陽極酸化処理をして厚さ5μ以下の陽極酸化皮膜を形成させる工程とを包含するオフセット印刷素板の製造法について記載されている。
特許文献2では、塩化アルミニウムイオンを加えた比較的高い濃度の硫酸塩イオンを含む電解液、アルミニウムイオンを含む塩酸電解液、アルミニウムイオンを含む硝酸電解液での電解粗面化およびこれらの工程を組み合わせる密着性・湿潤保水性に優れたアルミニウム支持体が記載されている。
また、ブランケットの汚れが確認されると、印刷機を停止して非画像部に付着したインキを洗浄するとともに、湿し水の供給量を増して版面の汚れを防止する。洗浄は、版面全体を、即ち、画像部と非画像部とをともに、酸性またはアルカリ性のプレートクリーナ液を適当量、スポンジに湿らせて拭くことにより行う。プレートクリーナ液で版面全体を洗浄すると、クリーナ液によって記録層が膨潤して記録層の強度が低下したり、クリーナ液が記録層と支持体との間に浸透して両者の密着性が低下したりするために、版面を洗浄した後に大部数の印刷を行うと、記録層が磨耗したり、はく離したりしやすくなる。したがって、平版印刷版は、プレートクリーナ液で版面を洗浄した後においても耐刷性にも優れるのが好ましい。
特公昭48−28123号公報 特開平5−4466号公報
しかしながら、上述したような塩酸を含有する水溶液中での交流電解を用いた従来の方法により粗面化処理された平版印刷版用支持体を用いて作製された平版印刷版は、耐刷性および耐汚れ性を十分に満たすことが困難であった。また耐クリーナー性についても不充分であった。
したがって、本発明は、特定の組成の、組成の異なる塩酸を主体とする水溶液での電解粗面化処理を組み合わせて行い、耐汚れ性、耐刷性に優れる平版印刷版原版を得ることができる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、アルミニウム板に、少なくとも、塩酸濃度およびアルミニウムイオン濃度の異なる、特定の濃度範囲の水溶液を用いる少なくとも2回の電気化学的粗面化処理工程を行えば、得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版が、耐汚れ性、耐刷性および耐クリーナー性のいずれにも優れたものになることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供する。
[1]アルミニウム板に、少なくとも、以下の処理を任意の順序で行う平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法:
(1)塩酸濃度5g/L〜12g/L未満、および、アルミニウムイオン濃度1g/L〜13g/Lを含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理工程
(2)塩酸濃度12g/L〜18g/L、および、アルミニウムイオン濃度10g/L〜21g/Lを含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理工程
[2]上記[1]で粗面化されたアルミニウム支持体を、さらに、酸性水溶液中でアルミニウム板が陽極時の電気量が10〜100C/dm2の電気量で交流を用いて電気化学的粗面化処理工程を行う[1]に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
[3]前記(1)の電気化学的粗面化処理工程、と前記(2)の電気化学的粗面化処理工程の間に、アルカリ水溶液中でのエッチング処理を行うことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
[4]前記(1)の電気化学的粗面化処理工程、と前記(2)の電気化学的粗面化処理工程の間に、酸性水溶液中でのデスマット処理を行うことを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
[5]前記酸性水溶液が、塩酸を含有する水溶液であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法で製造された平版印刷版用アルミニウム支持体。
以下に説明するように、本発明によれば、平版印刷版としたときに耐汚れ性および耐刷性に優れる平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体が得られる。また、耐クリーナー性にも優れる平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体が得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体の製造方法]
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法には公知のアルミニウム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
本明細書においては、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1052、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
また、使用済みアルミニウム飲料缶を溶解させたUBC(Used Beverage Can)地金を圧延して得られるアルミニウム板を用いることもできる。
このアルミニウム板において、Cu含有量は、0.00質量%以上であるのが好ましく、更には0.01質量%以上、0.02質量%以上であるのがより好ましく、また、0.15質量%以下であるのが好ましく、更には0.11質量%以下であるのが好ましく、0.03質量%以下であるのがより好ましい。特に好ましいのは、Si:0.07〜0.09質量%、Fe:0.20〜0.29質量%、Cu:0.03質量%以下、Mn:0.01質量%以下、Mg:0.01質量%以下、Cr:0.01質量%以下、Zn:0.01質量%以下、Ti:0.02質量%以下、Al:99.5質量%以上であるアルミニウム板である。
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号および特開昭62−140894号の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号および特開平8−92679号の各公報に記載されている。
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号および特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号、特開平1−306288号および特開平2−293189号の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報および特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等にも記載されている。
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報および特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号の各公報等にも記載されている。
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。なお、均熱処理を行わない場合には、コストを低減させることができるという利点がある。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
本発明に用いられるアルミニウム板は、JISに規定されるH18の調質が行われているのが好ましい。
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が120MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
また、アルミニウム板は、引張強度が160±15N/mm2、0.2%耐力が140±15MPa、JIS Z2241およびZ2201に規定される伸びが1〜10%であるのがより好ましい。
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程等において、プレス圧延、転写等により凹凸を形成させて用いることもできる。
中でも、最終板厚に調整する冷間圧延、または、最終板厚調整後の表面形状を仕上げる仕上げ冷間圧延とともに、凹凸面をアルミニウム板に圧接させて凹凸形状を転写し、アルミニウム板の表面に凹凸パターンを形成させる方法が好ましい。具体的には、特開平6−262203号公報に記載されている方法を好適に用いることができる。
表面に凹凸パターンを有するアルミニウム板を用いることにより、ブラシと研磨剤とで形成する凹凸パターンより、平均ピッチと深さが均一な凹凸パターンを得ることができるので耐汚れ性が向上する。また後のアルカリエッチング処理および粗面化処理で消費されるエネルギーを少なくしつつ、印刷機上における湿し水の量の調整を容易にすることができる。例えば、後述する第1エッチング処理において、エッチング量を3g/m2程度以下と少なくすることができる。また、凹凸パターンを有するアルミニウム板を用いると得られる平版印刷版用支持体の表面積が増大するため、耐刷性により優れる。
転写は、通常のアルミニウム板の最終冷間圧延工程で行うのが特に好ましい。転写のための圧延は1〜3パスで行うのが好ましく、それぞれの圧下率は3〜8%であるのが好ましい。
また、転写により付与される凹凸は、アルミニウム板の両面に付与されるのがより好ましい。これにより、表面と裏面のアルミニウム板の伸び率を同程度に調整することができるので平面性のよいアルミニウム板を得ることができる。
凹凸の転写に用いられる、表面に凹凸を有する圧延ロールを得る方法としては、例えば、ブラスト法、電解法、レーザ法、放電加工法、これらを組み合わせた方法が挙げられる。中でも、ブラスト法と電解法とを組み合わせた方法が好ましい。ブラスト法の中でも、エアーブラスト法が好ましい。
エアーブラスト法におけるエアー圧は、1〜10kgf/cm2(9.81×104〜9.81×105Pa)であるのが好ましく、2〜5kgf/cm2(1.96×105〜4.90×105Pa)であるのがより好ましい。
エアーブラスト法に用いられるグリッドは、所定の粒径のアルミナ粒子であれば特に限定されない。グリッドに、硬く、粒子一つ一つの角が鋭角なアルミナ粒子を用いると、転写ロールの表面に、深く均一な凹凸を形成させやすい。
アルミナ粒子の平均粒径は、50〜150μmであり、60〜130μmであるのが好ましく、70〜90μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、転写ロールとして十分な大きさの表面粗さが得られるため、この転写ロールを用いて凹凸を付与したアルミニウム板の表面粗さが十分に大きくなる。また、ピット数も十分に多くすることができる。
エアーブラスト法においては、噴射を2〜5回行うのが好ましく、中でも2回行うのがより好ましい。噴射を2回行うと、1回目の噴射で形成された凹凸の不揃いな凸部を2回目の噴射で削り取ることができるため、得られる圧延ロールを用いて凹凸を付与したアルミニウム板の表面に、局所的に深い凹部が形成されにくくなる。その結果、平版印刷版の現像性(感度)が優れたものとなる。
エアーブラスト法における噴射角は、噴射面(ロール表面)に対して60〜120°であるのが好ましく、80〜100°であるのがより好ましい。
