JP2006246841A - アミノ酸の分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来技術よりも簡便、かつ高感度なアミノ酸の分析方法を提供することにある。
【解決手段】支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAとアミノ酸を反応させる工程、ならびに、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAとアミノ酸を反応させる工程を持つ分析方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アミノ酸の新規、かつ高感度な分析方法に関する。
今日、アミノ酸分析技術は、疾病診断から医薬品開発、食品開発など多くの分野で欠くことのできない技術となっている。従来のアミノ酸分析の手法は、1948年にロックフェラー大学医学研究所のW.H.SteinとS.Mooreにより考案された、陽イオン交換クロマトグラフィーとニンヒドリン比色法を組み合わせたアミノ酸の一斉分離、定量系を基にしている。その後の技術革新と共に改良が重ねられ、検出限界はn molのオーダーから数百f mol〜p molのオーダーにまで高まったが、基本的な原理は今もって変わらない。近年、観測対象がよりミクロ化していること、生物からのサンプル採取を出来る限り低侵襲で行いたいこと等から、極少量のサンプルでも分析可能なよう、更なる高感度化が求められている。しかしながら、従来技術は既に成熟の域に達しており、これ以上の検出感度の飛躍的な向上を達成するためには新たな手法を導入する必要がある。その一つとして、近年目覚しい発展を遂げている液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)や液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC/MS/MS)の利用が挙げられ、これにより検出限界は数十f mol程度にまで向上するが、これらの機器は非常に高価であり外部受託費用も決して安くはない。また、サンプルの前処理が必須であるため、費用と手間がさらに必要となる(下記特許文献1参照)。
アミノアシル−tRNA合成酵素は、ATPを利用し、タンパク質合成時にtRNAへ、対応するアミノ酸を結合させる酵素である。アミノアシル−tRNA合成酵素はその性質上、特定のアミノ酸やtRNAへの特異性が極めて高い。アミノアシル−tRNA合成酵素のうち、チロシンに対応するものはチロシル−tRNA合成酵素と呼ばれており、tRNAがなくともチロシンとATPに結合することが知られている(下記非特許文献1および2参照)。これらの諸性質は学術的知見として知られてはいるが、アミノ酸分析へ応用されることはなかった。
WO 03069328号公報 A. R. Fersht et al., Biochemistry, 14, 3350-3356 (1975). J. Austin et al., J. Biol. Chem., 277, 28394-28399 (2002).
本発明の課題は、従来技術よりも簡便、かつ高感度なアミノ酸の分析方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、アミノアシル−tRNA合成酵素にアミノ酸を結合させ、さらに、蛍光標識されたATPを、アミノ酸が結合したアミノアシル−tRNA合成酵素に結合させ、該ATPに由来する蛍光を分析することにより、簡便かつ、高感度にアミノ酸を分析できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下を包含する。
(1)(A)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる工程、ならびに、(B)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAを検出する工程を含む、アミノ酸の分析方法。
(2)(a)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、ATP若しくはATPアナログと、標識されたtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる工程、ならびに、(b)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたtRNAを検出する工程を含む、アミノ酸の分析方法。
(3)(a’)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、tRNAと、標識されたATP若しくはATPアナログと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる工程、ならびに、(b’)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたATP若しくはATPアナログを検出する工程を含む、アミノ酸の分析方法。
(4)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合していない前記アミノ酸を反応物から除去する工程を含む、(1)〜(3)のいずれか1つに記載のアミノ酸の分析方法。
(5)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合していない前記標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAを反応物から除去する工程を含む、(1)〜(4)のいずれか1つに記載のアミノ酸の分析方法。
(6)前記標識が、蛍光標識であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載のアミノ酸の分析方法。
(7)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたtRNA、ATP又はATPアナログの検出が、蛍光顕微鏡により行われることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載のアミノ酸の分析方法。
(8)アミノアシル−tRNA合成酵素がチロシル−tRNA合成酵素であり、アミノ酸がチロシンである、(1)〜(7)のいずれか1つに記載のアミノ酸の分析方法。
(9)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素、および、標識されたATP若しくはATPアナログ又はtRNAを含む、アミノ酸の分析用のキット。
(10)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素、ならびに、ATP若しくはATPアナログおよび標識されたtRNAを含む、アミノ酸の分析用のキット。
(11)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素、ならびに、tRNAおよび標識されたATP若しくはATPアナログを含む、アミノ酸の分析用のキット
(12)前記標識が、蛍光標識であることを特徴とする(9)〜(11)のいずれか1つに記載のアミノ酸の分析用のキット。
(13)アミノアシル−tRNA合成酵素がチロシル−tRNA合成酵素であり、アミノ酸がチロシンである、(12)に記載のアミノ酸の分析用のキット。
本発明のアミノ酸の分析方法およびキットは、簡便かつ、高感度にアミノ酸を分析することができる。また、本発明のアミノ酸の分析方法およびキットは、アミノ酸に対する特異性が極めて高い。さらに、本発明のアミノ酸の分析方法およびキットは、生体内のアミノ酸の分布に関する位置情報を取得することに利用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
アミノアシル−tRNA合成酵素は、ATP結合部位、tRNA結合部位およびアミノ酸結合部位を有しており、ATPを利用して、特定のtRNAにそれに対応するアミノ酸を結合させる酵素である。アミノアシル−tRNA合成酵素は、ほとんど全ての生物で20種類のアミノ酸それぞれに対応して、20種類存在する。アミノアシル−tRNA合成酵素はその性質上、特定のアミノ酸およびtRNAへの特異性が極めて高い。例えば、チロシル−tRNA合成酵素は、20種類のアミノ酸のうちチロシンのみと特異的に結合し、また、tRNAのうちtRNATyrのみと特異的に結合する。
このような性質を有するアミノアシル−tRNA合成酵素を利用しているため、本発明のアミノ酸の分析方法および分析キットは、アミノ酸を高感度で検出することができる上、アミノ酸に対する特異性も高い。また、ある生物由来のアミノアシル−tRNA合成酵素は、その生物と同じ種に属する生物由来のtRNAと特異的に結合する。したがって、アミノ酸を含む
試料中に、ある生物由来のアミノアシル−tRNA合成酵素やtRNAが含まれている場合であっても、その生物とは異なる種に属する生物のアミノアシル−tRNA合成酵素やtRNAを用いれば、試料中のアミノアシル−tRNA合成酵素やtRNAによって妨害されることなく、試料中のアミノ酸を正確に測定することができる。
また、本発明のアミノ酸の分析方法および分析キットは、細胞切片などを用いて、生体試料のアミノ酸の分布位置情報を取得することもできる。
アミノアシル−tRNA合成酵素は、それに特異的なアミノ酸と結合すると、ATPおよびATPアナログへの親和性が上昇する。本発明は、アミノアシル−tRNA合成酵素のこれらの性質を利用し、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合したATP又はATPアナログの有無又は量を検出することで、試料中の特定のアミノ酸の有無又は特定のアミノ酸の量を分析する。また、アミノアシル−tRNA合成酵素がそれに特異的なアミノ酸と結合すると、そのアミノアシル−tRNA合成酵素のtRNAに対する親和性が上昇するという性質をそのアミノアシル−tRNA合成酵素が有している場合は、ATP又はATPアナログの代わりにtRNAを利用して、アミノ酸の検出を行うこともできる。すなわち、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合したtRNAの有無又は量を検出することで、試料中の特定のアミノ酸の有無又は特定のアミノ酸の量を分析することができる。
本発明に使用するアミノアシル−tRNA合成酵素は、適当な条件下で、20種類のアミノ酸のいずれかのアミノ酸、ATP若しくはATPアナログ、およびいずれかのtRNAに結合する能力を有していれば、特に制限はなく、例えば、Bos(ウシ)属、Artemia属、Rattus(クマネズミ)属等に属する動物、Bombyx(カイコ)属、Drosophila(ショウジョウバエ)属等に属する昆虫、Escherichia属、Thermus属、Bacillus属、Saccharomyces属、Staphylococcus属等に属する微生物など、いずれの生物由来のアミノアシル−tRNA合成酵素であってもよい。動物由来のアミノアシル−tRNA合成酵素としては、Bos(ウシ)属又はArtemia属に属する動物由来のものが好ましく、Bos taurus又はArtemia cysts由来のものが特に好ましい。昆虫由来のアミノアシル−tRNA合成酵素としては、Bombyx(カイコ)属に属する昆虫由来のものが好ましく、Bombyx mori由来のものが特に好ましい。微生物由来のアミノアシル−tRNA合成酵素としては、Escherichia属、Thermus属、Bacillus属、Saccharomyces属又はStaphylococcus属に属する微生物由来のものが好ましく、Escherichia coli、Thermus thermophilus、Bacillus subtilis、Saccharomyces cerevisiae又はStaphylococcus aureus由来のものが特に好ましい。
本発明に使用するアミノアシル−tRNA合成酵素には、適当な条件下で、20種類のアミノ酸のいずれかのアミノ酸、ATP若しくはATPアナログおよびtRNAに結合する能力を有している限り、いずれかの野性型の生物由来のアミノアシル−tRNA合成酵素のアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有する変異体も含まれる。変異体の変異には、自然変異または化学的変異剤や紫外線等による人工変異を含む。上述の野性型の生物由来のアミノアシル−tRNA合成酵素には、例えば、後述のaccession numberが記載されたアミノアシル−tRNA合成酵素が挙げられる。
また、本発明に用いるアミノアシル−tRNA合成酵素は、検出するアミノ酸の種類に応じて選択する。すなわち、検出するアミノ酸に対応したアミノアシル−tRNA合成酵素を用いる。例えば、チロシンを検出したい場合は、チロシル−tRNA合成酵素を、バリンを検出したい場合はバリル−tRNA合成酵素を用いる。
アミノアシル−tRNA合成酵素は、公知の手法によりさまざまな生物から単離することができる。また、配列が公知の場合はそれに基づいてプローブを設計し、PCR法を用いるなどして目的となる遺伝子を取得し、それを適当な発現ベクターに組み込んで、それを宿主に導入して発現させることにより、目的のアミノアシル−tRNA合成酵素を取得すること
ができる。さらに、配列が公知のアミノアシル−tRNA合成酵素のアミノ酸配列と例えば80%以上の相同性を有するアミノアシル−tRNA合成酵素についても、例えばサザンハイブリダイゼーション法を利用するなどして、取得することができる。以下、アミノアシル−tRNA合成酵素の種類毎に、より詳細に説明する。
アラニル−tRNA合成酵素(AlaRS)は、例えばStreptococcus pyogenes(accession number: DDBJ AE006576)、Mycobacterium bovis(accession number: DDBJ BX248343)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ AK036738)等の動物、A.thaliana(accession number: DDBJ Z22673)等の植物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のアラニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばBombyx moriのアラニル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Nishio, K., & Kawakami, M. (1984) J. Biochem. 96, 1867-1874参照)で単離することができる。
Bombyx moriのアラニル−tRNA合成酵素を得るための以下の手順はすべて5℃で行うのが好ましい。まず、五齢5〜6日目のカイコ(Bombyx mori)の後部絹糸腺980gを、20mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.4)、20mM KCl、5mM MgCl2、2mM DTTを含む緩衝液(以下、緩衝液1-A)2,700mlに加え、ホモジナイズする。次に、ホモジナイズ後の溶液から、絹タンパク質であるフィブロインの凝固物を除くため、二層のガーゼで濾過する。この濾液を11,300×gで30分間、遠心分離を行った後、上清に個体の硫酸アンモニウムを80%飽和になるように、スターラーで攪拌しながら溶かす。20分後、この溶液を遠心分離し、沈殿物を1,000mlの緩衝液1-Aに溶かした後、再び遠心分離を行い不溶物を取り除く。得られた上清に、上清1,400mlに対し227gの割合で硫酸アンモニウムを溶かし、20分後に遠心分離を行う。得られた沈殿物を、20mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.6)、1mM MgCl2、0.5mM EDTA-2Na、50mM KCl、1mM DTT、25%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液1-B)90mlに溶かし、2,000mlの緩衝液1-Bで24時間の透析を行う。透析中、2,000mlの緩衝液1-Bは3回交換する。
次に、透析後の硫酸アンモニウム溶液をイオン交換クロマトグラフィーにかける。まず、20mM Tris-HCl(pH 7.5)、10mM MgCl2、0.5mM EDTA-2Na、1mM DTT、25%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液1-C)で平衡化したDEAE-Sephacelカラム(3.8×24cm)(Amersham Biosciences Corp.)に、先ほど得られた透析後の硫酸アンモニウム溶液をアプライし、300mlの緩衝液1-Cを42ml/hourの流速でカラムに流しウォッシュする。次に、緩衝液1-Cを2,000ml流す間に、KClの濃度を0.05Mから0.3Mへと線形でグラジエントをかける。目的物があると予想されるフラクションを集め、限外濾過で40mlにする。この溶液を27,000×gで30分間、遠心分離し、得られた溶液を1M 酢酸でpH 7.0に調整する(以下、DEAE-Sephacel後溶液)。
次に、DEAE-Sephacel後溶液を、ヒドロキシアパタイトカラムを用いてクロマトグラフィーにかける。まず、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、1mM MgCl2、1mM DTT、25%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液1-D)で平衡化したヒドロキシアパタイトカラム(3.6×20cm)(生化学工業株式会社)に、DEAE-Sephacel後溶液 40mlを21ml/hourの流速でアプライした後、200mlの緩衝液1-Dを50ml/hourの流速でカラムに流しウォッシュする。次に、緩衝液1-Dを1,000ml流す間に、250mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、1mM MgCl2、1mM DTT、25%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液1-E)を1,000ml、線形でグラジエントがかかるように、緩衝液1-Dと混合させながらカラムに流して行く。目的物があると予想されるフラクションを集め、限外濾過で21.5mlにし、-80℃で保存する。このようにして、Bombyx moriのアラニル−tRNA合成酵素が得られる。
アルギニル−tRNA合成酵素(ArgRS)は、例えばStreptococcus pneumoniae(accession
number: DDBJ AE008553)、Mycoplasma pulmonis(accession number: DDBJ AL445563)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ AK076160)、Homo sapiens(accession number: DDBJ BC000528)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のアルギニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばThermus thermophilusのアルギニル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Shimada, A., Nureki, O., Dohmae, N., Takio, K., & Yokoyama, S.
