JP2006241509A - 溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼とその製造方法 - Google Patents

溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼とその製造方法 Download PDF

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正 小関
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Abstract

【課題】 溶接部の耐亜鉛めっき割れ特性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼を提供する。
【解決手段】 重量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.02〜0.5%、Mn:0.8〜3%、P:≦0.03%、S:0.0005〜0.03%、Nb:0.001〜0.2%、Mo:0.6〜1.2%、Al:0.0005〜0.05%、Ti:0.003〜0.05%、Mg:0.0001〜0.01%、Ca:0.0001〜0.01%を含み、さらに
free[Mg]=Total[Mg]− 全酸化物中の含有[Mg]≧5ppm
なる関係を満足し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、溶接部HAZ組織の旧オーステナイト粒径が200μm以下でかつ粒界部に粒界フェライトを有することを特徴とする耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼。
【選択図】 なし

Description

本発明は、主として建築分野において使用する引張強度590MPa級溶接構造用鋼およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れた溶接構造用耐火鋼に関するものである。
建築や橋梁分野では、鋼板の耐食性付与などの観点から亜鉛めっきを施して利用される場合がある。その場合、用いた鋼材や溶接条件[通常入熱は10kJ/mm以下 *最大入熱は10kJ/mm以下程度]により、溶接部において特異な割れが発生することが広く知られており、溶融亜鉛めっき割れと呼ばれている。溶融亜鉛めっき割れには、変形の少ないフランジ材などで生じる亜鉛脆化による割れと薄肉材であるウエブ材などで亜鉛めっき浸漬時の熱応力・ねじり変形などを原因とする面外変形による局部的な高ひずみ変形によって発生する割れの2種類がある。前者は溶接部のHAZで起こる粒界割れであり、主因である亜鉛の粒界への進入防止策を講じることにより、割れ発生確率を軽減できることがわかっている。例えば、粒界への亜鉛の進入を抑制する手段として、粒界部のミクロ組織の制御がある。これはベイナイトやマルテンサイトのような低温変態組織をなるべく少なくし、粒界フェライト主体にするものであり、機構そのものについては不明な点も多いが、このようなミクロ組織の制御により割れ感受性を大きく下げることができる。粒界フェライト分率の増加は成分的に炭素当量を下げることと、焼入性を高める元素(特に、B、Nb、Moなど)を低減することで達成できる(例えば、特許文献1参照)。なお、局部的な高ひずみ変形によって発生する割れの場合には、設計上の工夫などにより変形を極力なくす以外に今のところ十分な対策がないのが現状である。
一方、耐火鋼の場合には、MoやNbなどの焼入性の高い合金元素を同時に、しかも多量に添加することで高温強度を高めているため、普通鋼の成分に比べて焼入性が極めて高いという特徴がある。したがって、このような鋼材に対して、亜鉛めっきを施す場合には、上述したような最も簡便な成分元素の変更のみによる組織調整方法が使えない。特に、強度レベルが高くなった場合、例えばHT590以上の耐火鋼ではよりその傾向が強くなる。
特開平9−87802号公報
本発明は、以上のような問題を解決し、溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の提供を課題とするものである。
本発明の要旨は、以下の通りである。すなわち、
(1)重量%で、
C :0.01〜0.12%
Si:0.02〜0.5%
Mn:0.8〜3%
P :0.03%以下
S :0.0005〜0.03%
Nb:0.001〜0.2%
Mo:0.6〜1.2%
Al:0.0005〜0.05%
Ti:0.003〜0.05%
Mg:0.0001〜0.01%
Ca:0.0001〜0.01%
を含み、さらに
free[Mg]=Total[Mg]− 全酸化物中の含有[Mg]≧5ppm
