JP2006238612A - 電動機の分割型固定子およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】 分割型固定子の分割嵌合部に形成される不可避的な空隙に、嵌合面をつなぐ様
に磁性粉末を配列し、樹脂で固化することで、透磁率を十分に高め、鉄損および励磁電流
を低減する。
【解決手段】 電動機の巻き線を内蔵した固定子の内部に形成される磁路を切断するよう
に分断された分割型固定子パーツの嵌合部に形成される空隙に磁性紛末と樹脂を充填し固
化した分割型固定子において、前記嵌合面において前記磁性粉末が前記電動機の稼動時に
生じる磁束方向と平行方向に配列したことを特徴とする電動機の分割型固定子。
【選択図】 図２
_

Description

本発明は電動機の高効率化技術に係り、特に稼動時に内部に形成される磁路を切断する
ように分割されたパーツを組み立て製造される電動機の分割型固定子の鉄損低減および励
磁電流低減技術に関する。

近年、省エネルギーの観点から各種電気機器の効率向上が求められている。電機機器の
効率は各種要因に影響されるが、電動機の鉄芯で発生する損失である鉄損は比較的大きな
比重を占めており、従って最近ではより鉄損の少ない電磁鋼板が使用される場合が増加し
ている。

このような電磁鋼板を用いて、固定子の形状に一体で打抜き、積層し製造される電動機
用固定子では、電磁鋼鈑から製造される製品の歩留まりが悪いため、歩留まりが高くなる
ように固定子の部分毎の形状で打抜き、積層したパーツを所定の形状になるよう組み立て
る分割型固定子がある。
しかし分割型固定子では、電動機の稼動時において、図９に示すように、固定子２１の
内部に形成される磁路２０を切断するように各パーツの嵌合部１９が形成され、この嵌合
部１９には不可避的な透磁率の低い空隙（隙間ともいう）が形成されてしまい、磁路全体
の透磁率を低下させ、電動機としての効率を低下させてしまう。

このような分割型固定子の空隙による悪影響を減らす技術として、特許文献１がある。
この技術は、固定子に形成された空隙に磁性粉末を混入した樹脂を充填し固化することで
空隙の透磁率を向上し、電動機鉄心の鉄損や励磁電流を低減する技術である。
特開平１０−４６４１号公報

しかし、磁性粉末を樹脂に混入すると、樹脂の存在のため空隙に充填される磁性粉末の
充填率が低くなることや、磁性粉末間に樹脂が介在することにより空隙に形成される磁気
回路は磁気抵抗の観点から磁性粉末と樹脂の直列回路となり、十分な透磁率が得られず、
電動機の特性は改善されない。
本発明は、分割型固定子の分割嵌合部に形成される不可避的な空隙の透磁率を十分に高
めることで、鉄損および励磁電流が低い電動機用固定子を提供することを目的とする。

上記課題を解決するため、本発明の要旨は次の通りである。
（１）電動機の巻き線を内蔵した固定子の内部に形成される磁路を切断するように分断さ
れた分割型固定子パーツの嵌合部に形成される空隙に磁性紛末と樹脂を充填し固化した分
割型固定子において、前記嵌合面において前記磁性粉末が前記電動機の稼動時に生じる磁
束方向と平行方向に配列したことを特徴とする電動機の分割型固定子。
（２）前記空隙における前記磁性粉末の体積充填率が５〜５０ｖｏｌ％であることを特徴
とする前記（１）記載の電動機の分割型固定子。
（３）前記（１）又は２記載の分割型固定子を製造する方法において、前記磁性粉末と樹
脂を充填し固化する際に、電動機の巻き線に直流電流を流しながら固化することを特徴と
する電動機の分割型固定子の製造方法。
（４）前記直流電流を回転子の永久磁石を着磁する際の電流とすることを特徴とする前記
（３）記載の電動機の分割型固定子の製造方法。

本発明により、特許文献１で示される、固定子に形成された空隙に磁性粉末を混入した
樹脂を充填し固化した電動機用固定子に比べ、鉄損が１５％、励磁電流が１０％以上低減
するという効果が得られる。

本発明者らは、まず図１に示す模式図の様に、固定子の分割により、分割型固定子パー
ツ１ａおよび１ｂの嵌合部に形成される不可避的な空隙３によって生じる鉄損の増加と励
磁電流の増加を抑制するため、空隙３に透磁率が空気に比べ十分高い磁性粉末４を充填し
、これを硬化型樹脂等で固定しないで、移動自在とした。

