これら動吸振器は、強風、地震、車両の通過等により構造物に生起する振動を低減することができ極めて実用的価値を有するのであるが、動吸振器における重錘の挙動を知ることは、動吸振器の性能確認、保守、交換、更には、その改良のために好ましいのであるが、斯かる重錘の挙動を観察するに適した簡単な手段は未だ提案されていない。
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、簡単且つ安価な構造でもって、性能確認、保守、交換、更には、改良のために必要な情報を得ることができる動吸振器を提供することにある。
本発明による動吸振器は、重錘手段と、この重錘手段に対置された固定体と、重錘手段を平面内に関して可動に保持して支持する一方、平面に直交する方向に不動に保持して支持するように、固定体と重錘手段との間に介在された複数のU字状板と、重錘手段の平面内での振動を減衰させる減衰手段と、固定体に対する重錘手段の平面内の移動速度を電磁的であって非接触的に検出する検出手段とを具備している。
斯かる動吸振器によれば、電磁的な非接触的な検出手段により重錘手段の移動速度を検出できるために、検出手段の検出結果を監視することで重錘手段の移動速度は勿論のこと移動速度を積分及び/又は微分することにより重錘手段の移動量及び/又は加速度に基づいて重錘手段の振動態様を知ることができ、而して、性能確認、保守、交換及び改良のための多くの必要な情報を得ることができる上に、能動型の動吸振器とする場合には、斯かる検出手段の検出結果を有効に用いることができる。
上記の動吸振器では、U字状板は、平面と直交する方向に伸びる一方の縁部で固定体に固定されていると共に平面と直交する方向に伸びる他方の縁部で重錘手段に固定されているとよい。
本発明による動吸振器はまた、重錘手段と、この重錘手段を上下方向に関して可動となるように弾性的に支持する弾性支持手段と、重錘手段に対置されている固定体と、重錘手段を上下方向と実質的に直交する方向に関して不動に保持する一方、上下方向に関して可動に保持するように、重錘手段と固定体との間に介在された複数のU字状板と、重錘手段の上下方向の振動を減衰させる減衰手段と、固定体に対する重錘手段の上下方向の移動速度を電磁的であって非接触的に検出する検出手段とを具備している。
本動吸振器でも、電磁的な非接触的な検出手段により重錘手段の移動速度を検出できるために、性能確認、保守、交換及び改良のための多くの必要な情報を得ることができる上に、能動型の場合に検出手段の検出結果を有効に用いることができる。
上下方向に振動できる重錘手段を具備した動吸振器では、U字状板は、上下方向と直交する方向に伸びる一方の縁部で固定体に固定されていると共に上下方向と直交する方向に伸びる他方の縁部で重錘手段に固定されているとよい。
弾性支持手段は、重錘手段を弾性的に支持するように重錘手段と固定体との間に配される複数のコイルばねを具備していてもよく、複数のコイルばねは、好ましくは、重錘手段の重心を通る鉛直軸に対して対称に配置する。弾性支持手段は、単一のコイルばねを具備していてもよく、この場合には、重錘手段の重心を通る鉛直軸と同心にコイルばねを配置するとよい。本発明では、弾性支持手段は、コイルばねに代えて又はコイルばねと共に、他の弾性体、例えばゴム体を具備していてもよい。弾性支持手段は、通常、重錘手段の荷重を上から受けて重錘手段を下から支えて弾性的に支持するが、重錘手段の荷重を下から受けて重錘手段を吊り下げて弾性的に支持してもよく、更には、両方をもって重錘手段を弾性的に支持してもよい。
いずれの動吸振器でも、重錘手段は、平面視において実質的に正三角形を含む正多角形、例えば正方形、正五角形、正六角形であり、より好ましい例では正方形、正六角形であるが、U字状板を固定体と重錘手段との間に介在させることができる場合には、重錘手段を円柱体から構成してもよく、更には、平面視において実質的に長方形、円形、楕円形等の形状であってもよく、また縦軸に関して非対称の形状であってもよく、また本発明では、重錘手段は、中実である必要はなく中空、即ち環状であってもよく、更には、一個の中実なブロック体を有していてもよいが、好ましい例では、複数枚の大きな質量をもった厚板を上下方向に積層した積層体を有しており、斯かる積層体を有する場合、厚板の枚数を調節することにより質量を変化させることができ、而して、異なる構造物の固有振動数に対して最適な質量に容易に設定することができる。
