本発明の絶縁膜形成材料は、溶媒に化合物Aと化合物Bとを溶解して得られる重合性組成物で構成されている。該化合物Aと化合物Bは、それぞれの化合物の分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有するポリマーを形成することが可能な2つの化合物の組み合わせである。なお、本明細書では、結合(重合反応)に関与する官能基又は官能基群を2つ有する場合を「2官能」、3つ有する場合を「3官能」、4つ有する場合を「4官能」と称する場合がある。
化合物A及び化合物Bの中心骨格、炭素原子、酸素原子、珪素原子、窒素原子、硫黄原子などで構成でき、その構成原子の数は、通常100以下である。また、化合物A及び化合物Bの分子量は、例えば50〜1500、好ましくは100〜1000程度である。
空孔構造を有するポリマーを形成可能な化合物A及びBの組み合わせとしては、例えば、中心骨格に結合した複数(例えば2〜4個)の官能基又は官能基群が2次元構造又は3次元構造をなす化合物Aと、中心骨格に結合した複数(例えば2〜4個、好ましくは2個)の官能基又は官能基群が1次元構造(直線状)又は2次元構造(角度を有する直鎖状)をなす化合物Bとの組み合わせが挙げられる。この場合、化合物Aはポリマーの結節点又は架橋点(頂点)を形成し、化合物Bは該結節点又は架橋点をつなぐ連結部(辺)を形成する。いくつかの結節点又は架橋点といくつかの連結部に囲まれた部位に空孔が形成される。前記ポリマーは、分岐構造(特に多分岐構造)を有する重合体(高分子架橋体)を構成するが、部分的に分岐を持たない鎖状構造を有していてもよい。
本発明は、化合物Aが、4官能化合物と3官能化合物及び/又は2官能化合物との組み合わせで構成されており、[4官能化合物]/[3官能化合物及び/又は2官能化合物](モル比)は5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10程度であることを主な特徴としている。前記「4官能化合物と3官能化合物及び/又は2官能化合物との組み合わせ」としては、例えば、4官能化合物と3官能化合物の2種の組み合わせ、4官能化合物と2官能化合物の2種の組み合わせ、4官能化合物と3官能化合物と2官能化合物の3種の組み合わせが挙げられる。なお、化合物Aを構成するこれらの化合物は、分子内に有する官能基(群)の数が同じ化合物として複数の化合物であってもよい。
4官能化合物単独では架橋により分子の自由度が減り、未架橋官能基が生じやすいが、本発明では、化合物Aとして、4官能化合物と2官能化合物及び/又は3官能化合物を上記割合で併用するため、分子の自由度が増し、架橋度を向上するという効果を奏する。さらに、4官能化合物を他の化合物より高い比率で使用した場合、特に4官能化合物/その他の化合物(モル比)が51/49〜90/10の範囲内であると、多分岐構造を有する高分子架橋体の形成が容易となり好ましい。また、4官能化合物と組み合わせる化合物としての3官能化合物と2官能化合物との割合は、[3官能化合物]/[2官能化合物](モル比)が、例えば100/0〜0/100、好ましくは90/10〜10/90程度である。
上記の場合における化合物Aの中心骨格としては、例えば、アダマンタン骨格、テトラフェニルアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格、テトラメチルノルボルナン骨格、ノルボルネン骨格、テトラメチルノルボルネン骨格等の非芳香族性環骨格(橋架け環骨格等);テトラフェニルメタン骨格等の炭素原子を中心に有する骨格;ポルフィリン骨格等の2次元構造を有する骨格;ブタン骨格等の鎖状の骨格(例えば、炭素数4〜10程度の鎖状の炭化水素骨格等)などが挙げられる。化合物Aの中心骨格部分の分子量は、例えば40〜1460程度である。また、化合物Bの中心骨格としては、例えば、ベンゼン環やビフェニル環等の単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環骨格が挙げられる。
官能基としては、反応性を有するものであれば特に限定されないが、代表的な例として、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シラノール基、ハロゲン原子、カーボアニオン、又はこれらを含有する基などが挙げられる。なお、これらの基は反応性の基に誘導体化されていてもよく、保護基で保護されていてもよい。反応性の基としては、例えばカルボキシル基においては、ハロホルミル基、酸無水物基(保護基で保護されたカルボキシル基としても分類できる)などが挙げられる。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
互いに反応して化学結合を形成する官能基又は官能基群の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とアミノ基との組み合わせ(アミド結合の形成)、カルボキシル基とヒドロキシル基との組み合わせ(エステル結合の形成)、カルボキシル基とメルカプト基との組み合わせ(チオエステル結合の形成)、ヒドロキシル基とヒドロキシル基との組み合わせ(エーテル結合の形成)、ヒドロキシル基とメルカプト基との組み合わせ(チオエーテル結合の形成)、炭素−炭素結合を形成可能な2つの官能基の組み合わせ、炭素−窒素結合を形成可能な2つの官能基の組み合わせ;1個のカルボキシル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した2個のアミノ基との組み合わせ(イミダゾール環等の2つの窒素原子を有する5員又は6員環の形成)、1個のカルボキシル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合したアミノ基及びヒドロキシル基との組み合わせ(オキサゾール環等の1つの窒素原子と1つの酸素原子を有する5員又は6員環の形成)、1個のカルボキシル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した1個のアミノ基及び1個のメルカプト基との組み合わせ(チアゾール環等の1つの窒素原子と1つのイオウ原子を有する5員又は6員環の形成)、1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した2個のカルボキシル基と1個のアミノ基との組み合わせ(5員又は6員のイミド環の形成)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記化合物Aを構成する化合物の代表的な例として、前記式(1)で表される4官能化合物と、前記式(2)で表される3官能化合物及び/又は前記式(3)で表される2官能化合物との組み合わせが挙げられる。式(1)〜(3)中、Zaは4価の有機基を示し、Ra、Rb、Rc、Rdは、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ハロホルミル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示し、Ya、Yb、Yc、Ydは、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、La、Lcは、同一又は異なって、水素原子、又は炭化水素基を示す。この化合物では、保護基で保護されたカルボキシル基、ハロホルミル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基が、前記官能基又は官能基群に相当する。
