上記したような従来技術の試験装置では、いわゆるシーズヒーターを流体が流れる配管内に配したり、配管の外部にラバーヒーターを巻き付けるなどして、流体の温度調整を行う構成としていた。このような構成を採用した場合、流体の供給量や供給温度等のパラメーターを大幅に変動させると、所望の温度に加熱された流体が供給されるまでにタイムラグが発生したり、流体の供給温度が不安定になるなどの不具合が発生するという問題があった。すなわち、従来技術の試験装置では、加熱手段の加熱能力を流体流量にあわせて精度良く調整できないという問題があった。
また、流体が流れる配管内にシーズヒーターを配した構成とした場合は、ヒーターに流体が触れることとなる。そのため、例えば水素のような爆発性を有する気体や可燃性の流体を加熱する場合は、爆発や発火に備えて別途対策を講じる必要があり、装置構成が複雑となってしまうという問題がある。
一方、ラバーヒーターを採用した場合は、ラバーヒーターを被覆しているラバー材の耐熱限界等を考慮せねばならず、高電力密度での電力供給ができないという問題がある。そのため、ラバーヒーターを配管に巻き付ける構成を採用した場合は、例えば流体が流れる配管を長くするなどの方策を施して伝熱面積を確保しなければならないという問題がある。また、ラバーヒーターを採用した場合は、絶縁のために表面に設けられたラバー材が断熱材として機能してしまい、その分だけ伝熱効率が低下してしまうという問題もある。
上記したような燃料電池用の試験装置のように、試験対象物に対して流体を循環させず一方向に連続供給せねばならないものがある。このような試験装置では、加熱手段において加熱された流体の温度が所望の供給温度から外れていても、流体を加熱手段に戻して再加熱するといった方策をとることができない。よって、上記特許文献1に示すような流体供給手段を備えた試験装置や、これに採用されている流体の加熱手段は、流体の供給温度や供給量の変動に対してスムーズに対応することができない。従って、従来技術の燃料電池評価試験装置等の試験装置や、これに採用される流体加熱装置は、例えば自動車等のような負荷変動や使用環境温度の変動が激しい環境下に燃料電池を採用した状態を再現した動作試験を行おうとしても、試験対象物たる燃料電池に対する流体の供給状態が不安定となり、試験精度を高レベルに維持できないという問題があった。
また、上記したような従来技術の試験装置において、流体の供給量を大きな変動幅で変動させようとすると、大流量の流体を供給する場合を想定して流体流路の配管径を大きなものとしたり、流体流路を流れる流体を加熱するための加熱手段として加熱容量の大きなものを採用しなければならない。このように、流体流路の配管径や加熱手段の加熱容量を大きなものとすると、燃料電池等の試験対象物に対する流体供給量が多い状態では流体の供給温度の調整等がうまくいくが、流体供給量が少ないと流体供給温度等の調整がうまくいかず、評価試験の精度が低下してしまうという問題があった。
そこで、上記した問題に鑑み、本発明は、流体流量や流体の供給目標温度の変動に対して精度良く対応可能な流体加熱装置、並びに、当該流体加熱装置を備えた試験装置の提供を目的とする。
上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、ヘッダーと、流体が流通可能であり、前記ヘッダーに連通した複数の受熱管とを有し、前記受熱管の外周には発熱体が配されており、当該発熱体が、電力を供給することにより発熱する発熱層と、当該発熱層と受熱管とを絶縁する絶縁層と、発熱層を被覆する被覆層とから構成されていることを特徴とする流体加熱装置である。
本発明の流体加熱装置では、流体が流れる受熱管の内側ではなく、外周に発熱体を配したものである。さらに、本発明の流体加熱装置は、複数の受熱管がヘッダーに接続されているため、ヘッダーに流入した流体を各受熱管に分散させて加熱することができる。そのため、本発明の流体加熱装置では、流量の多少にかかわらず受熱管内を流れる流体をスムーズかつムラ無く加熱できる。従って、本発明の流体加熱装置は、加熱すべき流体の流量や加熱目標温度が変動しても、流体の温度を精度良く調整できる。
また、本発明の流体加熱装置では、発熱体が受熱管の外周に配されているため、受熱管の内部を流れる流体と発熱体とが直接接触することがない。そのため、本発明の流体加熱装置によれば、水素を主成分とするガスや可燃性の流体のように発熱体と直接触れることが望ましくない流体についても良好に加熱することができる。
請求項2に記載の発明は、発熱層が絶縁層に対して印刷されたものであることを特徴とする請求項1に記載の流体加熱装置である。
かかる構成によれば、絶縁層上に発熱層を容易に形成することができる。また、本発明のように、発熱層を印刷して形成する構成とすれば、発熱層を絶縁層に対して確実に密着した状態とすることができ、発熱層と絶縁層との間における伝熱抵抗を最小限に抑制することができる。
また、本発明のように発熱層を印刷する方式を採用すれば、例えば受熱管の外周に金属配線等を施すような他の方法を採用する場合に比べて発熱層の形態を自由に設定できる。
請求項3に記載の発明は、発熱層が複数の発熱部によって構成されており、当該発熱部同士が並列に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体加熱装置である。
本発明の流体加熱装置は、発熱層を構成する発熱部がそれぞれ並列に接続されているため、仮に発熱部毎に発熱ムラが発生したとしても、高温の部位に存在する発熱部の電気抵抗が低温の部位よりも大きくなり、低温の部分に高温の部分よりも多くの電流が流れることで低温の部位の発熱量が増加し、発熱ムラが解消される。従って、本発明の流体加熱装置によれば、受熱管内を流れる流体をムラ無く加熱することができる。
請求項4に記載の発明は、単一の受熱管に対して温度によって電気抵抗の異なる発熱体あるいは発熱層が複数配されており、発熱体あるいは発熱層の装着部位によって発熱層の電気抵抗が異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の流体加熱装置である。
本発明の流体加熱装置では、発熱層に対して同量の電力が供給されても、発熱体や発熱層の装着部位に応じて発熱量が異なる。そのため、本発明の流体加熱装置は、受熱管内の温度分布を部位毎に調整することができ、受熱管内を流れる流体の流量等の変動があっても流体の温度を的確に制御できる。
ここで、受熱管内を流れる流体は、当該液体の流れ方向に略均一の加熱状態で加熱すると受熱管の延伸方向に温度勾配を形成し、流体加熱装置から排出される流体に加熱ムラが発生する可能性がある。
かかる知見に基づいて提供される請求項5に記載の発明は、電気抵抗の異なる複数の発熱体あるいは発熱層が受熱管に対して装着され、ガスの流れ方向に並べられたものであり、発熱層の電気抵抗が受熱管に対する取り付け位置によって異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の流体加熱装置である。
かかる構成によれば、流体の流量等の変動の有無にかかわらず流体の温度を的確に制御可能な流体加熱装置を提供できる。
請求項6に記載の発明は、受熱管の外周が発熱体によって均等に包囲されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の流体加熱装置である。
かかる構成によれば、発熱体において発生する熱を受熱管内を流れる流体に対して略均等に伝達させることができる。従って、本発明の流体加熱装置によれば、流量の多少や増減にかかわらず流体をムラ無く加熱することができる。
請求項7に記載の発明は、受熱管の内部に、流体の熱交換効率を向上させるための攪拌部材を内蔵していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の流体加熱装置である。
かかる構成によれば、発熱体において発生した熱の伝達効率を向上させることができる。従って、本発明の流体加熱装置によれば、流体の流量や流量変化に依存することなく流体をムラ無く加熱できると共に、発熱体において発生した熱を有効利用することができる。
