JP2006166785A - 相互作用測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、コスト的にも有利で、ハイスループットに蛋白質の結合DNAサイトをチップ上でスクリーニングする相互作用測定方法を提供することにある。
【解決手段】蛋白質との相互作用できる核酸配列を測定する方法であって、蛋白質が相互作用できる配列を含む標的核酸配列から、遺伝子増幅法を用いて長さの異なる増幅産物を複数、別々に取得し、該増幅産物を同一の固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、該蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする相互作用測定方法。
【解決手段】蛋白質との相互作用できる核酸配列を測定する方法であって、蛋白質が相互作用できる配列を含む標的核酸配列から、遺伝子増幅法を用いて長さの異なる増幅産物を複数、別々に取得し、該増幅産物を同一の固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、該蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする相互作用測定方法。
Description
本発明は、PCR産物を固定化し、蛋白質との相互作用を観察する方法に関しており、蛋白質が認識する核酸配列をスクリーニングする方法に適している。
転写因子による遺伝子発現の制御は、生体内の恒常性維持のために欠かせないメカニズムである。これまでにも、多くの転写因子が発見され、機能や構造などの研究が行われている。転写因子がそれぞれ特異的なDNA配列に結合することから、その認識配列の同定が、転写因子研究の核となっている。
蛋白質が結合するDNA配列を探索する方法として、ゲルシフト法やフットプリント法が挙げられる。これらの方法は、ゲル電気泳動の泳動像により結合する範囲を決定する方法である。主に、転写因子の結合塩基配列を解析する方法であり、手順が比較的簡便で、転写因子研究には欠かせない手法である。
ゲルシフト法は、DNAに蛋白質が結合すると分子サイズがフリーのDNAより大きくなり、電気泳動においてDNAの移動度が低下することを利用した方法である。32Pで標識したDNA断片と蛋白質を相互作用させた複合体を、非変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動にかけると、フリーのDNA断片のバンドよりも移動度が小さいバンドとして検出される。DNA断片は、短いほうが良く、200bpくらいまでが最適である。長すぎると、蛋白質の大きさによっては移動度に差が出ないことがある。塩基レベルでの配列決定を行うためには、多数のDNAプローブが必要であり、多検体を同時に検討することが困難である。
フットプリント法は、DNAに一ヶ所ニックを入れるが、蛋白質が結合しているDNAには作用しないというDNaseIの機能を用いた方法である。ゲルシフト法と同様に、あらかじめDNA鎖の一端に32Pで末端標識したDNA断片と蛋白質を反応させておく。DNaseIで軽く消化させて、電気泳動を行うと、DNAは末端標識から1塩基毎のラダ−状のバンドに泳動され、蛋白質の保護を受けた配列部分の泳動像が見えない。この泳動像の見えない部分が相互作用するDNA配列である。実際には、DNaseIの立体特性により、認識配列より広い範囲の配列が保護されているようにみえる場合があり、完全な配列決定は困難である。
また、in vivoで、転写因子が相互作用している認識配列を決定する方法がある。クロマチン免疫沈降法(ChIp)とよばれるこの方法は、まず、核内のDNA−蛋白質複合体を架橋させておいた後、DNAを断片化する。抗体を用いて、この複合体を沈降させる。ここから、DNAを回収し、分析する方法である。この方法は、実際、生体内で結合しているDNAを抽出するため、正確な配列情報を得ることができる。しかし、その反面、手順が非常に煩雑であることが欠点である。
いずれの従来技術は、一度に検討できる検体数が限られているため、スループット性が低く、単一の方法では塩基レベルでの配列決定は困難である。
