JP2006210254A - 磁場レンズ - Google Patents

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Abstract

【課題】電子ビーム装置、特に大電流で小直径なビームが必要とされるプローブフォーミングシステム(スポットビーム型電子線露光装置、分析用電子顕微鏡など)の電子銃に使用する磁場レンズに関し、超高真空雰囲気に適合し、かつワブリング動作が可能な磁場レンズを提供する。
【解決手段】中心軸Cの方向に着磁しその中心軸Cに対し軸対称な、超高真空雰囲気に露出した永久磁石11と、その永久磁石11を中心軸Cの方向両側から挟む、中心軸Cに対し軸対称な軟磁性材の一対の磁極13,14と、永久磁石11の外周側に中心軸Cと同心に巻回された、超高真空雰囲気に露出したコイル12とを備えた。
【選択図】 図3

Description

本発明は、電子ビーム装置、特に大電流で小直径なビームが必要とされるプローブフォーミングシステム(スポットビーム型電子線露光装置、分析用電子顕微鏡など)の電子銃に使用する磁場レンズに関する。
現在では上記のような装置の電子銃には、動作が安定でかなりの高平均輝度が得られるZrO/W拡張ショットキーエミッタが広く用いられている。さらにより一層の大電流と小直径の両立を狙って、電子銃の電子レンズに磁場レンズを用い、その磁場を陰極近傍から加速領域にかけて加える、磁界重畳型のZrO/W拡張ショットキー放出電子銃が提案/実用化されている(例えば、特許文献1〜9、非特許文献1〜3参照)。
また、市販されているZrO/W拡張ショットキーエミッタとして、サプレサ電極とそこから0.2mmほど突き出した陰極先端、および反対側に突き出した二本のフィラメントステムを有するものが知られている。その構造と動作条件は、例えば非特許文献4,5に詳述されている。それらによれば、このエミッタから安定した電子放出が得られるのは、熱放出電子が主だが無視できない量の電界放出電子も混在する拡張ショットキー放出領域であり、その通称であるTFE(Thermal Field Emitter)とは一致していないため、ここでは拡張ショットキーエミッタと記述している。
平均輝度の低下を防ぐなど性能の向上には、これらのような電子銃の中でも陰極先端付近に強い磁場をかけることが有効だが、充分強い電磁レンズを陰極電位や引出電極電位といった負の高電位に配置することは、コイルの発熱による真空度の悪化や電源の複雑化を引き起こす。そのため、ZrO/W拡張ショットキーエミッタを使った磁界重畳型の電子銃においても、電磁石の代わりに永久磁石を使用した磁場レンズを負の高電位に配置した電子銃が提案され(例えば、特許文献10〜12参照)、また我々も実験でその有効性を確かめることができた。
しかしながらこの場合には、永久磁石で磁場を発生させているためにその磁場強度が固定されてしまい、電磁石で磁場を発生させる場合に通常行われているワブリング動作ができず、レンズ磁場の中心軸を見つけてそこに電子ビームを通すという、寄生収差を低減する方法をとることができない。ただしこのこと自体は、永久磁石とコイルとを併設した磁場レンズとすることで解決することができる。
ここで、ワブリング動作とは、コイルに流す電流を周期的にわずかに変化させることで磁場レンズの強度を同様に周期的に変化させることをいい、このときレンズ磁場の軸外をビーム軸とする近軸軌道は、その焦点がぼけるだけでなくレンズ磁場の軸線との相対的な距離が周期的に変化するという特徴的な振る舞いを示すため、レンズ磁場の軸とビーム軸とのズレを認識することが可能となる。
永久磁石とコイルを併設した磁場レンズは、例えば、特許文献13,14にて公知である。しかしながらこれらの特許文献13,14では、コイルは永久磁石の内周側に配置されており、新たに次のような課題が生じる。
a.コイルを配置する分だけ永久磁石の内径が大きくならざるを得ず、磁場を集中させたい中心軸から永久磁石が遠ざかってしまうために、同じ体積で内径が小さい永久磁石を用いた場合よりも中心軸近傍の磁場が弱くなってしまう。
b.配線を外部へ通すために、あるいはコイルを固定するために、中心軸に近いところで磁極に非軸対称な加工を施さなければならず、非軸対称な寄生収差発生の一因となり得る。その影響を小さくするために、中心軸から離れたところで加工を施そうとするならば、それにつれて永久磁石はますます中心軸から遠ざかってしまう。
