JP2006208379A - イオン生成を増強するための装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオンを増強しかつ効率的にする。
【解決手段】イオン源は、温度センサを含む。加熱デバイス及び温度センサは、関連して動作するように接続され、閉フィードバックループとして作用し、それによって事前に設定された一定の温度で気体がイオン化領域に供給される。またマトリクスベースのイオン源を有する質量分光計システムにも適用する。所定の温度に加熱される気体を使用するイオンの生成にも適用する。
【選択図】 図2
【解決手段】イオン源は、温度センサを含む。加熱デバイス及び温度センサは、関連して動作するように接続され、閉フィードバックループとして作用し、それによって事前に設定された一定の温度で気体がイオン化領域に供給される。またマトリクスベースのイオン源を有する質量分光計システムにも適用する。所定の温度に加熱される気体を使用するイオンの生成にも適用する。
【選択図】 図2
Description
[相互参照]
本発明は、2005年1月21日付け出願の第11/041,118号の一部係属出願であり、その出願は2004年10月15日付け出願の第10/966,278号の一部係属出願であり、その出願は2002年2月22日付け出願の第10/080,879号の一部係属出願であり第6,825,462号として特許されている。これらの特許出願は、本明細書において参照することにより、あらゆる目的に対して、その内容を全て取り入れることとする。
本発明は、2005年1月21日付け出願の第11/041,118号の一部係属出願であり、その出願は2004年10月15日付け出願の第10/966,278号の一部係属出願であり、その出願は2002年2月22日付け出願の第10/080,879号の一部係属出願であり第6,825,462号として特許されている。これらの特許出願は、本明細書において参照することにより、あらゆる目的に対して、その内容を全て取り入れることとする。
[背景]
大抵の生物学的及び化学的な複合標的においては、標的とマトリクスとの干渉を補償するために、相補的な多次元の分析ツール及び方法を適用する必要がある。量及び質の両面において信頼のおける、標的に関する情報を得るためには正しい分析及び分離が重要である。このため、質量分光計が、様々な分離方法のための検出器として広範に利用されている。しかしながら、最近まで、大抵のスペクトル法は、断片化パターンを提供してきたが、これは、迅速かつ効率的な分析には複雑過ぎた。大気圧イオン化(API)法及びマトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)法が導入され、得られる結果は著しく向上した。例えば、これらの方法によると、広範囲にわたる揮発性及び不揮発性化合物を分析するために、断片化パターンが著しく低減され、及び高い感度がもたらされる。これらの技術は、ペプチド、蛋白質、炭水化物、オリゴ糖、天然産物、カチオン薬剤、有機砒素化合物、環状グルカン、タクソール、タクソール誘導体、金属ポルフィリン、ポルフィリン、ケロゲン、環状シロキサン、芳香族ポリエステルデンドリマー、オリゴデオキシヌクレオチド、ポリ芳香族炭水化物、ポリマー、脂質を含む広範囲の水準の化合物においても成功を収めている。
大抵の生物学的及び化学的な複合標的においては、標的とマトリクスとの干渉を補償するために、相補的な多次元の分析ツール及び方法を適用する必要がある。量及び質の両面において信頼のおける、標的に関する情報を得るためには正しい分析及び分離が重要である。このため、質量分光計が、様々な分離方法のための検出器として広範に利用されている。しかしながら、最近まで、大抵のスペクトル法は、断片化パターンを提供してきたが、これは、迅速かつ効率的な分析には複雑過ぎた。大気圧イオン化(API)法及びマトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)法が導入され、得られる結果は著しく向上した。例えば、これらの方法によると、広範囲にわたる揮発性及び不揮発性化合物を分析するために、断片化パターンが著しく低減され、及び高い感度がもたらされる。これらの技術は、ペプチド、蛋白質、炭水化物、オリゴ糖、天然産物、カチオン薬剤、有機砒素化合物、環状グルカン、タクソール、タクソール誘導体、金属ポルフィリン、ポルフィリン、ケロゲン、環状シロキサン、芳香族ポリエステルデンドリマー、オリゴデオキシヌクレオチド、ポリ芳香族炭水化物、ポリマー、脂質を含む広範囲の水準の化合物においても成功を収めている。
MALDIイオン化法によれば、被分析物及びマトリクスは、金属プローブ又は標的基板に適用される。溶媒が蒸発するにつれて、被分析物及びマトリクスは、溶液から共沈し、標的基板上のマトリクス内に被分析物の固溶体を形成する。次に、共沈物は、マトリクス分子の電子励起又は分子振動により共沈物中に大量のエネルギーを蓄積させる短レーザーパルスで照射される。マトリクスは、脱離によりエネルギーを放散し、被分析物は気相になる。この脱離プロセスの間、光励起マトリクスと被分析物との間の電荷移動によってイオンが形成される。
従来、MALDIイオン化技法は、イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴質量分光計、四重極飛行時間型質量分析計のような他の質量分析器を利用することもできるが、飛行時間型分析器を利用して実施される。しかしながら、これらの分析器は、高真空下で動作させなければならず、特に標的のスループットを限定し、分解能を低下させ、効率を低くし、標的の試験実施をさらに困難かつ高価にするおそれがある。
MALDIにおける上記欠点を克服するために、大気圧マトリクス支援レーザー脱離イオン化(AP-MALDI)法と呼ばれる技法が開発されている。この技法は、MALDIイオン化技法を利用するが、大気圧において実施される。MALDI化技法及びAP-MALDIイオン化技法には、多くの共通点がある。例えば、両技法は、固体標的材料のパルスレーザビーム脱離/イオン化のプロセスに基づき、このプロセスは結果として気相の被分析物の分子イオンを生成する。しかしながら、AP-MALDIイオン化技法は、質量分光計の入口オリフィス内にイオン流を導くのにイオン化チャンバと質量分光計との圧力差に依拠しない。