本発明による動吸振器では、固定体を直接又は間接に構造物に取り付けて当該固定体を構造物に並置するようにしてもよく、固定体は、構造物とは別に設けてもよいが、斯かる固定体を特に設けないで、構造物自体を固定体として用いてもよい。
各U字状板は、平板状の薄板ばね材を弾性限界内でU字状に曲げて変形させたものであって、その曲げ変形に対する拘束を解除するとその弾性により元の平板状の薄板ばね材に戻るようになっているものである。
検出手段は、好ましい例では、重錘手段及び固定体のうちの一方に設けられたコイルと、重錘手段及び固定体のうちの他方に設けられた永久磁石とを具備しており、この場合、固定体に対する重錘手段の平面内又は上下方向の移動で永久磁石がコイル内においてコイルに沿って又はコイル外においてコイルの一端近傍を横切って若しくはコイルに沿って夫々移動するようにしてもよく、斯かるコイル及び永久磁石は夫々一個だけ設けられていてもよいが、重錘手段の固定体に対する移動方向を容易に特定できるようにするために少なくとも一方が複数個設けられていてもよい。
減衰手段は、重錘手段の振動を粘性体の剪断変形による剪断抵抗でもって減衰させる粘性剪断減衰機構を具備していてもよいが、これに代えて又はこれと共に重錘手段の振動を磁気的に減衰させる磁気減衰機構を具備していてもよい。
本発明の動吸振器は、振動を減衰させる構造物に設置されるのであるが、一つの動吸振器が斯かる構造物に設置される場合には、好ましくは、重錘手段に対する固有振動数は、設置される構造物の固有振動数に同調されており、複数個の動吸振器が構造物に設置される場合には、少なくとも一つの動吸振器の重錘手段に対する固有振動数を他の動吸振器の重錘手段に対する固有振動数と異ならせると共に異なる固有振動数を互いに近接させることにより、構造物の固有振動数の変化に対応できて、構造物の固有振動数の変化に拘わらず好ましく構造物の振動を減衰させることができ、また、異なる固有振動数を構造物の固有振動数の各次モードに合わせることにより各次モードの振動を効果的に減衰させることができる。
複数個の動吸振器において、少なくとも一つの動吸振器の重錘手段の質量、ばね定数及び/又は減衰係数は、他の動吸振器の重錘手段の質量、ばね定数及び/又は減衰係数と異なっていてもよい。
本発明によれば、簡単且つ安価な構造でもって、性能確認、保守、交換、更には、改良のために必要な情報を得ることができる動吸振器を提供することができる。
図1から図3において、本例の動吸振器1は、平面視において実質的に正方形であって中実な直方体からなる重錘手段2と、重錘手段2を取り囲んで重錘手段2に対置されていると共に平面視において実質的に正方形である枠体3と、重錘手段2を枠体3に対して平面内、本例では水平面内の全方向に関して可動に保持して支持する一方、水平面に直交する縦方向、本例では鉛直方向Vに不動に保持して支持するように、重錘手段2と枠体3との間に介在された複数、本例では二個一組の合計四組の縦置きのU字状板4、5、6及び7と、重錘手段2の水平面内での振動を減衰させる減衰手段8と、枠体3に対する重錘手段2の平面内の移動速度を電磁的であって非接触的に検出する検出手段9とを具備している。
重錘手段2は、大きな質量を有する一個のブロック体からなっており、枠体3は、構造物の屋上床等の床部11に固定されており、しかも、床部11と共に重錘手段2に対置された固定体を構成している。
枠体3は、重錘手段2を間にしてしかも重錘手段2との間に隙間X1をもって水平面内のX方向において互いに対向する一対のX方向縦壁部21及び22と、重錘手段2を間にしてしかも重錘手段2との間に隙間Y1をもって水平面内のX方向に交差、本例では直交するY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部23及び24とを有しており、一対のX方向縦壁部21及び22並びに一対のY方向縦壁部23及び24は、平面視で正方形の枠体3を形成するように一体的に互いに連結されている。
