JP2006179364A - 燃料電池システム、セパレータ積層体、及び燃料電池スタック - Google Patents

燃料電池システム、セパレータ積層体、及び燃料電池スタック Download PDF

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Abstract

【課題】燃料電池スタックから漏洩した流体を集積するための機構をコンパクトにする。
【解決手段】隣接するセパレータ12a,12b間において水素ガス及び冷却水が流通する領域を囲うように設けられた第1の水素ガスケット71a及び第3の冷却水ガスケット71cの外側に、第1の外周ガスケット71b及び第3の冷却水ガスケット71dを設けた。これらガスケット71a,71cとガスケット71b,71dとにより囲まれる領域A,B内に、セパレータ12a,12bを貫通する漏ガス検知マニホールド61と漏水検知マニホールド62を設けた。さらに、これら検知マニホールド61,62から漏れ出た水素ガス及び冷却水を検知する水素検知器及びレベルセンサを設けた。
【選択図】 図2

Description

本発明は、セパレータ積層体を含む燃料電池スタックを備える燃料電池システムに係り、特に、燃料電池スタックから漏洩した流体を集積するための機構をコンパクトにする技術に関するものである。
燃料電池システムにおいては、反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)の漏れを正確に検知することが非常に重要である。かかる要請に応えるべく、特許文献1には、容器内に設けられて燃料電池本体の全側方と上方とを覆っている覆いを有し、かつ、該覆いの上部にイナートガス放出ラインの一端を連通接続すると共に、該ガス放出ラインにガス検知手段を設けてなる、燃料電池からのガス漏洩検知装置が開示されている。
この構成によれば、燃料電池本体から容器内に漏洩した電池作動ガスは、覆いによって包囲されて捕集されるので、それをガス検知手段で早期に検知することができ、安全性が高まる。
特開平04−220955号公報
特許文献1の構成によれば、燃料電池本体の内部から容器内に漏洩した反応ガスは、容器内でイナートガスに殆ど拡散することなく、覆いで包囲されて捕集されるので、薄められていない漏洩ガスを検知することになり、早期検知が可能になる反面、燃料電池から漏洩した反応ガスを捕集するための機構が大掛かりになってしまう、という課題がある。
そこで、本発明は、燃料電池スタックから漏洩した流体を集積するための機構がコンパクトな燃料電池システムと、該燃料電池システムを実現するためのセパレータ積層体及び燃料電池スタックを提供することを目的とする。
本発明の燃料電池システムは、膜−電極接合体とその両面に配されるセパレータとを有するセルが複数積層されてなる燃料電池スタックと、該燃料電池スタックからの流体漏れを検知する漏れ検知装置とを備える燃料電池システムであって、前記燃料電池スタックは、隣接するセパレータ間において流体が流通する領域を囲うように設けられた第1のシール材と、前記第1のシール材の外側に設けられた第2のシール材と、これら第1のシール材と第2のシール材とにより囲まれる領域内にてセパレータを貫通し該領域内から外側への流体移動を許容する許容部とを備え、前記流体漏れ検知装置は、前記許容部から外側に移動した流体を検知する流体検知手段を備える。
かかる構成において、第1のシール材の内側から流体漏れが生じると、漏れ出た流体は上記領域内に貫通形成された許容部を介して外側へと移動する。この外側に移動した流体は、流体検知手段により早期に検知される。
本発明の燃料電池システムは、膜−電極接合体とその両面に配されるセパレータとを有するセルが複数積層されてなる燃料電池スタックと、該燃料電池スタックからの流体漏れを検知する漏れ検知装置とを備える燃料電池システムであって、前記燃料電池スタックは、隣接するセパレータ間において流体が流通する領域を囲うように設けられた第1のシール材と、前記第1のシール材の外側に設けられるシール材であってその少なくとも一部が内側から外側への流体移動を許容する許容部を有する第2のシール材とを備え、前記漏れ検知装置は、前記許容部から外側に移動した流体を検知する流体検知手段を備える。