Zaにおける有機基としては、4価の芳香族性又は非芳香族性環式基、4価の非環式基、及びこれらが複数個結合した4価の基が挙げられる。前記4価の芳香族性環式基を構成する芳香環としては、ベンゼン環などの芳香族炭素環やピロール環などの芳香族複素環が複数個、単結合、又は2価の炭化水素基(メチレン基、ビニレン基等)、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子等の1又は2以上の連結基を介して結合した多環(例えば、ポルフィリン環等)などが挙げられる。4価の非芳香族性環式基を構成する非芳香族性環としては、単環又は多環(橋架け環)の脂環式炭素環又は非芳香族性複素環(例えば、アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環等)が挙げられる。4価の非環式基としては、例えば、炭素原子;ブタン−1,2,3,4−テトライル基、2,3−ジメチルブタン−1,2,3,4−テトライル基等の鎖状の炭化水素基などが挙げられる。なかでも、Zaとして4価のアダマンチル基、特に4つの橋頭位に結合部位を有するアダマンチル基(1,3,5,7−アダマンタンテトライル基)が好ましく用いられる。
Ra、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいカルボキシル基の「保護基」としては、例えば、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシなどのC1-10アルコキシ基;メトキシメチルオキシ、メトキシエトキシメチルオキシ基などの(C1-4アルコキシ)1-2C1-4アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどのC3-20シクロアルキルオキシ基など)、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、アリールオキシ基(フェノキシ、メチルフェノキシ基などのC6-20アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ、ジフェニルメチルオキシ基などのC7-18アラルキルオキシ基)、トリアルキルシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ基などのトリC1-4アルキルシリルオキシ基)、置換基を有してもよいアミノ基(アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノなどのモノまたはジ置換C1-6アルキルアミノ基;ピロリジノ、ピペリジノ基などの環状アミノ基)、置換基を有してもよいヒドラジノ基[ヒドラジノ基、N−フェニルヒドラジノ基、アルコキシカルボニルヒドラジノ基(t−ブトキシカルボニルヒドラジノ基などのC1-10アルコキシカルボニルヒドラジノ基など)、アラルキルオキシカルボニルヒドラジノ基(ベンジルオキシカルボニルヒドラジノ基などのC7-18アラルキルオキシカルボニルヒドラジノ基)など]、アシルオキシ基(アセトキシ、プロピオニルオキシ基などのC1-10アシルオキシ基など)、アシル基(アセチル、プロピオニル基などのC1-10アシル基など)などが挙げられる。カルボキシル基の保護基は、これらに限定されず、有機合成の分野で用いられる他の保護基も使用できる。
保護基で保護されたカルボキシル基の好ましい例には、C1-6アルコキシ−カルボニル基、(C1-4アルコキシ)1-2−C1-4アルコキシ−カルボニル基、N−置換カルバモイル基、テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、トリアルキルシリルオキシカルボニル基が含まれる。
Ra、Rb、Rc、Rdにおけるハロホルミル基(ハロゲン化カルボニル基)としては、クロロホルミル基(塩化カルボニル基)、ブロモホルミル基(臭化カルボニル基)、フルオロホルミル基(フッ化カルボニル基)、ヨードホルミル基(ヨウ化カルボニル基)が挙げられる。
Ra、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基の「保護基」としては、例えば、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの炭素数6〜20程度の芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシ−カルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのC7-20アラルキルオキシカルボニル基)、アルキリデン基(メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、イソブチリデン、ペンチリデン、シクロペンチリデン、ヘキリデン、シクロヘキシリデン基などの脂肪族アルキリデン基;ベンジリデン、メチルフェニルメチリデンなどの芳香族アルキリデン基など)などが挙げられる。アミノ基の保護基としては、これらに限定されず、有機合成の分野で慣用のものを使用できる。
また、保護基で保護されていてもよいアミノ基には、反応や最終的な高分子架橋体の物性を損なわない範囲で、モノ置換アミノ基も含まれる。モノ置換アミノ基の例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基などのアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基などのシクロアルキルアミノ基;フェニルアミノ基などのアリールアミノ基;ベンジルアミノ基などのアラルキルアミノ基などが挙げられる。
Ra、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基や保護基で保護されていてもよいメルカプト基の「保護基」には、例えば、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などのC1-6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの3〜15員のシクロアルキル基)、アラルキル基(ベンジル基などのC7-20アラルキル基など)、置換メチル基(メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基などの総炭素数2〜10程度の置換メチル基)、置換エチル基(1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル基など)、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-10の脂肪族アシル基;シクロヘキシルカルボニル基などのC4-20脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などのC7-20芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのC7-20アラルキルオキシ−カルボニル基)などが含まれる。ヒドロキシル基及びメルカプト基の保護基としては、これらに限定されず、有機合成の分野で慣用のものを使用できる。
Ya、Yb、Yc、Ydにおける2価の芳香族性環式基に対応する芳香族性環には、単環または多環の芳香族炭素環及び芳香族複素環が含まれる。なお、本明細書において「多環」とは、隣接する2つの環が2個以上の原子を共有した縮合環構造を有するもののほか、2つ以上の環が単結合、2価の炭化水素基(メチレン基、ビニレン基等)、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子等の1又は2以上の連結基を介して結合した構造を有するものも含む意味に用いる。