(2001) Acta Cryst. D57, 272-275参照)で単離することができる。
250gのThermus thermophilus HB8を、50mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.9)、10mM 酢酸マグネシウム、5mM β-メルカプトエタノール、0.5mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、500mM NH4Clを含む緩衝液(以下、緩衝液2-A)で懸濁し、超音波破砕器でホモジナイズする。このライセートを30,000×gで30分間、遠心分離する。得られた上清を、50mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.9)、10mM 酢酸マグネシウム、5mM β-メルカプトエタノール、0.1mM フェニルメチルスルホニルフルオライドを含む緩衝液(以下、緩衝液2-B)で透析する。
次に、得られた溶液をイオン交換クロマトグラフィーにかける。緩衝液2-Bで平衡化したDEAE-Sephacelカラム(Amersham Biosciences Corp.)に、先ほど得られた溶液をアプライし、NH4Clの濃度を0Mから0.25Mへと線形でグラジエントをかける。ピークのあるフラクションを集め、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、5mM β-メルカプトエタノールを含む緩衝液(以下、緩衝液2-C)で透析を行った後、4M (NH4)2SO4を含む緩衝液2-C(以下、緩衝液2-D)を透析後の溶液に加え、この溶液が0.8M (NH4)2SO4を含むようにする(以下、DEAE-Sephacel後溶液)。
次に、DEAE-Sephacel後溶液を、Butyl-Toyopearlカラム(東ソー株式会社)にアプライし、(NH4)2SO4の濃度を0.8Mから0Mへと線形でグラジエントをかけ、目的物があると予想されるフラクションを集めて緩衝液2-Bで透析を行う。その後、緩衝液2-Bで平衡化したAF-Red Toyopearlカラム(東ソー株式会社)にアプライし、KClの濃度を0Mから開始して線形にグラジエントをかけていく。ArgRSはAF-Red Toyopearlへのアフィニティーが高いために、KClの濃度が1M程度では溶出せず、2M程度で溶出してくる。目的物が含まれると予想されるフラクションを集め、緩衝液2-Cで透析後、この溶液が0.8M (NH4)2SO4を含むように緩衝液2-Dを混合する(以下、Toyopearl後溶液)。
次に、Phenyl-Superose HR 10/10カラム(Amersham Biosciences Corp.)にToyopearl後溶液をアプライし、(NH4)2SO4の濃度を0.8Mから0Mへと線形でグラジエントをかけ、目的物が含まれると予想されるフラクションを集める。このようにして、Thermus thermophilusのアルギニル−tRNA合成酵素が得られる。
アスパラギニル−tRNA合成酵素(AsnRS)は、例えばEscherichia coli(accession number: DDBJ D90730)、Streptococcus pyogenes(accession number: DDBJ AE006512)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ BC052849)、Homo sapiens(accession number: DDBJ BC001687)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のアスパラギニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばThermus thermophilusのアスパラギニル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Leberman, R., Antonsson, B., Giovanelli, R., Guariguata, R., Schumann, R., & Wittinghofer, R. (1980) Anal. Biochem. 104, 29-36 参照)で単離することができる。
Thermus thermophilus由来AsnRSの遺伝子をpETベクターに組み込み、Escherichia coli
HMS 174(DE3)を用いてThermus thermophilus由来AsnRSを過剰発現させる(Seignovert,
L., Hartlein, M., & Leberman, R. (1996) Eur. J. Biochem. 239, 501-508参照)。以下、断りがあるまでは室温で作業を行う。菌体200gを、1mM EDTA、100mg リゾチームを含む溶液500mlで懸濁し5分間インキュベートする。その後、4% デオキシコール酸ナトリウム 10ml、DNase I 5mgを加え、攪拌しながら20分間インキュベートする。10,000×gで30分間遠心分離を行った後、上清を70℃で1時間インキュベートし、10,000×gで30分間遠心分離を行い、上清を回収する。
次に、50mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.6)、10mM MgCl2、0.5mM DTE、10μM PMSF、1mM NaN3を含む緩衝液(以下、緩衝液3-A)で平衡化したDEAE-Sepharose CL-6Bカラム(5×21cm)(Amersham Biosciences Corp.)に、回収した上清をアプライし、緩衝液3-A 500mlでカラムを洗う。400mM NaClを含む緩衝液3-A(以下、緩衝液3-B)を用意し、総量で3,000mlの緩衝液を流す間にNaClの濃度が0Mから400mMへとグラジエントがかかるように、緩衝液3-Aへ3-Bを混合させながら流速220ml/hourでカラムに流す。目的物があると予想されるフラクションを、AcA 44カラム(Sepracor)へアプライして緩衝液3-Aを流し、目的物があると予想されるフラクションを回収する。回収したフラクションを70% 硫安アンモニウム溶液にし、遠心分離を行いペレットを回収する。6mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.6)、1mM DTT、1mM NaN3、0.01mM Pefabloc(Boehringer Mannheim)でペレットを溶かし、PD10(Amersham Biosciences Corp.)にかけ-80℃で保存する。このようにして、Thermus thermophilusのアスパラギニル−tRNA合成酵素が得られる。
アスパラチル−tRNA合成酵素(AspRS)は、例えばPseudomonas aeruginosa(accession
number: DDBJ AE004530)、Streptococcus pyogenes(accession number: DDBJ AE006633)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ AK077533)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のアスパラチル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばEscherichia coliのアスパラチル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Eriani, E., Dirheimer, G., & Gangloff, J. (1990) Nucl. Acids Res. 18, 7109-7118、および、Prevost, G., Eriani, G., Kern, D., Dirheimer, G., & Gangloff, J. (1989) Eur. J. Biochem. 180, 351-358 参照)で単離することができる。
Escherichia coliのアスパラチル−tRNA合成酵素を得るための以下の手順は全て4℃で行うのが好ましい。まず、400gのEscherichia coli MRE600を、100mM Tris-HCl緩衝液(pH
8)、10mM MgCl2、1mM EDTA、5mM DTTを含む緩衝液(以下、緩衝液4-A)1,000mlで懸濁し、ガラスビーズ破砕機で懸濁液をホモジナイズする。細胞の残骸を取り除くため、14,000×gで90分間、遠心分離する。得られた上清1,000mlに水酸化アンモニウムを加えpH 7.8にした後、スターラーで攪拌しながら、硫酸アンモニウムを250g加える。その後、14,000×gで45分間遠心分離を行い、不溶性の物を取り除く。得られた上清に硫酸アンモニウムを160g加え、再び14,000×gで45分間、遠心分離を行う。得られたペレットを、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)、1mM EDTA、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液4-B)150mlで懸濁し、10,000mlの緩衝液4-Bで8時間の透析を2回行う。透析後の溶液を19,000×gで30分間、遠心分離を行い、上清を得る。
次に、得られた上清を緩衝液4-Bで平衡化したDEAE-celluloseカラム(7×190cm)(Whatman plc.)に流速180ml/hourでアプライした後、250mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.5)、1mM EDTA、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液4-C)を、緩衝液4-Bから4-Cへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液4-Bと混合させながら総量で6,000ml、カラムに流す。アミノアシル化活性を持つフラクション(Prevost, G., Eriani, G., Kern, D.,
Dirheimer, G., & Gangloff, J. (1989) Eur. J. Biochem. 180, 351-358 参照)を、10mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)、1mM EDTA、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液4-D)で透析し、透析後の溶液をHA-Ultroelカラム(5.5×12.5cm)(Amersham Bioscie
nces Corp.)に流速160ml/hourでアプライする。50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)、1mM EDTA、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液4-E)を、緩衝液4-Dから4-Eへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液4-Dと混合させながら総量で3,000ml、カラムに流す。目的物があると予想されるフラクションを、1mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)、1mM EDTA、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液4-F)で平衡化したAffigel102カラム(2.5×20cm)(Bio-Rad Laboratories, Inc.)に流速90ml/hourでアプライした後、緩衝液4-Fから4-Eへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液4-Eを4-Fへと混合させながら総量で1,000ml、カラムに流す。目的物があると予想されるフラクションを、10mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液4-G)で透析する。
次に、緩衝液4-Gで平衡化した1ml Mono Q HR 5/5カラム(Amersham Biosciences Corp.)に、透析後の溶液をアプライし、KClの濃度が0Mから700mMへと線形でグラジエントがかかるように緩衝液4-GへKClを混合させながら、緩衝液を流速1ml/minでカラムへ流していく。目的物は、KClの濃度が200mMのときのフラクションに主に溶出する。このようにして、Escherichia coliのアスパラチル−tRNA合成酵素が得られる。
システイニル−tRNA合成酵素(CysRS)は例えばAgrobacterium tumefaciens(accession number: DDBJ AE008037)、Bifidobacterium longum(accession number: DDBJ AE014648)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ AJ276796)、Homo sapiens(accession number: DDBJ BC002880)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のシステイニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばEscherichia coliのシステイニル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Newberry, K. J., Kohn, J., Hou, Y., & Perona, J. J. (1999) Acta Cryst. D55, 1046-1047 参照)で単離することができる。
Escherichia coli JM109を、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.4)、50mM Nacl、20mM β-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液5-A)に1mM PMSFを加えた緩衝液で懸濁し、超音波破砕を行う。このライセートをDEAE-celluloseカラム(Sigma-Aldrich Co.)にアプライし、緩衝液5-Aでカラムを洗う。その後、NaClの濃度が50mMから500mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液5-AへNaClを混合させながらカラムに流していく。目的物は、NaClの濃度が約80mMのときのフラクションに主に溶出する。目的物があると予想されるフラクションを緩衝液5-Aで透析した後、溶液をhydroxyapatiteカラム(Bio-Rad Laboratories, Inc.)にアプライし、緩衝液5-Aでカラムを洗う。目的物は洗浄液に溶出してくるので、SDS-PAGEで純度の高いフラクションを選定し限外濾過をして10〜15mg/ml程度の濃度にする。得られた溶液を20mM potassium phosphate緩衝液(pH 7.4)、50mM Nacl、50%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液5-B)で透析し、-20℃で保存する。このようにして、Escherichia coliのシステイニル−tRNA合成酵素が得られる。
グルタミニル−tRNA合成酵素(GlnRS)は、例えばEscherichia coli(accession number: DDBJ D90707)、Buchnera aphidicola(accession number: DDBJ AE014017)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ AK003794)、Homo sapiens(accession
number: DDBJ BC000394)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のグルタミニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばSaccharomyces cerevisiaeのグルタミニル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Ludmerer, S. W., Wright, D. J., & Schimmel P. (1993). J.