かかる構成において、第1のシール材の内側から流体漏れが生じると、漏れ出た流体は第2のシール材に設けられた許容部を介して外側へと移動する。この外側に移動した流体は、流体検知手段により早期に検知される。
前記許容部は、燃料電池スタックが配置された場合に重力方向上方となる箇所に設けられる構成でもよい。かかる構成において、例えば水素ガス等の気体(流体)が第1のシール材の内側から漏れ出ると、漏れ出た気体は重力方向上方に移動する。重力方向上方には許容部が設けられているので、漏れ出た気体の捕集はより確実となる。
前記許容部は、燃料電池スタックが配置された場合に重力方向下方となる箇所に設けられる構成でもよい。かかる構成において、例えば冷却水等の液体(流体)が第1のシール材の内側から漏れ出ると、漏れ出た液体はその自重により重力方向下方に移動する。重力方向下方には許容部が設けられているので、漏れ出た液体の捕集はより確実となる。
前記漏れ検知装置は、前記許容部の近傍にて流体を吸引する吸引マニホールドを備える構成でもよい。かかる構成によれば、許容部を介して第1のシール材の内側から外側に移動した流体をより確実に捕集して検知することが可能となる。
前記吸引マニホールドを介して吸引した流体に、前記第1のシール材から漏れ出た流体が含まれるか否かを検知し、その検知タイミングに基づいて、いずれの第1のシール材から流体が漏れ出たかを特定する特定手段を備える構成でもよい。かかる構成によれば、漏れ出た流体の検知はもとより、漏洩箇所を特定することができるので、適切な措置を講ずることができる。
本発明のセパレータ積層体は、積層方向に流体を隔離するセパレータの積層体であって、隣接するセパレータ間において流体が流通する領域を囲うように設けられた第1のシール材と、前記第1のシール材の外側に設けられた第2のシール材と、これら第1のシール材と第2のシール材とにより囲まれる領域内にてセパレータを貫通し該領域内から外側への流体移動を許容する許容部とを備える。
かかる構成において、第1のシール材の内側から流体漏れが生じると、漏れ出た流体は上記領域内に貫通形成された許容部を介して外側へと移動する。したがって、許容部から外側に移動した流体を検知する流体検知手段を設置しておけば、流体漏れの早期検知が可能となる。
本発明のセパレータ積層体は、積層方向に流体を隔離するセパレータの積層体であって、隣接するセパレータ間において流体が流通する領域を囲うように設けられた第1のシール材と、前記第1のシール材の外側に設けられるシール材であって、その少なくとも一部が内側から外側への流体移動を許容する許容部を有する第2のシール材とを備える。
かかる構成において、第1のシール材の内側から流体漏れが生じると、漏れ出た流体は第2のシール材に設けられた許容部を介して外側へと移動する。したがって、許容部から外側に移動した流体を検知する流体検知手段を設置しておけば、流体漏れの早期検知が可能となる。
本発明の燃料電池スタックは、上記いずれかの構成のセパレータ積層体の少なくとも一方を備える。かかる構成によれば、流体漏れの検知と漏洩箇所の特定をコンパクトな漏れ検知装置にて実施することが可能となる。
本発明によれば、第1のシール材の内側から流体漏れが生じると、漏れ出た流体は上記領域内に貫通形成された許容部、或いは、第2のシール材に設けられた許容部を介して外側へと移動し、この外側に移動した流体を流体検知手段により早期に検知することが可能となる。よって、第1のシール材の内側から外側に漏れ出た流体を捕集するための機構をコンパクトにしつつ、漏れ出た流体を早期に検知することが可能となる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る燃料電池システムについて、車載に好適な固体高分子電解質型の燃料電池スタックを例に説明する。
<第1実施形態>
燃料電池システムは、図1に示すように、最小発電単位となるセル2を複数積層してなる燃料電池スタック1と、該燃料電池スタック1からの流体漏れを検知する漏れ検知装置100とを備えて構成されたものである。
燃料電池スタック1は、複数のセル2を積層してなるセル積層体を有し、セル積層体の両端に位置するセル2の外側には、順次、不図示の集電板、絶縁板およびエンドプレートが各々配設されている。