近年、スループットの高い解析方法として、「チップ技術」に注目が集まっており、技術の進展には目をみはるものがある。例えば、DNAアレイは、多検体の相互作用を網羅的に同時に測定することができるため、広く用いられている。一般に、DNAアレイは、特定のDNA配列をスクリーニングする目的で使用される。そのため、DNAアレイには、多種類の配列の一本鎖DNAがプローブとして固定化されている。このアレイに、一本鎖DNAなどの核酸を反応させて、スクリーニングを行い、配列決定を行う。
このDNAアレイの技術を応用して、DNA結合性蛋白質が結合するDNA配列を非常に効果的に探索することができると推測される。ただし、DNA結合性蛋白質は、転写因子をはじめ、二本鎖DNAと相互作用するものが多いため、DNAアレイを蛋白質の結合配列の探索に応用するには、DNAアレイのプローブが二本鎖である必要がある。
そこで、合成オリゴDNAをアニールし、二本鎖DNAにしておいてから、基板に固定化し、転写因子との相互作用を観察する技術が開発されている(非特許文献1)。ここでは、一方のオリゴDNAの末端をチオール基とし、DNAを基板に共有結合で固定化している。もう一方のDNAは、表面に固定化されたDNAと相補的に水素結合で結合している。この方法では、合成オリゴの長さに限界(最大100mer、通常は50mer)があるため、仮に1kbの範囲をスクリーニングするには、オーバーラップを考慮して、40種類の二本鎖オリゴDNAが必要となる。すなわち、80種類のオリゴDNAを合成する必要が生じる。末端が修飾されたオリゴは非常に高価であるため、スクリーニングに応用する場合、非常にコストのかかる研究となる。この方法は非常に、簡便であることから、ある程度認識配列が絞り込めている場合は、適当な方法であるが、コスト的にも最良の方法とはいえない。
理想的には、長いDNA鎖を固定化したアレイを用い、徐々に認識配列を絞り込んでいく方法がコスト的に有利である。長いDNA鎖を基板上に準備する方法として、PCR(Polymerase Chain Reaction)法によって、特定の範囲のDNAを複製して、基板に固定化する方法が考えられるが、未だこのような発明は全くなされていなかった。
固定化するDNAにPCR(Polymerase Chain Reaction)技術を応用したものとして、一本鎖DNAチップ表面にプライマー、dNTP、DNAポリメラーゼを含むPCR溶液を接触させることにより、一本鎖DNAアレイから二本鎖DNAアレイを作成する方法が報告されている(特許文献1)。
また、アレイ上で二本鎖DNAを作成する別の方法も報告されている。まず、3´側を共通配列、5´側はそれぞれ異なる配列の一本鎖DNAをアレイ状に固定化する。このアレイに共通のプライマーをハイブリダイゼーションさせて、二本鎖DNAを合成していき、最終的に二本鎖DNAアレイを作成する方法が提案されている(特許文献2)。
いずれの方法も、一本鎖DNAを固定化し、アレイ上で、二本鎖DNAを形成させるものである。相補鎖を容易に準備できる点では、非常に優れた方法である。ここで、使われる一本鎖DNAは基本的に合成オリゴであるため、固定化される二本鎖DNAの長さはせいぜい100merであり、スクリーニングに適しているとは言いがたい。結局、スクリーニングに応用するには、プローブ数を多く設定する必要があるため、固定化する一本鎖DNAを全て異なる配列にしなければならない。この場合、非常に多くのオリゴDNAが必要となり、多額の費用がかかってしまい、実用的ではない。また、固定化溶液中でのPCRとは異なり、一本鎖DNAを固定化しているため、自由度が下がり、産物量が少ない可能性もある。
このように、ハイスループットに蛋白質の結合DNAサイトをチップ上でスクリーニングする方法は、開発されていないのが現状である。
本発明の課題は、コスト的にも有利で、ハイスループットに蛋白質の結合DNAサイトをチップ上でスクリーニングする相互作用測定方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出した。
1.PCR(Polymerase Chain Reaction)法によって得られた核酸を固体基板上に固定化し、蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする相互作用測定方法
2.PCRに使われるプライマー二つのうち、一方のプライマーの末端が、表面固定化のための官能基を有していることを特徴とする1の相互作用測定方法