次に、図２に示す模式図の様に、電動機の巻き線に直流電流を流し、鉄心内に電動機の
稼動時と同様な磁場を形成し、空隙３内部の磁性粉末４が磁束線５の方向に直列に配置し
た磁性粉末連鎖６を形成させ、この状態で接着性樹脂を空隙３に樹脂を流し込み、磁性粉
末を固化することで、分割型固定子パーツ１ａ、１ｂの嵌合面２ａ、２ｂが空隙３内部に
おいて磁性粉末４により磁気的に連結されることを見出した。

磁束５は、空隙内において磁性粉末連鎖６を選択的に通ることができ、空隙全体の透磁
率は磁性粉末を充填しないときに比べ大幅に上昇する。これにより、電動機の稼動時に形
成される磁束は滑らかに嵌合部を通過することができ、必要な出力を得るための励磁電流
や鉄損の増大を抑制できる。

一方、特許文献１で提示される手法では、磁束線に沿って磁性粉末が配列しておらず、
電動機の稼動時において磁場が印加されても図１に示される状態に保たれる。そのため空
隙内を通る磁束は、磁性粉末だけでなく樹脂部も通過しなければならず、空隙全体におけ
る透磁率はほとんど増加しない。従って、電動機の稼動時に形成される磁束は嵌合部を通
過しにくく、必要な出力を得るための励磁電流が高くなり、また鉄損も増大する。

本発明の効果を高めるため、使用する磁性粉末として、比較的安価に入手できる、鉄、
珪化鉄、窒化鉄、マグネタイト、およびマグヘマタイトが望ましく、上記粉末を絶縁物に
よる皮膜を施したものでもよい。磁性粉末の粒径は特に限定するものではなく、０．０１
μｍ以上空隙の間隔以下のものを使用することが実用上好ましい。

また使用する樹脂は、磁性粉末の配列後に固化するものであればよく、接着性合成樹脂
や熱硬化型樹脂などが好ましい。また、磁性粉末と樹脂を所定の分量で混合し、電動機の
組み立て時に嵌合面にその混合物を塗布し、磁性粉末を再配列させた後に固化してもよい
。
さらに、空隙全体の透磁率を十分に高めるため、磁性粉末の空隙への体積充填率を５ｖ
ｏｌ％以上にすることが望ましい。また、樹脂による固化を容易にするため、磁性粉末の
空隙への体積充填率を５０ｖｏｌ％以下にすることが望ましい。

次に、本発明の分割型固定子の製造方法について説明する。
磁性粉体を再配列させるには、外部磁場によって所定の方向に配列させるのが最も容易
であり、電動機の巻き線に電流を流すことで、目的の磁束分布を得ることができ、特別な
設備を必要とせず好ましい。特に、永久磁石を回転子に有する永久磁石型電動機では、固
定子と回転子を組み固定子の巻き線に電流を流すことで磁石の着磁を行う場合、着磁時に
形成される磁束分布を利用することで、磁性粉末の再配列を行うことが好ましい。

図３に示すように、電磁鋼板を打ち抜き、積層、ワニスによる固化を施したティース部
１４とヨーク部１５からなる分割型固定子パーツ７を作成した。次に図４に示す、巻き線
８を施した固定子パーツ７を、図５に示すように、円状に配置した分割型固定子１０を組
み立てる際に、図１０に示すように、各分割型固定子パーツが分割型固定子の外周で接し
、内周には、５０μｍの空隙が生じるように各分割型固定子パーツの嵌合面を研磨し成形
した。

本発明例として、上記固定子１０を分解し、嵌合部１２に鉄粉のみを２０ｖｏｌ％充填
した固定子１０の巻き線８に隣接する巻き線において反対方向となるよう直流電流を流し
ながら、嵌合部１２に合成樹脂接着剤を浸透させ固化し、分割型固定子を作成した。
なお本発明の実施例において、鉄粉の体積充填率は、組み立て後の嵌合部１２の顕微鏡
観察から空隙の体積を割り出し、さらに充填する鉄粉の重量および比重を測定することで
求めた。

また比較例１として、分割型固定子パーツ７同士の嵌合面１２に形成される空隙に樹脂
接着剤のみを浸透させ固化したものと、比較例２として、巻き線８に電流を流さず、鉄粉
を２０ｖｏｌ％混入した合成樹脂接着剤を嵌合部１２に浸透させ固化した分割型固定子を
作成した。
さらに、図６に示すように、上記分割型固定子１０を上下から固定治具９ではさみ、連
結部１６をボルト（図示しない）で固定し、分割型固定子１０の内側に永久磁石１７を配
置した回転子１８を設置した電動機１１を製作した。

