JP2006238831A - ミトコンドリアの機能改変方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 呼吸活性の増大による発熱や活性酸素産生の抑制等を促進させるようにミトコンドリア機能を改変するための手段を提供する。
【解決手段】 ザゼンソウ由来脱共役タンパク質SfUCPbまたは6回膜貫通型脱共役タンパク質の膜貫通ドメイン2〜6番のいずれか1つを人為的に欠失させた5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現させることによって、微生物、動植物個体または動植物細胞のミトコンドリアの機能を改変する。
【選択図】図1
【解決手段】 ザゼンソウ由来脱共役タンパク質SfUCPbまたは6回膜貫通型脱共役タンパク質の膜貫通ドメイン2〜6番のいずれか1つを人為的に欠失させた5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現させることによって、微生物、動植物個体または動植物細胞のミトコンドリアの機能を改変する。
【選択図】図1
Description
この出願の発明は、動植物および微生物に存在しない5回膜貫通型の脱共役タンパク質(Uncoupling protein: UCP)を人為的に発現させることによって、微生物、動植物個体または動植物細胞のミトコンドリア機能を改変させる方法に関するものである。
動植物に広く存在する脱共役タンパク質(Uncoupling protein: UCP)は、ミトコンドリア内膜に局在する6回の膜貫通ドメインを持つキャリアタンパク質の一種であり(図1)、その活性はミトコンドリアにおいてATP合成とは共役せずに、その膜電位を解消することが明らかになっている。また、脱共役タンパク質の機能に関しては、哺乳動物において、発熱、活性酸素産生の抑制などに関与することが示唆されており、植物においても、ATP合成の制御に関わるエネルギー代謝の平衡化、活性酸素産生の抑制への関与が考えられている。しかしながら、このような機能を持つ6回膜貫通型脱共役タンパク質であるが、その発現細胞において高い脱共役活性が示されたのは、哺乳動物の発熱担当細胞の褐色脂肪細胞で特異的に発現する脱共役タンパク質UCP1のみであった(非特許文献1、2)。高い脱共役活性が確認されたUCP1以外に哺乳動物では、6回膜貫通型脱共役タンパク質が4種類(UCP2, UCP3, UCP4, UCP5/BMCP1)(非特許文献3、特許文献1-5)存在することが明らかになっており、植物においてもポテト(StUCP)、シロイヌナズナ(AtPUMP, AtPUMP2)、トマト(LePUMP)、イネ(OsUCP1, OsUCP2)、コムギ(WhUCP1a, WhUCP1b)、トウモロコシ(ZmPUMP)(非特許文献4)、ザゼンソウ(SfUCPa)(非特許文献5、特許文献6)などでその存在が明らかになっている。興味深いことに、ザゼンソウでは6回膜貫通型脱共役タンパク質をコードするSfUCPa遺伝子以外に、発熱器官である肉穂花序で主に発現し、膜貫通ドメインの5番を特異的に欠失した5回膜貫通型脱共役タンパク質(図1)をコードするSfUCPb遺伝子が単離されている(非特許文献5、特許文献6)。このような5回膜貫通型脱共役タンパク質はザゼンソウ以外では報告されておらず、SfUCPbは植物における特異的な発熱関与分子と考えられている。
既知の6回膜貫通型脱共役タンパク質における活性の解析は、脱共役タンパク質の発現細胞、脱共役タンパク質を挿入したプロテオリポソームを用いて行われている。特に、脱共役タンパク質の中で解析が進んでおり、哺乳動物の褐色脂肪細胞で高い脱共役活性を示したUCP1に関しては、その単離ミトコンドリアにおいて遊離脂肪酸による脱共役活性の誘導、プリヌクレオチドによる活性抑制が報告されている(非特許文献6)。また、UCP1の酵母発現系による解析では、褐色脂肪細胞の場合と同様にその単離ミトコンドリアで遊離脂肪酸やプリンヌクレオチドによる脱共役活性の制御が確認されている(非特許文献7)。一方、UCP1以外の哺乳動物の6回膜貫通型脱共役タンパク質に関しては、UCP2では酵母発現系からの単離ミトコンドリアおよびプロテオリポソームにおいて、またUCP3でもプロテオリポソームにおいて脂肪酸依存的なプロトン輸送が明らかになっている(非特許文献8)。さらに、植物においても、ポテトのStUCPで塊茎や酵母発現系からの単離ミトコンドリアおよびプロテオリポソームにおいて、さらにシロイヌナズナのAtPUMPでもプロテオリポソームにおいて脂肪酸依存的なプロトン輸送が確認されている(非特許文献8)。これらの解析結果は、6回膜貫通型脱共役タンパク質によるミトコンドリアにおける脱共役活性には、脂肪酸が必要であることを示している。