Biol. Chem. 268, 5519-5523 参照)で単離することができる。
Saccharomyces cerevisiaeのグルタミニル−tRNA合成酵素を得るための以下の手順は全
て0℃で行うのが好ましい。まず、25mM NaPO4緩衝液(pH 7.0)、50mM NaCl,、1mM 2-メルカプトエタノール、1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、1μM ペプスタチン、0.5mM 1,10-フェナントロリン、10μg/ml ロイペプチンを含む緩衝液(以下、緩衝液6-A)を、 Saccharomyces cerevisiae SWL411の菌量と同程度加え泥状にする。その体積の約1/3のガラスビーズを加え、ガラスビーズ破砕機でホモジナイズする。溶液を3,000rpmで5分間、遠心分離しガラスビーズと未破砕の細胞を取り除いた後、上清を17,000rpmで10分間、遠心分離し残骸を取り除く。得られた上清を40,000rpmで1時間、遠心分離し上清をより綺麗にする。得られた上清に1μg/ml DNase Iと5μg/ml RNase Aを加え、氷上で30分間消化させる。
次に、得られた溶液の100倍量の、25mM NaPO4緩衝液(pH 7.0)、50mM NaCl、1mM 2-メルカプトエタノールを含む緩衝液(以下、緩衝液6-B)で2回透析を行う。透析後の溶液を10,000rpmで10分間、遠心分離を行う。上清を、緩衝液6-Bで平衡化したFast Flow Sカラム(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、溶出液のA280の値がA280<0.1になるまでカラムを緩衝液6-Bで洗う。その後、総量で10カラムヴォリューム流す間にNaClの濃度が50mMから500mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液6-BへNaClを混合させながらカラムへ流していく。目的物は、NaClの濃度が225mM付近のフラクションに主に溶出する。
次に、25mM NaPO4緩衝液(pH 7.0)、1mM 2-メルカプトエタノールを含む緩衝液(以下、緩衝液6-C)で、目的物が含まれると予想されるフラクションを希釈し、限外濾過を行う。その後、得られた溶液をMonoS HR5/5カラム(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、NaClの濃度が10mM/mlの割合で50mMから500mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液6-BへNaClを混合させながらカラムへ流していく。目的物は、NaClの濃度が270mMのフラクションに主に溶出する。このようにして、Saccharomyces cerevisiaeのグルタミニル−tRNA合成酵素が得られる。
グルタミル−tRNA合成酵素(GluRS)は、例えばStreptococcus pyogenes(accession number: DDBJ AE006491)、Mycobacterium bovis(accession number: DDBJ BX248344)等の微生物、Oryza sativa(accession number: DDBJ AE017084)、Arabidopsis thaliana(accession number: DDBJ AF067773)等の植物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のグルタミル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばEscherichia coliのグルタミル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Lapointe, J., Levasseur, S., & Kern, D. (1985) Methods. Enzymol. 18, 7109-7118 参照)で単離することができる。
Escherichia coliのグルタミル−tRNA合成酵素を得るための以下の手順はすべて0〜4℃で行うのが好ましい。まず、Escherichia coli MRE600 1kgを、10mM リン酸カリウム緩衝液(pH 8.0)、20mM 2-メルカプトエタノール、10mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-A)2,000mlで懸濁し、超音波破砕する。ライセートを8,000rpmで30分間遠心分離し、残骸や未破砕細胞を除去する。得られた上清2,350mlに1M リン酸カリウム緩衝液(pH 8.0)、20mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-B)を125ml加えた後、最終濃度が7%になるようにPEG-6000を、1.5%になるようにデキストラン T-500を加える。2時間攪拌した後、5,000rpmで20分間遠心分離を行い、溶液を2層に分ける。
次に、上記2層のうちの上層3,000mlを、20mM 2-メルカプトエタノール 、10%グリセロールを含む溶液2,000mlで希釈し、計5,000mlの溶液のうち、半分の2,500mlをDEAE-cellulose(type DE52) (7×30cm) (Whatman plc.)にアプライする。10mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)、20mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液
(以下、緩衝液7-C)でカラムを洗った後、総量で6,000ml流す間に、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)、20mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-D)から250mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.5)、20mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-E)へと線形でグラジエントがかかるように、流速400ml/hourでカラムに流していく。目的物は、グラジエントの終端付近の溶出液に主に含まれる。目的物が含まれると予想されるフラクションを回収し、10mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.8)、20mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-F)で透析を行う。未精製の残り2,500mlに関しても同様の手順で精製を行う。
次に、cellulose powder(CF-11)(Whatman plc.)を10%(w/w)の割合で、 hydroxylapatite(BioGel HTP)(Bio-Rad Laboratories, Inc.)に混合したカラム(6×12cm)を作成し緩衝液7-Fで平衡化したものへ、透析後の溶液をアプライし、緩衝液7-Fを300ml/hourの流速で200ml流してカラムを洗う。その後、総量で2,000ml流す間に、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.8)、20mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-G)から200mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.8)、20mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-H)へと線形でグラジエントがかかるように、カラムに流していく。主だったピークが2つ現れるので、後半のピークに関してフラクションを回収する。
次に、回収したフラクションを、30%ポリエチレングリコール、20mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-I)で透析を行う。その後、10mM Tris、77mM グリシン(pH 8.3)、20mM 2-メルカプトエタノール、50%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-J)で透析を行う(以下、得られた溶液を、透析後FractionHA溶液と呼ぶ)。
次に、Canalcoのゲル電気泳動装置を用いる(Daivs, B. J. (1964) Ann. N.Y. Acad. Sci. 121, 404-427 参照)。ただし、下層ゲル(40ml)が、7.5% アクリルアミド、0.3% ビスアクリルアミド、365mM Tris-HCl(pH 8.9)、N,N,N',N'-tetramethylethylenediamine
15μl、過硫酸アンモニウム 3mgを含む溶液を室温で固めたもので、ゲル形成後に30分間電気泳動させて未反応の過硫酸イオンを除去し、60mM Tris-HCl緩衝液(pH 6.8)、50%グリセロールを含む緩衝液で透析された蛋白質溶液を上層ゲルの上に溜めてあり、カラムの表面は流水で0〜4℃に保たれ、上層ゲルの頂点と下層ゲルの底部には1,000mlあたりTris 6gとグリシン 28.8gを含む溶液(pH 8.3)を介して、それぞれ電極のカソード、アノードが繋がっている点が異なる。透析後FractionHA溶液8mlに飽和ブロモフェノールブルーを0.1ml加え、上記で用意したゲルカラム(12×3.4cm2)の上面に層状に溜める。カラムに直流を40mA流すと抵抗値が10,000Ω程度の一定値を指す。ゲルの底面は、10mM Tris、77mM グリシン(pH 8.3)、20mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-K)を絶えず流し、フラクションとして回収する。4時間程度経ちブロモフェノールブルーが溶出してきてから最初に溶出してくる蛋白質が目的物である。目的物が含まれると予想されるフラクションを小型のDEAE-celluloseカラムを用いたクロマトグラフィーにかけ、濃縮する。長期保存する際は、50mM HEPES-Na(pH 8)、10mM 2-メルカプトエタノール、0.2mM DTT、50%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液7-L)に置換し-20℃で保存するとよい。このようにして、Escherichia coliのグルタミル−tRNA合成酵素を得ることができる。
グリシル−tRNA合成酵素(GlyRS)は、例えばThermoplasma acidophilum(accession number: DDBJ AL445063)、Mycobacterium tuberculosis(accession number: DDBJ BX842579)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ U09510)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のグリシル−tR
NA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばThermus thermophilusのグリシル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Mazauric, M. H., Keith, G., Logan, D., Kreutzer, R., Giege, R., & Kern, D. (1998) Eur. J. Biochem. 251, 744-757 参照)で単離することができる。
Thermus thermophilusのグリシル−tRNA合成酵素を得るための以下の手順はすべて4℃で行うのが好ましい。まず、Thermus thermophilus HB8 80gを、250mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.0)、1mM MgCl2、5mM2-メルカプトエタノール、0.1mM Dip-F、0.1mM EDTA、0.1mM Pefablock、1mM ペプスタチン A、1mM ベスタチン、1mM E64を含む緩衝液(以下、緩衝液8-A)240mlで懸濁し、超音波破砕する。10,500×gで1時間遠心分離した後、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.2)、5mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM Dip-F、0.1mM EDTA、0.1mM Pefablock、1mM ペプスタチン A、1mM ベスタチン、1mM E64を含む緩衝液(以下、緩衝液8-B)で上清の透析を行う。
次に、透析後の溶液をDEAE-Sephacelカラム(6cm×30cm2)(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、2×2,000mlを流す間にNaClの濃度が0mMから400mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液8-BへNaClを混合させながら流速2ml/minでカラムへ流していく。目的物は、NaClの濃度が200mMのフラクションに主に溶出する。目的物が存在すると予想されるフラクションを緩衝液8-Bで透析した後、DEAE-celluloseカラム(3cm×30cm2)(Whatman plc.)に透析後の溶液をアプライし、2×2,000mlを流す間に緩衝液8-Bから250mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.5)、5mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM Dip-F、0.1mM EDTA、0.1mM Pefablock、1mM ペプスタチン A、1mM ベスタチン、1mM E64を含む緩衝液(以下、緩衝液8-C)へと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液8-Bへ8-Cを混合させながら流速2ml/minでカラムへ流していく。目的物は、リン酸カリウムの濃度が160mMのフラクションに主に溶出する。目的物が存在すると予想されるフラクションを緩衝液8-Bで透析した後、hydroxyapatiteカラム(4cm×12cm2)(Bio-Rad Laboratories, Inc.)に透析後の溶液をアプライし、2×1,000mlを流す間に20mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.8)、5mM
2-メルカプトエタノール、0.1mM Dip-F、0.1mM EDTA、0.1mM Pefablock、1mM ペプスタチン A、1mM ベスタチン、1mM E64を含む緩衝液(以下、緩衝液8-D)から200mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.8)、5mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM Dip-F、0.1mM EDTA、0.1mM
Pefablock、1mM ペプスタチン A、1mM ベスタチン、1mM E64を含む緩衝液(以下、緩衝液8-E)へと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液8-Dへ8-Eを混合させながら流速2ml/minでカラムへ流していく。目的物は、リン酸カリウムの濃度が70mMのフラクションに主に溶出する。目的物が存在すると予想されるフラクションを限外濾過した後、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.2)、50%グリセロール、5mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM Dip-F、0.1mM EDTA、0.1mM Pefablock、1mM ペプスタチン A、1mM ベスタチン、1mM E64を含む緩衝液(以下、緩衝液8-F)で透析し-20℃で保存する。このようにして、Thermus thermophilusのグリシル−tRNA合成酵素を得ることができる。
ヒスチジル−tRNA合成酵素(HisRS)は、例えばStreptococcus equisimilis(accession number: DDBJ Z17214)、Thermoanaerobacter tengcongensis(accession number: DDBJ AE013085)等の微生物、Caenorhabditis elegans(accession number: DDBJ L14433)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のヒスチジル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばThermus thermophilusのヒスチジル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Yaremchuk, A. D., Cusack, S., Aberg, A., Gudzera, O., Kryklivyi, I., & Tukalo, M. (1995) Proteins. 22, 426-428 参照)で単離することができる。
Thermus thermophilusのヒスチジル−tRNA合成酵素を得るための以下の手順はすべて4℃で行うのが好ましい。まず、Thermus thermophilus HB8を、加圧型細胞破砕装置で破砕
し、65%硫酸アンモニウム溶液にして塩析を行う。その後、0.02mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.9)、5mM MgCl2、0.1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、1mM DTT、1mM NaN3を含む緩衝液(以下、緩衝液9-A)にて透析を行い、DEAE-sepharoseカラム(5×80cm)(Amersham Biosciences Corp.)にアプライする。総量で5,000mlの緩衝液を流す間にNaClの濃度が30mMから300mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液9-AへNaClを混合させながらカラムへ流していく。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収し、55%硫酸アンモニウム溶液にして塩析を行った後、polyvinyl sorbent Toyoperl HW-65(3×80cm)(東ソー株式会社)へアプライし、総量で4,000mlの緩衝液を流す間に硫酸アンモニウムの濃度が40%から10%へと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液9-Aへ硫酸アンモニウムを混合させながらカラムへ流していく。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収して緩衝液9-Aで透析後、hydroxyapatiteカラム(3×40cm)(Bio-Rad Laboratories, Inc.)へアプライし、総量で4,000mlの緩衝液を流す間にリン酸カリウム緩衝液(pH 7.9)の濃度が10mMから280mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液9-Aへリン酸カリウムを混合させながらカラムへ流していく。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収して緩衝液9-Aで透析後、Heparin-sepharoseカラム(1×20cm)(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、総量で500mlの緩衝液を流す間にKClの濃度が0Mから250mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液9-AへKClを混合させながらカラムへ流していき、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収する。このようにして、Thermus thermophilusのヒスチジル−tRNA合成酵素を得ることができる。