エアーブラスト法を行った後、後述するめっき処理を行う前に、平均表面粗さ(Ra)がエアーブラスト後の値から10〜40%低下するまで、研磨するのが好ましい。研磨は、サンドペーパー、砥石またはバフを用いるのが好ましい。研磨することにより、転写ロールの表面の凸部の高さを揃えることができ、その結果、この転写ロールを用いて凹凸を付与したアルミニウム板の表面に、局所的に深い部分が形成されなくなる。その結果、平版印刷版の現像性(感度)が特に優れたものとなる。
転写ロールの表面の平均表面粗さ(Ra)は0.4〜1.0μmであるのが好ましく、0.6〜0.9μmであるのがより好ましい。
転写ロールの表面の山数は、1000〜40000個/mm2であるのが好ましく、2000〜10000個/mm2であるのがより好ましい。山数が少なすぎると、平版印刷版用支持体の保水性および画像記録層との密着性が劣ったものになる。保水性が劣ると、平版印刷版としたときに、網点部が汚れやすくなる。
転写ロールの材質は、特に限定されず、例えば、公知の圧延ロール用材質を用いることができる。
本発明においては、鋼製のロールを用いるのが好ましい。中でも、鋳造により作られたロールであるのが好ましい。好ましいロール材質の組成の一例は、C:0.07〜6質量%、Si:0.2〜1質量%、Mn:0.15〜1質量%、P:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、Cr:2.5〜12質量%、Mo:0.05〜1.1質量%、Cu:0.5質量%以下、V:0.5質量%以下、残部:鉄および不可避不純物である。
また、一般的に圧延用ロールとして用いられる、工具鋼(SKD)、ハイス鋼(SKH)、高炭素クロム軸受鋼(SUJ)、炭素とクロムとモリブデンとバナジウムとを合金元素として含む鍛造鋼が挙げられる。長いロール寿命を得るために、クロムを10〜20質量%程度含有する高クロム合金鋳鉄を用いることもできる。
中でも、鋳造法により製造されたロールを用いるのが好ましい。この場合、焼入れ、焼戻し後の硬度が、Hsで80〜100であるのが好ましい。焼戻しは、低温焼戻しを行うのが好ましい。
ロールの直径は200〜1000mmであるのが好ましい。また、ロールの面長は1000〜4000mmであるのが好ましい。
エアーブラスト法等により凹凸を形成された転写ロールは、洗浄の後、焼入れ、ハードクロムめっき等の硬質化処理を施されるのが好ましい。これにより耐摩耗性が向上し、寿命が長くなる。
硬質化処理としては、ハードクロムめっきが特に好ましい。ハードクロムめっきは、工業用クロムめっき法として従来周知のCrO3−SO4浴、CrO3−SO4−フッ化物浴等を用いた電気めっきによる方法を用いることができる。
ハードクロムめっき皮膜の厚さは5〜15μmであるのが好ましい。上記範囲であると、耐摩耗性の向上効果も十分となる。ハードクロムめっき皮膜の厚さは、めっき処理時間を調整することによって調節することができる。
ハードクロムめっきの前には、ハードクロムめっきに用いるめっき液中で、ロールを陽極とし、直流電流を用いて、5,000〜50,000C/dm2の電気量で電解処理を行うのが好ましい。これにより、ロールの表面の凹凸を均一化することができる。
アルミニウム板において、表面の平均粗さRaの測定方法は、触針式粗さ計(例えば、sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均粗さRaを5回測定し、その平均値を平均粗さとする。
2次元粗さ測定の条件を以下に示す。
<測定条件>
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
なお、RmaxおよびRsmはISO4287に従って測定できる。
本発明に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材である。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mm程度であり、0.15〜0.4mmであるのが好ましく、0.2〜0.3mmであるのがより好ましい。この厚さは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
<支持体の表面処理工程>
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法においては、上述したアルミニウム板に、少なくとも、少なくとも、下記(1)および(2)の電気化学的粗面化処理A,電気化学的粗面化処理Bを任意の順に行う。処理A、処理Bの順に行ってもよいし、処理B、処理Aの順に行ってもよい。
(1)処理A:塩酸濃度5g/L〜12g/L未満、および、アルミニウムイオン濃度1g/L〜13g/L未満を含有する水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理工程(以下、電気化学的粗面化処理Aということがある)。
(2)処理B:塩酸濃度12g/L〜18g/L、および、アルミニウムイオン濃度10g/L〜21g/Lを含有する水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理工程(以下、電気化学的粗面化処理Bということがある)。
上記AおよびBの工程の間は、水洗工程を行わずにそのまま行ってもよいが、アルカリ水溶液中でのエッチング処理および・または酸性水溶液中でのデスマット処理を行ってもよいし、行わなくてもよいが、これらの処理を行うことにより、処理Bでのピットの均一性が向上するため、行うことが好ましい。
また、上記電気化学的粗面化処理Aと電気化学的粗面化処理Bの後に、塩酸を主体とする水溶液中で第3の電気化学的粗面化処理(以下、電気化学的粗面化処理Cということがある)を行ってもよいし、電気化学的粗面化処理Cの前と後に中間処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法においては、上記以外の各種の工程を含んでいてもよい。具体的には、機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸性水溶液でのデスマット処理、電気化学的粗面化処理、中間処理を行ってもよい。
さらに陽極酸化処理、ポアワイド処理、封孔処理、親水化処理、を施してもよい。
具体的な実施形態の一例として、
(実施形態1)
1)アルカリ水溶液中で化学的にエッチング処理(第1エッチング処理)
2)塩酸を主体とする水溶液中での、電気化学的粗面化処理A
3)アルカリ水溶液中で化学的にエッチング処理(第2エッチング処理)、電気化学的粗面化処理A・電気化学的粗面化処理Bの溶液への浸漬処理、または、酸性水溶液中でのデスマット処理
4)塩酸を主体とする水溶液中での、電気化学的粗面化処理B
5)アルカリ水溶液中での化学的エッチング処理(第3エッチング処理)
(実施形態2)
1)アルカリ水溶液中で化学的にエッチング処理(第1エッチング処理)
2)塩酸を主体とする水溶液中で、電気化学的粗面化処理B
3)アルカリ水溶液中で化学的にエッチング処理(第2エッチング処理)、電気化学的粗面化処理A・電気化学的粗面化処理Bの溶液への浸漬処理、または、酸性水溶液中でのデスマット処理
4)塩酸を主体とする水溶液中で、電気化学的粗面化処理A
5)アルカリ水溶液中での化学的エッチング処理(第3エッチング処理)
を行うことができる。
実施形態1または実施形態2の第3エッチング処理の後に、更に、塩酸を主体とする水溶液中での、電気化学的粗面化処理C、アルカリ水溶液中で化学的エッチング処理(第4エッチング処理)をおこなうことが更に好ましい。
アルカリ水溶液中に於けるエッチング処理の後には、硝酸、塩酸、または、硫酸水溶液中でのデスマット処理を行ってもよい。
また、アルカリエッチング処理(第1エッチング処理)の前に、機械的粗面化処理を行うこともできる。これにより、電気化学的粗面化処理に用いられる電気量を低減させることができ、さらに好適な平版印刷版用アルミニウム支持体が得られる。
機械的粗面化処理としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法(転写ロール法)を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特開平6−24168号公報に記載されている方法も適用可能である。
中でも、転写ロール法が、平版印刷版用支持体の製造工程の高速化に対応しやすいので、好ましい。転写ロール法は、最終板厚に調整する冷間圧延、または、最終板厚調整後の表面形状を仕上げる仕上げ冷間圧延において、転写を行うのが好ましい。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
<第1エッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上述したアルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
第1電気化学的粗面化処理の前に行われる第1エッチング処理は、第1電気化学的粗面化処理で均一な凹部を形成させること、および、アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として行われる。
第1エッチング処理においては、後に電気化学的粗面化処理を施される面のエッチング量は、0.1g/m2以上であるのが好ましく、0.5g/m2以上であるのがより好ましく、また、10g/m2以下であるのが好ましく、5g/m2以下であるのがより好ましい。エッチング量が1g/m2以上であると、第1電気化学的粗面化処理において均一なピットを生成させることができる。エッチング量が10g/m2以下であると、アルカリ水溶液の使用量が少なくなり、経済的に有利となる。
電気化学的粗面化処理を施される面の裏面のエッチング量は、電気化学的粗面化処理を施される面のエッチング量の5%以上であるのが好ましく、10%以上であるのがより好ましく、また、50%以下であるのが好ましく、30%以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、アルミニウム板の裏面の圧延油の除去効果と、経済性とのバランスに優れる。
後述する第2エッチング処理および第3エッチング処理においても、同様である。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、苛性アルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、苛性アルカリとしては、例えば、苛性ソーダ、苛性カリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第一リン酸ソーダ、第一リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、苛性アルカリの溶液、および、苛性アルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、苛性ソーダの水溶液が好ましい。