一対のX方向縦壁部21及び22と重錘手段2の側面33及び34との夫々の間に、鉛直方向Vに伸びる一方の縁部31がX方向縦壁部21及び22の夫々に、鉛直方向Vに伸びる他方の縁部32が重錘手段2の側面33及び34の夫々にねじ30を介して夫々固定されて少なくとも一つ、本例では二個一組の合計二組のU字状板4及び5が介在されており、一対のY方向縦壁部23及び24と重錘手段2の側面35及び36との夫々の間に、鉛直方向Vに伸びる一方の縁部31がY方向縦壁部23及び24の夫々に、鉛直方向Vに伸びる他方の縁部32が重錘手段2の側面35及び36の夫々にねじ30を介して夫々固定されて少なくとも一つの、本例では二個一組の合計二組のU字状板6及び7が介在されている。
X方向縦壁部21と重錘手段2の側面33との間には、並列に配された複数個、本例では一対のU字状板4が介在されており、X方向縦壁部22と重錘手段2の側面34との間には、並列に配された複数個、本例では一対のU字状板5が介在されており、Y方向縦壁部23と重錘手段2の側面35との間には、並列に配された複数個、本例では一対のU字状板6が介在されており、Y方向縦壁部24と重錘手段2の側面36との間には、並列に配された複数個、本例では一対のU字状板7が介在されており、互いに凹面で対面した各U字状板4は、一方の縁部31でX方向縦壁部21に、他方の縁部32で重錘手段2の側面33にねじ30を介して夫々固定されており、互いに凹面で対面した各U字状板5は、一方の縁部31でX方向縦壁部22に、他方の縁部32で重錘手段2の側面34にねじ30を介して夫々固定されており、互いに凹面で対面した各U字状板6は、一方の縁部31でY方向縦壁部23に、他方の縁部32で重錘手段2の側面35にねじ30を介して夫々固定されており、互いに凹面で対面した各U字状板7は、一方の縁部31でY方向縦壁部24に、他方の縁部32で重錘手段2の側面36にねじ30を介して夫々固定されている。
U字状板4、5、6及び7の夫々は、鉛直方向Vに伸びる一方の縁部31と鉛直方向Vに伸びる他方の縁部32とに加えて、縁部31と縁部32との間に湾曲するU字状部41を具備しており、U字状部41でもって重錘手段2を枠体3に対して水平面内の全方向に関して可動に保持している。
減衰手段8は、構造物の屋上床等の床部11に固定されている容器51と、容器51に収容された粘性体52と、容器51の底板53との間に微小隙間をもって対面して粘性体52内に配された抵抗板54と、抵抗板54を重錘手段2の底面55に取り付ける取り付け部材56とを具備した粘性剪断減衰機構57からなり、粘性剪断減衰機構57は、重錘手段2の床部11に対する水平面内の相対的移動で、底板53と抵抗板54との間の粘性体52に剪断変形を生じさせて、この剪断変形による剪断抵抗でもって重錘手段2の床部11に対する水平面内の相対的移動を減衰させるようになっている。
検出手段9は、重錘手段2及び床部11のうちの一方である床部11に設けられたコイル58と、重錘手段2及び床部11のうちの他方である重錘手段2に設けられた永久磁石59と、コイル58からの検出結果の記録、表示、記憶等を行う監視手段60とを具備している。コイル58はソレノイド状に巻かれて床部11に固着されており、ソレノイド状のコイル58の一端に隙間をもって対向配置されている永久磁石59は、重錘手段2の底面55に固着された取り付け部材61に取り付けられて当該取り付け部材61を介して重錘手段2の底面55に設けられている。コイル58は鉄心にソレノイド状に巻かれていてもよく、斯かる場合には、永久磁石59は、鉄心の一端に一方の磁極が隙間をもって対向するように配置されているとよい。
検出手段9は、重錘手段2の枠体3に対するX方向及びY方向の移動で永久磁石59が同方向に移動されることにより、永久磁石59で発生される磁束を切断するコイル58からその移動速度を示す電気信号を検出結果として生じさせ、この検出結果を監視手段60により記録、表示及び/又は記憶させるようになっている。
以上の動吸振器1は、枠体3がその下縁で床部11に固着されて構造物に設置される。この設置にあたっては、重錘手段2の固有振動数が構造物の固有振動数に同調される。斯かる動吸振器1では、構造物が水平面内で振動しない際には、重錘手段2は、U字状板4、5、6及び7により水平面内の全方向に可動に、鉛直方向Vに不動に夫々保持されている。
