JP2006191844A - 標的核酸含有量推定方法、プログラム、並びにシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】
一種類の検出用核酸に複数種類の標的核酸がハイブリダイゼーションする場合にも標的遺伝子の発現量を推定できる手段を提供すること。
【解決手段】
基板表面に設けられた反応領域に固定された検出用核酸と、前記検出用核酸とハイブリダイゼーションする標的核酸とのハイブリダイゼーション測定値からサンプル中における標的核酸含有量を推定する方法であって、一つの検出用核酸と複数の標的核酸とのそれぞれの結合強度を用いて、前記ハイブリダイゼーション測定値における、各標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することにより、サンプル中における標的核酸含有量を推定する方法を提供する。
【選択図】 図3
一種類の検出用核酸に複数種類の標的核酸がハイブリダイゼーションする場合にも標的遺伝子の発現量を推定できる手段を提供すること。
【解決手段】
基板表面に設けられた反応領域に固定された検出用核酸と、前記検出用核酸とハイブリダイゼーションする標的核酸とのハイブリダイゼーション測定値からサンプル中における標的核酸含有量を推定する方法であって、一つの検出用核酸と複数の標的核酸とのそれぞれの結合強度を用いて、前記ハイブリダイゼーション測定値における、各標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することにより、サンプル中における標的核酸含有量を推定する方法を提供する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、DNAチップなどバイオアッセイ用基板を用いて得られたハイブリダイゼーション測定値などの規格化又は標準化、解析、補正に係わる技術分野に属する。
近年、DNAチップ若しくはDNAマイクロアレイ(以下、本願では「DNAチップ」とする。)の実用化が進んでいる。DNAチップは、多種・多数のDNAオリゴ鎖を、検出用核酸として基板表面に集積して固定したものである。DNAチップを用いて、DNAチップ基板表面の検出用核酸と細胞・組織などより採取した標的核酸とのハイブリダイゼーションを測定することにより、細胞・組織などにおける遺伝子発現などを網羅的に解析することができる。
検出用核酸は、一種類の標的核酸とのみハイブリダイゼーションする塩基配列であることが望ましい。しかしながら、検出用核酸の塩基配列は標的核酸よりも短い場合が多いため、検出用核酸の設計において、目的の標的核酸以外の全ての標的核酸と全く相同性のない配列を探索することは難しい。従って、実際には、DNAチップを用いたハイブリダイゼーション測定において、一種類の検出用核酸に複数種類の標的核酸がハイブリダイゼーションする場合がある。
それに対し、例えば、目的の標的核酸を認識できる、塩基配列の異なる複数の検出用核酸を基板表面に固定したり、検出用核酸の塩基配列に1〜数塩基分の点変異を加えたりすることにより、目的の標的核酸の認識精度を高める試みが行われている。
なお、本発明に関する先行文献として、例えば、以下のものが挙げられる。
特表2001−514907号公報
特表2003−532367号公報
上記のように、一種類の検出用核酸に複数種類の標的核酸がハイブリダイゼーションする場合、標的遺伝子の発現量を推定できないという問題があった。例えば、ハイブリダイゼーション測定を蛍光強度に基づいて行う場合、一般的には、蛍光強度と遺伝子発現量が比例していると推定できる。しかしながら、一種類の検出用核酸に複数種類の標的核酸がハイブリダイゼーションする場合、蛍光強度がどの標的核酸に基づくものなのか推定できないため、蛍光強度に基づいた標的遺伝子発現量の推定を行うことが難しかった。
また、一種類の検出用核酸に複数種類の標的核酸がハイブリダイゼーションする場合の中でも、検出用核酸と各標的核酸との結合性にはそれぞれ差があるため、蛍光強度に単純な補正を加えることにより、標的遺伝子の発現量を推定することも難しかった。
そこで、本発明は、一種類の検出用核酸に複数種類の標的核酸がハイブリダイゼーションする場合にも標的遺伝子の発現量を推定できる手段を提供することを主な目的とする。
本発明では、基板表面に設けられた反応領域に固定された検出用核酸と、前記検出用核酸とハイブリダイゼーションする標的核酸とのハイブリダイゼーション測定値からサンプル中における標的核酸含有量を推定する方法であって、一つの検出用核酸と複数の標的核酸のそれぞれとの間における各結合強度を用いて、前記ハイブリダイゼーション測定値における、各標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することにより、サンプル中における標的核酸含有量を推定する方法を提供する。
