JP2006219455A - タンパク質の高効率分離または濃縮方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 抗体などの有用タンパク質を高効率で分離または濃縮する手段として、糖脂質をアフィニティーリガンドとし、該糖脂質を使用する水性二層分離法を用いて、有用タンパク質を迅速かつ高効率で分離または濃縮する。
【選択図】なし
Description
(1)アフィニティーリガンドとして、糖脂質を活用することを特徴とするタンパク質の分離または濃縮方法。
(2)糖脂質の水性二層系を用いることを特徴とする、上記(1)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(3)前記糖脂質が下記一般式1で表されるマンノシドリピド系化合物であることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(4)前記マンノシドリピド系化合物が、下記一般式2で表される化合物であることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(5)前記糖脂質が下記一般式3または4で表されるラムノースリピド系化合物であることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(6)前記糖脂質が下記一般式6または7で表されるソフォロースリピド系化合物であることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(7)前記糖脂質が下記一般式8で表されるトレハロースリピド系化合物であることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(8)前記糖脂質が下記一般式11で表されるサクシノイルトレハロースリピド系化合物であることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(9)前記糖脂質が下記一般式12で表されるセロビオースリピド系化合物であることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(10)前記糖脂質が下記一般式14で表されるグルコシドリピド系化合物であることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(11)前記糖脂質が下記一般式15で表されるアルカノイル−N−メチルグルカミドリピド系化合物であることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(12)前記糖脂質が、糖脂質系バイオサーファクタント化合物であることを特徴とする、上記(1)〜(11)のいずれかに記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(13)塩を添加することを特徴とする、上記(1)〜(12)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(14)分離するタンパク質がIgG、IgM、IgA、IgE、またはIgYであることを特徴とする、上記(1)〜(13)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(15)分離するタンパク質がIIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG2a、またはIgG2bであることを特徴とする、上記(1)〜(13)記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
(16)上記(1)〜(15)記載のタンパク質の分離または濃縮方法によって得られたタンパク質を含むことを特徴とする医薬品及び食品。
(17)糖脂質からなる、タンパク質の分離または濃縮用アフィニティーリガンド。
(18) タンパク質の分離または濃縮が、水性二層分離法によるものである上記(17)に記載のリガンド。
(19) 糖脂質が、上記(3)〜(12)のいずれか記載の化合物であることを特徴とする、上記(17)又は(18)に記載のリガンド。
(20)分離または濃縮されるタンパク質が、IgG、IgM、IgA、IgE、またはIgYであることを特徴とする、上記(17)〜(19)のいずれかに記載のリガンド。
(21)分離または濃縮されるタンパク質が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG2a、またはIgG2bであることを特徴とする、上記(17)〜(19)のいずれかに記載のリガンド。
バイオサーファクタントとは、生物由来の両親媒性物質であり、界面活性作用を有するものである。例えば、微生物が産生するバイオサーファクタントとしては、糖脂質系のもの、コリノミコール酸(Corynomycolic acid)等の脂肪酸系のもの、エマルサン(Emulsan)、リポサン(Liposan)等のバイオポリマー系のもの、サーファクチン、ビィスコシン等のリポペプタイド系のもの等、種々のものが知られており、これらは通常の界面活性剤に比べ、1)複数の官能基や光学活性を有する点、2)嵩高い構造や複雑な構造を有する点、3)生理活性(抗微生物、抗腫瘍作用など)を有する点、および4)生分解性や安全性が高い点を有することを特徴とする。本発明は、上記バイオサーファクタントのうち、特に糖脂質系のものを用いる点に特徴を有するものである。
本発明において使用する糖脂質としては、例えば、トレハロースリピド系化合物、サクシノイルトレハロースリピド系化合物、ソフォロースリピド系化合物、セロビオースリピド系化合物、マルトースリピド系化合物、ポリオールリピド系化合物、グルコースリピド系化合物、フルクトースリピド系化合物、グルコシドリピド系化合物、マンノシドリピド系化合物、ラムノースリピド系化合物、シュークロースリピド系化合物、アルカノイル−N−グルカミドリピド系化合物等の各種化合物を挙げることができる。また、本発明において、これらの誘導体も糖脂質として使用することができる。
