JP2006196294A - サージアブソーバ - Google Patents

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美紀 足立
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Abstract

【課題】 繰り返しサージを印加しても、安定した放電開始電圧を有するサージアブソーバを提供すること。
【解決手段】 放電ギャップ2を介して導電性被膜3が分割形成された円柱状セラミックス4と、円柱状セラミックス4を介して対向配置されて導電性被膜3に接触する一対の主放電電極部材5と、一対の主放電電極部材5の間に配置されて円柱状セラミックス4を内部にArによって構成された封止ガス6と共に封入する筒型セラミックス7とを備え、封止ガス6の圧力が、放電ギャップ2での放電開始電圧が最小となる圧力よりも高い圧力で封入されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、サージから様々な機器を保護し、事故を未然に防ぐのに使用するサージアブソーバに関する。
電話機、ファクシミリ、モデムなどの通信機器用の電子機器が通信線との接続する部分、電源線、アンテナ或いはCRT駆動回路など、雷サージや静電気などの異常電流(サージ電流)や異常電圧(サージ電圧)による電撃を受けやすい部分には、異常電圧によって電子機器やこの機器を搭載するプリント基板の熱的損傷または発火などによる破壊を防止するために、サージアブソーバが接続されている。
従来、例えばマイクロギャップを有するサージ吸収素子を用いたサージアブソーバが提案されている。このサージアブソーバは、導電性被膜で被覆した円柱状のセラミックス部材の周面に、いわゆるマイクロギャップが形成され、セラミックス部材の両端に一対のキャップ電極を有するサージ吸収素子が封止ガスと共にガラス管内に収容され、円筒状のガラス管の両端にリード線を有する封止電極が高温加熱で封止された放電型サージアブソーバである(例えば、特許文献1参照)。
また、機器の小型化に伴い、表面実装化が進んでいる。上記サージアブソーバに適応した例としては、面実装型(メルフ型)として、封止電極にリード線がなく、実装するときは封止電極と基板側とをハンダ付けで接続して固定するものがある(例えば、特許文献2参照)。
このサージアブソーバ150は、図17に示すように、一面に中央の放電ギャップ151を介して導電性被膜152が分割形成された板状セラミックス153と、この板状セラミックス153の両端に配置された一対の封止電極155と、これら封止電極155を両端に配して板状セラミックス153を封止ガス156と共に封止する筒型セラミックス157とを備えている。
この封止電極155は、端子電極部材158と、この端子電極部材158と電気的に接続して導電性被膜152に接触する板バネ導体159とによって構成されている。
特開平10−106712号公報 (第5頁、第1図) 特開2000−268934号公報 (第1図)
しかしながら、上記従来のサージアブソーバには、以下の課題が残されている。すなわち、上記従来のサージアブソーバでは、封止ガスがアルゴン、クリプトン、キセノンのうちの少なくとも1種を含有すると、製造条件によっては異常電流や異常電圧を加えた後における放電開始電圧が安定せず、サージアブソーバの放電開始電圧の精度を維持することが困難である。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、繰り返しサージを印加しても、安定した放電開始電圧を有するサージアブソーバを提供することを目的とする。
本発明者らは、封止ガスがアルゴン、クリプトン、キセノンのうちの少なくとも1種を含有するサージアブソーバの放電開始電圧が不安定となる原因を研究した結果、異常電流や異常電圧によって封止ガスの圧力が変動することにより、放電開始電圧が不安定となることが判明した。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
すなわち、本発明にかかるサージアブソーバは、放電ギャップを介して導電性被膜が分割形成された絶縁性部材と、該絶縁性部材を介して対向配置されて前記導電性被膜に接触する一対の主放電電極部材と、該一対の主放電電極部材の間に配置されて前記絶縁性部材をアルゴン、クリプトン、キセノンのうちの少なくとも1種を含有する封止ガスと共に封入する絶縁性管とを備えるサージアブソーバにおいて、前記封止ガスの圧力が、前記放電ギャップでの放電開始電圧が最小となる圧力よりも高いことを特徴とする。
この発明によれば、外部から侵入したサージなどの異常電流や異常電圧が、放電ギャップでの放電をトリガとし、一対の主放電電極部材の対向する面である主放電面間で主放電が行われることで吸収される。この際、封止ガスがアルゴン、クリプトン、キセノンのうちの少なくとも1種を含有していると、異常電流や異常電圧を加えることによって封止ガスの圧力が変動し、これにより放電開始電圧の変動が発生する。