これらの課題を部分的にだが解決する、コイルは永久磁石の外周側に位置しかつコイルと永久磁石とを磁極などで囲った閉空間の中に配置しかつそれらからなる磁極ユニットを超高真空中に配置する技術が、特許文献15に開示されている。
特表2002−538596号公報 特開2001−312986号公報 特開2000−3689号公報 特開平10−188868号公報 特開平9−7538号公報 特開平6−139976号公報 特許第3325982号公報 特許第2835265号公報 特許第2775071号公報 特開平11−97332号公報 特開2000−3689号公報 特開2001−283757号公報 特許第1926141号公報 特開昭59−14242号公報 特開2000−90866号公報 "ウェハ検査用高速大電流SEM光学系"LSIテスティングシンポジウム/2000会議録151−156 "多目的高分解能TFE SEMによる分析"日本電子技術資料 "A new design of field emission electron gun with a magnetic lens" Optik 81(1989) 103−108) "A Review of the ZrO/W SchottkyCathode" Handbook of Charged ParticleOptics, CRC Press (1997) 77−102 "熱電界放射電子源"電子・イオンビームハンドブック第3版,日刊工業新聞社(1998)127−133
しかしながらここでも新たな課題が発生している。上掲の特許文献15では、閉空間の「気密封止部の封止が高精度であれば、通常の永久磁石でガス放出のあるものも使用できる」としており、暗に気密封止部の封止は必ずしも高精度なものでなくても良く、永久磁石やコイルに「ガス放出を防止する」表面処理がなされていれば足りる、としている。しかし実際にはこれは非現実的であり、閉空間の中に配置するのであれば「気密封止部の封止が高精度」でなければならないことを以下に示す。
先ず、永久磁石とコイルとを配置した閉空間は独立した真空ポンプで排気されているわけではないという事実がある。従って「気密封止部の封止が高精度」であれば内部が大気圧に近いままで周囲の超高真空と両立するのであり、この場合の高精度な封止とは、現実的なイオンポンプの排気速度から見積もればリークレイトにして10-9Pa・m3/s台以下の漏れに収まっている状態のことと考えられる。これに対してよりリークレイトが大きい精度が低い封止については、次のことを考慮しなければならない。
その取り扱いの履歴や表面処理によりガス放出速度は大幅に変わるとはいえ、およそ大気中に放置された経験を持つ如何なる表面層もその表面/層内にガス分子を吸着/吸収しており、完全に「ガス放出を防止する」表面処理というものは存在しない。ZrO/W拡張ショットキーエミッタが安定に動作する10-7Pa台以下の圧力を現実的な時間内で実現するには、いかに早くこのガス分子を系内から排出してしまえるのかにかかっている。そこで充分な排気速度がある真空ポンプによって連続的に排気されている状態のもとで、ベーキング処理などにより意図的に一時的にガス放出速度を増加させ、表面層に存在するガス分子数を早く減少させることが行われる。
ところが今の場合、閉空間は超高真空にしようとしている周囲の空間と精度が低い封止によってつながっているのみであり、そこを排気する独立した真空ポンプを持たないことから、閉空間内部のガス分子はこの精度が低い封止という排気のコンダクタンスが小さい経路を通して徐々にしか系外に排出できず、またその排出過程そのものが超高真空にしようとしている周囲の空間へのガス負荷となってしまう。真空技術の分野で言うところのいわゆる”擬似漏れ”が起こっている状態であり、この負荷は非現実的な程に長時間が経過
した後であれば、永久磁石等に施したガス放出速度が小さくなる表面処理により確かに問題ないレベルにまで低下するであろうが、その途中ではこの負荷が原因となって逆に周囲の空間は超高真空にならなくなってしまう。
このことをもとに整理すると次のような課題がある。
c.永久磁石とコイルを閉空間内に配置するのであれば、気密封止部の封止は「通常の永久磁石でガス放出のあるものも使用できる」ほどに高精度でなければならない。閉空間内は大気圧に近いことから、エラストマー製Oリングによる封止ではOリング内を透過してくるガス分子の放出が無視できず、純鉄など比較的柔らかい軟磁性材で出来ている磁極を塑性変形させるほど強く金属製ガスケットを押しつけて封止する必要があり、これも非現実的である。