このような6回膜貫通型脱共役タンパク質における脱共役活性の脂肪酸への依存性は、UCP1が特異的に発現する褐色脂肪細胞のように呼吸基質の脂肪の分解産物である脂肪酸が豊富な細胞のミトコンドリアでは、脱共役タンパク質による高い脱共役活性が誘導されることは明らかである。しかしながら、脂肪細胞以外の多くの動植物細胞および微生物は炭水化物が呼吸基質となるために、脂肪酸が僅かしか存在しないことが予想され、そのような細胞のミトコンドリアでは、脱共役タンパク質による高い脱共役活性が誘導されないことが考えられる。実際に、炭水化物が呼吸基質の出芽酵母では、UCP1を発現させても細胞レベルでのミトコンドリア膜電位の低下は確認されず、単離ミトコンドリアに脂肪酸を添加することでその膜電位の低下が観察された(非特許文献7)。そのため、脱共役タンパク質の脂肪酸への依存性の低下が、多くの細胞のミトコンドリアで高い脱共役活性を誘導するために必要であると考えられる。
脂肪酸が脱共役活性に必要であることが予想される6回膜貫通型脱共役タンパク質SfUCPaが発現したザゼンソウでは、興味深いことに、膜貫通ドメイン5番が特異的に欠失した5回膜貫通型脱共役タンパク質SfUCPb(図1)が、呼吸基質が炭水化物である発熱器官の肉穂花序で顕著に発現していることが確認されている(非特許文献5、9、特許文献6)。そのため、5回膜貫通型脱共役タンパク質SfUCPbが、肉穂花序のミトコンドリアで脱共役活性を誘導する場合には、脂肪酸が少ない条件下で機能していると考えられる。
特表2001-526538号公報
特表2002-502240号公報
特表2002-526075号公報
特表2002-533062号公報
特表2002-543770号公報
特開2000-354489号公報
Rousset et al. Diabetes 53: S130-S135, 2004
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前記のとおり、炭水化物を呼吸基質とする多くの動植物および微生物において、その呼吸活性の増大による発熱や活性酸素産生の抑制等を促進させるためには、それらのミトコンドリア内における脱共役タンパク質の脂肪酸依存性を抑制することが必要である。
従って、この出願の発明は、脱共役タンパク質の脂肪酸依存性を抑制することによりミトコンドリアの機能を改変するための手段を提供することを課題としている。
この出願は、前記の課題を解決するものとして、以下の(1)〜(5)の発明を提供する。
(1) 微生物、動植物個体または動植物細胞のミトコンドリアの機能を改変する方法であって、外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現させることを特徴とする方法。
(2) 外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質が、ザゼンソウ由来脱共役タンパク質SfUCPbである前記発明(1)の方法。
(3) 外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質が、6回膜貫通型脱共役タンパク質の膜貫通ドメイン2〜6番のいずれか1つを人為的に欠失させた5回膜貫通型脱共役タンパク質である前記発明(1)の方法。
(4) 5回膜貫通型脱共役タンパク質をコードするポリヌクレオチドを保有し、5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現する発現ベクター。
(5) 前記発明(1)から(3)のいずれかの方法によってミトコンドリアの機能を改変した微生物、動植物個体または動植物細胞。
(1) 微生物、動植物個体または動植物細胞のミトコンドリアの機能を改変する方法であって、外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現させることを特徴とする方法。
(2) 外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質が、ザゼンソウ由来脱共役タンパク質SfUCPbである前記発明(1)の方法。
(3) 外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質が、6回膜貫通型脱共役タンパク質の膜貫通ドメイン2〜6番のいずれか1つを人為的に欠失させた5回膜貫通型脱共役タンパク質である前記発明(1)の方法。
(4) 5回膜貫通型脱共役タンパク質をコードするポリヌクレオチドを保有し、5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現する発現ベクター。
(5) 前記発明(1)から(3)のいずれかの方法によってミトコンドリアの機能を改変した微生物、動植物個体または動植物細胞。
なお、前記発明において、外来性の5回膜貫通型脱共役タンパク質の発現対象である「動植物個体」とは、ミトコンドリアが6回膜貫通型の脱共役タンパク質を発現する動物個体、またはミトコンドリアが内在性の5回貫通型脱共役タンパク質を発現するザゼンソウ以外の植物個体である。さらに「微生物および動植物細胞」とは、例えば脂肪酸が豊富な哺乳動物褐色脂肪細胞以外の、脂肪酸に乏しく炭水化物を呼吸基質とするような動植物細胞および微生物である。