イソロイシル−tRNA合成酵素(IleRS)は、例えばBdellovibrio bacteriovorus(accession number: DDBJ BX842652)、Mycoplasma pulmonis(accession number: DDBJ AL445565)等の微生物、Leishmania donovani(accession number: DDBJ AF326935)等の昆虫、Mus musculus(accession number: DDBJ AK010975)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のイソロイシル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばSaccharomyces cerevisiaeのイソロイシル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法で単離することができる。
Saccharomyces cerevisiae由来のIleRSの遺伝子をpKR4ベクターに組み込み、Escherichia coli TG2を用いてSaccharomyces cerevisiae由来IleRSを過剰発現させる(Racher, K., Kalmar, G. B., & Borgford, T. J. (1991) J. Biol. Chem. 266, 17158-17164 参照)。これ以降のSaccharomyces cerevisiaeのイソロイシル−tRNA合成酵素を得る手順はすべて4℃で行う。まず、50mM Tris(pH 8)、1mM EGTA、0.5mM PMSF、25%スクロースを含む緩衝液(以下、緩衝液10-A)110mlで菌体を懸濁し、濃度が2.2mg/mlとなるようにリゾチームを加え氷温で30分間インキュベートする。その後、100mM PMSFを0.6ml加え、超音波破砕機でホモジナイズする。ホモジナイズ後に、DNase、MgCl2、MnCl2を、最終濃度がそれぞれ11μg/ml、22mM、1.1mMになるように加え、氷温で30分間インキュベートする。その後、ライセートを39,000×gで30分間、遠心分離を行う。
次に、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、50mM KCl、0.5mM DTT、0.5mM PMSFを含む緩衝液(以下、緩衝液10-B)で平衡化した、Q-Sepharoseが充填されたanion-exchangeカラム(2.6×31cm)(Amersham Biosciences Corp.)に、得られた上清をアプライし、緩衝液10-Bを300mlカラムに流してカラムを洗う。その後、総量で2,000mlの緩衝液を流す間にKClの濃度が50mMから400mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液10-BへKClを混合させながら流速175ml/hourでカラムへ流していく。目的物は主に、KClの濃度が150mM
〜175mMのフラクションで他の蛋白質と共に溶出してくる。SDS-PAGEで目的物が存在するフラクションを確認して回収する。
次に、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、1mM DTT、0.5mM PMSF、25%グリセロール
を含む緩衝液(以下、緩衝液10-C)で平衡化したhydroxyapatiteカラム(2.5×17cm)(Bio-Rad Laboratories, Inc.)に、回収したフラクションをアプライし、緩衝液10-Cを100mlカラムに流してカラムを洗う。その後、総量で600mlの緩衝液を流す間にリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)の濃度が100mMから400mMへと線形でグラジエントがかかるように、400mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、1mM DTT、0.5mM PMSF、25%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液10-D)を緩衝液10-Cへ混合させながら流速50ml/hourでカラムへ流していく。目的物が存在する予想されるフラクションを回収し、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、0.5mM DTTを含む緩衝液(以下、緩衝液10-E)で透析を行う。透析後の溶液を限外濾過で濃縮し、50%グリセロールに置換後-20℃で保存する。このようにして、Saccharomyces cerevisiaeのイソロイシル−tRNA合成酵素を得ることができる。
ロイシル−tRNA合成酵素(LeuRS)は、例えばClostridium perfringens(accession number: DDBJ BA000016)、Streptococcus pyogenes(accession number: DDBJ AE006486)等の微生物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のロイシル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばThermus thermophilusのロイシル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法で単離することができる。
Thermus thermophilus由来のLeuRSを、Escherichia coli BL21(DE3)pLysSを用いて過剰発現させる(Yaremchuk, A. D., Cusack, S., Gudzera, O., Grotli, M., & Tukalo, M. (2000). Acta Cryst. D56, 667-669、Fechter, P., Rudinger, J., Giege, R., & Theobald-Dietrich, A. (1998). FEBS Lett. 436, 99-103 および Studier, F. W., Rosenberg,
A. H., Dunn, J. J., & Dubendorff, J. W. (1990). Methods. Enzymol. 185, 60-89 参照)。これ以降のThermus thermophilusのロイシル−tRNA合成酵素を得る手順はすべて4℃で行う。回収した菌体6,000gを、100mM Tris-HCl(pH 8.0)、5mM EDTA、30mM 2-メルカプトエタノール、5mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、20mM リゾチーム、4%グリセロール、プロテアーゼ阻害剤Complete(Roche Diagnostics)1タブレット/緩衝液25mlを含む緩衝液(以下、緩衝液11-A)に氷温で懸濁し、超音波破砕機でホモジナイズする。溶液に1mM MgCl2と25mg/ml DNaseを含む様にそれぞれを加え、室温で30分間インキュベートする。ライセートを10,000×gで30分間遠心分離を行い、上清を70℃で40分間インキュベートした後、20,000×gで30分間遠心分離を行う。得られた上清を、20mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.9)、5mM MgCl2、0.1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、2mM DTT、1mM NaN3を含む緩衝液(以下、緩衝液11-B)で透析後、緩衝液11-Bで平衡化したDEAE-Sepharoseカラム(2.5×55cm)(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、総量で2×800mlの緩衝液を流す間にNaClの濃度が30mMから300mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液11-BへNaClを混合させながらカラムへ流していく。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収し、緩衝液11-Bで透析を行う。 次に、透析後の溶液をheparin sepharose CL-6Bカラム(1×40cm)(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、総量で1,000mlの緩衝液を流す間にKClの濃度が0Mから250mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液11-BへKClを混合させながらカラムへ流していき、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収する。このようにして、Thermus thermophilusのロイシル−tRNA合成酵素を得ることができる。
リジル−tRNA合成酵素(LysRS)は、例えばEscherichia coli(accession number: DDBJ U28375)、Salmonella enterica(accession number: DDBJ CP000026)等の微生物、Arabidopsis thaliana(accession number: DDBJ AF125574)、Nicotiana tabacum(accession number: DDBJ AJ299251)等の植物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のリジル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばEscherichia coliのリジル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Ataide, S. F., & Ibba, M. (2004). Biochemistry. 43, 11836-11841 参照)で単離することができる。
pTYB1ベクターとEscherichia coli BL21(DE3)を用いて、Escherichia coli 由来のLysRSを過剰発現させる(Levengood, J. D., Ataide, S. F., Roy, H., & Ibba, M. (2004) J. Biol. Chem. 279, 17707-17714 参照)。菌体を回収後、20mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.0)、500mM NaCl、1mM MgCl2、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液12-A)にprotease inhibitor(Hoffman-La Roche)を加えたもので懸濁し、加圧型細胞破砕装置で菌体を破砕後、20,000×gで30分間遠心分離を行う。 次に、遠心分離後の上清をchitin affinity bead カラム(New England Biolabs Inc.)にアプライする。50mM Tris-HCl緩衝液(pH
8.0)、50mM NaCl、1mM MgCl2、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液12-B)をカラムに流して目的物が存在すると予想されるフラクションを回収し、限外濾過を行う。その後、50mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.0)、1mM MgCl2、10mM
2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液12-C)で透析を行い、-80℃で保存する。このようにして、Escherichia coliのリジル−tRNA合成酵素を得ることができる。
メチオニル−tRNA合成酵素(MetRS)は、例えばThermoanaerobacter tengcongensis(accession number: DDBJ AE012984)、Clostridium perfringens(accession number: DDBJ BA000016)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ BC002384)などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のメチオニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばThermus thermophilusのメチオニル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法で単離することができる。
Thermus thermophilus由来のMetRSの遺伝子を組み込んだpUC118/TMTS-4.0ベクターとEscherichia coli MV1184を用いて、Thermus thermophilus由来のMetRSを過剰発現させる(Nureki, O., Muramatsu, T., Suzuki, K., Kohda, D., Matsuzawa, H., Ohta, T., Miyazawa, T., & Yokoyama, S. (1991). J. Biol. Chem. 266, 3268-3277 参照)。菌体を回収後、50mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.9)、10mM 酢酸マグネシウム、10mM 2-メルカプトエタノール、0.5mM フェニルメチルスルホニルフルオライドを含む緩衝液(以下、緩衝液13-A)で懸濁し、超音波破砕機でホモジナイズした後、10,000×gで30分間、遠心分離を行う。上清を70℃で20分間インキュベートした後、10,000×gで30分間、遠心分離を行う。
次に、得られた上清を、50mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.9)、20mM NH4Clを含む緩衝液(以下、緩衝液13-B)で2回透析を行う。透析後の溶液をDEAE-Sepharoseカラム(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、NH4Clの濃度が20mMから250mMへと線形でグラジエントがかかるように緩衝液13-BへNH4Clを混合させながら、緩衝液をカラムへ流していき、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収する。このようにして、Thermus thermophilusのメチオニル−tRNA合成酵素を得ることができる。
フェニルアラニル−tRNA合成酵素(PheRS)は、例えばAgrobacterium tumefaciens(accession number: DDBJ AE007965)、Streptococcus pyogenes(accession number: DDBJ AE006528)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ BC020239)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のフェニルアラニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばStaphylococcus aureusのフェニルアラニル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Savopoulos, J. W., Hibbs, M., Jones, E. J., Mensah, L., Richardson, C., Fosberry, A., Downes, R., Fox, S. G., Brown, J. R., & Jenkins,
O. (2001) Protein Expr Purif. 21, 470-484 参照)で単離することができる。
348gのStaphylococcus aureus Oxfordを、20mM Tris緩衝液(pH 7.5)、5mM MgCl2、1mM DTT、1mM EDTA、20μg/ml リソスタフィン、10〜20μg/ml DNase Iを含む緩衝液(以下、緩衝液14-A)で懸濁し、攪拌しながらオーバーナイトでインキュベーションする。その後、30,100×gで45分間、4℃で遠心分離を行い、上清を10mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.8)(以下、緩衝液14-B)で4℃のもと、オーバーナイトで透析を行う。透析後の溶液を30,100×gで遠心分離し、上清を、20mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)、5mM MgCl2、1mM DTT、1mM EDTAを含む緩衝液(以下、緩衝液14-C)で平衡化したSource 15QカラムAP-5(10×5cm)(Amersham Biosciences Corp.)にアプライする。緩衝液14-Cでカラムを洗った後、総量で20カラムヴォリューム流す間にNaClの濃度が0Mから1Mへと線形でグラジエントがかかるように緩衝液14-CへNaClを混合させながら、緩衝液をカラムへ流していき、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収する。
次に、回収したフラクション1,000mlに対し硫酸アンモニウムを436g、スターラーで攪拌しながら30分以上かけて溶かす。続けて、4℃のもとでオーバーナイトで攪拌する。その後、39,200×gで30分間、4℃で遠心分離を行いペレットを集める。このペレットを、10mM KH2PO4緩衝液(pH 6.8)(以下、緩衝液14-D)で懸濁し、緩衝液14-Dで透析を行う。
次に、緩衝液14-Dで平衡化したceramic 20μM hydroxyapatite(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)充填カラムAP-5(9×5cm, Waters)に、透析後のペレットを緩衝液14-Dで懸濁したものをアプライする。緩衝液14-Dでカラムを洗った後、6カラムヴォリューム流す間にKH2PO4緩衝液(pH 6.8)の濃度が10mMから120mMへと、さらに3カラムボリューム流す間にKH2PO4緩衝液(pH 6.8)の濃度が120mMから400mMへと線形でグラジエントがかかるように緩衝液をカラムへ流していき、さらに400mM KH2PO4緩衝液(pH 6.8)を3カラムボリューム流す。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収し、回収したフラクション1,000mlに対し硫酸アンモニウムを436g、スターラーで攪拌しながら30分以上かけて溶かす。続けて、4℃のもとで2時間攪拌する。その後、21,300×gで60分間、4℃で遠心分離を行いペレットを集める。このペレットを、20mM Tris緩衝液(pH 7.5)、5mM MgCl2、50mM NaCl、1mM DTT、1mM EDTA、5%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液14-E)で懸濁し、20mM Tris緩衝液(pH 7.5)、100mM NaCl、5mM DTT、1mM EDTA、5%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液14-F)で平衡化した Superose 12カラムXK50(75×5cm)(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、1 カラムボリューム以上緩衝液14-Fを流し、フラクションを回収する。このようにして、Staphylococcus aureusのフェニルアラニル−tRNA合成酵素を得ることができる。