この封止ガスの圧力に起因する放電開始電圧の変動は、放電ギャップでの放電開始電圧が最小となる圧力よりも高い方が、低い方と比較して小さい。そこで、封止ガスの圧力を放電開始電圧が最小となるときの圧力よりも高い圧力で封入することによって、放電開始電圧の変動を小さくすることができる。
したがって、繰り返しサージによる異常電流や異常電圧を加えても、放電開始電圧が安定し、高精度化されたサージアブソーバとすることが可能となる。
また、本発明にかかるサージアブソーバは、前記封止ガスの圧力が、前記放電開始電圧が最小となる圧力よりも1×10Pa以上高いことが好ましい。
この発明によれば、異常電流や異常電圧を加える前後の封止ガスの圧力変動が1×10〜1×10Pa程度であるため、封止ガスの圧力を放電開始電圧が最小となる圧力よりも1×10Pa以上高くすることで、繰り返し放電を行っても十分に安定した放電開始電圧を有する。
また、本発明にかかるサージアブソーバは、前記絶縁性管が、非ガラス系のセラミックス材料によって形成されていることが好ましい。
この発明によれば、絶縁性管をガラス材料よりも強度の高いセラミックス材料によって形成することで、ガラス材料と比較して大きなサージ耐量を付加させることができる。また、絶縁性管としてガラス材料を用いると、放電時に主放電面及び導電性被膜がガラス材料によってコーティングされて酸化するためにサージに対する応答性が劣化することや、放電による酸素などのガスの発生に起因する封止ガス圧の変動が発生することがあるが、絶縁性管として非ガラス系のセラミックス材料を用いることでこれらを回避することができる。
また、本発明にかかるサージアブソーバは、前記一対の主放電電極部材の主放電面に、酸化処理による酸化膜が形成されていることが好ましい。
この発明によれば、主放電面に酸化膜が形成されることによって、高温領域で化学的に安定性に優れた主放電面とすることができる。したがって、主放電時に主放電面の電極成分が飛散しマイクロギャップや絶縁性管内壁などに付着することを抑制し、サージアブソーバの長寿命化が図れる。また、この酸化膜は主放電面との付着力の優れているために、酸化膜の特性を発揮することができる。さらに、高温領域で化学的安定性に優れる高価な金属を主放電電極部材として使用する必要がないため、本発明では主放電電極部材に安価な金属材料を用いることができる。
また、本発明にかかるサージアブソーバは、前記酸化膜の平均膜厚が、0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
この発明によれば、酸化膜の平均膜厚が0.01μm以上であることで、主放電による主放電電極部材の電極成分の飛散を十分に抑制することができる。また、2.0μm以下であることで、酸化膜が飛散しやすくなることによるサージアブソーバの短寿命化を抑制することができる。
なお、サージアブソーバをより長寿命とするため、酸化膜の平均膜厚は、0.2μm以上1.0μm以下を満足することが望ましい。
また、本発明にかかるサージアブソーバは、前記主放電電極部材が、Crを含む部材であって、前記酸化膜表面にCrが表面富化されていることが好ましい。
この発明によれば、酸化膜表面に高温領域で化学的安定に優れ、高融点であり、導電性を有するCr(クロム)酸化物を富化することにより、主放電面に付着力に優れた酸化膜を形成するので、酸化膜の特性を発揮し、サージアブソーバの長寿命化を図ることができる。
ここで、富化とは、酸化膜表面の組成が、主放電電極部材のバルク組成よりも大きいことをいう。
本発明のサージアブソーバによれば、異常電流や異常電圧による封止ガスの圧力変化による放電開始電圧の変動が小さいので、繰り返し放電を行っても放電開始電圧を安定させて、高精度化され、主放電電極部材の電極成分の飛散を抑制して長寿命化されたサージアブソーバとすることができる。
以下、本発明にかかるサージアブソーバの第1の実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。
本実施形態によるサージアブソーバ1は、図1に示すように、いわゆるマイクロギャップを使用した放電型サージアブソーバであって、周面に中央の放電ギャップ2を介して導電性被膜3が分割形成された円柱状セラミックス(絶縁性部材)4と、この円柱状セラミックス4の両端に対向配置されて導電性被膜3に接触する一対の主放電電極部材5と、一対の主放電電極部材5を両端に配して、円柱状セラミックス4を内部に所望の電気特性を得るために組成などを調整された封止ガス6と共に封入する筒型セラミックス(絶縁性管)7とを備えている。
円柱状セラミックス4は、ムライト焼結体などのセラミックス材料からなり、表面に導電性被膜3として物理蒸着(PVD)法、化学蒸着(CVD)法の薄膜形成技術によるTiN(窒化チタン)が形成されている。
放電ギャップ2は、レーザカット、ダイシング、エッチングなどの加工によって0.01から1.5mmの幅で1から100本形成されるが、本実施形態では、110μmのものを1本形成している。