第1エッチング処理においては、アルカリ溶液の濃度は、1質量%以上であるのが好ましく、20質量%以上であるのがより好ましく、また、50質量%以下であるのが好ましく、40質量%以下であるのがより好ましい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、0.5質量%以上であるのが好ましく、4質量%以上であるのがより好ましく、また、10質量%以下であるのが好ましく、8質量%以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%苛性ソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第1エッチング処理においては、アルカリ溶液の温度は、25℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、95℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
第1エッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
アルミニウム板を連続的にエッチング処理していくと、アルカリ溶液中のアルミニウムイオン濃度が上昇していき、アルミニウム板のエッチング量が変動する。そこで、エッチング液の組成管理を、以下のようにして行うのが好ましい。
即ち、苛性ソーダ濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度とのマトリクス、または、電導度と超音波伝搬速度と温度とのマトリクスをあらかじめ作製しておき、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度によって液組成を測定し、液組成の制御目標値になるように苛性ソーダと水とを添加する。そして、苛性ソーダと水とを添加することによって増加したエッチング液を、循環タンクからオーバーフローさせることにより、その液量を一定に保つ。添加する苛性ソーダとしては、工業用の40〜60質量%のものを用いることができる。
電導度計および比重計としては、それぞれ温度補償されているものを用いるのが好ましい。比重計としては、差圧式のものを用いるのが好ましい。
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
中でも、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が好ましい。具体的には、φ2〜5mmの孔を10〜50mmピッチで有するスプレー管から、スプレー管1本あたり、10〜100L/minの量でエッチング液を吹き付ける方法が好ましい。スプレー管は複数本設けるのが好ましい。
アルカリエッチング処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。
図1は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置の模式的な断面図である。図1に示されているように、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置100は、水102を貯留する貯水タンク104と、貯水タンク104に水を供給する給水筒106と、貯水タンク104から自由落下カーテン状の液膜をアルミニウム板1に供給する整流部108とを有する。
装置100においては、給水タンク104に給水筒106から水102が供給され、水102が給水タンク104からオーバーフローする際に、整流部108により整流され、自由落下カーテン状の液膜がアルミニウム板1に供給される。装置100を用いる場合、液量は10〜100L/minであるのが好ましい。また、装置100とアルミニウム1との間の水102が自由落下カーテン状の液膜として存在する距離Lは、20〜50mmであるのが好ましい。また、アルミニウム板の角度αは、水平方向に対して30〜80°であるのが好ましい。
図1に示されるような自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いると、アルミニウム板に均一に水洗処理を施すことができるので、水洗処理の前に行われた処理の均一性を向上させることができる。
自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する具体的な装置としては、例えば、特開2003−96584号公報に記載されている装置が好適に挙げられる。
また、水洗処理に用いられるスプレー管としては、例えば、扇状に噴射水が広がるスプレーチップをアルミニウム板の幅方向に複数個有するスプレー管を用いることができる。スプレーチップの間隔は20〜100mmであるのが好ましく、また、スプレーチップ1本あたりの液量は0.5〜20L/minであるのが好ましい。スプレー管は複数本用いるのが好ましい。
<第1デスマット処理>
第1エッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第1デスマット処理)を行うのが好ましい。デスマット処理は、アルミニウム板を水溶液に接触させることにより行う。
用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、クロム酸が挙げられる。中でも、硝酸、硫酸が好ましい。具体的には、例えば、後述する陽極酸化処理工程で用いた硫酸水溶液の廃液を好適に用いることができる。
デスマット処理液の組成管理においては、酸性溶液濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と温度で管理する方法、電導度と比重と温度とで管理する方法、および、電導度と超音波の伝搬速度と温度とで管理する方法のいずれかを選択して用いることができる。
第1デスマット処理においては、0.1〜30質量%の酸水溶液を用いるのが好ましく。また、0.5〜10質量%のアルミニウムイオンを含有してもよい。
酸性溶液の温度は、25℃以上であるのが好ましく、また、95℃以下であるのが好ましい。
第1デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
中でも、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が好ましい。具体的には、φ2〜5mmの孔を10〜50mmピッチで有するスプレー管から、スプレー管1本あたり、10〜100L/minの量でエッチング液を吹き付ける方法が好ましい。スプレー管は複数本設けるのが好ましい。
デスマット処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
水洗処理は、アルカリエッチング処理の後の水洗処理と同様である。ただし、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。
<電気化学的粗面化処理A、電気化学的粗面化処理B>
本発明は、以下の電気化学的粗面化処理Aと電気化学的粗面化処理Bとを任意の順で組み合わせて行うことが特徴である。以下の説明において、両処理で共通の部分は電気化学的粗面化処理Aで説明し、電気化学的粗面化処理Bでは異なる点を説明する。また、説明では電気化学的粗面化処理Aを第1電解粗面化処理として先工程で行い、電気化学的粗面化処理Bを第2電解粗面化処理として後工程で行う場合で説明するが、処理Aを後工程で行い、処理Bを先工程で行ってもよい。
<電気化学的粗面化処理A>
電気化学的粗面化処理Aは、塩酸濃度5g/L〜12g/L未満、および、塩化アルミニウムイオン濃度1g/L〜13g/Lを含有する水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理工程である。この電気化学的粗面化処理Aにより、電気化学的粗面化処理Bよりも比較的大きな凹部を生成し、好ましくは平均表面粗さ0.3〜0.8μmの表面形状が得られる。このように、本発明においては、電気化学的粗面化処理A後の表面において、比較的大きなピットが形成されるので、平版印刷版としたときの耐刷性が優れたものとなり、また、ピットが均一であるので、平版印刷版としたときの耐汚れ性が優れたものとなる。
電解液として用いられる水溶液における塩酸濃度は、5g/L以上〜12g/L未満とする。6.0〜10g/Lであるのが好ましく、7.5〜10g/Lであるのがより好ましい。上記範囲であると、ピットの均一性が高くなる。
また、水溶液は、硫酸または硝酸を含有していてもよい。この場合、硫酸または硝酸の濃度は、0.01〜10g/Lであるのが好ましい。中でも、硫酸が好ましい。この場合、硫酸の濃度は、0.1〜10g/Lであるのが好ましく、0.5〜5g/Lであるのがより好ましい。硫酸を添加することで、アノード反応で酸化皮膜を形成する。これにより、均一な凹凸表面が得られ、連続処理に於いて、工程条件の変動による粗面化形状の変動が少なくなり、とくに連続処理に於いてその効果が著しい。その結果、耐汚れ性および耐刷性のバランスが優れたものになる。
硫酸の添加方法は、補給水中に0.1−10g/Lの範囲で、希望する濃度の硫酸を添加しておき、補給水と同時に硫酸を添加する方法を用いることが特に好ましい。液組成の測定は、イオンクロマト法、中和滴定法、キャピラリー電気泳動法、液の導電率と超音波の伝搬速度を測定して予め液組成と物性値の対応を求めたデータテーブルから液組成を求める方法、などを用いることができる。
水溶液におけるアルミニウムイオン濃度は、1g/L以上〜13g/Lである。5〜12.5g/Lであるのが好ましく、7.5〜10g/Lであるのがより好ましい。上記範囲であると、ピットの均一性が高くなる。また、水溶液の補充量が多くなりすぎることがない。
電解液の各成分の濃度制御は、濃度測定方法等の多成分濃度測定法と、フィードフォワード制御およびフィードバック制御とを併用して行うのが好ましい。これにより、電解液の正確な濃度管理が可能となる。
多成分濃度測定法は、例えば、電解液中の超音波の電解速度と電解液の電導度(導電率)とを用いて濃度を算出する方法、中和滴定法、キャピラリー電気泳動分析法、イソタコフォレシス(isotachophoresis、細管式等速電気泳動法)分析法、イオンクロマトグラフ法が挙げられる。
イオンクロマトグラフ法は、検出器の種類により、吸光度検出イオンクロマトグラフ、ノンサプレッサ型電気電導度検出イオンクロマトグラフ、サプレッサ型イオンクロマトグラフ等に分類される。中でも、サプレッサ型イオンクロマトグラフが、測定の安定性の確保のうえで好ましい。
水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、25℃以上であるのがより好ましく、30℃以上であるのが更に好ましく、また、50℃以下であるのが好ましく、45℃以下であるのがより好ましく、35℃以下であるのが更に好ましい。20℃以上であると、冷却のための冷凍機運転コストが高くならず、また、冷却のための地下水の使用量を抑制することができる。50℃以下であると、設備の耐食性を確保することが容易である。
電気化学的粗面化処理における電気量は、アルミニウム板が陽極時の電気量の総和で、100〜800C/dm2であるのが好ましく、150〜600C/dm2であるのがより好ましく、200〜500C/dm2であるのが更に好ましい。100C/dm2以上であると、表面粗さが十分に大きくなり、シャイニー(印刷時の版面の湿し水の量の見やすさ)および耐刷性がより優れたものとなる。800C/dm2以下であると、耐汚れ性がより優れたものとなる。
電気化学的粗面化処理Aにおける電流密度は、電流値のピークで、10〜200A/dm2であるのが好ましく、20〜150A/dm2であるのがより好ましく、50〜125A/dm2であるのが更に好ましい。10A/dm2以上であると、生産性がより優れたものとなる。200A/dm2以下であると、電圧が高くなく、電源容量が大きくなりすぎないので、電源コストを低くすることができる。