請求項8に記載の発明は、攪拌部材が、受熱管の内壁面に対して密接していることを特徴とする請求項7に記載の流体加熱装置である。
かかる構成によれば、受熱管内における流体の流れを乱流状態とし、受熱管の外部と内部空間との間における伝熱効率を向上できる。従って、本発明によれば、流体の流量や流量変化に依存することなく、流体の温度をより精度良く調整可能な流体加熱装置を提供できる。
請求項9に記載の発明は、ヘッダーにフィン状部材が装着されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の流体加熱装置である。
本発明の流体加熱装置は、受熱管に接続されたヘッダーにフィン状部材が装着されているため、ヘッダーに流入した流体を流体加熱装置の設置雰囲気下で熱交換させ、流体を温度調整することができる。また、上記した構成によれば、ヘッダーの強度を向上できる。
請求項10に記載の発明は、フィン状部材がヘッダーの外周に固定されていることを特徴とする請求項9に記載の流体加熱装置である。
かかる構成によれば、フィン状部材の取り付けを容易に行うことができる。さらに、上記した構成によれば、フィン状部材の取り付けに伴って熱交換室の内壁面に凹凸等ができるのを抑制できる。すなわち、本発明によれば、フィン状部材を取り付けつつ、熱交換室の内壁面の平滑性を維持できる。
本発明の流体加熱装置では、フィン取り付けのための溶接跡等の固定跡がガスと接触するヘッダー内に発生しないようにフィン状部材の取り付け加工を行える。そのため、本発明の流体加熱装置によって流体の加熱を行えば、流体が不純物や金属イオンなどによって汚染される心配がない。
請求項11に記載の発明は、発熱体が直流電源により作動することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の流体加熱装置である。
上記したように、発熱体が直流電源により作動する構成とすれば、発熱体に供給される電流値を連続制御することができる。すなわち、本発明の流体加熱装置では、発熱体に対して供給される電流値が発熱体に要求される発熱量の多少にかかわらず安定している。そのため、本発明の流体加熱装置は、流体の流量や流量変化に依存することなく流体の温度調整を精度よく行える。
請求項12に記載の発明は、発熱体が受熱管内を流れる流体の流れ方向に複数箇所に分けて設置されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の流体加熱装置である。
かかる構成によれば、受熱管に設置された各発熱体の出力を独立的に制御することができ、受熱管内を流れる流体の温度を確実に所望の温度に調整することができる。
請求項13に記載の発明は、受熱管を複数有し、各受熱管毎に発熱体が設けられており、各発熱体の出力が独立的に制御されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の流体加熱装置である。
かかる構成によれば、各受熱管毎にガスの加熱具合を調整できる。従って、本発明によれば、流体の加熱ムラを最小限に抑制可能な流体加熱装置を提供できる。
請求項14に記載の発明は、所定の流体が流れる流体流路を有し、当該流体流路の中途に温調手段が設けられており、当該温調手段が請求項1乃至13のいずれかに記載の流体加熱装置を具備したものであることを特徴とする試験装置である。
かかる構成によれば、流体の流量にかかわらず流体流路内を流れる流体を所定の温度に調整できる。従って、本発明の試験装置によれば、精度の高い試験を行うことができる。
請求項15に記載の発明は、温調手段が、流体流路を流れる流体を冷却可能な冷却手段を備えたものであることを特徴とする請求項14に記載の試験装置である。
かかる構成によれば、流体流路を流れる流体を低温とした低温条件下での試験を実施可能な試験装置を提供できる。
請求項16に記載の発明は、流体流路の中途に、流体の湿度を調整可能な調湿手段が設けられていることを特徴とする請求項14又は15に記載の試験装置である。
かかる構成によれば、流体流路を流れる流体の湿度を調整した条件下での試験を行うことが可能な試験装置を提供できる。
請求項17に記載の発明は、試験対象物を収容可能であり、雰囲気条件を所定の試験条件に調整可能な雰囲気調整手段を有し、当該雰囲気調整手段内に流体流路の一部又は全部が引き込まれており、当該引き込み部分の中途に流体加熱装置が設けられていることを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載の試験装置である。
かかる構成によれば、所望の温度に調整された流体を用いて試験を実施可能な試験装置を提供できる。
請求項18に記載の発明は、流体流路が、燃料電池に対して流体を供給するものであることを特徴とする請求項14乃至17のいずれかに記載の試験装置である。
かかる構成によれば、流体の流量や流量変化によらず高精度な燃料電池の評価試験を実施可能な試験装置を提供できる。
請求項19に記載の発明は、試験対象物が流体流路内を流れる流体であることを特徴とする請求項17に記載の試験装置である。
本発明の試験装置によれば、試験対象たる流体の流量や、流量変化が大幅に変動しても、流体の温度を精度良く調整可能である。従って、本発明の試験装置によれば、試験対象たる流体の温度調整を精度良く行える試験装置を提供できる。
本発明によれば、流体の流量や、流量変化に依存することなく流体を精度良く加熱可能な流体加熱装置を提供できる。また、本発明によれば、流体の流量にかかわらず流体流路内を流れる流体を所定の温度に調整でき、精度の高い試験を実施可能な試験装置を提供できる。
続いて、本発明の一実施形態である燃料電池評価試験装置1(以下、試験装置1と称す)について図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、1は本実施形態の試験装置である。試験装置1は、燃料電池10の正極に導入されるガス(以下、必要に応じて正極側ガスと称す)や負極に導入されるガス(以下、必要に応じて負極側ガスと称す)の温度や湿度といったような供給条件を調整したり、燃料電池10の設置環境の条件を調整した状態で燃料電池10の性能の評価試験を行うものである。試験装置1は、特に後述する流体加熱手段30や微温調手段50の構造に特徴を有するものである。
試験装置1は、図1に示すように燃料電池10の負極活物質として使用される水素や正極活物質として使用される酸素等を供給するためのガス流路2と、ガス流路2を通過する水素や酸素等のガスを所定の温度や湿度(露点)に調整する調整手段3と、試験対象物である燃料電池10を収容可能な恒温手段5とに大別される。
ガス流路2は、水素や酸素等のガスの供給源と、恒温手段5内に配された燃料電池10とを繋ぐ流路である。ガス流路2は、燃料電池10の正極(酸素極)に繋がる正極側ガス流路11と、負極(燃料極)に繋がる負極側ガス流路12の2系統によって構成されている。正極側ガス流路11および負極側ガス流路12は、それぞれ正極側ガスおよび負極側ガスが流れる配管である。
正極側ガス流路11および負極側ガス流路12は、互いに独立した流路を形成しているが、その流路構成はほぼ同一とされている。すなわち、正極側ガス流路11および負極側ガス流路12は、それぞれ中途に調整手段3を有する。そして、ガス流路2は、後述する冷却手段27よりもガスの流れ方向上流側に配された流路切替手段25よりもさらに上流側において低湿度流路13と高湿度流路15の2系統に分岐されている。低湿度流路13は湿度が低いガスが流れる流路であり、高湿度流路15は湿度が高いガスが流れる流路である。低湿度流路13と高湿度流路15とは、流路切替手段25よりも上流側で合流している。また、ガス流路2は、流路切替手段25よりも下流側に冷却流路16を有する。冷却流路16は、ガス流路2内を流れるガスを迂回させ、冷却手段27に通過させるための流路である。