AP-MALDIによって、10-18molの程度の範囲の標的規模から106Daまでの分子量を検出することができる。さらに、これらの器具によって大きな集団の蛋白質、ペプチド、又は他の化合物が処理及び分析される場合に、感度の水準はますます重要である。感度を向上させるために、MALDI質量分光計に対して様々な構造上の変更及び器具の変更が行われてきた。しかしながら、部品及び構成要素を追加することにより、器具のコストが増大する。さらに、標的と混合された被分析物のマトリクスを変えることによって、感度の向上の試みがなされている。しかしながら、これらの追加及び変更による感度の向上は限られており、コストが追加されることになる。
したがって、イオンの増強を向上しかつ効率的にするために、AP-MALDI質量分光計の感度及び結果を向上させる必要がある。
[発明の概要]
本発明は、質量分光計とともに利用される装置及び方法に関する。本発明は、加熱された気体流を提供し、マトリクスベースのイオン源によって生成されるとともに検出器によって分析される被分析物のイオンを増強させるためのイオン増強システムを提供する。本発明の質量分光計は、被分析物のイオンを生成するためのマトリクスベースのイオン源と、マトリクスベースのイオン源から下流側にあり、増強された被分析物のイオンを検出するためのイオン検出器と、イオン源及びイオン検出器の間に介在し、被分析物のイオンを増強させるためのイオン増強システムと、イオン増強システムに隣接するか又は一体化され、増強された被分析物のイオンをイオン増強システムから検出器に運ぶためのイオン搬送システムとを提供する。
本発明は、質量分光計とともに利用される装置及び方法に関する。本発明は、加熱された気体流を提供し、マトリクスベースのイオン源によって生成されるとともに検出器によって分析される被分析物のイオンを増強させるためのイオン増強システムを提供する。本発明の質量分光計は、被分析物のイオンを生成するためのマトリクスベースのイオン源と、マトリクスベースのイオン源から下流側にあり、増強された被分析物のイオンを検出するためのイオン検出器と、イオン源及びイオン検出器の間に介在し、被分析物のイオンを増強させるためのイオン増強システムと、イオン増強システムに隣接するか又は一体化され、増強された被分析物のイオンをイオン増強システムから検出器に運ぶためのイオン搬送システムとを提供する。
さらに、本発明はまた、所望の温度で加熱された気体をイオン源のイオン化領域に供給するための気体加熱デバイスからなるマトリクスベースのイオン源を提供する。またイオン源は、温度センサを備えている。加熱デバイス及び温度センサは、閉じたフィードバックループ内で連結され、それによって事前に設定された一定の温度の気体をイオン化領域に供給することができる。マトリクスベースのイオン源を備えている質量分光計システムもまた開示する。本発明はまた、事前に設定された温度に加熱される気体を含むイオン源内でイオンを生成する方法を提供する。
本発明の方法は、マトリクスベースのイオン源から被分析物のイオンを生成し、被分析物のイオンをイオン増強システムで増強し、増強された被分析物のイオンを検出器で検出することを含む。
以下、本発明を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
[発明の詳細な説明]
本発明を詳細に説明する前に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「ある」、「1つの」及び「その」は、文脈上明確に記載されていない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば「ある導管」と記載する場合には、1つ以上の「導管」が含まれる。「1つのマトリクス」と記載する場合には、1つ又はそれ以上の「マトリクス」、あるいは「複数のマトリクス」の混ざり合ったものが含まれる。本発明を説明し、及び本発明の特許請求の範囲を主張する際、以下の用語は、次に示される定義に従って使用される。
本発明を詳細に説明する前に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「ある」、「1つの」及び「その」は、文脈上明確に記載されていない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば「ある導管」と記載する場合には、1つ以上の「導管」が含まれる。「1つのマトリクス」と記載する場合には、1つ又はそれ以上の「マトリクス」、あるいは「複数のマトリクス」の混ざり合ったものが含まれる。本発明を説明し、及び本発明の特許請求の範囲を主張する際、以下の用語は、次に示される定義に従って使用される。
「隣接した」という用語は、近傍の、隣の、近接した、ということを意味する。隣接した何かは、他の構成要素と接触し、他の構成要素を取り囲み、他の構成要素から間隔を置いて配置され、他の構成要素の一部を含むことがある。例えば導管に隣接した毛管は、導管の隣に間隔を置いて配置されていてもよく、導管と接触していてもよく、導管を取り囲み、もしくは導管に取り囲まれていてもよく、導管を含み、もしくは導管に含まれていてもよく、導管に近接し、又は導管の隣にあってもよい。
「導管」又は「加熱された導管」という用語は、加熱された気体又は気体流をイオン化領域のような空間における画定された領域に向かって導くために利用される任意のスリーブ、搬送デバイス、ディスペンサ、ノズル、ホース、パイプ、プレート、ピペット、ポート、コネクタ、チューブ、カップリング、コンテナ、ハウジング、構造又は装置を指す。特に「導管」は、イオン源から被分析物のイオンを受容する毛管又は毛管の一部を包囲するように設計される。しかしながら、この用語は、イオン化領域に向かって配向されるとともに、加熱された気体流を気相内及び/又はイオン化領域内のイオンに向かって又はそのイオン内に提供することができる任意のデバイス又は装置も含むものとして広く解釈されなければならない。例えば、この用語はまた、気体流をイオン化領域に導く開口部を備えている凹状又は凸状プレートを含む。
「増強」という用語は、熱、エネルギー、光、温度変化などのような、物質をより容易に特性化又は特定する任意の外因性の物理的な刺激を指す。例えば、加熱された気体を適用し、イオンを「増強」することができる。イオンは、それらの運動エネルギー、電位又は運動を増大され、クラスター分離又は気化される。この状態のイオンは、質量分析器によってより容易に検出される。なお、イオンが「増強」されれば、検出されるイオンの数は増大する。なぜなら、より多数の被分析物のイオンが、収集毛管を介して採取されて、質量分析器又は検出器に運ばれるからである。