第1電気化学的粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094号の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
第1電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、正弦波、矩形波、台形波、三角波等が用いられる。台形波とは、図2に示したものをいう。台形波、正弦波、または三角波が好ましい。 台形波を用いる場合、1周期のうちアルミニウム板が陽極となるときに電流がゼロからピークに達するまでの時間(電流立ち上がり時間、TP)は0.3〜4msecであるのが好ましく、1.5〜3.5msecであるのがより好ましい。0.3msec以上であると、電源の製作コストが低くなる。4msec以下であると、ピットの均一性がより優れたものとなる。
交流のdutyは、0.2〜0.5であるのが好ましく、0.33〜0.5であるのがより好ましい。なお、dutyは、1周期のうちアルミニウム板がアノード反応している時間を、1周期の時間で割った値をいう。
交流の周波数は10〜200Hzであるのが好ましく、20〜150Hzであるのがより好ましく、40〜120Hzであるのが更に好ましい。10Hz以上であると、ファセット状の大きなピットができにくく、耐汚れ性がより優れたものとなる。200Hz以下であると、電解電流を流す回路のインダクタンス成分の影響を受けにくく、大容量の電源の製作が容易となる。
交流の周波数は10〜200Hzであるのが好ましく、20〜150Hzであるのがより好ましく、30〜120Hzであるのが更に好ましい。10Hz以上であると、ファセット状の大きなピットができにくく、耐汚れ性がより優れたものとなる。200Hz以下であると、電解電流を流す回路のインダクタンス成分の影響を受けにくく、大容量の電源の製作が容易となる。
また、電源装置としては、例えば、商用交流を用いて過飽和リアクトル制御やサイリスタによる位相角制御を行うもの、インバータ制御電源等を用いることができる。中でも、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を用いたインバータ制御電源が、PWM(Pulse Width Modulation)制御により任意波形を発生させることができ、アルミニウム板の幅および厚さ、電解液中の各成分の濃度の変動等に対して電圧を変動させて、電流値(アルミニウム板の電流密度)を一定に制御する際に、追従性に優れる点で好ましい。
図3は、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。電流比(アルミニウム板が陽極時の電気量の総和とアルミニウム板が陰極時の電気量の総和との比)は、0.9〜3であるのが好ましく、0.95〜2であるのがより好ましい。
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
第1電気化学的粗面化処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りすることができる。ただし、設備費用および廃液処理費用を削減する点で、水洗処理は行わない方が好ましい。
水洗処理を行う場合、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。水洗処理に用いられるスプレー管としては、例えば、扇状に噴射水が広がるスプレーチップをアルミニウム板の幅方向に複数個有するスプレー管を用いることができる。スプレーチップの間隔は20〜100mmであるのが好ましく、また、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。スプレー管は複数本用いるのが好ましい。
<第2エッチング処理>
電気化学的粗面化処理Aと電気化学的粗面化処理Bとの間に行われる第2エッチング処理は、電気化学的粗面化処理で生成したスマットを溶解させること、および、電気化学的粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。これにより、電気化学的粗面化処理によって形成された大きなピットのエッジ部分が溶解して表面が滑らかになり、インキがエッジ部分にひっかかりにくくなるため、耐汚れ性に優れる平版印刷版原版を得ることができる。
第2エッチング処理は、基本的に第1エッチング処理と同様であるが、アルカリ溶液中に含まれるアルミニウムイオン濃度は、0.1〜10質量%であるのが好ましく、アルミニウムイオンを4〜8質量%含む濃度が20〜40質量%のアルカリ溶液、または、アルミニウムイオンを0.3〜0.7質量%含む濃度が4〜6%のアルカリ溶液を用いるのがより好ましい。また、液温は、30℃〜80℃であるのがより好ましい。
また、エッチング量は、0.01g/m2以上であるのが好ましく、0.03g/m2以上であるのがより好ましく、0.05g/m2以上であるのがさらに好ましい。また、3g/m2以下であるのが好ましく、0.5g/m2以下であるのがより好ましく、0.3g/m2以下であるのがさらに好ましい。
本発明では、第2エッチング処理の代わりに、以下の浸漬処理を行ってもよい。
1)電気化学的粗面化処理Aと同じ組成、同じ温度の液に、1〜60sec浸漬処理する。
2)電気化学的粗面化処理Bと同じ組成、同じ温度の液に、1〜60sec浸漬処理する。
また、本発明では第2エッチング処理を行わずに第2デスマット処理を行ってもよい。
アルカリエッチング処理の代わりに酸性溶液での浸漬処理を用いることができる理由は、酸性水溶液中で前段の電気化学的粗面化処理で生成したスマット成分が溶解して、次段の電気化学的粗面化処理でピットを均一に生成できるためであると考えられる。
先の電気化学的粗面化処理がAである場合は処理Aと同じ液に浸漬し、処理Bである場合は処理Bと同じ液に浸漬してもよいが、処理Aである場合に処理Bの液に浸漬してもよいし、処理Bである場合に処理Aの液に浸漬してもよい。
<第2デスマット処理>
第2エッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第2デスマット処理)を行ってもよい。第2デスマット処理は、第1デスマット処理と同様の方法で行うことができる。
<電気化学的粗面化処理B>
電気化学的粗面化処理Bは、アルミニウム板に、塩酸を含有する水溶液(電解液B)中で交流電流を流す電気化学的粗面化処理を施す。この電気化学的粗面化処理を行うことにより電気化学的粗面化処理Aと比べて比較的小さいピットがアルミニウム表面全面に均一に形成される。
電気化学的粗面化処理Bは、アルミニウム板に電気化学的粗面化処理を施すときに異なる濃度の塩酸およびアルミニウムイオンを含む水溶液を用いる点以外は、電気化学的粗面化処理Bで説明したのと基本的に同様である。以下、主に電気化学的粗面化処理Aと異なる点について説明する。
処理Bにおける塩酸濃度は、12〜18g/Lであるのが好ましく、14〜16g/Lであるのがより好ましい。上記範囲であると、ピットの均一性が高くなる。
処理Bの電解液には、硫酸または硝酸が電気化学的粗面化処理Aの場合と同様に含まれていても良い。硫酸を添加することで、連続処理において工程条件の変動による粗面化形状の変動が少なくなる。
処理Bにおけるアルミニウムイオン濃度は、10〜21g/Lである。11〜15g/Lであるのがより好ましく、12〜14g/Lであるのが更に好ましい。上記範囲であると、ピットの均一性が高くなる。また、電解液の補充量が多くなりすぎることがない。
第2電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、正弦波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、台形波、正弦波または三角波が好ましい。台形波を用いる場合には、電流がゼロからピークに達するまでの時間は0.3〜4msecであるのが好ましく、1.5〜3.5msecであるのがより好ましい。0.3msec以上であると、電源の製作コストが低くなる。4msec以下であると、ピットの均一性がより優れたものとなる。
交流のdutyは、0.2〜0.5であるのが好ましく、0.33〜0.5であるのがより好ましい。なお、dutyは、1周期のうちアルミニウム板がアノード反応している時間を、1周期の時間で割った値をいう。
交流の周波数は10〜200Hzであるのが好ましく、20〜150Hzであるのがより好ましく、40〜120Hzであるのが更に好ましい。10Hz以上であると、ファセット状の大きなピットができにくく、耐汚れ性がより優れたものとなる。200Hz以下であると、電解電流を流す回路のインダクタンス成分の影響を受けにくく、大容量の電源の製作が容易となる。
電気化学的粗面化処理Bにおける電気量、液温は、電気化学的粗面化処理Aの場合と同様である。また、電流比は、0.9〜3であることが好ましく、0.95〜2であることが更に好ましい。
<第3エッチング処理>
電気化学的粗面化処理の後に行われる第3エッチング処理は、電気化学的粗面化処理で生成したスマットを溶解させること、および、電気化学的粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
第3エッチング処理は、基本的に第2エッチング処理と同様である。
<第3デスマット処理>
第3エッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第3デスマット処理)を行うのが好ましい。第3デスマット処理は、基本的に第2デスマット処理と同様である。
第3デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる陽極酸化処理に用いられる電解液と同じ種類の液を用いる場合には、デスマット処理後にニップローラによる液切りおよび水洗処理を省略することができる。
また、第3デスマット処理は、後述する陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置における、アルミニウム板がカソード反応処理を施される電解槽で行われるのが好ましい。このようにすると、第3デスマット処理のために、独立したデスマット処理槽を設ける必要がなくなるので、設備コストを低減させることができる。
<塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的粗面化処理C>
電気化学的粗面化処理Cは、アルミニウム板に、塩酸を含有する水溶液(電解液C)中で交流電流を低電気量で流す電気化学的粗面化処理を施す。この電気化学的粗面化処理を行うことにより、0.05〜0.3μmの微細なピットがアルミニウム表面全面に均一に形成され、耐クリーナー性に優れた平版印刷版が得られる。
電気化学的粗面化処理Cは、アルミニウム板に電気化学的粗面化処理を施すときに異なる濃度の塩酸を含む水溶液を用い、低電気量で行う点以外は、電気化学的粗面化処理Aで説明したのと基本的に同様である。以下、主に電気化学的粗面化処理Aと異なる点について説明する。
塩酸濃度は、3〜10g/Lであるのが好ましく、4〜8g/Lであるのがより好ましい。上記範囲であると、ピットの均一性が高くなる。
硫酸または硝酸が電気化学的粗面化処理Aの場合と同様に含まれていても良いし、硫酸が電気化学的粗面化処理Aの場合と同様に含まれているのが好ましい。
アルミニウムイオン濃度は、0.1〜10g/Lである。0.5〜8g/Lであるのがより好ましく、4〜6g/Lであるのが更に好ましい。上記範囲であると、ピットの均一性が高くなる。また、電解液Cの補充量が多くなりすぎることがない。