さらに次の課題もある。
d.ここで必要な永久磁石は極めて強力であり、上下の磁極を吸いつけてしまうと再度分解することは難しい。よく行われるように永久磁石を覗ける貫通したメネジを磁極に切っておき、そこにオネジをねじ込んで押すなど力ずくで引き剥がそうとすれば、多孔質である永久磁石からのガス放出を抑制するために施した表面被覆処理を傷つけてしまう。またそもそも永久磁石とコイルとを磁極がその壁の一部を成している閉空間に配置する場合には、永久磁石を覗ける貫通したメネジを磁極に切ることからして出来ない。このような訳でつまりコイルを取り外すことは難しく、コイルに障害が発生してもその交換は困難である。
本発明は、上記事情に鑑み、超高真空雰囲気に適合し、かつワブリング動作が可能な磁場レンズを提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の磁場レンズは、所定の中心軸に沿って進行する電子を磁場によって集束させる磁場レンズにおいて、
上記中心軸の方向に着磁しその中心軸に対し軸対称な、超高真空雰囲気に露出した永久磁石と、
その永久磁石を上記中心軸の方向両側から挟む、その中心軸に対し軸対称な軟磁性材の一対の磁極と、
上記永久磁石の外周側に上記中心軸と同心に巻回された、超高真空雰囲気に露出したコイルとを備えたことを特徴とする。
ここで、上記本発明の磁場レンズにおいて、上記コイルは、ワブリング動作用に磁場を変調するためのコイルであることが好ましく、この磁場レンズが、上記中心軸に沿って進行する電子を放出する電子銃の陰極の負電位近傍の負電位に置かれていることも好ましい形態であり、また、上記コイルは、非磁性のコイル支え部材に支持され、そのコイル支え部材が着脱自在に固定されたものであることも好ましい形態である。
本発明によれば、超高真空雰囲気に適合し、かつワブリング動作が可能となる。
ここで、特許文献13,15に開示されているように定常的に一定電流を流して永久磁石が作る磁場を補おうとするのであれば、外周側にコイルを配置したのでは磁場集中の効率が悪い分だけ内周側に配置した場合以上の電流値が必要となり、コイルの発熱がますます問題となる。これに対しワブリング動作で必要となる磁場の強さは、永久磁石が作り出す磁場のピーク値を1/100未満の範囲内で周期的に変化させるだけでよいので、外周側の配置でも発熱の問題は無視できる程度の電流値ですむ。つまり永久磁石の外周側にコイルを配置した磁場レンズでも、コイルに周期的に変化する電流を流せば磁場レンズの強度はそれに応じて周期的に変化し、ワブリング動作が可能となって、レンズ磁場の中心軸を見つけてそこに電子ビームを通せるようになる。
以下では、先ず、永久磁石の内周側にコイルを配置した場合と外周側に配置した場合を比較して説明し、次いで、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、永久磁石の内周側にコイルを配置した場合(A)と、外周側に配置した場合(B)の、磁場レンズの断面模式図である。
また、図2は、図1に示す磁場レンズ10A,10Bにおける、コイルが作る磁場を示す図である。
図1(A)に示す磁場レンズ10Aの場合、中心軸Cと同心に巻回されたコイル11Aと、その外周側に、やはり中心軸Cを軸とした円筒形の永久磁石12Aが配置され、それらコイル11Aと永久磁石12Aは、中心軸Cの方向両側から一対の磁極13A,14Aで挟まれている。
また、図1(B)に示す磁場レンズ10Bの場合、中心軸Cを軸とした円筒形の永久磁石12Bが配置され、その永久磁石12Bの外周側に、中心軸Cと同心に巻回されたコイル11Bが配置され、それら永久磁石12Bとコイル11Bが、中心軸Cの方向両側から一対の磁極13B,14Bで挟まれている。
一見すると、図1(A)ではコイルは磁性材に周囲を取り囲まれてその作る磁場が中心軸付近に集中するのに対して、図1(B)ではコイルが作る磁場は磁性材に遮られてむしろ中心軸付近からは排除されてしまうように錯覚されるが、これは正しくない。外部から加えられた磁場の永久磁石内の通りやすさを示す、永久磁石素材自身の比透磁率は1に非常に近く、磁極素材である軟磁性材の比透磁率数十〜数万と比べると桁違いに小さい。つまりコイルが作る磁場に対しては、永久磁石は周囲の真空と同じで特に優先的な磁路とはならず、磁場レンズを電磁石として見た場合のその磁気回路としての断面模式図は図2に近い。磁力線で模式的に図示したように、永久磁石の内周側にコイルを配置した場合(図2(A))だけでなく、外周側に配置した場合(図2(B))でも、集中の効率は多少は低下するが中心軸付近には集中した磁場が得られる。