プロリル−tRNA合成酵素(ProRS)は、例えばLactobacillus acidophilus(accession number: DDBJ CP000033)、E.coli(accession number: DDBJ X55518)等の微生物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のプロリル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばThermus thermophilusのプロリル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Yaremchuk, A., Cusack, S., & Ibba, M. (2000) Acta Cryst. D56, 195-196 参照)で単離することができる。
Thermus thermophilusのプロリル−tRNA合成酵素を得るための以下の手順は全て4℃で行うのが好ましい。Thermus thermophilus HB8の菌体を回収後、100mM Tris-HCl緩衝液、2mM DTT、0.1mM EDTA、1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、5mM MgCl2、1mM NaN3、プロテアーゼ阻害剤Complete(Roche Diagnostics)1タブレット/緩衝液25mlを含む緩衝液(以下、緩衝液15-A)に懸濁し、加圧型細胞破砕装置で菌体を破砕後、105,000×gで2時間遠心分離を行う。 次に、遠心分離後の上清を30〜65%硫酸アンモニウム分画し、目的物が存在すると予想される沈殿を、20mM Tris-HCl(PH 7.5)緩衝液、2mM DTT、0.1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、5mM MgCl2、1mM NaN3を含む緩衝液(以下、緩
衝液15-B)に溶解させ緩衝液15-Bで透析を行う。
次に、緩衝液15-Bで平衡化したDEAE-Sepharoseカラム(5×55cm)(Amersham Biosciences Corp.)へ透析後の溶液をアプライし、総量で2×2,500mlの緩衝液を流す間にNaClの濃度が30mMから300mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液15-BへNaClを混合させながらカラムへ流していく。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収し、50%硫酸アンモニウム溶液にして塩析を行う。緩衝液15-Bに40%硫酸アンモニウムが含まれる緩衝液(以下、緩衝液15-C)で平衡化したToyopearl HW-65カラム(3×80cm)(東ソー株式会社)へ、塩析後の溶液をアプライし、総量で2×2,000mlの緩衝液を流す間に硫酸アンモニウムの濃度が40%から10%へと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液15-Bへ硫酸アンモニウムを混合させながらカラムへ流していく。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収し、hydroxyapatiteカラム(3×40cm)(Bio-Rad Laboratories, Inc.)へアプライ後、総量で2×2,000mlの緩衝液を流す間にリン酸カリウム緩衝液(pH 7.9)の濃度が10mMから250mMへと線形でグラジエントがかかるように、リン酸カリウム緩衝液をカラムへ流していく。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収し、緩衝液15-Bで透析後、heparin sepharose CL-6Bカラム(1×40cm)(Amersham Biosciences Corp.)にアプライする。総量で1,000mlの緩衝液を流す間にKClの濃度が0Mから250mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液15-BへKClを混合させながらカラムへ流していき、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収する。このようにして、Thermus thermophilusのプロリル−tRNA合成酵素を得ることができる。
セリル−tRNA合成酵素(SerRS)は、例えばThermoanaerobacter tengcongensis(accession number: DDBJ AE012977)、Sulfolobus solfataricus(accession number: DDBJ Y18930)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ BC009390)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のセリル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばBos taurusのセリル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Chimnaronk, Sarin., Jeppesen, M. G., Shimada, N., Suzuki, T., Nyborg, J., & Watanabe, K. (2004). Acta Cryst. D60, 1319-1322)で単離することができる。
N末端にhexahistidine tagが付くようにした(Shimada, N., Suzuki, T., & Watanabe,
K. (2001). J. Biol. Chem. 276, 46770-46778 参照)Bos taurus由来SerRSの遺伝子をpET19bベクターに組み込み、Escherichia coli Rosetta(DE3)を用いてBos taurus由来SerRSを過剰発現させる。Bos taurusのセリル−tRNA合成酵素を得るためのこれ以降の手順はすべて4℃で行うのが好ましい。まず、回収した菌体を加圧型細胞破砕装置で破砕し、100,000×gで90分間遠心分離を行う。
次に、上清を、50mM HEPES-NaOH緩衝液(pH 7.6)、10mM MgCl2、100mM KCl、7mM β-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液16-A)で平衡化したnickel-ion-charged HiTrap chelatingカラム(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、緩衝液16-Aに50mM イミダゾールを含んだ緩衝液(以下、緩衝液16-B)でカラムを洗う。イミダゾールの濃度が50mMから350mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液16-Aへイミダゾールを混合させながらカラムへ流していき、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収する。回収した溶液は、緩衝液16-Aに0.5mM EDTAを含んだ緩衝液(以下、緩衝液16-C)で透析を行う。
次に、透析後の溶液を、20mM HEPES-NaOH緩衝液(pH 7.6)、5mM MgCl2、50mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、50%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液16-D)で平衡化した10ml
Source Q anion-exchangeカラム(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、KClの濃度が50mMから300mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液16-DへKClを混合さ
せながらカラムへ流していく。目的物は、KClの濃度が150mM付近のフラクションに主に溶出する。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収し、Centricon YM-30遠心フィルター(Amicon)で溶液を濃縮する。
次に、濃縮後の溶液を50mM HEPES-NaOH緩衝液(pH 7.6)、10mM MgCl2、150mM KCl、1mM DTT、8%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液16-E)で平衡化したSuperdex 200カラム(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、緩衝液16-Eをカラムに流して目的物が存在すると予想されるフラクションを回収する。小分けして急速凍結し-80℃で保存する。このようにして、Bos taurusのセリル−tRNA合成酵素を得ることができる。
トレオニル−tRNA合成酵素(ThrRS)は、例えばMycobacterium tuberculosis(accession number: DDBJ BX842580)、Streptomyces coelicolor(accession number: DDBJ AL939109)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ BC000517)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のトレオニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばEscherichia coliのトレオニル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法で単離することができる。
C末端にhexahistidine tagが付くようにしたEscherichia coli 由来ThrRSの遺伝子が組み込まれたベクターであるpTetthrSΔHtag1と、Escherichia coli IBPC6881を用いてEscherichia coli 由来ThrRSを過剰発現させる(Bovee, M. L., Pierce, M. A., & Francklyn, C. S. (2003). Biochemistry. 42, 15102-15113 参照)。これ以降は、全ての手順を4℃で行うのが好ましい。まず、回収した菌体を25mM Tris緩衝液(pH 8.0)、5mM MgCl2、50mM KCl、3mM DTTを含む緩衝液(以下、緩衝液17-A)で懸濁し、超音波破砕機でホモジナイズする。ライセートを10,000×gで遠心分離を行った後、上清へ最終濃度が0.1%になるように硫酸プロタミンを加え核酸を沈殿させる。この上清を、緩衝液17-Aに20mM イミダゾールが含まれる緩衝液(以下、緩衝液17-B)と混合したNi-NTA affinity樹脂5mlに加えてインキュベートし、5ml ポリプロピレンカラムへ移す。緩衝液17-Bをこのカラムへ多数回流し、不要な蛋白質を洗い流す。緩衝液17-Aに150mM イミダゾールが含まれる緩衝液(以下、緩衝液17-C)をカラムに流し、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収した後、20mM Tris緩衝液(pH 7.5)、15mM MgCl2、150mM KClを含む緩衝液(以下、緩衝液17-D)で透析を行う。透析後の溶液は氷温以下で保存する。このようにして、Escherichia coliのトレオニル−tRNA合成酵素を得ることができる。
トリプトファニル−tRNA合成酵素(TrpRS)は、例えばPhotorhabdus luminescens(accession number: DDBJ BX571859)、Yarrowia lipolytica(accession number: DDBJ CR382128)等の微生物、Arabidopsis thaliana(accession number: DDBJ AC011437)等の植物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のトリプトファニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばBacillus subtilisのトリプトファニル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Xu, Z., Love, M. L., Ma, L. Y. Y., Blum, M., Bronskill, P.
M., Bernstein, J., Grey, A. A., Hofmann, T., Camerman, N., & Wong, J. T. (1989). J. Biol. Chem. 264, 4304-4311 参照)で単離することができる。
Bacillus subtilis QB928を0℃で集菌し、20mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)、1mM EDTA、1mM PMSF、5mM β-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液18-A)で懸濁する。アセトン粉末を、20mM K2HPO4(pH 7.5)、1mM EDTA、1mM PMSF、5mM β-メルカプトエタノール、5%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液18-B)200mlに対し10g溶かし、懸濁液に加え4℃で12時間攪拌する。その後、5% 硫酸ストレプトマイシンを30ml加え、10分間以上攪拌し、25,000×gで15分間遠心分離を行う。
次に、緩衝液18-Bで平衡化したDEAE-Sephacelカラム(6.5cm i.d.×7cm)(Amersham Biosciences Corp.)に、遠心分離後の上清をアプライする。総量で1,600mlの緩衝液を流す間にリン酸塩の濃度が20mMから250mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液18-Bにリン酸塩を混合しながら流速40ml/hourで緩衝液をカラムへ流していき、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収しポリエチレングリコールで透析を行い濃縮する。
次に、50mM K2HPO4(pH 7.5)、3M (NH4)2SO4を含む緩衝液(以下、緩衝液18-C)を回収したフラクションと同量用意し、濃縮した溶液と混合させる。微量遠心機で10分間、遠心分離を行う。その上清を、50mM K2HPO4(pH 7.5)、1.5M (NH4)2SO4を含む緩衝液(以下、緩衝液18-D)で平衡化した1ml Phenyl Superose HPLCカラム(Amersham Biosciences Corp.)にアプライし、総量で20mlの緩衝液を流す間に(NH4)2SO4の濃度が1.5Mから0Mへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液18-Cに50mM K2HPO4(pH 7.5)を混合しながら流速0.5ml/minで緩衝液をカラムへ流していき、その後50mM K2HPO4(pH 7.5)を7.5ml流してカラムを洗う。目的物が存在すると予想されるフラクションを回収する。
次に、Amicon micro-concentratorと30,000MWカットオフの膜を使い、フラクションの体積を4/15にし濃縮した後、DEAE-5PW HPLCカラム(7.5mm×7.5cm)(Waters)にアプライし、20mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.5)、120mM 酢酸ナトリウムを含む緩衝液(以下、緩衝液18-E)と20mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.5)、250mM 酢酸ナトリウムを含む緩衝液(以下、緩衝液18-F)を用意し、緩衝液を125mlカラムに流す間に、緩衝液に含まれる酢酸ナトリウムの濃度が120mM から250mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液18-Eに緩衝液18-Fを混合させながら流速1ml/minで緩衝液をカラムに流し、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収する。このようにして、Bacillus subtilisのトリプトファニル−tRNA合成酵素を得ることができる。
チロシル−tRNA合成酵素(TyrRS)は、例えばRhizobium etli(accession number: DDBJ AF247185)、Lactobacillus brevis(accession number: DDBJ AF446085)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ AK028785)、Homo sapiens(accession number: DDBJ BC001933)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のチロシル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばEscherichia coliのチロシル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法で単離することができる。
pQE-YRSベクターとEscherichia coli JM109を用いて、His-tagの付いたEscherichia coli 由来のTyrRSを過剰発現させる(Hamano-Takaku, Fumie., Iwama, T., Saito-Yano S.,
Takaku, K., Monden,Y., Kitabatake, M., Soll, D., & Nishimura, S. (2000). J. Biol. Chem. 275, 40324-40328 参照)。回収した菌体を0.85%NaClで2回洗浄し、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、300mM NaCl、0.1mM PMSF、10%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液19-A)で懸濁し、超音波破砕機でホモジナイズする。得られた溶液に、最終濃度が7.5%になるようにPEG8000を加え、30,000×gで20分間遠心分離を行う。緩衝液19-Aで平衡化したNi-NTAカラム(Qiagen)に上清をアプライし、500mM イミダゾールを含む緩衝液19-A(以下、緩衝液19-B)を用意して、イミダゾールの濃度が0Mから500mMへと線形でグラジエントがかかるように、緩衝液19-Aに緩衝液19-Bを混合させながら緩衝液をカラムに流し、目的物が存在すると予想されるフラクションを回収し、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、10mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、50%グリセロールを含む緩衝液(以下、緩衝液19-C)で透析を行い保存する。このようにして、Escherichia coliのチロシル−tRNA合成酵素を得ることができる。
また、例えばMethanococcus jannaschiiのチロシル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法で調製することができる(Kobayashi, T., Nureki, O., Ishitani, R.,
Yaremchuk, A., Tukalo, M., Cusack, S., Sakamoto, K., & Yokoyama, S. (2003) Nat.