マンノシドリピド系化合物としては、一般式2で表される化合物が好ましく、一般式2で表される化合物のうち、R25がCH2(OH)−〔CH(OH)〕m2−CH2−基(ただしm2=1〜8、好ましくは2〜6の整数を示す。)であり、R21〜R24が同一もしくは異なっていても良い、炭素数1〜15のアルカノイル基である化合物がより好ましく、一般式16で表されるマンノシルエリスリトール系化合物(以下、MEL−Aとも略す)がさらに好ましい。
ラムノースリピド系化合物の好ましい具体例(RL−1、RL−2、RL−3、RL−4、RL−A、RL−B)を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
ソフォロースリピド系化合物の好ましい具体例(SL−1、SL−2、SL−3、SL−5、SL−6)を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
トレハロースリピド系化合物の好ましい具体例(TL−1、TL−2)を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
サクシノイルトレハロースリピド系化合物の好ましい具体例(STL−1、STL−2、STL−3)を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
セロビオースリピド系化合物の好ましい具体例(CL−A、CL−B、CL−C)を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
グルコシドリピド系化合物として、アルキルグルコシド系の化合物(一般式14において、R148がアルキル基のもの。)が好ましい。グルコシドリピド系化合物の好ましい具体例(GL−1)を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
アルカノイル−N−メチルグルカミドリピド系化合物としては、上記一般式15において、R151が炭素数12の飽和または不飽和で、直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基である場合が好ましい。
本発明においては、抗体などの有用タンパク質の低分子アフィニティーリガンドとして糖脂質を用い、またこれらを水中に懸濁して得られる水性二層分離法を利用して、簡便かつ高効率でタンパク質を分離または濃縮する。
本発明において、塩やアルコールを添加せずに、糖脂質単成分で水中に形成する水性二層系を用いて有用タンパク質を分離する。通常、水性二層分離法においては、塩やアルコールなどの第三成分の添加が必要であるが、本研究では糖脂質単独で形成するため、塩やアルコールなどの第三成分によるタンパク質の変性・失活がないという利点を有する。 また、操作工程も減らすことができ、工業レベルでの実用化も容易になる。また、既往の水性二層分離手法では、タンパク質とのアフィニティーが低いため分離効率が低かったが、本発明では、水性二層系を構築する糖脂質自身がタンパク質と高いアフィニティーを有しているため、著しく高い分離または濃縮効率を示すことになる。
本発明において、水性二層系の形成法として、例えば、糖脂質等の両性界面活性剤を水中に添加し、攪拌するだけでコアセルベートを形成する方法が挙げられるが、本発明においてはこれに限定されることはない。
水性二層を形成するための糖脂質の濃度は特に制限されないが、好ましくは1乃至50mMである。
本発明に用いられるリン脂質としては、フォスファチジルコリン、ホスファチジルセリン等の公知の中性リン脂質が挙げられ、具体的には、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリン等が挙げられる。本発明に用いられる、コアセルベートを構成する糖脂質とは別の糖脂質としては、前記糖脂質系バイオサーファクタント等が挙げられる。
[実施例1]
MEL−Aの濃度が30mMのときの水溶液を目視観察した結果を図1に示す。この図から明らかなように、透明な粘性のない二層に分離することがわかり、それぞれの水分量を測定したところ、上層が99.9wt%水であるのに対して、下層も80.4wt%が水である水相二層系が得られることが分かった。このうち下層のMEL−Aリッチな層は、一般にコアセルベートと呼ばれるものである。
上記実施例1の工程により得られたMEL−Aコアセルベート0.5mMを100nmのポアサイズのポリカーボネート膜を装着したエクストルーダー(Lipex Biomembranes Inc. 社製)にて整粒した。さらに、これを、ビアコア社製の表面プラズモン共鳴装置(SPR)を用いて、また同じくビアコア社製の金基板をチオールアルカン基により疎水化したセンサーチップ上に固定化したところ、極めて配向性に優れるMEL−A膜が得られることが分かった。次に、得られたMEL−A固定化膜と各種タンパク質との相互作用をビアコア社製の表面プラズモン共鳴装置(SPR)を用いて検討した。シグマ社製のヒト抗体であるイムノグロブリンG(IgG)とヒト血清アルブミン(HSA)の350nMの水溶液を75μlインジェクションした際のセンサーグラムを図2に示した。なお、PH7.4のランニング緩衝液として、HEPES 10mMに150mM のNaClを添加したものを使用し、ここで1000RUは1ngに相当する。図2より明らかなように、HSAはMEL−A固定化基板と全く結合しないのに対して、IgGはMEL−A固定化基板と相互作用して結合することがわかった。また、タンパク質溶液を流し終わり、ランニング緩衝液に切り替わった後でも、IgGは解離せずにMEL−A固定化基板に結合していることも分かった。