この方法は、例えば、複数の反応領域で測定された各ハイブリダイゼーション測定値と、前記複数の反応領域に固定された各検出用核酸のそれぞれに係わる、前記一つの検出用核酸と複数の標的核酸のそれぞれとの間における各結合強度とを用いて、標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することにより、サンプル中における複数の標的核酸含有量を網羅的に推定することができる。
ここで、結合強度は、一つの検出用核酸と複数の標的核酸のそれぞれとの間における結合性(親和性)を示す数値であり、一つの検出用核酸と複数の標的核酸との結合性の度合いをそれぞれ測定することにより得ることができる。また、一つの検出用核酸の塩基配列と複数の標的核酸の塩基配列との間におけるそれぞれの相補性の度合いを探索することにより取得してもよい。
なお、本発明において、サンプル中における標的核酸含有量とは、採取した試料からRNAを取得・調製した場合は遺伝子発現量をいい、採取した試料からDNAゲノムを取得・調製した場合は、標的ゲノムの含有量をいう。
その他、本発明に係る方法は、プログラムで記述することにより、自動化できる。また、本発明は、システム化することができる。
以下、定義づけを行う。
「ハイブリダイゼーション」は、相補的な塩基配列構造を備える核酸間の相補鎖(二本鎖)形成反応を意味する。
「ハイブリダイゼーション測定値」は、DNAチップの基板表面に固定された検出用核酸と、前記検出用核酸とハイブリダイゼーションする標的核酸とのハイブリダイゼーション量を、蛍光強度などにより測定した実測値(測定データ)、及び、その値に基づいて取得した遺伝子発現量の推定値をいう。
「核酸」とは、プリンまたはピリミジン塩基と糖がグリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステルの重合体(ヌクレオチド鎖)を意味し、プローブDNAを含むオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチオドが重合したDNA(全長あるいはその断片)、逆転写により得られるcDNA(cプローブDNA)、RNA、ポリアミドヌクレオチド誘導体(PNA)等を広く含む。
「検出用核酸」とは、反応領域に貯留又は保持された媒質中に固定又は遊離の状態で存在し、当該核酸分子と特異的に相互作用する相補的塩基配列を有する核酸分子を検出するための探り針(検出子)として機能する核酸分子である。代表例は、DNAプローブなどのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。「標的核酸」は、細胞から取得されたサンプル核酸のうち、前記検出用核酸とハイブリダイゼーションする核酸である。
本発明により、一種類の検出用核酸に複数種類の標的核酸がハイブリダイゼーションする場合にもサンプル中における標的核酸含有量(例えば遺伝子発現量など)を推定できる。
本発明を実施するための好適な形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載する実施形態は、DNAチップの基板表面に固定された検出用核酸と採取した試料から取得したサンプル核酸中の標的核酸とのハイブリダイゼーション量を蛍光強度により取得した場合について例示したものであるが、本発明の範囲は、これによって狭く解釈されない。
はじめに、図1から図5を用いて、本発明に係るサンプル中における標的核酸含有量(遺伝子発現量など)の推定方法の概要について説明する。
図1は、DNAチップを用いたハイブリダイゼーション測定手順の一例を模式的に示した図である。
DNAチップの基板表面11には、多種・多数の検出用核酸12が固定されている。DNAチップを用いたハイブリダイゼーション測定の際には、まず、個体13より採取した試料からサンプル核酸14を抽出・調製などし、次に、サンプル核酸14をDNAチップの基板表面11に滴下・注入などする(矢印15)。そして、検出用核酸12とサンプル核酸14中に含まれる標的核酸とのハイブリダイゼーション量を、蛍光強度などにより測定する。
図2は、ハイブリダイゼーション測定値とサンプル中における標的核酸含有量との関係を模式的に示した図である。
検出用核酸21が標的核酸22とのみハイブリダイゼーションする場合、検出用核酸21に係るハイブリダイゼーション測定値p1は「数1」に示す式で表すことができる。即ち、サンプル中における標的核酸22の含有量(遺伝子発現量など)g1は、ハイブリダイゼーション測定値p1と、検出用核酸21と標的核酸22の結合強度a1 1から取得することができる。