図3は、本発明の第1実施形態としての磁場レンズの断面図である。
この図3では、中心軸Cをはさんで右と左では異なる位相での磁場レンズの断面を描いてあり、また断面よりも奥に見える稜線は誤解を生じない程度に省略してある。
この図3に示す磁場レンズ10は、その全体が超高真空の筐体内に配置されており、その全体が超高真空雰囲気にある。
この磁場レンズ10には、永久磁石11が備えられている。この永久磁石11は、中心軸Cが延びる上下方向に着磁しており、その中心軸Cに対し軸対称な円筒形を有し、この磁場レンズ10が置かれた超高真空雰囲気に露出している。
また、この磁場レンズ10には、永久磁石11を中心軸Cが延びる上下方向両側から挟む、その中心軸に対し軸対称な軟磁性材の、第1の磁極13および第2の磁極14が備えられている。
さらに、この磁場レンズ10には、永久磁石11の外周側に、中心軸Cと同軸に巻回されたコイル12が備えられている。このコイル12は、ワブリング動作用に磁場を変調するためのコイルであって、非磁性のコイル支え部材21に支持され、留めネジ22により固定されている。永久磁石11は極めて強力な磁石であるが、コイル支え部材21は非磁性材料からなり、また、コイル12は永久磁石11の外周側に配備されているため、このコイル12に断線等の不具合が発生したときは、留めネジ22を外すことによりそのコイル12をコイル支え部材21とともに容易に取り外すことができる。
また、この磁場レンズ10には、上記した永久磁石11、コイル12、第1および第2の磁極13,14の組立体の周囲を取り囲むようにヨーク15が配置され、そのヨーク15の上部には、中心軸Cを円形に取り巻く第3の磁極16が備えられている。このヨーク15にはその周囲8ヵ所に切欠き17が設けられており、又、コイル12からは配線18が延びている。
図3に示す磁場レンズ10は以上の構成を有するものであり、以下では、この磁場レンズ10についてさらに詳細に説明する。
この図3において、永久磁石11は、残留磁束密度1.11T、保持力864kA/m、最大エネルギー積240kJ/m3のNdFeB希土類磁石で、210℃程度までの高温にも耐える高耐熱品種である。その表面には真空中でのガス放出速度を小さくするために厚さ5μmの窒化チタン被膜処理がなされており、着磁して磁場レンズに組み込まれた後に高真空中にて200℃ 5h以上のエージング(熱枯らし)処理が行われている。
この永久磁石11は上下を第1および第2の磁極13,14に挟まれ、第2の磁極14の孔径は3mmであって第1の磁極13の孔径24mmの1/8であり、電磁レンズでいうところの所謂ピンホールレンズを形成している。なおここでは永久磁石11を上側がN極、下側がS極の向きに配置したが、特にどちら向きに配置しなければならない、というわけではない。永久磁石11の外径よりも第2の磁極14の外径は大きく、その第2の磁極14の外周側には円筒状のヨーク15が接続され、反対端の第3の磁極16と合わせて三者でちょうど永久磁石11と第1の磁極13とを包み込むような形状となっている。超高真空中での使用を前提としているため、真空中での水素の放出速度が大きい快削性純鉄でできている磁極13,14,16とヨークには、その表面にガス放出速度を小さくするために厚さ10μmのニッケルカニゼンメッキがほどこされている。また第1および第2の磁極13,14は磁力による吸着のみで永久磁石11に保持されており、ガス放出の原因となる接着材の使用や機械的なネジ留めなどは行っていない。
コイル12は芯線径0.7mmのポリイミドエナメル線を、コイル支え部材21を枠として43回巻きとしたものであり、コイル支え部材21が第1の磁極13にネジ留めされることで永久磁石11の外周側にて保持されている。このコイル支え部材21はポリイミド、銅、タンタル、チタン、インコネルといった非磁性材で構成されており、永久磁石11と第1および第2の磁極13,14とを分解することなしに、留めネジ22を外すことによって取り外すことができる。コイル12の配線18は右側断面に図示したが、コイル12を永久磁石11の外周側に配置したことによって、その取りまわしに必要な充分な空間が確保できることが見て取れる。また配線18の横に第2の磁極14とヨーク15にまたがる切欠き17が図示してあるが、これは磁場レンズ10の内部の真空排気を促進するためのもので、周方向にわたって45°間隔で八カ所に設けてある。第1の磁極13と平板状のコイル支え部材21aとを留めるための、四カ所の留めネジ用メネジとともに、これらの切欠きは磁極に施した非軸対称な加工であるが、その場所は磁石の中央よりも外周側で中心軸から離れており、後で説明する図5,図6に示すようにレンズ磁場に与える影響は無視できる程度に小さい。