Struct. Biol. 10, 425-432; Steer, B.A., & Schimmel, P. (1999) J. Biol. Chem. 274, 35601-35606; Steer, B.A., & Schimmel, P. (1999) Biochemistry 38, 4965-4971;
Studier, F.W., & Moffatt, B.A. (1986) J. Mol. Biol. 189, 113-130 参照)。
Methanococcus jannaschii由来のTyrRSの遺伝子を組み込んだpBAS50ベクターとEscherichia coli BL21(DE3)を用いて、Methanococcus jannaschii由来のTyrRSを過剰発現させる。そのTyrRSを過剰発現させた菌体を回収後、20mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)、100mM NaCl、10mM b-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液 10mlで懸濁し、PMSFのイソプロパノール飽和溶液10 mlを加え、加圧型細胞破砕装置で12000p.s.i.の圧力で加圧し、菌体を破砕する。その後、2% 硫酸プロタミンを1.2ml加え、核酸を沈殿させる。ライセートを周期的に攪拌させながら、氷温で15分間インキュベートし、180,000×gで10分間遠心分離を行う。その後、2% 硫酸プロタミンを1.2ml加え、氷温で15分間インキュベートし、180,000×gで30分間遠心分離を行い、その上清を回収して、Centriprep 30 concentrator(Amicon, Bverly, MA)で濃縮する。その後、必要に応じてクロマトグラフィーを用いて精製度を高めることができる。このようにして、Methanococcus jannaschiiのチロシル−tRNA合成酵素を得ることができる。
バリル−tRNA合成酵素(ValRS)は、例えばThermoplasma acidophilum(accession number: DDBJ AL445063)、Thermus thermophilus(accession number: DDBJ AP008226)等の微生物、Arabidopsis thaliana(accession number: DDBJ U89986)等の植物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のバリル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
また、例えばArtemia cystsのバリル−tRNA合成酵素を得る場合は、例えば以下のような方法(Brandsma, M., Kerjan, P., Dijk, J., Janssen, G. M. C., & Moller, W. (1995) Eur. J. Biochem. 233, 277-282)で単離することができる。
Artemia cystsのバリル−tRNA合成酵素を得るための以下の手順は、断りがない限り、すべて0〜4℃で行うのが好ましい。Artemia cysts 250gを、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロール、1% NaClOを含む溶液(pH 7.5)と蒸留水で洗浄する。孵化させノープリウス幼生にするため、27℃の3.5% 人工海水中で強く通気をしながら24時間インキュベートする。ノープリウス幼生は水で洗浄した後、25mM リン酸カリウム緩衝液、5mM MgCl2、0.1mM EDTA、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-A)に入れる。ホモジナイズする直前に、最終濃度がそれぞれ2mM、 1mMになるようにPMSFとフルオロリン酸ジイソプロピルを入れ、ポリトロンホモジナイザーでホモジナイズする。10,000×gで30分間遠心分離した後、上清を502Bフィルター(Schleicher and Schull)にかけ、1,550mlの緩衝液20-Aをフィルターに通過させる。この溶液を攪拌しながら、最終濃度が0.1%になるようにpoly(ethylenimine)を加えていく。15分間攪拌した後、10,000×gで30分間、遠心分離を行う。上清1,505mlをフィルターにかけ、43% 硫酸アンモニウムを含む溶液にして30分間攪拌し、10,000×gで30分間、遠心分離を行う。その上清1,680mlをフィルターにかけ、65% 硫酸アンモニウムを含む溶液にする。15分間攪拌した後、10,000×gで30分間、遠心分離を行い、沈殿物を15mM リン酸カリウム緩衝液、5mM MgCl2、0.1mM EDTA、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-B)100mlに溶かす。この溶液を、10,000mlの緩衝液20-Bでオーバーナイトで透析を行う。
次に、15mM リン酸カリウム緩衝液、1mM EDTA、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-C)で平衡化したS-Sepharose Fast Flowカラム(Amersham Biosciences Corp.)に、透析後の溶液を350mlアプライする。緩衝液20-Cでカラムを洗った後、総量で3,000mlの緩衝液を流す間にリン酸カリウムの濃度が1
5mMから250mMへと線形でグラジエントがかかるように、250mM リン酸カリウム緩衝液、1mM EDTA、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-D)を緩衝液20-Cに混合させながら緩衝液をカラムへ流していく。目的物は、リン酸カリウムの濃度が110mM付近のフラクションに主に溶出する。
次に、200mM リン酸カリウム緩衝液、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-E)で平衡化した45ml hydroxyapatiteカラム(Bio-Rad Laboratories, Inc.)に、回収したフラクション480mlをアプライし、総量で540mlの緩衝液を流す間にリン酸カリウムの濃度が200mMから450mMへと線形でグラジエントがかかるように、450mM リン酸カリウム緩衝液、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-F)を緩衝液20-Eに混合させながら緩衝液をカラムへ流していく。目的物は、リン酸カリウムの濃度が300mM付近のフラクションに主に溶出する。回収したフラクション100mlを、25mM Tris-HCl緩衝液、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-G)でオーバーナイトにて透析を行う。
次に、25mM Tris-HCl緩衝液、15mM KCl、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-H)で平衡化した10ml Q-Sepharose Fast Flowカラム(Amersham Biosciences Corp.)に透析後の溶液122mlをアプライし、総量で140mlの緩衝液を流す間にKClの濃度が15mMから300mMへと線形でグラジエントがかかるように、25mM Tris-HCl緩衝液、300mM KCl、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-I)を緩衝液20-Hに混合させながら緩衝液をカラムへ流していく。目的物は、KClの濃度が80mM付近のフラクションに主に溶出する。回収したフラクション22mlを、15mM リン酸カリウム緩衝液、0.1mM EDTA、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-J)250mlでオーバーナイトにて透析を行う。
次に、15mM リン酸カリウム緩衝液、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-K)にて平衡化を行った2ml phosphocellulose P11カラムへ透析後の溶液をアプライし、総量で26mlの緩衝液を流す間にリン酸カリウムの濃度が15mMから400mMへと線形でグラジエントがかかるように、400mM リン酸カリウム緩衝液、10mM 2-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-L)を緩衝液20-Kに混合させながら緩衝液をカラムへ流していく。目的物は、リン酸カリウムの濃度が200mM付近のフラクションに主に溶出する。回収したフラクションを減圧濃縮し、25mM リン酸カリウム緩衝液、2mM DTT、10mM 2-メルカプトエタノール、50%グリセロールを含む緩衝液(pH 7.5)(以下、緩衝液20-M)で透析した後、-20℃にて保存する。このようにして、Artemia cystsのバリル−tRNA合成酵素を得ることができる。
本発明に使用する支持体は、その表面上にアミノアシル−tRNA合成酵素を固定しうるものであれば特に制限はなく、支持体の形状、材質等に特に制限はないが、形状は板状が好ましく、材質はガラス製が好ましい。このような支持体は、後述のエバネッセント法を用いる場合に好適に使用することができるからである。また、アミノアシル−tRNA合成酵素の支持体への固定化方法については、アミノアシル−tRNA合成酵素がそれに特異的なアミノ酸、tRNA、およびATPに結合するのを妨げられない限り特に制限はなく、例えば、疎水性相互作用、親水性相互作用、静電引力、化学結合のいずれか1つ又は2つ以上の組み合わせを利用したものであってもよい。また、アミノアシル−tRNA合成酵素は支持体に直接固定されていてもよいし、タンパク等の適当な物質を介して間接的に固定されていてもよい。アミノアシル−tRNA合成酵素の支持体への固定化手法として、例えば、ビオチン化したBSA(ウシ血清アルブミン)を支持体に吸着させ、次いでアビジンもしくはストレプトアビジンをBSAに付しているビオチンに結合させ、この結合したアビジンもしくはスト
レプトアビジンへ、ビオチン化したアミノアシル−tRNA合成酵素のビオチンを結合させる手法や、アミノアシル−tRNA合成酵素をヒスタグ付きで得ることで、活性エステルなどの反応性基で修飾した支持体とAB-NTA(N-(5-Amino-1-carboxypentyl)iminodiacetic acid)を反応させ、次いでNi(II)を加え錯形成させ、このNi(II)へアミノアシル−tRNA合成酵素のヒスタグを配位させる手法等が挙げられる。
なお、本発明における支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素の分子数と試料に含まれる目的アミノ酸の分子数との比は、試料に含まれるアミノ酸の有無を調べる場合は、特に制限はないが、試料に含まれるアミノ酸を定量する場合は、定量の正確さを求める観点から、試料に含まれる目的アミノ酸の分子数より、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素の分子数が多くなるように試料を希釈したり、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素の分子数を増やすなどして適宜調整する必要がある。試料に含まれるアミノ酸を定量する場合は、試料に含まれる目的アミノ酸の分子数に対して、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素の分子数が過剰量となるようにしなくてもよいが、過剰量になるようにすることが好ましい。
本発明に用いるtRNAは、適当な条件下で、20種類のアミノ酸のいずれかのアミノ酸および本発明で用いるアミノアシル−tRNA合成酵素に結合する能力を有していれば特に制限はなく、いずれの生物由来のtRNAであってもよい。また、上記能力を有している限り、いずれかの生物由来のtRNAの変異体も含まれる。変異体の変異には、自然変異または化学的変異剤や紫外線等による人工変異を含む。
tRNAAlaは、例えばSaccharomyces cerevisiae (accession number: DDBJ K01059)等の微生物、Bombyx mori(accession number: DDBJ J01041)等の昆虫、Homo sapiens(accession number: DDBJ M17880)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のアラニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAArgは、例えばSaccharomyces cerevisiae(accession number: DDBJ J01377)等の微生物、Triticum sp.等の植物(accession number: DDBJ M26108)などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のアルギニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAAsnは、例えばEscherichia coli(accession number: DDBJ K00164)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ K00167)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のアスパラギニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAAspは、例えばEscherichia coli(accession number: DDBJ K00169)等の微生物、Rattus norvegicus(accession number: DDBJ K03129)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のアスパラチル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNACysは、例えばSaccharomyces cerevisiae(accession number: DDBJ M18353)等の微生物、 Triticum aestivum(accession number: DDBJ M22258)等の植物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のシステイニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAGlnは、例えばEscherichia coli(accession number: DDBJ K00181)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ M16251)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のグルタミニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAGluは、例えばSynechocystis sp.(accession number: DDBJ M19535)等の微生物、Rattus norvegicus(accession number: DDBJ K00195)等の動物などで配列が既に知られ