単環の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環が挙げられる。多環の芳香族炭化水素環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環などの2つ以上の芳香環がそれぞれ2個以上の原子を共有した縮合環構造をもつもの;ビフェニル環、ビフェニレン環、フルオレン環、スチルベン環などの2つ以上の芳香環が単結合等の連結基を介して結合した構造のものなどが挙げられる。芳香族複素環としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1又は2以上含む単環または多環の芳香族複素環が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピコリン環などの単環;キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナジン環などの多環などが挙げられる。これらの環は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
Ya、Yb、Yc、Ydにおける2価の非芳香族性環式基に対応する非芳香族性環には、単環又は多環の脂環式炭素環及び非芳香族性複素環が含まれる。脂環式炭素環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜12員)程度のシクロアルカン環;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜10員)程度のシクロアルケン環などの単環の脂環式炭素環;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、トリシクロデカン環、トリシクロウンデカン環、テトラシクロドデカン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜6環程度の橋かけ環式炭素環などが挙げられる。非芳香族性複素環としては、例えば、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する5又は6員の複素環、これらを含む縮合環などが挙げられる。前記非芳香族性環式基は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
La、Lcにおける炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、3−メチル−4−ペンテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜12員)程度のシクロアルキル基、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜10員)程度のシクロアルケニル基などの単環の脂環式炭化水素基;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、トリシクロデカン環、トリシクロウンデカン環、テトラシクロドデカン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜4環程度の橋かけ環式炭素環などを有する橋かけ環炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜20(好ましくは6〜14)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)が含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
前記脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基は、置換基を有していてもよい。置換基としては反応や高分子架橋体の物性を損なわないものであれば特に限定されない。
式(1)で表される4官能化合物の代表的な例として、例えば、ピロメリット酸などのベンゼン環を中心骨格に有するベンゼン誘導体;1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸、1,3,5,7−テトラキス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3,5,7−アダマンタンテトラアミンなどのアダマンタン環を中心骨格に有するアダマンタン誘導体;2,3,5,6−ノルボルナンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ノルボルネンテトラカルボン酸、2,3,5,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、2,3,5,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)ノルボルネンなどのノルボルナン環又はノルボルネン環を中心骨格に有するノルボルナン又はノルボルネン誘導体;テトラキス(4−カルボキシフェニル)メタンなどの炭素原子を中心骨格に有するテトラアリールメタン誘導体;エリスリトールなどのブタン骨格を中心骨格とするブタン誘導体;ポルフィリンの4つの含窒素環に官能基を有するポルフィリン環を中心骨格とするポルフィリン誘導体などが挙げられる。また、4官能化合物の具体例として、後述の式(5)で表されるポリカルボン酸誘導体も挙げられる。これらの4官能化合物は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる
式(2)で表される3官能化合物の代表的な例として、例えば、4官能化合物の代表的な例として上記に例示の化合物と同様の骨格からなり、3つの官能基を有する化合物が挙げられる。また、3官能化合物の具体例として、後述の式(6)で表されるポリカルボン酸誘導体も挙げられる。これらの3官能化合物は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
式(3)で表される2官能化合物の代表的な例として、例えば、4官能化合物の代表的な例として上記に例示の化合物と同様の骨格からなり、2つの官能基を有する化合物が挙げられる。また、2官能化合物の具体例として、後述の式(7)で表されるポリカルボン酸誘導体も挙げられる。これらの2官能化合物は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
式(1)〜(3)で表される化合物の構造としては、立体的に嵩高い構造(容積の大きい構造)が好ましい。特に、式(1)の4官能化合物は、Zaを中心とし、Ra、Rb、Rc、Rdを頂点とするほぼ正四面体の構造であるのが好ましく、式(2)の3官能化合物は、Zaを中心とし、Laを頂点、Rb、Rc、Rdを底面とするほぼ正三角錐の構造であるのが好ましい。また、式(3)の2官能化合物は、Zaを中心とし、RaとRcがほぼ対称となる構造であるのが好ましい。
本発明の絶縁膜形成材料は、好ましくは、化合物Aが、前記(5)で表されるテトラカルボン酸誘導体、前記式(6)で表されるトリカルボン酸誘導体及び/又は前記式(7)で表されるジカルボン酸誘導体との2種のポリカルボン酸誘導体からなる組み合わせで構成されている。なお、本明細書では、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基がZaに直接結合していない化合物も、便宜上ポリカルボン酸誘導体と称する。
式(5)、(6)、(7)のZaにおける4価の有機基は、式(1)、(2)、(3)のZaにおける4価の有機基と同様である。R1、R2、R3、R4における保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ハロホルミル基は、Ra等における保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ハロホルミル基と同様である。Y1、Y2、Y3、Y4における2価の芳香族性又は非芳香族性環式基は、Yaにおける2価の芳香族性又は非芳香族性環式基と同様である。また、L1、L3における炭化水素基は、Ra等における炭化水素基と同様である。
