JP2006188711A - インクジェット用インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット用インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置 Download PDF

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知洋 山下
Masanori Jinno
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Abstract

【課題】 発色性に優れ、高い耐環境ガス性を有し、更に、耐ブロンズ性に優れた画像を与えるインクジェット用インクを提供すること。
【解決手段】 少なくとも、色材を含有するインクジェット用インクにおいて、
前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物又はその塩であり、前記色材の含有量(質量%)が、インクジェット用インク全質量に対して3.0質量%以上であり、
且つ、吸光度を測定して得られた、前記インクジェット用インクを2000倍に希釈したインクにおける最大吸収波長(λmax)が、612.0nm以上616.0nm以下であることを特徴とするインクジェット用インク。
一般式(I)
【化1】
Figure 2006188711

【選択図】 なし

Description

本発明は、高い耐環境ガス性を持ち、且つ、記録媒体上に印字した際にも金属光沢、所謂ブロンズ現象の発生が抑制された、良好な画像を得ることができるインクジェット用インクに関する。又、本発明は、前記インクジェット用インクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、インク小滴を普通紙、及び、光沢メディア等の記録媒体上に付与して、画像を形成する記録方法であり、その低価格化、記録速度の向上により、急速に普及が進んでいる。又、その記録画像の高画質化が進んだことに加えて、デジタルカメラの急速な普及に伴い、銀塩写真に匹敵する写真画像の出力方法として広く一般的になっている。
近年、インク滴の極小液滴化や、多色インクの導入に伴う色域の向上等により、今まで以上に高画質化が進んでいる。しかしその反面、色材やインクに対する要求はより大きくなり、発色性の向上や、目詰まり、吐出安定性等の信頼性においてより厳しい特性が要求されている。
一方で、銀塩写真と比較した場合のインクジェット記録方法の問題点には、得られた記録物の画像保存性が挙げられる。一般に、インクジェット記録方法により得られた記録物は銀塩写真と比較して、その画像保存性が低く、記録物が光、湿度、熱、空気中に存在する環境ガス等に長時間さらされた際に、記録物上の色材が劣化し、画像の色調変化や褪色が発生しやすいといった問題があった。特に、耐環境ガス性を銀塩写真のレベルまで向上させることは、インクジェット記録方式における従来からの課題であった。又、インクジェット用インクとして用いられる色相である、イエロー、マゼンタ、シアンのうち、最も耐環境ガス性が劣るのはシアンである。このため、シアンインクの耐環境ガス性をイエローインクやマゼンタインクと同等のレベルまで向上させることは、インクジェット記録方式において重要な課題の1つとなっている。
シアン色相を有するインクジェット用インクの色材の基本骨格は、フタロシアニン骨格とトリフェニルメタン骨格の2つに大別される。前者の代表的な色材には、C.I.Direct Blue86、87、C.I.Direct Blue199等があり、又、後者の代表的な色材には、C.I.Acid Blue9等がある。
一般に、フタロシアニン系色材は、トリフェニルメタン系色材と比較して、耐光性に優れるという特徴がある。更に、フタロシアニン系色材は、湿度や熱に対する堅牢度が高く、発色性が良好なことから、インクジェット用インクの色材として広く用いられている。
しかし、フタロシアニン系色材は、空気中の環境ガス(オゾン、NO、SO)、特にオゾンガスに対する堅牢度が劣る傾向がある。特に、アルミナ、シリカ等の無機物を含有するインク受容層を持つ記録媒体に印字した記録物における堅牢性の低さは顕著であり、記録物を長時間室内に放置すると著しく褪色してしまう。この耐環境ガス性を向上させる目的で、インクに添加するための様々な化合物が開示されている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかし、何れの場合もインクジェット用インクとしての良好な発色性と高い耐環境ガス性の両立は成されていないのが実情である。
更に、フタロシアニン系色材のもう1つの課題に、色材の凝集性の高さに起因する金属光沢、いわゆるブロンズ現象の発生がある。記録物においてブロンズ現象が発生した場合、その光学反射特性が変化し、画像の発色性、色相が著しく変化し、画像品位の著しい低下を引き起こす。このブロンズ現象は、インクが記録媒体に付与された際に、インク中での色材の凝集性の高さと、記録媒体へのインクの浸透性の低下等により、記録媒体表面において色材が凝集するために発生すると考えられる。特に、耐環境ガス性を高める目的でその分子中にアミノ基が導入された色材や、水への溶解性が低い色材を含有するインクでは、ブロンズ現象の発生が顕著となる傾向がある。
例えば、特定のフタロシアニン系色材を用いることで、耐環境ガス性を向上する提案がある(例えば、特許文献6参照)。この特定のフタロシアニン系色材を用いることで、フタロシアニン系色材における課題の一つである耐環境ガス性は得られる。しかし、前記提案にはブロンズ現象に関する言及はなく、その耐ブロンズ性については不明である。つまり、耐ブロンズ性、及び耐環境ガス性は、未だ両立されていない課題である。
従って、発色性に優れ、高い耐環境ガス性を有し、更に、ブロンズ現象の発生が抑制されたフタロシアニン系色材を用いたインクジェット用インクの探索は必要不可欠な課題となっている。
特開平5−171085号公報 特開平11−29729号公報 特開平10−130517号公報 特開2000−303009号公報 特開2002−249677号公報 特登録2942319号公報
本発明者らが、上述した課題を鑑みて鋭意研究を行った結果、特定のフタロシアニン系色材を用い、前記色材の凝集性をコントロールすることで、発色性に優れ、高い耐環境ガス性を有し、更に、耐ブロンズ性に優れた画像を与えるインクジェット用インクを提供できることを見出し、本発明を為すに至った。
従って、本発明の目的は、発色性に優れ、高い耐環境ガス性を有し、更に、耐ブロンズ性に優れた画像を与えるインクジェット用インクを提供することにある。
又、本発明の別の目的は、前記インクジェット用インクを用いた記録方法、記録ユニット、インクカートリッジ及びインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかるインクジェット用インクは、少なくとも、色材を含有するインクジェット用インクにおいて、前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物又はその塩であり、前記色材の含有量(質量%)が、インクジェット用インク全質量に対して3.0質量%以上であり、且つ、吸光度を測定して得られた、前記インクジェット用インクを2000倍に希釈したインクにおける最大吸収波長(λmax)が、612.0nm以上616.0nm以下であることを特徴とする。
一般式(I)
Figure 2006188711
(一般式(I)中、Mはアルカリ金属又はアンモニウムであり、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、スルホン基、又はカルボキシル基(但し、R、Rが同時に水素原子となる場合を除く)であり、Yは塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、又はモノ若しくはジアルキルアミノ基であり、l、m、nはそれぞれl=0〜2、m=1〜3、n=1〜3(但し、l+m+n=3〜4)であり、置換基の置換位置は4位又は4’位である。)
又、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット用インクは、上記構成のインクジェット用インクにおいて、前記色材が、下記一般式(II)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする。
一般式(II)
Figure 2006188711
(一般式(II)中、Mはアルカリ金属又はアンモニウムであり、l、m、nはそれぞれl=0〜2、m=1〜3、n=1〜3(但し、l+m+n=3〜4)であり、置換基の置換位置は4位又は4’位である。)