3.PCRに使われるプライマー二つのうち、一方の場所を変えて、長さの異なる複数のPCR産物を準備し、同一固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする1、2の相互作用測定方法
4.複数のPCR産物を同一固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする1〜3のいずれかの相互作用測定方法
5.蛋白質との相互作用できる核酸配列を測定する方法であって、蛋白質が相互作用できる配列を含む標的核酸配列から、遺伝子増幅法を用いて長さの異なる増幅産物を複数、別々に取得し、該増幅産物を同一の固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、該蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする相互作用測定方法
6.遺伝子増幅法がPCR(Polymerase Chain Reaction)であることを特徴とする5の相互作用測定方法
7.固体基板が金属であることを特徴とする1〜6のいずれかの相互作用測定方法
8.固体基板が金であることを特徴とする1〜7のいずれかの相互作用測定方法
9.固体基板が金薄層に覆われたガラス基板であることを特徴とする1〜8のいずれかの相互作用測定方法
10.相互作用を観察する方法が表面プラズモン共鳴法であることを特徴とする1〜9のいずれかの相互作用測定方法
11.相互作用の測定対象となる蛋白質が転写因子であることを特徴とする1〜10のいずれかの相互作用測定方法
1.PCR(Polymerase Chain Reaction)法によって得られた核酸を固体基板上に固定化し、蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする相互作用測定方法
2.PCRに使われるプライマー二つのうち、一方のプライマーの末端が、表面固定化のための官能基を有していることを特徴とする1の相互作用測定方法
3.PCRに使われるプライマー二つのうち、一方の場所を変えて、長さの異なる複数のPCR産物を準備し、同一固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする1、2の相互作用測定方法
4.複数のPCR産物を同一固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする1〜3のいずれかの相互作用測定方法
5.蛋白質との相互作用できる核酸配列を測定する方法であって、蛋白質が相互作用できる配列を含む標的核酸配列から、遺伝子増幅法を用いて長さの異なる増幅産物を複数、別々に取得し、該増幅産物を同一の固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、該蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする相互作用測定方法
6.遺伝子増幅法がPCR(Polymerase Chain Reaction)であることを特徴とする5の相互作用測定方法
7.固体基板が金属であることを特徴とする1〜6のいずれかの相互作用測定方法
8.固体基板が金であることを特徴とする1〜7のいずれかの相互作用測定方法
9.固体基板が金薄層に覆われたガラス基板であることを特徴とする1〜8のいずれかの相互作用測定方法
10.相互作用を観察する方法が表面プラズモン共鳴法であることを特徴とする1〜9のいずれかの相互作用測定方法
11.相互作用の測定対象となる蛋白質が転写因子であることを特徴とする1〜10のいずれかの相互作用測定方法
本発明により、PCRで増幅した核酸分子を用いて、蛋白質が結合する塩基配列を探索することが可能となる。特に、転写因子の核酸結合部位を、チップを用いてハイスループットに同定できる、安価な方法を提供できる。
以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、PCRで増幅して得られた核酸分子を固体基板上に固定化し、蛋白質との相互作用を観察する方法であり、蛋白質が結合する塩基配列を探索するのに適している。