しかしながら、一般に検出用核酸は標的核酸よりも塩基配列が短いため、例えば、検出用核酸21の塩基配列と、標的核酸22以外の他の核酸23の塩基配列の一部(又は全部)とが相補性を有する場合がある。その場合における、検出用核酸21に係るハイブリダイゼーション測定値は「数2」に示す式で表される。「数2」の式では、ハイブリダイゼーション測定値p1とサンプル中における標的核酸22の含有量(遺伝子発現量など)g1とが比例しないため、ハイブリダイゼーション測定値p1と結合強度a1 1とから、サンプル中における標的核酸21の含有量(遺伝子発現量など)g1を取得することはできない。
なお、図2において、核酸23は検出用核酸24の標的核酸であり、結合強度a2 2は検出用核酸24と標的核酸23との結合強度を表している。また、g2はサンプル中における標的核酸23の含有量、p2は検出用核酸24に係るハイブリダイゼーション測定値である。
図3は、ハイブリダイゼーション測定値を、サンプル中における各標的核酸含有量に結合強度を乗じたものの総和として表すことができることを示した模式図である。
例えば、DNAチップの基板表面に固定されたn個の検出用核酸のうち、ある特定の検出用核酸iの塩基配列と、前記n個の検出用核酸のそれぞれに係る標的核酸gnの塩基配列との、それぞれの相補性の度合いを結合強度ai nとした場合、ある特定の検出用核酸iに係るハイブリダイゼーション測定値Piは、「数3」で示す式で表される。
上記式が示すように、一つの検出用核酸と複数の標的核酸とのそれぞれの結合強度ai nを用いて、ハイブリダイゼーション測定値Piにおける、各標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することにより、サンプル中における標的核酸含有量gnを推定することができる。
図4は、本発明に係るサンプル中における標的核酸含有量(遺伝子発現量など)の推定方法の一例のフローを示す図である。なお、本フローは、プログラムで記述することにより自動化できる。
前記の通り、ある特定の検出用核酸iに係るハイブリダイゼーション測定値Piは、図4中の符号41に示す式で表すことができる。この式は、全てのハイブリダイゼーション測定値(p1〜pn)について、一つの行列形式として表すことができる(符号42)。なお、符号42に示す式中、pはハイブリダイゼーション測定値(p1〜pn)を、sはスケールを、Aは結合強度行列(a1 1〜am n)を、gはサンプル中における各標的核酸含有量(g1〜gn)を、それぞれ示す。
符号42に示す式について、両辺の左からそれぞれ結合強度行列Aの逆行列A−1を乗ずることにより、サンプル中における各標的核酸含有量gを取得する行列形式(「数4」で示す式)を得ることができる。即ち、複数のハイブリダイゼーション測定値p(p1〜pn)と結合強度行列Aから、サンプル中における各標的核酸含有量g(g1〜gn)を取得する行列形式を得ることができる。
但し、結合強度行列Aは、多くの場合、正方行列(m=n)ではないため、一般的には逆行列が存在しない。そこで、特異値分解(A=UDtV)で、結合強度行列Aの一般逆行列A−1を取得し(符号43)、サンプル中における各標的核酸含有量gを推定する(符号44)。
以上のように、複数の反応領域で測定された各ハイブリダイゼーション測定値pと、前記複数の反応領域に固定された各検出用核酸のそれぞれに係わる、前記一つの検出用核酸と複数の標的核酸とのそれぞれの結合強度Aとを用いて、標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することにより、サンプル中における複数の標的核酸含有量gを網羅的に推定することができる。
図5は、図4に示した、サンプル中における標的核酸含有量g(遺伝子発現量など)の推定方法において、ハイブリダイゼーション測定値pの誤差によって、標的核酸含有量gの推定値が負数になった場合の取り扱いの一例を示すフロー図である。図中、「S」はフローの始点(スタート)を、「E」はフローの終点(エンド)を示している(以下同じ)。なお、この方法に係るステップは、プログラムで記述することにより自動化できる。
ハイブリダイゼーション測定値pからサンプル中における標的核酸含有量g(遺伝子発現量など)の推定する場合、前記の通り、特異値分解(A=UDtV)で、結合強度行列Aの一般逆行列A−1を取得し(符号51)、サンプル中における各標的核酸含有量gを推定する(符号52)。