式(5)、(6)、(7)で表されるポリカルボン酸誘導体は、R1〜R4がアルコキシカルボニル基やアリールオキシカルボニル基等の場合はポリカルボン酸エステルであり、R1〜R4が置換基を有してもよいカルバモイル基の場合は、ポリカルボン酸アミドであり、R1〜R4がハロホルミル基の場合はポリカルボン酸ハライドである。
好ましいR1〜R4には、カルボキシル基、C1-6アルコキシ−カルボニル基、(C1-4アルコキシ)1-2−C1-4アルコキシ−カルボニル基、N−置換カルバモイル基、テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、トリアルキルシリルオキシカルボニル基、ハロホルミル基が含まれる。
式(5)で表されるテトラカルボン酸誘導体(テトラカルボン酸及びその誘導体)には、R1、R2、R3、R4の4つの官能基全てがカルボキシル基である化合物、1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、2つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、3つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、4官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物が含まれる。
式(5)で表されるテトラカルボン酸誘導体の代表的な例として、Zaが4価のアダマンタンチル基である化合物を例示すると、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸、1,3,5,7−テトラキス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン;1−メトキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリカルボキシ−7−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−(1−ピロリジニルカルボニル)−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(メトキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(メトキシメチルオキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(トリメチルシリルオキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−5,7−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5,7−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3,5−トリス(メトキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(t−ブトキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(フェノキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(メトキシメチルオキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(トリメチルシリルオキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸トリクロリド、1,3,5−トリス(ジエチルカルバモイル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(1−ピロリジニルカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3,5,7−トリス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3,5,7−テトラキス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(メトキシメチルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(トリメチルシリルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,3,5,7−テトラキス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
これらのテトラカルボン酸又はその誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
式(6)で表されるトリカルボン酸誘導体(トリカルボン酸及びその誘導体)には、3官能基全てがカルボキシル基である化合物、1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、2つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、3官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物が含まれる。
式(6)で表されるトリカルボン酸誘導体の代表的な例として、Zaが4価のアダマンタンチル基である化合物を例示すると、7−メチル−1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、7−フェニル−1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−メチルアダマンタン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−フェニルアダマンタン;1−メトキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−メトキシメチルオキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−トリメチルシリルオキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−5−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−ピロリジニルカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(メトキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(メトキシメチルオキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(トリメチルシリルオキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3,5−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)−アダマンタン;1,3,5−トリス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(メトキシメチルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(トリメチルシリルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリクロリド、1,3,5−トリス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3,5−トリス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