本発明において、固体基板上に固定化される核酸分子は、PCR法によって増幅して得られた核酸であることが好ましい。さらに、PCR産物は二本鎖の核酸分子であることが好ましい。二本鎖であると、転写因子などのDNA結合性蛋白質との相互作用の解析が可能となるからである。二本鎖の核酸分子を形成する一方の核酸分子のみが、固体基板上に固定化されているのが好ましい。もう一方の核酸分子は、基板上に固定化した核酸分子と相補的にワトソン−クリック対を形成し、基板上に二本鎖の核酸分子が固定化されているのが好ましい。二本鎖を形成する核酸分子の両方が固体基板に固定化されていると、安定した二本鎖を形成できない可能性が生じるためである。固定化される核酸分子は、DNA、RNAだけでなく、PNA(ペプチド核酸)やLNA(Locked nucleic acid)などの人工核酸、さらには、それらの誘導体を含む。
PCR法でDNAを増幅する場合、使用するDNAポリメラーゼは、特に限定されるものではなく、TaqやKODなどのDNAポリメラーゼが挙げられる。なかでも、KODは、他のDNAポリメラーゼより、高い正確性を有していると言われており、本発明に使用することができる。プライマー濃度、ポリメラーゼ濃度、テンプレートDNA濃度、PCRにおけるサイクル数、伸張温度、PCR溶液の組成などは特に限定されるものではなく、一般的に推奨されている条件の範囲で選ぶことができる。
PCRで増幅する核酸分子の長さは、100〜12kbpであることが好ましい。100bp以下の場合、PCR法を用いるより、合成オリゴで二本鎖の核酸分子を作成したほうが簡便である。また、前述のDNAポリメラーゼを使用した場合、約12kbpまでの増幅が確認されているため、その他のDNAポリメラーゼを使用した場合も、ほぼ同程度の大きさを目安にして、PCRを実施することが好ましい。また、より詳細な塩基配列に絞り込むために、100〜1kbpであればさらに好ましく、100〜300bpであれば特に好ましい。
PCRに使われる一方のプライマー(センスプライマー)は、表面固定化のために官能基や結合グループが修飾されていることが好ましい。官能基や結合グループとしてはアミノ基、チオール基、ビオチンが挙げられるが、なかでもチオール基は共有結合が可能であり、反応が特異的に進むため最も好ましい。チオール基は表面に形成したマレイミド基、エポキシ基、チオール基、ジスルフィド基と反応することができる。また、チオール基は金の(111)面に直接結合することもできる。
チオール基を用いる場合、チオール基が酸化される問題を有する。そこで、PCR反応を行う際には、チオール基が保護されているのが好ましい。保護基は特に限定されるものではないが、容易に脱保護されるのが好ましい。PCR反応を行った後に、脱保護された上で、精製及び濃縮されるのが好ましい。チオール基の酸化を防ぐために精製・濃縮されたPCR産物は抗酸化剤を入れて保存されることが好ましい。ただし、抗酸化剤として、チオール基を含むジチオスレイトール(DTT)などは、固定化反応に支障を与える危険性があるため、不適当である。
もう一方のPCRに使われるプライマー(アンチセンスプライマー)は長さの異なるPCR産物ができるように、一つのセンスプライマーに対して、複数のアンチセンスプライマーを設計するのが好ましい。センスプライマーは末端に官能基が導入されていることが好ましいため、プライマーは高価である。それに対し、アンチセンスプライマーは安価に入手できる。従って、一つのセンスプライマーに対して複数のセンスプライマーを設計し、PCRを行うことで、異なる配列を含むPCR産物を得ることができる。このPCR産物を基板に固定化し、蛋白質との結合を観察することで安価にかつ詳細に蛋白質結合サイトをスクリーニングすることができる。
いずれのプライマーの長さは15〜40merが好ましく、特に16〜30merがより好ましい。15mer未満であると、所望の範囲におけるPCR反応が進みにくくなる場合があるため好ましくない。また、40mer以上であると、プライマーが高価になることと、不純物が混ざる危険性が高まるため好ましくない。いずれのプライマーも、ターゲットのゲノムDNAに対して、全ての配列で相補的であってもよく、一部の配列で相補的でない部分を含んでもよい。
得られたPCR産物は、非常に希薄であるため精製された上で、濃縮されることが好ましい。精製の方法は特に限定されるものではないが。ゲルろ過を使った方法、ゲルからの切り出しを行う方法、磁気ビーズを使った方法などが挙げられる。濃縮する方法は特に限定されるものではないが、溶媒を蒸発させて濃縮する方法、絶乾して水または緩衝液を与える方法、メンブレンフィルターを使って濃縮する方法などが挙げられる。