符号52のステップにおいて、標的核酸含有量gの最小値giが負数の場合(符号53)、符号T(True)へ進む。そして、まず、標的核酸含有量gから最小値giを省き(符号54)、結合強度行列Aからi列の要素を省いた上で(符号55)、スケールsの再計算を行う(符号56)。次に、最初のステップ(符号51)に戻り、再計算により得られたスケールsを用いて、再度、サンプル中における各標的核酸含有量gを求める(符号52)。
前記処理は、標的核酸含有量gの最小値giが正数になるまで繰り返す。そして、最小値giが正数になった時点で、符号F(False)へ進み、上記処理を終了する。標的核酸含有量gは、最小値giが正数になった時点における数値を採用する。
続いて、図6から図9を用いて、結合強度の取得方法について、説明する。結合強度の取得方法として、例えば、(1)BLASTを用いた方法、(2)標的核酸の塩基配列上に検出用核酸の塩基配列をシフトさせる方法(図6、図7)、(3)測定により結合強度を取得する方法(図8、図9)がある。以下、順に説明する。
まず、(1)BLASTを用いた方法について説明する。前記の通り、結合強度は、ある特定の検出用核酸と複数の標的核酸との結合性の度合いをそれぞれ数値化したものである。核酸同士の結合は塩基間の相補結合と相関するため、結合強度は、検出用核酸の塩基配列と標的核酸の塩基配列とが相補的になっている割合に比例すると推定される。そこで、例えば、BLASTなどの公開された塩基配列検索システムを用いて、各検出用核酸の塩基配列と複数の標的核酸の塩基配列との相補性の割合をそれぞれ算出することにより、結合強度を取得することができる。
次に、(2)標的核酸の塩基配列上に検出用核酸の塩基配列をシフトさせる方法について、図6及び図7を用いて説明する。この方法も、前記と同様、結合強度が、検出用核酸の塩基配列と標的核酸の塩基配列とが相補的になっている割合に比例するという推定に基づく方法である。なお、この方法に係るステップは、プログラムで記述することにより自動化できる。
図6は、標的核酸の塩基配列上に検出用核酸の塩基配列をシフトさせる様子を模式的に示した図である。まず、検出用核酸61の塩基配列と、検出用核酸61と向かい合う標的核酸62上の領域63の塩基配列との相補性を探索し、塩基配列が相補的になっていた数をカウントする。次に、検出用核酸61を矢印64方向に一塩基分移動(シフト)させ、また、検出用核酸61の塩基配列と、シフト後の標的核酸62上の領域63の塩基配列が相補的になっていた数をカウントする。順次矢印64方向にシフトさせながら、両塩基配列の相補性を探索し、塩基配列が相補的になっていた数を全てカウントした後、全カウントを合計して、結合強度の指標とする。
図7は、図6に示した方法を数式化した図である。図7に示すとおり、検出用核酸上の塩基と標的核酸上の塩基の組み合わせが相補的であったとき(AとT、GとCの組み合わせ)、塩基対の組み合わせに基づく値Eが1カウントされ、それ以外の場合はカウントされない。そして、変数sにより標的核酸上をシフトさせ、相補的な組み合わせをカウントし、全カウントを合計して、結合強度ai jを得る。なお、Wは、長さに依存した重み値である。
次に、(3)測定により結合強度を取得する方法について、図8および図9を用いて説明する。
図8は、特定の標的核酸gjを用いて結合強度を取得する方法の一例を示すフロー図である。
本フローは、特定の標的核酸gjを合成し、n回分に分注する段階(符号81、82)、各検出用核酸と特定の標的核酸gjとのハイブリダイゼーションを測定する段階(符号83)、各検出用核酸に係るハイブリダイゼーション測定値(蛍光強度)を、全ハイブリダイゼーション測定値の総和で規格化する段階(符号84)、符号83及び符号84の段階をn回繰り返し、得られた規格化後の各検出用核酸に係るハイブリダイゼーション測定値の平均値を、それぞれの結合強度ai j・sjとする段階(符号85)からなる。
図9は、標的核酸g1〜gnを用いて結合強度行列を取得する方法を示した模式図である。
まず、標的核酸g1〜gn(符号91)について、それぞれ、各検出用核酸と標的核酸とのハイブリダイゼーションを測定し(符号92)、標的核酸g1〜gnごとの結合強度ai nを取得する。次に、それぞれの結合強度について、全ハイブリダイゼーション測定値の総和で規格化し(符号93)、規格化後の結合強度sai nを取得する(符号94)。そして、取得した規格化後の結合強度sai nを、結合強度行列(図4中のsA)とする。
続いて、図10から図13を用いて、ノイズがある場合における標的核酸含有量の推定方法について説明する。
図10は、ノイズがある場合のハイブリダイゼーション測定値とサンプル中における核酸の含有量との関係を模式的に示した図である。
