JP2006177858A - レーダー装置のマルチパスによる疑似目標の判定方法及びこの判定方法を用いたレーダ監視装置 - Google Patents

レーダー装置のマルチパスによる疑似目標の判定方法及びこの判定方法を用いたレーダ監視装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 レーダーの受信信号に含まれる不要信号のうち、レーダーから目標へ引いたいわゆるレーダー視線上の遠方側(レーダーと反対側)に発生するマルチパスエコーによる擬似目標を誤目標として識別する適当な方法がなかつた。
【解決手段】 得られた目標情報と、既に追尾している追尾目標とを1対1に対応付ける相関処理を行なう相関処理手段81を設ける。そしてどの追尾目標とも対応がない目標情報は新たな追尾目標とする。一方、レーダー視線上の目標情報の手前側(レーダー側)に既存の追尾目標4が存在し、尚且つ、当該目標情報を仮の追尾目標として追尾した結果が、マルチパスエコーによる擬似目標の固有のパターンを示すか否かを判定するマルチパス判定手段82を設け、固有のパターンを示すと判定した場合は、誤目標として棄却する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、レーダーの映像から目標の自動検出、追尾処理を行なって、目標の位置、速度、進行方向などを、シンボル(特定の色、形状を持つ)としてリアルタイムに画面表示するレーダー監視装置に関し、特に電波のマルチパスにより生じる疑似目標の判定方法及びこの判定方法を用いたレーダ監視装置に関する。
レーダは種々の目的、用途に用いられている。ここでは空港面上(地上)を移動する航空機や車両の監視に用いるレーダ装置を例として説明するが、この発明はこの用途に限定されるものではない。
空港面上を監視するレーダ装置では、航空機管制を容易にするため、レーダ反射波をそのまま表示(通常はPPI:Plan Position Indicator)するのではなく、画像中から自動的に航空機を抽出し、各航空機をその位置、速度、進行方向などを、シンボル(特定の色、形状を持つ)化してリアルタイムに画面へ重畳表示する。しかし、レーダ装置のアンテナは地上から少し高い位置に設置され、地上面に向けて電波を放射するので、地上に存在する航空機だけでなく背後の地面や建造物なども反射波として捕らえられ、中には航空機に似た反射波も含まれている。反射波を直接画像化するレーダでは反射映像の質や大きさをオペレータが見ることによって疑似映像を見分けることができるが、上記に説明したように位置、速度、進行方向などを、シンボル化して表示するレーダ監視装置においては、疑似反射も真の反射も、一旦航空機と認識すれば同じ図形として表示されるため、人が識別することはできず、したがって反射波から目標を抽出する段階で、真か疑似であるかを確実に識別する方法が求められている。
従来のレーダー監視装置は、レーダ映像データ(以下レーダービデオ)に目標検出部でデジタル信号処理を施して目標検出処理を行なっている。さらに、得られた目標情報をもとに目標処理部でデータ上でTWS(Track While Scan)追尾を行なっている。
レーダービデオには目標信号と不要信号が混在する。不要信号としては、主に、グランドクラッタや受信機雑音がある。このようなレーダービデオから、目標を探知・識別し正確な目標情報を出力するために信号処理が必要となる。なお、不要信号はランダムに変動しており、正しく目標を検出できるかどうかは確率の問題となることが多い。つまり目標を逃さず検出できるようにすると誤警報もおおくなり、誤警報を減らすようにすると真の目標を検出できない場合も発生する。
そこで、雑音やクラッタを取り除いて目標情報を抽出しやすくするとともに、誤警報を極力減らす方法として、CFAR処理などの信号処理を施すのである。CFAR(Constant False Alarm Rate;定誤警報受信)処理とは、実際に目標がないのに目標ありと判定してしまう誤警報確率Pfaがある一定の値となるように閾値を定めて、誤警報確率がそれ以下になるように、そのうえで最大の信号検出確率Pdを得るようにする信号処理手法である。
近年では、容量の大きいコンピュータメモリを手軽に使えるようになったため、目標の監視領域を距離セル単位で設定する手法もある。空港面の場合は、航空機の移動する領域である滑走路や誘導路などを監視領域として設定し、それ以外の旅客ターミナルビルや分離帯などはブランク領域としてデータ上で目標信号を遮断(無視)することで、誤警報の発生を防止している。
また、新しい目標の発生を禁止するNAI(Not Auto Initiation)領域を設定し、NAI領域に発生した新たな目標を誤目標として棄却する手法がある。TWS追尾で、目標検出部で得られた目標情報と、既に追尾している目標とを1対1に対応付ける相関処理を行なうが、この際、どの追尾目標とも対応がない目標情報は新しい目標と見なし、これがNAI領域にあれば誤目標として棄却することで、誤警報を排除する。空港面の場合は、主に誘導路をNAI領域として設定する。一方で、滑走路やエプロン付近のように新しい目標(滑走路における着陸機、エプロン付近における出発機など)が発生する領域はNAI領域としての設定を外し、もし、どの追尾目標とも対応がない目標情報があれば、新しい正規の目標と見なす。なお、NAI領域の設定には前述の監視領域の設定と同様に距離セル単位で設定する手法がある。