なる関係を満足し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、溶接部HAZ(Heat Affected Zone)組織の旧オーステナイト粒径が200μm以下でかつ粒界部に粒界フェライトを有することを特徴とする耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼。
(2)重量%で、さらに、
Cu:0.05〜1.5%
Ni:0.05〜1.5%
Cr:0.02〜1.5%
V:0.01〜0.1%
Zr:0.0001〜0.05%
Ta:0.0001〜0.05%
B :0.0003〜0.005%
のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼。
(3)重量%で、さらに、
REM:0.0005〜0.005%
を含有することを特徴とする(1)あるいは(2)に記載の溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼。
(4)(1)〜(3)の鋼と同一成分を有する鋼片をAC点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延した後、自然放冷することを特徴とする溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の製造方法。
(5)(1)〜(3)の鋼と同一成分を有する鋼片をAC点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、自然放冷することを特徴とする溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の製造方法。
(6)(1)〜(3)の鋼と同一成分を有する鋼片をAC点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、1〜60℃/secの冷却速度で0〜650℃まで冷却することを特徴とする溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の製造方法。
(7)(1)〜(3)の鋼と同一成分を有する鋼片をAC点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、1〜60℃/secの冷却速度で0〜650℃まで冷却し、引き続いて300℃〜AC点で焼戻し熱処理することを特徴とする溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の製造方法。
本発明の化学成分および製造条件を限定し、free[Mg]=Total[Mg]− 全酸化物中の含有[Mg]≧5ppmなる関係を満足させることで、溶接部HAZ組織の旧オーステナイト粒径が200μm以下でかつ粒界部に粒界フェライトを有することを特徴とする耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の製造が可能となる。その結果、建築、橋梁などの耐食性の付与に用いられる亜鉛めっき技術を耐火鋼に利用することが可能となり、産業上の効果は著しく大きい。
MgとCaの添加は、従来から強脱酸剤、脱硫剤として鋼の清浄度を高めることで、溶接熱影響部の靱性を向上させることが知られている。また、これら元素を含有する酸化物の分散を制御して、優れた溶接部HAZ靭性を付与することが可能であるとする例(国際公開第01/027342号パンフレット参照)、さらには母材靭性および溶接部HAZ靱性の両方を向上させる技術として用いた例が特開2003−49237号公報に記載されている。
本発明者らは、MgとCaの強脱酸剤あるいは強力な硫化物生成能に着目し、これら元素の添加順序および量を制御することで、加熱γ粒径の微細化に効果を有する酸化物の微細分散が期待できることから、本技術により溶接部HAZ組織を微細化することができ、しかも酸化物を形成しないMg量(free[Mg])をパラメータとした時に、free[Mg]≧5ppmなる関係を満足している場合には、HAZ細粒化の効果に加えて、粒界フェライト生成が顕著に促進され、結果として焼入性を高めるMoやNb含有量が多い溶接構造用耐火鋼の場合においても粒界焼入性を低下させることが可能であることを初めて知見するに至った。