調整手段3は、低湿度流路13の中途に設けられた流量調整手段20と加熱手段21、高湿度流路15の中途に設けられた流量調整手段22と加湿手段23、ガス流路2と冷却流路16との境界部分に設けられた流路切替手段25,26、並びに、冷却流路16の中途に設けられた冷却手段27とから構成されている。さらに具体的に説明すると、低湿度流路13および高湿度流路15は、試験装置1の外部に存在する正極側ガス供給源28あるいは負極側ガス供給源29(以下、必要に応じて供給源28,29と称す)に接続されている。流量調整手段20,22は、それぞれ低湿度流路13や高湿度流路15に供給されるガスの流量を決定するものである。
加熱手段21や冷却手段27は、正極側ガス流路11や負極側ガス流路12を流れるガスの温度を調整する温調手段6として機能する。また、流量調整手段20,22および加湿手段23は、正極側ガス流路11や負極側ガス流路12を流れるガスの湿度(露点)を調整する調湿手段7として機能する。すなわち、調湿手段7は、流量調整手段20,22を調整することにより低湿度流路13を流れる低湿度のガスと、高湿度流路15を流れる高湿度のガスとの混合比を調整すると共に、加湿手段23により高湿度流路15を流れるガスの湿度(露点)を調整することにより燃料電池10に供給するガスの湿度を調整するものである。
図1に示すように、低湿度流路13と高湿度流路15とは、加熱手段21や加湿手段23よりも下流側において合流する構成となっている。そのため、流量調整手段20,22を調整することにより、高湿度のガスと低湿度のガスの混合比を調整でき、燃料電池10に所望の湿度のガスを供給することができる。
加熱手段21は、図2に示すような流体加熱手段30(流体加熱装置)を備えたものである。上記したように、流体加熱手段30は、特有の構造を有するものである。さらに具体的に説明すると、流体加熱手段30は、ヘッダー部31,32に対して複数(本実施形態では5本)の受熱管33を取り付けた構成とされている。ヘッダー部31,32は、共に金属製で肉薄な円筒形の部材であり、ガス流路2に接続するための接続部34を有する。さらに具体的には、ヘッダー部31,32は、共に肉厚が0.6〜1.0mm程度の筒体によって構成されている。そのため、ヘッダー部31,32は、熱容量が小さく、伝熱特性に優れている。
ヘッダー部31は、受熱管33に対してガスの流れ方向上流側の端部に接続されている。すなわち、ヘッダー部31は、ガス流路2の上流側から流れてくるガスが流入する空間を形成し、この空間に流入したガスを5本の受熱管33に分流させるために設けられたものである。ヘッダー部32は、各受熱管33を流れるガスの流れ方向下流側に接続されたものであり、各受熱管33を通過してきたガスが流入する空間を形成するものである。ヘッダー部32の出口を構成する接続部34近傍には、流体加熱手段30を通過するガスの温度を検知するための流出ガス温度検知センサ37が設けられている。そのため、流出ガス温度検知センサ37により、各受熱管33からヘッダー部32に流入して合流したガスの排出温度を検知することができる。
受熱管33は、それぞれ金属等の熱伝導性に優れた素材で作製された外径の小さな筒体であり、ヘッダー部31,32の内部空間に連通している。受熱管33は、ヘッダー部31,32と同様に肉薄の金属管によって構成されている。本実施形態において、受熱管33として、肉厚t1が0.6〜1.0mm程度で、SUS316L等のようなステンレス鋼等の金属によって形成された管が採用されている。
受熱管33は、表面(外面)に装着されたヒーター35(発熱体)に対して通電することにより内部空間が高温となる構成とされている。さらに詳細に説明すると、ヒーター35は、各受熱管33の長手方向に2箇所ずつ並べて形成されている。
ヒーター35は、図4に示すように3層構造となっている。ヒーター35は、受熱管33の表面に形成された絶縁層35aと、この絶縁層35aの表面に形成された発熱層35bと、発熱層35bの表面を覆う被覆層35cとから構成されている。
絶縁層35aは、金属製の受熱管33の表面に形成されたガラス質で薄膜状の層状体であり、受熱管33の表面にしっかりと固着されている。絶縁層35aは、発熱層35bと受熱管33との間に介在した層であり、導電性に乏しい。一方、絶縁層35aは、図4に示すように薄膜状に成形されている。さらに具体的には、本実施形態において、絶縁層35aの厚みt2は、120μm〜130μm程度とされている。そのため、発熱層35bにおいて発生した熱をスムーズに受熱管33に伝達することができる。すなわち、絶縁層35aは、電気絶縁性が高く、熱伝導性に優れた層である。
発熱層35bは、図4に示すように絶縁層35aと被覆層35cとによって挟まれた構成とされている。発熱層35bは、銀パラジウムペーストや、銀ペースト、銀白金ペースト等によって代表される銀系ペースト等、通電により抵抗発熱体となりうるものをペースト状にしたものを絶縁層35a上に塗布し、焼き付けることによって形成されている。本実施形態では、スクリーン印刷の手法により発熱層35bが塗布されている。発熱層35bは、スクリーン印刷に限らずディスペンサー方式やフォトリソグラフィーに代表される写真製版等のような従来周知の手法を用いて印刷することも可能であるが、発熱層35bの印刷精度や、発熱層35bの断面積(厚み)等に起因する抵抗値のバラツキの発生を考慮するとスクリーン印刷により印刷されることが望ましい。
発熱層35bは、図4(b),(c)に示すように、受熱管33の延伸方向(長手方向)に対して線状に伸びる抵抗部35f(発熱部)を複数有する。抵抗部35fは、図4(b)のように受熱管33の周方向に等間隔になるように配されている。また、受熱管33の周方向に隣接する抵抗部35fの両端部は、連結部35gによって接続されており、各抵抗部35fが直流電源38に対して並列に接続された状態となっている。
発熱層35bは、各抵抗部35fの電気抵抗が略均一となるように幅(受熱管33に対して周方向に伸びる長さ)や長さ(受熱管33の延伸方向の長さ)、厚み等が調整されている。ここで、本実施形態で発熱層35bの構成材料は、温度に依存して大幅に抵抗値が変動するものであり、温度が高いほど抵抗値が高くなる傾向にある。そのため、例えば図4(c)に示すように並列に配された抵抗部35fの抵抗値をそれぞれR1,R2,・・・,Rnと規定した場合、抵抗値がR1である抵抗部35fの温度が他の抵抗部35fよりも高温になると、抵抗値R1が抵抗値R2,・・・,Rnよりも高くなる。これにより、抵抗値がR1である抵抗部35fに流れる電流が他の抵抗部35fに流れる電流よりも少なくなり、抵抗値R1の抵抗部35fにおける発熱量が他の抵抗部35fにおける発熱量よりも小さくなる。また、逆に抵抗値がR1である抵抗部35fに相当する部位の温度が他の部位よりも低温になると、抵抗値R1が小さくなり、この抵抗値R1の抵抗部35fの発熱量が大きくなる。そのため、ヒーター35は、万一温度ムラが発生したとしても、この温度ムラに対応して各抵抗部35fの抵抗値R1,R2,・・・,Rnの比率が相対変化し、各抵抗部35f近傍の温度が略均等になり、受熱管33内を流れるガスを略均等に加熱することができる。
発熱層35bは、絶縁層35aの厚みに対して約1/8〜1/9程度の厚みとされている。本実施形態では、発熱層35bの厚みt3は、約15μmとされている。発熱層35bには、電力供給用の電極35dが取り付けられている。
上記したように、ヒーター35およびこれを構成する発熱層35bが、各受熱管33の長手方向に2箇所に分かれて設けられている。受熱管33に対してガスの流れ方向上流側(本実施形態ではヘッダー部31側)に配されたヒーター35(以下、必要に応じて上流側ヒーター35と称す)、並びに、下流側(本実施形態ではヘッダー部32側)に配されたヒーター35(以下、必要に応じて下流側ヒーター35と称す)は、図4(c)に示すように別々に直流電源38に接続されている。上流側ヒーター35および下流側ヒーター35は、発熱層35bに供給可能な電力密度が異なる。