さらに、コンピュータによるTWS追尾データ処理の中で、航空機としての固有の移動パターンを示さないものは誤目標として棄却する手法もある。例えば、TWS追尾では、新しい目標が発生した場合、これを、一旦、仮の追尾目標とする。そして、次のスキャンで、その仮の追尾目標に対応付けされる目標情報があれば、この仮の追尾目標を真の追尾目標と見なして登録する。一方で、対応付けされる目標情報がなければ、誤目標と見なして棄却する。この手法は、一般にM中N判定(同一目標について、M回の捜索中にN回以上の検出入力があれば目標と見なす)と呼ばれ、上記説明は特に2中2判定(2回の捜索中に2回の検出あれば目標と見なす)の説明である。また、仮の追尾目標を真の追尾目標へ登録する条件として、目標速度(仮の追尾から算出)の上限と下限を設定し、この範囲に入らないものを誤目標として棄却する方法もある。
以上のように、検出された目標が真の目標か否かを見分ける手法は種々のものが提案され、実用化されているが、これらのどの方法でも見分けることができない偽目標が発生する場合がある。それはマルチパスによる偽映像である。マルチパスとは、レーダアンテナと目標との間で直接の往復経路で伝搬する電波でなく、レーダアンテナが丁度目標の方向に電波を放射したとき、真の目標から反射した電波が更に地面や建造物などで再反射して受信されるものである。理解を助けるためこの時の伝播経路の例を図8に示す。即ち、アンテナ1の直接の受信波2(目標4からの反射波)以外に、マルチパス3が発生した結果、目標4の後方(遠方)に擬似目標5が発生する。空港面では、大型機が存在する場合にマルチパスによる擬似目標が発生しやすいにも関わらず、従来のレーダー監視装置は、マルチパスによる擬似目標を誤目標として棄却することが困難である。この擬似信号は、特に、レーダー視線(レーダーから目標へ引いたライン)上において目標の遠方側(レーダーと反対側)に発生しやすく、誘導路10と滑走路11が平行に並ぶような地理的条件下(図4参照)では、もし、大型航空機が誘導路を移動すれば、そのレーダー視線上の遠方側に発生するこの擬似信号が、あたかも滑走路に着陸した別の新しい目標かのように見える。従来のレーダー監視装置は、このような擬似目標を、真の目標信号と区別できないため、これを目標と見なしてしまう結果、誤警報率の悪化を招くという問題があった。
公開特許公報 特願2000−103084「空港面監視装置」 吉田孝監修「改訂 レーダー技術」社団法人電子情報通信学会出版、平成11年5月25日、p.1−271
空港面では、大型機が存在する場合にマルチパスによる擬似目標が発生しやすいにも関わらず、従来のレーダー監視装置は、マルチパスによる擬似目標を誤目標として棄却することが困難である。マルチパスによる擬似信号はレーダー視線上において目標の遠方側に発生しやすく、誘導路と滑走路が平行に並ぶような地理的条件下では、大型航空機が誘導路を移動すれば、擬似信号があたかも滑走路に着陸した別の新しい目標であるかのように見える。従来のレーダー監視装置は、このような擬似目標を、真の目標信号と区別できないため、これを目標と見なして誤警報率の悪化を招くという課題があった。
この発明に係るレーダー監視装置は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、レーダー視線上の目標の遠方側に発生するマルチパス擬似目標を誤目標と見なして棄却することができ、これによって誤警報率が改善されるレーダー監視装置を提供するものである。
この発明のレーダー監視装置のマルチパスによる疑似目標の判定方法は、
レーダアンテナから第1の目標へ引いたレーダー視線上の前記第1の目標の遠方側に発生した第2の目標のレーダ画像が、予め定めたマルチパスにより生じる擬似目標固有のパターンを備えているか否かを判定する手順、
前記第2の目標が前記固有のパターンを備えておれば前記第2の目標が疑似目標であるとして警告する手順を含むものである。
また、この発明のレーダ監視装置は、レーダアンテナから第1の目標へ引いたレーダー視線上の前記第1の目標の遠方側に発生した第2の目標のレーダ画像が、予め定めたマルチパスにより生じる擬似目標が有する固有のパターンを備えているか否かを判定するマルチパス判定手段、
予め定めたマルチパスにより生じる擬似目標が有する固有のパターンを備えておれば前記第2の目標が疑似目標であるとして警告する手段を備えたものである。
以上のように、この発明によれば、マルチパスによる擬似目標を識別して棄却できるように構成したので、目標の誤認識を減らすことができる。
実施の形態1.
