JP2006184313A - 赤外遮断材料、熱線カット部材及び反応防止部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、耐熱耐久性が良好で製造プロセスが容易でしかも安価な赤外遮蔽材料、及びこれを用いた熱線カット部材や反応防止部材を得ることを課題とする。
【解決手段】平均粒径が50〜800nmの範囲の透光性誘電体微粒子2と、この透光性誘電体微粒子2の表面に形成され、Niを主体とする被膜3とを有し、波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、可視光領域の少なくとも一部の光を透過することを特徴とする赤外遮蔽材料1。
【選択図】図1

Description

本発明は、赤外遮断材料、この赤外遮断材料を用いた熱線カット部材や反応防止部材に関する。
従来、窓ガラスや自動車用ガラス等に赤外線、特に熱赤外線の遮蔽機能を付与することが行われている。これは、赤外線を吸収して遮断することによって、室内や車内の温度上昇を抑えるためである。また、熱線カット部材、反応防止部材等としても、ガラス部材や樹脂部材等に赤外線の吸収・遮蔽機能を付与した赤外遮蔽部材が用いられている。更に、これ以外の分野においても赤外線を選択的に吸収・遮蔽する部材が使用されており、その用途は多岐に渡っている。
上述した赤外遮蔽材料としては、ITO、ZnO:Al等の導電性金属酸化物の膜や微粒子の混合物、あるいはAg等の金属膜とTiO,SiO,ZnO等の誘電体膜とを積層した多層膜等が使用されている。
これらのうち、ITO、ZnO:Al等の導電性金属酸化物の膜や微粒子は、材料によりカット域が決定され、1ミクロン付近の近赤外線域をカットすることができない。また、金属膜とTiO,SiO,ZnO等の誘電体膜とを積層した多層膜では、光学特性は比較的良好であり、1ミクロン付近から長波長側の赤外をカットできるが、工程が複雑になり、また形状により利用できるものが限られ、耐熱性が悪い。
このようなことから、金等のナノロッドの利用も提案されている。しかし、この場合も耐熱性が悪く、コスト高となる。その他、Agも挙げられるが、大気中に存在するSOx中の硫黄(S)成分と反応して劣化しやすいという問題がある。
また、最近では、Au,Ag,Pd等の金属粒子の粒径を数十nm以下まで微細化することで特定波長に吸収が生じることが見出されている。即ち、粒径が数十nm以下のナノ微粒子にすると、特定波長で電磁波である光と金属内の電子が相互作用して、特定波長で自由電子の集団的振動が励起され、光の透過率に鋭いピークを有する吸収が生じる。具体的には、Auナノ粒子は520nm付近の可視域で、Agナノ粒子は430nm付近の可視域で、Pdナノ粒子は紫外域に吸収が生じる。しかしながら、これらの金属ナノ粒子の吸収波長は主として材料により決まり、大きくは制御できない。
従来、例えば下記特許公報1のようなコアシェル型半導体ナノ粒子や、下記特許公報2のような金属ナノロッド含有高分子フィルム、及び下記特許公報3のような金属ナノロッド組成物が知られている。
特開2003−64278号公報 特開2003−315531号公報 特開2003−313506号公報
本発明は、こうした問題点を解消するためになされたもので、波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、耐熱耐久性が良好で製造プロセスが容易でしかも安価な赤外遮蔽材料、及びこれを用いた熱線カット部材や反応防止部材を提供することを目的とする。
請求項1記載の赤外遮蔽材料は、平均粒径が50〜800nmの範囲の透光性誘電体微粒子と、この透光性誘電体微粒子の表面に形成され、Niを主体とする被膜とを有し、波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、可視光領域の少なくとも一部の光を透過することを特徴とする。
請求項2記載の赤外遮蔽材料は、前記透光性誘電体微粒子が、SiO,Al,ZrO,Yのいずれか一種もしくはその混合物であることを特徴とする。
請求項3記載の赤外遮蔽材料は、Niを主体とする被膜の厚みが4〜100nmであることを特徴とする。
請求項4記載の赤外遮蔽材料は、Niを主体とする被膜が、Niと、Pd,Ag,Fe,Cr,P,Bのいずれかの混合物層であること特徴とする。
請求項5記載の赤外遮蔽材料は、Niを主体とする被膜上に、SiO,TiO,ZrOのいずれかからなる薄層を形成したことを特徴とする。
請求項6記載の赤外遮蔽材料は、高分子組成物に混合したことを特徴とする。
請求項7記載の赤外遮蔽材料は、ガラス、セラミックス組成物に混合したことを特徴とする。
請求項8記載の熱線カット部材は、請求項1乃至5記載の赤外遮断材料とIn,SnO,ZnOを主体とする導電性酸化物微粒子を混合したことを特徴とする。
請求項9記載の赤外遮蔽材料は、平均粒径が50〜800nmの範囲のIn,SnO,ZnOを主体とする導電性酸化物微粒子と、この導電性酸化物微粒子の表面に形成され、Niを主体とする被膜とを有し、波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、可視光領域の少なくとも一部の光を透過することを特徴とする。
請求項10記載の反射防止部材は、請求項8記載の赤外遮断材料を用いたことを特徴とする。
(1)請求項1の発明によれば、波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、耐熱耐久性が良好で製造プロセスが容易でしかも安価な赤外遮蔽材料が得られる。