「イオン源」又は「ソース」という用語は、被分析物のイオンを生成する任意の源を指す。イオン源は、電子衝撃(以下、EIと称する)、化学イオン化(CI)、当該技術分野で既知のその他のイオン源のようなAP-MALDIイオン源以外の他のイオン源を含む。「イオン源」という用語は、レーザ、標的基板、標的基板上でイオン化される標的を指す。AP-MALDI内の標的基板は、標的を堆積させるためのグリッドを含む。このようなグリッド上の標的間の間隔は、約1〜10 mmである。おおよそ0.5〜2マイクロリットルが、グリッド上の各部位に堆積される。
「イオン化領域」という用語は、イオン源と収集毛管との間の領域を指す。特に、この用語は、その領域に存在するイオン源によって生成されるとともに収集毛管にまだ送られていない被分析物のイオンを指す。この用語は、標的支持体の中、標的支持体の上、標的支持体の付近、標的支持体の周囲におけるイオン、並びに標的支持体及び収集毛管の上方及び周囲における加熱された気相内のイオンを含むものとして広く解釈されなければならない。AP-MALDI内のイオン化領域は、イオン源(標的基板)から収集毛管までの距離が約1〜5mm(又は1〜5mmの容積)である。標的基板から導管までの距離は、導管から標的及び標的基板に向けて十分な気体を流すために重要である。例えば、導管が標的又は標的基板に近すぎると、電圧が印加されたときにアーク放電が発生する。距離が遠すぎると、効果的なイオン収集ができない。
「イオン増強システム」という用語は、被分析物のイオンを増強するために利用される任意のデバイス、装置、構成要素を指す。この用語は、毛管を直接加熱してイオンストリームに伝導熱をもたらすことを含まない。例えば「イオン増強システム」は、導管及び気体源を含む。またイオン増強システムは、レーザ、赤外線デバイス、紫外線源、イオン化領域若もくは気相に放出されるイオンに熱又はエネルギーを与える他の同様の形式のデバイスのような、当該技術分野で既知のその他のデバイスを含む。
「イオン搬送システム」という用語は、被分析物のイオンを1つの位置から他の位置に搬送、移動、分配するのを援助することになっている任意のデバイス、装置、機械、構成要素、毛管を指す。この用語は、イオン光学素子、スキマー、毛管、導電素子、導管を含むものとして広範囲にわたって利用される。
「マトリックスベース」又は「マトリックスベースのイオン源」という用語は、乾燥気体、カーテンガス又は脱溶媒工程の利用を必要としないイオン源又は質量分光計を指す。例えば、いくつかのシステムでは、被分析物と混合されている溶媒又は補助溶剤を除去するのにこのような気体を使用する必要がある。多くの場合、これらのシステムは揮発性液体を使用して、より小さな飛沫の形成を助長する。上記の用語は、試料が溶解する不揮発性液体及び固体物質の両方に適用される。上記の用語は、補助溶剤の使用を含む。補助溶剤を、揮発性又は不揮発性とすることができるが、真空で蒸発し得る最終マトリックス物質を提供してはならない。このような物質として、m-ニトロベンジルアルコール(NBA)、グリセロール、トリエタノールアミン(TEA)、2,4-ジペンチルフェノール、1,5-ジチオスレイトール/ジエリスリトール(マジックブレット)、2-ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)、チオグリセロール、ニコチン酸、ケイ皮酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸(シナピン酸)、シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CCA)、3-メトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸(フェルラ酸)、モノチオグリセロール、カーボワックス、2-(4-ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸(HABA)、3,4-ジヒドロキシケイ皮酸(コーヒー酸)、2-アミノ-4-メチル-5-ニトロピリジンを、それらの補助溶剤及び誘導体とともに挙げることができるが、これらに限定されない。特に、この用語は、揮発性溶媒を必要とせず、大気圧の上下において動作されるMALDI、AP-MALDI、高速原子/イオン衝撃(FAB)及び他の類似のシステムを指す。
「気体流」、「気体」又は「導かれた気体」という用語は、質量分光計において所定の方向に導かれた任意の気体を指す。この用語は、導管を通過する又は導管内に吹き付けられる単原子、2原子、3原子及び多原子の分子を含むものとして広く解釈されなければならない。またこの用語は、混合物、不純混合物、汚染物を含むものとして広く解釈されるべきである。この用語は、不活性物及び活性物の両者を含む。本発明とともに使用される一般的な気体は、限定しないが、アンモニア、二酸化炭素、ヘリウム、フッ素、アルゴン、キセノン、窒素、空気等を含む。
「気体源」という用語は、所望の気体又は気体流を生成する任意の装置、機械、導管、デバイスを指す。気体源は、大抵の場合、調整された気体流を生成するが、これは必ずしも必要ではない。
「毛管」又は「収集毛管」という用語は、同義であり、かつ当該技術分野で一般的な定義(単数又は複数)と一致する。この用語は、イオンを受容する任意のデバイス、装置、チューブ、ホース、導管を含むものとして広く解釈されなければならない。
「検出器」という用語は、イオンを検出することができる任意のデバイス、装置、機械、構成要素、システムを指す。検出器は、ハードウェア及びソフトウェアを含んでいてもいなくてもよい。質量分光計では、一般的な検出器は、質量分析器を含み、及び/又は質量分析器に連結される。
「複数」は、少なくとも2つ、例えば、2、3、4、6、8、10、12又は12以上である。「複数の」及び「多数の」という表現は、同義で使用される。複数の導管又は気体ストリームは、少なくとも第1の導管又は気体ストリーム、及び第2の導管又は気体ストリームをそれぞれ含む。
本明細書で記載するイオン源は、13.3Pa(100 mTorr)未満又は少なくとも13.3Pa(100 mTorr)の周囲圧力(すなわち、イオン源のハウジング内の温度)を有する。特定の実施形態では、イオン源は、例えば、大気圧(約1.01×105Pa(約760 Torr))又は高真空圧力である周囲圧力を有し得る。
「閉じたフィードバックループ」は、イオン源内のある領域の温度が、その領域における温度センサからのフィードバックによって制御されるシステムである。閉じたフィードバックループは、一般に、連結された気体加熱デバイス及び温度センサを少なくとも含む。サーモスタット制御式システムは、閉じたフィードバックループの一例をなす。
「サーモスタット」は、温度を感知し、気体加熱デバイスのオン/オフを切り換えることによって温度の変化に自動的に応答するデバイスである。
