JP2006167527A - マイクロチャンネル構造体、それを用いたマイクロチップ、マイクロリアクター、及び向流接触方法 - Google Patents

マイクロチャンネル構造体、それを用いたマイクロチップ、マイクロリアクター、及び向流接触方法 Download PDF

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Abstract

【課題】気体及び/又は液体からなる2種類の流体を繰り返し連続的に多段並流接触でき、効率的に物質移動操作が行える新規なマイクロチャンネル構造体、それを用いたマイクロチップ、マイクロリアクター、及び向流接触方法を提供する。
【解決手段】微細な流体流路が配設された2枚の基板を積層し一体化させてなるマイクロチャンネル構造体において、流体流路は、蛇行する部分を有しており、かつ、一体化により形成される横方向流路が、2種類の異なる流体を合流して直線的な界面を形成しながら同一の方向へ流出させる並流接触部として機能することを特徴とするマイクロチャンネル構造体;2種類の異なる流体をマイクロチャンネル構造体の流体流路に向流で連続的に供給し、複数箇所の並流接触部において、流体間の物質移動操作を行うことを特徴とする流体の向流接触方法などにより提供。
【選択図】図3

Description

本発明は、マイクロチャンネル構造体、それを用いたマイクロチップ、マイクロリアクター、及び向流接触方法に関し、より詳しくは、気体及び/又は液体からなる2種類の流体を繰り返し連続的に向流接触でき、効率的に物質移動操作が行える新規なマイクロチャンネル構造体、それを用いたマイクロチップ、マイクロリアクター、及び向流接触方法に関する。
現在、ガラスやシリコンあるいはプラスチック等の基板内に形成した微細な流路(マイクロチャンネル流路)を利用する精密な微量分析や成分分離、あるいは化学合成、物質生産等を行なうマイクロ化学が注目されている。マイクロ化学とは、水溶液と油相液のように、相互に溶解しないような2種類、或いはそれ以上の流体をマイクロチャンネル構造体内で接触させ、すなわち、接触界面を形成させて、その界面を通じて起こる成分の移動、反応を利用するものである。このため、マイクロ化学においては、例えば、異なる2種類の気体或いは液体の間に界面を形成させ、その界面を安定に維持しながら、それらの流体を流通、接触させる操作が基本となる。
ここで、2種類の流体を接触させる方式としては、一般に、並流方式と向流方式とがある。前者は図1のように、実線で示す第一の流体が入り口1から流路1−2、2−3、3−4を流れて、出口4へと移動し、同時に、点線で示す第二の流体が他端の入り口5から流路5−2、2−3、3−6と流れて、出口6へと移動する方式である。このように、並流方式では、2種類の流体がひとつのマイクロチャンネル構造体内で、流路2−3の部分において界面を形成しながら同一方向へ向かって流れる接触方式といえる。
これに対して後者は、図2に例示するように、実線で示す第一の流体が基板に形成された入り口1から流路1−2、2−3、3−4を流れて、出口4へと移動するが、同時に、点線で示す第二の流体は、実線で示す第一の流体と対向する位置の入り口5から流路5−3、3−2、2−6を流れて、出口6へと移動する方式である。このように、向流方式では、流路2−3(流路3−2)の部分で2種類の流体が界面を形成しながら夫々対向する方向へ流れる接触方式である。
これらの接触方式のうち、連続した接触操作によって物質移動を効率的に達成するためには、通常は、並流接触よりも向流接触がはるかに接触効率が良く、このため図2に例示したような向流接触操作を繰り返すことによって、いわゆる連続的な多段向流接触を実現するための開発が指向されている。
しかし、マイクロチャンネル構造体を用いたマイクロリアクター内では、従来のマクロな空間における重力の効果よりも流体の慣性、粘性、界面張力の効果が極めて大きいために、向流接触操作では流体の流動が不安定となり安定な接触界面を形成しにくく、例えば、1つの流体がマイクロチャンネルに入った直後に、本来はマイクロチャンネルのもう一方の端部から流出すべきであるが、もう一方の流体の出口となるべきから端部から直ちに流出してしまう等の現象が生じてしまう。このようなことから、現状におけるマイクロリアクターの開発状況では、向流接触操作の実現が非常に困難な状況にある。(例えば、非特許文献1、1725頁参照)。