この発明を空港面において航空機の位置を探知するレーダー監視装置(空港面探知装置、ASDE:Airport Surface Detecting Equipmentとも言う)に適用した実施の形態1のレーダー監視装置について図により説明する。図1において、アンテナ1を備えたレーダー部6は電波を放射し、目標(図示しない)から反射されてきた電波を受信してレーダ画像信号(レーダビデオ)を生成する。レーダビデオ信号は目標検出部7に入力され、このレーダービデオにデジタル信号処理を施して画像中から目標の画像を抽出する。目標検出部7から得られた目標情報は、この目標情報をもとにデータ上でTWS(TrackWhile Scan)追尾を行ない、目標の位置、速度、進行方向などを算出する目標処理部8に入力される。目標処理部8の出力(追尾目標の情報)は出力部9を介して図示しない後段装置へ出力される。出力部9には例えば図示しない画像表示部が設けられている。
目標処理部8には画像信号を相関処理する相関処理手段81と、相関処理の結果などにより、マルチパスによる疑似信号であるか否かを判定するマルチパス判定手段82が含まれている。
本発明の理解を助けるため、まず、目標処理部8の動作の概要について説明する。
真の目標とマルチパスによる擬似目標とを区別するために、図2の真か疑似かわからないある仮の追尾目標5(第2の目標という)について、M中N判定を行い、その後にレーダー視線上の手前側(レーダー側)に既存の追尾目標4(第1の目標という)が存在するかどうかを確認する。
もし、仮の追尾目標5のレーダー視線上の手前側に既存の追尾目標4が存在しなければ、前記仮の目標5(第2の目標)は新しい真の目標である。もし、仮の追尾目標5のレーダー視線上の手前側に既存の追尾目標4が存在すれば、前記仮の目標5(第2の目標)は、追尾目標4(第1の目標)のマルチパスによる擬似目標であるか、あるいは、新たな真の目標がたまたま追尾目標4と同一レーダー視線上に並んだかのどちらかであると判定される。
そこで、次に、第1の目標4の目標サイズを確認する。第1の目標4が小型目標ならば、マルチパスによる擬似目標は発生しない確率が高いから、第1の目標4の目標サイズ(レーダーの反射信号強度(RCSという)から判定する)がある閾値(予め実験して定めておくことができる)よりも小さければ、第1の目標4を小型機と見なし、第2の目標5はマルチパスによる擬似信号ではない(新たな目標である)とする。
一方で、追尾目標4の目標サイズが前述のある閾値よりも大きく、第1の目標4が中型機あるいは大型機と見なされる場合は、更に、第2の目標5がマルチパスによる疑似目標か否かを判定しなければならない。これには、仮の追尾目標5(第2の目標)の目標検出処理結果およびTWS追尾結果を解析して、マルチパスによる擬似目標が有する特有の(固有の)パターンを示すかどうかを判定する。固有のパターンを示すものは、マルチパスによる誤目標と判定して棄却する。(それ以外は真の目標と見なす。)ここで、マルチパスによる擬似目標の固有のパターンには、いくつかのものがあるが詳細に付いては後述する。
目標処理部8の処理内容を図2のフローチャートを用いて詳細に説明する。図2の処理は所定時間間隔(例えば、0.1〜1秒ごと)で行なわれる。
ステップS1において、目標検出部7からレーダービデオにデジタル信号処理を施して得られた目標情報を取り込む。
ステップS2において、相関処理手段81では、目標検出部7で得られた目標情報と、既にTWS追尾している目標とを1対1に対応付け(以後、相関処理と呼ぶ)を行なう。相関処理の方法は公知の多くの方法があるが、例えばTWS追尾している目標の予測移動範囲(以後、追尾ゲートと呼ぶ)内に存在する目標情報の中から、最も距離が近い目標情報を選んで対応付けを行なうNN(Nearest Neighbor)方式などを用いればよい。