試験は、水準１）回転数１０００［ｒｐｍ］、トルク６０［Ｎｍ］、および、水準２）
５０００［ｒｐｍ］、トルク７［Ｎｍ］の２水準にて鉄損および励磁電流を測定した。
測定結果を、各水準における比較例１の測定値に対する比率で図７に示す。
本発明例ａ（本発明例の水準１）では、比較例ａ（比較例１の水準１）に対し鉄損で３
４％、励磁電流で２０％低減し、比較例ｂ（比較例２の水準１）に対し鉄損で２５％、励
磁電流で１６％低減した。
本発明例ｂ（本発明例の水準２）では、比較例ｃ（比較例１の水準２）に対し鉄損で２
４％、励磁電流で１４％低減し、比較例ｄ（比較例２の水準２）に対し鉄損で２２％、励
磁電流で１２％低減した。

空隙に何も充填しないもの（比較例ａ，ｃ）、および、特許文献１で提示される電動機
（比較例ｂ，ｄ）に対し、本発明により、鉄損で２０％程度もしくはそれ以上、励磁電流
で１０％以上低減させることができた。

さらに本発明による効果は、いかなる形態の分割型固定子にも適用でき、例えば図８に
示すような、ティース部１４とヨーク部１５が分割された分割型固定子において、上記と
同様の測定を実施したところ、空隙に何も充填しないもの、および、特許文献１で提示さ
れる形態の電動機に対し、鉄損で１５％以上、励磁電流で１０％以上低減させることがで
きた。

さらに巻き線の方法は、非特許文献１の８３頁に紹介されているような分布巻きでも、
同文献１の８６頁に紹介されているような集中巻きでも、上記と同等の効果を得た。
イラスト・図解シリーズ「小型モータのすべて」、技術評論社、２００１年４月 ２３日発行、８３，８６頁。（ＩＳＢＮ−７７４１−１１９９−６）

本発明の形態を示す、分割固定子パーツの嵌合部の拡大図（磁場印加なし）。 本発明の形態を示す、分割固定子パーツの嵌合部の拡大図（磁場印加時）。 本発明の実施例の一部を示す、分割型固定子パーツ。 本発明の実施例の一部を示す、巻き線を施した分割型固定子パーツ。 本発明の実施例の分割型固定子。 本発明の実施例の固定子を使用した電動機。 本発明による効果を表す、鉄損および励磁電流の測定結果。 分割型固定子を使用した電動機の例。 分割型固定子および内部に形成される磁路の模式図。 本発明の実施例の一部を示す、分割型固定子パーツの嵌合部拡大図。

符号の説明

１：分割型固定子のパーツ
２：分割型固定子のパーツの嵌合面
３：分割型固定子のパーツの嵌合面に形成される不可避的な空隙
４：磁性粉末
５：磁束線
６：磁性粉末連鎖
７：本発明の実施例の一部である、分割型固定子パーツ
８：本発明の実施例の一部である、分割型固定子に巻く巻き線
９：本発明の実施例の一部である、分割型固定子の固定治具
１０：本発明の実施例である、分割型固定子
１１：本発明の実施例である、分割型固定子を使用した電動機
１２：本発明の実施例の一部である、分割型固定子パーツが形成する嵌合部
１３：本発明の実施例の一部である、分割型固定子パーツの嵌合面
１４：本発明の実施例の一部である、分割型固定子パーツのティース部
１５：本発明の実施例の一部である、分割型固定子パーツのヨーク部
１６：本発明の実施例の一部である、分割型固定子の固定治具の連結部
１７：本発明の実施例の一部である、分割型固定子の内側に配置される回転子に埋め込
まれる永久磁石
１８：本発明の実施例の一部である、分割型固定子の内側に配置される回転子
１９：分割型固定子の分割型固定子パーツが形成する嵌合部
２０：分割型固定子内部に形成される磁路の模式図
２１：分割型固定子
２２：本発明の実施例の一部である、分割型固定子の内部に形成される磁路の模式図
２３：分割型固定子の分割型固定子パーツの内周
２４：分割型固定子の分割型固定子パーツの外周
２５：樹脂

Claims (4)

1. 電動機の巻き線を内蔵した固定子の内部に形成される磁路を切断するように分断された
   分割型固定子パーツの嵌合部に形成される空隙に磁性紛末と樹脂を充填し固化した分割型
   固定子において、前記嵌合面において前記磁性粉末が前記電動機の稼動時に生じる磁束方
   向と平行方向に配列したことを特徴とする電動機の分割型固定子。
2. 前記空隙における前記磁性粉末の体積充填率が５〜５０ｖｏｌ％であることを特徴とす
   る請求項１記載の電動機の分割型固定子。
3. 請求項１又は２記載の分割型固定子を製造する方法において、前記磁性粉末と樹脂を充
   填し固化する際に、電動機の巻き線に直流電流を流しながら固化することを特徴とする電
   動機の分割型固定子の製造方法。
4. 前記直流電流を回転子の永久磁石を着磁する際の電流とすることを特徴とする請求項３
   記載の電動機の分割型固定子の製造方法。
   

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