セル2は、図2に示すように、MEA11と、MEA11を挟持する一対のセパレータ12a,12bとで構成され、全体として積層形態を有している。MEA11および各セパレータ12a,12bは、平板状の外形形状を有しており、MEA11の外形は、各セパレータ12a,12bの外形よりも僅かに小さく形成されている。
MEA11は、高分子材料のイオン交換膜からなる電解質膜21と、この電解質膜21を両面から挟んだ一対の電極(アノードおよびカソード)22a,22bとで構成され、一方の電極(アノード)22aには、燃料ガスとしての水素ガスが供給され、他方の電極(カソード)22bには、空気や酸化剤などの酸化ガスが供給される。これら二つの反応ガスによってMEA11内で電気化学反応が生じ、セル2は起電力を得る。
各セパレータ12a,12bは、セル積層方向でみて流体(水素ガス、酸化ガス、冷却水)を隔離すると共に、該流体をセル内またはセル間に導く流路が形成されたものであり、ガス不透過の導電性材料で構成されている。導電性材料としては、例えばカーボンや導電性を有する硬質樹脂のほか、アルミニウムやステンレス等の金属(メタル)が挙げられる。
セパレータ12aの電極22a側となる内側の面には、図2では具体的な流路形状の図示を省略したが、水素ガスのガス流路31aが複数形成され、その反対側の外側の面には、冷却水流路32が複数形成されている。同様に、セパレータ12bの電極22b側となる内側の面には、酸化ガスのガス流路31bが複数形成され、その反対側の外側の面には、図2では具体的な流路形状の図示を省略したが、冷却水流路32が複数形成されている。
セパレータ12a,12bの一側縁部、つまり、車載状態(燃料電池スタックが配置された場合)で上下方向(重力方向)に沿って延在する側縁部の一方には、酸化ガスの入口側のマニホールド41、水素ガスの入口側のマニホールド42、および冷却水の入口側のマニホールド43が貫通形成されている。一方、セパレータ12a,12bの他側縁部には、酸化ガスの出口側のマニホールド51、水素ガスの出口側のマニホールド52、および冷却水の出口側のマニホールド53が貫通形成されている。
また、セパレータ12a,12bの上縁部、つまり、車載状態で左右方向(水平方向)に沿って延在する縁部の上側には、漏ガス検知マニホールド61が貫通形成されていると共に、セパレータ12a,12bの下縁部、つまり、車載状態で左右方向(水平方向)に沿って延在する縁部の下側には、漏水検知マニホールド62が貫通形成されている。
このように、燃料電池スタック1が車両に配置(搭載)された場合に、漏ガス検知マニホールド61は重力方向上方となる箇所に設けられている一方、漏水検知マニホールド62は重力方向下方となる箇所に設けられている。また、これらの検知マニホールド61,62は、車載状態における水平方向略中央に形成されており、燃料電池スタック1の状態ではセル積層方向に沿って直線状に並んで漏ガス検知通路101および漏水検知通路102を形成する。
セパレータ12aにおける水素ガス用のマニホールド42,52は、水素ガスのガス流路31aに連通している。同様に、セパレータ12bにおける酸化ガス用のマニホールド41,51は、酸化ガスのガス流路31bに連通している。また、各セパレータ12a,12bにおける冷却水のマニホールド43,53は、冷却水流路32に連通している。このような各セパレータ12a,12bの構成により、セル2には、酸化ガス、水素ガスおよび冷却水が適切に供給される。
セパレータ12aとMEA11との間には、当該セパレータ12aの水素ガスに関連する通路(ガス流路31a、マニホールド42,52)を全て気密・液密に囲繞する一続きの第1の水素ガスケット(第1のシール材)71aと、図2では図示を省略しているが、この第1の水素ガスケット71aの外側領域にて酸化ガスのマニホールド41,51及び冷却水のマニホールド43,53をそれぞれ個別に気密・液密に囲繞する第1の空気ガスケット(第1のシール材)及び第1の冷却水ガスケット(第1のシール材)と、セパレータ12aの外周に沿って延在する一続きの第1の外周ガスケット(第2のシール材)71bとが介在している。