ステップS3において、ステップS2の相関処理の結果、追尾目標との対応付けを確認する。どの追尾目標とも対応が取れなかった目標情報は、ステップS4において、当該目標情報の位置が、新しい目標の発生を禁止するNAI(Not AutoInitiation)領域の内か外かを判定し、NAI領域外であれば新しい目標が発生したと見なし、ステップS15において仮の追尾目標として保持する。一方で、NAI領域内であれば、新しい目標の発生が禁止されているから、ステップS14において誤目標として棄却する。
ステップS3で追尾目標と対応が取れた目標情報は、ステップS5において当該追尾目標の位置、速度、進行方向などを更新するのに用いる。更新には、前回までの目標情報と、今回対応が取れた目標情報をもとにフィルタリングを行なうが、フィルターとしては、観測値の誤差モデルと目標の運動モデルから最適値を計算するカルマンフィルターなどを用いればよい。なお、ステップS3で対応付けされる目標情報が存在しなかった追尾目標は、当該目標の運動モデルに従い、位置、速度、進行方向などを予測値で更新(以後、メモリートラックと呼ぶ)する。
ステップS5で前述の更新を行った後、ステップS6では、追尾目標が仮の追尾目標か否か(即ち真の目標か)を確認する。仮の追尾目標でないならば、ステップS13において追尾処理を行なった結果から得られる、当該目標の位置、速度、進行方向などを後段の出力部9または出力部の表示器へ出力する。
一方、仮の追尾目標ならば、ステップS7においてM中N判定(M回の観測(スキャン)中、N回以上目標と認識される)がOKかどうかを確認する。追尾回数(初期の追尾開始時を1回に含める)がM回以下であり、かつ、目標情報の入力があった回数(初期の入力を1回に含める)がN回以上の場合はOKと判定する。この場合は、ステップS9へ進む。N/Mの判定比率は予め与えておく。
それ以外の場合は、ステップS8においてM中N判定がNGかどうかを確認する。目標情報の入力のあった回数がN回に未到達にも関わらず、追尾回数がM回目を迎えた場合はNGと判定し、当該目標をステップS14において誤目標として棄却する。また、ステップS8で目標情報の入力のあった回数がN回に未到達であるが、追尾回数もM回未満の場合は、M中N判定は保留となり、ステップS15において仮の追尾を保持し、次スキャンへ仮の追尾が継続される。
ステップS7でM中N判定がOKの場合、ステップS9において、当該目標(第2の目標5)の速度を確認する。当該目標の仮の追尾から算出された速度が、パラメータで設定される速度下限と速度上限の範囲内であればOKと判断して、ステップS10〜ステップS12のマルチパス判定手段82へ進む。速度が、速度下限に満たない、あるいは速度上限を超える場合はNGと判断してステップS14において誤目標として棄却する。ここで、速度上限及び速度下限はパラメータとして予め与える。理解を助けるため上記の判断条件を図3に示す。
マルチパス判定手段82の動作について説明する。
ステップS10において、図4に示すように、当該目標5のレーダー視線上の手前側(レーダー側)に別の追尾目標の存在(図では真の目標4として図示している)を確認する。以下の条件(1)、(2)を両方満たす場合は、別の追尾目標4が存在すると見なしてステップS11へ進み、マルチパスエコーによる擬似目標かどうかの判定を継続する。一方、条件(1),(2)のいずれか一つでも満たされない場合は、マルチパスエコーによる擬似目標ではないと見なしてステップS13へ進み、真の追尾目標として出力する。
条件(1)