マイクロチャンネル内における流体の界面接触は、2つの流体が気体である場合、気体と液体である場合、いずれも液体である場合があるが、2種の液体が接触することによる液液界面の形成は、主として界面張力によるものであり、各流体の特性や界面張力、相互の溶解性、液の供給流速、あるいは液温等を考慮し、界面の安定性や相分離の容易性を確保する必要がある。
このため、一方のマイクロチャンネルの内表面をオクタデシルシラン(ODS)等によってマイクロチャンネルの内表面を化学修飾処理することによって親油性とし、他方のマイクロチャンネルの内表面は親水性のままに維持して、両者のマイクロチャンネルを含む2枚の基板を接合させ、各流体をそれぞれのマイクロチャンネル内で流動させながら界面を形成し、相互に特定の成分を授受する方法がほぼ開発されている。
近年では、安定な並流接触操作はほぼ実現されており、マイクロチャンネルの界面部に50〜100マイクロメートル程度の間隔で破線状の仕切り壁(ガイドライン)を設置する方法(例えば、非特許文献2参照)、或いはマイクロチャンネルの集合部の底部に液体間の接触界面を安定化させうる突起状の溝構造(ガイド条)を設置する方法(例えば、特許文献1参照)などの改良も進められている。
特許文献1には、基板上に形成された複数本のマイクロチャンネルが基板上で一本に集合した集合チャンネル部を有し、集合チャンネル部の底部には、各マイクロチャンネルから集合チャンネル部に流入された液体間の界面を安定化しうるガイド条を有しているマイクロチャンネル構造が記載されている。ただし、この並流接触操作では比較的短い界面形成となり、界面を通じた物質移動が遅い場合などでは、十分な物質移動性能が得られるものとはいえない。
また、2流体を斜めの方向から接触させる交差接触が提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。この特許文献2には、マイクロチャンネルを配設した基板がマイクロチャンネル配設面を対向させて積層した構造体であって、各々の基板に配設されたマイクロチャンネルは、その一部において相互に立体交差されており、この立体交差部において、マイクロチャンネル内を流通する液体の液液界面が形成されるようにしたマイクロチャンネル立体交差構造体が記載されている。そして、このマイクロチャンネル立体交差構造体により、上下各々の基板のマイクロチャンネルに液体を流通させて、立体交差部において液液界面が形成される多層液とする立体交差多層液の形成方法が記載されている。
交差接触を開示した非特許文献1(1726頁)によれば、菱形の交差接触領域の長さは、マイクロチャンネルの幅である260マイクロメートルから最長でも960マイクロメートル程度であり、接触界面積では、90度直交する場合の0.25mmに比べて20%程度増加するにすぎない。ここでは、あくまでも交差接触の繰り返しを考察しており、完全な並流接触は想定していない。
従って、接触界面積が非常に小さいため、多くの交差を繰り返し行うことによって、はじめてひとつの向流接触に相当するだけの効果が得られるのであり、チップの集積化或いは製作加工の面で困難があった。さらに、ある程度の角度をもった交差も記載されているが、この場合もあくまで交差であり、並流接触の繰り返しによる任意の向流接触とは発想が全く異なる。
そこで、以上のような背景により、異なる2種類の気体或いは液体からなる流体の安定した並流接触界面を容易に実現できるマイクロチャンネル構造体を利用し、連続操作で接触効率の高い連続的な向流接触操作を実現できる簡易な新しい手法が切望されていた。
特開2002−1102公報 特開2003−28836公報 「Anal.Chem.」、Akihide Hibara,et al.,2002,74,pp.1724−1728 「マイクロリアクター技術研究会、九州第6回研究講演会」、2004年3月16日開催
本発明の目的は、複数流体を全体としては互いに対向する方向から供給し、並流接触を繰り返し行うことによって、精密微量分析や目的成分の精密な分離・回収などを行う溶媒抽出、あるいは精密な化学合成等を行うのに有用な物質移動操作を可能とするマイクロチャンネル構造体、それを用いたマイクロチップ、マイクロリアクター、及び向流接触方法を提供することにある。