つまり、第1の外周ガスケット71bは、第1の水素ガスケット71a,第1の空気ガスケット,及び第1の冷却水ガスケット(以下、「第1の水素ガスケット71a等」という。)の外側に設けられ、これら第1の水素ガスケット71a等と第1の外周ガスケット71bとにより囲まれる領域A内に、漏ガス検知マニホールド61及び漏水検知マニホールド62が貫通形成されている。なお、本実施形態において、この領域A内には、検知マニホールド61,62しか形成されておらず、検知マニホールド61,62以外の要素は何ら設けられていない。
同様に、セパレータ12bとMEA11との間には、当該セパレータ12bの酸化ガスに関連する通路(ガス流路31b、マニホールド41,51)を全て気密・液密に囲繞する一続きの第2の空気ガスケット(第1のシール材)と、この第2の空気ガスケットの外側領域にて水素ガスのマニホールド42,52及び冷却水のマニホールド43,53をそれぞれ個別に気密・液密に囲繞する、不図示の第2の水素ガスケット(第1のシール材)及び不図示の第2の冷却水ガスケット(第1のシール材)と、セパレータ12bの外周に沿って延在する一続きの第2の外周ガスケット(第2のシール材)とが介在している。
セパレータ12bと、スタック状態において該セパレータ12bに隣接する他のセル2のセパレータ12aとの間には、セパレータ12b,12aの冷却水に関連する通路(冷却水流路32、マニホールド43,53)を全て気密・液密に囲繞する一続きの第3の冷却水ガスケット(第1のシール材)71cと、この第3の冷却水ガスケット71cの外側領域にて酸化ガスのマニホールド41,51及び水素ガスのマニホールド42,52をそれぞれ個別に気密・液密に囲繞する、不図示の第3の空気ガスケット(第1のシール材)及び第3の水素ガスケット(第1のシール材)と、セパレータ12bの外周に沿って延在する一続きの第3の外周ガスケット(第2のシール材)71dとが介在している。
つまり、第3の外周ガスケット71dは、第3の冷却水ガスケット71c,第3の空気ガスケット,及び第3の水素ガスケット(以下、「第3の冷却水ガスケット71c等」という。)の外側に設けられ、これら第3の冷却水ガスケット71c等と第3の外周ガスケット71dとにより囲まれる領域B内に、漏ガス検知マニホールド61及び漏水検知マニホールド62が貫通形成されている。なお、本実施形態において、この領域B内には検知マニホールド61,62しか形成されておらず、検知マニホールド61,62以外の要素は何ら設けられていない。
以上の通り、本実施形態の燃料電池スタック1は、MEA11を挟んで隣接するセパレータ12a,12b、言い換えれば、1つのセル2を構成するセパレータ12a,12b間において、水素ガスが流通する領域を囲うように設けられた第1及び第2の水素ガスケット71aと、これら第1及び第2の水素ガスケット71aの各外側に設けられた第1及び第2の外周ガスケット71bと、これら第1及び第2の水素ガスケット71aと第1及び第2の外周ガスケット71bとによって囲まれた各領域A内にてセパレータ12a,12bを貫通し該領域A内から外側への水素ガスの移動を許容する漏ガス検知マニホールド61と、を備えたセル積層体を含むものである。
加えて、本実施形態の燃料電池スタック1は、MEA11を挟まないで隣接するセパレータ12b,12a、言い換えれば、隣り合う2つのセル2の一方のセル2のセパレータ12bと他方のセル2のセパレータ12a間において、冷却水が流通する領域を囲うように設けられた第3の冷却水ガスケット71cと、この第3の冷却水ガスケット71cの外側に設けられた第3の外周ガスケット71dと、これら第3の冷却水ガスケット71cと第3の外周ガスケット71dとによって囲まれた領域B内にてセパレータ12b,12aを貫通し該領域B内から外側への冷却水の移動を許容する漏水検知マニホールド62と、を備えたセル積層体をも含むものである。
漏れ検知装置100は、図1に示すように、漏ガス検知系110、漏水検知系120、及び制御部130を備えて構成されている。同図に示すように、燃料電池スタック1には、各セル2の漏ガス検知マニホールド61がセル積層方向に連通してなる漏ガス検知通路101と、各セル2の漏水検知マニホールド62がセル積層方向に連通してなる漏水検知通路102とが形成されている。