得られたPCR産物は、アレイ状に固定化することが好ましい。複数のプローブをアレイ状にすることで、より詳細な結合範囲の特定が容易となる。アレイの形態としては、PCR産物がアレイ状にスポットとして固定化されていることが好ましい。スポットとは不連続であり、互いに分け隔てる領域が存在していることを言う。スポットの形状は特に限定されるものではない。また、スポットの作製方法も特に限定されるものではないが、自動スポッターを使うと非常に容易にアレイを作製することができる。
本発明における固相は金属であることが好ましい。金属基板は表面加工が容易であり、さまざまな光学的測定法や水晶発振子の方法に使用することができるからである。また、熱安定性にも優れ、薬剤耐性も高いことも有利な点である。形態は、平面基板、ナノ粒子を含むビーズなどが挙げられるが、アレイへの応用ができる有利さから、平面基板が好ましい。
固定化する金属基板としては透明基板上に形成された金薄層が好ましい。金表面には金−硫黄結合を利用し、直接的あるいは間接的に表面へPCR産物を固定化することができる。直接的にはチオール末端のPCR産物を金表面に固定化することが挙げられる。間接的には、金表面に官能基を導入した後に、第一のDNA鎖末端の官能基あるいは結合グループと直接的あるいは間接的に結合させることが可能である。金表面に官能基を導入する方法としては二官能基型アルカンを金表面に密に充填する方法が好ましい。二官能基型アルカンとしては限定されるものではないが、例えば末端にアミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、スクシンイミド基、ビニル基などを有し、反対側の末端にチオール基を有するアルカンチオール、またはそれらの二量体であるジスルフィドなどが挙げられる。
二官能基型アルカンを使って表面に官能基を導入したのち、PCR産物は直接あるいは間接的に表面に固定化される。間接的に、スペーサーを介してPCR産物が固定化されると、固定化された核酸分子にモビリティが与えられるため特に好ましい。スペーサーとしては、ポリエチレングリコールなどの合成親水性高分子、デキストランなどの天然親水性高分子、チミンやアデニンのDNA繰り返し配列などが挙げられる。
相互作用観察の手段としては、ラベルによって検出する方法とラベルフリーで検出する方法が挙げられる。ラベルする方法としては、蛋白質にラベルし検出する方法、蛋白質をラベル化抗体で検出する方法、または二次抗体で検出する方法などが挙げられる。ラベルの方法は特に限定されるものではないが、GFPなどの蛍光蛋白質との融合蛋白質を形成する方法、放射線同位体とコンジュゲートを形成させる方法などが挙げられる。ラベルフリーな方法としては、ラベルフリーな検出手段としては、表面プラズモン共鳴(SPR)、局在プラズモン共鳴(LPR)、水晶発振子(QCM)、エリプソメトリ、二面偏波式干渉、和周波発生(SFG)、第2高調波発生(SHG)などの方法が挙げられる。そのなかでSPRは、光学系の操作によって、複数の点を同時に測定できることができるため好ましい。SPRイメージング法はチップの広い範囲にp偏光光束を照射し、その反射像をCCDカメラで撮影する方法であり、アレイフォーマットでの解析が可能であるため、さらに好ましい。複数の配列を固定化した核酸分子と蛋白質の相互作用を測定することが可能となる。
相互作用の解析の対称となる蛋白質は、核酸結合性蛋白質であると好ましく、転写因子であるとさらに好ましい。相互作用解析の際の蛋白濃度は特に限定されるものではないが、一般的には蛋白濃度50ng/ml〜100μg/mlから選ばれる。相互作用解析の際の使用される緩衝液の種類なども特に限定されるものではなく、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、PIPES緩衝液、トリス緩衝液などが使用される。また、塩濃度も特に限定されるものではないが、通常は100〜300mMのNaClが緩衝液に加えられる。緩衝液には、Tweenなどの界面活性剤や牛血清アルブミンなどブロッキング剤などの物質が加えられてもよい。相互作用解析において、サンプル液を常時流してもよく、止めてもよい。流す場合、流速に特に限定されるものではないが、一般的に5〜500μl/minの範囲で選択される。
本発明は転写因子結合部位の探索では、有効かつ安価な手段である。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