「気体加熱デバイス」は、気体を加熱するための任意の適切な形式のデバイスを含む。気体加熱デバイスは、例えば、対流、伝導、放射によって気体を加熱し得る。気体加熱デバイスは、例えば、気体源(例えば気体シリンダ)、気体搬送導管、イオン源のハウジングの一部であり得るし、又はこれらに関連付けられる。気体は、イオン源に入った後、入っている間、入る前に、気体加熱デバイスによって加熱される。
本発明を、図面を参照しながら説明する。図面は一律の縮尺に従っておらず、特に、表示を明確にするため、特定の寸法を誇張して示している。
図1は、質量分光計の一般的なブロック図を示す。ブロック図は、一律の縮尺に従っておらず、一般的な形式で描かれている。その理由は、本発明を、様々な異なる形式の質量分光計とともに使用することができるからである。本発明の質量分光計1は、イオン源3、イオン増強システム2、イオン搬送システム6、検出器11からなる。イオン増強システム2は、イオン源3とイオン検出器11との間に配置することができ、あるいはイオン源3の一部及び/又はイオン搬送システム6の一部をなしてもよい。
イオン源3を多くの位置又は場所に配置することができる。さらに、様々なイオン源を本発明とともに利用することができる。例えばEl、CI、当該技術分野で既知の他のイオン源を本発明とともに利用することができる。
イオン増強システム2は、導管9及び気体源7を含む。イオン増強システム2のさらなる詳細は、図2及び図3で示す。イオン増強システム2は、これら2つの構成又は実施形態のみに限定されるものとして解釈されてはならない。
イオン搬送システム6は、イオン増強システム2に隣接し、かつ収集毛管7、又は被分析物のイオンを送るとともに当該技術分野で既知のイオン光学素子、導管もしくはデバイスからなる。
図2は、本発明の第1の実施形態の断面を示す図である。この図は、AP-MALDI質量分光計システムに適用される本発明を示す。簡潔にするために、この図は、ソースハウジング14を備えている本発明を示す。イオン源及びシステムを包囲するためにソースハウジング14を使用することは任意選択である。特定の部品、構成要素、システムは、真空下であってもなくてもよい。これらの技法及び構造は、当該技術分野で既知である。
イオン源3は、レーザ4、偏向板8、標的支持体10を有する。標的13は、当該技術分野で既知のマトリクス材料の標的支持体10に適用される。レーザ4は、偏向板8によって標的13に向けて偏向されるレーザビームを提供する。さらに標的13は、イオン化されて、被分析物のイオンは、イオンプルームとしてイオン化領域15内に放出される。
イオン化領域15は、イオン源3と収集毛管5との間に位置する。イオン化領域15は、イオン源3と収集毛管5との間の領域に位置する空間及び領域を含む。この領域は、蒸発されて気相になる試料をイオン化することによって生成されるイオンを含む。イオン源3が収集毛管5に対してどのように配置されるかによって、この領域の寸法及び形状を調整することができる。非常に重要なことに、この領域には、標的13のイオン化によって生成された被分析物のイオンが位置する。
収集毛管5は、イオン源3から下流側に位置し、かつ当該技術分野で既知の様々な材料及び設計を含む。収集毛管5は、イオンプルームとしてイオン化領域15に放出されるイオン源3から生成される被分析物のイオンを受容して収集するように設計されている。収集毛管5は、被分析物のイオンを受容し、それらを他の毛管もしくは場所に送る開口部及び/又は細長いボア12を有する。図2において、収集毛管5は、真空下にありかつさらに下流側の主毛管18に接続されている。収集毛管5は、光学的な絶縁体17によって適所に支持される。当該技術分野で既知の他の構造及びデバイスを、収集毛管5を支持するために使用することができる。
導管9は本発明にとって重要である。導管9は、イオン化領域15内のイオンに向かう加熱された気体の流れをもたらす。加熱された気体は、イオン化領域15内の被分析物のイオンと相互作用し、それによって被分析物のイオンが増強され、それらは検出器11(図2には図示せず)によってより容易に検出される。これらのイオンは、加熱された気相内に存在するイオンを含む。検出器11は、質量分光計内のさらに下流側に位置する(図1を参照)。導管9は、当該技術分野で既知の様々な材料及びデバイスを有する。例えば導管9は、加熱された気体又は気体流をイオン化領域15のような空間又は場所における所定の領域に向かって導くために利用されるスリーブ、搬送デバイス、ディスペンサ、ノズル、ホース、パイプ、ピペット、ポート、コネクタ、チューブ、連結部、コンテナ、ハウジング、構造又は装置を含む。加熱された気体が十分な量でイオン化領域15内のイオンに適用されるように、導管9が、標的13及び標的支持体10に十分に近接して配置されていることが本発明にとって重要である。
気体源7は、加熱された気体を導管9にもたらす。気体源7は、加熱された気体をもたらすために任意の数のデバイスからなる。気体源は、当該技術分野で既知であり、至る所で説明されている。気体源7は、図2及び図3に示すように別個の構成要素であってもよく、又は収集毛管5、導管9、主毛管18を関連して動作するように連結する連結部23(図4に図示)と一体化されていてもよい。気体源7は、多数の気体を導管9にもたらし得る。例えば窒素、アルゴン、キセノン、二酸化炭素、空気、ヘリウム等のような気体を本発明とともに利用することができる。気体は、不活性である必要はなく、十分な量のエネルギー又は熱を搬送することができればよい。これらの特性を有する当該技術分野で既知の他の気体もまた、本発明とともに使用することができる。
図3は、本発明の第2の実施形態の断面を示す図である。導管9を、気体をイオン化領域15に向けて導くために任意の数の位置に配向することができる。特に、図3は、収集毛管5から取り外された状態の導管9を示す。導管9が、イオン化領域15内に位置する被分析物のイオンを増強するのに十分な加熱された気体流を導き得ることが可能であることが発明にとって重要である。導管9は、標的13又は標的支持体10から約1〜5mmの距離を置いて配置されている。標的13及び標的支持体10に適用される加熱された気体は、摂氏約60度〜150度の範囲の温度でなければならない。気体の流量は、1分間につきおおよそ2〜15Lでなければならない。
概して、分子は、イオン収集毛管を介して搬送されるときと同じ方向に、標的支持体からイオン収集毛管の入口まで移動する。したがって、本開示の目的のために、本発明のイオン源は、イオン収集毛管の長手方向軸によって画定されるイオンの移動軸を含み、すなわちイオン収集毛管は、イオンが沿って移動する長手方向軸を含む。さらに、本開示の目的のために、加熱された気体流の軸は、加熱された気体をもたらす導管の長手方向軸、すなわち加熱された気体が沿って移動する分子軸によって画定される。