漏ガス検知系110は、漏ガス検知通路101に挿通された吸引管(吸引マニホールド)112、該吸引管112を介して漏ガス検知通路101及び領域A内のガスを吸引するポンプ113、該ポンプ113により吸引したガス中に水素ガスが含まれるか否かを検知する水素検知器(流体検知手段)114、及び吸引管112よりも吸引上流側に配設されたパージ弁115を備えている。
吸引管112は、領域Aに漏れ出た水素ガスの濃度低下を抑制しつつ当該水素ガスを水素検知器114に供給するものであり、重力方向下側を臨む孔151がセル2の積層ピッチに対応して多数形成されてなる。また、吸引管112の内部には、図3に示すように、各孔151から吸引されたガスを拡散させずに吸引濃度のまま水素検知器114に送ることができ、かつ、この水素検知器114までのガス移動速度を固定することのできる充填剤152が封入されている。
充填剤152としては、例えばモレキュラーシーブ等のガスクロマトグラフィ用カラム充填剤の採用が可能である。かかる充填剤152によれば、キャリアガス(空気)以外のガスとの分離が可能となり、水素ガスの検知精度が向上する。
一方、漏水検知系120は、漏水検知通路102の一端に静電容量式のレベルセンサ(流体検知手段)121を備えている。この種のレベルセンサによれば、静電場中に静電容量の異なる物質が存在する場合、つまり、漏水検知通路102に水が存在する場合には、センサの電荷量が変化するので、この変化を利用して漏水の検知及び漏水箇所の特定を行うことができる。
制御部130は、水素検知器114及びレベルセンサ121からの出力信号が入力される一方、ポンプ113及びパージ弁115に対して制御信号を出力する等、漏れ検知装置の全体を統括制御する。加えて、制御部130は、吸引管112を介して吸引したガス中に第1〜第3の水素ガスケット71aから漏れ出た水素ガスが含まれるか否かを水素検知器114からの出力信号に基づき検知すると共に、その検知タイミングに基づいて、いずれの水素ガスケット71aから水素ガスが漏れ出たかを特定する特定手段としても機能する。
次に、流体漏れの検知と漏洩箇所の特定方法について、水素ガスを例にして説明する。図4のフローチャートでは、まず、漏ガス検知系110をパージすべく、パージ弁115を開け(ステップS1)、吸引ポンプ113の運転を開始する(ステップS3)。これにより、燃料電池スタック1の外部から吸引した空気で充填剤152内をパージし、前回吸引実施時に水素ガス漏れが生じていた場合の残留水素ガスを漏ガス検知系110外に排出し、計測に備える。
次いで、パージ弁115を閉じ(ステップS5)、吸引管112の各孔151から吸引を開始する。第1〜第3の水素ガスケット71aの内側から外側に水素ガスが漏れている場合には、水素ガスはその軽さゆえに重力方向上方へ移動する結果、漏ガス検知マニホールド61から漏ガス検知通路101へと移動し、吸引管112に吸引される。吸引管112内の充填剤152内に吸引された水素ガスは、空気をキャリアガスとして充填剤152を移動し、水素検知器114に導入される。
ステップS7では、図5に示すように、パージ弁115を閉じた時点を基準として、水素ガス検知器114が水素ガス濃度のピークを検知するまでの時間tをタイマ等で計測することによって、水素ガスの漏れ検知を行う。そして、水素ガスの漏れを検知した場合には、充填剤152によって水素ガスの移動速度が一定になっていることを利用して、いずれの水素ガスケット71aから水素ガスが漏れ出たかを特定する。
定性的には、時間tが短ければ、水素検知器114により近い水素ガスケット71aから漏れ出たものであり、時間tが長ければ、パージ弁115により近い水素ガスケット71aから漏れ出たものである。パージ弁115を閉じてから水素濃度のピークを検知するまでの時間tと、水素ガスが漏れ出た水素ガスケット71aとの関係は、予め理論的にあるいは実験等の結果に基づき設定されている。これにより、漏れを生じた水素ガスケット71aの特定が可能となっている。
そして、水素検出器114にて水素ガスが検知されたら(ステップS9:YES)、当該漏れ判定処理を終了し、検知されなければ(ステップS9:NO)、ステップS1に戻る。