(2)請求項2の発明によれば、上記(1)と同様な効果を有する。
(3)請求項3の発明によれば、上記(1)と同様な効果を有する。
(4)請求項4の発明によれば、耐熱・対安定性を高めることができる。
(5)請求項5の発明によれば、上記(4)と同様な効果を有する。
(6)請求項6の発明によれば、高分子組成物に混合した樹脂部材を基体に形成し、熱線カット部材、樹脂等のラジカル反応防止部材、あるいは赤外域の選択放射、吸収部材として使用できる。
(7)請求項7の発明によれば、ガラス、セラミックス組成物に混合した透光性部材を基体に形成し、熱線カット部材、樹脂等のラジカル反応防止部材、あるいは赤外域の選択放射、吸収部材として使用できる。
(8)請求8の発明によれば、薄膜組成物に混合したものを基体に形成し、熱線カット部材、樹脂等のラジカル反応防止部材、あるいは赤外域の選択放射、吸収部材として使用できる。
(9)請求項9の発明によれば、吸収波長域を広くすることができる。
(10)請求項10の発明によれば、金属製の被膜内と導電性酸化物微粒子内の電子の相互作用が起こり、吸収特性が改善される。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による可視透過赤外遮蔽材料の構成を模式的に示す断面図である。図中の符番1は、粒子形状を有する可視透過赤外遮蔽材料(赤外光吸収粒子)を示す。この赤外遮蔽材料1は、コア粒子としての球状の透光性誘電体微粒子2と、この微粒子表面に形成されたNiを主体とする被膜3とから構成されている。こうした構成により、波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、可視光領域の少なくとも一部の光を透過する赤外光吸収粒子1が構成されている。
図2は、本発明の第2の実施形態による赤外遮蔽材料の構成を模式的に示す断面図である。図中の符番4は、粒子形状を有する赤外遮蔽材料(赤外光吸収粒子)を示す。この赤外遮蔽材料4は、コア粒子としての粒径約170nmの透光性誘電体微粒子5と、この微粒子表面に形成されたNiを主体とする膜厚約15nmの被膜6とから構成されている。こうした構成により、波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、可視光領域の少なくとも一部の光を透過する赤外光吸収粒子4が構成されている。
前記透光性誘電体微粒子には、可視光領域の少なくとも一部の光を透過させるように透光性材料が適用される。このような透光性誘電体微粒子としては、例えば透光性及び誘電特性を有する金属酸化物微粒子や樹脂微粒子が使用される。これらのうち、前記被膜の形成性等に優れることから、例えばシリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y)から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を適用することが好ましい。透光性誘電体微粒子の平均粒径は、50〜800nmの範囲とする。
このように平均粒径の範囲を設定するのは、次の理由による。即ち、平均粒径が50nm未満であると、吸収ピークを十分に長波長側にシフトすることができないため、可視光領域に吸収が起こり、赤外光吸収粒子として機能させることができない。また、平均粒径が800nmを超えると、吸収ピークの長波長側へのシフト量が大きくなりすぎて、吸収ピークが波長10μnmを越えてしまう。このように、透光性誘電体微粒子の平均粒径が大きいほど、赤外光吸収粒子の吸収ピークは長波長側に存在するようにある。従って、透光性誘電体微粒子の平均粒径に基づいて赤外光吸収ピークを制御することができる。
前記被膜はNiを主体とし、その厚みは4〜100nmとすることが好ましい。ここで、被膜の厚みが4nm未満の場合は、吸収が少なく微粒子の添加量を多くして膜厚を厚くする必要がある。また、被膜の厚みが100nmを超えた場合は、吸収特性は良好になるが、可視透過率が低下傾向となり、用途に応じて決める必要がある。
前記被膜としては、例えばNiと、Pd,Ag,Fe,Cr,P,Bのいずれかの混合物層が挙げられる。こうした構成にすることにより、耐熱・対安定性を高めることができる。また、前記被膜の上には、SiO,TiO,ZrOのいずれかからなる薄層を形成してもよく、この場合、同様の安定性効果が得られる。
本発明に係る赤外遮蔽材料は、実際に使用する場合、同材料を高分子組成物に混合した樹脂部材、ガラス,セラミックス組成物に混合した透光性部材あるいは薄膜組成物に混合したものを基体に形成し、熱線カット部材、樹脂等のラジカル反応防止部材、或いは赤外域の選択放射、吸収部材として使用できる。
また、上述した赤外遮蔽材料とIn,SnO,ZnOを主体とする導電性酸化物微粒子を混合して熱線カット部材とすることができ、これにより吸収波長域を広くすることができる。更に、直接、平均粒径が50〜800nmの範囲のIn,SnO,ZnOを主体とする導電性酸化物微粒子の表面に、Niを主体とする被膜を形成することにより、被膜内と導電性酸化物微粒子内の電子の相互作用が起こり、吸収特性を改善することができる。更には、上述した赤外遮蔽材料を利用して反応防止部材を得ることができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る可視透過赤外遮蔽材料(赤外光吸収粒子)は、図1に示すように、コア粒子としての粒径約150nmの透光性誘電体微粒子2と、この微粒子表面に形成されたNiを主体とする平均膜厚約15nmの被膜(Ni膜)3とから構成されている。前記透光性誘電体微粒子2は、SiOからなる微粒子である。Ni膜3は、表面処理したSiO分散液中、硫酸Niの還元により形成した。