電気量は、アルミニウム板が陽極時の電気量の総和で、10〜100C/dm2が好ましく、更に20〜80C/dm2が好ましく、特に、50〜75C/dm2が好ましい。液温は、電気化学的粗面化処理Aの場合と同様である。
電気化学的粗面化処理Cに用いられる交流電源波は、特に限定されず、正弦波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、台形波、正弦波または三角波が好ましい。台形波を用いる場合には、電流がゼロからピークに達するまでの時間は0.3〜2msecであるのが好ましく、0.5〜1.0msecであるのがより好ましい。0.3msec以上であると、電源の製作コストが低くなる。2msec以下であると、ピットの均一性がより優れたものとなる
<アルカリ水溶液中で化学的エッチング処理(第4エッチング処理)>
アルミニウム板の溶解量は、0.01〜3g/m2が好ましく、更に0.03〜0.5g/m2が好ましく、0.05〜0.3g/m2がとくに好ましい。
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第二、第三の成分が添加されていても構わない。ここでいう第二、第三の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、50〜200g/L(5〜20質量%)であるのがより好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
電解液の組成管理は、上述した硝酸電解等の場合と同様の方法を用いて、硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度により管理するのが好ましい。
電解液の液温は、25〜55℃であるのが好ましく、30〜50であるのがより好ましい。
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」(皮膜が周囲より厚くなる部分)が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
具体的には、直流電源の電流配分を、下流側の直流電源の電流が上流側の直流電源の電流以上にするのが好ましい。このような電流配分とすることにより、いわゆる焼けが生じにくくなり、その結果、高速での陽極酸化処理が可能となる。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2程度である。
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2であるのが好ましい。1g/m2以上であると版に傷が入りにくくなる。5g/m2以下であると製造に多大な電力が不要となり、経済的に有利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2以下になるように行うのが好ましい。
また、電気化学的粗面化処理を施された面の裏面の陽極酸化皮膜の量は、0.1〜1g/m2であるのが好ましい。0.1g/m2以上であると、裏面に傷がつきにくくなり、平版印刷版原版として、重ねたときに、裏面に接触する画像記録層が傷付きにくくなる。1g/m2以下であると、経済的に有利となる。
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号、特開2001−11698号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。
図4に示される陽極酸化処理装置410では、アルミニウム板416に電解液を経由して通電するために、アルミニウム板416の進行方向の上流側に給電槽412、下流側に陽極酸化処理槽414を設置してある。アルミニウム板416は、パスローラ422および428により、図4中矢印で示すように搬送される。アルミニウム板416が最初に導入される給電槽412においては、直流電源434の正極に接続された陽極420が設置されており、アルミニウム板416は陰極となる。したがって、アルミニウム板416においてはカソード反応が起こる。
アルミニウム板416が引き続き導入される陽極酸化処理槽414においては、直流電源434の負極に接続された陰極430が設置されており、アルミニウム板416は陽極となる。したがって、アルミニウム板416においてはアノード反応が起こり、アルミニウム板416の表面に陽極酸化皮膜が形成される。
アルミニウム板416と陰極430の間隔は50〜200mmであるのが好ましい。陰極430としてはアルミニウムが用いられる。陰極430としては、アノード反応により発生する水素ガスが系から抜けやすくなるようにするために、広い面積を有する電極でなく、アルミニウム板416の進行方向に複数個に分割した電極であるのが好ましい。
給電槽412と陽極酸化処理槽414との間には、図4に示されるように、中間槽413と呼ばれる電解液が溜まらない槽を設けるのが好ましい。中間槽413を設けることにより、電流がアルミニウム板416を経由せず陽極420から陰極430にバイパスすることを抑止することができる。中間槽413にはニップローラ424を設置して液切りを行うことにより、バイパス電流を極力少なくするようにするのが好ましい。液切りにより出た電解液は、排液口442から陽極酸化処理装置410の外に排出される。
給電槽412に貯留される電解液418は、電圧ロスを少なくするために、陽極酸化処理槽414に貯留される電解液426よりも高温および/または高濃度とする。また、電解液418および426は、陽極酸化皮膜の形成効率、陽極酸化皮膜のマイクロポアの形状、陽極酸化皮膜の硬さ、電圧、電解液のコスト等から、組成、温度等が決定される。
給電槽412および陽極酸化処理槽414には、給液ノズル436および438から電解液を噴出させて給液する。電解液の分布を一定にし、陽極酸化処理槽414でのアルミニウム板416の局所的な電流集中を防ぐ目的で、給液ノズル436および438にはスリットが設けられ、噴出する液流を幅方向で一定にする構造となっている。
陽極酸化処理槽414においては、陽極430からみてアルミニウム板416を挟んだ反対側にはしゃへい板440が設けられ、電流がアルミニウム板416の陽極酸化皮膜を形成させたい面の反対側に流れるのを抑止する。アルミニウム板416としゃへい板440の間隔は5〜30mmであるのが好ましい。直流電源434は複数個用いて、正極側を共通に接続して用いるのが好ましい。これによって、陽極酸化処理槽414中の電流分布を制御することができる。
なお、陽極酸化処理を行う場合には、陽極酸化処理装置410を1基で用いてもよいが、2〜5基の陽極酸化処理装置410をアルミニウム板の進行方向に直列に並べて連続的に処理することが好ましい。2〜5基の陽極酸化処理装置410をアルミニウム板の進行方向に直列に並べて連続的に処理すると、高速処理と、使用電力の削減とを行う上で効果的である。
<封孔処理>
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理を行うことにより、平版印刷版原版の現像性(感度)を向上させることができる。
陽極酸化皮膜が、皮膜面にほぼ垂直な方向にポアと称する細孔を有する多孔質皮膜であることはよく知られている。本発明においては、陽極酸化処理に高封孔率の封孔処理を施すのが好ましい。封孔率は50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが更に好ましい。ここで、「封孔率」は、下記式により定義される。
封孔率=(封孔前の表面積−封孔後の表面積)/封孔前の表面積×100%
表面積は、例えば、簡易BET方式の表面積測定装置(例えば、QUANTASORB(カンタソーブ)、湯浅アイオニクス社製)を用いて測定することができる。
封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、重クロム酸塩処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理、電着封孔処理、特公昭36−22063号公報等に記載されているようなフッ化ジルコン酸処理、特開平9−244227号公報に記載されているリン酸塩および無機フッ素化合物を含む水溶液での処理、特開平9−134002号公報に記載されている糖を含む水溶液での処理、特開2000−81704号公報および特開2000−89466号公報に記載されているチタンとフッ素を含む水溶液での処理、米国特許3,181,461号明細書等に記載されているアルカリ金属ケイ酸塩処理が挙げられる。
好適な封孔処理の一例として、アルカリ金属ケイ酸塩処理が挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩処理は、液のゲル化および陽極酸化皮膜の溶解を起こすことのない25℃においてpH10〜13であるアルカリ金属ケイ酸酸塩水溶液を用いて、アルカリ金属ケイ酸塩濃度、処理温度、処理時間等の処理条件を適宜選択して行うことができる。好適なアルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。また、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高く調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を配合することができる。
更に、必要に応じて、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液にアルカリ土類金属塩および/または4族(第IVA族)金属塩を配合してもよい。このアルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;アルカリ土類金属の硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩等の水溶性の塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液の濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、0.05〜5.0質量%であるのがより好ましい。
好適な封孔処理の別の一例として、フッ化ジルコン酸処理が挙げられる。フッ化ジルコン酸処理は、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム等のフッ化ジルコン酸塩を用いて行われる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウムを用いるのが好ましい。これにより、平版印刷版原版の現像性(感度)が優れたものとなる。フッ化ジルコン酸処理に用いられるフッ化ジルコン酸溶液の濃度は、0.01〜2質量%であるのが好ましく、0.1〜0.3質量%であるのがより好ましい。
フッ化ジルコン酸塩溶液は、リン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。リン酸二水素ナトリウムの濃度は、0.01〜3質量%であるのが好ましく、0.1〜0.3質量%であるのがより好ましい。
フッ化ジルコン酸塩溶液は、アルミニウムイオンを含有していてもよい。その場合、フッ化ジルコン酸塩溶液のアルミニウムイオン濃度は、1〜500mg/Lであるのが好ましい。
封孔処理の温度は、20〜90℃であるのが好ましく、50〜80℃であるのがより好ましい。
封孔処理の時間(溶液中への浸せき時間)は、1〜20秒であるのが好ましく、5〜15秒であるのがより好ましい。