又、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット用インクは、上記構成のインクジェット用インクにおいて、更に、水及び水溶性有機溶剤を含有し、前記水溶性有機溶剤が、2−ピロリドンであり、且つ、インクジェット用インク中の2−ピロリドンの含有量(質量%)が、色材の含有量(質量%)に対して50%以上であることを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット記録方法は、インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行う工程を有するインクジェット記録方法において、前記インクが、上記構成のインクジェット用インクであることを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、前記インクが、上記構成のインクジェット用インクであることを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかる記録ユニットは、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、上記構成のインクジェット用インクであることを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット記録装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、前記インクが、上記構成のインクジェット用インクであることを特徴とする。
本発明によれば、発色性に優れ、高い耐環境ガス性を有し、更に、耐ブロンズ性に優れた画像を与えるインクジェット用インクを提供することができる。
又、本発明の別の実施態様によれば、前記インクジェット用インクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することができる。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、詳細に説明する。
尚、本発明においては、色材が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。
<インク>
以下、本発明にかかるインクジェット用インク(以下、単にインクと呼ぶこともある)を構成する成分等について詳細に述べる。
インクジェット用インクとして広く用いられるイエローインク、マゼンタインク、シアンインクの中でも、特にシアンインクが耐環境ガス性に劣る傾向がある。本発明においては、シアンインクの耐環境ガス性という課題に対して、シアンインクを用いて得られた記録物を、温度40℃、湿度55%、オゾンガス濃度2ppmの環境で20時間暴露したときに、記録物の50%duty部における反射濃度が、暴露前の記録物の50%duty部における反射濃度と比較して、83%以上残存するシアンインクの提供を目標としている。耐環境ガス性に優れたイエローインク、マゼンタインクを用いて得られた記録物は、上記した暴露条件において反射濃度が83%以上残存するという優れた耐環境ガス性を有している。このため、上記した暴露条件において反射濃度が83%以上残存するシアンインクを、耐環境ガス性に優れたイエローインク、マゼンタインクと共に用いることによって、優れた画像保存性を達成することが可能となる。
(色材)
〔一般式(I)で表される化合物又はその塩〕
本発明にかかるインクは、一般式(I)で表される化合物又はその塩を含有することが必須である。下記一般式(I)で表される化合物又はその塩は、シアンの色相を有し、耐環境ガス性に優れるという特徴を持つフタロシアニン誘導体である。
一般式(I)
Figure 2006188711
(一般式(I)中、Mはアルカリ金属又はアンモニウムであり、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、スルホン基、又はカルボキシル基(但し、R、Rが同時に水素原子となる場合を除く)であり、Yは塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、又はモノ若しくはジアルキルアミノ基であり、l、m、nはそれぞれl=0〜2、m=1〜3、n=1〜3(但し、l+m+n=3〜4)であり、置換基の置換位置は4位又は4’位である。)
一般に、フタロシアニン誘導体は、その合成時において不可避的に一般式(III)における置換基R(n:1〜16)の置換位置(R〜R16が結合するベンゼン核上の炭素原子の位置を、それぞれ1位〜16位と定義する)異性体を含むことが多い。しかし、これらの置換位置異性体は、通常互いに区別することなく、同一の誘導体として見なされることが多い。
一般式(III)
Figure 2006188711
本発明において用いる色材は、一般式(I)における4位及び4’位(一般式(III)におけるR、R、R、R、R10、R11、R14及びR15)のみに、無置換スルファモイル基(−SONH)又は置換スルファモイル基(一般式(IV)で表される基)を選択的に導入したフタロシアニン誘導体である。本発明者らは、かかる化合物を含有するインクを用いて得られた記録物が、極めて耐環境ガス性に優れることを見出した。
尚、本発明において用いる一般式(I)で表される化合物又はその塩の合成には、4−スルホフタル酸誘導体、又は、4−スルホフタル酸誘導体及び(無水)フタル酸誘導体を、金属化合物の存在下で反応させることで得られるフタロシアニン化合物を原料に用いる。更に、前記フタロシアニン化合物におけるスルホン酸基をクロロスルホン酸基に変換した後、有機アミンの存在下でアミノ化剤を反応させて得られる。
一般式(IV)
Figure 2006188711
一般式(IV)で表される置換スルファモイル基の好ましい具体例を以下に示す。勿論、本発明に用いられる置換スルファモイル基は、これに限られるものではない。尚、一般式(IV)で表される置換スルファモイル基は、遊離酸の形で示す。
Figure 2006188711
中でも、上記例示置換基1が置換した化合物、即ち、下記一般式(II)で表される化合物又はその塩が、その発色性と耐環境ガス性のバランスから最も好ましい化合物である。
一般式(II)
Figure 2006188711
(一般式(II)中、Mはアルカリ金属又はアンモニウムであり、l、m、nはそれぞれl=0〜2、m=1〜3、n=1〜3(但し、l+m+n=3〜4)であり、置換基の置換位置は4位又は4’位である。)
しかし、本発明において用いられる一般式(I)のように、置換基数が3又は4、即ち、l+m+n=3〜4であり、且つ、置換位置が4位及び4’位に限定された化合物においても、下記表1及び表2に示すように、フタロシアニン骨格に置換する置換基であるスルホン酸基(−SOM)、無置換スルファモイル基(−SONH)、及び置換スルファモイル基(一般式(IV)で表される基)の数が異なる異性体が多数存在する。一般式(I)で表される化合物又はその塩はこれらの異性体の混合物であり、その異性体の数及び種類の違いにより、同一構造の化合物であっても、その特性が大きく異なることが確認されている。そして、その特性の1つに、色材自身の持つ凝集性の違いが挙げられる。
Figure 2006188711
Figure 2006188711
一般に、フタロシアニン系色材は、その他の構造の色材(トリフェニルメタン系、アゾ系、キサンテン系等)と比較して凝集性が高い。又、前記凝集性を高めることで、堅牢性も高くなる。その一方で、凝集性が高い色材は、インクにおける色材の凝集性も高くなる。そのため、記録媒体上に印字した際に画像品位の低下を招くブロンズ現象の発生が顕著になるという傾向がある。
逆に、色材の凝集性が著しく低い場合、堅牢性、特に耐環境ガス性が低下する。そのため、前記色材を含有するインクを用いて得られた記録物は、耐環境ガス性に優れたイエローインク、マゼンタインクと同レベルの画像保存性を得ることができない場合がある。
従って、一般式(I)で表される化合物又はその塩を色材として用いる場合、ブロンズ現象の発生を抑制することができ、且つ、所望の耐環境ガス性が得られるように、色材の凝集性をコントロールすることが必要となる。
本発明のインクに用いられる色材である、一般式(I)で表される化合物又はその塩と、該色材と同様の骨格を有し、インクに従来から用いられている代表的な色材である、C.I.Direct Blue199、C.I.Direct Blue86等と比較する以下のことが言える。前者はフタロシアニン骨格に置換する置換基の分子量が大きく、更に、色材全体の分子量も大きいため、後者と比較して、同一質量%当たりの発色効率が低下する。このため、従来の色材を含有するインクと同程度の発色性を得るためには、インク中における色材濃度を高く設定する必要がある。特に、発色性が低い普通紙等に印字する場合に、従来の色材を含有するインクと同程度の発色性を得るためには、色材の含有量(質量%)が、インク全質量に対して3.0質量%以上であることが好ましい。尚、固着性等の信頼性を十分に満たすためには、含有量が10.0質量%以下であることが好ましい。