本発明者らは、かかる従来の課題に鑑み、鋭意研究を行った結果、異なる溶液を別々の微細な流路に供給して物質移動操作を行う場合、界面接触が不安定な対向流あるいは交差流操作によるのではなく、微細な流体流路の一部が蛇行して横方向へ張り出すように形成された基板を2枚積層し、蛇行部分の横方向流路が互いに重なるように一体化して得られる新規なマイクロチャンネル構造体を用いて、界面接触が比較的安定している並流接触操作を2回以上、任意の回数だけ繰り返すことにより、2種類の流体の連続した向流接触操作が行えることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、微細な流体流路が配設された2枚の基板を積層し一体化させてなるマイクロチャンネル構造体において、流体流路は蛇行した部分を有しており、かつ、一体化により形成される横方向流路が、2種類の異なる流体を合流して直線状又は緩やかな曲線状の界面を形成しながら同一の方向へ流出させる並流接触部として機能することを特徴とするマイクロチャンネル構造体が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記流体流路は、並流接触部以外の部分の流路が任意の曲線として形成されていることを特徴とするマイクロチャンネル構造体が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記流体流路は、微細な流体流路が配設された面同士が対向するように2枚の基板を積層させることにより、一つの平面内に形成されていることを特徴とするマイクロチャンネル構造体が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明のマイクロチャンネル構造体を有することを特徴とするマイクロチップが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明のマイクロチャンネル構造体を有することを特徴とするマイクロリアクターが提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜3の発明に係り、マイクロチャンネル構造体の流体流路に、2種類の異なる流体を全体としては向流で連続的に供給し、複数箇所の並流接触部において、流体間の物質移動操作を行うことを特徴とする流体の向流接触方法が提供される。
一方、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、前記2種類の異なる流体が、水溶液と油相液であり、かつ、水溶液と油相液との流体間で溶媒抽出操作を行うことを特徴とする流体の向流接触方法が提供される。
本発明は、異なる流体を2回以上容易かつ安定に接触できる流路(並流接触部)が2枚の基板間に形成されるように、基板を積層一体化させた新規なマイクロチャンネル構造体であり、これを採用することで、全体としては2種類の流体の連続した向流多段接触効果を得ることができる。したがって、マイクロチャンネル内において2種類の流体を長い時間接触させる必要のある溶媒抽出操作のような物質移動操作を行うことができ、また、特定の成分を分離精製、回収、あるいは生産するような連続的な任意の向流操作を容易に実現することが可能となり、2流体の界面を通じた広汎な化学操作に有用である。
このようなことから、本発明のマイクロチャンネル構造体は、極めて適用範囲が広く、高性能なマイクロチップ、またはマイクロリアクター装置などの構成部品として有効に利用することができる。
以下、本発明のマイクロチャンネル構造体、これを備えたマイクロチップ、またはマイクロリアクター、及びこれらを用いた向流接触方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
1.マイクロチャンネル構造体
本発明のマイクロチャンネル構造体は、微細な流体流路が形成された2枚の基板を積層し一体化されたマイクロチャンネル構造体において、流体流路は蛇行した部分を有しており、かつ、一体化により形成される横方向流路が、2種類の異なる流体を合流して直線状又は緩やかな曲線状の界面を形成しながら同一の方向へ流す並流接触部として機能することを特徴としている。
マイクロリアクターの主要部を構成するマイクロチャンネルのような流体を流す微小空間は、比界面積が大きく、成分の拡散移動に要する距離が短く、熱容量が小さいなど、反応場としての条件を精密に制御できるため、既に様々な高効率の化学反応の場として、錯形成反応、溶媒抽出、免疫反応、酵素反応などへの応用が研究されてきた。
マイクロ化学における物質移動操作、例えば溶媒抽出操作では、流体の物質移動速度が小さい場合には、所定の物質移動量を達成するのに長い時間接触させる必要があるものの、マイクロリアクター内で接触時間を任意に設定することができないので、安定な流体流動を維持するためには、ある速度以上の液流速が必要となる。また、溶媒抽出操作で特定の成分を分離精製、或いは回収する場合には、通常その2流体を向流接触させるのが最も接触効率が良い。更に、マイクロリアクターが連続操作できれば、処理能力が向上し、工業的な利用の面で大いに有効である。