これらのトリカルボン酸又はその誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
式(7)で表されるジカルボン酸誘導体(ジカルボン酸及びその誘導体)には、2官能基全てがカルボキシル基である化合物、1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、2官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物が含まれる。
式(7)で表されるジカルボン酸誘導体の代表的な例として、Zaが4価のアダマンタンチル基である化合物を例示すると、1,3−アダマンタンジカルボン酸、5−メチル−1,3−アダマンタンジカルボン酸、5−フェニル−1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5−メチルアダマンタン、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5−フェニルアダマンタン;1−メトキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−メトキシメチルオキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−トリメチルシリルオキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−ピロリジニルカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(メトキシメチルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(トリメチルシリルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
これらのジカルボン酸又はその誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記式(5)、(6)、(7)で表されるポリカルボン酸誘導体は、公知の方法により、又は公知の有機合成反応、公知のカルボキシル基への保護基の導入法(例えば、エステル化、アミド化による方法等)等を利用することにより得ることができる。
本発明の絶縁膜形成材料において、化合物Bの代表的な例として、前記式(4)で表される化合物が挙げられる。式(4)中、環Zbは単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Re、Rf、Rg、Rhは環Zbに結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。この化合物では、Re、Rf、Rg、Rhが、前記官能基又は官能基群に相当する。
Re、Rf、Rg、Rhのうち一対の基(例えば、ReとRf、RgとRh)は、環化の容易さの点から、それぞれ、環Zbの構成原子の1,2位(α位)又は1,3位(β位)の位置に結合しているのが好ましい。また、該一対の基は、2つのアミノ基、アミノ基とヒドロキシル基、アミノ基とメルカプト基、2つのカルボキシル基の何れかの組み合わせが好ましい。このような一対の基を有する化合物Bは、官能基又は官能基群として1個のカルボキシル基又は2個のアミノ基を有する化合物Aと環を形成可能である。
環Zbにおける単環又は多環の芳香族性環には芳香族炭素環及び芳香族複素環が含まれる。単環の芳香族炭素環としては、ベンゼン環が挙げられる。多環の芳香族炭素環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環などの2つ以上の芳香環がそれぞれ2個以上の原子を共有した縮合環構造をもつもの;ビフェニル環、ビフェニレン環、フルオレン環、スチルベン環などの2つ以上の芳香環が1又は2以上の連結基[例えば、単結合、2価の炭化水素基(メチレン基、ビニレン基等)、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子等]を介して結合した構造を有するものなどが挙げられる。芳香族複素環としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1又は2以上含む単環または多環の芳香族複素環が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピコリン環などの単環;キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナジン環などの多環などが挙げられる。
環Zbにおける単環又は多環の非芳香族性環には脂環式炭化水素環及び非芳香族性複素環が含まれる。該非芳香族性環としては、前記Zaにおける非芳香族性環式基に対応する非芳香族性環などが挙げられる。環Zbにおける単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
Re、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基の「保護基」としては、前記Ra、Rb、Rc、Rdにおけるアミノ基の保護基と同様のものが挙げられる。また、アミノ基の保護基としては、複数のアミノ基を同時に保護しうる保護基(多官能保護基)を使用することもできる。このような保護基には、例えば、カルボニル基、オキサリル基、ブタン−2,3−ジイリデン基などが含まれる。このような保護基を使用した場合には、Re、Rf、Rg、Rhのうちの2つの基がが同時に一つの多官能保護基に保護され、環Zbに隣接する環が形成される。また、Re、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基には、反応や最終的な高分子架橋体の物性を損なわない範囲で、モノ置換アミノ基も含まれる。モノ置換アミノ基の例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基などのアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基などのシクロアルキルアミノ基;フェニルアミノ基などのアリールアミノ基;ベンジルアミノ基などのアラルキルアミノ基などが挙げられる。
Re、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基の「保護基」としては、前記Ra、Rb、Rc、Rdにおけるヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基の保護基として示したものと同様のものが挙げられる。
式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、後述の式(8)で表されるポリアミン誘導体のほか、Re、Rf、Rg、Rhが保護基で保護されていてもよいカルボキシル基である化合物(例えば、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸又はその誘導体等)などが挙げられる。これらの化合物は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