但し、インク中における色材濃度が高い場合、記録媒体上での色材の凝集が進み、ブロンズ現象の発生がより顕著になる傾向にある。このため、本発明のインクに用いられる色材である、一般式(I)で表される化合物又はその塩の含有量(質量%)が、インク全質量に対して3.0質量%以上という高い色材濃度においてもブロンズ現象の発生が抑制でき、所望の耐環境ガス性が得られる範囲に、色材の凝集性をコントロールすることが必要である。
上述の知見に基づき、一般式(I)で表される化合物又はその塩の凝集性に着目して、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、一般式(I)で表される化合物又はその塩である色材の置換基の種類を変化させることで、色材の凝集性をコントロールし、発色性に優れ、ブロンズ現象の発生を抑制することができ、且つ、耐環境ガス性を高める方法を見出し、本発明を為すに至った。
〔色材の凝集性の測定〕
本発明において用いられる色材の凝集性の測定には、小角X線散乱法が適用できる。
小角X線散乱法は、「最新コロイド化学」(講談社サイエンティフィック 北原文雄、古澤邦夫)及び「表面状態とコロイド状態」(東京化学同人 中垣正幸)等に記載されているように、コロイド溶液におけるコロイド粒子間の距離の算出に汎用に用いられてきた手法である。
小角X線散乱装置の概要を、小角X線散乱法の測定原理図である図1を用いて説明する。X線源より発生したX線は、第1〜第3スリットを通る間に、数mm以下の程度まで焦点サイズを絞られ、試料溶液に照射される。試料溶液に照射されたX線は、試料溶液中の粒子によって散乱された後、イメージングプレート上で検出される。散乱したX線は、その光路差の違いによって干渉が起こるため、得られたθ値を用いて、粒子間の距離d値は、Braggの式(下記式(1))によって求められる。尚、ここで求められるd値は、一定間隔で配列している粒子の中心から中心の距離と考えられる。
Figure 2006188711
(式(1)中、λはX線の波長、dは粒子間の距離、θは散乱角である。))
一般に、溶液中の粒子が規則正しく配列していない場合、散乱角プロファイルにはピークが発生しない。本発明において用いられる色材(フタロシアニン系色材)の水溶液の場合、2θ=0°〜5°の範囲に最大値を持つ強いピークが検出され、フタロシアニン系色材分子の凝集により形成される粒子(分子集合体)が、ある一定の規則で配列していることが確認できる。図2に、下記化合物(1)で表される構造を有するトリフェニルメタン系色材、及び一般式(I)で表される構造を有するフタロシアニン系色材、それぞれの10質量%水溶液における散乱角プロファイルを示す。図2より、同じシアンの色相を有する色材においても、フタロシアニン系色材は特異的に散乱角ピークを有することがわかる。つまり、フタロシアニン系色材の場合、水溶液中ではフタロシアニン分子がいくつか凝集して分子集合体を形成する。そして、分子集合体間の距離は、散乱角プロファイルで示されるような一定の分布を有する。
化合物(1)
Figure 2006188711
図3は、フタロシアニン系色材の分子集合体の分散距離の概念図である。図3に示すように、あるフタロシアニン系色材の分子集合体の半径をr1、分子集合体間の距離をd1とする。フタロシアニン系色材の構造が同一であるならばd1は常に一定である、と仮定すると、フタロシアニン系色材が形成する分子集合体の半径がr1→r2と大きくなるのに従って、小角X線散乱法から測定されたd値もd2→d3へと大きくなると考えられる。そのため、前記方法で測定されるd値は、フタロシアニン系色材の分子集合体の大きさを表す指数であると考えられ、d値が大きいほど、色材分子が形成する分子集合体の大きさが大きくなっていると考えられる。
フタロシアニン系色材を含有するインクにおけるd値とブロンズ現象の関係を調べたところ、同一の構造式で示されるフタロシアニン系色材の場合には、d値が大きいほどブロンズ現象が発生しやすい傾向があることがわかった。記録媒体上での色材分子の集合によってブロンズ現象が発生することを考慮すると、上述のd値と分子集合体の大きさに相関関係があることを裏付ける結果となった。
散乱角プロファイルにおけるピーク形状は、分子集合体間の距離の分布、即ち、分子集合体の分散距離の分布を示している。上記で述べたように、この分散距離が分子集合体の大きさを表す指数であることを考えると、かかる散乱角プロファイルは、溶液中における分子集合体の大きさの分布を示していると考えることができる。つまり、散乱角プロファイルのピーク面積を、溶液中の分子集合体全体の大きさとすれば、d値が大きい、即ち、大きい分子集合体の頻度が高いほど、ブロンズ現象が発生しやすい傾向がある。従って、ブロンズ現象が発生しやすい、大きい分子集合体の頻度を低減させることで、ブロンズ現象の発生を抑制することができると考えられる。但し、著しく小さい分子集合体のみを含有するインクの場合、ブロンズ現象は発生しにくくなるものの、その耐環境ガス性も低下してしまう。このため、ブロンズ現象の発生を抑制することができ、且つ、耐環境ガス性を得るという観点からも、分子集合体の大きさ(d値の大きさ)を的確にコントロールすることが必要となる。
一般に、色材分子の大きさがある頻度で分布を持つ場合、人間が目視で認識できる視覚限界のしきい値は、その全体量の1/4とされている。このことから、ブロンズ現象が発生しやすい大きな分子集合体が全体の1/4以下となる点、言い換えれば、ブロンズ現象が発生しにくい小さな分子集合体が全体の3/4以上となる点のd値をd75値とし、該d75値を特定の範囲にコントロールすることで、ブロンズ現象の発生が抑制され、高い耐環境ガス性を有するインクを得ることが可能となる。
実際に散乱角プロファイルにおける2θ値のピークから算出したdpeak値と上述のd75値とブロンズ現象の発生レベルの相関性を調査したところ、dpeak値よりも、分子集合体全体の大きさの分布因子を考慮したd75値の方がブロンズ現象との相関性が高いことが判明した。尚、2θ値を求める際のベースラインは、0.5°〜5°の範囲で引く。
そこで、本発明者らは、フタロシアニン系色材である一般式(I)で表される化合物又はその塩において、置換基の数、種類及び置換位置を変化させた化合物、即ち、凝集性をコントロールした色材を用いて以下の実験を行った。前記色材を含有するインクを調製し、該インクの散乱角プロファイルを測定し、d75値を算出した。次に、得られたd75値から、それぞれの色材の凝集性を評価した。その結果、前記d75値が、6.50nm以上7.10nm以下である場合に、ブロンズ現象の発生が効果的に抑制され、高い耐環境ガス性を有するインクとなることわかった。更には、前記d75値が、6.70nm以上7.10nm以下である場合に、ブロンズ現象の発生が特に効果的に抑制され、高い耐環境ガス性を有することがわかった。つまり、一般式(I)表される化合物又はその塩を含有するインクにおいて、インクのd75値が上記範囲を取るように色材の凝集性がコントロールされている場合、良好な発色性を得るために色材濃度が高く設定されていたとしても、ブロンズ現象の発生が抑制され、且つ、高い耐環境ガス性を有することが見出された。
尚、小角X線散乱法によりd値を測定する場合は、溶液中の分子密度を一定にする必要がある。このため、色材濃度を一定にしたインクでd値を測定することが好ましい。本発明においては、色材の含有量(質量%)が、インク全質量に対して3.0質量%となるように調製したインクを用いて散乱角プロファイルの測定を行った。尚、インクにおける色材の含有量が3.0質量%よりも高い場合は、純水を用いて色材濃度が3.0質量%になるように希釈した、希釈インクに対して散乱角プロファイルの測定を行った。尚、インクにおける色材の含有量が3.0質量%であることは、該インクを純水で1000倍に希釈した際の吸光度が、1.05〜1.15の範囲であることで検証することが可能である。
吸光度の測定条件は以下に示す通りである。
・分光光度計:自記分光光度計(商品名:U−3300;日立製作所製)
・測定セル:1cm 石英セル
・サンプリング間隔:0.1nm
・スキャン速度:30nm/min
・測定回数:5回測定平均