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明者らは、Tiを添加し弱脱酸した溶鋼中にMgあるいはCaを添加した場合の酸化物の状態を系統的に調べた。その結果、Si、Mnによる脱酸後に、Ti添加、Mg(Ca)添加の順に添加した場合に、あるいはTi添加とMg(Ca)添加を同時に行い、さらに平衡状態になった状態で再度Mg(Ca)を添加するというサイクルを行なうことで、Mg(あるいはCa)の酸化物あるいは硫化物が極めて微細に、かつ高密度に生成されることを見出した。このMg添加の効果はCaをMgの代わりに用いても同様に得られ、いずれの元素を添加した場合も添加元素を含む酸化物もしくは硫化物が生成され、その粒子径は0.005〜0.5μm、粒子数は鋼中に1mm当たり10000個以上であり、強力なピニング力を有していることが確認され、母材製造時のスラブ加熱段階や溶接部HAZ組織の加熱γ粒径が溶接入熱によらず200μm以下となる。
本発明は上記の介在物の存在状態によって達成される溶接部のHAZ組織の微細化により、溶接部HAZ組織における亜鉛の粒界脆化を極力抑えた画期的な技術である。すなわち、本発明の特徴は、溶接部HAZ組織の加熱γ粒径(旧オーステナイト粒径)が前述したように溶接入熱によらず200μm以下であり、この微細化効果により溶接部の加熱γの焼入性が低下し、一般的な建築部材において用いられる溶接入熱条件では、粒界部に粒界フェライトが生成される。粒界フェライトが生成されている粒界部では亜鉛浸漬時の亜鉛の粒界への進入が抑制されることは広く知られており、結果として亜鉛脆化が著しく抑制される。従来技術では、粒径の制御が難しいことから化学成分的に焼入性を変化させることで粒界のミクロ組織を変化させるというアプローチが取られていたが、耐火鋼のように必然的に焼入性の高い成分系では、その対処方法がなかった。本発明はこの点を粒径制御の方法でブレークスルーしたものである。
さらに、前述のように、free[Mg]を高精度に制御した場合に、HAZ組織の微細化効果に加えて、粒界フェライト分率が増加する。これは、酸化物を生成せずに含有したMgの大部分が(Mg,Mn)Sという硫化物となり、HAZの旧オーステナイト粒界上に析出し、これがフェライトの核生成サイトとして作用するために起こる。Mgは本来硫化物生成能が大きいことから、MgSが最初に生成し、これが(Mg,Mn)Sに変化したものと推定される。このような(Mg,Mn)Sによる粒界フェライト生成の促進はこれまで工業的に全く利用されていなかった冶金現象である。しかも、Moの添加量増大が必須となるHT590級耐火鋼のように、より一層焼入性が高い成分において、Mn添加量の増大が必ずしも焼入性を高める訳ではなく、むしろ粒界フェライト生成量を増大させるという新たな結果が得られた。これは前述の(Mg,Mn)Sの生成量と関係すると思われ、本発明のMnの場合にはこの硫化物が増大することが確かめられている。その結果、従来は不可能であったHT590級耐火鋼の耐亜鉛めっき割れ特性の付与が可能となった。
本発明におけるMgとCaの添加方法であるが、既に述べたように、最初に、Si、Mnを添加後、まずTiを添加し溶鋼中の酸素量を調整した後、Mgを徐々に添加するか、あるいは、Tiと少量のMgを同時に添加した後に、最終段階で再度Mgを添加する。最適なMgの添加量は、Ti添加後、溶鋼中に存在する酸素量などに依存するが、実験では、その時の酸素濃度はTi添加量とMg添加までの時間に依存し、TiとMg添加量を適正な範囲で制御すればよい。なお、最終的なMg添加時の溶存酸素量は0.1〜50ppm程度が適量である。Mgの総量としては、微細なMg酸化物(あるいはMg硫化物)を生成させるために0.0001%以上は必要であるが、0.01%を超えると粗大なMg酸化物が生成されるようになり、ピニング力が極端に弱くなることからこれを限界とした。また、free[Mg]は上記の溶存酸素量においては、5ppmまでは粒界フェライト分率はそれほど大きくならないが、これを超えると急激に増加することから最小値として規定した。なお、上述においては、Mgの代わりにCaあるいはそれらの両元素を同時に添加してもよい。
以下、本発明の成分の限定理由について述べる。
C:Cは鋼における母材強度を向上させる基本的な元素として欠かせない元素であり、その有効な下限として0.01%以上の添加が必要であるが、0.12%を超える過剰の添加では、鋼材の溶接性や靱性の低下を招くので、その上限を0.12%とした。
Si:Siは製鋼上脱酸元素として必要な元素であり、鋼中に0.02%以上の添加が必要であるが、0.5%を超えるとHAZ靱性を低下させるのでそれを上限とする。
Mn:Mnは、母材の強度および靱性の確保に必要な元素であり、しかも前述したように亜鉛めっき割れ特性を改善する上でも有効な効果を有する。しかしながら、3.0%を超えると粗大な硫化物の生成が促進され、逆に0.8%未満では、十分な効果が得られなくなることから、その範囲を0.8〜3.0%とする。
P:Pは鋼の靱性に影響を与える元素であり、0.03%を超えて含有すると鋼材の母材だけでなくHAZの靱性を著しく阻害することから、上限を0.03%とした。