図2及び図3に示す特定の実施形態では、気体流の軸は、標的基板からイオン収集毛管の入口までのイオン移動の軸に対して、0°及び360°の角度を含む0°〜360°の任意の角度をなす。例えば、気体流の軸は、イオン流の軸に対して、対向して又は非平行に(すなわち約180度で)、平行に(すなわち約0度で)あるいは直交して、あるいはそれらの間の任意の角度である。
特定の実施形態では、加熱された気体流の方向は、イオン流の軸に対して、以下の範囲、すなわち、0〜30度、30〜60度、60〜90度、90〜120度、120〜150度、150〜180度、180〜210度、210〜240度、240〜270度、270〜300度、300〜330度、330〜360度の範囲の任意の角度をなす。特定の実施形態では、加熱された気体の軸は、イオン移動軸に対して直交するように配向されている。
上記の角度は、2次元空間又は3次元空間内の任意の角度である。換言すると、角度は、x/y面(すなわち図3と同じ面)、又はz面(すなわち加熱された気体の軸は、図3のx/y面の上方又は下方に配向され得る)、又はそれらの組み合わせであり得る。換言すると、側部から(図3で示すように)、又は「上方」から(例えばイオン収集毛管の入口から)見ると、加熱された気体の軸は、イオン搬送軸に対して任意の角度であり得る。
図2及び図4〜図7は、本発明の第1の実施形態を示す。導管9は、収集毛管5を包囲するように設計されている。導管9は、収集毛管5のすべてを包囲してもよく、又はその一部を包囲してもよい。しかしながら加熱された気体が収集毛管5に入るか又はこれによって収集される前に、イオン化領域15内に位置する被分析物のイオンまで送達され得るように、導管9が収集毛管端部20に隣接していることが重要である。図1〜図6及び図8は、本発明のいくつかの実施形態のみを示し、例示することのみを目的として利用される。これらは、本発明の範囲を狭めるものとして解釈されてはならない。導管9は、別個の構成要素であってもよく、又は連結部23の一部を含んでいてもよい。図4〜図6は、導管9を別個の構成要素として示す。
図4〜図6は、連結部23を示し、収集毛管5、主毛管18及び導管9を連結する連結部23の設計を示す。連結部23は、固定支持体31(図7及び図8に示す)に取り付けられるように設計されている。連結部23は、スペーサ33、ハウジング35及び毛管キャップ34(図5を参照)からなる。毛管キャップ34及びスペーサ33は、ハウジング35内に嵌合するように設計されている。スペーサ33は、毛管キャップ34と主毛管18との間に緊密なシールが維持されるように、毛管キャップ34に圧力が適用されるように設計されている。毛管キャップ34は、主毛管18を受容するように設計されている。小さな間隙36が、スペーサ33と毛管キャップ34との間に画定されている(図6を参照)。小さな間隙36は、従来技術のデバイスによって達成されるようにハウジング35からではなく、それとは対照的に、気体源7から収集毛管5へ気体を流れさせる。
随意的なセンタリングデバイス40が、収集毛管5と導管9との間に設けられている。センタリングデバイス40は、様々な形状及び大きさからなる。センタリングデバイス40がイオン化領域15に導かれる気体流を調節するということが重要である。図4〜図6は、センタリングデバイスを三角形のプラスチック挿入部として示している。しかしながら導管9と収集毛管5との間に、その他の設計及びデバイスを利用することができる。
さらに図1〜図8を参照すると、検出器11は、イオン源3及び導管9から下流側に位置している。検出器11は、質量分析器、又は当該技術分野で既知の収集毛管5によって収集され、主毛管18に送られる増強された被分析物のイオンを検出するためのその他の同様のデバイスである。また検出器11は、当該技術分野で既知であり、増強された被分析物のイオンを検出するのを助け得る任意のコンピュータハードウェア及びソフトウェアを含む。
本発明の特定の実施形態では、マトリクスベースのイオン源は、加熱された気体の複数のストリーム(例えば加熱された気体の少なくとも第1及び第2のストリーム)を、イオン源のイオン化領域に向かって導くためのデバイスを含む。これらの実施形態では、デバイスは、加熱された気体のストリームをイオン化領域に向かって導くための多数の(例えば少なくとも第1及び第2の)オリフィス(例えばノズル)を含み、これらのオリフィスは、イオン化領域の周囲に配置される。特定の実施形態では、オリフィスはイオン化領域から等距離である。
したがって、特定の実施形態では、本発明のマトリクスベースのイオン源は、標的基板、イオン収集毛管、標的板とイオン収集毛管との間に介在しているイオン化領域、加熱された気体の第1のストリームをイオン化領域に導くための第1の導管、加熱された気体の第2のストリームをイオン化領域に導くための第2の導管を含む。マトリクスベースのイオン源は、イオン収集毛管の長手方向軸によって画定されるイオンの移動軸、並びに第1及び第2の導管によって画定される気体流の第1及び第2の軸をさらに含む。気体流の第1及び第2の軸は、上記のように、イオンの移動軸に対して任意の角度をなす。
デバイスは、標的板からイオン収集毛管へのイオン流の方向(これは、上記のように、収集毛管の長手方向軸と同じ方向である)に対して、任意の角度であるように配向された加熱された気体の複数のストリーム(例えば加熱された気体の少なくとも第1及び第2のストリーム)をもたらす。特定の実施形態では、加熱された気体のストリームは、イオン流の方向に直交して(例えば、標的基板の表面に対して平行に)配向され、加熱された気体のストリームは、側方からイオン化領域に入る。換言すると、標的基板が3次元空間のx軸及びy軸を示す場合、加熱された気体のストリームは、同じ空間のz軸に対して任意の角度をなす。
上記のように、デバイスは、加熱された気体の複数のストリームをイオン化領域に向かって導くための多数のオリフィスを含む。特定の実施形態では、デバイスは、オリフィス内でそれぞれ終端し、イオン化領域に向かって配向されている多数の導管を含む。しかしながら、他の実施形態では、デバイスは、イオン化領域の周囲に配置されている多数のオリフィスを含む単一の気体搬送構成要素を含む。本実施形態では、気体搬送構成要素は、イオン化領域の周囲又は上方に開いたリング又は閉じたリングを形成し、気体搬送構成要素のオリフィスは、複数の気体のストリームをイオン化領域に向かって導くように位置決めされている。