又、上記で述べた色材の凝集性は、吸収スペクトルにおける最大吸収波長(λmax)とも相関性がある。分子集合性が高い(d75値が高い)インクほど、λmaxは低い傾向がある。従ってd75値に相関するλmaxを用いて、色材の凝集性を評価することも可能である。この場合、純水を用いて2000倍に希釈したインクにおけるλmaxが、612.0nm以上616.0nm以下である場合に、ブロンズ現象の発生が効果的に抑制され、高い耐環境ガス性を有するインクとなることわかった。更には、前記λmaxが、612.0nm以上614.0nm以下である場合に、ブロンズ現象の発生が特に効果的に抑制され、高い耐環境ガス性を有するインクとなることわかった。つまり、一般式(I)表される化合物又はその塩を含有するインクにおいて、インクのλmaxが上記範囲を取るように色材の凝集性がコントロールされている場合、良好な発色性を得るために色材濃度が高く設定されていたとしても、ブロンズ現象の発生が抑制され、且つ、高い耐環境ガス性を有することが見出された。尚、最大吸収波長の測定条件は、上述の吸光度の測定条件と同様である。
又、本発明において用いられる色材は、無置換スルファモイル基の数が少なく、置換スルファモイル基又はスルホン酸基の数が多いほど、凝集しにくい特性を持つことが知られている。特に、本発明におけるd75値の規定を満たす場合には、一般式(I)で表される化合物又はその塩、或いは一般式(II)で表される化合物又はその塩、における置換基数のうち、lがl≧1の化合物を含有する場合、色材の凝集を抑制することができるため、より好ましい。
〔色材の検証方法〕
本発明において用いられる色材の一例である例示化合物1(一般式(II)で表される化合物又はその塩)の検証には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法が適用できる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークにおける最大吸収波長
(3)(1)のピークにおけるマススペクトルのM/Z(posi)
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下に示す通りである。純水で約200倍に希釈したインク溶液に対して、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーでの分析を行い、メインピークの保持時間(retention time)、及び、ピークの最大吸収波長を測定する。
・カラム:Symmetry C18 2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2ml/min
・PDA:210nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:表3
Figure 2006188711
又、マススペクトルの分析条件は以下に示す通りである。得られたピークに対して、下記の条件でマススペクトルを測定し、M/Z(posi)を測定する。
・イオン化法
・ESI キャピラリ電圧 3.1kV
脱溶媒ガス 300℃
イオン源温度 120℃
・検出器 posi 40V 500−2000amu/0.9sec
例示化合物1に対しての保持時間、最大吸収波長、M/Zの値を表4に示す。表4に示された値に該当する場合、本発明において用いる化合物に該当すると判断できる。本発明に用いられる色材においては、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のピークから得られるマススペクトルのピーク比は、色材における置換基の数、種類、及び置換位置が異なる異性体の混合比率によって異なるが、下記表4に記載されたM/Zのピークは常に検出されるという特徴を有する。従って、本色材の検証方法は、インクが本発明に用いられる色材を含有するか否かを検証する方法として有効な手段である。
Figure 2006188711
(水性媒体)
本発明のインク組成物は、水、或いは水と各種水溶性有機溶剤との混合溶媒である水性媒体を使用することができる。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限は無く、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール;N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2又は1,3−プロピレングリコール、1,2又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジチオグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリン等の複素環類;ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物;尿素、及び、尿素誘導体等を用いることができる。上記水溶性有機溶剤は、単独で用いても、或いは混合物として用いても良い。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量に対して好ましくは5.0質量%〜90.0質量%、より好ましくは10.0質量%〜50.0質量%である。含有量がこの範囲より少ない場合、インクジェット用インクとして用いる場合に、吐出性等の信頼性が悪化する可能性があり、含有量がこの範囲より多い場合、インクの粘度が上昇することによる、インク供給不良が起きる可能性があるためである。
又、水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水の含有量は、インク全質量に対して10.0質量%〜90.0質量%であることが好ましい。
本発明においては、上述の水溶性有機溶剤の中でも、2−ピロリドン、ポリエチレングリコール(分子量200以上)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類は、一般式(I)で表される化合物又はその塩と併用した場合、ブロンズ現象の発生を抑制する効果があるため、好ましい。特に、2−ピロリドンは、一般式(I)で表される化合物又はその塩と併用した場合、ブロンズ現象の発生を特に効果的に抑制する効果があるため、より好ましい。
これら特定の水溶性有機溶剤が、ブロンズ現象の発生を抑制することができるメカニズムは明確には明らかではないが、以下のように推測される。インクの小角X線散乱法によるd75値は、インク中におけるこれら特定の水溶性有機溶剤の有無によっては変化しない。このことから、これら特定の水溶性有機溶剤は、インク中での色材の凝集性を変化させる訳ではなく、記録媒体上において、色材の分子集合体同志の凝集を抑制することができるためだと考えられる。尚、これら特定の水溶性有機溶剤をインクに含有させることにより前記効果を得るためには、インク中におけるこれら特定の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が、色材の含有量(質量%)に対して50.0%以上であることが好ましい。
(その他の添加剤)
更に、本発明においては必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、キレート化剤、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、消泡剤、及び、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。
界面活性剤の具体例は、アニオン界面活性剤、両面界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
アニオン界面活性剤の具体例は、アルキルスリホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤の具体例は、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等がある。両面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他イミダゾリン誘導体等がある。
ノニオン界面活性剤の具体例は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系(例えば、川研ファインケミカル製アセチレノールEH、日信化学製サーフィノール104、82、465、オルフィンSTG等)が挙げられる。
pH調整剤は、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を用いることができる。具体的には、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等のアルコールアミン化合物、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。中でも、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等のアルコールアミン化合物や炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩は、ブロンズ現象の発生を抑制する効果があるために好ましい。