実施例2から、抗体とMEL-Aの結合は、Fc領域を介在しないことが示唆されたため、結合部位を表面プラズモン共鳴装置(SPR)によって決定した。結合部位の決定には、IgGの各種フラグメントである、ICN Pharmaceuticals Inc. 社製のF(ab’)2、Fab、Fcを用いた。図5には、平衡状態における各種フラグメントのMEL-Aに対する結合量を示した。図より明らかなように、MEL-AにFcフラグメントはほとんど結合せずに、F(ab’)2フラグメントが結合することが分かった。このことから、MEL-Aと抗体はF(ab’)2部位を介在して結合することが確認された。
実施例1で得られた30mM水性二層系1mLにIgG、IgM、IgA、IgY等の20nMの各種タンパク質を1mL混合して、1時間常温にてインキュベートした。上層の各種タンパク質濃度をビシコニン酸法を用いて定量することによって、下層へのタンパク質の分離または濃縮効率を検討した。その結果を図6に示す。図より明らかなように、HASはほとんど下層に存在しないのに対して、添加したタンパク質のほとんどは下層に移行し、その総量のうち75乃至91%を分離または濃縮させることが可能であった。なお、Promega社製のプラスミドDNApGL3(商品名)を用いた場合も、40%程度の効率が得られた。また、MEL−Aの代わりに、ラムノースリピド系化合物としてRL−4、ソフォロースリピド系化合物としてSL−5、トレハロースリピド系化合物としてTL−1(m20=14、n20=16のもの)、セロビオースリピド系化合物としてCL−C(R221がOHで、X=4のもの)、グルコシドリピド系化合物としてドデシル−β−D−グルコシド(GL−1)、マンノシド系リピド化合物としてドデシル−β−D−マンノシド(ML−1)、または、アルカノイル−N−メチルグルカミドリピド系化合物としてドデシル−N−メチルグルカミドを用いて、それぞれ実施例と同様の操作を行ったところ、実施例と同様、水相二層系を調製できた。なお、これらの糖脂質は、北本大、“オレオサイエンス”、1(1)、17−31(2001)記載の方法によって微生物培養液より調製した。また、実施例と同様に、各種のタンパク質を分離または濃縮することが可能であった。
Claims (21)
- アフィニティーリガンドとして、糖脂質を使用することを特徴とするタンパク質の分離または濃縮方法。
- 糖脂質の水性二層系を用いることを特徴とする、請求項1記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記糖脂質が下記一般式1で表されるマンノシドリピド系化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記マンノシドリピド系化合物が、下記一般式2で表される化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記糖脂質が下記一般式3または4で表されるラムノースリピド系化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記糖脂質が下記一般式6または7で表されるソフォロースリピド系化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記糖脂質が下記一般式8で表されるトレハロースリピド系化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記糖脂質が下記一般式11で表されるサクシノイルトレハロースリピド系化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記糖脂質が下記一般式12で表されるセロビオースリピド系化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記糖脂質が下記一般式14で表されるグルコシドリピド系化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記糖脂質が下記一般式15で表されるアルカノイル−N−メチルグルカミドリピド系化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 前記糖脂質が、糖脂質系バイオサーファクタント化合物であることを特徴とする、請求項1〜11記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 塩を添加することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 分離または濃縮されるタンパク質が、IgG、IgM、IgA、IgE、またはIgY、であることを特徴とする、請求項1〜13記載のタンパク質の分離または濃縮方法。
- 分離または濃縮されるタンパク質が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG2a、またはIgG2b
であることを特徴とする、請求項1〜13に記載のタンパク質の分離または濃縮方法。 - 請求項1〜15記載のタンパク質の分離または濃縮方法によって得られたタンパク質を含むことを特徴とする医薬品又は食品。
- 糖脂質からなる、タンパク質の分離または濃縮用アフィニティーリガンド。
- タンパク質の分離または濃縮が、水性二層分離法によるものである請求項17に記載のリガンド。
- 糖脂質が、請求項3〜12のいずれか記載の化合物であることを特徴とする、請求項17又は18に記載のリガンド。
- 分離または濃縮されるタンパク質が、IgG、IgM、IgA、IgE、またはIgYであることを特徴とする、請求項17〜19のいずれかに記載のリガンド。
- 分離または濃縮されるタンパク質が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG2a、またはIgG2bであることを特徴とする、請求項17〜19のいずれかに記載のリガンド。
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