一対の主放電電極部材5は、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、及びCo(コバルト)の合金であるコバール(KOVAR:登録商標)で構成されている。
この一対の主放電電極部材5は、図2に示すように、それぞれ筒型セラミックス7の端面とロウ材8で接着される長方形状の周縁部5Aと、筒型セラミックス7の内側かつ軸方向に突出すると共に円柱状セラミックス4を支持する突出支持部9とを備え、突出支持部9に囲まれて円柱状セラミックス4の端部に対向する位置には中央領域5Bが形成されている。
突出支持部9は、径方向内側面と円柱状セラミックス4の端部とを圧入または嵌合させやすいように、径方向内側面がわずかにテーパ形状を有することが望ましい。また、突出支持部9の先端の互いに対向する面が主放電面9Aとされている。
封止ガス6は、Ar(アルゴン)によって構成されており、その圧力は放電開始電圧が最小となるときよりも高い圧力である、3.1×10Paで封入されている。ここで、放電開始電圧が最小となる封止ガスの圧力の導出方法については、後述する。
筒型セラミックス7は、例えばAl(アルミナ)などの非ガラス系の絶縁性セラミックスからなり、断面長方形を有し、両端面外縁が周縁部5Aの外周寸法とほぼ一致している。
次に、以上の構成からなるサージアブソーバ1の製造方法について説明する。
まず、一対の主放電電極部材5を抜き打ち加工によって所望の形状に一体成形する。
続いて、筒型セラミックス7の両端面に、ロウ材8とのぬれ性を向上させるために、例えば、Mo(モリブデン)−W(タングステン)層とNi層とを各1層ずつ備えるメタライズ層を形成する。
そして、一方の主放電電極部材5の中央領域5B上に、円柱状セラミックス4を載置して径方向内側面と円柱状セラミックス4の端面とを接触させる。その後、周縁部5Aと筒型セラミックス7の端面との間にロウ材8を挟んだ状態で、筒型セラミックス7を他方の主放電電極部材5の周縁部5A上に載置する。
さらに、円柱状セラミックス4の上方が中央領域5Bと対向するように主放電電極部材5を載置して径方向内側面と主放電電極部材5とを接触させる。そして、周縁部5Aと筒型セラミックス7の端面との間にロウ材8を挟んだ状態とする。
上述のように仮組した状態で十分に真空引きを行った後、所定圧力に調整された封止ガス雰囲気としてロウ材8が溶融するまで加熱し、ロウ材8の溶融により円柱状セラミックス4を封止し、その後急速に冷却を行う。以上のようにして、サージアブソーバ1を製造する。
このようにして製造したサージアブソーバ1を、例えば、図3に示すように、プリント基板などの基板B上に筒型セラミックス7の一側面である実装面7Aを基板B上に載置し、基板Bと一対の主放電電極部材5の外面とをハンダSによって接着固定して使用する。
次に、放電開始電圧が最小となる封止ガスの圧力の導出方法について説明する。
まず、図4に示すように、サージアブソーバ1の筒型セラミックス7に貫通孔7bを形成し、内部に封止ガス6と同様の組成を有するガスが充填されたベルジャー15内に配置する。なお、ベルジャー15の外部から一対の主放電電極部材5に放電開始電圧を計測するテスト波形の印加が可能であるように構成されている。また、ベルジャー15内のガスを排気したり、封止ガス6と同様の組成を有するガスを導入したりすることで、ベルジャー15内部のガス圧力及びガス組成を変更できるように構成されている。
そして、一対の主放電電極部材5に対して放電開始電圧を計測するテスト波形を印加して、各ガス組成及び圧力における放電開始電圧を計測することによって、放電開始電圧が最小となる封止ガスの圧力を導出する。その後、この導出結果を基に、封止ガス6のガス圧力を設定する。
本実施形態では、図5の点P1に示すように封止ガスの圧力が1.2×10Paとなるときに放電開始電圧が最小となった。また、異常電流や異常電圧に起因する封止ガスの圧力変動が1×10〜1×10Pa程度となった。したがって、封止ガス6の圧力を、図5の点P2に示す3.1×10Paとしている。
このように構成されたサージアブソーバ1によれば、封止ガス6の圧力を2.2×10Pa以上とすることで、封止ガス6がArによって構成されても、放電による封止ガス6の圧力変化に起因する放電開始電圧の変動を小さくすることができる。したがって、繰り返しサージによる異常電流や異常電圧を加えても、放電開始電圧を安定させ、高精度化されたサージアブソーバとすることができる。
また、筒型セラミックス7として非ガラス系のセラミックス材料を用いることで、ガラス材料を用いることと比較して、より大きなサージ耐量を付加させることや、放電時における主放電面9A及び導電性被膜3の酸化を防止してサージの応答性の劣化を回避することや、放電による酸素などのガスの発生に起因する封止ガスのガス圧の変動を防止することができる。