例えば、サンプル核酸中に標的核酸101、102以外の核酸103が含有している場合、いずれかの検出用核酸104と標的核酸以外の核酸103とが一部(又は全長にわたって)ハイブリダイゼーションし、ノイズが発生する場合がある。その場合における、検出用核酸104に係るハイブリダイゼーション測定値は「数5」に示す式で表される。
なお、図10において、結合強度a2 2は検出用核酸105と標的核酸102との結合強度を表している。
図11は、ノイズがある場合に、ハイブリダイゼーション測定値を、サンプル中における各標的核酸及び標的核酸以外の核酸の含有量に結合強度を乗じたものの総和として表すことができることを示した模式図である。
例えば、DNAチップの基板表面に固定されたn個の検出用核酸のうち、ある特定の検出用核酸iの塩基配列と、ノイズとなる核酸ciの塩基配列との、相補性の度合いを結合強度ai 0とした場合、ある特定の検出用核酸iに係るハイブリダイゼーション測定値Piは、「数6」で示す式で表される。
図12及び図13は、ノイズがある場合における、本発明に係るサンプル中における標的核酸含有量(遺伝子発現量など)の推定方法の一例のフローを示す図である。なお、本フローに係わるステップは、プログラムで記述することにより自動化できる。
前記の通り、サンプル中にノイズとなる核酸が含有している場合における、ある特定の検出用核酸iに係るハイブリダイゼーション測定値Piは、図12中の符号121に示す式で表すことができる。
符号121に示す式は、図4符号41に示した式と異なり、サンプル中におけるノイズとなる核酸の含有量ciが含まれている。そこで、まず、適当な目的関数f(g)を導入し、ノイズとなる核酸の含有量ciをベクトルとした場合に長さが最小となるgjを、サンプル中における各標的核酸含有量と推定する(符号122)。次に、目的関数f(g)が最小値になるように、偏微分が0になるgjを求め(符号123)、これを符号121に示す式に代入してノイズとなる核酸の含有量ciを消去し(符号124)、符号125に示す式を得る。
そして、符号125に示す式を行列形式で表し(符号126)、両辺から定数tAを消去すると、符号127に示す行列形式を得ることができる。符号127に示す式は、図4中の符号42に示した式と同じである。従って、ノイズがある場合も、前記と同様、サンプル中における各標的核酸含有量gを推定することができる。
続いて、図14から図17を用いて、標的核酸同士がハイブリダイゼーションする場合の、本発明に係るサンプル中における標的核酸含有量の推定方法について説明する。
図14は、標的核酸同士がハイブリダイゼーションしている場合の、ハイブリダイゼーション測定値とサンプル中における核酸の含有量との関係を模式的に示した図である。
図14では、図10に加えて、標的核酸141と標的核酸142がハイブリダイゼーションしている。これは、例えば、標的核酸141の塩基配列の一部又は全長と、標的核酸142の塩基配列の一部が相補的になっている場合に起こる可能性がある。なお、図14中、b1 2は、標的核酸141における、標的核酸141と標的核酸142のハイブリダイゼーションに対する寄与率を、b2 1は、標的核酸142における、標的核酸141と標的核酸142のハイブリダイゼーションに対する寄与率を、それぞれ示している。
図15は、標的核酸同士がハイブリダイゼーションする場合における、標的核酸含有量の推定方法のフロー図である。なお、この方法に係るステップは、プログラムで記述することにより自動化できる。
本フローでは、まず、予め、結合強度ai jとハイブリダイゼーションに対する寄与率bi jを取得しておく(符号151)。次に、ハイブリダイゼーション測定値Pi、結合強度ai j、ハイブリダイゼーションに対する寄与率bi jを用いて、標的核酸含有量を推定する(符号152、詳細は後述する)。次に、計算打ち切り指標Dを0に設定しておく(符号153)。
次に、ハイブリダイゼーションに対する寄与率について、操作を行う(符号154)。具体的には、まず、標的核酸同士のハイブリダイゼーションの含有量(bi j・gj、aj i・gi)の差を求め(符号155)、その大小でハイブリダイゼーションに対する寄与率の操作を行う(符号156、符号157)。そして、前記標的核酸同士のハイブリダイゼーションの含有量の差を計算打ち切り指標Dに代入し、1≦i、j≦n、i≠jの条件下で、繰り返し演算を行う(符号158、符号159)。なお、ハイブリダイゼーションに対する寄与率についての変更重みを表すhは0以上1未満の数値とし、予め設定しておく。
そして、計算打ち切り指標Dが閾値よりも小さくなった場合、標的核酸含有量の推定を中止する。一方、計算打ち切り指標Dが閾値よりも大きい場合、再び、符号152に戻り、標的核酸含有量の推定を行う(符号160)。