本発明の絶縁膜形成材料は、好ましくは、化合物Bが、前記式(8)で表されるポリアミン誘導体で構成されている。式(8)の環Z1における単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環は、環Zbにおける単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環と同様である。R5、R6、R7、R8における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基は、Re等における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基と同様である。式(8)において、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である。本発明では、例えば少なくともR6とR7が保護基で保護されていてもよいアミノ基である場合には、R5とR6、R7とR8は、それぞれ、式(1)、(2)又は(3)[式(5)、(6)、又は(7)]で表されるアダマンタンポリカルボン酸のRa〜Rd[R1〜R4]の何れかと反応して環を形成可能な位置にあるのが好ましく、特に、5員環又は6員環を形成できるように、環Zaの構成原子の1,2位(α位)又は1,3位(β位)の位置に結合しているのが好ましい。
前記式(8)で表されるポリアミン誘導体としては、(i)R5、R6、R7、R8のうちの保護基で保護されていてもよいアミノ基が全て保護基で保護されていないアミノ基である化合物、(ii)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがアルキリデン基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、イミン誘導体)、(iii)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがアシルアミノ基である化合物(すなわち、アミド誘導体)、(iv)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがアルコキシカルボニル基やアラルキルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、カルバミン酸エステル誘導体)、(v)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがモノ置換アミノ基である化合物などが例示される。
前記(i)〜(v)に例示されるポリアミン誘導体の代表的な化合物として、環Z1をベンゼン環に限り、また、保護基を有している場合の保護基の数も4置換体又は2置換体に限定した化合物を以下に例示するが、これらに限られるものではない。すなわち、環Z1がビフェニル環等の場合にも、以下の化合物に対応する化合物が例示される。
前記(i)R5、R6、R7、R8のうちの保護基で保護されていてもよいアミノ基が全て保護基で保護されていないアミノ基である化合物の代表的な例として、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジメルカプトベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ジメルカプトベンゼンなどが挙げられる。
前記(ii)R
5、R
6、R
7、R
8の少なくとも1つがアルキリデン基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、イミン誘導体)の代表的な例として、下記式で表される化合物などが挙げられる。
前記イミン誘導体には、式(8)におけるR5、R6が共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N″−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのR7、R8が共にアミノ基であるイミン誘導体;N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトラベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのR7、R8が共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であるイミン誘導体などが含まれる。
さらに、前記イミン誘導体には、式(8)におけるR5、R6が共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N″−ジイソプロピリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジイソプロピリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのR7、R8が共にモノ置換アミノ基であるイミン誘導体が含まれる。
前記イミン誘導体には、上記の他に、N,N′−ジイソプロピリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジイソプロピリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミンなどのR7、R8が共にヒドロキシル基であるイミン誘導体;N,N′−ジイソプロピリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジイソプロピリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミンなどのR7、R8が共にメルカプト基であるイミン誘導体が含まれる。
前記(iii)R
5、R
6、R
7、R
8の少なくとも1つがアシルアミノ基である化合物(すなわち、アミド誘導体)としては、下記式で表される化合物などが例示される。
前記アミド誘導体には、式(8)におけるR5、R6、が共にアシルアミノ基であって、1,2,4,5−テトラキス(アセトアミノ)ベンゼンなどのR7、R8、が共にアシルアミノ基であるアミド誘導体;1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼンなどのR7、R8が共にモノ置換アミノ基であるアミド誘導体;1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ジアセトキシベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ジアセトキシベンゼン、1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ジメトキシカルボニルオキシベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ジメトキシカルボニルオキシベンゼンなどのR7、R8が共に保護基で保護されたヒドロキシル基であるアミド誘導体;1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ジアセチルチオベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ジアセチルチオベンゼンなどのR7、R8が共に保護基で保護されたメルカプト基であるアミド誘導体が含まれる。
前記(iv)R
5、R
6、R
7、R
8の少なくとも1つがアルコキシカルボニル基やアラルキルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、カルバミン酸エステル誘導体)としては、下記式で表される化合物などが例示される。