そして動吸振器1では、地震、強風等で構造物の床部11がX方向及びY方向に振動して、この振動に同調して重錘手段2が床部11に対して相対的にX方向及びY方向に振動すると、この振動で底板53と抵抗板54との間の粘性体52に剪断変形を生じさせて、この剪断変形による剪断抵抗でもって重錘手段2の床部11に対する水平面内の相対的移動を減衰させ、斯かる粘性剪断減衰機構57の振動エネルギの吸収により構造物のX方向及びY方向の振動を減衰させるようになっている。
ところで、動吸振器1によれば、重錘手段2の枠体3に対するX方向及びY方向の移動でコイル58からのその移動速度を示す電気信号を介して重錘手段2の移動速度を検出できるために、監視手段60でコイル58からの検出結果を監視することで重錘手段2の移動速度は勿論のことこの移動速度を積分及び/又は微分することにより重錘手段2の移動量及び/又は加速度に基づいて重錘手段2の振動態様を知ることができ、而して、性能確認、保守、交換及び改良のための多くの必要な情報を得ることができる上に、能動型の動吸振器とする場合には、斯かる監視手段60を具備した検出手段9の検出結果を有効に用いることができる。
本例の動吸振器1における減衰手段8は、重錘手段2の床部11に対する水平面内の相対的移動により底板53と抵抗板54との間の粘性体52に生じる剪断変形による剪断抵抗でもって重錘手段2の水平面内での振動を減衰させるようにしてなる粘性体の剪断抵抗を用いた粘性剪断減衰機構57を具備しているが、これに代えて又は加えて、例えば図5及び図6に示すように、磁気減衰機構101を具備していてもよく、磁気減衰機構101は、重錘手段2及び枠体3の一方、本例では重錘手段2に固定されていると共に磁界を発生する複数の磁界発生体103と、重錘手段2及び枠体3の他方、本例では枠体3に固定されていると共に磁界発生体103に対する相対的なX方向及びY方向の移動で渦電流を生じる複数の板状の導電体102とを具備している。
複数の導電体102は、X方向縦壁部21及び22並びにY方向縦壁部23及び24の内面に夫々固定されており、複数の磁界発生体103は、重錘手段2の側面33、34、35及び36の夫々に透磁性のL型部材105を介して固定された互いに異極の一対の永久磁石106及び107を夫々有している。導電体102及び磁界発生体103は、一組のU字状板4、5、6及び7の夫々の間に配されている。磁界を発生する永久磁石106及び107は、鉛直方向Vでギャップをもって互いに対向して導電体102を間にして夫々配されている。永久磁石106を支持するL型部材105と永久磁石107を支持するL型部材105との間の磁気抵抗を減じて良好な磁気回路を形成するために、両L型部材105間に透磁性の部材を介在させるとよい。
永久磁石106及び107は、重錘手段2の静止時に板状の導電体102の中央部Oにおいて磁界を発生するようにギャップをもって対向する互いに異なる極性の一対の磁極を生じさせるようになっている。
斯かる磁気減衰機構101は、地震、強風等で構造物の床部11がX方向及びY方向に振動して、この振動に同調して重錘手段2が床部11に対して相対的にX方向及びY方向に振動すると、X方向縦壁部21及び22並びにY方向縦壁部23及び24に夫々固定された導電体102が磁界発生体103に対して相対的にX方向及びY方向に移動して導電体102に起電力を生じると共に、この起電力に起因して導電体102に流れる渦電流の熱エネルギへの変換(渦電流損)により電力消費がなされ、導電体102に流れる渦電流と磁界発生体103の磁界とに基づいてX方向及びY方向の移動に抗する電磁力を生じる結果、重錘手段2の枠体3に対するX方向及びY方向の相対的移動を減衰させる。
以上の磁気減衰機構101を具備する場合でも、検出手段9は、前記と同様に、床部11に設けられたコイル58と、重錘手段2に設けられた永久磁石59とを具備していてもよいが、これに代えて、複数の導電体102の少なくとも一つの導電体102に、絶縁被覆された導線をフラット状であって同心状に巻いたコイル58を取り付け又は埋設して、斯かるコイル58と永久磁石106及び107とをもって検出手段9としてもよい。
以上の動吸振器1は、構造物の水平面内での振動を振動を減衰させるようになっているが、これに代えて、図7及び図8に示すように、構造物、特に橋梁の桁の鉛直方向Vの振動を減衰させるようになっていてもよい。