防腐剤・防カビ剤の具体例は、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンツチアゾール系、ニトチリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物は、例えば、ペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物は、例えば、2−ピリジンチオール−1オキサイドナトリウムが挙げられ、無機塩系化合物は、例えば無水酢酸ソーダが挙げられ、イソチアゾリン化合物は、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐剤・防カビ剤の具体例として、ソルビン酸ソーダ安息香酸ナトリウム等、例えば、アベシア製プロキセルGXL(S)、プロキセルXL−2(S)等が挙げられる。
キレート化剤は、例えば、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、二ニトロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
防錆剤は、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物、又は、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
粘度調整剤は、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
消泡剤は、フッ素系、シリコーン系化合物が必要に応じて用いられる。
<記録媒体>
本発明のインクを用いて画像を形成する際に用いる記録媒体は、インクを付与して記録を行う記録媒体であれば何れのものでも使用することができる。
本発明は、色材や顔料等の色材をインク受容層内の多孔質構造を形成する微粒子に吸着させて、少なくともこの吸着した微粒子から画像が形成される記録媒体に適用され、インクジェット法を利用する場合に特に好適である。このようなインクジェット用の記録媒体は支持体上のインク受容層に形成された空隙によりインクを吸収するいわゆる吸収タイプであることが好ましい。
吸収タイプのインク受容層は、微粒子を主体とし、必要に応じて、バインダーやその他の添加剤を含有する多孔質層として構成される。微粒子の具体例は、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナあるいはアルミナ水和物等の酸化アルミニウム、珪藻土、酸化チタン、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛等の無機顔料や尿素ホルマリン樹脂、エチレン樹脂、スチレン樹脂等の有機顔料が挙げられ、これらの1種以上が使用される。バインダーとして好適に使用されているものには水溶性高分子やラテックスを挙げることができる。例えば、ポリビニルアルコール又はその変性体、澱粉又はその変性体、ゼラチン又はその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロオイルメチルセルロース等のセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸又はその共重合体、アクリル酸エステル共重合体等が使用され、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。その他、添加剤を使用することもでき、例えば、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が使用される。
特に、本発明において好ましく用いられる記録媒体は、平均粒子径が1μm以下である微粒子を主体として、インク受容層を形成した記録媒体が好ましい。前記微粒子の具体例は、シリカ微粒子や酸化アルミニウム微粒子等が挙げられる。シリカ微粒子として好ましいものは、コロイダルシリカに代表されるシリカ微粒子である。コロイダルシリカ自体は市場より入手可能であるが、特には、例えば特許第2803134号、同2881847号公報に掲載されたものが好ましい。酸化アルミ微粒子として好ましいものは、アルミナ水和物微粒子等である。このようなアルミナ系顔料の一つとして下記式により表されるアルミナ水和物を挙げることができる。
Al3−n(OH)2n
(上記式中、nは1、2又は3の整数の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。但し、mとnは同時には0にはならない。mHOは、多くの場合mHO結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相をも表すものである為、mは整数又は整数でない値を取ることもできる。又この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがありうる。)
アルミナ水和物は、米国特許第4,242,271号、米国特許第4,202,870号に記載のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミン酸ナトリウムの加水分解、又、特公昭57−44605号公報に記載のアルミン酸ナトリウム等の水溶液に硫酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行う方法等、公知の方法で製造することができる。
記録媒体は上記したインク受容層を支持するための支持体を有することが好ましい。支持体は、インク受容層が、上記多孔質の微粒子で形成することが可能であって、且つインクジェットプリンタ等の搬送機構によって搬送可能な剛度を与えるものであれば、特に制限はなく、何れのものでも使用できる。具体的には、例えば、天然セルロース繊維を主体としてパルプ原料から成る紙支持体、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタラート)、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリイミド等の材料からなるプラスチック支持体、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(例:RCペーパー)が挙げられる。
<インクジェット記録方法>
本発明にかかるインクは、インクをインクジェット方法で吐出する工程を有するインクジェット記録方法に用いることが特に好適である。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを吐出させる記録方法、及びインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出させる記録方法等がある。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を好ましく用いることができる。
<インクカートリッジ>
本発明にかかるインクを用いて記録を行うのに好適なインクカートリッジは、これらのインクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジが挙げられる。
<記録ユニット>
本発明にかかるインクを用いて記録を行うのに好適な記録ユニットは、これらのインクを収容するインク収容部と、記録ヘッドとを備えた記録ユニットが挙げられる。特に、前記記録ヘッドが、記録信号に対応した熱エネルギーをインクに作用させ、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる記録ユニットが挙げられる。
<インクジェット記録装置>
本発明にかかるインクを用いて記録を行うのに好適な記録装置は、これらのインクが収容されるインク収容部を有する記録ヘッドの室内のインクに、記録信号に対応した熱エネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる装置が挙げられる。
以下に、インクジェット記録装置の機構部の概略構成を説明する。記録装置本体は、各機構の役割から、給紙部、用紙搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部及びこれらを保護し、意匠性を持たす外装部から構成されている。以下、これらの概略を説明していく。
図4は、記録装置の斜視図である。又、図5及び図6は、記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、図5は右上部からの斜視図、図6は記録装置本体の側断面図をそれぞれ示したものである。