レーダー中心の極座標における当該目標5の方位角12(以後、アジマスと呼ぶ)±δθ(δθ:パラメータ)[deg]以内の方向に追尾目標4が存在する。
条件(2)
レーダー中心の極座標における当該目標5の距離13(以後、レンジと呼ぶ)よりも、条件(1)で見つけた目標4の距離14の方が小さい。
理解を助けるため条件(1),(2)を図5に示す。
ステップS11において、ステップS10で発見した目標4の目標サイズを確認する。目標のサイズは、反射信号強度RCSから判定する。目標4が小型目標ならば、マルチパスによる擬似目標は発生しないから、以下の条件(3)を満たす場合は、目標4を小型機と見なし、当該目標5はマルチパスによる擬似信号ではないと見なしてステップS13へ進み、真の追尾目標として出力する。条件(3)を満たさない場合は、目標4が中型機あるいは大型機と見なしてステップS12へ進みマルチパスエコーによる擬似目標かどうかの判定を継続する。
条件(3) RCS < RCSth
ここで、
RCS:追尾目標4のレーダーの反射信号強度
RCSth:小型目標か否かを判定するため予め定めた反射強度閾値(パラメータ)
条件(3)を図6に示す。
ステップS12において、当該目標5と目標4との進行方向が同一かどうかを確認する。これには、当該目標5及び目標4における追尾結果から得られる進行方向及び速度をもとに以下の条件から判定する。条件(4)、(5)を両方満たす場合は、当該目標5と目標4が同一方向へ進んでいると見なし、ステップS14においてマルチパスによる擬似目標として棄却する。一方、以下の条件(4),(5)のいずれか一つ、あるいは両方を満たさない場合は、ステップS13において当該目標5を真の目標として出力する。
条件(4) |hed ‐ hed’| < hedth
ここで
hed:当該目標5の進行方向
hed’:目標5の進行方向
hedth:同一方向と見なす進行方向の差の閾値(パラメータ)
条件(5) V > Vth
ここで
V:目標4の速度
th:予め与えた速度の下限閾値(パラメータ)
なお、条件(4)の同一方向と見なす進行方向の差の閾値は、例えば90度とする。また、条件(5)は目標4の速度がある指定速度を超えることを示しているが、これは、進行方向の計算値を信頼できる値と見なすためで、速度の下限閾値は、例えば2Km/hとしている。条件(4),(5)を図7に示す。
したがって、ステップS9では、真の目標とマルチパスによる擬似目標が混在していたが、上記発明の実施により、マルチパスによる擬似目標は、ステップS10からステップS12において識別され、誤目標または疑似目標であった場合はステップS14において誤目標として棄却されるため、目標の誤警報率の改善が可能となる。
なお、本発明のマルチパスによる疑似目標の判定方法を用いた場合、仮の追尾目標5が真の目標であるにも関わらず、たまたま、既存の追尾目標4と同一レーダー視線上に並び、かつレーダー視線上で追尾目標4の遠方側に位置し、さらに、追尾目標4と進行方向が同一の場合には、誤目標として棄却されてしまう場合がある。しかし、このような場合が生じる確率はその発生条件に偶然が重ならなければならないので極めて低く、まず発生することがないことが確認されている。万が一に誤目標として棄却されたとしても、次のスキャンで再度、目標情報の入力があり、新たに追尾目標として作成/登録されるため、誤った判定の影響は新たな目標の追尾開始タイミングが数スキャン(最大でN-1スキャン)遅れるに留まる。
ステップS10〜ステップS12は、この発明に言う、予め定めたマルチパスにより生じる擬似目標が有する固有のパターンを備えているか否かを判定する手順である。またステップS14は疑似目標であるとして棄却する手順である。
図1の出力部9はこの発明に言う疑似目標棄却手段である。
実施の形態2.