したがって、特定の実施形態では、イオン源のイオン化領域に向かって導かれた加熱された気体の複数のストリームをもたらすためのデバイスは、イオン化領域に向かって配向されている長手方向軸をそれぞれ有する多数の導管(例えば少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つ又はそれ以上の導管)を含む。特定の実施形態では、導管の長手方向軸は、イオン流の方向に対して直交して(例えば標的支持体の表面に対して平行に)配向されている。代替的な実施形態では、デバイスは、気体をイオン化領域の方向に導く多数のオリフィス(例えば少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つ又はそれ以上のオリフィス)を有する開いたリング又は閉じたリングの形状の気体搬送構成要素を含む。気体搬送構成要素は、イオン化領域の上方に又はイオン化領域を取り囲むように位置決めされる。
本発明のこの局面を例示する1つの実施形態を、図11に概略的に示す。この実施形態では、イオン源1は、標的基板10、イオン収集毛管5、標的板とイオン収集毛管との間に介在するイオン化領域15、加熱された気体の第1のストリームをイオン化領域に導くための第1の導管9、加熱された気体の第2のストリームをイオン化領域に導くための第2の導管9aを含む。第1及び第2の導管は、気体源7及び7aに関連して動作するように接続される。気体源7及び7aを、同じ気体源とすることも、異なる気体源とすることもできる。
デバイスは、任意の方向からイオン化領域に接触する複数の気体ストリーム、すなわち側部からの方向(すなわち直交して)又はイオン流の方向に対して斜めの角度をなす方向を含むイオン化領域に対する任意の方向からイオン化領域に向かって流れる気体ストリームをもたらす。本発明及び構成要素を詳細に記載してきたが、本発明がどのように動作するかについて順に説明する。
図7は、デバイスの断面を示す図である。収集毛管5は、毛管キャップ34によって主毛管18に接続されている。毛管キャップは、主毛管18を受容するように設計され、ハウジング35内に配置されている。ハウジング35は、固定支持体31に直接接続する。気体源7が、ハウジング35と毛管キャップ34との間に画定されたチャネル38を介して気体をもたらすことに留意されたい。気体は、通路24を通って気体源7からチャネル38に流れ、さらにイオン化チャンバ30に流れる。気体は、イオン化チャンバ30に放出され、この時点では何の作用もしない。
図8は、導管9が、イオン源3と気体源7との間に位置決めされている本発明の第1の実施形態の断面を示す図である。導管9は、加熱された気体を気体源7から収集毛管端部20に搬送するように動作する。本発明の方法では、質量分光計1における検出を容易にするために増強された被分析物のイオンが生成される。この方法は、導かれた気体で、収集毛管5に隣接したイオン化領域15内に位置する被分析物のイオンを加熱し、被分析物のイオンを検出器11によってより容易に検出可能とすることを含む。気体は、気体源7によって生成され、チャネル38及び小さな間隙36を介して導かれる。そこから、気体は、導管9と収集毛管5との間に画定されている環状空間42内に搬送される。さらに加熱された気体は、随意的なセンタリングデバイス40(図8には図示せず)と接触する。センタリングデバイス40は、収集毛管5と導管9との間に配置され、イオン化領域15への気体の流れを調節するような形状となっている。気体は、導管9から出て、収集毛管端部20に隣接したイオン化領域15内に流れる。イオン化領域15内の被分析物のイオンは、この領域に導かれた気体によって加熱される。続いて、増強されるとともに収集毛管5によって収集された被分析物のイオンは、主毛管18に搬送され、さらに検出器11に送られる。源に隣接した被分析物のイオンに熱が加えられた後、検出限界及び信号品質が著しく向上することに留意されたい。この結果は、まったく予想されなかったものである。例えば、溶媒がAP-MALDI及びMALDIイオン源並びに質量分光計とともに使用されないため、気体の脱溶媒及び/又は適用が、マトリクスベースのイオン源及び質量分光計におけるイオン検出を増強する際に効果的であるということは予想されないであろう。しかしながら本発明は、大きなイオンクラスターが破壊されて、より容易に検出可能な被分析物のイオンを生成するという事実によって動作すると考えられる。さらに、熱の適用も試料の蒸発を助ける。
他の実施形態では、本発明は、上記のように、気体が事前に設定された温度でイオン化領域に供給されるマトリクスベースのイオン源を提供する。この実施形態では、上記の要素に加えて、マトリクスベースのイオン源は、気体加熱デバイスを含む。またマトリクスベースのイオン源は温度センサを含む。温度センサと組み合わされている気体加熱デバイスは、閉フィードバックループで動作し、それによってイオン化領域に供給される加熱された気体の温度が制御及び維持される。特定の実施形態では、加熱された気体の温度は、イオン源の人間のオペレータによって制御され、オペレータは、必要に応じて、加熱された気体の温度を変更し得る。図12A〜図12D及び図13は、本発明の実施例を示すが、本発明をいずれか1つの特定の実施形態に限定するものではない。例えば上記のように、加熱された気体は、多数の異なる方法によって、例えばイオン収集毛管と同軸の導管を利用して、イオン収集毛管とは別個の導管を利用して、多数の導管を利用して、イオン化領域に提供される。加熱された気体は、イオン化領域に向かって導かれ、又は特定の実施形態では、イオン源は、加熱された気体で満たされ、すなわち充満される。図12A〜図12D及び図13に示す一般的な原理は、上記の実施形態のいずれかに適用される。