また、必要に応じて、封孔処理を行った後、上述したアルカリ金属ケイ酸塩処理、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、スルホ基等を側鎖に有するポリマーまたはコポリマー、特開平11−231509号公報に記載されているアミノ基とホスフィン基、ホスホン基およびリン酸基からなる群から選ばれる基とを有する有機化合物またはその塩等を含む溶液に浸し、または塗布する処理等の表面処理を行うことができる。
封孔処理の後には、後述する親水化処理を行うのが好ましい。
<親水化処理>
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。ケイ酸ソーダとしては市販の1号ケイ酸ソーダ、3号ケイ酸ソーダを用い、濃度0.5〜5質量%、液温15〜75℃で、1〜15秒間、浸漬処理することが好ましい。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
また、親水性の下塗層の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている条件および手順に従って行うこともできる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
<乾燥>
上述したようにして平版印刷版用支持体を得た後、画像記録層を設ける前に、平版印刷版用支持体の表面を乾燥させるのが好ましい。乾燥は、表面処理の最後の処理の後、水洗処理およびニップローラで液切りしてから行うのが好ましい。
乾燥温度は、70℃以上であるのが好ましく、80℃以上であるのがより好ましく、また、110℃以下であるのが好ましく、100℃以下であるのがより好ましい。
乾燥時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また20秒以下であるのが好ましく、15秒であるのがより好ましい。
[平版印刷版原版]
本発明により得られる平版印刷版用支持体には、画像記録層を設けて本発明の平版印刷版原版とすることができる。画像記録層には、感光性組成物が用いられる。
本発明に好適に用いられる感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジ型感光性組成物(以下、この組成物およびこれを用いた画像記録層について、「サーマルポジタイプ」という。)、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルネガ型感光性組成物(以下、同様に「サーマルネガタイプ」という。)、光重合型感光性組成物(以下、同様に「フォトポリマータイプ」という。)、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有するネガ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルネガタイプ」という。)、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルポジタイプ」という。)、特別な現像工程を必要としない感光性組成物(以下、同様に「無処理タイプ」という。)が挙げられ、特に、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、無処理タイプが好ましい。以下、これらの好適な感光性組成物について説明する。
<サーマルポジタイプ>
<感光層>
サーマルポジタイプの感光性組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、分子中に酸性基を含有する樹脂およびその2種以上の混合物が挙げられる。特に、フェノール性ヒドロキシ基、スルホンアミド基(−SO2NH−R(式中、Rは炭化水素基を表す。))、活性イミノ基(−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R(各式中、Rは上記と同様の意味である。))等の酸性基を有する樹脂がアルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
光熱変換物質としては、記録感度の点で、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好適に挙げられる。染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)が挙げられる。中でも、シアニン染料が好ましく、とりわけ特開2001−305722号公報に記載されている一般式(I)で表されるシアニン染料が好ましい。
サーマルポジタイプの感光性組成物中には、溶解阻止剤を含有させることができる。溶解阻止剤としては、例えば、特開2001−305722号公報の[0053]〜[0055]に記載されているような溶解阻止剤が好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの感光性組成物中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が好ましく用いられる。
また、サーマルポジタイプの画像記録層は、単層に限らず、2層構造であってもよい。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
<中間層>
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
<その他>
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<サーマルネガタイプ>
サーマルネガタイプの感光性組成物は、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルネガタイプの画像記録層は、赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層である。
<重合層>
サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、重合型の画像記録層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、光熱変換物質と、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する。重合層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱によりラジカル発生剤が分解してラジカルが発生し、発生したラジカルによりラジカル重合性化合物が連鎖的に重合し、硬化する。
光熱変換物質としては、例えば、上述したサーマルポジタイプに用いられる光熱変換物質が挙げられる。特に好ましいシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の[0017]〜[0019]に記載されているものが挙げられる。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩が好適に挙げられる。特に、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されているオニウム塩が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーが好適に挙げられる。水または弱アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが好適に挙げられる。中でも、アリル基、アクリロイル基等の不飽和基またはベンジル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れている点で好適である。
ラジカル重合性化合物およびバインダーポリマーについては、特開2001−133969号公報の[0036]〜[0060]に詳細に記載されているものを用いることができる。
サーマルネガタイプの感光性組成物中には、特開2001−133969号公報の[0061]〜[0068]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤)を含有させるのが好ましい。
重合層の製造方法および製版方法については、特開2001−133969号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<酸架橋層>
また、サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、酸架橋型の画像記録層(酸架橋層)も好適に挙げられる。酸架橋層は、光熱変換物質と、熱酸発生剤と、硬化性化合物である酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する。酸架橋層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、硬化する。
光熱変換物質としては、重合層に用いられるのと同様のものが挙げられる。
熱酸発生剤としては、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
<フォトポリマータイプ>
光重合型感光性組成物は、付加重合性化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する。
付加重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好適に挙げられる。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、例えば、モノマー、プレポリマー、これらの混合物等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
また、付加重合性化合物としては、ウレタン系付加重合性化合物も好適に挙げられる。
光重合開始剤としては、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を、使用する光源の波長により適宜選択して用いることができる。例えば、特開2001−22079号公報の[0021]〜[0023]に記載されている開始系が好適に挙げられる。
高分子結合剤は、光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、画像記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が用いられる。そのような有機高分子重合体としては、特開2001−22079号公報の[0036]〜[0063]に記載されているものが好適に挙げられる。
フォトポリマータイプの光重合型感光性組成物中には、特開2001−22079号公報の[0079]〜[0088]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤)を含有させるのが好ましい。
また、フォトポリマータイプの画像記録層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、その共重合体が挙げられる。
更に、特開2001−228608号公報の[0124]〜[0165]に記載されているような中間層または接着層を設けるのも好ましい。