またさらに「ミトコンドリアの機能を改変」するとは、呼吸活性の増大による発熱や活性酸素産生の抑制を促進するなどのミトコンドリア機能が亢進することを意味する。
さらにまた、「ミトコンドリア機能を改変した微生物および動植物細胞」とは、前記のとおりのミトコンドリア機能の改変によって、呼吸活性の増大により発熱が促進または誘導された細胞や活性酸素の産生が抑制された細胞など呼吸活性の増大もしくは安定化したミトコンドリアを有する細胞を意味する。「ミトコンドリア機能を改変した動植物個体」とは、ミトコンドリア機能が改変された細胞を有する動植物個体であり、植物個体の場合にはザゼンソウ以外の植物個体である。
また、この発明において、「タンパク質」とは、アミド結合(ペプチド結合)によって互いに結合した複数個のアミノ酸残基から構成された分子を意味する。
「ポリヌクレオチド」とは、プリンまたはピリミジン糖にβ−N−グリコシド結合したヌクレオチドのリン酸エステル(ATP, GTP, CTP, UTP;またはdATP, dGTP, dCTP, dTTP)が100個以上結合した分子を言う。
また、この発明において使用するその他の用語や概念については、発明の実施形態や実施例の記載において説明する。なお、この発明を実施するために使用する様々な遺伝子操作技術や分子生物学的技術等は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献(例えば、Sambrook and Maniatis, In Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Cold Sping Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等)の記載やこれらの文献に引用された文献等の記載に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。
この出願の発明によれば、炭水化物を呼吸基質とする微生物および動植物細胞のミトコンドリアにおいてより効率よく脱共役活性を誘導することが可能となる。これによって、発熱や活性酸素産生の抑制といったミトコンドリアの機能を改変した微生物、動植物個体または動植物細胞が提供される。
発明(1)は、外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現させることによって、微生物、動植物個体または動植物細胞のミトコンドリア機能を改変させる方法である。
5回膜貫通型脱共役タンパク質は特許文献6の配列番号4に示されているSfUCPb、あるいは従来動植物に存在する6回膜貫通型脱共役タンパク質を5回膜貫通型に改変したものを使用することができる。
6回膜貫通型脱共役タンパク質を5回膜貫通型に改変するためには、6回膜貫通型脱共役タンパク質の6つある膜貫通ドメインのうち、ドメイン2〜6番のいずれか一つを欠失させるが、SfUCPbと同様にドメイン5番の欠失が好ましい。すなわち、図1に示したように、6回膜貫通型脱共役タンパク質は、そのN末端とC末端が膜に対して同一方向(内外膜間スペース)に位置するが、ドメイン2〜6番のいずれか一つが欠失した5回膜貫通型脱共役タンパク質ではC末端が膜の反対側(マトリックス側)に位置するようになる。
この発明の具体的な方法は、例えば、前記のSfUCPbをコードするポリヌクレオチド(特許文献6の配列番号3)を微生物、動植物個体または動植物細胞に導入し、発現させる。また、従来動植物に存在する6回膜貫通型脱共役タンパク質の5回膜貫通型への改変の際には、例えば図2に例示した哺乳動物UCP1のドメイン5番を欠失させる場合には、微生物、動植物に導入するベクターにクローニングされたポリヌクレオチドに対して、PCRにより膜貫通ドメイン5番が特異的に欠失するように部位特異的変異を行い、膜貫通ドメイン5番が欠失することによって5回膜貫通型となった脱共役タンパク質をコードするポリヌクレオチドを構築する。なお、6回膜貫通型脱共役タンパク質としては、哺乳動物のUCP1(非特許文献1、2)、UCP2、UCP3、UCP4、UCP5/BMCP1(非特許文献3、特許文献1-5)、ポテト(StUCP)、シロイヌナズナ(AtPUMP、AtPUMP2)、トマト(LePUMP)、イネ(OsUCP1、OsUCP2)、コムギ(WhUCP1a、WhUCP1b)、トウモロコシ(ZmPUMP)(非特許文献4)、ザゼンソウ(SfUCPa)(非特許文献5、特許文献6)などを、改変対象とする微生物および動植物種に応じて適宜に使用することができる。すなわち、それぞれの文献に開示された配列情報に基づいて作成したオリゴヌクレオチドを用いたプローブハイブリダイゼーション法やPCR法によって目的とする脱共役タンパク質cDNAを単離することができる。またこれらの6回膜貫通型脱共役タンパク質の膜貫通ドメインコード領域も公知であるので、取得した6回膜貫通型脱共役タンパク質cDNAに対して、その膜貫通ドメイン2〜6番コード領域のいずれか一つに欠失変異を導入することにより、5回貫通型脱共役タンパク質をコードするポリヌクレオチドを取得することができる。