従って、マイクロリアクターで、このような多くの理論段数に相当する連続的な向流接触を実現できれば、溶媒抽出などの2流体の界面を通じた様々な物質移動、化学反応などの広汎な化学操作に極めて有用である。
上記の課題を解決するために、本発明は、マイクロチャンネルが配置された複数の基板を積層一体化した構造体において、2種類の流体が同一の方向へ流れるようなマイクロチャンネル内で形成される並流接触界面を通じて物質移動させ、その並流接触操作を任意の回数だけ繰り返すことによって、全体としては連続的な向流接触を達成できるマイクロチャンネル構造体を提供する。
図3に本発明のマイクロチャンネル構造体の一例を示す。このマイクロチャンネル構造体においては、2枚の基板を積層一体化してマイクロチャンネルを構成する場合、流体流路の一部は基板の厚さ方向の流路を伴いながら、上部基板の内部に一方の流体のマイクロチャンネル構造を形成し、同様に、下部基板の内部に他方の流体のマイクロチャンネル構造を形成して、2ヶ所で並流接触の界面を形成するように積層されている。
それぞれの流体流路は、途中から基板の横方向に張り出して蛇行しており、2枚の基板が一体化して構成された2つの流体流路は、マイクロチャンネル構造体全体としてみると梯子形を呈している。そして、上部基板内の実線で示される流体が入り口7から流入し、流路7−8、8−9、9−10、10−11、11−12、12−13、13−14、14−15、15−16、及び出口16から流出する連続した微細な流路を構成している。すなわち、流路9−10、10−11、11−12、12−13、及び13−14で略矩形状に蛇行しており、そのうち横方向の流路9−10、及び13−14が並流接触部となり、ここで下部基板の流体と並流接触する界面が形成される。
これに対して、下部基板内の点線で示される流体が、上部流体の出口側に位置する入り口17から流入し、流路17−18、18−13、13−14、14−19、19−20、20−9、9−10、10−21、21−22及び出口22から流出する連続した微細な流路を構成している。このうち流路13−14、14−19、19−20、20−9、及び9−10が略矩形状に蛇行しており、横方向の流路13−14、及び9−10が、上部の流体と並流接触する並流接触部を形成している。
本発明においては、2枚の基板にマイクロチャンネルを形成し、これを用いてマイクロチップを構成する場合、上部基板の内部にフォトリソグラフィー、ウェットエッチング、ドライエッチング、ドリル機械加工、レーザ加工等の手段で代表されるような様々な方法によって、一方の流体のマイクロチャンネルを容易に作製できる。これは下部基板であっても同様であり、下部基板の内部に他方の流体のマイクロチャンネルを形成させる。次に、横方向に張り出した蛇行流路の横方向流路部分において、並流接触の界面が形成されるように両基板を対応させて、熱的あるいは化学的な融着、圧着などの様々な方法で積層する。
もちろん、マイクロチャンネル幅、高さは達成すべき目的に応じて、任意に設定可能である。例えば、物質の生産を行なう目的ではマイクロチャンネルの幅、高さは大きく設定することもあり得る。極微量分析等を目的とするマイクロチップでは、一般的にはマイクロチャンネル幅、高さは大きくても500μm程度であるため、前記特許文献2のように、ひとつの交差接触を形成する場合では、この幅程度の接触界面の長さしか実現できていなかった。そのため、多くの繰り返し接触が必要となり、マイクロチャンネルの加工や集積化の面で不利であり、ある程度角度を持った交差接触でも接触界面の長さを大幅に改善するのは困難であったが、本発明によれば接触界面の長さを大幅に改善することができる。
図3の場合には、並流接触部が2箇所で形成されているが、蛇行した形状の流路部分が増えれば並流接触部の数を増やすことができるので、それによりさらに成分の物質移動性能を向上させることが可能となる。並流接触部の数は、少なくとも2つ以上であれば特に制限されるものではない。そのマイクロチップの使用する目的や達成すべき物質移動の性能や基板の大きさ、製作の容易性なども考慮して決定される。