以上説明したように、本実施の形態による燃料電池システムによれば、水素ガス漏れを早期に検知するための水素ガス捕集機構が、燃料電池スタック1をセル積層方向に貫通する吸引マニホールド12によって構成されているので、燃料電池スタック1の全側方と上部とを包囲して覆うといった大掛かりなものにならず、コンパクトに構成することができる。加えて、漏洩箇所の特定も高精度に行うことができる。
なお、第1〜第3の冷却水ガスケット71b,71dの内側から外側に冷却水が漏れている場合には、冷却水はその自重によって重力方向下方へ移動するので、漏水検知マニホールド62から漏水検知通路102へと移動し、レベルセンサ121にて検知される。よって、コンパクトな構成にて早期に漏水を検知することが可能になると共に、いずれの冷却水ガスケット71b,71dで冷却水漏れが生じたかも特定することができる。
<第2実施形態>
次に、図6及び図7を参照して、第2実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。第1実施形態との主な相違点は、第1〜第3の外周ガスケット71b,71dの構成と、これに関連してセパレータ12a,12bに漏ガス検知マニホールド61および漏水検知マニホールド62を形成しない構成としたこと、さらにこれに関連して漏れ検知装置100の構成を変更したことにある。以下の説明では、第1実施形態と共通する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
第1の外周ガスケット(第2のシール材)81は、第1の水素ガスケット71a,第1の空気ガスケット,及び第1の冷却水ガスケットの外側に設けられ、セパレータ12aの外周に沿って延在するが、図2に示す第1の外周ガスケット71bのような一続きのシール材ではなく、一部が切り欠かれてなる漏ガス検知開口(許容部)82と漏水検知開口(許容部)83を有している。燃料電池スタック1が車両に配置(搭載)された場合に、漏ガス検知開口82は重力方向上方となる箇所に設けられている一方、漏水検知開口83は重力方向下方となる箇所に設けられている。
これらの検知開口82,83は、車載状態で水平方向に延在するシール部81a,81bの略中央部に形成されており、燃料電池スタック1の状態ではセル積層方向に沿って直線状に並ぶ。また、シール部81a,81bは、第1の水素ガスケット71aのうち当該シール部81a,81bに隣接する部分に対して、略一定の間隔を隔てて設けられている。
また、セパレータ12bと、スタック状態において該セパレータ12bに隣接する他のセル2のセパレータ12aとの間に介在する第3の外周ガスケット(第2のシール材)91も、第1の外周ガスケット81と同様に構成されている。つまり、第3の外周ガスケット91は、第3の水素ガスケット,第3の空気ガスケット,及び第3の冷却水ガスケット71cの外側に設けられ、セパレータ12bの外周に沿って延在するが、図2に示す第3の外周ガスケット71dのような一続きのシール材ではなく、一部が切り欠かれてなる漏ガス検知開口(許容部)92及び漏水検知開口(許容部)93を有している。
そして、これらの検知開口92,93は、車載状態で水平方向に延在するシール部91a,91bの略中央部に形成されており、燃料電池スタック1の状態ではセル積層方向に沿って直線状に並ぶ。また、シール部91a,91bは、第3の冷却水ガスケット71cのうち当該シール部91a,91bに隣接する部分に対して、略一定の間隔を隔てて設けられている。
さらに、セパレータ12bとMEA11との間に介在する第2の外周ガスケット(図示略)についても、上記第1及び第3の外周ガスケット81,91と同様に、検知開口を備えて構成されている。
本実施形態に係る漏れ検知装置200では、図7に示すように、漏ガス検知系110の吸引管112が燃料電池スタック1の上方(外部)、つまり、吸引管112の各孔151が漏ガス検知開口82,92をその上方より臨むような位置に設けられている。なお、同図において、パージ弁115や漏水検知系120の図示は省略している。
このような構成によっても、第1〜第3の水素ガスケット71aの内側から外側に水素ガスが漏れている場合には、充填剤152内に吸引された水素ガスが空気をキャリアガスとして充填剤152を移動して、水素検知器114に導入されるので、コンパクトな水素ガス捕集機構にて水素ガス漏れを検知することができると共に、パージ弁を閉じてから水素ガス検知器114が水素ガス濃度のピークを検知するまでの時間tに基づき、いずれの水素ガスケット71aから水素ガスが漏れ出たかを高精度に特定することができる。