図16は、結合強度ai jとハイブリダイゼーションに対する寄与率bi jを取得する方法(図15中の符号151)の一例を示した模式図である。
まず、DNAチップの基板表面161に、検出用核酸を固定した領域162と標的核酸を固定した領域163を設ける。次に、基板表面161に特定の標的核酸164を滴下又は供給し、ハイブリダイゼーションを測定する。そして、検出用核酸を固定した領域162におけるハイブリダイゼーション測定値より結合強度ai jを、標的核酸を固定した領域162よりハイブリダイゼーションに対する寄与率bi jを、それぞれ取得する。さらに、全ハイブリダイゼーション測定値の総和を用いて結合強度ai jとハイブリダイゼーションに対する寄与率bi jを規格化する(符号165)。
なお、結合強度ai jとハイブリダイゼーションに対する寄与率bi jの取得は、図8及び図9に示した方法を用いてもよい。
図17は、標的核酸含有量を推定する方法(図15中の符号152)の一例のフローを示す図である。なお、この方法に係るステップは、プログラムで記述することにより自動化できる。
本フローでは、符号171に示す式の通り、結合強度ai jを取得する際に、ハイブリダイゼーションに対する寄与率bi jを考慮する。その他のフローについては、図12と同様のフローにより、標的核酸含有量を推定する。
図18は、遺伝子発現量規格化の全フローの一例を示した図である。図18中、フローAはRNA処理フローを、フローBはゲノム処理フローを示している。
RNA処理フローAは、本フローで用いるDNAチップを準備する段階(符号A1、A2)、採取した試料からサンプル核酸を取得し調製する段階(符号A3、A4)、DNAチップの基板表面に固定された検出用核酸と採取した試料から取得したサンプル核酸中の標的核酸とのハイブリダイゼーション量を蛍光強度によって測定し、遺伝子発現量を取得する段階(符号A5、A6)、測定された遺伝子発現量を規格化するための指標を取得する段階(符号A7)、から構成される。以下、順に説明する。
まず、DNAチップを準備する段階(符号A1、A2)について説明する。RNA処理フローAで用いるDNAチップには、指標取得に用いる複数の検出用核酸と、遺伝子発現解析を行う検出用核酸とを固定しておく。なお、指標取得に用いる複数の検出用核酸の固定位置は任意であり、例えば、指標取得に用いる複数の検出用核酸を、基板表面の所定位置に集めて固定してもよい。
次に、採取した試料からサンプル核酸を取得し調製する段階(符号A3、A4)について、説明する。RNA処理フローAでは、公知の方法に従い、採取した試料からRNAを抽出後、そのRNAと相補的な配列を持つcDNAを合成するなどして、サンプル核酸を取得する(符号A3)。サンプル核酸は制限酵素で断片化してもよい(符号A4)。
次に、DNAチップの基板表面に固定された検出用核酸と採取した試料から取得したサンプル核酸中の標的核酸とのハイブリダイゼーション量を蛍光強度によって測定し、遺伝子発現量を取得する段階(符号A5、A6)について説明する。DNAチップの基板表面に固定された検出用核酸にサンプル核酸を供給し、検出用核酸とサンプル核酸中の標的核酸とのハイブリダイゼーション量を、蛍光強度などを用いて測定する(符号A5)。そして、その測定データに基づいて、遺伝子発現量(規格化前の推定量)を取得する(符号A6)。なお、本発明に係るサンプル中における標的核酸含有量推定方法は、この段階で適用する。
次に、測定された遺伝子発現量を規格化するための指標を取得する段階(符号A7)について説明する。符号A7の段階では、指標取得のために測定された複数の遺伝子発現量(符号A6)間の相関関係を取得する。そして、取得した相関関係を、遺伝子解析のために測定された遺伝子発現量を規格化するための指標にする。このステップは、プログラムで記述することにより自動化できる。ここで、相関関係とは、前記指標取得のために測定された複数の遺伝子発現量をパラメータとする相関関数から得られた値である。相関関数は、例えば、二以上の実験条件下でそれぞれ採取された細胞から実験条件ごとに取得された複数の遺伝子発現量について、前記実験条件ごとの複数の遺伝子発現量間の相関関係を関数値とし、前記各関数値が一定値に近似する組み合わせを選択することにより得ることができる。
そして、符号A7の段階で得られた指標を用いて(矢印A8)、遺伝子発現解析を行う複数の検出用核酸とサンプル核酸中の標的核酸とのハイブリダイゼーション量(測定データ)に基づく遺伝子発現量(矢印A9)を規格化する(符号C1)。このステップも、プログラムで記述することにより自動化できる。