以下、図7及び図8に示す動吸振器1を説明すると、斯かる動吸振器1は、平面視において実質的に長方形である重錘手段2と、重錘手段2を上下方向、即ち鉛直方向Vに関して可動となるように弾性的に支持する弾性支持手段121と、重錘手段2に対置されている固定体122と、重錘手段2を固定体122に対して鉛直方向Vと実質的に直交する方向、即ち水平方向であるX及びY方向に関して不動に保持する一方、鉛直方向Vに関して可動に保持するように、重錘手段2と固定体122の枠体3との間に介在された複数、本例では四個の横置きのU字状板4、5、6及び7と、重錘手段2の鉛直方向Vでの振動を磁気的に減衰させる減衰手段8と、枠体3に対する重錘手段2の鉛直方向Vの移動速度を電磁的であって非接触的に検出する検出手段9とを具備している。
重錘手段2は、四隅に貫通孔123を有すると共に平面視において長方形の底板124と、底板124上に配されていると共に平面視において底板124と同形の二枚の中間板125及び126と、中間板126上に配されていると共に短辺が中間板126よりも短い一方、長辺が中間板126と同一である平面視において長方形の二枚の他の中間板127及び128と、中間板128上に配されていると共に平面視において中間板127及び128と同形の上板129とからなる積層体を有しており、これら鉛直方向Vに積層されていると共に夫々が大きな質量をもった厚板からなる複数枚の底板124、中間板125から128及び上板129は、一体となるように一個以上のねじ130により互いに連結されている。
固定体122は、重錘手段2を取り囲んでいると共に平面視において実質的に長方形である枠体3と、枠体3が溶接又はボルト等により固定されていると共に取り付け板131に溶接又はボルト等により固定されている基台132とを具備しており、矩形状の筒体からなる枠体3は、水平面内でX方向とX方向に実質的に直交するY方向とにおいて隙間X1及びY1をもって重錘手段2を取り囲んで配されており、取り付け板131は、橋梁の桁において振動で橋軸方向において生じる鉛直振動腹部に対応する部位に取り付けられており、こうして固定体122は、取り付け板131を介して構造物である橋梁の桁の鉛直方向に振動する部位に固定されている。
弾性支持手段121は、重錘手段2を鉛直方向Vに可動に弾性的に支持するように重錘手段2と基台132との間に配される四個のコイルばね133と、各コイルばね133の座屈を防止する座屈防止手段134とを具備している。
各コイルばね133は、その下方部が基台132の上面135と底板124の下面136との隙間137に配されていると共にその上方部が対応の貫通孔123に配されて基台132と重錘手段2との間に介在されている。
各座屈防止手段134は、基台132の上面135にねじにより固着されている円柱部材138と、隙間137の鉛直方向Vの幅と同程度に上方に離間して配されているねじにより中間板125の下面139に固着されているつば部付き円柱部材140とを具備しており、コイルばね133は、円柱部材138及び140を取り囲んでいると共に一端が基台132の上面135に接触する一方、他端が円柱部材140のつば部に接触しており、こうして各コイルばね133は、隙間137を維持して鉛直方向Vに可動に重錘手段2を実質的に均等に分担して弾性的に支持するようになっている。
板状ばね材を弾性限界内でU字状に曲げてなるU字状板4、5、6及び7において、U字状板4は、Y方向に伸びているその一方の縁部31で枠体3においてY方向に伸びている一方のX方向縦壁部21に、同じくY方向に伸びているその他方の縁部32で重錘手段2において同じくY方向に伸びている中間板128の一方の側面151に夫々複数のねじ30及び押さえ板152を介して取り付けられて固定されており、U字状板5は、Y方向に伸びているその一方の縁部31で枠体3においてY方向に伸びている他方のX方向縦壁部22に、重錘手段2においてY方向に伸びている中間板128の他方の側面153に夫々複数のねじ30及び押さえ板152を介して取り付けられて固定されており、U字状板6は、X方向に伸びているその一方の縁部31で枠体3においてX方向に伸びている一方のY方向縦壁部23に、同じくX方向に伸びているその他方の縁部32で重錘手段2においてX方向に伸びている中間板128の一方の側面154に夫々複数のねじ30及び押さえ板152を介して取り付けられて固定されており、U字状板7は、X方向に伸びているその一方の縁部31で枠体3においてX方向に伸びている他方のY方向縦壁部24に、同じくX方向に伸びているその他方の縁部32で重錘手段2においてX方向に伸びている中間板128の他方の側面155に夫々複数のねじ30及び押さえ板152を介して取り付けられて固定されている。