なお、本実施形態の構成においても、第1実施形態と同様、水素ガス漏れに限らず、冷却水漏れについても同様に検知及び特定することが可能である。
<第3実施形態>
次に、図8及び図9を参照して、第3実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。第1実施形態との主な相違点は第2実施形態の場合と同様であり、第2実施形態との主な相違点は、図8に示すように、複数の吸引管112a〜112dを燃料電池スタック1,1の上方及び側方に設けることによって、流体(水素ガス、冷却水)の漏洩位置を三次元的に特定することを可能にした点にある。以下の説明では、第1実施形態と共通する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
漏れ検知装置300は、複数の吸引管112a〜112dに対応して、これと同数の漏ガス検知系311〜314を備えている。これら漏ガス検知系311〜314は、合流部Aにて合流しており、漏れ検知の際に吸引ポンプ113で吸引する吸引管112a〜112dを切り換えるための開閉弁201〜204を備えている。例えば、吸引管112aによる漏れ検知を実施する際には、開閉弁201のみが開いており、残りの開閉弁202〜204は閉じている。
そして、吸引管112aによる漏れ検知を所定時間実施したら、開閉弁201を閉じて開閉弁202を開き、吸引管112bによる漏れ検知を実施する。以後同様にして、開閉弁201〜204の開閉を順次切り換えることにより、全ての吸引管112a〜112dの漏れ検知を所定時間実施すると、例えば図9に示すような結果が得られる。
同図において、縦軸Cは水素ガスのガス濃度、横軸Tは経過時間を示している。また、吸引管112aでは時間t1のときに水素ガス濃度のピーク値C1が検知され、吸引管112bでは時間t2のときに水素ガス濃度のピーク値C2が検知され、吸引管112cでは時間t3のときに水素ガス濃度のピーク値C3が検知され、吸引管112dでは水素ガスが検知されなかったことを示している。これらピーク値C1〜C3と時間t1〜t3の関係は、それぞれ「C1>C2>C3」、「t1<t2<t3」である。
この結果に基づけば、いずれの第1の水素ガスケット71aから水素ガスが漏れ出たかを高精度に特定することができるだけでなく、水素ガスの漏洩位置を三次元的に特定することが可能になる。
なお、本実施形態の構成においても、第1実施形態と同様、冷却水漏れについても同様に三次元的に検知及び特定することが可能である。
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明をこれに限定するものではなく、その要旨を逸脱しない限り各種構成部品を適宜設計することができる。例えば、上記実施形態では、本発明の許容部としてシール材の一部を切り欠いた検知開口82,83,92,93を例示したが、シール材の内側から外側への流体移動を許容する構成であれば、セル積層時にシールとして機能しない程度に他の部位よりも高さを低くしたものでもよい。
また、セパレータは、導電性を有することが好ましいが、導電性を有していなくてもよい。また、上記実施の形態では、セパレータ12aは一方の面に冷却水流路が形成されて他方の面に水素ガス流路が形成されたもの、セパレータ12bは一方の面に冷却水流路が形成されて他方の面に酸化ガス流路が形成されたものであったが、一方の面に水素ガス流路が形成されて他方の面に酸化ガス流路が形成されたものでもよい。さらに、一方の面にのみ水素ガス流路、酸化ガス流路、冷却水流路のいずれかが形成されていて、他方の面には何ら流路が形成されていない構成でもよい。
第1実施形態に係る燃料電池システムのシステム構成図。 図1に示すセルの分解斜視図。 図1に示す吸引管の断面図。 漏れ検知処理の内容を説明するフローチャート。 漏れ検知結果を示す図。 第2実施形態に係る燃料電池システムにおけるセルの分解斜視図。 同燃料電池システムのシステム構成図。 第3実施形態に係る燃料電池システムのシステム構成図 同実施形態による漏れ検知結果を示す図。