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物は、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有する。中でも、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物;p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体が挙げられる。具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−281425号公報の[0014]〜[0015]に記載されている焼出し剤、染料、塗膜の柔軟性および耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルネガタイプの感光層の下には、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けるのが好ましい。
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物は、キノンジアジド化合物を含有する。中でも、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂が挙げられる。
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−92660号公報の[0024]〜[0027]に記載されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や、特開平7−92660号公報の[0031]に記載されているような塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルポジタイプの感光層の下には、上述したコンベンショナルネガタイプに好適に用いられる中間層と同様の中間層を設けるのが好ましい。
<無処理タイプ>
無処理タイプの感光性組成物には、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、スルホン酸発生ポリマー含有型等が挙げられる。これらはいずれも光熱変換物質を含有する感熱型である。光熱変換物質は、上述したサーマルポジタイプに用いられるのと同様の染料が好ましい。
熱可塑性微粒子ポリマー型の感光性組成物は、疎水性かつ熱溶融性の微粒子ポリマーが親水性高分子マトリックス中に分散されたものである。熱可塑性微粒子ポリマー型の画像記録層においては、露光により発生する熱により疎水性の微粒子ポリマーが溶融し、互いに融着して疎水性領域、即ち、画像部を形成する。
微粒子ポリマーとしては、微粒子同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散しうるものがより好ましい。具体的には、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号および同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。中でも、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものが挙げられる。
微粒子ポリマーは、反応性官能基を有するのが好ましい。
マイクロカプセル型の感光性組成物としては、特開2000−118160号公報に記載されているもの、特開2001−277740号公報に記載されているような熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル型が好適に挙げられる。
スルホン酸発生ポリマー含有型の感光性組成物に用いられるスルホン酸発生ポリマーとしては、例えば、特開平10−282672号公報に記載されているスルホン酸エステル基、ジスルホン基またはsec−もしくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリマーが挙げられる。
無処理タイプの感光性組成物に、親水性樹脂を含有させることにより、機上現像性が良好となるばかりか、感光層自体の皮膜強度も向上する。親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するもの、親水性のゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。
無処理タイプの画像記録層は、特別な現像工程を必要とせず、印刷機上で現像することができる。無処理タイプの画像記録層の製造方法および製版印刷方法については、特開2002−178655号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<バックコート>
このようにして、本発明により得られる平版印刷版用支持体上に各種の画像記録層を設けて得られる本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層を設けることができる。
[製版方法(平版印刷版の製造方法)]
本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
上記露光の後、画像記録層がサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、コンベンショナルネガタイプ、コンベンショナルポジタイプおよびフォトポリマータイプのいずれかである場合は、露光した後、現像液を用いて現像して平版印刷版を得るのが好ましい。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
1.アルミニウム板の製造
表1に示される各成分(質量%、残部アルミニウム)を含有し、残部はAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延を行って、厚さ0.3mm、幅1060mmに仕上げ、アルミニウム板1〜3を得た。
Figure 2006248022
2.平版印刷版用支持体の作製
(実施例1−1〜1−42、比較例1)
上記で得られたアルミニウム板を以下に示す表面処理に供し、表2に示される各平版印刷版用支持体を得た。表中「−」は該当する処理を行わなかったことを示す。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(n)の各種処理を連続的に行うことにより行った。
(a)アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第1エッチング処理)
アルミニウム板に、苛性ソーダ濃度370g/L、アルミニウムイオン濃度100g/L、温度60℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の後に電気化学的粗面化処理を施す面のエッチング量を表2に示す。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(b)酸性水溶液中でのデスマット処理(第1デスマット処理)
アルミニウム板に、陽極酸化処理に用いた硫酸の廃液、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、5秒間デスマット処理を行った。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(c)酸性水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理(第1電解粗面化処理)
電解液として、表2に示される塩酸濃度、アルミニウムイオン濃度、硫酸濃度、液温の水溶液を用い、任意波形の交流電流を発生する電源を用いて発生させた交流を用いて、電気化学的な粗面化処理を行った。
また、アルミニウム板に流した交流電流の波形、周波数、アルミニウム板に流した交流電流の波形が台形波である場合の電流立ち上がり時間Tp、電流密度、電気量は、それぞれ表2に示されるとおりであった。なお、duty(ta/T)は、0.5、電流比は、0.95であった。また、電気量は、アルミニウム板のカソード反応時の電気量の総和であり、電流比は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和とカソード反応時の電気流の総和との比である。電流密度は、交流のピーク時におけるアルミニウム板のアノード反応時の電流密度である。
電解液中の硫酸の濃度を一定に保つには、補給水中に電解液中に一定に保つ濃度の硫酸と同じ濃度の硫酸を添加しておき、補給水と同時に添加する方法を用いた。
アルミニウムイオン濃度は、塩化アルミニウム(6水塩)を添加して調整した。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(d)アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第2エッチング処理)
アルミニウム板に、苛性ソーダ濃度50g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の電気化学的粗面化処理を施した面のエッチング量は、表2に示されるとおりであった。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(e)酸性水溶液中でのデスマット処理(第2デスマット処理)
アルミニウム板に、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、5秒間デスマット処理を行った。硫酸水溶液としては、後述する(m)陽極酸化処理工程の廃液を用いた。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(f)酸性水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理(第2電解粗面化処理)
第2電解液として、表2に示される塩酸濃度、硫酸濃度、アルミニウムイオン濃度、液温の水溶液を用い、任意波形の交流電流を発生する電源を用いて発生させた交流を用いて、電気化学的な粗面化処理を行った。アルミニウム板に対して、電気化学的な粗面化処理を行った。
また、アルミニウム板に流した交流電流の波形、周波数、アルミニウム板に流した交流電流の波形が台形波である場合の電流立ち上がり時間Tp、電流密度、電気量は、それぞれ表2に示されるとおりであった。なお、duty(ta/T)は、0.5、電流比は、0.95であった。
アルミニウムイオン濃度は、塩化アルミニウム(6水塩)を添加して調整した。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(g)アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第3エッチング処理)
アルミニウム板に、苛性ソーダ濃度50g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の電気化学的粗面化処理を施した面のエッチング量は、表2に示されるとおりであった。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(h)酸性水溶液中でのデスマット処理(第3デスマット処理)
アルミニウム板に、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、5秒間デスマット処理を行った。硫酸水溶液としては、後述する(m)陽極酸化処理工程の廃液を用いた。
その後、ニップローラで液切りした。液切り後、水洗処理し、さらにニップローラーで液きりした。
(j)塩酸水溶液中での電気化学的な粗面化処理(第3電解粗面化処理)