図12Aを参照すると、本発明は、イオン入口オリフィス54を有するイオン収集毛管52と、イオン入口オリフィス54に隣接した標的板56と、入口オリフィス54と試料板56との間に介在するイオン化領域と、気体源62に接続され、気体をイオン化領域58に供給するための導管60と、気体を所定の温度に加熱するための気体加熱デバイス64とを含むマトリクスベースのイオン源50を提供する。気体加熱デバイス64は、一般に、イオン源の外側に配置されている温度制御器66に接続されている。信号を受容すると(手動であっても自動であってもよい)、温度制御器66は、気体加熱デバイス62に供給される電力を増減し、気体の温度を上昇又は下降させる。気体加熱デバイスの温度を上下させることによって、気体の温度は調節される。気体加熱デバイス62は、イオン源のハウジング67内の任意の適切な位置に配置される。また気体加熱デバイスは、イオン源の外側にある気体導管に対して(例えばその内部、周囲又はその一部として)関連付けられる。例えば図12Bに素子70で示すように、気体加熱デバイスは、図12Cに素子71で示すように、イオン源のハウジング内で気体導管に関連付けられる。代替的には、気体加熱デバイスは、イオン源のハウジングの外部にある気体導管に関連付けられる。1つの実施形態では、図12Dに示すように、気体加熱デバイスは、気体導管の出口オリフィス(例えば気体源とハウジングとを連結する気体供給ラインの任意の場所)と、イオン化領域との間に位置決めされる。換言すると、特定の実施形態では、気体加熱素子は、気体が導管を通過する際に加熱されるように、気体導管に関連付けられる。他の実施形態では、気体加熱素子は、気体導管に関連付けられず、かつ気体が導管を出た後に加熱されるようにイオン源のハウジング内に配置される。気体加熱デバイスを「備えている」イオン源は、図12A〜図12Dに示す実施形態のすべて、及び当業者には容易に明らかとなるであろうその他の実施形態のすべてを網羅する。
図13に示すように、イオン源はさらに、加熱された気体の温度を監視するための温度センサ80をイオン源のハウジング内に備えている。気体加熱素子と同様に、温度センサ80は、イオン源内の任意の適切な位置に存在する。しかしながら、特定の実施形態では、温度センサ80は、イオン化領域内の気体の温度が監視できるように位置決めされる。したがって、図13に示すように、温度センサ80は、センサのプローブがイオン化領域と隣接するようにイオン源内に位置決めされる。温度センサを、限定しないが、例えばサーミスタ、熱電対又は抵抗温度検出器(RTD)温度センサ、又は当該技術分野で既知の他の任意の温度センサを含む任意の形式の温度センサとすることができる。
図13にも示すように、温度センサ80及び気体加熱デバイス82(例示することのみを目的として、この例では気体導管84に関連付けられている)及び温度制御器83は、閉フィードバックシステムとして動作し、それによって加熱された気体の温度を所定の温度に維持することができる。本質的には、温度センサ80は、加熱された気体の温度を感知し、加熱された気体の温度が事前に設定された温度を下回る場合には、温度制御器83は、気体加熱デバイスの温度を上昇させるように信号を発する。逆に、加熱された気体の温度が事前に設定された温度を上回る場合には、温度制御器83は、気体加熱素子の温度を下降させるように信号を発する。選択された温度は、例えばイオン冷却及び非クラスタ化に対して最適化される。図13に示すように、温度センサ80、気体加熱デバイス82、温度制御器83は、加熱された気体の温度を表示するユーザインターフェース86に対して関連して動作するように接続されている。ユーザインターフェースによって、イオン源のオペレータは、イオン化の間加熱された気体の温度を観察して、イオン源の使用中に加熱された気体の温度を監視し、かつ必要であれば加熱された気体の温度を制御することが可能である。例えば、加熱された気体の温度を上下させるために(例えば異なるイオンを検出するために)、オペレータは、ユーザインターフェース86を介して所望の温度に入れ、ユーザインターフェースは、温度制御器83に指示して必要に応じて気体加熱デバイス84の温度を上下させる。オペレータによるさらなる変更がなければ、加熱された気体は、所望の温度に到達し、閉フィードバックループを介して所望の温度に維持される。
一般的な条件では、閉フィードバックループシステムによって、オペレータは、加熱された気体の温度を所定の温度に設定することができる。特定の実施形態では、所定の温度は、約50℃〜約300℃の範囲、例えば、約60℃〜約250℃の範囲である。ただし、これらの範囲以外の所定の温度も容易に利用することができる。
特定の実施形態では、本発明は、マトリクスベースのイオン源を利用して被分析物のイオンを生成するための方法を提供する。この方法は、加熱された気体の複数のストリーム(例えば、加熱された気体の第1及び第2のストリーム)をイオン源のイオン化領域に導き、試料をイオン化して被分析物のイオンを生成し、結果として得られる被分析物のイオンをイオン源の外に搬送することを含む。
この方法は、所定の温度の気体をマトリクスベースのイオン源のイオン化領域に向かって導き、試料をイオン化してイオンを生成し、そのイオンをイオン源の外に搬送することを含む。この方法はさらに、気体の温度を監視することを含み、特定の実施形態では、気体の温度を変更することを含む。
本発明をその具体的な実施形態に関連して説明したが、上記の説明及び以下に続く実施例は、本発明を例示するものであって、その範囲を限定するものではないことに理解されたい。本発明の範囲内のその他の局面、利点及び変更は、本発明が属する技術分野の熟練者にとって明らかであろう。
本明細書における上記及び下記の特許、特許出願及び公開公報すべてを、参照することによりその内容を全て本明細書に取り入れる。
AP-MALDIの研究に、Bruker Esquire-LCイオントラップ質量分光計を使用した。質量分光計イオン光学系を改造し(1つのスキマー、隔壁を有する二重八極子ガイド)、器具のイオンサンプリング入口は、毛管延長部と同心の導管を備えたイオンサンプリング毛管延長部から構成した。イオンサンプリング入口は、4〜10 L/分の加熱された窒素の気体流を受容した。レーザビーム(337.1nm、10 Hz)を、単一集光レンズを介して400ミクロンのファイバにより標的に送達した。レーザパワーは、約50〜70 μJであると推定された。最大トラップ時間を質量分光計走査スペクトルに対して300 ms(レーザ放射3回)に設定し、イオン電荷制御を利用してデータを得た。各スペクトルは、400〜2200原子質量単位(AMU)に対して平均8マイクロスキャンであった。使用したマトリクスは、25%のメタノール、12%のTPA、1%の酢酸を含む67%の水の中の8mMのα-シアノ-4-ヒドロキシ-ケイ皮酸であった。マトリクス標的を予め混合し、0.5μlのマトリクス/標的混合物を金めっきされたステンレス鋼標的に適用した。使用した標的は、ウシ血清アルブミンのトリプシン消化物、並びにアンギオテンシンI及びII、ブラジキニン、フィブリノペプチドAを含む標準ペプチド混合物を含んでいた。標的付近(イオン化領域)の気相の温度は、摂氏25度であった。図9は、標的又はイオン化領域に対して加熱された気体を加えなかった場合の結果を示す。同図は、より高いm/z比において急峻なピーク(イオン増強)の存在を示していない。
加熱された気体を摂氏約100度で標的(イオン化領域)に適用したこと以外は、上記と同じように同様の標的を調製しかつ使用した。図10は、加熱された気体をイオン化領域における標的に添加した場合の結果を示す。同図は、より高いm/z比において急峻なピーク(イオン増強)の存在を示している。