微生物および動植物細胞にポリヌクレオチドを導入する場合には、微生物および動植物種に応じたプロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターにポリヌクレオチドを挿入して組換えベクターを作成し、このベクターを電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法など公知の方法を用いて細胞に導入すればよい。
また、動物個体にポリヌクレオチドを導入する場合には、例えば、前記の発現ベクターを、生体認識分子を提示した中空ナノ粒子、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等に組み込み、動物個体内に導入する方法を採用することもできる。また、非ヒト動物個体の場合には、公知のトランスジェニック動物作成法(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 7380-7384, 1980)に従って、動物個体の全ての体細胞において5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現させるようにしてもよい。
さらに、植物個体にポリヌクレオチドを導入する場合には、植物の種類等に応じて、公知の方法を適宜に採用して行うことができる。すなわち、リーフディスク共存培養法(EMBO J. 6:2531, 1987)、エレクトロポレーション法(Nature 338: 274, 1989; Plant Tissue Culture Letters 11: 199, 1994; Plant Cell Rep. 10: 106, 1991)、アグロバクテリウム法(Plant J. 6: 271, 1994; Plant Mol. Biol. 26: 1115, 1994; Bio/Technology 6: 915, 1988)、パーティクルガン法(Plant Cell Rep. 15: 586, 1995; Theor. Appl. Genet. 79: 337, 1990)等である。
以上の方法によって、5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現する微生物、動植物個体または動植物細胞(発明(5))が得られる。
以下、実施例を示してこの出願の発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
ザゼンソウの5回膜貫通型脱共役タンパク質SfUCPbまたはラットの6回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1を改変した5回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1Δ5を、出芽酵母または動物細胞(HeLa)で発現させた。
5回膜貫通型脱共役タンパク質を出芽酵母および動物細胞(HeLa)で発現させる際には、以下の方法が用いられた。
(1) 出芽酵母で5回膜貫通型脱共役タンパク質SfUCPbを発現させる際には、pESC-URAベクターにSfUCPbをコードするポリヌクレオチドをクローニングすることによりSfUCPb発現ベクターを構築し、そのベクターを酢酸リチウム法により出芽酵母に導入した。
(2) 動物細胞(HeLa)で脱共役タンパク質を発現させる際には、pC3.1(+)ベクターに脱共役タンパク質をコードするポリヌクレオチドをクローニングすることにより脱共役タンパク質発現ベクターは構築し、そのベクターをLipofectamine 2000を用いたリポフェクション法によりHeLa細胞に導入した。
(3) 6回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1を5回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1Δ5に改変する際には、出芽酵母および動物細胞に用いたベクターにUCP1をクローニングすることによりUCP1発現ベクターを構築した後、そのベクター中のUCP1ポリヌクレオチドの膜貫通ドメイン5番をコードする領域を欠失するようにプライマーを作製し、そのプライマーを用いたUCP1発現ベクターのPCRを行った。その後、PCR産物をセルフライゲーションすることにより、6回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1ポリヌクレオチドに部位特異的変異が生じた5回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1Δ5ポリヌクレオチドがクローニングされた発現ベクターが構築された。