転写因子Nrf2CT/MafGがゲノムDNA内に存在する認識部位nqo1ARE(図1、2)をスクリーニングする方法を検討する。
(PCRによるDNAプローブの調整)
認識部位nqo1AREを含むと予想されるゲノムDNA領域(約300bp)内の配列4種類と非認識部位ldhを含む配列1種類、計5種類をPCRで増幅した。PCRで用いたプライマーを表1に示す。なお、センスプライマーの5´末端にはチオール基が修飾してある。(チオール基に対する保護基はPCR終了後に除去する。)
認識部位nqo1AREを含むと予想されるゲノムDNA領域(約300bp)内の配列4種類と非認識部位ldhを含む配列1種類、計5種類をPCRで増幅した。PCRで用いたプライマーを表1に示す。なお、センスプライマーの5´末端にはチオール基が修飾してある。(チオール基に対する保護基はPCR終了後に除去する。)
KOD DNAポリメラーゼ、200ngゲノムDNA、10pmolプライマーを含むPCR溶液(50μl×2)を用いて、90℃(15秒)−55℃(30秒)−68℃(30秒)のサイクルを35回行った。PCR反応後、2%アガロース電気泳動により、長さの異なるPCR産物を得たことを確認した。 nqo1AREにおいては、共通のセンスプライマーと4種類の異なったアンチセンスプライマーを用いたため、長さが異なる4種類のPCR産物を得た。
(チオール基の保護基の除去)
それぞれのセンス側プライマーの5’末端はチオール基修飾されているが、酸化されやすいため、PCR終了時までチオール保護基を結合させたままにしておき、PCR終了後、保護基を除去した。
それぞれのセンス側プライマーの5’末端はチオール基修飾されているが、酸化されやすいため、PCR終了時までチオール保護基を結合させたままにしておき、PCR終了後、保護基を除去した。
PCR産物に、終濃度40mMジチオスレイトール(DTT)を16時間室温で反応させることにより、保護基を除去し後、磁気ビーズ(MagExtractor:東洋紡績社製)により精製、乾燥した。5×SSC(75mMクエン酸ナトリウム、750mM NaCl、pH7.0)/1mMTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)3μLで溶解した。
(対照プローブの調整)
ポジティブコントロールとして、転写因子Nrf2CT/MafGの認識配列2種類(MARE25、nqo1−SH)、ネガティブコントロールとして、非認識配列(thiol)の合成オリゴを設計した。片方のDNA鎖は、5’チオール末端からチミン15塩基をスペーサーとして介した後、それぞれの配列が入るように設計されている。それぞれの配列は表2に示した。
ポジティブコントロールとして、転写因子Nrf2CT/MafGの認識配列2種類(MARE25、nqo1−SH)、ネガティブコントロールとして、非認識配列(thiol)の合成オリゴを設計した。片方のDNA鎖は、5’チオール末端からチミン15塩基をスペーサーとして介した後、それぞれの配列が入るように設計されている。それぞれの配列は表2に示した。
5×SSC/1mMTCEPに5’チオール末端DNAが50μM、その相補的DNAを100μMになるように溶液を調製し、DNAをハイブリダイゼーションさせた。さらに、この反応溶液を5×SSC/1mMTCEPで希釈し、5μMの二本鎖DNA溶液を調整した。あらかじめ、チオール基の保護基は除去してあるが、TCEPにより、チオール基の酸化が防止されている。
(SPR測定チップ表面の処理)
DNAチップ作成には、MultiSPRinter NH2チップ(東洋紡績社製)を使用した。このチップは、NH2基が導入された500μm四方のスポット領域が8×12=96個形成されている。スポット領域でない領域(バックグラウンド領域)には、非特異吸着を抑制するポリエチレングリコールが固定化されている。
スポット領域に、PEGの両端にそれぞれマレイミド基とNHS基を有する架橋剤MAL−dPEG12−NHS(Quanta BioDesign社製)5mg/mlを2時間反応させ、表面にマレイミド基を導入した。
DNAチップ作成には、MultiSPRinter NH2チップ(東洋紡績社製)を使用した。このチップは、NH2基が導入された500μm四方のスポット領域が8×12=96個形成されている。スポット領域でない領域(バックグラウンド領域)には、非特異吸着を抑制するポリエチレングリコールが固定化されている。