さらに具体的には、図4(c)に示すように、上流側ヒーター35の方が、下流側ヒーター35よりも発熱層35bを構成する抵抗部35fの配置密度が高くなっている。これにより、上流側ヒーター35に供給可能な電力密度が下流側ヒーター35に供給可能な電力密度よりも高くなるように調整されている。これは、試験装置1によって行う燃料電池10等の評価試験において必要とされるガスの流量が大幅に変動してもガスの温度を精度良く調整可能とするための方策であり、受熱管33内にガスの流れ方向に沿って加熱能力が変化する構成となっている。本実施形態では、ガスの流れ方向上流側における受熱管33内の温度の方が、下流側における受熱管33内の温度よりも高くなる構成となっている。
図4に示すように、発熱層35b,35bは、受熱管33の長手方向2箇所に形成されているが、それぞれ電気的に独立している。発熱層35b,35bは、それぞれ後述する被覆層35c上に取り付けられた表面温度制御用センサ35eによって検知されるヒーター35の表面温度に基づいて通電量、すなわち発熱量がフィードバック制御される。
被覆層35cは、上記した絶縁層35aと同様にガラス質で薄膜状の層状体であり、発熱層35bを被覆するように形成されている。発熱層35bに取り付けられた電極35dは、被覆層35cから露出している。被覆層35cは、絶縁層35aと同様に導電性に乏しい。被覆層35cの厚みt4は、60μm〜90μm程度とされている。
被覆層35cの表面であって、流体加熱手段30に流入するガスの流れ方向下流側、すなわちヘッダー部32側に相当する位置には表面温度制御用センサ35eが取り付けられている。表面温度制御用センサ35eは、流体加熱手段30を構成する5本の受熱管33のそれぞれに取り付けられている。表面温度制御用センサ35eは、それぞれ取り付けられている受熱管33におけるガスの流れ方向下流端近傍におけるヒーター35の表面温度を検知するものである。各受熱管33に装着されているヒーター35の出力は、各表面温度制御用センサ35eによって検知されるヒーター35の表面温度に基づいてフィードバック制御される。
流体加熱手段30は、5本の受熱管33のそれぞれにヒーター35を2個ずつ並べて設置したものであり、合計10箇所にヒーター35を有する。そして、各ヒーター35は、それぞれ独立的に直流電源38に接続されている。ヒーター35は、それぞれ各受熱管33を流れるガスの流れ方向下流端近傍に設置された表面温度制御用センサ35eによって検知されるヒーター35の表面温度と、流出ガス温度検知センサ37によって検知されるガスの排出温度とに基づいてフィードバック制御される。
受熱管33の内部には、攪拌部材36が設けられている。攪拌部材36は、図3に示すように帯状の金属板を巻いて作製されたバネ状の部材であり、図2(a)に示すように受熱管33の内壁面に密着している。そのため、受熱管33の外面に配されたヒーター35が高温になると、その熱が攪拌部材36にスムーズに伝熱され高温となる。
受熱管33内に導入されたガスは、攪拌部材36にぶつかって流れが乱流状態となり、攪拌される。そのため、流体加熱手段30に導入されたガスは、受熱管33においてスムーズに加熱される。従って、例えばヘッダー部31を低湿度流路13内を流れるガスの流れ方向上流側となるように低湿度流路13に流体加熱手段30を接続すると、ヘッダー部31に流入したガスは、各受熱管33に分かれて流れ、加熱されてヘッダー部32に集まり、低湿度流路13に戻される。
加湿手段23は、図5に示すように貯留水を貯留する密閉型の貯水タンク40と、この貯水タンク40内の貯留水を加熱するためのヒーター41とを具備している。通常、貯水タンク40に貯留される貯留水には純水が使用されるが、試験条件等に合わせて適宜変更することも可能である。貯水タンク40の底部には、流量調整手段22を通過してきた高湿度流路15内を流れるガスを貯水タンク40内の貯留水中に吐出可能なようにガス導入部43が設けられている。また、貯水タンク40の頂部には、貯留水中に吐出されたガスを加湿手段23の下流側に送り出すためのガス排出部45が設けられている。流量調整手段22を通過してきた高湿度流路15内を流れるガスは、ヒーター41によって所定温度に加熱された貯留水に吐出され、いわゆるバブリング処理が施される。そして、貯水タンク40に導入されたガスは、所定の湿度に加湿された状態でガス排出部45から排出される。ヒーター41の出力は、ガス排出部45よりも下流側に配された露点計46(図1参照)によって検知される露点(湿度)に基づいてフィードバック制御される。
図1に示すように、加熱手段21や加湿手段23の下流側に設けられた合流部47において、低湿度流路13と高湿度流路15とが合流している。そのため、低湿度流路13を通過した低湿度のガス(以下、必要に応じて低湿度ガスと称す)と、高湿度流路15を通過したガス(以下、必要に応じて高湿度ガスと称す)とが合流部47において混合され、ガスの温度および湿度が調整された状態となり、下流側(燃料電池10側)に送られる。
合流部47よりも下流側に設けられた冷却流路16には、冷却手段27が設けられている。冷却流路16と正極側ガス流路11や負極側ガス流路12との境界部分には、流路切替手段25,26が設けられている。流路切替手段25,26には、それぞれ3ポート弁が採用されている。流路切替手段25,26は、それぞれ冷却流路16、あるいは、正極側ガス流路11(負極側ガス流路12)のいずれか一方に対して開状態となるものである。そのため、流路切替手段25,26を冷却流路16に対して開状態とすると、合流部47を通過したガスを冷却手段27に導入し、冷却することができる。また逆に、流路切替手段25,26を冷却流路16に対して閉状態とすると、合流部47を通過したガスを冷却手段27を通過させることなく燃料電池10側に供給できる。
試験装置1では、合流部47よりも上流側を流れるガスが高湿度である場合、このガスが冷却流路16に流れ込んで冷却手段27において冷却されると冷却流路16や冷却手段27内で凍結し、これらの機器類の動作に支障をもたらすおそれがある。そのため、試験装置1では、正極側ガス流路11や負極側ガス流路12を通過するガスの湿度(露点)に基づき、必要に応じてガスが冷却流路16に流入するのを阻止可能なインターロック機構が形成されている。すなわち、試験装置1は、正極側ガス流路11や負極側ガス流路12を通過するガスの湿度(露点)や冷却手段27の動作温度等の動作条件に基づき、冷却流路16にガスが流入すると冷却手段27等の動作に支障が生じると想定される場合に、流路切替手段25,26が冷却流路16側に開状態とならない構成とされている。
冷却手段27は、冷却されたガスが燃料電池10に供給されるまでに昇温してしまうのを防止すべく、恒温手段5に対してガスの流れ方向上流側に近接した位置に設けられている。さらに具体的には、試験装置1では、図1において太線Aで示す配管、すなわち冷却手段27の出口側から流路切替手段26を通過し、後述する恒温手段5内の微温調手段50(流体加熱装置)に繋がる配管をできるだけ短縮可能な位置に、冷却手段27が設置されている。さらに詳細には、正極側ガス流路11や負極側ガス流路12として管径が12.7[mm](1/2[インチ])程度の管を使用し、この内部を通過するガスの流速を0.5[リットル/分]〜240[リットル/分]程度の範囲で可変とした場合、配管Aの長さは50[cm]以下であることが望ましく、30[cm]以下であることがより一層好ましい。
正極側ガス流路11および負極側ガス流路12のうち、流路切替手段25,26よりも下流側の部位は、恒温手段5内に引き込まれ、微温調手段50に接続されている。微温調手段50は、図6や図7に示すように、上記した加熱手段21と大部分が共通した構成となっている。さらに具体的に説明すると、微温調手段50は、ヘッダー部51,52と、受熱管53とを有する。ヘッダー部51,52は、加熱手段21のヘッダー部31,32と同様に円筒型の部材である。微温調手段50は、ガス流路2を流れるガスの流れ方向上流側にヘッダー部51が向き、下流側にヘッダー部52が向くように配される。