記録装置において給紙を行う際には、まず給紙トレイM2060を含む給紙部において記録媒体の所定枚数のみが給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる。送られた記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。用紙搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパーM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される。
キャリッジ部では記録媒体に画像を形成する場合、記録ヘッドH1001(図7)を目的の画像形成位置に配置させ、電気基板E0014からの信号に従って、記録媒体に対しインクを吐出する。記録ヘッドH1001についての詳細な構成は後述するが、記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000が列方向に走査する記録主走査と、搬送ローラM3060により記録媒体が行方向に搬送される副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体上に画像を形成していく構成となっている。
最後に画像を形成された記録媒体は、排紙部で第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ、搬送されて排紙トレイM3160に排出される。
尚、クリーニング部において、画像記録前後の記録ヘッドH1001をクリーニングする目的のために、キャップM5010を記録ヘッドH1001のインク吐出口に密着させた状態で、ポンプM5000を作用させると、記録ヘッドH1001から不要なインク等が吸引されるようになっている。又、キャップM5010を開けた状態で、キャップM5010に残っているインクを吸引することにより、残インクによる固着及びその後の弊害が起こらないように配慮されている。
(記録ヘッド構成)
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段、及びインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有しており、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される。
図7は、ヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子を示した図である。記録装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、淡マゼンタ、淡シアン、及びグリーンインクによって画像を形成し、従ってインクタンクH1900も7色分が独立に用意されている。上記において、少なくとも一種のインクに、本発明にかかるインクを用いる。そして、図に示すように、それぞれがヘッドカートリッジH1000に対して着脱自在となっている。尚、インクタンクH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行えるようになっている。
図8は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図を示したものである。図において、ヘッドカートリッジH1000は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、第2のプレートH1400、電気配線基板H1300、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800等から構成されている。
第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAl等の電気配線は、成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路も又、フォトリソグラフィ技術により形成されている。更に、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
図9は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101の構成を説明するための正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインク色に対応する記録素子の列(以下ノズル列ともいう)であり、第1の記録素子基板H1100には、イエローインクの供給されるノズル列H2000、マゼンタインクの供給されるノズル列H2100、及びシアンインクの供給されるノズル列H2200の3色分のノズル列が構成されている。第2の記録素子基板H1101には、淡シアンインクの供給されるノズル列H2300、ブラックインクの供給されるノズル列H2400、オレンジインクの供給されるノズル列H2500、及び淡マゼンタインクの供給されるノズル列H2600の4色分のノズル列が構成されている。
各ノズル列は、記録媒体の搬送方向に1200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で並ぶ768個のノズルによって構成され、約2ピコリットルのインク滴を吐出させる。各ノズル吐出口における開口面積は、およそ100平方μmに設定されている。又、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されており、ここには、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。
更に、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されており、この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持している。
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し記録装置本体からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有している。外部信号入力端子H1301は、タンクホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
一方、インクタンクH1900を保持するタンクホルダーH1500には、流路形成部材H1600が例えば超音波溶着により固定され、インクタンクH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成している。
インクタンクH1900と係合するインク流路H1501のインクタンク側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。又、インクタンクH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
更に、前述のようにタンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700及びシールゴムH1800から構成されるタンクホルダー部と、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される記録ヘッド部H1001とを、接着等で結合することにより、ヘッドカートリッジH1000が構成されている。
尚、ここでは記録ヘッドの一形態として、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッドについて一例を挙げて述べた。
この代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、所謂オンデマンド型、コンティニュアス型の何れにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液流路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長・収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
又、第二の力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態として、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。