S:Sは0.030%を超えて過剰に添加されると粗大な硫化物の生成の原因となり、靱性を阻害するが、その含有量が0.0005%未満になると、粒内フェライトの生成に有効なMnS等の硫化物生成量が著しく低下するために、0.0005〜0.030%をその範囲とする。
Nb:Nbは耐火鋼の必須元素であり、炭化物、窒化物を形成し、高温強度の向上に効果を有する元素であるが、0.001%未満の添加ではその効果が無く、0.2%を超える添加では、靭性の低下を招くために、その範囲を0.001〜0.2%とする。
Mo:MoもNbと同様に耐火鋼の必須元素であり、焼入性を向上させると同時に、炭窒化物を形成し高温強度を改善する元素であり、HT590MPa級鋼においてその効果を得るためには、0.6%以上の添加が必要になるが、1.2%を超えた多量の添加は必要以上の強化とともに、靭性の著しい低下をもたらすために、その範囲を0.6〜1.2%とする。
Al:Alは通常脱酸剤として添加されるが、本発明においては、0.05%超えて添加されるとMg、Caの添加の効果を阻害するために、これを上限とする。また、Mg、Caの酸化物を安定に生成するためには0.0005%は必要であり、これを下限とした。
Ti:Tiは、脱酸剤として、さらには窒化物形成元素として結晶粒の細粒化に効果を発揮する元素であるが、多量の添加は炭化物の形成による靱性の著しい低下をもたらすために、その上限を0.050%にする必要があるが、所定の効果を得るためには0.003%以上の添加が必要であり、その範囲を0.003〜0.050%とする。
Mg:Mgは本発明の主たる合金元素であり、主に脱酸剤あるいは硫化物生成元素として添加されるが、0.01%を超えて添加されると、粗大な酸化物あるいは硫化物が生成し易くなり、母材およびHAZ靱性の低下をもたらす。しかしながら、0.0001%未満の添加では、ピニング粒子として必要な酸化物の生成が十分に期待できなくなるため、その添加範囲を0.0001〜0.01%と限定する。
Ca:Caは硫化物を生成することにより伸長MnSの生成を抑制し、鋼材の板厚方向の特性、特に耐ラメラティアー性を改善する。さらに、CaはMgと同様な効果を有していることから、本発明の重要な元素である。Caは0.0001未満では、十分な効果が得られないので下限値を0.0001%にした。逆に、Caが0.01%を超えるとCaの粗大酸化物個数が増加し、超微細な酸化物あるいは硫化物の個数が低下するため、その上限を0.01%とする。
なお、本発明においては、強度および靱性を改善する元素として、Cu、Ni、Cr、V、Zr、Ta、Bの中で、1種または2種以上の元素を添加することができる。
Cu:Cuは、靱性を低下させずに強度の上昇に有効な元素であるが、0.05%未満では効果がなく、1.5%を超えると鋼片加熱時や溶接時に割れを生じやすくする。従って、その含有量を0.05〜1.5%以下とする。
Ni:Niは、靱性および強度の改善に有効な元素であり、その効果を得るためには0.05%以上の添加が必要であるが、1.5%を超えて添加するとコスト高になることと、場合によっては溶接性などが低下するために、その上限を1.5%とする。
Cr:Crは析出強化による鋼の強度を向上させるために、0.02%以上の添加が有効であるが、多量に添加すると、焼入性を上昇させ、粒界部においてベイナイト組織を生じさせ、靱性および亜鉛めっき割れを助長する。従って、その上限を1.5%とする。
V:Vは、炭化物、窒化物を形成し強度の向上に効果がある元素であるが、0.01%未満の添加ではその効果がなく、0.1%を超える添加では、逆に靭性の低下を招くために、その範囲を0.01〜0.1%とする。
Zr、Ta:ZrとTaもVと同様に炭化物、窒化物を形成し強度の向上に効果がある元素であるが、0.0001%未満の添加ではその効果がなく、0.05%を超える添加では、逆に靱性の低下を招くために、その範囲を0.0001〜0.05%とする。
B:Bは、固溶し、焼入れ性を向上させ、強度を増す。また、BNとして固溶Nを低下させ、溶接部HAZ靱性を向上させる元素であるが、0.0003%未満ではその効果がなく、0.005%超ではその効果は飽和する。従って、その範囲を0.0003〜0.005%とする。
また、本発明においては、シャルピー吸収エネルギーを向上させるためにREMを添加することとしてもよい。
REM:MnSを球状化させ、シャルピー吸収エネルギーを向上させる他、圧延によって、延伸化したMnSと水素による内部欠陥を防止する。しかし、含有量が0.0005%未満であると事実上効果がなく、また、0.005%を超えると、REM−S(硫化物)またはREM−O−S(酸化物と硫化物の複合体)が大量に生成して大型介在物となり、鋼材の靱性のみならず清浄度を害し、また溶接性についても悪影響を及ぼす。従って、その範囲を0.0005〜0.005%とする。