前記カルバミン酸エステル誘導体には、式(8)におけるR5、R6、が共にアルコキシカルボニル基であって、1,2,4,5−テトラキス(アセチルアミノ)ベンゼンなどのR7、R8が共にアルコキシカルボニル基であるカルバミン酸エステル誘導体;1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メチルアミノ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(フェニルアミノ)ベンゼンなどのR7、R8が共にモノ置換アミノ基であるカルバミン酸エステル誘導体;1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ジメトキシカルボニルオキシベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ジメトキシカルボニルオキシベンゼンなどのR7、R8が共に保護基で保護されたヒドロキシル基であるカルバミン酸エステル誘導体;1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ジメトキシカルボニルチオベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ジメトキシカルボニルチオベンゼンなどのR7、R8が共に保護基で保護されたメルカプト基であるカルバミン酸エステル誘導体が含まれる。
前記(v)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがモノ置換アミノ基である化合物の代表的な例としては、式(8)におけるR5、R6、が共にモノ置換アミノ基であって、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼンなどのR7、R8が共にアミノ基である化合物などが挙げられる。
前記式(8)で表されるポリアミン誘導体には、上記の他に、R5〜R8のうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する原子とともに環を形成した化合物が含まれる。このようなポリアミン誘導体としては、例えば、分子内のアミノ基が前記複数のアミノ基を同時に保護しうる保護基(多官能保護基)で保護された化合物などが挙げられる。このような化合物の代表的な例としては、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンが2つのオキサリル基で保護された化合物[式(8)において、環Z1がベンゼン環であって、R5とR6、R7とR8がそれぞれオキサリル基で保護されたアミノ基である化合物]、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンが2つのブタン−2,3−ジイリデン基で保護された化合物[式(6)において、環Zがベンゼン環であって、R5とR6、R7とR8がそれぞれブタン−2,3−ジイリデン基で保護されたアミノ基である化合物]などが挙げられる。
これらのポリアミン誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記式(8)で表されるポリアミン誘導体は、公知の方法により、又は公知の有機合成反応、公知のアミノ基への保護基の導入法(例えば、アシル化、イミノ化、アルキル化による方法等)等を利用することにより得ることができる。
本発明における溶媒としては、化合物Aと化合物Bとを溶解し反応を阻害しないものであればよく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルイミダゾリジン等の環状アミノアセタール類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエステル類;ジオキサン、テトラヒロドフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
本発明の絶縁膜形成材料は、上記以外の他の成分を含んでいてもよく、例えば、重合反応を促進するための触媒を添加してもよい。触媒の代表的な例としては、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒が挙げられる。触媒の使用量は、上記モノマー成分(アダマンタンポリカルボン酸と芳香族ポリアミン)の総量に対して、例えば0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%程度である。また、本発明の絶縁膜形成材料には、塗布性を改善する目的で、溶液の粘度を調節するための添加剤を添加してもよい。このような添加剤の代表的な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール類やポリアルキレングリコール類;ポリベンズイミダゾール類;ポリベンゾオキサゾール類などが挙げられる。添加剤の使用量は、絶縁膜形成材料(塗布液)の総量に対して、例えば0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%程度である。
さらに、本発明の絶縁膜形成材料には、重合後の分子量を調整するためのモノカルボン酸類、及び/又は重合後の架橋度を調整するためのジカルボン酸類を添加してもよい。モノカルボン酸類の代表的な例としては、アダマンタンカルボン酸、安息香酸などのモノカルボン酸;アダマンタンカルボン酸メチルエステル、安息香酸メチルエステルなどのモノカルボン酸誘導体などが挙げられ、ジカルボン酸類の代表的な例としては、アダマンタンジカルボン酸、テレフタル酸などのジカルボン酸;アダマンタンジカルボン酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジメチルエステルなどのジカルボン酸誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸類の使用量は、アダマンタンポリカルボン酸に対して、例えば0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%程度であり、ジカルボン酸類の使用量は、アダマンタンポリカルボン酸に対して、例えば0〜100モル%、好ましくは0〜50モル%程度である。
本発明の絶縁膜形成材料には、形成される絶縁被膜の基盤密着性を高めるための密着促進剤を添加してもよい。密着促進剤の代表的な例としては、トリメトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどが挙げられる。密着促進剤の使用量は、上記モノマー成分の総量に対して、例えば0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%程度である。
本発明の絶縁膜形成材料を構成する重合性組成物の調製法は、化合物A及びBの種類等(モノマー成分)とを溶媒に完全に溶解しうる方法であれば特に限定されず、例えば、モノマー成分、溶媒、その他の成分からなる混合物を撹拌又は静置することにより行われる。化合物Aと化合物Bとの使用割合は広い範囲で選択でき、両者を当量用いてもよく、何れか一方を過剰量用いてもよい。一般に、化合物Bを過剰量用いる場合が多い。例えば、化合物Bの使用量は、化合物Aに対して、一般に0.01〜100当量、好ましくは1〜50当量、さらに好ましくは4〜20当量程度である。
化合物Aと化合物Bとを合計した量(モノマー総量)の溶媒に対する濃度は、使用する溶媒に対する溶解度に応じて任意に選択され、全モノマー濃度として、例えば5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%程度である。高濃度のモノマー成分を溶解した絶縁膜形成材料により形成される絶縁膜は、膜厚を大きくすることができるため優れた電気的特性を示し、種々の半導体製造プロセスに対応した膜厚を有する絶縁膜を形成することができる。また、絶縁膜形成材料中にモノマー成分が析出することがなく、優れた塗布性を発揮することができる。