又、インクジェット記録装置は、上述のようにヘッドとインクタンクとが別体となったものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いるものでもよい。又、インクタンクはヘッドに対し分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えばチューブを介して記録ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。更に、記録ヘッドに対し好ましい負圧を作用させるための構成をインクタンクに設ける場合には、インクタンクのインク収納部に吸収体を配置した形態、あるいは可撓性のインク収容袋とこれに対しその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態等を採用することができる。又、記録装置は、上述のようにシリアル記録方式を採るもののほか、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、特に指定の無い限り、実施例、比較例のインク成分は「質量部」を意味する。
<色材の合成>
(1)銅フタロシアニンテトラスルホン酸テトラナトリウム塩(化合物(2))の合成
化合物(2)
Figure 2006188711
スルホラン、4−スルホフタル酸モノナトリウム塩、塩化アンモニウム、尿素、モリブデン酸アンモニウム、塩化銅(II)を混合し、攪拌した後、メタノールで洗浄を行った。その後、水を加え、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、溶液のpHを11に調整した。得られた溶液に攪拌下で塩酸水溶液を加え、更に塩化ナトリウムを徐々に加え、結晶を析出させた。得られた結晶を濾別したものを、20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、続いてメタノールを加え、析出した結晶を濾別し、70%メタノール水溶液で洗浄した後に乾燥させ、化合物(2)の銅フタロシアニンテトラスルホン酸テトラナトリウム塩を青色結晶として得た。
(2)銅フタロシアニンテトラスルホン酸クロライド(化合物(3))の合成
化合物(3)
Figure 2006188711
クロロスルホン酸中に、上記で得られた銅フタロシアニンテトラスルホン酸テトラナトリウム塩(化合物(2))を徐々に加え、更に、塩化チオニルを滴下し、反応を行った。その後、反応液を冷却し、析出した結晶を濾過し、銅フタロシアニンテトラスルホン酸クロライドのウェットケーキを得た。
(3)下記化合物(4)の合成
化合物(4)は、一般式(IV)において、Yがアミノ基、R、Rが2、5位に置換したスルホン酸基である化合物である。
化合物(4)
Figure 2006188711
氷水中に、リパールOH、塩化シアヌル、アニリン−2,5−ジスルホン酸モノナトリウム塩を加え、水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら反応を行った。次に、反応液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、反応液のpHを10に調整した。この反応液に、28%アンモニア水、エチレンジアミンを加え、反応を行った。得られた反応液に、塩化ナトリウム、濃塩酸を滴下して、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキに、メタノール及び水を加え、更に濾過し、メタノールで洗浄を行った後、乾燥させて、化合物(4)を得た。
(4)色材A〜Gの合成
氷水中に、(2)で得られた銅フタロシアニンテトラスルホン酸クロライド(化合物(3))のウェットケーキを加え、攪拌を行って懸濁させ、更に、アンモニア水、(3)で得られた化合物(4)を添加して、反応を行った。これに、水、塩化ナトリウムを加えて、結晶を析出させた。得られた結晶を濾過し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、再度濾過を行った後、洗浄、乾燥させて、青色結晶として色材Aを得た。上記反応から、この化合物は例示化合物1で表される化合物であり、一般式(I)における置換基数の平均がl=0、m=1.0〜2.0、n=2.0〜3.0の範囲で示される色材であると推定される。
上記と同様の合成フローで、例示化合物1で表される化合物であり、一般式(I)における置換基数の平均がそれぞれ異なる色材B〜Gを合成した。色材A〜Gにおける置換基数の平均を下記表5に示す。
Figure 2006188711
<耐ブロンズ性の評価>
(1)インクの調製
下記表6に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターにて加圧濾過を行い、インクA〜Dを調製した。
Figure 2006188711
(2)d75値の測定
インクA〜D(色材濃度:3.0質量%)について、小角X線散乱法により散乱角プロファイルを測定した。散乱角プロファイルの測定条件は以下に示す通りである。
・装置:Nano Viewer(理学製)
・X線源:Cu−Kα
・出力:45kV−60mA
・実効焦点:0.3mmφ+Confocal Max−Flux Mirror
・1st Slit:0.5mm、2nd Slit:0.4mm、3rd Slit:0.8mm
・照射時間:240min
・ビームストッパー:3.0mmφ
・測定法:透過法
・検出器:Blue Imaging Plate
得られた散乱角プロファイルから、X線回折データ処理ソフトJADE(Material Data,Inc.)を用いて、バックグラウンドを除去したピーク面積、及び、同ピーク面積全体の75%以上が含まれる2θ値(2θ75値)を測定した。又、2θ75値から、下記式(2)に基づいてd75値を算出した。結果を表7に示す。
Figure 2006188711
(3)最大吸収波長(λmax)の測定
インクA〜D(色材濃度:3.0質量%)を、それぞれ純水で2000倍に希釈した後に、最大吸収波長(λmax)を測定した。結果を表7に示す。最大吸収波長(λmax)の測定条件は以下に示す通りである。
・分光光度計:自記分光光度計(商品名:U−3300;日立製作所製)
・測定セル:1cm 石英セル
・サンプリング間隔:0.1nm
・スキャン速度:30nm/min
・測定回数:5回測定平均
(4)記録物の作成
インクジェット記録装置(商品名:Pixus 950i;キヤノン製)に上記で得られたインクA〜Dをそれぞれ搭載し、インクジェット用光沢メディア(商品名:PR101;キヤノン製)に、印字dutyを5、12、21、29、35、43、51、58、66、74、85、90、100%と変化させた13段階の階調パターンを印字して、記録物を作成した。
(5)耐ブロンズ性の評価
上記で得られた記録物の13段階の階調パターンにおいて、ブロンズ現象が発生する印字dutyを目視で確認し、その印字dutyをブロンズ現象が発生する印字dutyとした。一般にブロンズ現象は印字dutyが高くなるのに従って発生しやすくなる傾向がある。つまり、ブロンズ現象が発生する印字dutyが低いほどブロンズ現象が発生しやすく、ブロンズ現象が発生する印字dutyが高いほどブロンズ現象が発生しにくいインクと言える。耐ブロンズ性の基準は以下の通りである。評価結果を表7に示す。
A:ブロンズ現象が発生する印字dutyが、90%以上である。
B:ブロンズ現象が発生する印字dutyが、66%以上90%未満である。
C:ブロンズ現象が発生する印字dutyが、43%以上66%未満である。
D:ブロンズ現象が発生する印字dutyが、43%未満である。
Figure 2006188711
<耐ブロンズ性、耐環境ガス性の評価>
(1)インクの調製
下記表8に示した処方1〜4に従って各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターにて加圧濾過を行い、インクを調製した。尚、色材Aを用いて、処方1〜4に従って調製したインクをそれぞれA1〜A4、色材Bを用いて、処方1〜4に従って調製したインクをそれぞれB1〜B4、以下同様にして、A1〜G4の合計28種のインクを調製した。
Figure 2006188711
(2)d75値の測定
インクA1〜G4について、小角X線散乱法により散乱角プロファイルを測定した。但し、処方3及び4に従って調製したインクは、それぞれ純水で1.67倍に希釈した後に、小角X線散乱法により散乱角プロファイルを測定した。散乱角プロファイルの測定条件は以下に示す通りである。
・装置:Nano Viewer(理学製)
・X線源:Cu−Kα
・出力:45kV−60mA
・実効焦点:0.3mmφ+Confocal Max−Flux Mirror
・1st Slit:0.5mm、2nd Slit:0.4mm、3rd Slit:0.8mm
・照射時間:40min
・ビームストッパー:3.0mmφ
・測定法:透過法
・検出器:Blue Imaging Plate