次に、第2の実施形態について、図6を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図6においては、図1と同一の構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、第2の実施形態のサージアブソーバ20では主放電面9Aに酸化膜9Bが形成されている点である。
すなわち、主放電電極部材5の主放電面9Aに大気中で500℃、30分間酸化処理を行うことにより平均膜厚0.6μmの酸化膜9Bが形成されている。
次に、以上の構成からなるサージアブソーバ20の製造方法について説明する。
まず、一対の端子電極部材5を抜き打ち加工によって所望の形状に一体成形する。そして、主放電面9Aに対し、大気中で500℃、30分間酸化処理を行うことにより平均膜厚0.6μmの酸化膜9Bを形成する。この酸化膜9Bの膜厚は、FIB(Focused Ion Beam)によって酸化膜9Bの表面に溝加工を行い、この溝断面を走査型電子顕微鏡で、例えば20箇所のように、複数箇所測定した平均値としている。
その後、第1の実施形態と同様の方法でサージアブソーバ20を製造する。
このように構成されたサージアブソーバ20によれば、上述した第1の実施形態と同様の作用、効果を有するが、主放電面9Aの酸化処理により平均膜厚0.01μm以上2.0μm以下の酸化膜9Bが形成されることで、主放電面9Aが高温領域で化学的(熱力学的)に安定した特性とすることができる。また、この酸化膜9Bは主放電電極部材5との付着力が優れているため、酸化膜9Bの特性を発揮することができる。このため、主放電時に主放電電極部材5の金属成分が放電ギャップ2や筒型セラミックス7の内壁などへの飛散を十分に抑制することができる。したがって、サージアブソーバの長寿命化を図れる。
次に、第3の実施形態について、図7を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図7においては、図1と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
第3の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、第1の実施形態では主放電電極部材5の突出支持部9によって円柱状セラミックス4が支持された構成であるのに対して、第5の実施形態におけるサージアブソーバ30は、主放電電極部材31が第1の実施形態における主放電電極部材5と同様の形状である端子電極部材32とキャップ電極33とを有しており、円柱状セラミックス4がキャップ電極33を介して端子電極部材32に設けられた突出支持部34に支持されている点である。
一対のキャップ電極33は、円柱状セラミックス4よりも硬度が低く、塑性変形できる、例えばステンレスなどの金属からなり、外周部が端子電極部材32の突出支持部34の先端よりも軸方向内方に延びて断面略U字状に形成され、互いに対向する面が主放電面33Aとされている。
次に、以上の構成からなるサージアブソーバ30の製造方法について説明する。
まず、一対の端子電極部材32に対し焼鈍処理を施した後、抜き打ち加工によって一体成形する。
その後、一対のキャップ電極33を円柱状セラミックス4の両端に係合させ、第1の実施形態と同様の方法でサージアブソーバ30を製造する。
このように構成されたサージアブソーバ30は、上述した第1の実施形態におけるサージアブソーバ1と同様の作用、効果を有するが、円柱状セラミックス4よりも硬度の低いキャップ電極33が円柱状セラミックス4と突出支持部34との両面に密着して良好な接触面が得られる。これにより、十分なオーミックコンタクトを得ることができ、サージアブソーバ30の放電開始電圧などの電気特性が安定する。
次に、第4の実施形態について、図8を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第3の実施形態と同様であり、上述の第3の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図8においては、図7と同一の構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
第4の実施形態と第3の実施形態との異なる点は、第4の実施形態のサージアブソーバ40では、第2の実施形態と同様に、主放電面33Aに酸化膜33Bが形成されている点である。
キャップ電極33が例えば18−8ステンレスの場合、この一対のキャップ電極33の表面に所定酸素濃度に制御された還元雰囲気で700℃、40分間酸化処理を行うことにより、表面にCrが富化した酸化膜33Bが0.6μm形成されている。
以上の構成からなる18−8金属キャップを使用したサージアブソーバ40の製造方法について説明する。
まず、上述した第3の実施形態と同様に、一対の端子電極部材32に対し焼鈍処理を施した後、抜き打ち加工によって一体成形する。
