JP2006161232A - 下着 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 前身頃の左右のバストの基底部(バージスライン)を上限位置とすると共にウエストラインを下限位置とする領域に他の部分よりも透湿性に優れた蒸れ除去部を設けると共に、該蒸れ除去部を含めた前身頃および後身頃を含む全体を保温率16%以上としている。前記蒸れ除去部の透湿度を380g/m2・h以上に設定し、その他の部位の透湿度は380g/m2・h以下としている。
【選択図】 図6
Description
このため、本出願人は、先に、特開2002−327301号公報(特許文献1)において、特定の部位のみの保温性を高めて下着を提供している。該下着は、身体各部の体表面の温度をサーモトレーサで測定し、体表面の温度の高い部位の保温性を重点的に高めて効率よく全体的に暖かさが感じられる下着としている。
逆に、暑い環境下に移動した場合を考慮して余り暖かくない下着を着用すると、屋外等の寒い環境に移動した時に寒くなり、前記した問題を同時に解決することは容易ではない。よって、暖かい下着を着て且つ上着を脱がない状態でも蒸し暑さを除去できる下着が要望されている。
前記衣類は部分的に放熱性を高めているものであるが、夏環境対応の衣類であるため、冬季において暖かさを保持しながら蒸し暑さを無くす機能は備えていない。かつ、蒸し暑さを感じる部位に単に放熱性の高い素材を配置すると、当該部位が寒く感じられることとなり、例えば、腹部に放熱性の高い素材を配置すると腹部が冷えることとなり、冬環境対応の衣類には不適となる。
前記バストの基底部(バージスライン)とは、バストの外輪郭の下半周部をさす。
また、人が快適と感じる衣服内気候は、温度が32℃前後、湿度が50%前後であることが望ましいことが知られている。従って、単に温度だけに着目するのでなく、湿度にも着目して測定および分析を行った
図2の表は図1で示した身体各部位についての測定結果を示し、横軸は寒い環境下(気温20℃、湿度50%)における皮膚温を表し、縦軸はその後暑い環境下(気温28℃、湿度50%)に移動後の皮膚温の変化量を表している。
図3は図1で示した身体部位での、Tシャツ(半袖)を着用した状態で寒い環境下(気温17℃、湿度50%)から、暑い環境下(気温31℃、湿度50%)に移動して10分間の平均蒸散量(TEWL[g/h・m2])を測定した結果を表している。
一方、腕部(14,15)は、寒い環境での皮膚温が28.5℃と低く、かつ暑い環境に移動した場合の皮膚温の変化量が大きく、蒸散量も6g/h・m2と少ないことから、血流量で体温調節を行っていると認められた。
背面側(1〜13)、および前面側の左右のバストおよびバスト上部(2〜5)は中間的な傾向を示していた。
保温率を16%以上としているのは、本発明者の下記の試験結果に基づき規定しており、保温率を16%以上、より好ましくは20%以上とすると、寒い屋外等の環境下でも暖かく、衣服内温度を前記した着用者が快適と感じる32℃前後に保持でき、かつ、湿度も50%前後と保持できる認められることによる。
詳細には、下記の表1の(1)ウール100%、(2)モダール、(3)ウエルサーモアミノ、(4)トルファン綿スパン、(5)サーモバランス、(6)綿100%で全体を形成した長袖シャツと、(7)の本発明品の蒸れ除去部をウール100%で形成すると共に他の領域は綿100%で形成した長袖下着を試作した。
なお、モダールはレーヨン70%、ナイロン25%、ポリウレタン5%からなり、ウエルサーモアミノは綿35%、レーヨン25%、ナイロン20%、指定外繊維(エクス)15%、ポリウレタン5%からなり、トルファン綿スパンは綿80%、ナイロン15%、ポリウレタン5%からなり、サーモバランスはナイロン35%、レーヨン40%、ウール20%、ポリウレタン5%からなる。
前記7種の試作品を複数人のモニター(肌着の評価試験の訓練を受けた熟練評価者)が着用して試験評価した。
試験条件は、室温10℃、湿度50%の部屋に10分間滞在した後、室温25℃、湿度35〜40%の部屋に移動し、15分後の評価である。また、満員電車やデパート内に入る想定で、部屋移動の直前に踏み台昇降2分間を行った。試作品の下着の上に、セーターとコートを、下はスカートを着てテストを行った。