基板内の流体流路のうち、マイクロチャンネル内の並流接触部の長さは特に限定されるわけではないが、通常は長ければ長いほど良いが、安定した接触界面が形成されるようにする必要がある。並流接触部の長さは、その界面の幅や流体の種類やそれらの流速などによって異なり、一概に規定できないが、例えば30mm以上の長さの並流接触部を形成できる。これにより交差接触あるいは向流接触よりも十分に長い安定な接触界面を形成することができ、2流体の相分離も容易となる。各並流接触部の相互間の距離も、マイクロリアクターの製作上の制約等がなければ、特に制限なく自由に設定できる。
図3の場合、上部基板では、その表面に流路が形成され、一方、下部基板では、その裏面に流路が形成されているために、上部基板では、流路8−9、10−11、12−13、及び14−15において、基板の厚さに相当する上昇流又は下降流が伴うことになる。また、下部基板では、流路18−13、14−19、20−9、及び10−21において、基板の厚さに相当する上昇流又は下降流が伴うことになる。基板内の流体流路のうち、このような基板厚さ方向の長さは、マイクロリアクターの製作上の制約等がなければ、特に制限なく自由に設定できる。
従って、図4に上部基板の流体流路、図5に下部基板の流体流路を例示するように、基板厚さ方向の長さがなくなるようにして、二つの流路をひとつの平面内に有するようにマイクロチャンネルを配置することが有効である。これにより前記流体流路が、基板の一平面内に形成されているマイクロチャンネル構造体を提供することができる。
前記流体流路は、流路の全てを直線で示したが、必ずしも直線に限られるものではなく、任意の曲線としたり、また、2種類の流体が合流する接点は、必ずしも直角に限られず、Y字型のように角度を持たせて合流させても構わない。マイクロチャンネル構造体の並流接触部は、一般的には直線状又は緩やかな曲線状に形成されることが好ましいが、それ以外の部分の流路は、任意の曲線として形成できる。特に、流れ方向が大きく変わる箇所においては、流れを円滑化できるように、緩やかな曲線に形成されることが望ましい。したがって、並流接触部を含む蛇行した流路部分を便宜上、略矩形状と称したが、本発明においては、楕円形の両端部が欠けた略環状のほか、三角形の頭部が欠けた略台形状、略並行四辺形状、略菱形状などであってもよく、略矩形状に限定されるものではない。
さらに、このような2枚の基板に加えて、上下或いは左右に他の基板あるいは支持板を配置して多数枚積層することによってマイクロチャンネルを3次元に構成し、極めて集積度の高いマイクロチップ積層体を構成することも可能である。すなわち、こうした3次元的な積層体を構成する基板の積層方向は、例示したような水平方向の基板の積層に限定されず、それとは直角な垂直方向に積層してもよく、これによりマイクロチップ、マイクロリアクターの設計自由度を高めることができる。
2.流体の向流接触方法
本発明における流体の向流接触方法は、2種類の異なる流体を、上記のマイクロチャンネル構造体に対して全体としては向流で連続的に供給することにより、複数の並流接触部で流体間の向流操作を行うことを特徴としている。
本発明においては、例えば上部基板及び下部基板からなる2枚の基板を積層することによって作製されたマイクロチャンネル構造体でマイクロチップを構成し、2種類の流体をマイクロチャンネル内に供給して、並流接触するような接触操作ユニットを任意の回数だけ組み合わせて、目的とする操作や用途に応じた連続的な物質移動操作を行うことができる。
前述したように、従来の向流接触操作では流体の流動が不安定となり安定な向流接触界面を形成しにくく、例えば、1つの流体がマイクロチャンネルに入った直後に、もう一方の流体の出口となるべき端部から直ちに流出してしまう等の現象が生じていたが、本発明によれば、十分に安定な並流界面接触を繰り返すことによって、全体としては連続的に向流操作が行われ、最終的には向流接触の効果を達成できる。
図3のマイクロチャンネル構造体を用いる場合、上部基板内の流体は、入り口7から流入して、流路9−10、及び13−14で下部基板の流体と並流接触する界面を形成し、出口16から流出する。これに対して、下部基板内の流体は、上部流体の出口側に位置する入り口17から流入して、流路13−14、及び9−10で上部の流体と並流接触し、出口22から流出する。従って、上部基板及び下部基板のマイクロチャンネル内を流れる2種類の流体は、各接触界面部では並流接触しているにもかかわらず、並流接触部の長さが十分に長く、かつ、複数回の並流接触を繰り返しており、さらに、全体としては向流接触が実現されており、高い物質移動効率を期待することができる。