第3電解液として、表2に示される塩酸濃度、アルミニウムイオン濃度、液温の水溶液を用い、任意波形の交流電流を発生する電源を用いて発生させた表2に示す波形の交流を用いて、電気化学的な粗面化処理を行った。
また、アルミニウム板に流した交流電流の波形、周波数、アルミニウム板に流した交流電流の波形が台形波である場合の電流立ち上がり時間Tp、電流密度、電気量は、それぞれ表2に示されるとおりであった。なお、duty(ta/T)は、0.5、電流比は、0.95であった。
アルミニウムイオン濃度は、塩化アルミニウム(6水塩)を添加して調整した。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(k)アルカリ水溶液中でのエッチング処理、(第4エッチング処理)
アルミニウム板に、苛性ソーダ濃度50g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の電気化学的粗面化処理を施した面のエッチング量は、表2に示されるとおりであった。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(l)酸性水溶液中でのデスマット処理(第4デスマット処理)
アルミニウム板に、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度50℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、5秒間デスマット処理を行った。硫酸水溶液としては、後述する(m)陽極酸化処理工程の廃液を用いた。
その後、ニップローラで液切りした。液切り後、陽極酸化するまでの間では水洗処理はおこなわなかった。
(m)陽極酸化処理
電解液としては、170g/L硫酸水溶液に硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を5g/Lとした電解液(温度50℃)を用いた。陽極酸化処理は、アルミニウム板がアノード反応する間の平均電流密度が15A/dm2となるように行い、最終的な酸化皮膜量が2.7g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(n)親水化処理
アルミニウム板をケイ酸ソーダ1質量%水溶液(温度20℃)に10秒間浸漬させた。蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム板表面のSi量は、3.5mg/m2であった。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。更に、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥させて、平版印刷版用支持体を得た。
3.平版印刷版原版の作製
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、以下のようにしてサーマルポジタイプの画像記録層を設けて平版印刷版原版を得た。なお、画像記録層を設ける前には、後述するように下塗層を設けた。
平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、下塗層の塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
<下塗液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
Figure 2006248022
更に、下記組成の感熱層塗布液を調製し、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、この感熱層塗布液を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.8g/m2になるよう塗布し、乾燥させて感熱層(サーマルポジタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
<感熱層塗布液組成>
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=60/40、重量平均分子量7,000、未反応クレゾール0.5質量%含有) 0.90g
・メタクリル酸エチル/メタクリル酸イソブチル/メタクリル酸共重合体(モル比35/35/30) 0.10g
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.1g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 0.002g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.02g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780F、大日本インキ化学工業社製、固形分30質量%) 0.0045g(固形分換算)
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−781F、大日本インキ化学工業社製、固形分100質量%) 0.035g
・メチルエチルケトン 12g
Figure 2006248022
4.平版印刷版原版の評価
平版印刷版の耐汚れ性、耐刷性および耐クリーナー耐刷性を下記の方法で評価した。
(1)耐刷性(通常耐刷性)
得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像し、平版印刷版を得た。なお、いずれの平版印刷版原版も感度は良好であった。
<アルカリ現像液組成>
・D−ソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル(重量平均分子量1,000)
0.5 質量%
・水 96.15質量%
得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
結果を表2に示す。表2中の記号の意味は以下のとおりである。
A:30,000枚以上
A−B:20,000枚以上30,000枚未満
B:10,000枚以上20,000枚未満
C:10,000枚未満
(2)耐クリーナー性(クリーナー耐刷性)
印刷時に5000枚毎に富士写真フイルム(株)製マルチクリーナーを画像記録層の表面に1分間付着させてから水で拭き取るという作業を行った以外は、上記(1)の耐刷性の評価と同様にして、インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐クリーナー性(クリーナー耐刷性)を評価した。
結果を表2に示す。表中の記号の意味は以下のとおりである。
A:10,000枚以上
A−B:6,000枚以上10,000枚未満
B:3,000枚以上6,000枚未満
(3)耐汚れ性
上記(1)耐刷性の評価の場合と同様にして得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
結果を表2に示す。表2中の記号の意味は以下のとおりである。
A:ブランケットがほとんど汚れていない
A−B:ブランケットがわずかに汚れている
C:ブランケットが汚れており印刷物が明らかに汚れている
表2から明らかなように、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法(実施例1−1〜1−42)により得られた平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版は、いずれも耐刷性および耐汚れ性に優れており、また、耐クリーナ性にも優れていた。
Figure 2006248022
Figure 2006248022
Figure 2006248022
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における水洗処理に用いられる自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置の模式的な断面図である。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交流の波形の一例を示すグラフである。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
符号の説明
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
100 自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置
102 水
104 貯水タンク
106 給水筒
108 整流部
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
413 中間槽
414 陽極酸化処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 陽極
422、428 パスローラ
424 ニップローラ
430 陰極
434 直流電源
436、438 給液ノズル
440 しゃへい板
442 排液口

Claims (7)

  1. アルミニウム板に、少なくとも、
    (1)塩酸濃度5g/L〜12g/L未満、および、アルミニウムイオン濃度1g/L〜13g/Lを含有する水溶液中で電気化学的粗面化処理工程を行い、
    (2)塩酸濃度12g/L〜18g/L、および、アルミニウムイオン濃度10g/L〜21g/Lを含有する水溶液中で電気化学的粗面化処理工程を行う、平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
  2. アルミニウム板に、少なくとも、
    (2)塩酸濃度12g/L〜18g/L、および、アルミニウムイオン濃度10g/L〜21g/Lを含有する水溶液中で電気化学的粗面化処理工程を行い、
    (1)塩酸濃度5g/L〜12g/L未満、および、アルミニウムイオン濃度1g/L〜13g/Lを含有する水溶液中で電気化学的粗面化処理工程を行う、
    平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2で粗面化されたアルミニウム支持体を、さらに、酸性水溶液中でアルミニウム板が陽極時の電気量が10〜100C/dm2の電気量で交流を用いて電気化学的粗面化処理工程を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
  4. 前記(1)の電気化学的粗面化処理工程、と前記(2)の電気化学的粗面化処理工程の間に、アルカリ水溶液中でのエッチング処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
  5. 前記(1)の電気化学的粗面化処理工程、と前記(2)の電気化学的粗面化処理工程の間に、酸性水溶液中でのデスマット処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
  6. 前記酸性水溶液が、塩酸を含有する水溶液であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
  7. 前記請求項項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造された平版印刷版用アルミニウム支持体。
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