そして、一対のキャップ電極33の表面に、所定酸素濃度に制御された還元雰囲気で700℃、40分間酸化処理を行うことにより酸化膜表面にCrが10mol%以上に富化した平均膜厚0.6μmの酸化膜33Bを形成させる。ここで、酸化膜33B表面のCr富化は、オージェ分光分析による表面分析にて、例えば5箇所のように複数箇所測定した平均値を得ることで確認している。
その後、上述した第3の実施形態と同様の方法でサージアブソーバ40を製造する。
このように構成されたサージアブソーバ40によれば、上述した第3の実施形態と同様の作用、効果を有するが、主放電面33Aに酸化膜33Bが形成されていることによって、サージアブソーバの長寿命化が図れる。
次に、第5の実施形態について、図9を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図9においては、図1と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
第5の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、第1の実施形態では主放電電極部材5が一体的に形成された突出支持部9を有しているのに対して、第5の実施形態におけるサージアブソーバ50では、図9(a)に示すように、主放電電極部材51が平板状となっている点である。
そして、この一対の主放電電極部材51の互いに対向する内面には、ロウ材53が塗布されている。
このロウ材53は、図9(b)に示すように、一対の主放電電極部材51と円柱状セラミックス4との接触面に形成された間隙54を埋める充填部55と、円柱状セラミックス4の両端で円柱状セラミックス4の外周面を保持する保持部56とを備えている。なお、この間隙54は、一対の主放電電極部材51と円柱状セラミックス4とに寸法精度、傷、加工時の変形などによって発生した凹凸によって形成されたものである。
保持部56は、主放電電極部材51と円柱状セラミックス4とを接触させた際に、ロウ材53が円柱状セラミックス4の外周面を覆うように盛り上がることによって形成されている。
なお、この保持部56の盛り上がり高さhは、主放電電極部材51の端面から盛り上がり最上部までの寸法であり、この最上部が主放電部となるために、所定の寿命特性によって規定されている。
次に、以上の構成からなるサージアブソーバ50の製造方法について説明する。
まず、主放電電極部材51の一面に保持部56を形成するのに十分な量のロウ材53を塗布し、主放電電極部材51の中央領域上に、円柱状セラミックス4を載置して主放電電極部材51と円柱状セラミックス4とを接触させる。そして、筒型セラミックス7の端面を載置する。
さらに、筒型セラミックス7のもう一方の端面にロウ材53が塗布されたもう一方の主放電電極部材51を載置することで仮組みの状態とする。
続いて、封止工程について説明する。上述のように仮組みした状態の素子を所定圧力に調整された封止ガス雰囲気中で加熱処理することで、ロウ材53が溶融し、主放電電極部材51と円柱状セラミックス4とが密着する。このとき、溶融によりロウ材53の充填部55が、円柱状セラミックス4と主放電電極部材51との間に存在する間隙54を埋める。また、ロウ材53の表面張力により形成された保持部56が、円柱状セラミックス4の両端部を埋め込むようにして保持する。
その後、上述した第1の実施形態と同様に冷却工程を行ってサージアブソーバ50を製造する。
このように構成されたサージアブソーバ50は、上述した第1の実施形態におけるサージアブソーバ1と同様の作用、効果を有するが、寸法精度、傷、加工時の変形などによって主放電電極部材51と円柱状セラミックス4との接触面に形成された間隙54をロウ材53で埋めることにより、主放電電極部材51と円柱状セラミックス4との接触面積が増大する。これにより、十分なオーミックコンタクトを得ることができ、サージアブソーバ50の放電開始電圧などの電気特性が安定する。
なお、本実施形態において、ロウ材53と同じ部材によって保持部56及び充填部55を形成していたが、充填部55がロウ材53とは異なる材料によって形成されていてもよく、例えば活性銀ロウのように円柱状セラミックス4と主放電電極部材51とを接着可能である導電性の接着剤であってもよい。このようにすることで、円柱状セラミックス4と主放電電極部材51とが接着し、主放電電極部材51と導電性被膜3とのより十分なオーミックコンタクトを得ることができる。したがって、サージアブソーバ50の放電開始電圧などの電気特性が安定する。
また、保持部56も充填部55と同様にロウ材53とは異なる材料で形成されてもよく、例えばロウ材53や活性銀ロウに対してぬれにくいガラス材を用いてもよい。このようにすることで、円柱状セラミックス4がより確実に主放電電極部材51の中央付近またはその周辺部に固定される。