重錘手段2と枠体3との間に介在された斯かるU字状板4、5、6及び7により重錘手段2は、X及びY方向を含む水平方向には不動に保持されて枠体3のX方向縦壁部21、22及びY方向縦壁部23、24との間で隙間X1及びY1を維持される一方、鉛直方向Vには可動に保持されている。
減衰手段8は、重錘手段2の鉛直方向Vの振動を減衰させるように配された図5及び図6に示す磁気減衰機構101を有しており、磁気減衰機構101は、重錘手段2の中間板125に固定されていると共に磁界を発生する複数の磁界発生体103と、枠体3に固定されていると共に磁界発生体103に対する相対的な鉛直方向Vの移動で渦電流を生じる複数の板状の導電体102とを具備している。
複数の導電体102は、Y方向縦壁部23及び24の内面に夫々固定されており、複数の磁界発生体103は、中間板125の側面161及び162の夫々に透磁性のL型部材105を介して固定された互いに異極の一対の永久磁石106及び107を夫々有している。磁界を発生する永久磁石106及び107は、X方向でギャップをもって互いに対向して導電体102を間にして夫々配されている。上述のとおり、永久磁石106を支持するL型部材105と永久磁石107を支持するL型部材105との間の磁気抵抗を減じて良好な磁気回路を形成するために、両L型部材105間に透磁性の部材を介在させるとよい。
永久磁石106及び107は、重錘手段2の静止時に板状の導電体102の中央部Oにおいて磁界を発生するようにギャップをもって対向する互いに異なる極性の一対の磁極を生じさせるようになっている。
斯かる磁気減衰機構101は、重錘手段2が枠体3に対して相対的に鉛直方向Vに振動すると、導電体102が磁界発生体103に対して相対的に鉛直方向Vに移動して導電体102に起電力を生じると共に、この起電力に起因して導電体102に流れる渦電流の熱エネルギへの変換(渦電流損)により電力消費がなされ、導電体102に流れる渦電流と磁界発生体103の磁界とに基づいて鉛直方向Vの移動に抗する電磁力を生じる結果、重錘手段2の枠体3に対する鉛直方向Vの相対的移動を減衰させる。
検出手段9は、枠体3のX方向縦壁部21に設けられたコイル58と、コイル58の一端に対面して重錘手段2の底板124に設けられた永久磁石59と、コイル58からの検出結果の記録、表示、記憶等を行う監視手段60とを具備している。
図7及び図8に示す動吸振器1では、橋桁上での車両等の通過又は風若しくは地震の生起により取り付け板131が鉛直方向Vに振動して、この振動に同調して重錘手段2が固定体122に対して相対的に鉛直方向Vに振動すると、磁気減衰機構101により重錘手段2の固定体122に対する鉛直方向Vの相対的移動を減衰させ、斯かる磁気減衰機構101の振動エネルギの吸収により橋梁の桁の鉛直方向Vの振動を減衰させるようになっており、重錘手段2の枠体3に対する鉛直方向Vの移動でコイル58からのその移動速度を示す電気信号を介して重錘手段2の移動速度を検出できるために、監視手段60でコイル58からの検出結果を監視することで重錘手段2の移動速度は勿論のことこの移動速度を積分及び/又は微分することにより重錘手段2の移動量及び/又は加速度に基づいて重錘手段2の振動態様を知ることができ、而して、性能確認、保守、交換及び改良のための多くの必要な情報を得ることができる上に、能動型の動吸振器とする場合には、斯かる監視手段60を具備した検出手段9の検出結果を有効に用いることができる。
図7及び図8に示す動吸振器1でも、磁気減衰機構101における複数の導電体102の少なくとも一つの導電体102に、絶縁被覆された導線をフラット状であって同心状に巻いたコイル58を取り付け又は埋設して、斯かるコイル58と永久磁石106及び107とをもって検出手段9としてもよい。