ヘッダー部51,52は、円筒形のヘッダー本体51a,52aにフィン56(フィン状部材)を溶接等の手法で取り付けたものである。ヘッダー本体51a,52aは、例えばSUS316Lに代表されるステンレス鋼のような熱伝導性に優れた材質によって筒状に作成されたものである。ヘッダー本体51a,52aは、共に肉厚が薄く、約0.6〜1.0mm程度とされている。そのため、ヘッダー部51,52は、熱容量が小さく、伝熱特性に優れている。ヘッダー本体51a,52aの側面51b,52bには、正極側ガス流路11および負極側ガス流路12に微温調手段50を接続するための接続部55,55が設けられている。また、ガスの流れ方向下流側に配されるヘッダー部52の接続部55の近傍には、ヘッダー部52から流出するガスの温度を検知するための流出ガス温度検知センサ57が設置されている。
ヘッダー部51,52は、薄板を加工したものであるため、極めて軽量であり、熱容量が小さい。また、ヘッダー部51,52は、内面を清浄に維持し、ガス中に異物等が混入するのを防止すべく、ヘッダー本体51a,52aの内面をいわゆる鏡面加工やラップ加工などのような研磨や、メッキ処理等の手法により表面処理されている。そのため、試験装置1を長期に渡って作動させても異物の付着が起こりにくく、異物によるガスの汚染や熱伝導率の低下が殆ど起こらない。さらに、ヘッダー本体51a,52aは、内面が清浄であるため、伝熱抵抗が略均一である。従って、ヘッダー部51,52は、内部に導入されたガスがヘッダー部51,52の外部雰囲気、すなわち微温調手段50が設置されている恒温室60の内部雰囲気との熱交換効率が高く、ヘッダー部51,52内に導入されたガスを恒温室60の内部雰囲気下でムラ無く熱交換することができる。
上記したように、ヘッダー本体51a,52aは、金属製の薄板を用いて作製したものであるため、ガスの流入状態に応じて膨張したり収縮したりする可能性がある。しかし、ヘッダー本体51a,52aが円筒形に形成されているため、ヘッダー本体51a,52aを膨張させたり収縮させたりするような力は、ヘッダー本体51a,52a全体に略均等に働く。そのため、ヘッダー部51,52は、剛性が高く、試験装置1が長年に渡って使用されてもヘッダー部51,52が破損しにくい。
ヘッダー部51,52は、さらに伝熱特性や剛性を向上させるためにヘッダー本体51a,52aの表面にフィン56を取り付けた構成とされている。さらに具体的に説明すると、ヘッダー部51,52の外周には、複数(本実施形態では5つ)のフィン56が放射状に取り付けられている。フィン56は、平面視が略「コ」字形となるように成形された金属板である。フィン56は、薄板で作製されたヘッダー本体51a,52aを補強する補強部材としての機能と、ヘッダー部51,52の受熱面積を増大させる機能とを兼ね備えている。
フィン56は、図6や図7に示すように、ヘッダー本体51a,52aの外側から側面51b,51cや側面52b,52cに対して当接すると共に、外周面51d,52dに当接するように溶接等の手法を用いて取り付けられている。すなわち、フィン56は、ヘッダー本体51a,52aを挟み込むように取り付けられている。換言すれば、フィン56は、ヘッダー本体51a,52aの母線方向に沿う方向に延伸し、ヘッダー本体51a,52aに跨るように取り付けられている。そのため、ヘッダー部51,52は、フィン56とヘッダー本体51a,52aとの接触領域が大きく、フィン56とヘッダー部51,52との間における伝熱がスムーズに行われる。
ヘッダー部51,52は、ヘッダー本体51a,52aとの外側からフィン56を固定しているため、ヘッダー本体51a,52aの内面が滑らかである。そのため、ヘッダー本体51a,52aは、長年にわたって使用しても内面が汚れにくい。
ヘッダー本体51a,52aの側面51c,52cには、複数(本実施形態では5本)の受熱管53が接続されている。受熱管53は、それぞれヘッダー本体51a,52aの内部空間と連通している。そのため、微温調手段50は、ガスの流れ方向上流側に配されたヘッダー本体51aに流入したガスを各受熱管53に分流させると共に、各受熱管53を通過してきたガスをヘッダー本体52aに集めた後、排出することができる。
受熱管53は、上記した流体加熱手段30において採用されている受熱管33と同様に肉厚t1が0.6〜1.0mm程度のステンレス鋼等のような熱伝導性に優れた素材を用いて作成された小径で肉薄の筒体である。受熱管53の表面には、2つのヒーター35が設置されている。
ヒーター35は、上記した流体加熱手段30において採用されていたものと同一の構成とされており、直流電源38から電力の供給を受けて発熱する。すなわち、ヒーター35は、図4に示すように、受熱管53の表面に固着されたガラス質の絶縁層35aと、ガラス質の被覆層53cとの間に発熱層35bを挟み込んだ3層構造とされている。発熱層35bは、絶縁層35aの表面に銀パラジウムペースト等のような抵抗発熱体となる物質を含むものをスクリーン印刷等の手法で印刷し、焼き付けて構成されたものである。
ヒーター35,35は、各受熱管53の長手方向中央部に所定の間隔を開けて配されており、通電により発熱し、受熱管53の内部空間を加熱する構成とされている。各受熱管53に設置された2つのヒーター35,35は、それぞれ電気的に独立している。ヒーター35,35は、受熱管53の流れ方向下流側のヒーター35の被覆層35c上に取り付けられた表面温度制御用センサ35eによって検知される表面温度に基づいて通電量がフィードバック制御される。そのため、例えば受熱管53内においてガスの温度勾配が形成されてしまうような場合であっても、受熱管53の入口側(ヘッダー部51側)のヒーター35の出力と、出口側(ヘッダー部52側)のヒーター35の出力とを調整することにより、受熱管53から排出されるガスの温度を適温に調整できる。
本実施形態では、流体加熱手段30は、5本の受熱管53のそれぞれにヒーター35を2箇所ずつ並べて形成されたものであり、合計10箇所にヒーター35を設けたものである。そして、各ヒーター35は、それぞれ独立的に直流電源38に接続されている。ヒーター35は、それぞれ各受熱管53を流れるガスの流れ方向下流端近傍に設置された表面温度制御用センサ35eによって検知されるヒーター35の表面温度と、流出ガス温度検知センサ37によって検知されるガスの排出温度とに基づいてフィードバック制御される。
受熱管53は、上記した加熱手段21の受熱管33と同様に図3に示すような攪拌部材36を内蔵している。攪拌部材36は、受熱管53の内部に導入されたガスの流れを攪拌し、乱流にすることにより、ガスの熱交換効率を向上させる効果を有する。
攪拌部材36は、受熱管53の内周面にしっかりと当接している。また、上記した受熱管33と同様に、受熱管53の外周面には、ヒーター35が設けられている。そのため、ヒーター35を作動させると、これにより発生した熱が受熱管53および攪拌部材36を介して伝熱し、受熱管53の内部に導入されたガスが加熱される。
恒温手段5は、従来公知の恒温装置と同様に恒温室60を有し、恒温室60の内部雰囲気を所定の設定温度に調整可能なものである。恒温室60は、燃料電池10等の試験対象物と、微温調手段50とを収容可能な大きさの空間を有する。
続いて、本実施形態の試験装置1の動作について説明する。試験装置1は、制御手段70を具備しており、制御手段70によって各部の動作を制御する構成とされている。制御手段70は、露点計46や試験装置1の各部に設けられた温度センサ等の検知信号に基づき調整手段3や恒温手段5等の動作を制御するものである。
燃料電池10の試験を開始する場合、制御手段70は、試験に先立って恒温手段5を起動し、恒温室60内の内部雰囲気温度、すなわち燃料電池10の設置雰囲気温度を予め設定された試験温度に調整する。また、制御手段70は、燃料電池10の試験条件にあわせて設定される正極側ガスや負極側ガスの設定温度や湿度(露点)、流量等の条件に基づき、調整手段3や微温調手段50の動作を制御する。