図4は図3に点Aで示した外周側の地点にてθ方向に一周にわたって測定した磁場のZ方向成分を示した図であり、図5は同じく点Bで示した、第2の磁極14表面からの距離Z=1.6mm、中心軸からの半径2mmの地点で測定した磁場のZ方向成分を示した図である。
図4では、八カ所に設けた切欠き17に対応して、θ方向に沿った八分の一周周期の磁場変動がはっきりと認められる。これに対して図5では、θ方向に沿って一周周期で磁場が変動しているのみで、その他の周期の変動は認められない。この一周周期の変動は、レンズ磁場の中心軸Cと磁場測定プローブが周回した中心軸とがわずかにずれているために観測される変動であり、レンズ磁場そのものの軸対称性には無関係な、測定上避け難いものである。
このことを詳細に現したのが図6に示すグラフであり、この図6は図5の磁場をフーリエ展開したスペクトルのうち三十二次の成分までを表示した図である。中心軸どうしの不一致による一次成分を除けば、二次以上の高次の成分はゼロ次の成分B0に対して10-5以下の大きさであり、磁極に施した非軸対称性に対応する四次、八次の成分も特に他の成分に比べて大きい訳ではなく、これらの高次成分は測定におけるノイズレベル以下であると考えられる。
図7は、本発明の第2の実施形態としての磁場レンズの断面図である。
この図7に示す第2実施形態は、図3に示す第1実施形態における磁場レンズをZrO/W拡張ショットキー放出電子銃に組み込んだものである。
この図7において使用しているZrO/W拡張ショットキーエミッタは市販のものであり、ここでは、サプレサ電極とそこから0.2mmほど突き出した陰極先端、および反対側に突き出した二本のフィラメントステムという、外観のみを図示してある。その構造と動作条件は、例えば、前掲の非特許文献4,5に詳述されている。前述のとおり、これらの非特許文献4,5によれば、エミッタから安定した電子放出が得られるのは、熱放出電子が主だが無視できない量の電界放出電子も混在する拡張ショットキー放出領域であり、その通称であるTFE (Thermal Field Emitter)とは一致していないため、ここでは拡張ショットキーエミッタと記述している。
この図7に示すZrO/W拡張ショットキー放出電子銃30には、詳細説明は省略するが、フィラメントステム31,サプレサ電極32,陰極33、および引出電極34が備えられている。また、電源系としては加速定電圧源35、サプレサ定電圧源36、フィラメント定電流源37、引出定電圧源38およびワブリング電流源39が備えられている。
磁場レンズ10自体の構成は、図3に示す磁場レンズと同一であり、各要素には図3に付した符号と同一の符号を示してある。
本実施形態では、磁場レンズ10が関係する部分を除けば、前掲の非特許文献4,5の記述に沿っている。例えば陰極33の先端から約0.4mm前方には引出電極34を配置しており、図示した構造物は磁場レンズも含めて図示していない真空隔壁に囲まれており、これも図示していない計三台の公称排気速度20L/sのイオンポンプによる真空排気の下、180℃,72時間以上のベーキング処理によって、到達圧力10-8Pa台、定常動作時圧力3×10-7Pa以下の超高真空下に置かれている。また各部には真空隔壁を貫通して図示したように各電源が結線されており、加速電圧50kV、サプレサ電圧240V〜520V、フィラメント電流2.12A〜2.15A、引出電圧4.5kV〜5.4kVが各部に加えられている。この時陰極先端からは電子が放出され、その電子は図示していない陽極孔に向かって加速されてそこから飛び出し、電子銃として動作する。
図示したように磁場レンズ10はその全体が引出電極34と同電位であり、GND基準で見ると、陰極33の電位−50kVに近い、−45.5kV〜−44.6kVと負の高電位に配置されていることになる。コイルに電流を流すためのワブリング電流源39も引出電極34の電位にあり、それはワブリング動作時に限り周期的な変動電流を流すだけであるため、精度確度の高いものである必要はなく簡便な低コストの電流源である。