溶解は、化合物Bとしてのポリアミン誘導体等が酸化されない限度において、例えば空気雰囲気下で行われ、好ましくは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。溶解させる温度は、特に限定されず、モノマーの溶解性や溶媒の沸点に応じて加熱してもよく、例えば0〜200℃、好ましくは10〜150℃程度である。
本発明の絶縁膜は、上記化合物Aと化合物Bとから形成されるポリマー(高分子架橋体)により構成される。絶縁膜は、例えば、重合性組成物からなる絶縁膜形成材料を基材上に塗布した後、加熱して重合反応させることにより形成される。前記基材としては、例えば、シリコンウェハー、金属基板、セラミック基板などが挙げられる。塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法などの慣用の方法を用いることができる。
加熱温度は、用いる重合性成分が重合する温度であれば特に制限されないが、例えば100〜500℃、好ましくは150〜450℃程度であり、一定温度又は段階的温度勾配が付されてもよい。加熱は、形成される薄膜の性能に影響がない限り、例えば空気雰囲気下で行われてもよく、好ましくは不活性ガス(窒素、アルゴンなど)雰囲気下、又は真空雰囲気下で行われる。
加熱により、絶縁膜形成材料に含まれる化合物Aの官能基と化合物Bの官能基との結合による重合反応が進行する。例えば、前記式(5)〜(7)で表されるポリカルボン酸誘導体のR1、R2、R3、R4における保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基と、前記式(8)で表されるポリアミン誘導体のR5、R6、R7、R8における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基との反応によりアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合が形成されたポリマーが生成する。なお、R5〜R8のうち1又は2個が保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基である時、エステル結合やチオエステル結合が形成されずに、アミド結合のみが形成される場合がある。化合物Aと化合物Bとの結合の代表的な例としては、アダマンタンポリカルボン酸類と芳香族ポリアミン類とが、カルボキシル基の保護基及び/又はアミノ基の保護基の脱離を伴って重縮合し、重合生成物としてアダマンタン骨格含有ポリベンズアゾール類(イミダゾール、オキサゾール、チアゾール類)等が形成される。
特に、本発明では、化合物Aが、4官能化合物と3官能化合物及び/又は2官能化合物との組み合わせからなるため、隣接する架橋点(又は結節点)同士の距離(辺)が長く大きい空孔が形成され、結果として極めて低い誘電率を達成することができる。より詳細には、化合物Aを構成する4官能化合物は4方向へ分岐した3次元構造を有する架橋点を、3官能化合物は3方向へ分岐した3次元構造を有する架橋点をそれぞれ形成し、2官能化合物は2方向へ延びた直鎖状の2次元構造を有する結節点を形成することにより、4官能化合物と3官能化合物及び/又は2官能化合物との組み合わせである化合物Aと化合物Bとが結合して疎な空孔構造からなるポリマーを生成することができる。例えば、化合物Aが4官能化合物と3官能化合物との組み合わせである場合には、互いに立体的な障害を生じるため、化合物Bとの結合による重合反応により形成される空隙が大きいポリマーとなる。また、4官能化合物と2官能化合物との組み合わせである場合には、4官能化合物が形成する架橋点を頂点とし、該4官能化合物に結合した化合物Bによる連結部と、2官能化合物からなる結節点に結合した化合物Bによる連結部とを外周とする大きい空隙が形成される。一方、4官能化合物(3官能化合物)単独では、重合時に架橋点が多く形成されるため高密度化し、また、分子の自由度が減少するため未架橋点を生じ、比誘電率を上昇させてしまい、2官能化合物単独では、形成されるポリマーが鎖状構造を有し、嵩が低いためポリマー同士が近接しやすく高密度の絶縁膜となってしまう。従って、4官能化合物と3官能化合物及び/又は2官能化合物との組み合わせを用いると、化合物Aとして前記3種のうち1種の化合物のみを用いてポリマーを得る場合と比べて、4官能化合物を架橋点とする4方向へ架橋した構造部位を有する低密度の疎な空孔構造を形成することができる。
本発明の絶縁膜は、上記絶縁膜形成材料から形成されたポリマーに含まれる、4官能化合物と化合物Bとの結合により形成される4方向へ分岐した3次元構造と、3官能化合物と化合物Bの結合により形成される3方向へ分岐した3次元構造、又は2官能化合物と化合物Bとの結合により形成される2方向へ延びる鎖状の2次元構造との組み合わせからなる構造を有している。本発明の絶縁膜の好ましい態様としては、化合物AとBの中心骨格がそれぞれアダマンタン骨格と芳香性環骨格である絶縁膜形成材料から形成されたポリマーに含まれるアダマンタン環、芳香環、及びアゾール環又は6員の含窒素環(重縮合部分に形成される環)を主な構成単位として含んでいる。このような絶縁膜は、例えば、3官能化合物としてアダマンタントリカルボン酸を用いることにより、3次元構造を有するアダマンタン化合物と2次元構造を有する芳香族ポリアミンとが結合して、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として3方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2頂点又は2辺を共有してなるユニット)を有する高分子膜が形成される。また、4官能化合物としてアダマンタンテトラカルボン酸を用いることにより、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として4方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2辺を共有してなるユニット)を有する網目状の高分子膜を形成することができる。このような絶縁膜は、内部に多数の分子レベルの空孔を均一に分散して有するため、特に優れた比誘電率を有することができる。
加熱により形成された絶縁膜の膜厚は、用途に応じて適宜設定できるが、一般には50nm以上(50〜2000nm程度)、好ましくは100nm以上(100〜2000nm程度)、より好ましくは300nm以上(300〜2000nm程度)である。本発明の絶縁形成材料によれば、モノマー濃度の高い塗布液を得ることができるため、ポリベンズアゾール類からなる絶縁膜であっても上記のような膜厚を実現することができる。50nm未満では、リーク電流が発生するなどの電気的特性に悪影響を及ぼしたり、半導体製造工程における化学的機械研磨(CMP)による膜の平坦化が困難となるなどの問題が生じやすいため、特に層間絶縁膜用途としては適さない。
なお、予め製造したポリマー(高分子架橋体)を基板上に塗布して絶縁膜を形成することが考えられるが、このようなポリマーは溶媒への溶解性が極めて低いので、塗布により薄膜を形成することは困難である。これに対して、本発明の絶縁膜形成材料は、モノマー成分が溶媒に溶解しやすく、濃度の高い溶液を調製できるので、そのまま塗布液として基材上に塗布した後、重合させて、所望の厚みの薄膜を容易に形成することができる。そして、このように形成されたポリマーからなる絶縁膜は、空隙が大きく形成され、空孔率が極めて高いので比誘電率が著しく低く、架橋により十分な耐熱性及び機械的強度を有するという利点を有する。
本発明の絶縁膜は、低誘電率且つ高耐熱性を示すため、例えば、半導体装置等の電子材料部品における絶縁被膜として使用することができ、特に層間絶縁膜として有用である。