ている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のグルタミル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAGlyは、例えばSaccharomyces cerevisiae(accession number: DDBJ K00204)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ K00209)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のグリシル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAHisは、例えばSalmonella typhimurium(accession number: DDBJ K00212)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ M12256)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のヒスチジル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAIleは、例えばThermus thermophilus(accession number: DDBJ M25628)、Acidithiobacillus ferrooxidans(accession number: DDBJ U18089)等の微生物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のイソロイシル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNALeuは、例えばSaccharomyces cerevisiae(accession number: DDBJ X56506)等の微生物、Rattus norvegicus(accession number: DDBJ K00239)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のロイシル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNALysは、例えばEscherichia coli(accession number: DDBJ K00282)等の微生物、Oryctolagus cuniculus(accession number: DDBJ K00289)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のリジル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAMetは、例えばBacillus subtilis(accession number: DDBJ K00297)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ J00310)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のメチオニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAPheは、例えばGeobacillus stearothermophilus(accession number: DDBJ M24863)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ M17622)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のフェニルアラニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAProは、例えばBacillus subtilis(accession number: DDBJ M27310)等の微生物、Mus musculus(accession number: DDBJ K00359)等の動物などで既に配列が知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のプロリル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNASerは、例えばMycoplasma capricolum(accession number: DDBJ D00559)等の微生物、Homo sapiens(accession number: DDBJ M38616)等の動物などで配列が既に知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のセリル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAThrは、例えばBacillus subtilis(accession number: DDBJ K00276)、Saccharomyces cerevisiae(accession number: DDBJ X02693)等の微生物などで既に配列が知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のトレオニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNATrpは、例えばEscherichia coli(accession number: DDBJ M24301)等の微生物、Gallus gallus(accession number: DDBJ K00263)等の動物などで既に配列が知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のトリプトファニル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNATyrは、例えばThermococcus celer(accession number: DDBJ L07299)等の微生物、
Homo sapiens(accession number: DDBJ M55605)等の動物などで既に配列が知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のチロシル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
tRNAValは、例えばMycoplasma pneumoniae(accession number: DDBJ L15240)等の微生物、Oryctolagus cuniculus1(accession number: DDBJ K00253)等の動物などで既に配列が知られている。これらの公知の配列を利用することで、様々な生物のバリル−tRNA合成酵素を取得することが可能である。
本発明に用いるtRNAは、検出するアミノ酸の種類に応じて選択する。すなわち、検出するアミノ酸に対応したtRNAを用いる。例えば、チロシンを検出したい場合は、tRNATyrを、バリンを検出したい場合はtRNAValを用いる。
また、本発明に用いるtRNAは、本発明に用いるアミノアシル−tRNA合成酵素と特異的に結合する能力を有している限り、本発明に用いるアミノアシル−tRNA合成酵素と同種の生物由来のものでなくてもよいが、本発明に用いるアミノアシル−tRNA合成酵素と同種の生物由来のものであることが好ましく、本発明に用いるアミノアシル−tRNA合成酵素と同じ生物由来のものであることがより好ましい。tRNAの由来である生物とアミノアシル−tRNA合成酵素の由来である生物が、より近縁の関係になるほど、そのtRNAとそのアミノアシル−tRNA合成酵素間の結合がより特異的になるため、tRNAを標識する場合は特に、アミノ酸の検出感度が向上するからである。また、アミノ酸を含む試料中に、ある生物由来のアミノアシル−tRNA合成酵素やtRNAが含まれている場合であっても、その生物とは異なる種に属する生物のアミノアシル−tRNA合成酵素やtRNAを用いれば、試料中のアミノアシル−tRNA合成酵素やtRNAによって妨害されることなく、試料中のアミノ酸を高感度で測定することができるからである。例えば、ある生物の細胞切片などを用いて、生体内のアミノ酸の分布位置情報を取得する場合は、その生物とは異なる種、好ましくは異なる属、より好ましくは異なる科の生物由来のアミノアシル−tRNA合成酵素やtRNAを用いることができる。
本発明における標識されたATP又はATPアナログおよび標識されたtRNAの標識は、アミノアシル−tRNA合成酵素がそれに特異的なアミノ酸、tRNA、およびATP又はATPアナログに結合するのを妨げない限り特に制限はなく、例えば、酵素、蛍光物質、化学発光物質、放射性同位体等の標識化物質を用いて標識することができ、具体的には、ペルオキシダーゼ(例えば、horseradish peroxidase)、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコ−ス−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼ等の酵素、フルオレスセインイソチオシアネート、フィコビリタンパク 、希土類金属キレート、ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート、テキサスレッド、アクリジンオレンジ等の蛍光物質、3H、14C、125I等の放射性同位体、ルミノール、アクリジニウム−I等の化学発光物質を用いて標識することができる。これらの中でも、Alexa488(Molecular Probes社製)、BODIPY
FL(Molecular Probes社製)、Cy3(Amersham Biosciences社製)、Cy5(Amersham Biosciences社製)等の蛍光物質が、検出の感度および容易性の観点から好ましい。
本発明では、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合し、かつ、それに特異的なアミノ酸と結合するとそのアミノアシル−tRNA合成酵素に対する親和性が上昇するATPアナログを、ATPに代えて用いることもできる。ATPアナログには、AMP-PCP(Myers, T. C., Nakamura, K., & Flesher, J. W. (1963) J. Amer. Chem. Soc. 85, 3292-3295)、AMP-PNP(Yount, R. G., Babcock, Donner., Ballantyne, Wm., & Ojala, Deanna. (1971) Biochemistry. 10, 2484-2489)、ATPαS、ATPβS(Eckstein, F., & Goody, R. S. (1976) Biochemistry. 15, 1685-1691)、ATPγS(Goody, R. S., & Eckstein, F. (1971) J. Amer. Chem. Soc. 15, 6252-6257)など数種があり、非加水分解性のATPアナログとして
はAMP-PNPやATPγSが有名で、市販もされている(Sigma-Aldrich)。いずれのATPアナログもそれぞれ性質が若干異なる(Dignam, J. D., Nada, S., & Chaires, J. B. (2003) Biochemistry. 42, 5333-5340; Smith, L. T., & Cohn, M. (1982) Biochemistry. 21, 1530-1534)ため、必要に応じて使い分けるとよい。
本発明のアミノ酸の分析方法は、(A)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる工程を含んでいる。このような操作を行うことにより、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素に特異的に結合しうる、試料に含まれるアミノ酸、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAが、該アミノアシル−tRNA合成酵素に結合する。アミノアシル−tRNA合成酵素は、それに特異的に結合しうるアミノ酸が結合すると、ATP、ATPアナログ、およびそのアミノアシル−tRNA合成酵素に特異的に結合するtRNAへの親和性が向上するので、試料に含まれる目的アミノ酸の量が多いほど、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合する標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAが増加する。
本発明の方法の(A)の工程において、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる場合に、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる順序は特に制限はなく、1つずつ順に反応させていってもよいし、また、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素に対して同時に反応させてもよい。また、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを前もって反応させておいてから、それと支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素とを反応させてもよい。
本発明の方法の(A)の工程において、“支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる”とは、該アミノアシル−tRNA合成酵素と、該アミノ酸と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAとが結合しうるような条件であれば特に制限はない。そのような条件として、例えば、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素が、そのアミノアシル−tRNA合成酵素活性を有するpH領域の緩衝溶液を介して該アミノ酸、および、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAに接触するような条件が挙げられる。そのような緩衝溶液として、具体的には、例えば、50mM
HEPES-NaOH (pH 7.4) および10mM MgCl2を含む緩衝溶液が挙げられる。
また、本発明のアミノ酸の分析方法は、上記(A)の工程に代えて、(a)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、ATP若しくはATPアナログと、標識されたtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる工程、又は、(a’)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、tRNAと、標識されたATP若しくはATPアナログと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる工程を含んでいてもよい。
(a)の工程において、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、ATP若しくはATPアナログと、標識されたtRNAと、および、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる順序は特に制限はなく、1つずつ順に反応させていってもよいし、また、ATP若しくはATPアナログと、標識されたtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素に対して同時に反応させてもよい。また、ATP又はATPアナログと、標識されたtRNAと、試料に含まれるアミノ酸のいずれか2つ以上のものを前もって反応させておいてから、それと支持体上に固定されたアミノアシル−
tRNA合成酵素とを反応させてもよい。
本発明の方法の(a)の工程において、“支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、ATP若しくはATPアナログと、標識されたtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる”とは、該アミノアシル−tRNA合成酵素と、該アミノ酸と、ATP若しくはATPアナログと、標識されたtRNAとが結合しうるような条件であれば特に制限はない。そのような条件として、例えば、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素が、そのアミノアシル−tRNA合成酵素活性を有するpH領域の緩衝溶液を介して該アミノ酸、ATP若しくはATPアナログ、および標識されたtRNAに接触するような条件が挙げられる。そのような緩衝溶液として、具体的には、例えば、50mM HEPES-NaOH (pH 7.4) および10mM MgCl2を含む緩衝溶液が挙げられる。
また、(a’)の工程において、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、tRNAと、標識されたATP若しくはATPアナログと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる順序は特に制限はなく、1つずつ順に反応させていってもよいし、また、tRNAと、標識されたATP若しくはATPアナログと、試料に含まれるアミノ酸とを、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素に対して同時に反応させてもよい。また、tRNAと、標識されたATP又はATPアナログと、試料に含まれるアミノ酸のいずれか2つ以上のものを前もって反応させておいてから、それと支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素とを反応させてもよい。
本発明の方法の(a’)の工程において、“支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、tRNAと、標識されたATP若しくはATPアナログと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる”とは、該アミノアシル−tRNA合成酵素と、該アミノ酸と、tRNAと、標識されたATP若しくはATPアナログとが結合しうるような条件であれば特に制限はない。そのような条件として、例えば、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素が、そのアミノアシル−tRNA合成酵素活性を有するpH領域の緩衝溶液を介して該アミノ酸、ATP若しくはATPアナログ、および標識されたtRNAと接触するような条件が挙げられる。そのような緩衝溶液として、具体的には、例えば、50mM HEPES-NaOH (pH 7.4)
および10mM MgCl2を含む緩衝溶液が挙げられる。
本発明の方法の(A)工程において、標識されたATP若しくはATPアナログと標識されたtRNAを両方用いる場合は、それぞれの標識は同じものであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明のアミノ酸の分析方法は、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合していない前記アミノ酸を反応物から除去する工程、および、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合していない前記標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAを反応物から除去する工程を含んでいなくてもよいが、アミノ酸の検出をより高感度で行うためには、それらのいずれか一方の工程を含んでいることが好ましく、それらの両方の工程を含んでいることが好ましい。
また、本発明では、試料として、細胞切片などの生体を用いることもできる。この場合、例えば以下のような方法を用いることによって、試料中のアミノ酸の有無、アミノ酸量だけでなく、試料中のアミノ酸の位置情報も調べることができる