ここで引出電極34やエミッタとそれを保持する構造物は、磁場レンズ10とは別体となっており、磁場レンズ10に対してその位置を調節できる。この位置調節機能を使うことで、コイル12に変動電流を流して行うワブリング動作において、レンズ磁場の中心軸を探し出して電子ビームの軸と一致させることができる。
図8は、永久磁石11とコイル12とが作る軸上磁場Bzの分布を示した図である。グラフAは、永久磁石が作り出す、軸方向に進行する電子を集束させる主たる磁場であり、それは永久磁石11が作り出すものであるから、z>−12.7mmでの磁場とは逆向きの反転磁場がz<−12.7mmでは生じている。またグラフBは、仮に永久磁石11が着磁しておらずコイルに流れる1Aの電流のみで磁場が発生している、とした場合の軸上磁場Bzの計算値であり、こちらは電磁石であるから軸上に反転磁場は生じていない。
このように特にz<0mmの領域では、永久磁石11が作る磁場分布とコイルが作る磁場分布とにその形状に大きな違いがあるが、太線で示したz>0mmの領域では両者の形状に違いはほとんど認められない。陰極先端はほぼz=0mmの地点にあり、そこから放出された電子は正のz方向に進んでz>0mmの領域の磁場からレンズ作用を受けるため、z<0mmの領域での両者の形状の違いは電子の運動には影響しない。
このz>0mmの領域で両者の大きさを比べると、コイルが作る磁場分布は永久磁石11が作る磁場分布のおよそ0.8%である。コイルに流す電流を0A〜1Aの範囲で周期1sの三角波として変動させて実際にワブリング動作をさせたところ、試料のSEM像にはレンズ磁場の中心軸と電子ビームの軸のずれに対応した周期的な動きが認められ、さらにそれが止まるようにエミッタ等の位置調節を行うことでレンズ磁場と電子ビームの軸を一致させることができた。またこのワブリング動作を続けて行っている時間はせいぜい五分間程度までであり、この間に真空度の悪化はほとんど認められず、陰極先端からの電子放出を阻害するような事態は生じなかった。
永久磁石の内周側にコイルを配置した場合(A)と、外周側に配置した場合(B)の、磁場レンズの断面模式図である。 図1に示す磁場レンズにおける、コイルが作る磁場を示す図である。 本発明の第1実施形態としての磁場レンズの断面図である。 図3に点Aで示した外周側の地点にてθ方向に一周にわたって測定した磁場のZ方向成分を示した図である。 図3に点Bで示した、第2の磁極表面からの距離Z=1.6mm、中心軸からの半径2mmの地点で測定した磁場のZ方向成分を示した図である。 図5の磁場をフーリエ展開したスペクトルのうち三十二次の成分までを表示した図である。 図7は、本発明の第2の実施形態としての磁場レンズの断面図である。 永久磁石とコイルとが作る軸上磁場分布を示した図である。
符号の説明
10,10A,10B 磁場レンズ
11,11A,11B コイル
12,12A,12B 永久磁石
13,13A,13B 第1の磁極
14,14A,14B 第2の磁極
15 ヨーク
16 第3の磁極
17 切欠き
18 配線
30 ZrO/W拡張ショットキー放出電子銃
31 フィラメントステム
32 サプレサ電極
33 陰極
34 引出電極
35 加速定電圧源
36 サプレサ定電圧源
37 フィラメント定電流源
38 引出定電圧源
39 ワブリング電流源

Claims (4)

  1. 所定の中心軸に沿って進行する電子を磁場によって集束させる磁場レンズにおいて、
    前記中心軸の方向に着磁し該中心軸に対し軸対称な、超高真空雰囲気に露出した永久磁石と、
    該永久磁石を前記中心軸の方向両側から挟む、前記中心軸に対し軸対称な軟磁性材の一対の磁極と、
    前記永久磁石の外周側に前記中心軸と同心に巻回された、前記超高真空雰囲気に露出したコイルとを備えたことを特徴とする磁場レンズ。
  2. 前記コイルは、ワブリング動作用に磁場を変調するためのコイルであることを特徴とする請求項1記載の磁場レンズ。
  3. この磁場レンズが、前記中心軸に沿って進行する電子を放出する電子銃の陰極の負電位近傍の負電位に置かれていることを特徴とする請求項1記載の磁場レンズ。
  4. 前記コイルは、非磁性のコイル支え部材に支持され、該コイル支え部材が着脱自在に固定されたものであることを特徴とする請求項1記載の磁場レンズ。
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