上記の成分を含有する鋼は、製鋼工程で溶製後、連続鋳造などを経て厚板加熱、圧延、冷却処理が施される。この場合、以下の点を限定した。
熱間圧延・制御圧延ともに、鋼片をオーステナイト化するためにAC変態点以上の温度に加熱する必要がある。しかし、1350℃を超えて加熱すると、熱源コストの増大が生じることから、加熱温度は1350℃以下とした。
次いで、熱間圧延・制御圧延ともに、再結晶温度域で圧延することによりオーステナイト粒径を小さくすることが必要である。また、制御圧延を用いて、強度上昇と靭性向上を図る場合には、さらに未再結晶温度域で圧延することによりオーステナイト粒内に変形帯を導入し、フェライト変態核を導入することが有効である。未再結晶域での累積圧下率が40%未満では変形帯が十分に形成されないので、未再結晶域で累積圧下率の下限値を40%とした。しかし、累積圧下率が90%を超えると、母材シャルピー試験の吸収エネルギーの低下が著しくなるために、上限を90%にした。その後の冷却は自然放冷で良い。
自然放冷よりさらに強度を上昇させるためには加速冷却が必要である。しかしながら、冷却速度が1℃/sec未満では、十分な強度を得ることができない。逆に、冷却速度が60℃/sec超ではマルテンサイトやベイナイト主体組織が生成するおそれがあるため母材の靭性が低下する。したがって、冷却速度を1〜60℃/secに限定した。本発明においては、母材の強度と適正なYR(降伏比;2/3以上)を得るために、変態制御が重要であり、変態終了近くまで加速冷却を継続する必要がある。このため、冷却停止温度の上限を650℃とした。650℃超の停止温度では変態が不十分であるために、十分な強度が得られない。通常、加速冷却は水を冷却媒体として用いる。それ故、実際上の冷却停止温度の下限は0℃となるので、下限値を0℃とした。なお、冷却後、以下の焼戻し処理を行う場合には、当該処理を行う温度以下まで冷却すればよい。
加速冷却後の焼戻し熱処理は回復による母材組織の靭性向上を目的としたものであるから、加熱温度は逆変態が生じない温度域であるAC変態点以下でなければならない。回復は転位の消滅・合体により格子欠陥密度を減少させるものであり、これを実現するためには300℃以上に加熱することが必要である。このため、加熱温度の下限を300℃とした。上限は変態点以下であるため、ACを上限とした。
次に、本発明の実施例について述べる。
表1の化学成分を有する鋼片を表2に示す条件にて圧延した。圧延は、普通圧延および制御圧延とし、後者の場合の圧延条件は再結晶域の圧下率を40%とし、未再結晶域の累積圧下率を70%として行った。その後常温まで冷却速度20℃/secで冷却した。あるいは、圧延後、900℃から焼入れを行った。板厚30mm〜100mmの厚鋼板とした後、母材の機械的特性として、母材の常温強度(母材強度YP(yield point))、靭性(vEo;0℃におけるシャルピー吸収エネルギー)、高温強度(高温強度YP;600℃における降伏応力(0.2%オフセット耐力))を測定した。なお、前記鋼片は、Si、Mn等による脱酸後に、Tiを添加して溶鋼中の酸素量を0.1〜50ppmに調整し、MgやCaを徐々に添加することにより作製した。また、いくつかの鋼片においては、上記冷却後、600℃で焼き戻し処理を行い、厚鋼板とした。
[表1]
Figure 2006241509
次いで、溶接条件として1.7kJ/mm、800℃から500℃での冷却時間が8sの小入熱溶接に相当する熱サイクルを付与し、亜鉛めっき割れ特性を比較検討した。この特性の評価は鉄塔用鋼や橋梁用鋼などで広く用いられている小型のNBT試験により行ない、SLM,400[%]の値で比較し、この値が60%以上を良好とした。SLM,400[%]は溶融亜鉛中での切欠破断応力の値を亜鉛が無いときの切欠破断応力の値で除したものであり、400は破断時間として400sを基準とした場合である。また、溶接部HAZ組織を光学顕微鏡により観察した。
[表2]
Figure 2006241509
まず、鋼A〜Jは本発明の例を示したものである。表2に示すように、本発明の鋼板は化学成分と製造条件の各要件を満足しており、HT590MPa級鋼として母材強度・靭性には全く問題はない。また、耐火鋼の重要な特性である高温強度も常温強度の2/3以上を満足しており、極めて良好である。一方、亜鉛めっき割れ特性についても全ての発明鋼鈑でSLM,400の値が60%〜90%となっており、耐亜鉛めっき割れ性に優れていることがわかる。さらに、光学顕微鏡による観察の結果、本発明の鋼板全ての溶接部HAZ組織には、粒径が200μm以下の旧オーステナイトしか存在しないことが明らかになった。また、粒界部においては、粒界フェライトが生成されているのが確認できた。