さらに具体的には、試験装置1は、燃料電池10に対して供給される正極側ガスおよび負極側ガスの供給温度や湿度を調整することができる。試験装置1は、供給源28,29から供給されるガスの供給温度よりも高温に加熱された状態でガスを燃料電池10に供給することも、供給源28,29から供給されるガスの供給温度よりも低温に冷却された状態でガスを燃料電池10に供給することも可能である。すなわち、試験装置1は、供給源28,29から供給される供給温度K以上に加熱したガスを燃料電池10に供給して行う高温試験モードでの試験に加えて、供給温度K未満に冷却されたガスを燃料電池10に供給して行う低温試験モードでの試験も行えるものである。さらに具体的には、本実施形態の試験装置1は、−30℃から120℃の範囲内で燃料電池10の動作試験を行える。
試験装置1が高温試験モードで動作する場合、制御手段70は、燃料電池10に対して供給すべき正極側ガスの温度および湿度に基づき、正極側ガス流路11の低湿度流路13を介して供給される低湿度の正極側ガス(以下、必要に応じて正極側低湿度ガスと称す)および高湿度流路15を介して供給される正極側ガス(以下、必要に応じて正極側高湿度ガスと称す)の温度および流量を決定する。また同様に、制御手段70は、燃料電池10に対して供給すべき負極側ガスの温度および湿度に基づき、負極側ガス流路12の低湿度流路13を介して供給される低湿度の負極側ガス(以下、必要に応じて負極側低湿度ガスと称す)および高湿度流路15を介して供給される負極側ガス(以下、必要に応じて負極側高湿度ガスと称す)の温度および流量を決定する。
制御手段70は、正極側高湿度ガス、正極側低湿度ガス、負極側高湿度ガス、並びに、負極側低湿度ガスの流量や湿度を調整すべく、正極側ガス流路11および負極側ガス流路12に設けられた調整手段3,3の流量調整手段20,22や、加熱手段21のヒーター35の出力、加湿手段23のヒーター41の出力等を調整する。そして、ここで導出された結果に基づき、制御手段70は、流量調整手段20,22を調整すると共に加熱手段21や加湿手段23のヒーター35,41の出力を調整する。
ここで、加熱手段21を構成する各ヒーター35の出力は、それぞれ独立的に制御される。さらに具体的には、各ヒーター35の出力は、各受熱管33に取り付けられた表面温度制御用センサ35eによって検知されるヒーター35の表面温度と、ヘッダー部32の出口近傍に設置された流出ガス温度検知センサ37によって検知されるガスの温度とに基づいてフィードバック制御される。そのため、流体加熱手段30は、各ヒーター35の出力をきめ細かく制御することにより各受熱管33内を流れるガスをムラ無く略均等に加熱することができる。流体加熱手段30において加熱されたガスは、低湿度流路13を通過し、調湿手段7において加湿され高湿度流路15を流れるガスと合流部47で合流し、温度および湿度が調整されたガスとなる。
試験装置1が高温試験モードで動作する場合、冷却手段27は基本的に動作しない。そのため、高温試験モードでは、流路切替手段25,26が共に冷却流路16に対して閉止された状態となり、正極側ガスが冷却手段を通ることなく微温調手段50に流入する。
微温調手段50から流出する正極側ガスや負極側ガスの温度、すなわち流出ガス温度検知センサ57の検知温度が予め設定されている設定温度と同等である場合は、正極側ガスや負極側ガスをそのまま燃料電池10に供給することができる。そのため、かかる状態では、制御手段70は、微温調手段50に装着されたヒーター35を起動しない。ヘッダー部51に流入した正極側ガスや負極側ガスは、ヘッダー部51から受熱管53およびヘッダー部52を経て微温調手段50から排出され、燃料電池10に供給される。ここで、上記したように、微温調手段50は恒温室60内に設置されている。さらに微温調手段50は、特にヘッダー本体51a,52aが薄肉の金属板で作製され、これに対してさらにフィン56を取り付けたものであるため、熱交換効率が高い。そのため、正極側ガスや負極側ガスは、ヘッダー部51,52や受熱管53を通過する間に熱交換を行う。そのため、正極側ガスや負極側ガスは、微温調手段50を通過することにより温度が微調整された状態で燃料電池10に供給される。
一方、微温調手段50を通過する正極側ガスや負極側ガスが燃料電池10に供給すべき温度よりも低い場合は、燃料電池10に供給するまでに正極側ガスや負極側ガスを加熱する必要がある。ここで、試験装置1は、燃料電池10に対して供給する正極側ガスや負極側ガスの流量を大きな変動幅で調整することができる。さらに具体的には、本実施形態の試験装置1は、燃料電池10に対して供給する正極側ガスや負極側ガスの流量を0.5[リットル/分]〜200[リットル/分]の範囲内で調整できる。そのため、制御手段70は、燃料電池10に供給される正極側ガスや負極側ガスの流量に応じて微温調手段50の受熱管53に取り付けたヒーター35への通電量を調整する。
さらに具体的には、例えば正極側ガスや負極側ガスの流量が0.5[リットル/分]に近い微小流量に調整されている場合は、正極側ガスや負極側ガスが微温調手段50内を停滞状態に近い速度で移動することとなる。そのため、微温調手段50に導入された正極側ガスや負極側ガスの温度と予め設定された設定温度との差が小さく、微温調手段50を通過する間に恒温室60の内部雰囲気との熱交換によって設定温度まで加熱可能な範囲内である場合、制御手段70は、ヒーター35への通電を行わない。
一方、正極側ガスや負極側ガスの流量が少なくても、微温調手段50に導入された正極側ガスや負極側ガスの温度と予め設定された設定温度との差が大きい場合は、制御手段70は、これらのガスを所定温度に加熱可能な程度にヒーター35に通電する。また、正極側ガスや負極側ガスの流量が200[リットル/分]に近いような大流量に調整されている場合は、これらのガスは微温調手段50を高速で通過し、恒温室60の内部雰囲気との熱交換を十分に行えない。そのため、制御手段70は、ヒーター35に通電して微温調手段50を流れる正極側ガスや負極側ガスを加熱する。この時、微温調手段50に設けられている各ヒーター35の出力は、各受熱管53におけるガスの流れ方向下流側に取り付けられた表面温度制御用センサ35eの検知温度と、流出ガス温度検知センサ57によって検知される微温調手段50から排出されるガスの温度とに基づいてフィードバック制御される。
ヒーター35が起動すると、受熱管53の外周全体が加熱される。その一方で、微温調手段50に流入した正極側ガスや負極側ガスは、ヘッダー部51において熱交換加熱された後に各受熱管53に分かれて流入する。
受熱管53に正極側ガスが流入すると、正極側ガスは、受熱管53内に配された攪拌部材36によって流れが乱流となる。ここで、上記したように、攪拌部材36は、受熱管53の内壁面にしっかりと当接しているため、受熱管53からの伝熱により高温となっている。さらに、受熱管53には、外周を取り巻くようにヒーター35が取り付けられているため、受熱管53の内部空間は部位によらずほぼ均等に加熱される。また、上記したように正極側ガスや負極側ガスは、各受熱管53に分かれて流れるため、流量の大小にかかわらずムラ無く加熱される。そのため、正極側ガスや負極側ガスは、受熱管53内においてスムーズかつ効率よく加熱される。受熱管53を通過した正極側ガスや負極側ガスは、ヘッダー部52に流入してさらに熱交換される。
正極側ガスや負極側ガスは、上記したようにして微温調手段50において所定の温度に温度調整された後、燃料電池10に供給される。
一方、試験装置1が低温試験モードで動作する場合、制御手段70は、冷却手段27を起動し、所定の設定温度まで冷却された正極側ガスや負極側ガスを燃料電池10に供給する。さらに具体的に説明すると、試験装置1が低温試験モードで動作する場合は、加湿状態の正極側ガスや負極側ガスを冷却手段27に供給すると、冷却手段27等が破損するなどの問題が発生するおそれがある。そこで、試験装置1を低温試験モードで動作させる場合、制御手段70は、加熱手段21および加湿手段23を停止状態とすると共に、高湿度流路15側の流量調整手段22を閉止する。そして、燃料電池10に供給すべき正極側ガスあるいは負極側ガスの流量にあわせて低湿度流路13側の流量調整手段20を調整する。これにより、正極側ガス供給源28あるいは負極側ガス供給源29から低湿度流路13,13を介して所定流量の正極側ガスや負極側ガスが正極側ガス流路11および負極側ガス流路12に供給される。