1 質量分光計
2 イオン増強システム
3 イオン源
4 レーザ
5 収集毛管
6 イオン搬送システム
7 気体源
8 偏向板
9 導管
10 標的支持板
11 イオン検出器
12 ボア
13 標的
15 イオン化領域
18 主毛管
2 イオン増強システム
3 イオン源
4 レーザ
5 収集毛管
6 イオン搬送システム
7 気体源
8 偏向板
9 導管
10 標的支持板
11 イオン検出器
12 ボア
13 標的
15 イオン化領域
18 主毛管
Claims (26)
- マトリクスベースのイオン源であって、
イオン入口オリフィスを有するイオン収集毛管と、
前記イオン入口オリフィスに隣接した標的板と、
前記入口オリフィスと前記標的板の間に介在するイオン化領域と、
前記イオン化領域に気体を供給するための導管と、
前記気体を所定の温度に加熱するための気体加熱デバイスと、
イオン源内に配置され、前記気体の温度を監視するための温度センサと
を備えているマトリクスベースのイオン源。 - 前記温度センサがサーモスタットである請求項1に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記温度センサが、サーミスタ又は熱電対、抵抗温度検出器(RTD)センサからなる請求項1に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記温度センサ及び前記気体加熱デバイスが、関連して動作するように接続され、閉フィードバックループで動作し、それによって前記気体が一定の温度に維持される請求項3に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記温度センサ及び前記気体加熱デバイスが、前記加熱された気体の前記温度を表示するユーザインターフェースに関連して動作するように接続されている請求項4に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記ユーザインターフェースが、オペレータに前記加熱された気体の前記温度を変更させる請求項5に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記所定の温度が、約50℃から約250℃の範囲である請求項1に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記所定の温度が、約60℃から約200℃の範囲である請求項1に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記気体加熱デバイスが前記イオン源内に配置されている請求項1に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記マトリクスベースのイオン源が、気体源に関連して動作するように接続されている請求項1に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記気体加熱デバイスが前記イオン源の外側に配置され、前記導管に関連付けられている請求項10に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記イオン源が、13.3Pa(100 mTorr)以上で動作する請求項1に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記イオン源が大気圧で動作する請求項1に記載のマトリクスベースのイオン源。
- マトリクスベースのイオン源であって、
イオン入口オリフィスを有するイオン収集毛管と、
前記イオン入口オリフィスに隣接した標的板と、
前記イオン収集毛管と前記標的板の間に介在するイオン化領域と、
前記イオン化領域に気体を供給するための導管と、
前記気体を所定の温度に加熱するための気体加熱デバイスと、
前記イオン源における前記加熱された気体の温度を感知するためのセンサとを備え、
前記センサ及び前記気体加熱デバイスが、関連して動作するように接続され、閉フィードバックループで動作し、それによって前記加熱された気体が事前に設定された温度に維持されるマトリクスベースのイオン源。 - 前記気体加熱デバイス及び前記センサが、前記イオン源の外側にあるユーザインターフェースに連結されている請求項14に記載のマトリクスベースのイオン源。
- 前記ユーザインターフェースが、オペレータに前記加熱された気体の前記温度を変更させる請求項14に記載のマトリクスベースのイオン源。
- a)マトリクスベースのイオン源であって、
イオン入口オリフィスを有するイオン収集毛管と、
前記イオン入口オリフィスに隣接した標的板と、
前記イオン収集毛管と前記標的板の間に介在するイオン化領域と、
前記イオン化領域に加熱された気体を供給するための導管と、
前記気体を所定の温度に加熱するための気体加熱デバイスとを備えているマトリクスベースのイオン源と、
b)前記マトリクスベースのイオン源から下流側のイオン搬送システムと、
c)前記イオン搬送システムから下流側のイオン検出器と
を備えている質量分光計システム。 - 前記マトリクスベースのイオン源内に、前記加熱された気体の温度を監視するための温度センサをさらに備えている請求項17に記載の質量分光計システム。
- 前記温度センサ及び前記気体加熱デバイスが、閉フィードバックループで動作し、それによって前記加熱された気体が一定の温度に維持される請求項18に記載の質量分光計システム。
- 前記温度センサ及び前記気体加熱デバイスが、前記加熱された気体の前記温度を表示するユーザインターフェースに関連して動作するように接続されている請求項17に記載の質量分光計システム。
- 前記ユーザインターフェースが、オペレータに前記加熱された気体の前記温度を変更させる請求項20に記載の質量分光計システム。
- 前記イオン源が大気圧で動作する請求項17に記載の質量分光計システム。
- 前記イオン源が、13.3Pa(100 mTorr)以上で動作する請求項17に記載の質量分光計システム。
- マトリクスベースのイオン源でイオンを生成する方法であって、
所定の温度の気体を、マトリクスベースのイオン源のイオン化領域に導き、
試料をイオン化してイオンを生成し、
前記イオン源から前記イオンを搬送すること
を含む方法。 - 前記気体の前記温度を監視することをさらに含む請求項24に記載の方法。
- 前記気体の前記温度を変更することをさらに含む請求項24に記載の方法。
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