スポット領域に、PEGの両端にそれぞれマレイミド基とNHS基を有する架橋剤MAL−dPEG12−NHS(Quanta BioDesign社製)5mg/mlを2時間反応させ、表面にマレイミド基を導入した。
(プローブの固定化)
マレイミド基表面のチップに、PCR産物、ハイブリダイゼーション溶液をそれぞれ自動スポッター(MultiSPRinter:東洋紡績社製)を用いてスポットし、室温で16時間反応し、プローブを表面に固定化した。
マレイミド基表面のチップに、PCR産物、ハイブリダイゼーション溶液をそれぞれ自動スポッター(MultiSPRinter:東洋紡績社製)を用いてスポットし、室温で16時間反応し、プローブを表面に固定化した。
(チップ表面の洗浄、SPR機器への設置)
PCR産物を固定化した表面を5×SSC/0.1%SDSで15分間、0.2×SSC/0.1%SDSで15分間、0.2×SSC15分間で洗浄した後、1mMチオール末端PEG1時間反応させて、未反応のマレイミド基をブロッキングした。
PCR産物を固定化した表面を5×SSC/0.1%SDSで15分間、0.2×SSC/0.1%SDSで15分間、0.2×SSC15分間で洗浄した後、1mMチオール末端PEG1時間反応させて、未反応のマレイミド基をブロッキングした。
SPRイメージング機器(MultiSPRinter:東洋紡績社製)のフローセルにセットし、20mM HEPES、300mM NaCl、4mM MgCl2、1mM EDTA、0.005%Tween20、1mMTCEP、pH7.9の転写因子測定用緩衝液をフローセル内に流した。
(ヘテロダイマーの調整)
Nrf2CTとMafG1−123が、それぞれ終濃度500nM、50nMになるように上記転写因子測定用緩衝液を用いて調整した。
Nrf2CTは、MafG及びDNAとの結合部位を有するNrf2蛋白質であり、MafG1−123は、b−Zip構造、DNA結合部位などを有している。二種類を混合することにより、相互作用して、ヘテロダイマーが形成される。
Nrf2CTとMafG1−123が、それぞれ終濃度500nM、50nMになるように上記転写因子測定用緩衝液を用いて調整した。
Nrf2CTは、MafG及びDNAとの結合部位を有するNrf2蛋白質であり、MafG1−123は、b−Zip構造、DNA結合部位などを有している。二種類を混合することにより、相互作用して、ヘテロダイマーが形成される。
(相互作用測定)
SPRからのシグナルが安定したのを確認した後に、転写因子ヘテロダイマーNrf2CT/MafGを上記転写因子測定用緩衝液に溶解し、セル内に10分間100μl/minの速度で注入し、さらに転写因子を含まない緩衝液を流した。相互作用の有無は、シグナル上昇の有無で判断した。認識部位nqo1ARE配列を完全に含む配列(nqo1ARE−A、nqo1ARE−B)はシグナルが上昇し、相互作用が確認された。nqo1ARE配列を完全には含まない配列(nqo1ARE−C)、全く含まない配列(nqo1ARE−D)、ldhは相互作用しなかった(図3)。対照プローブと比較しても、ヘテロダイマーが、PCR法により増幅したプローブ(nqo1ARE−A)を認識し、相互作用したことがわかった(図4)。この方法により、SPRイメージング法により、転写因子の結合部位のスクリーニングが可能であることがわかった。
SPRからのシグナルが安定したのを確認した後に、転写因子ヘテロダイマーNrf2CT/MafGを上記転写因子測定用緩衝液に溶解し、セル内に10分間100μl/minの速度で注入し、さらに転写因子を含まない緩衝液を流した。相互作用の有無は、シグナル上昇の有無で判断した。認識部位nqo1ARE配列を完全に含む配列(nqo1ARE−A、nqo1ARE−B)はシグナルが上昇し、相互作用が確認された。nqo1ARE配列を完全には含まない配列(nqo1ARE−C)、全く含まない配列(nqo1ARE−D)、ldhは相互作用しなかった(図3)。対照プローブと比較しても、ヘテロダイマーが、PCR法により増幅したプローブ(nqo1ARE−A)を認識し、相互作用したことがわかった(図4)。この方法により、SPRイメージング法により、転写因子の結合部位のスクリーニングが可能であることがわかった。
[比較例]
合成オリゴによるDNAプローブの調整