それに対し、鋼K〜Sは本発明方法から逸脱した比較例である。すなわち、鋼K〜Rは基本成分あるいは選択元素の内いずれかの元素が、発明の要件を満足していない添加量となっている例であり、母材靭性あるいは高温強度の値が規格外となっている。特に、本発明の重要な論点である亜鉛めっき割れ特性に関しては、free[Mg]が十分に確保されていないことからほとんどの鋼材においてSLM,400の値が60%以下となっており、耐亜鉛めっき割れ性の劣化を確認することができる。順に特性を見ると、まず鋼K、M、N、P〜Rでは合金元素が過多に添加されている事によって母材靭性が低くなっている。また、鋼Mと鋼OではMn、Mo量が低いために、耐火鋼の特性として不可欠な高温強度が十分に得られていない。さらに、鋼N、鋼Q、鋼Rを除いて全てSLM,400の値が60%以下となっている。特に、鋼Sは成分的には本発明の用件を満足しているものの、free[Mg]が3ppmであることに対応してSLM,400が低値を示していることから、free[Mg]の影響が大きいことが理解できる。また、光学顕微鏡による観察の結果、free[Mg]が5ppm未満の場合には、粒界フェライトが生成しないことも明らかになった。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.01〜0.12%
    Si:0.02〜0.5%
    Mn:0.8〜3%
    P :0.03%以下
    S :0.0005〜0.03%
    Nb:0.001〜0.2%
    Mo:0.6〜1.2%
    Al:0.0005〜0.05%
    Ti:0.003〜0.05%
    Mg:0.0001〜0.01%
    Ca:0.0001〜0.01%
    を含み、さらに
    free[Mg]=Total[Mg]− 全酸化物中の含有[Mg]≧5ppm
    なる関係を満足し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、溶接部HAZ組織の旧オーステナイト粒径が200μm以下でかつ粒界部に粒界フェライトを有することを特徴とする耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼。
  2. 質量%で、さらに、
    Cu:0.05〜1.5%
    Ni:0.05〜1.5%
    Cr:0.02〜1.5%
    V:0.01〜0.1%
    Zr:0.0001〜0.05%
    Ta:0.0001〜0.05%
    B :0.0003〜0.005%
    のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼。
  3. 重量%で、さらに、
    REM:0.0005〜0.005%
    を含有することを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼。
  4. 請求項1〜請求項3記載の鋼と同一成分を有する鋼片をAC点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延した後、自然放冷することを特徴とする溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の製造方法。
  5. 請求項1〜請求項3記載の鋼と同一成分を有する鋼片をAC点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、自然放冷することを特徴とする溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の製造方法。
  6. 請求項1〜請求項3記載の鋼と同一成分を有する鋼片をAC点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、1〜60℃/secの冷却速度で0〜650℃まで冷却することを特徴とする溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の製造方法。
  7. 請求項1〜請求項3記載の鋼と同一成分を有する鋼片をAC点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、1〜60℃/secの冷却速度で0〜650℃まで冷却し、引き続いて300℃〜AC点で焼戻し熱処理することを特徴とする溶接部の耐亜鉛めっき割れ性に優れたHT590MPa級溶接構造用耐火鋼の製造方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113249646A (zh) * 2021-04-15 2021-08-13 首钢集团有限公司 一种高强塑性热基镀锌中锰钢薄板及其制备方法

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