(1) 出芽酵母で5回膜貫通型脱共役タンパク質SfUCPbを発現させる際には、pESC-URAベクターにSfUCPbをコードするポリヌクレオチドをクローニングすることによりSfUCPb発現ベクターを構築し、そのベクターを酢酸リチウム法により出芽酵母に導入した。
(2) 動物細胞(HeLa)で脱共役タンパク質を発現させる際には、pC3.1(+)ベクターに脱共役タンパク質をコードするポリヌクレオチドをクローニングすることにより脱共役タンパク質発現ベクターは構築し、そのベクターをLipofectamine 2000を用いたリポフェクション法によりHeLa細胞に導入した。
(3) 6回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1を5回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1Δ5に改変する際には、出芽酵母および動物細胞に用いたベクターにUCP1をクローニングすることによりUCP1発現ベクターを構築した後、そのベクター中のUCP1ポリヌクレオチドの膜貫通ドメイン5番をコードする領域を欠失するようにプライマーを作製し、そのプライマーを用いたUCP1発現ベクターのPCRを行った。その後、PCR産物をセルフライゲーションすることにより、6回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1ポリヌクレオチドに部位特異的変異が生じた5回膜貫通型脱共役タンパク質UCP1Δ5ポリヌクレオチドがクローニングされた発現ベクターが構築された。
出芽酵母において発現した5回膜貫通型脱共役タンパク質(SfUCPb、 UCP1Δ5)は酵母のミトコンドリアに局在し(図3)、酵母細胞の増殖の抑制(図4)、ATP含有量の減少(図5)、ミトコンドリア膜電位の低下(図6)を誘導した。ここで特に注目すべき点は酵母細胞のATP含有量およびミトコンドリア膜電位の影響である。5回膜貫通型脱共役タンパク質は、その発現が6回膜貫通型脱共役タンパク質(SfUCPa、UCP1)よりも有意に低い(図7)にもかかわらず、6回膜貫通型脱共役タンパク質よりも明らかに酵母細胞のATP含有量の減少(図5)およびミトコンドリア膜電位の低下(図6)を誘導していた。これらの結果は、酵母細胞のミトコンドリアに局在した5回膜貫通型脱共役タンパク質の発現が、そのミトコンドリアにおいてATP合成とは共役せずにプロトン勾配を解消し、その膜電位を低下することを示唆している。さらに、5回膜貫通型脱共役タンパク質の脱共役活性は、6回膜貫通型脱共役タンパク質よりも顕著に高いことを示している。
次いで、動物細胞(HeLa)において発現した5回膜貫通型脱共役タンパク質(UCP1Δ5)はミトコンドリアに局在し(図8)、ミトコンドリア膜電位の低下(図9)を誘導した。この動物細胞におけるミトコンドリア膜電位の低下は、6回膜貫通型脱共役タンパク質(UCP1)よりも5回膜貫通型脱共役タンパク質で著しいことが明らかとなった。これらの結果は、酵母細胞と同様に、動物細胞(HeLa)において5回膜貫通型脱共役タンパク質の脱共役活性が、6回膜貫通型脱共役タンパク質よりも顕著に高いことを示している。
出芽酵母および動物細胞(HeLa)は、呼吸基質として炭水化物を利用している。この条件下では細胞内の遊離脂肪酸は脂肪を呼吸基質とする細胞に比べて、極めて少ない。このような出芽酵母および動物細胞において、以上の結果のとおり、6回膜貫通型よりも5回膜貫通型脱共役タンパク質において高い脱共役活性が明らかになった。そのため、膜貫通ドメイン5番を特異的に欠失させた5回膜貫通型脱共役タンパク質が、炭水化物を呼吸基質とする細胞のミトコンドリアでより高い脱共役活性を誘導するために重要な手段であることが確認された。
この出願の発明は、例えば農業分野における有用な家畜、野菜等の作出、医科学分野におけるモデル動物の作出、あるいは微生物および動植物細胞を用いた有用物質の製造等の産業分野に利用可能である。
Claims (5)
- 微生物、動植物個体または動植物細胞のミトコンドリアの機能を改変する方法であって、外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現させることを特徴とする方法。
- 外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質が、ザゼンソウ由来脱共役タンパク質SfUCPbである請求項1の方法。
- 外来性5回膜貫通型脱共役タンパク質が、6回膜貫通型脱共役タンパク質の膜貫通ドメイン2〜6番のいずれか1つを人為的に欠失させた5回膜貫通型脱共役タンパク質である請求項1の方法。
- 5回膜貫通型脱共役タンパク質をコードするポリヌクレオチドを保有し、5回膜貫通型脱共役タンパク質を発現する発現ベクター。
- 請求項1から3のいずれかの方法によってミトコンドリアの機能を改変した微生物、動植物個体または動植物細胞。
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