(1)アミノアシル−tRNA合成酵素が過剰量固定された支持体を用意する。
(2)前記支持体上に、細胞切片等の生体試料を載せることにより、前記支持体上のアミノアシル−tRNA合成酵素と生体試料中のアミノ酸とを反応させる。
(3)位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡等で細胞切片等の生体試料を観測し、細胞切片等の生体試料の位置情報を得る。
(4)細胞切片等の生体試料を前記支持体から取り除き、その支持体と、標識されたAT
P若しくはATPアナログ及び/又はtRNAとを反応させる。
(5)支持体上のアミノアシル−tRNA合成酵素に結合したATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAの標識を検出する。
顕微鏡等を用いて2次元で標識を検出した結果と、(3)で得た位置情報を合わせて分析すれば、生体試料中のアミノ酸の有無やアミノ酸量だけでなく、生体試料におけるアミノ酸の位置情報も調べることができる。
本発明のアミノ酸の分析方法は、(B)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAを検出する工程を含んでいる。上述したように、アミノアシル−tRNA合成酵素は、それに特異的に結合しうるアミノ酸が結合すると、ATP、ATPアナログへの親和性が向上するので、試料に含まれる目的アミノ酸の量が多いほど、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合する標識されたATP若しくはATPアナログが増加する。すなわち、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合しているATP若しくはATPアナログの標識の量は、試料に含まれる目的アミノ酸の量に依存する。したがって、目的アミノ酸を反応させなかった場合の該標識の量と、目的アミノ酸を反応させた場合の該標識の量を比較することによって、試料中に目的アミノ酸が含まれているかどうか検出することができる。また、含まれるアミノ酸量が既知の試料を用いた実験を予め行い、上記の標識の量とアミノ酸量との関係を表す検量線を作成しておくことで、含まれるアミノ酸量が未知の試料中のアミノ酸量を算出することができる。
また、アミノアシル−tRNA合成酵素は、それに特異的に結合しうるアミノ酸が結合すると、tRNAへの親和性が向上する場合は、試料に含まれる目的アミノ酸の量が多いほど、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合する標識されたtRNAが増加する。すなわち、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合しているtRNAの標識の量は、試料に含まれる目的アミノ酸の量に依存することになる。したがって、目的アミノ酸を反応させなかった場合の該標識の量と、目的アミノ酸を反応させた場合の該標識の量を比較することによって、試料中に目的アミノ酸が含まれているかどうか検出することができる。
すなわち、本発明のアミノ酸の分析方法は、上記(B)の工程に代えて、(b)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたtRNAを検出する工程、又は、(b’)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたATP若しくはATPアナログを検出する工程を含んでいてもよい。
また、本発明の方法の(A)工程において、標識されたATP若しくはATPアナログと標識されたtRNAを両方用いる場合、それらの標識が同じ場合であっても、それらのいずれかを用いる場合と同様に、目的アミノ酸を反応させなかった場合の該標識の量と、目的アミノ酸を反応させた場合の該標識の量を比較することによって、試料中に目的アミノ酸が含まれているかどうか検出することができる。なぜなら、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合しているtRNAの標識の量、および、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合しているATP若しくはATPアナログの標識の量は、試料に含まれる目的アミノ酸の量にそれぞれ依存するため、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合しているtRNAの標識の量と、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合しているATP若しくはATPアナログの標識の量との和についても、試料に含まれる目的アミノ酸の量に依存するからである。
また、tRNAとATP若しくはATPアナログとの標識が異なる場合は、反応後のそれぞれの標識の量をそれぞれ独立して計測することができるため、それぞれの標識量に基づいて試料に含まれる目的アミノ酸の量を算出することができる。その結果、試料に含まれる目的アミノ酸の量を、一度の計測でより正確に知ることができる。
上記(B)、(b)および(b’)の工程における、標識されたATP若しくはATPアナログ又はtRNAの検出方法は、標識の種類に応じて、公知の方法を採用することができ
る。該標識を検出することで、試料中のアミノ酸の有無の判定、および試料中のアミノ酸量を測定することができる。また、細胞切片等の生体を試料として用いた場合は、上記標識の位置を検出することにより、細胞切片中のアミノ酸の位置情報も調べることができる。
標識として蛍光標識を用いている場合も、蛍光標識の種類に応じて、公知の方法を採用することができる。例えば、全反射蛍光顕微鏡等の蛍光顕微鏡を用いて蛍光を検出することができる。顕微鏡等により得られたシグナルを、光電子増倍の原理等を利用して増幅したり、また、レーザー等の励起光源を有効に利用すると、検出感度をより向上させることもできる。
特に、エバネッセント法(T. Funatsu et al., Nature., 374, 555-559 (1995))を用いると、ごく微量の蛍光標識であってもS/N比(信号対ノイズ比)良く蛍光を検出することができる。したがって、本発明では、エバネッセント法を用いなくてもよいが、それを用いることが好ましい。このエバネッセント法は以下のような原理に基づいている。
レーザーをスライドガラス(屈折率:高)と水溶液(屈折率:低)の界面に照射すると、屈折率の違いから反射が起こる。レーザーの照射角を大きくしていくとある角度で全反射が起こるが、このとき反射面の近傍、水溶液側にはエバネッセント光と呼ばれる光が発生する。エバネッセント光の強度は反射面から離れるに従い激しく減衰し、150〜200nm程度で消失する。これを利用することで反射面近傍のみを照明し、水溶液のラマン散乱や背景光を極小に抑え、水溶液の界面付近に存在する蛍光物質のシグナルのみを、分子1個レベルという非常に高いS/N比で得ることができる。
本発明のアミノ酸の分析方法の別の態様は、試料に含まれる標識されたアミノ酸と、標識されたアミノ酸に結合することができるアミノアシル−tRNA合成酵素とを用いた、アミノ酸の分析方法である。すなわち、(a'')支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、試料に含まれる標識されたアミノ酸とを反応させる工程、および、(b'')アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたアミノ酸を検出する工程を含む、アミノ酸の分析方法である。
具体的には、例えば以下のような手順で試料中のアミノ酸の有無やアミノ酸の量を検出することができると考えられる。
(1)アミノアシル−tRNA合成酵素が過剰量固定された支持体を用意する。
(2)試料溶液中のアミノ酸を標識する。例えば、サクシニミジルエステルを有する蛍光試薬を試料溶液と反応させること等が考えられる。
(3)前記支持体上のアミノアシル−tRNA合成酵素へ、前記試料溶液をかける。
(4)好ましくは、アミノアシル−tRNA合成酵素に結合していない標識されたアミノ酸及び未標識のアミノ酸を、前記支持体から除去する。
(5)前記支持体上のアミノアシル−tRNA合成酵素に結合したアミノ酸の標識を検出する。
本発明のアミノ酸の分析方法の分析感度は、濃度で数百pM、絶対量で数f molである。これは、蛍光誘導体化法とLC(液体クロマトグラフィー)を用いた従来の高感度検出法に比べ、2〜3桁程度感度が高い。また、カラムからの溶出や試薬反応といった一般に律速となる作業がないため、作業の自動化が実現すれば数分で検出が可能となる。さらに、酵素とアミノ酸の特異的結合を利用しているため、ATPやプロテアーゼを除く夾雑物に関してサンプルを前処理する必要がなく、非常に簡便である。
本発明の別の態様は、アミノ酸の分析用のキットである。すなわち、(i)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAとを含む、アミノ酸の分析用のキット。(ii)支持体上に固定されたアミノアシ
ル−tRNA合成酵素と、ATP若しくはATPアナログと、標識されたtRNAとを含む、アミノ酸の分析用のキット。(iii)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、tRNAと、標識されたATP若しくはATPアナログとを含む、アミノ酸の分析用のキットである。
本発明のキットにおける、支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素、標識されたATP若しくはATPアナログ、標識されたtRNA等は、上記の本発明のアミノ酸の分析方法に関して記載されているものと同様である。また、本発明のキットは、上記本発明のアミノ酸の分析方法に関して記載されているように使用することができる。
(実施例1)
緩衝液として50mM HEPES-NaOH (pH 7.4) 、10mM MgCl2を含む溶液を用い、チロシンを0M、200pM、400pMの濃度で含む3種類溶液を作成し、試料溶液とした。
アミノアシル−tRNA合成酵素としては、古細菌の一種であるMethanococcus jannaschii由来のチロシル−tRNA合成酵素を利用した。Methanococcus jannaschii由来のチロシル−tRNA合成酵素は、以下のような方法で調製した。
Methanococcus jannaschii由来のTyrRSの遺伝子を組み込んだpBAS50ベクターとEscherichia coli BL21(DE3)を用いて、Methanococcus jannaschii由来のTyrRSを過剰発現させた。そのTyrRSを過剰発現させた菌体を回収後、20mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)、100mM NaCl、10mM b-メルカプトエタノール、10%グリセロールを含む緩衝液 10mlで懸濁し、PMSFのイソプロパノール飽和溶液10 mlを加え、加圧型細胞破砕装置で12000p.s.i.の圧力で加圧し、菌体を破砕した。その後、2% 硫酸プロタミンを1.2ml加え、核酸を沈殿させた。ライセートを周期的に攪拌させながら、氷温で15分間インキュベートし、180,000×gで10分間遠心分離を行った。その後、2% 硫酸プロタミンを1.2ml加え、氷温で15分間インキュベートし、180,000×gで30分間遠心分離を行い、その上清を回収して、Centriprep 30 concentrator(Amicon, Bverly, MA)で濃縮した。このような方法で、Methanococcus jannaschii由来のチロシル−tRNA合成酵素を得た。
このチロシル−tRNA合成酵素をビオチン化した後、100nM溶液となるように調整した。また、蛍光標識されたATP(adenosine 5'-triphosphate, BODIPYR FL 2'-(or-3')-O-(N-(2- aminoethyl)urethane), trisodium salt (Molecular Probes, Inc))を100nM溶液になるように調整し、これを標識されたATPとして用いた。支持体は0.17mm厚のカバーガラスを用いた。
このカバーガラスに、約3mg/mlのビオチン化したBSAと2.5mg/mlのStreptavidinを用いて、前述のビオチン化したチロシル−tRNA合成酵素をカバーガラスに固定した。そのようなカバーガラスを3つ用意し、それぞれに上記の3種類のチロシン含有溶液をかけて、反応させた。50mM HEPES-NaOH (pH 7.4) 、10mM MgCl2を含む緩衝液でカバーガラスを洗浄した後、上記の蛍光標識されたATPをカバーガラスにかけた。次いで、前記の緩衝液でカバーガラスを再度洗浄した。そのカバーガラスを、全反射蛍光顕微鏡に設置し、エバネッセント法を利用して、チロシル−tRNA合成酵素に結合した、標識されたATPの蛍光を検出した。その結果、チロシンが0M、200pM、400pMの3種類の試料について、それぞれ図1、図2、図3のような蛍光像が得られた。これらの蛍光像の蛍光強度に関し、直径38μmの円領域内の平均値を求め、溶液に含まれていたチロシンの濃度との関係を表したのが図4である。図4中の直線は、これら3点に関して求めた一次回帰線であり、指標とする蛍光強度とチロシン濃度との間に線形性が確認できる。このように、本発明のアミノ酸の分析方法によって、試料に含まれる微量のアミノ酸の検出および定量が実際に可能であることが示された。
本発明のアミノ酸の分析方法およびキットは、簡便かつ、高感度にアミノ酸を分析することができる。また、本発明のアミノ酸の分析方法およびキットは、アミノ酸に対する特異性が極めて高い。さらに、本発明のアミノ酸の分析方法およびキットは、生体内のアミノ酸の分布に関する位置情報を取得することに利用することができる。
試料溶液に含まれていたチロシンの濃度が0Mの場合における蛍光像である。 試料溶液に含まれていたチロシンの濃度が200pMの場合における蛍光像である。 試料溶液に含まれていたチロシンの濃度が400pMの場合における蛍光像である。 観測された蛍光像において直径38μmの円領域内における蛍光強度の平均値と、試料溶液に含まれていたチロシンの濃度との関係を表すグラフである。

Claims (13)

  1. (A)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる工程、ならびに、(B)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAを検出する工程を含む、アミノ酸の分析方法。
  2. (a)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、ATP若しくはATPアナログと、標識されたtRNAと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる工程、ならびに、(b)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたtRNAを検出する工程を含む、アミノ酸の分析方法。
  3. (a’)支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、tRNAと、標識されたATP若しくはATPアナログと、試料に含まれるアミノ酸とを反応させる工程、ならびに、(b’)アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたATP若しくはATPアナログを検出する工程を含む、アミノ酸の分析方法。
  4. アミノアシル−tRNA合成酵素に結合していない前記アミノ酸を反応物から除去する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアミノ酸の分析方法。
  5. アミノアシル−tRNA合成酵素に結合していない前記標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAを反応物から除去する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアミノ酸の分析方法。
  6. 前記標識が、蛍光標識であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアミノ酸の分析方法。
  7. アミノアシル−tRNA合成酵素に結合した該標識されたtRNA、ATP又はATPアナログの検出が、蛍光顕微鏡により行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のアミノ酸の分析方法。
  8. アミノアシル−tRNA合成酵素がチロシル−tRNA合成酵素であり、アミノ酸がチロシンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアミノ酸の分析方法。
  9. 支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、標識されたATP若しくはATPアナログ及び/又はtRNAとを含む、アミノ酸の分析用のキット。
  10. 支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、ATP若しくはATPアナログと、標識されたtRNAとを含む、アミノ酸の分析用のキット。
  11. 支持体上に固定されたアミノアシル−tRNA合成酵素と、tRNAと、標識されたATP若しくはATPアナログとを含む、アミノ酸の分析用のキット
  12. 前記標識が、蛍光標識であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のアミノ酸の分析用のキット。
  13. アミノアシル−tRNA合成酵素がチロシル−tRNA合成酵素であり、アミノ酸がチロシンである、請求項12に記載のアミノ酸の分析用のキット。
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