符号の説明
1…燃料電池スタック、2…セル、11…MEA(膜−電極接合体)、12a,12b…セパレータ、61…漏ガス検知マニホールド(許容部),62…漏水検知マニホールド(許容部)、71a…第1の水素ガスケット(第1のシール材)、71b…第1の外周ガスケット(第2のシール材)、71c…第1の冷却水ガスケット(第1のシール材)、71d…第3の外周ガスケット(第2のシール材)、82,92…漏ガス検知開口(許容部)、83,93…漏水検知開口(許容部)、100,200,300…漏れ検知装置、112,112a〜112d…吸引管(吸引マニホールド)、114…水素検知器(流体検知手段)、121…レベルセンサ(流体検知手段)、130…制御部(特定手段)、A,B…領域

Claims (9)

  1. 膜−電極接合体とその両面に配されるセパレータとを有するセルが複数積層されてなる燃料電池スタックと、該燃料電池スタックからの流体漏れを検知する漏れ検知装置とを備える燃料電池システムであって、
    前記燃料電池スタックは、隣接するセパレータ間において流体が流通する領域を囲うように設けられた第1のシール材と、前記第1のシール材の外側に設けられた第2のシール材と、これら第1のシール材と第2のシール材とにより囲まれる領域内にてセパレータを貫通し該領域内から外側への流体移動を許容する許容部とを備え、
    前記流体漏れ検知装置は、前記許容部から外側に移動した流体を検知する流体検知手段を備える燃料電池システム。
  2. 膜−電極接合体とその両面に配されるセパレータとを有するセルが複数積層されてなる燃料電池スタックと、該燃料電池スタックからの流体漏れを検知する漏れ検知装置とを備える燃料電池システムであって、
    前記燃料電池スタックは、隣接するセパレータ間において流体が流通する領域を囲うように設けられた第1のシール材と、前記第1のシール材の外側に設けられるシール材であってその少なくとも一部が内側から外側への流体移動を許容する許容部を有する第2のシール材とを備え、
    前記漏れ検知装置は、前記許容部から外側に移動した流体を検知する流体検知手段を備える燃料電池システム。
  3. 前記許容部は、燃料電池スタックが配置された場合に重力方向上方となる箇所に設けられる請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記許容部は、燃料電池スタックが配置された場合に重力方向下方となる箇所に設けられる請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池システム。
  5. 前記漏れ検知装置は、前記許容部の近傍にて流体を吸引する吸引マニホールドを備える請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池システム。
  6. 前記吸引マニホールドを介して吸引した流体に、前記第1のシール材から漏れ出た流体が含まれるか否かを検知し、その検知タイミングに基づいて、いずれの第1のシール材から流体が漏れ出たかを特定する特定手段を備える請求項5に記載の燃料電池システム。
  7. 積層方向に流体を隔離するセパレータの積層体であって、
    隣接するセパレータ間において流体が流通する領域を囲うように設けられた第1のシール材と、
    前記第1のシール材の外側に設けられた第2のシール材と、
    これら第1のシール材と第2のシール材とにより囲まれる領域内にてセパレータを貫通し該領域内から外側への流体移動を許容する許容部とを備えるセパレータ積層体。
  8. 積層方向に流体を隔離するセパレータの積層体であって、
    隣接するセパレータ間において流体が流通する領域を囲うように設けられた第1のシール材と、
    前記第1のシール材の外側に設けられるシール材であって、その少なくとも一部が内側から外側への流体移動を許容する許容部を有する第2のシール材とを備えるセパレータ積層体。
  9. 請求項7又は8に記載のセパレータ積層体の少なくとも一方を備える燃料電池スタック。
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