ゲノム処理フローBは、本フローで用いるDNAチップを準備する段階(符号B1)、採取した試料からサンプル核酸を取得し調製する段階(符号B3、B4)、細胞数取得のための検出用核酸と採取した試料から取得したサンプル核酸中の標的核酸とのハイブリダイゼーション量を蛍光強度によって測定し、試料中の細胞数を取得する段階(符号B5、B6)、から構成される。以下、順に説明する。
まず、DNAチップを準備する段階(符号B1)について説明する。ゲノム処理フローBで用いるDNAチップの基板表面には、細胞数取得のための検出用核酸を固定しておく。細胞数取得のための検出用核酸には、ゲノム中にほぼ一定の割合で存在する反復配列(例えば、Alu配列又はその一部分と同じ配列)をコードする核酸を固定する。
次に、採取した試料からサンプル核酸を取得し調製する段階(符号B3、B4)について説明する。ゲノム処理フローBでは、公知の方法に従い、採取した試料からゲノムDNAを抽出し、サンプル核酸を取得する(符号B3)。ゲノムDNAから抽出したサンプル核酸は、制限酵素で断片化して用いる(符号B4)。
次に、細胞数取得のための検出用核酸と採取した試料から取得したサンプル核酸中の標的核酸とのハイブリダイゼーション量を蛍光強度によって測定し、試料中の細胞数を取得する段階(符号B5、B6)について説明する。DNAチップの基板表面に固定された検出用核酸にサンプル核酸を供給し、検出用核酸とサンプル核酸中の標的核酸とのハイブリダイゼーション量を、蛍光強度などを用いて測定する(符号B5)。そして、標的核酸中に存在する反復配列を、蛍光強度などを用いて定量的に測定することにより、試料中に含まれる細胞数を取得する(符号B6)。本発明に係るサンプル中における標的核酸含有量推定方法は、この段階で適用する。
そして、遺伝子発現解析を行う複数の検出用核酸と標的核酸とのハイブリダイゼーション量(測定データ)に基づく遺伝子発現量(矢印A9)を、採取した試料中に含まれる細胞数を指標として、単位細胞数当たりの値に換算することにより(矢印B8)、遺伝子発現量を規格化する(符号C1)。なお、このステップは、プログラムで記述することにより自動化できる。
その他、符号A7の段階で取得した指標に基づいて規格化した遺伝子発現量と、符号B6の段階で取得した指標に基づいて規格化した遺伝子発現量と、を比較・検討することにより、測定データ検証を行うことができる(符号C1)。このステップも、プログラムで記述することにより自動化できる。
続いて、図19を用いて、本発明に係る標的核酸含有量推定システムの一例について説明する。
本発明に係る標的核酸含有量推定システムは、ハイブリダイゼーション測定値、結合強度などを入力する入力手段191、関数を出力する出力手段192、一つの検出用核酸と複数の標的核酸とのそれぞれの結合強度を用いて、前記ハイブリダイゼーション測定値における、標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することにより、サンプル中における標的核酸含有量を推定する標的核酸含有量推定手段193、CPU194、RAM195、ROM196を備える。
また、結合強度に係る数値を、ある一つの検出用核酸の塩基配列と、サンプル中の各標的核酸の塩基配列との相補性の度合いを探索することにより得る結合強度取得手段(図示せず)を備える構成にしてもよい。
本発明により、DNAチップなどを用いて得られたハイブリダイゼーション測定値から、サンプル中の標的核酸含有量(遺伝子発現量など)に関する高精度な数値を得ることができる。
本発明に係る方法、プログラム、及び、システムは、DNAチップなどを用いた測定装置に容易に組み込むことができる。
Claims (15)
- 基板表面に設けられた反応領域に固定された検出用核酸と、前記検出用核酸とハイブリダイゼーションする標的核酸とのハイブリダイゼーション測定値からサンプル中における標的核酸含有量を推定する方法であって、
一つの検出用核酸と複数の標的核酸のそれぞれとの間における各結合強度を用いて、前記ハイブリダイゼーション測定値における、各標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することにより、サンプル中における標的核酸含有量を推定する方法。 - 複数の反応領域で測定された各ハイブリダイゼーション測定値と、
前記複数の反応領域に固定された各検出用核酸のそれぞれに係わる、前記一つの検出用核酸と複数の標的核酸のそれぞれのとの間における各結合強度と、