次に、第6の実施形態について、図10を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第5の実施形態と同様であり、上述の第5の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図10においては、図9と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
第6の実施形態と第5の実施形態との異なる点は、第5の実施形態では平板状の主放電電極部材51のみによって構成されているのに対して、第6の実施形態におけるサージアブソーバ60では、図10(a)に示すように、主放電電極部材61が平板状の端子電極部材62とキャップ電極33とで構成されている点である。
ロウ材53は、図10(b)に示すように、一対の端子電極部材62とキャップ電極33との接触面に形成された間隙54を埋める充填部55と、キャップ電極33の両端でキャップ電極33の外周面を保持する保持部56とを備えている。
なお、保持部56の高さhは、キャップ電極33の高さよりも低く形成されている。これにより、キャップ電極33の互いに対向する面が、主放電面33Aとなる。
次に、以上の構成からなるサージアブソーバ60の製造方法について説明する。
まず、上述した第3の実施形態と同様に一対のキャップ電極33を形成し、円柱状セラミックス4の両端に係合させる。
その後、一対のキャップ電極33を円柱状セラミックス4の両端に係合させ、第6の実施形態と同様の方法でサージアブソーバ60を製造する。
このように構成されたサージアブソーバ60は、上述した第5の実施形態におけるサージアブソーバ50と同様の作用、効果を有する。
なお、本実施形態において、上述した第5の実施形態と同様に、充填部55がロウ材53とは異なる材料によって形成されていてもよく、例えば活性銀ロウのようにキャップ電極33と端子電極部材62とを接着可能である導電性の接着剤であってもよい。
さらに、保持部56も充填部55と同様にロウ材53とは異なる材料で形成されてもよく、例えばロウ材53や活性銀ロウに対してぬれにくいガラス材を用いてもよい。
次に、第7の実施形態について、図11を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第6の実施形態と同様であり、上述の第6の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図11においては、図10と同一の構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
第7の実施形態と第6の実施形態との異なる点は、第7の実施形態のサージアブソーバ70では、第4の実施形態と同様に、主放電面33Aに酸化膜33Bが形成されている点である。
キャップ電極33が例えば18−8ステンレスの場合、この一対のキャップ電極33の表面に所定酸素濃度に制御された還元雰囲気で700℃、40分間酸化処理を行うことにより、表面にCrが富化した酸化膜33Bが0.6μm形成されている。
このように構成されたサージアブソーバ70によれば、上述した第6の実施形態と同様の作用、効果を有するが、主放電面33Aに酸化膜33Bが形成されていることによって、サージアブソーバの長寿命化が図れる。
次に、第8の実施形態について、図12を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図12においては、図1と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
第8の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、第1の実施形態では主放電電極部材5が一体的に形成された突出支持部9を有し、円柱状セラミックス4をこの突出支持部9に圧入または嵌合させているのに対して、第8の実施形態におけるサージアブソーバ80は、主放電電極部材81が端子電極部材62と、突出支持部材82とで構成されている点である。
突出支持部材82は、ほぼ有底円筒形状を有しており、底面82Aの中央に開口82Bが形成されている。この開口82Bの開口径は、円柱状セラミックス4よりもやや小さく形成されている。そして、円柱状セラミックス4を開口82Bに挿通して底面82Aを軸方向外方に向かって弾性的に屈曲させることで、突出支持部材82と導電性被膜3との良好なオーミックコンタクトが得られるように構成されている。
なお、この一対の突出支持部材82の互いに対向する面である底面82Aが主放電面となっている。
このように構成されたサージアブソーバ80は、上述した第1の実施形態におけるサージアブソーバ1と同様の作用、効果を有する。
なお、本実施形態において、上述した第2、4、7の実施形態と同様に、主放電面である底面82Aの表面に酸化処理による酸化膜を形成してもよい。このようにすることで、サージアブソーバの長寿命化が図れる。
次に、第9の実施形態について、図13を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図13においては、図1と同一構成要素に同一符号をし、この説明を省略する。