図4では、横軸は寒い場所での暖かさ感を表し、縦軸は暑い場所に移動した場合の蒸れ感を表してある。
図5は、上記条件での5分毎の時系列の変化を表している。
前記図5より、(7)の本発明の開発品が寒い環境下では暖かく、暑い環境下に移っても蒸れ感を生じないという、好ましい評価を得ることができた。
前記最小領域は特にバスト下部からウエストラインまでの全面側中央が脇側と比較して汗をかきやすい部位であることによる。よって、少なくとも前記最小領域に蒸れ除去部を設けることにより蒸し暑さを除去できる。一方、脇線ラインまでとした最大領域の規定は、脇線ラインを越えた背面側では蒸散量が比較的少なく蒸れが発生しにくいことによる。
この透湿度の範囲も、試験結果に基づいて規定しており、透湿度が380g/m2・h以上、より好ましくは400g/m2・h以上のウール、モダール等で蒸れ除去部を形成した場合は蒸れ感を除去できる。一方、蒸れ除去部以外の流域では、透湿度380g/m2・h未満として暖かさを損なわないようにしている。なお、蒸れ除去部における透湿性の上限を800g/m2・hとしているのは、該範囲を越えるものは通気性も高くなるものが多いため蒸れ除去部で冷えを感じることになるためである。
即ち、図2に示す結果から、背面側は血流による熱放散が多くなっており、冬季の寒い環境下では、背面側で保温性を高めると効果的に体温を維持することができ、暖かさ感を得ることができる。一方、前面側はバストおよびバスト上部は背面側より非蒸散性放散は少ないので、保温率は背面側ほど高くしなくともよい。
かつ、前記図2の分析結果からから蒸散性放散はバスト下が一番高く、バストおよびバスト上部、背中、腕の順に低くなっていることより、バスト下、バスト、バスト上部は保温率を上げ過ぎると、蒸れ感を助長することになるので、前身頃の保温率は背面側より低くすることが好ましい。
図4、図5に示すように、種々の生地を用い試作・評価した結果から、前身頃の保温率は16%から30%、後身頃の保温率は、それよりやや高い20%から50%とするのが好ましい。
蒸れ防止のためには、透湿性に優れた生地を用いると共に、通気性も考慮することが望ましい。従って、蒸れ除去部の通気性を他の部位に比べ高くし、それ以外の部位の通気性は暖かさを確保するため低くしている。
前記通気性の範囲も、本発明者が試作・評価試験の結果から求めたものであり、通気性が300cc/cm2・s以下とすると暖かさも感じることができる。なお、通気性が300cc/cm2・s以上は夏春用下着の涼しい下着のレベルとなる。
前記構成とすると、任意の特性を持った最適の素材を選定することができ、機能デザインの自由度が向上する利点がある。
このような編地から形成した場合、縫製作業を少なくして生産性を上げることができると共に、蒸れ除去部と他の部位で透湿性、保温性等を連続的に変化させることもできる。
(1) 透湿性
JIS L−1099A−1法に準拠して測定
透湿性(透湿度)=10×(A2−A1)/S (g/m2・h)
A2−A1:試験体の1時間当たりの質量変化(g/h)
S :透湿面積(cm2)
温度条件:温度40±2℃、湿度条件:湿度90%±5%でナガノサイエンス株式会社製の高温高湿槽LH20−01を用いて測定
通気性=V/(A×S) (c3/cm2・s)
V:資料を通過した空気量 (c3)
A:資料面積 (cm2)
S:試験時間 (s)
カトーテック株式会社製 通気性試験機「KES−F8−AP1」を用いて測定
保温率=100×(W0−W)/W0 %
W0:発熱体を裸状にしたときの放熱量(J/cm2・s)
W :発熱体に資料を取りつけたときの放熱量(J/cm2・s)
カトーテック株式会社製 サーモラボ2「KES−F7」を用い、一定温度に加熱された熱板上に素材を載せ、熱板の変化により保温率を測定
TEWL=10×(A2−A1)/S (g/m2・h)
A2−A1:試験体の1時間当たりの質量変化(g/h)
S :蒸散面積(cm2)
株式会社スキノス社製の1ch水分蒸散モニターAS−TW1を用いて測定及び蒸散量の算出
図6は第1実施形態を示し、長袖シャツ1は前記図4、図5で試作した本発明の開発品からなる。該長袖シャツ1は前身頃2、後身頃3、袖4を備える。
前身項2において、5はバストの基底部(バージスライン)、6はウエストライン、9は左右脇線を示し、これらバスト基底部5、ウエストライン6、脇線ライン9で囲まれた領域を蒸れ除去部10としている。即ち、蒸れ除去部10は最大領域に設定している。