背景技術の説明、及び発明が解決しようとする課題の説明において、この発明はレーダ反射波をそのまま画像化するのではなく、画像中から自動的に航空機を抽出し、その位置、速度、進行方向などを、シンボル化してリアルタイムに画面表示する方式のレーダ装置において、疑似反射像も真の反射像も、一旦航空機と認識すれば同じ図形として表示されるため、人が識別することができないのでシンボル化する前に識別する必要があると説明した。
しかし、これは、本発明がそのような方式のレーダ装置にしか使用できないと言うことではなく、単にそのようなレーダ装置に用いた場合には効果が顕著であると言うことである。実際、レーダ画像をそのまま表示する方式のレーダ装置であっても、疑似映像か真の映像か直ちには識別が困難な例はしばしばあり、本発明を用いて識別結果を出力すれば、人による判定をより確実なものとすることができる。この場合には、例えば図2のフローチャートのステップS14において、誤目標として棄却する代りに、目標画像はそのまま残し、別塗、警告表示またはアナウンスを行うようにすればよい。
この発明のレーダ監視装置は、空港面探知装置への応用を例として説明したが、他の地上移動物体の監視装置であってもよく、上記発明の実施の形態1と同様の効果を奏する。
実施の形態1のレーダー監視装置の構成図である。 図1の目標処理部における処理手順のフローチャートである。 マルチパス判定を行うか否かを判断する条件の説明図である。 マルチパスによって生じた擬似目標を判定する手段の説明図である。 条件(1),(2)の説明図である。 条件(3)を説明する図である。 条件(4),(5)を説明する図である。 真の目標のレーダー視線方向の遠方側にマルチパスによる擬似目標の発生を示す図である。
符号の説明
1 アンテナ、 2 直接受信波、 3 マルチパス、 4 真の目標、
5 マルチパス擬似目標、 6 レーダー部、 7 目標検出部、
8 目標処理部、 9 出力部、 10 誘導路、 11 滑走路、
12 方位角、 13 疑似目標の距離、 14 真の目標の距離、
81 相関処理手段、 82 マルチパス判定手段。

Claims (10)

  1. レーダアンテナから第1の目標へ引いたレーダー視線上の前記第1の目標の遠方側に発生した第2の目標のレーダ画像が、予め定めたマルチパスによる疑似目標固有のパターンを備えているか否かを判定する手順、
    前記第2の目標が前記固有のパターンを備えておれば前記第2の目標が疑似目標であるとして警告する手順を含むことを特徴とするレーダー監視装置のマルチパスによる疑似目標の判定方法。
  2. 前記固有のパターンは、前記第1の目標が予め定めた大きさ以上であるとの第1の条件と、前記第1の目標が前記第2の目標と同じ進行方向へ移動しているとの第2の条件とを満たすものであることを特徴とする請求項1に記載のレーダー監視装置のマルチパスによる疑似目標の判定方法。
  3. 前記第1の目標のレーダ反射強度をもとに前記第1の目標の大きさの判断を行う大きさ判定手順を備えた請求項2に記載のレーダー監視装置のマルチパスによる疑似目標の判定方法。
  4. 前記第2の目標のレーダー視線上のレーダ側に前記第1の目標が存在すると判定する条件として、前記第1の目標の方位角と前記第2の目標の方位角との角度差が予め定めた所定の角度以下であることと、当該レーダアンテナから前記第1の目標までの距離が前記第2の目標までの距離より小さいこととを用いることを特徴とする請求項1に記載のレーダー監視装置のマルチパスによる疑似目標の判定方法。
  5. レーダーにより捕らえた目標の位置、速度、進行方向などを、特定の色または特定の形状のシンボルとしてリアルタイムに画面表示するレーダー監視装置に用いられるとともに、 前記第2の目標が前記固有のパターンを備えておれば前記第2の目標が疑似目標であるとして棄却する手順を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置のマルチパスによる疑似目標の判定方法。
  6. レーダアンテナから第1の目標へ引いたレーダー視線上の前記第1の目標の遠方側に発生した第2の目標のレーダ画像が、予め定めたマルチパスにより生じる擬似目標固有のパターンを備えているか否かを判定するマルチパス判定手段、前記マルチパスにより生じる擬似目標固有のパターンを備えておれば前記第2の目標が疑似目標であるとして警告する手段を備えたことを特徴とするレーダー監視装置。
  7. 前記固有のパターンは、前記第1の目標の大きさが予め定めた大きさ以上であるとの第1の条件と、前記第1の目標が前記第2の目標と同じ進行方向へ移動しているとの第2の条件とを満たすものであることを特徴とする請求項6に記載のレーダー監視装置。
  8. 前記第1の目標の反射強度をもとに前記第1の目標の大きさの判断を行う大きさ判定手段を備えた請求項7に記載のレーダー監視装置。
  9. 前記第2の目標のレーダー視線上のレーダ側に前記第1の目標が存在すると判定する条件として、前記第1の目標の方位角と前記第2の目標の方位角との角度差が予め定めた所定の角度以下であることと、当該レーダアンテナから前記第1の目標までの距離が前記第2の目標までの距離より小さいこととを用いることを特徴とする請求項7に記載のレーダー監視装置。
  10. レーダーにより捕らえた目標の位置、速度、進行方向などを、特定の色または特定の形状のシンボルとしてリアルタイムに画面表示するレーダー監視装置に用いられるとともに、前記第2の目標が前記固有のパターンを備えておれば前記第2の目標が疑似目標であるとして棄却する疑似目標棄却手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載のレーダ監視装置。
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