一方、正極側ガス流路11および負極側ガス流路12の流路切替手段25,26は、冷却流路16,16側に向けて開状態となるように調整される。そのため、正極側ガス流路11や負極側ガス流路12に流入した正極側ガスおよび負極側ガスは冷却流路16,16を流れ、冷却手段27によって所定温度まで冷却される。冷却手段27において冷却された正極側ガスおよび負極側ガスは、冷却手段27に対して隣接した位置に配された恒温手段5の恒温室60内に設置された微温調手段50,50に導入される。微温調手段50,50に導入された正極側ガスや負極側ガスは、それぞれ恒温室60内で熱交換され、所定の温度に微調整された後、燃料電池10に供給される。
上記したように、試験装置1は、恒温室60内に燃料電池10を設置した状態で燃料電池10の評価試験を行えるものであるため、燃料電池10の設置条件を精度良く調整することができる。
上記したように、試験装置1は、正極側ガスや負極側ガスが燃料電池10に供給される前に、恒温室60内に設置された微温調手段50を通過する構成となっている。そのため、燃料電池10に対して供給されるガスの量が多く、調整手段3において温度調整されたガスがほぼそのままの温度を維持して微温調手段50に供給された場合、ガスは微温調手段50における熱交換により温度が微調整されて燃料電池10に供給される。一方、試験装置1では、燃料電池10に対して供給されるガスの量が少なく移動速度が遅い場合であっても、微温調手段50において熱交換され、燃料電池10の試験温度たる恒温室60内の温度に調整された後に燃料電池10に供給される。また、試験装置1では、ガスが微温調手段50に導入された時点で所定の温度に満たない場合であっても、受熱管53に装着されたヒーター35を起動することにより所定温度に調整されたガスを燃料電池10に供給できる。従って、試験装置1によれば、燃料電池10に対するガスの供給量の多少にかかわらず燃料電池10の評価試験温度に適した温度のガスを供給できる。
また、本実施形態の試験装置1は、ガス流路2の中途に冷却手段27を設けた構成であるため、寒冷地等の低温条件下に燃料電池10を配置した状態における燃料電池10の動作試験を行うことができる。また、試験装置1は、冷却手段27を恒温手段5の直前に配しているため、所定温度に冷却されたガスを確実に燃料電池10に供給できる。
試験装置1では、冷却手段27がガス流路2を流れているガスの露点よりも低温まで冷却可能な状態では冷却手段27に向けてガスが流れないように流路切替手段25,26が作動するインターロック機構が設けられている。そのため、試験装置1は、ガス中に含まれる水分の凍結に伴う不具合が発生しない。
上記したように、流体加熱手段30や微温調手段50は、筒状の受熱管33,53の外周にヒーター35を装着したものであるため、内部を流れるガスをムラ無く加熱することができ、ガスの供給量や加熱目標温度が変動しても受熱管33,53内を流れるガスを加熱目標温度までスムーズかつ精度良く加熱することができる。
また、流体加熱手段30や微温調手段50において、ヒーター35は、受熱管33,53の外周に配されているため、内部を流れるガスとヒーター35との直接的な接触がない。そのため、流体加熱手段30や微温調手段50は、水素を主成分とするガスのように爆発性の流体や可燃性の流体についても良好に加熱することができる。
上記したように、ヒーター35は、絶縁層35aの表面に銀パラジウムペースト等を印刷して焼き付けることにより発熱層35bを形成したものであるため、絶縁層35aと発熱層35bとの間に隙間等が発生しにくく、絶縁層35aと発熱層35bとの伝熱抵抗が小さい。
流体加熱手段30や微温調手段50は、ガスを各受熱管33,53に分けて流入させて加熱する構成とされている。さらに、受熱管33,53の内部には攪拌部材36が内蔵されているため、受熱管33,53に導入されたガスは乱流となる。また、攪拌部材36は、縁端部分が受熱管33,53の内壁面に対して接触しているため、受熱管33,53が高温になると攪拌部材36に熱がスムーズに伝わる。そのため、微温調手段50によれば、ガス流量の多少にかかわらずガスをスムーズかつムラ無く加熱できる。
上記したように、ヒーター35は、いずれも直流電源38から電力の供給を受けて作動する構成とされている。そのため、ヒーター35に供給される電流は、ヒーター35に要求される出力によらず連続的に制御される。すなわち、従来技術のヒーターの制御のようにリレーやソリッドステートリレー(SSR)を用い、デューティー比制御などの手法で出力を制御する場合のように断続的に電流が供給されるのではなく、連続的に電流が供給される。従って、流体加熱手段30や微温調手段50は、ガスの流量の多少や流量変化に依存することなくガスの温度を精度よく調整できる。
また、ヒーター35は、発熱層35bが銀系のペーストのような温度条件によって抵抗値が大きく変動する素材により形成されると共に、発熱層35bを構成する複数の抵抗部35fがそれぞれ並列に接続されたものである。さらに、ヒーター35は、抵抗部35fを受熱管33,53の周方向に略均等に配した構成とされている。そのため、ヒーター35は、各抵抗部35fの抵抗が温度に応じて敏感に変動し、受熱管33,53およびこの内部を流れるガスを略均等に加熱することができる。
また、流体加熱手段30や微温調手段50は、受熱管33,53におけるガスの流れ方向上流側および下流側の2箇所に分けてヒーター35,35が設けられており、各ヒーター35の電気抵抗が異なる。すなわち、受熱管33,53におけるガスの流れ方向上流側に配された上流側ヒーター35は、下流側ヒーター35よりも抵抗部35fの電力密度を高くすることにより、各ヒーター35,35に供給される電力密度を調整している。そのため、試験装置1は、試験条件にあわせてガスの流量を大幅に変動させても燃料電池10等の試験対象に対して供給されるガスの温度を精度良く調整することができる。
ヒーター35は、円筒形の受熱管33,53の表面に絶縁層35aや発熱層35b、被覆層35cを積層したものであり、いずれの層も断面形状が円弧状となるように積層されている。そのため、ヒーター35は、急激な温度変化があったり、長期にわたって使用されたりしても各層に応力が集中せず、各層においてひび割れ等が発生したり、各層同士の剥離等による故障が起こりにくい。
上記したように、微温調手段50は、ヘッダー部51,52にフィン56を装着することによりヘッダー部51,52を補強すると共に、熱交換効率を向上させたものである。従って、上記した構成によれば、ヘッダー部51,52に導入されたガスを燃料電池10の試験温度にあわせて調整された恒温室60内の雰囲気温度に精度良く調整することができる。
また、微温調手段50は、フィン56をヘッダー部51,52の外側に固定したものであるため、作製が容易であると共に、ヘッダー部51,52の内周面を平滑に作製することができる。そのため、微温調手段50は、長期にわたって使用されてもヘッダー部51,52の内面を清浄に維持でき、異物が付着しにくい。そのため、試験装置1は、燃料電池10に供給されるガスに異物が混入してしまうような不具合が起こりにくい。
上記実施形態の試験装置1は、正極側ガス供給源28や負極側ガス供給源29から正極側ガスや負極側ガスを供給する構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば水素や酸素といったような燃料電池10の活物質として機能するガスに窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを所定の混合比で混合するための混合手段を別途設けた構成としたり、予め混合比が調整されたガスを供給する構成としてもよい。
本実施形態の試験装置1は、固体高分子型燃料電池(PEFC)の試験用に好適に使用可能なものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、試験条件にあわせてガスの加熱や冷却、加湿等が可能なように加熱手段21や加湿手段23、冷却手段27等を調整することにより、アルカリ水溶液電解質型燃料電池(AFC)、リン酸水溶液電解質型燃料電池(PAFC) のようないわゆる低温型の燃料電池の評価試験にも好適に使用できる。