また、図4の上部基板、図5の下部基板を組み合すことでマイクロチャンネルが形成された構造体を用いれば、基板厚さ方向の流路が省略され、二つの流路がひとつの平面内に存在することから、流体の流れがより安定化し、様々な流体間の物質移動操作を容易に行えるようになる。
本発明は、異なる2種類の流体の組み合わせは特に限定されず、2つの流体が気体である場合、気体と液体である場合、いずれも液体である場合の物質移動操作に適用できるわけであるが、中でも水溶液と油相液との間で溶媒抽出操作を行う流体の連続向流接触に適用したときに得られる効果が大きい。
3.マイクロチップ、マイクロリアクター
本発明においては、上記のマイクロチャンネル構造体を用いたマイクロチップ、マイクロリアクターが提供される。
ここで、マイクロチップとは、一般的には、マイクロ加工技術などを用いて製作された幅数μmから数百μmを中心とするマイクロ空間内の現象を利用した精密微量分析や精密分離などを行えるように構成されたマイクロチャンネル構造体を有するデバイスであり、これら操作だけでなく精密化学合成をも行えるマイクロリアクターの構成部品としても使用されるものである。
また、マイクロリアクターとは、マイクロチャンネル構造体を利用する化学反応・物質生産のための装置であるが、本発明においては、幅数μmから数百μmを中心とするマイクロ空間に限定されず、幅が数mmに達するような空間も含まれるものとする。
本発明によれば、マイクロチャンネル内で2流体の並流接触を複数回繰り返すことのできるマイクロチャンネル構造体を用いているので、全体としては連続的な向流接触操作を簡易に行うことができ、これにより高性能なマイクロチップ或いはマイクロリアクターを自由に実現できることになる。
図1は、平面内に配置された2流体の基本的な並流接触のマイクロチャンネルの説明図である。 図2は、平面内に配置された2流体の基本的な向流接触のマイクロチャンネルの説明図である。 図3は、上部基板及び下部基板を接合した立体的なマイクロチャンネル構造体の一例を示す説明図である。 図4は、上部基板の下面に配置されたマイクロチャンネル構造体の部品を示す説明図である。 図5は、下部基板の上面に配置されたマイクロチャンネル構造体の部品を示す説明図である。
符号の説明
1(7、23) 第一の流体の入口
4(16、28) 第一の流体の出口
5(17、29) 第二の流体の入口
6(22、34) 第二の流体の出口
2−3 流体の接触界面
9−10(13−14) 並流接触部
A 上部基板
B 下部基板

Claims (7)

  1. 微細な流体流路が配設された2枚の基板を積層し一体化させてなるマイクロチャンネル構造体において、
    流体流路は蛇行した部分を有しており、かつ、一体化により形成される横方向流路が、2種類の異なる流体を合流して直線状又は緩やかな曲線状の界面を形成しながら同一の方向へ流出させる並流接触部として機能することを特徴とするマイクロチャンネル構造体。
  2. 前記流体流路は、並流接触部以外の部分の流路が任意の曲線として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャンネル構造体。
  3. 前記流体流路は、微細な流体流路が配設された面同士が対向するように2枚の基板を積層させることにより、一つの平面内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャンネル構造体。
  4. 請求項1〜3に記載のマイクロチャンネル構造体を有することを特徴とするマイクロチップ。
  5. 請求項1〜3に記載のマイクロチャンネル構造体を有することを特徴とするマイクロリアクター。
  6. 請求項1〜3に記載のマイクロチャンネル構造体の流体流路に、2種類の異なる流体を全体としては向流で連続的に供給し、複数箇所の並流接触部において、流体間の物質移動操作を行うことを特徴とする流体の向流接触方法。
  7. 前記2種類の異なる流体が、水溶液と油相液であり、かつ、水溶液と油相液との流体間で溶媒抽出操作を行うことを特徴とする請求項6に記載の流体の向流接触方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10376812B2 (en) * 2013-11-21 2019-08-13 Kobe Steel, Ltd. Extraction and separation method

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