を用いて、標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することを特徴とする請求項1記載の方法。 - 前記結合強度は、一つの検出用核酸と複数の標的核酸との結合性の度合いをそれぞれ測定することにより得られた数値であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記結合強度は、一つの検出用核酸の塩基配列と複数の標的核酸の塩基配列との間におけるそれぞれの相補性の度合いを探索することにより得られた数値であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記サンプル中における標的核酸含有量とは、遺伝子発現量であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 基板表面に設けられた反応領域に固定された検出用核酸と、前記検出用核酸とハイブリダイゼーションする標的核酸とのハイブリダイゼーション測定値からサンプル中における特定の標的核酸含有量を推定するステップであって、
一つの検出用核酸と複数の標的核酸のそれぞれとの間における各結合強度を用いて、前記ハイブリダイゼーション測定値における、各標的核酸含有量の寄与の度合いを取得するステップに係わる、サンプル中における標的核酸含有量を推定するプログラム。 - 複数の反応領域において測定された各ハイブリダイゼーション測定値と、
前記複数の反応領域に固定された各検出用核酸のそれぞれに係わる、前記一つの検出用核酸と複数の標的核酸のそれぞれとの間における結合強度と、
を用いて、標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することを特徴とする請求項6記載のプログラム。 - 前記結合強度は、一つの検出用核酸と複数の標的核酸との結合性の度合いをそれぞれ測定することにより得られた数値であることを特徴とする請求項6記載のプログラム。
- 前記結合強度に係る数値を、一つの検出用核酸の塩基配列と複数の標的核酸の塩基配列との間におけるそれぞれの相補性の度合いを探索することにより得るステップに係わるプログラムを備えることを特徴とする請求項6記載のプログラム。
- 前記サンプル中における標的核酸含有量とは、遺伝子発現量であることを特徴とする請求項6記載のプログラム。
- 基板表面に設けられた反応領域に固定された検出用核酸と、前記検出用核酸とハイブリダイゼーションする標的核酸とのハイブリダイゼーション測定値からサンプル中における標的核酸含有量を推定するシステムであって、
一つの検出用核酸と複数の標的核酸のそれぞれとの間における各結合強度を用いて、前記ハイブリダイゼーション測定値における、各標的核酸含有量の寄与の度合いを取得することにより、サンプル中における標的核酸含有量を推定する標的核酸含有量推定手段を少なくとも備えた標的核酸含有量推定システム。 - 複数の反応領域で測定された各ハイブリダイゼーション測定値と、
前記複数の反応領域に固定された各検出用核酸のそれぞれに係わる、前記一つの検出用核酸と複数の標的核酸のそれぞれとの間における各結合強度と、
からサンプル中における標的核酸含有量を推定することを特徴とする請求項11記載の標的核酸含有量推定システム。 - 前記結合強度は、一つの検出用核酸と複数の標的核酸との結合性の度合いを測定することにより得られた数値であることを特徴とする請求項11記載の標的核酸含有量推定システム。
- 前記結合強度に係る数値を、一つの検出用核酸の塩基配列と複数の標的核酸の塩基配列との間におけるそれぞれの相補性の度合いを探索することにより得る結合強度取得手段を少なくとも備えたことを特徴とする請求項11記載の標的核酸含有量推定システム。
- 前記サンプル中における標的核酸含有量とは、遺伝子発現量であることを特徴とする請求項11記載の標的核酸含有量推定システム。
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JP2005005994A JP2006191844A (ja) | 2005-01-13 | 2005-01-13 | 標的核酸含有量推定方法、プログラム、並びにシステム |
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JP2008193984A (ja) * | 2007-02-15 | 2008-08-28 | Toray Ind Inc | 繰り返し塩基配列の配列数測定方法および繰り返し塩基配列の配列数測定キット |
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2005
- 2005-01-13 JP JP2005005994A patent/JP2006191844A/ja active Pending
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