上記実施形態では、冷却手段27において冷却されたガスの昇温による設定温度と燃料電池10に対するガス供給温度とのズレが発生するのを防止すべく、冷却手段27を恒温手段5に隣接する位置に設置する構成を例示したが、前記したようなズレが発生しないのであれば、例えば冷却手段27を加湿手段23よりも上流側に配した構成とするなどしてもよい。かかる構成とした場合は、上記したインターロック機構を設ける必要がなく、ガス流路2の流路構成をより一層簡略化することができる。
上記したように、微温調手段50は、ヘッダー本体51a,52aの外側にフィン56を放射状に装着したものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばフィン56をヘッダー本体51a,52aの接線方向に伸びるように取り付けたものであってもよい。また、製作の容易さやヘッダー本体51a,52aの内周面を清浄に維持することを考慮すると推奨される構成ではないが、フィン56は、ヘッダー本体51a,52aの内側に向けて突出した構成であってもよい。また、微温調手段50は、フィン56を設けない構成としたり、フィン56をヘッダー本体51a,52aの内外双方に設けた構成とするなど、目的に応じて適宜取り付け位置や取り付け姿勢を変更したものであってもよい。
また、微温調手段50や流体加熱手段30は、受熱管53,33の表面に設けられたヒーター35で内部空間を流れるガスを加熱するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、必要に応じて受熱管33,53の内部にヒーター35を設けた構成としてもよい。
微温調手段50や流体加熱手段30は、複数の受熱管53,33を設けた構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、単一の管によって構成されていてもよい。また、微温調手段50や流体加熱手段30は、帯状の金属板をコイル状に加工した攪拌部材36を受熱管53,33の内部に配したものであったが、攪拌部材36を設けない構成としたものや、形状や材質が攪拌部材36とは異なる構成のものを配した構成としてもよい。
上記実施形態では、微温調手段50を恒温室60内に配した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、微温調手段50を設けない構成としたり、微温調手段50に代わってこれと大部分の構成が同一である流体加熱手段30を恒温室60内に配した構成としてもよい。
また、上記したヒーター35は、絶縁層35aや被覆層35cとしてガラス質の材質を選択したものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばセラミックス焼結体等を採用することができる。絶縁層35aとしてセラミックス焼結体を採用する場合は、発熱層35bから受熱管33,53への伝熱効率を考慮し、アルミナやチッ化アルミニウム、チッ化ケイ素等を主成分とする熱伝導性に優れた材質を採用することが望ましい。また、ヒーター35は、経年劣化に伴うひび割れ等の発生を防止すべく、絶縁層35aや発熱層35b、被覆層35cを構成する材質の熱膨張係数が近似したものとすることが望ましい。
ヒーター35は、図4(b),(c)等に示すように、複数の抵抗部35fを受熱管33,53の長手方向に沿うように直線状に形成したものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、抵抗部35fをジグザグ形状や波形としてもよい。また、抵抗部35fは、受熱管33,53の外周を取り巻くように配したり、受熱管33,53の周囲に螺旋状に配した構成としてもよい。
ヒーター35は、線状の抵抗部35fが受熱管33,53の外周部に略等間隔に配された構成となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、隣接する抵抗部35f同士の間隔が不均一であってもよい。
上記したように、受熱管33,53に装着されたヒーター35,35は、絶縁層35a、発熱層35bおよび被覆層35cがそれぞれ独立したものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、2箇所に設けられたヒーター35,35が絶縁層35aや被覆層35cを共用する構成としてもよい。
上記したように、流体加熱手段30や微温調手段50は、各受熱管33,53の長手方向に2箇所に分けてヒーター35を形成したものであったが、受熱管33,53の単一箇所にヒーター35を装着した構成としたり、3箇所以上に分けてヒーター35を装着した構成としてもよい。
また、上記実施形態では、受熱管33,53に装着された2つのヒーター35,35をそれぞれ独立的に直流電源38に対して接続したものであったため、受熱管33,53内を流れるガスを精度良く加熱することができる。なお、上記実施形態では、ヒーター35毎に直流電源38を接続した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば2つのヒーター35,35を直列あるいは並列に接続して一つの電気回路を形成したものであってもよい。かかる構成によれば、流体加熱手段30の電気回路の構成を簡略化することができる。
上記実施形態では、受熱管33,53内を流れるガスの流れ方向上流側に装着されたヒーター35(上流側ヒーター)と下流側に装着されたヒーター35(下流側ヒーター)とで抵抗部35fの配置密度を調整し、各ヒーター35に供給される電流密度を調整した構成であった。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、上流側ヒーター35および下流側ヒーター35における抵抗部35fの配置密度を同一とし、各ヒーター35に接続された直流電源38の出力調整のみで各ヒーター35の出力を調整する構成としてもよい。
上記実施形態では、本発明の一実施形態である流体加熱手段30や微温調手段50等の流体加熱装置を備えた試験装置の一例として、燃料電池10の評価試験を行うための試験装置1を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに詳細には、流体加熱手段30や微温調手段50は、例えばバイオテクノロジーや薬品の研究や開発用の試験装置において試験対象物に対して供給されるガスや液体等の流体や、試験対象物たる流体自身を加熱するための加熱手段としても使用することができる。また、試験装置1は、燃料電池10に対して所定の温度や湿度に調整されたガスを供給して試験を行うものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、温度調整されたガスや液体等の流体を所定の試験対象物に対して供給することにより所定の試験を行うものや、流体自体を試験対象物として動作するものであってもよい。さらに具体的には、流体加熱手段30や微温調手段50は、例えば、生体内における環境因子を再現して試験を行う炭酸ガス培養装置や嫌気性培養装置、インキュベーター等に代表される培養装置や、医薬品や化学薬品、化粧品等の品質保持特性を確認するための安定性試験や保存試験用の試験装置等の加熱手段として採用することも可能である。
また、上記実施形態の試験装置1は、ガス流路2が正極側ガス供給源28や負極側ガス供給源29から燃料電池10に向かう方向のみにガスを流す、いわゆるワンパス方式の流路であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガスや液体等の流体が循環する循環方式の流路であってもよい。
上記した試験装置1は、ガス等の流体を加熱するための流体加熱手段30や微温調手段5に加えて、調湿手段7や、試験対象物たる燃料電池10を収容可能な恒温手段5、冷却手段27等を備えたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、恒温手段5や調湿手段7等を備えていないものであってもよい。