第9の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、第1の実施形態では基板上に載置される面実装型のサージアブソーバであるのに対して、第9の実施形態におけるサージアブソーバ90はリード線を備えたサージアブソーバとなっている点である。
すなわち、サージアブソーバ90は、導電性被膜3が分割形成された円柱状セラミックス4と、この円柱状セラミックス4の両端に配置された主放電電極部材91と、この主放電電極部材91と共に円柱状セラミックス4を封止するガラス管92とを備えている。
主放電電極部材91は、キャップ電極95と、キャップ電極95の後端から延出するリード線96とを備えている。
この一対のキャップ電極95の互いに対向する面が主放電面95Aとなっている。
ガラス管92は、円柱状セラミックス4及び一対のキャップ電極95を覆うように配置され、両端からリード線96が突出している。
このように構成されたサージアブソーバ90は、上述した第1の実施形態におけるサージアブソーバ1と同様に、繰り返しサージを印加しても、安定した放電開始電圧を有する。
なお、本実施形態において、上述した第2、4、7の実施形態と同様に、主放電面95Aの表面に酸化処理による酸化膜を形成してもよい。このようにすることで、サージアブソーバの長寿命化が図れる。
次に、第10の実施形態について、図14を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第9の実施形態と同様であり、上述の第9の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図14においては、図13と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
第10の実施形態と第9の実施形態との異なる点は、第9の実施形態では導電性被膜3が分割形成された円柱状セラミックス4の両端にキャップ電極95が配置されているのに対して、第10の実施形態におけるサージアブソーバ100は、一面上に放電ギャップ101を介して導電性被膜102が分割形成された板状セラミックス(絶縁性部材)103の両端に、この板状セラミックス103を挟持する主放電電極部材104が配置されている点である。
主放電電極部材104は、導電性被膜102に接触すると共に板状セラミックス103を挟持するクリップ電極105と、クリップ電極105の後端に設けられたリード線96とを備えている。
クリップ電極105の互いに対向する面が主放電面105Aとなっている。そして、このクリップ電極105が、板状セラミックス103を挟持することによって、導電性被膜102とクリップ電極105との良好なオーミックコンタクトが得られるように構成されている。
このように構成されたサージアブソーバ100は、上述した第9の実施形態におけるサージアブソーバ90と同様の作用、効果を有する。
なお、本実施形態において、上述した第2、4、7の実施形態と同様に、主放電面105Aの表面に酸化処理による酸化膜を形成してもよい。このようにすることで、サージアブソーバの長寿命化が図れる。
次に、本発明にかかるサージアブソーバを、実施例により具体的に説明する。
上述した第7の実施形態におけるサージアブソーバ70と、Ar封止ガスの圧力が放電ギャップでの放電開始電圧が最小となる圧力とほぼ同一である従来のサージアブソーバとを、それぞれ基板などに実装して使用した際の寿命を比較した。
具体的には、実施例として、図15に示すようなサージ電流を繰り返しサージアブソーバに所定回数印加して、そのときのギャップ間での放電開始電圧(V)を測定した結果を図16に示す。
従来のサージアブソーバは、サージ電流を繰り返し印加されると、Ar封止ガスのガス圧力が変動し、放電開始電圧が安定しない。一方、本発明にかかるサージアブソーバ70は、封止ガスの圧力が放電ギャップでの放電開始電圧が最小となる圧力よりも高いために、サージ電流を繰り返し印加しても放電開始電圧が安定している。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、図17のサージアブソーバにおいて、放電開始電圧が最小となるときよりも高い圧力で封止ガスを封入してもよい。このようにしても上述と同様の作用、効果を有する。ここで、板バネ導体159の互いに対向する面である主放電面に酸化膜を形成してもよい。このようにすることで、サージアブソーバの長寿命化が図れる。
また、封止ガスは、Ar、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)のうちの少なくとも1種を含有していればよく、所望の電気特性を得るために、これらを混合することによって組成などを調整してもよい。ここで、封止ガスとして、上記3種のうちの少なくとも1種に、例えば、N(窒素)、Ne(ネオン)、He(ヘリウム)、H(水素)、SF、CF、C、C、CO(二酸化炭素)など、及びこれらの混合ガスを混合したものであってもよい。また、封止ガスの圧力は、上述した導出方法によって求めた放電開始電圧が最小となる封止ガスの圧力よりも高い圧力によって封入されていればよい。ここで、封止ガスの圧力の最大値は、絶縁性管の強度によって変化する。