前記ウール100%生地(1)、綿100%生地(6)を所要形状に裁断し、これらを縫着して長袖シャツ1としている。
他の領域の綿100%は透湿度が339g/m2・h、通気性が133.9cc/cm2・s、保温率が20.5%である。透湿度が380g/m2・h以下、通気性が300cc/cm2・s以下、保温率が16%以上の本発明の範囲に入る。
また、前記図5に示す寒い環境下から暑い環境下に移動する場合の時系列的な評価結果においても、本実施形態の製品は、他の蒸れ除去部を設けていないサンプルと比較し、蒸れ感も、快適感も両方共優れた結果を得ることができたことが確認されている。
さらに、寒い環境から暑い環境に移動して10分後のモニターによるコメントも次のような良好な結果であった。
1) 熱のこもりや蒸れ感がない。
2) 熱のこもり、蒸れ感が解消し、肌はさらっと、空気のこもり感がない。
3) 胸下、胃のあたりの熱のこもり感がない。
4) 状態が落ち着いた感じがする。
蒸れ除去部10’はバスト基底部5の左右の最下端7の2点からウエストライン6に垂線を下した左右両側線8、8と、バストの基底部5、ウエストライン6に囲まれた領域とし、該領域では編組織を他の領域とかえて、透湿度が380〜800g/m2・h、通気性が1000cc/cm2・s以下、保温率が16%以上となる編組織(フライス編み)としている。 前記蒸れ除去部10’から左右脇線までの領域11を含めて第1実施形態と同様の蒸れ除去部以外の領域は透湿度が339g/m2・h未満、通気性が300cc/cm2・s以下、保温率が20%以上となる編組織(フライス編み)としている。
また、蒸れ除去部10’は最小領域としているが、最も汗をかきやすい左右バスト頂点の真下に挟まれた全面側中央の透湿性を高めているため蒸し暑さを解消することができる。
図8はキャミソール20、図9はブラスリップ30、図10はボデイスーツ40に適用しており、それぞれ、バスト基底部5とウエストライン6と左右脇線ライン9で囲まれた領域を蒸れ除去部10”とし、他の部位よりも透湿性に優れた素材で形成している。
2 前身頃
3 後身頃
4 長袖
5 バストの基底部(バージスライン)
6 ウエストライン
9 脇線ライン
10 蒸れ除去部
Claims (6)
- 前身頃の左右のバストの基底部(バージスライン)を上限位置とすると共にウエストラインを下限位置とする領域に、他の部分よりも透湿性に優れた蒸れ除去部を設けると共に、該蒸れ除去部を含めた前身頃および後身頃を含む全体を保温率16%以上としていることを特徴とする下着。
- 前記蒸れ除去部の領域は、
左右バストの基底部の最下端点の2点と該2点からの垂線とウエストラインとの交点の2点とで囲まれた略四角領域を最小領域とし、
左右バストの基底部に沿う上限ラインとウエストラインに沿う下限ラインと左右脇線ラインに囲まれた領域を最大領域とし、
前記最小領域から最大領域の範囲内に設けている請求項1に記載の下着。 - 前記蒸れ除去部の透湿度を380〜800g/m2・hに設定し、該蒸れ除去部を除く前身頃部および後身頃部の透湿度380g/m2・h未満としている請求項1または請求項2に記載の下着。
- 前記蒸れ除去部の通気性を1000cc/cm2・s以下とする一方、該蒸れ除去部を除く他の部位である前身頃部および後身頃部の通気性を300cc/cm2・s以下とし、蒸れ除去部の通気性を他の部位よりも高く設定している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の下着。
- 前記透湿度、保温率を有する素材により蒸れ除去部、該蒸れ除去部を除く前身頃、前記後身頃を構成する生地を裁断して設け、これら裁断された素材を縫着している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の下着。
- 編地からなり、編組織を変えて、前記蒸れ除去部、該蒸れ除去部を除く前身頃、前記後身頃に前記透湿度および保温率を持たせている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の下着。
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