第1の実施形態に係る赤外光吸収粒子によれば、波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、耐熱耐久性が良好で製造プロセスが容易でしかも安価な赤外遮蔽材料を得ることができる。事実、こうした構成の赤外光吸収粒子による波長と吸収との特性図は、図3に示すとおりである。
前述したように、Au,Ag,Pd等の金属を数十nm以下の微粒子にした場合、波長が主として材料により決まり、大きくは制御できなかった。これに対し、本発明の構造にした場合、透光性誘電体微粒子2の径を大きくするに従って長波長側に吸収を移動させることができる。ここで、Au,Pdは高価であり、Ag,Niがコスト面ではより優位である。また、上記実施形態のように、Niを用いた場合、製造面では、Ag等よりも高濃度で製造可能で、表面状態等の影響を受けにくいので、コストの面で優れている。また、単独物質としてはAgより大気中等で安定であるというメリットを有する。
第1の実施形態による赤外光吸収粒子1は、例えば、ガラス、樹脂組成物、セラミックス組成物等に混合して赤外遮断材料として使用される。また、赤外光吸収粒子1自体をシリカ等の無機結合剤や透明樹脂等の有機結合剤を用いて膜化し、例えば熱線をカットする窓ガラスや自動車用ガラスに好適に用いられ、これら以外の熱線カット部材、反応防止部材、選択放射部材、選択吸収部材等としても有用である。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る可視透過赤外遮蔽材料(赤外光吸収粒子)4は、図2に示すように、コア粒子としての粒径約170nmの透光性誘電体微粒子5と、この微粒子表面に形成されたNiを主体とする平均膜厚約15nmの被膜(Ni膜)6とから構成されている。前記透光性誘電体微粒子5は、錫がドープされた酸化された酸化インジウム(ITO微粒子)からなる。前記Ni膜6は、Ni膜3と同様な処理により形成した。こうした構成の可視透過赤外遮蔽材料による波長と吸収との特性図は、図4に示すとおりである。
第2の実施形態に係る赤外光吸収粒子4によれば、第1の実施形態の赤外光吸収粒子と同様な効果が得られる。事実、こうした構成の赤外光吸収粒子による波長と吸収との特性図は、図4に示すとおりである。
また、第2の実施形態に係る赤外光吸収粒子4も、第1の実施形態と同様な用途に使用することができる。
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
図1は、本発明の第1の実施形態における赤外光吸収粒子を模式的に示す断面図である。 図2は、本発明の第2の実施形態における赤外光吸収粒子を模式的に示す断面図である。 図3は、図1の赤外光吸収粒子の波長と吸収との関係を示す特性図である。 図4は、図2の赤外光吸収粒子の波長と吸収との関係を示す特性図である。
符号の説明
1,4…可視透過赤外遮蔽材料(赤外光吸収粒子)、2,5…透光性誘電体微粒子、3,6…被膜(Ni膜)。

Claims (10)

  1. 平均粒径が50〜800nmの範囲の透光性誘電体微粒子と、この透光性誘電体微粒子の表面に形成され、Niを主体とする被膜とを有し、
    波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、可視光領域の少なくとも一部の光を透過することを特徴とする赤外遮蔽材料。
  2. 前記透光性誘電体微粒子が、SiO,Al,ZrO,Yのいずれか一種もしくはその混合物であることを特徴とする請求項1記載の赤外遮断材料。
  3. Niを主体とする被膜の厚みが4〜100nmであることを特徴とする請求項1または2記載の赤外遮断材料。
  4. Niを主体とする被膜が、Niと、Pd,Ag,Fe,Cr,P,Bのいずれかの混合物層であること特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の赤外遮断材料。
  5. Niを主体とする被膜上に、SiO,TiO,ZrOのいずれかからなる薄層を形成したことを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の赤外遮断材料。
  6. 高分子組成物に混合したことを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の赤外遮断材料。
  7. ガラス、セラミックス組成物に混合したことを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の赤外遮断材料。
  8. 請求項1乃至5記載の赤外遮断材料とIn,SnO,ZnOを主体とする導電性酸化物微粒子を混合したことを特徴とする熱線カット部材。
  9. 平均粒径が50〜800nmの範囲のIn,SnO,ZnOを主体とする導電性酸化物微粒子と、この導電性酸化物微粒子の表面に形成され、Niを主体とする被膜とを有し、
    波長800nm〜10μmの赤外光領域の特定波長に対して選択的な吸収機能を有すると共に、可視光領域の少なくとも一部の光を透過することを特徴とする赤外遮蔽材料。
  10. 請求項8記載の赤外遮断材料を用いたことを特徴とする反応防止部材。
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