また、導電性被膜は、Ag(銀)、Ag(銀)/Pd(パラジウム)合金、SnO(酸化スズ)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、SiC(炭化シリコン)、BaAl(バリウム・アルミナ)、C(炭素)、Ag(銀)/Pt(白金)合金、TiO(酸化チタン)、TiC(炭化チタン)、TiCN(炭窒化チタン)などでもよい。
また、主放電電極部材は、CuやNi系の合金でもよい。
また、筒型セラミックス両端面のメタライズ層は、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)でもよく、また、メタライズ層を用いず活性金属ロウ材だけで封止してもよい。
本発明の第1の実施形態におけるサージアブソーバを示す断面図である。 図1の主放電電極部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X線矢視断面図である。 図1のサージアブソーバを基板上に実装したときの断面図である。 封止ガスの圧力と放電開始電圧との関係を測定する方法の説明図である。 図1のサージアブソーバの封止ガスの圧力と放電開始電圧との関係を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態におけるサージアブソーバを示す断面図である。 本発明の第3の実施形態におけるサージアブソーバを示す断面図である。 本発明の第4の実施形態におけるサージアブソーバを示す断面図である。 本発明の第5の実施形態におけるサージアブソーバを示すもので、(a)は断面図、(b)は端子電極部材とキャップ電極との接触部分の拡大図である。 本発明の第6の実施形態におけるサージアブソーバを示すもので、(a)は断面図、(b)は端子電極部材とキャップ電極との接触部分の拡大図である。 本発明の第7の実施形態におけるサージアブソーバを示すもので、(a)は断面図、(b)は端子電極部材とキャップ電極との接触部分の拡大図である。 本発明の第8の実施形態におけるサージアブソーバを示す断面図である。 本発明の第9の実施形態におけるサージアブソーバを示す断面図である。 本発明の第10の実施形態におけるサージアブソーバを示す断面図である。 本発明の実施例におけるサージ電流の時間と電流値との関係を示すグラフである。 本発明の実施例におけるサージアブソーバの放電回数と放電開始電圧との関係を示すグラフである。 従来のサージアブソーバを示す断面図である。
符号の説明
1、20、30、40、50、60、70、80、90、100 サージアブソーバ
2、101 放電ギャップ
3、102 導電性被膜
4 円柱状セラミックス(絶縁性部材)
5、31、51、61、81、91、104 主放電電極部材
6 封止ガス
7 筒型セラミックス(絶縁性管)
9A、33A、95A、105A 主放電面
9B、33B、 酸化膜
82A 底面(主放電面)
92 ガラス管
103 板状セラミックス(絶縁性部材)

Claims (6)

  1. 放電ギャップを介して導電性被膜が分割形成された絶縁性部材と、該絶縁性部材を介して対向配置されて前記導電性被膜に接触する一対の主放電電極部材と、該一対の主放電電極部材の間に配置されて前記絶縁性部材をアルゴン、クリプトン、キセノンのうちの少なくとも1種を含有する封止ガスと共に封入する絶縁性管とを備えるサージアブソーバにおいて、
    前記封止ガスの圧力が、前記放電ギャップでの放電開始電圧が最小となる圧力よりも高いことを特徴とするサージアブソーバ。
  2. 前記封止ガスの圧力が、前記放電開始電圧が最小となる圧力よりも1×10Pa以上高いことを特徴とする請求項1に記載のサージアブソーバ。
  3. 前記絶縁性管が、非ガラス系のセラミックス材料によって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のサージアブソーバ。
  4. 前記一対の主放電電極部材の主放電面に、酸化処理による酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のサージアブソーバ。
  5. 前記酸化膜の平均膜厚が、0.01μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のサージアブソーバ。
  6. 前記主放電電極部材が、Crを含む部材であって、前記酸化膜表面にCrが表面富化されていることを特徴とする請求項4または5に記載のサージアブソーバ。
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