認識部位nqo1AREを含むと予想されるゲノムDNA領域(約300bp)を、網羅するように約30bpの配列を含むオリゴDNAを設計する。5´末端にはチオール基、スペーサーのチミン15塩基を結合させておく。相補鎖をハイブリダイゼーションによりdsDNAにし、実施例と同様の方法で固定化、SPR測定を行う。この比較例を用いる場合、設計した配列の中に、認識部位が完全に存在する必要があり、そのためには膨大な数のオリゴDNAが必要である。合成オリゴのチオール基の修飾は非常に高価であり、解析に多額の費用が必要である。
合成オリゴによるDNAプローブの調整
認識部位nqo1AREを含むと予想されるゲノムDNA領域(約300bp)を、網羅するように約30bpの配列を含むオリゴDNAを設計する。5´末端にはチオール基、スペーサーのチミン15塩基を結合させておく。相補鎖をハイブリダイゼーションによりdsDNAにし、実施例と同様の方法で固定化、SPR測定を行う。この比較例を用いる場合、設計した配列の中に、認識部位が完全に存在する必要があり、そのためには膨大な数のオリゴDNAが必要である。合成オリゴのチオール基の修飾は非常に高価であり、解析に多額の費用が必要である。
本発明により、PCRで増幅した核酸分子を用いて、蛋白質が結合する塩基配列を探索することが可能となる。特に、転写因子の機能を知るために本発明は大いに有用であることからも、産業界に大きく寄与することが期待される。
Claims (11)
- PCR(Polymerase Chain Reaction)法によって得られた核酸を固体基板上に固定化し、蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする相互作用測定方法
- PCRに使われるプライマー二つのうち、一方のプライマーの末端が、表面固定化のための官能基を有していることを特徴とする請求項1記載の相互作用測定方法
- PCRに使われるプライマー二つのうち、一方の場所を変えて、長さの異なる複数のPCR産物を準備し、同一固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする請求項1、2記載の相互作用測定方法
- 複数のPCR産物を同一固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の相互作用測定方法
- 蛋白質との相互作用できる核酸配列を測定する方法であって、蛋白質が相互作用できる配列を含む標的核酸配列から、遺伝子増幅法を用いて長さの異なる増幅産物を複数、別々に取得し、該増幅産物を同一の固体基板上に混じり合うことなくそれぞれ異なる位置に固定化し、該蛋白質との相互作用を観察することを特徴とする相互作用測定方法
- 遺伝子増幅法がPCR(Polymerase Chain Reaction)であることを特徴とする請求項5記載の相互作用測定方法
- 固体基板が金属であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の相互作用測定方法
- 固体基板が金であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の相互作用測定方法
- 固体基板が金薄層に覆われたガラス基板であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の相互作用測定方法
- 相互作用を観察する方法が表面プラズモン共鳴法であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の相互作用測定方法
- 相互作用の測定対象となる蛋白質が転写因子であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の相互作用測定方法
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JP2004363480A JP2006166785A (ja) | 2004-12-15 | 2004-12-15 | 相互作用測定方法 |
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- 2004-12-15 JP JP2004363480A patent/JP2006166785A/ja not_active Withdrawn
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