得られた散乱角プロファイルから、X線回折データ処理ソフトJADE(Material Data Inc.製)を用いて、バックグラウンドを除去したピーク面積、及び、同ピーク面積全体の75%以上が含まれる2θ値(2θ75値)を測定した。又、2θ75値から、下記式(2)に基づいてd75値を算出した。結果を表9に示す。
Figure 2006188711
(3)最大吸収波長(λmax)の測定
インクA1〜G4(色材濃度:3.0質量%)を、それぞれ純水で2000倍に希釈した後に、最大吸収波長(λmax)を測定した。結果を表9に示す。最大吸収波長(λmax)の測定条件は以下に示す通りである。
・分光光度計:自記分光光度計(商品名:U−3300;日立製作所製)
・測定セル:1cm 石英セル
・サンプリング間隔:0.1nm
・スキャン速度:30nm/min
・測定回数:5回測定平均
(4)記録物の作成
インクジェット記録装置(商品名:Pixus 950i;キヤノン製)に上記で得られたインクA1〜G4をそれぞれ搭載し、インクジェット用光沢メディア(商品名:PR101;キヤノン製)に、印字dutyを5、12、21、29、35、43、51、58、66、74、85、90、100%と変化させた13段階の階調パターンを印字して、記録物を作成した。
(5)耐ブロンズ性の評価
上記で得られた記録物の13段階の階調パターンにおいて、ブロンズ現象が発生する印字dutyを目視で確認し、その印字dutyをブロンズ現象が発生する印字dutyとした。一般にブロンズ現象は印字dutyが高くなるのに従って発生しやすくなる傾向がある。つまり、ブロンズ現象が発生する印字dutyが低いほどブロンズ現象が発生しやすく、ブロンズ現象が発生する印字dutyが高いほどブロンズ現象が発生しにくいインクと言える。耐ブロンズ性の基準は以下の通りである。評価結果を表9に示す。
A:ブロンズ現象が発生する印字dutyが、90%以上である。
B:ブロンズ現象が発生する印字dutyが、66%以上90%未満である。
C:ブロンズ現象が発生する印字dutyが、43%以上66%未満である。
D:ブロンズ現象が発生する印字dutyが、43%未満である。
(6)耐環境ガス性の評価
上記で得られた記録物を、オゾン試験装置(商品名:OMS−H;スガ試験機製)中に置き、温度40℃、湿度55%、オゾンガス濃度2ppmの環境で20時間、オゾン暴露を行った。前記暴露試験前後の記録物の50%duty部における反射濃度から、下記式(3)に基づいて、残存濃度率を算出した。尚、反射濃度の測定には、マクベスRD−918(マクベス製)を用いた。耐環境ガス性の基準は以下の通りである。評価結果を表9に示す。
Figure 2006188711
(式(3)中、dO3はオゾン暴露後の反射濃度、diniはオゾン暴露前の反射濃度である。)
A:残存濃度率が、88%以上である。
B:残存濃度率が、83%以上88%未満である。
C:残存濃度率が、80%以上83%未満である。
D:残存濃度率が、80%未満である。
Figure 2006188711
以上より、本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩である色材を用いた場合、インクのd75値が6.50nm未満の場合、耐環境ガス性が十分ではない場合があり、d75値が7.10nmより大きい場合、耐ブロンズ性が十分ではない場合があることが確認された。
小角X線散乱法の測定原理図である。 フタロシアニン系色材及びトリフェニルメタン系色材の小角X線散乱プロファイルである。 フタロシアニン系色材の分子集合体の分散距離の概念図である。 記録装置の斜視図である。 記録装置の機構部の斜視図である。 記録装置の断面図である。 ヘッドカートリッジにインクタンクを装着する状態示した斜視図である。 ヘッドカートリッジの分解斜視図である。 ヘッドカートリッジにおける記録素子基板を示す正面図である。
符号の説明
M2041 分離ローラ
M2060 給紙トレイ
M2080 給紙ローラ
M3000 ピンチローラホルダ
M3030 ペーパーガイドフラッパー
M3040 プラテン
M3060 搬送ローラ
M3070 ピンチローラ
M3110 排紙ローラ
M3120 拍車
M3160 排紙トレイ
M4000 キャリッジ
M5000 ポンプ
M5010 キャップ
E0002 LFモータ
E0014 電気基板
H1000 ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド
H1100 第1の記録素子基板
H1101 第2の記録素子基板
H1200 第1のプレート
H1201 インク供給口
H1300 電気配線基板
H1301 外部信号入力端子
H1400 第2のプレート
H1500 タンクホルダー
H1501 インク流路
H1600 流路形成部材
H1700 フィルター
H1800 シールゴム
H1900 インクタンク
H2000 イエローノズル列
H2100 マゼンタノズル列
H2200 シアンノズル列
H2300 淡シアンノズル列
H2400 ブラックノズル列
H2500 グリーンノズル列
H2600 淡マゼンタノズル列

Claims (9)

  1. 少なくとも、色材を含有するインクジェット用インクにおいて、
    前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物又はその塩であり、前記色材の含有量(質量%)が、インクジェット用インク全質量に対して3.0質量%以上であり、
    且つ、吸光度を測定して得られた、前記インクジェット用インクを2000倍に希釈したインクにおける最大吸収波長(λmax)が、612.0nm以上616.0nm以下であることを特徴とするインクジェット用インク。
    一般式(I)
    Figure 2006188711
    (一般式(I)中、Mはアルカリ金属又はアンモニウムであり、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、スルホン基、又はカルボキシル基(但し、R、Rが同時に水素原子となる場合を除く)であり、Yは塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、又はモノ若しくはジアルキルアミノ基であり、l、m、nはそれぞれl=0から2、m=1から3、n=1から3(但し、l+m+n=3から4)であり、置換基の置換位置は4位又は4’位である。)
  2. 前記色材が、下記一般式(II)で表される化合物又はその塩である請求項1に記載のインクジェット用インク。
    一般式(II)
    Figure 2006188711
    (一般式(II)中、Mはアルカリ金属又はアンモニウムであり、l、m、nはそれぞれl=0から2、m=1から3、n=1から3(但し、l+m+n=3から4)であり、置換基の置換位置は4位又は4’位である。)
  3. 前記色材が、少なくともl≧1の化合物を含有する請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
  4. 前記最大吸収波長(λmax)が、612.0nm以上614.0nm以下である請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット用インク。
  5. 更に、水及び水溶性有機溶剤を含有し、前記水溶性有機溶剤が、2−ピロリドンであり、且つ、インクジェット用インク中の2−ピロリドンの含有量(質量%)が、色材の含有量(質量%)に対して50%以上である請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット用インク。
  6. インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行う工程を有するインクジェット記録方法において、前記インクが、請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  7. インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、前記インクが、請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  8. インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とする記録ユニット。
  9. インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、前記インクが、請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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