JP2006153557A - 弾性波を用いた炉耐火物の残厚測定方法及び炉の寿命予測方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高炉等の炉壁に使用されている耐火物の厚さを、鉄皮を大きく開口することなく、精度良く測定することを可能とする、弾性波を用いた耐火物の残厚測定方法を提供すること。前記耐火物の残厚測定方法を用いて炉の寿命予測方法や炉の改修方法を提供すること。
【解決手段】鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉において耐火物の厚さを弾性波を用いた反射法により測定する方法であって、耐火物の表面位置から耐火物内部へ弾性波を発信し、弾性波の耐火物の炉内側表面からの反射波を鉄皮表面位置において受信することで耐火物の厚さを測定することを特徴とする炉耐火物の残厚測定方法を用いる。または鉄皮表面位置から耐火物内部へ弾性波を発信し、弾性波の耐火物の炉内側表面からの反射波を耐火物の表面位置において受信する。耐火物の表面位置での弾性波の発信・受信は鉄皮に開口部を形成して耐火物表面を露出させて行なうことが望ましい。
【選択図】図1
【解決手段】鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉において耐火物の厚さを弾性波を用いた反射法により測定する方法であって、耐火物の表面位置から耐火物内部へ弾性波を発信し、弾性波の耐火物の炉内側表面からの反射波を鉄皮表面位置において受信することで耐火物の厚さを測定することを特徴とする炉耐火物の残厚測定方法を用いる。または鉄皮表面位置から耐火物内部へ弾性波を発信し、弾性波の耐火物の炉内側表面からの反射波を耐火物の表面位置において受信する。耐火物の表面位置での弾性波の発信・受信は鉄皮に開口部を形成して耐火物表面を露出させて行なうことが望ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、炉耐火物の厚さの測定方法に関し、特に高炉あるいは他の炉に使用される耐火レンガ等の耐火物の残厚を操業中に測定する方法に関するものである。
高炉などの工業用炉の炉壁は、一般的に外側から鉄皮、不定形耐火物であるスタンプ材、主要な耐火物である耐火レンガの順に構成された多層構造である。一番内側にある耐火レンガは炉心側から損耗していくため、耐火物の厚みを測定することは炉の保守管理上、きわめて重要である。特に高炉の炉底部は、休風時であっても常に溶銑にさらされているため損耗が激しく、しかも高炉が操業される数十年間、直接的な修復ができない部位である。操業中に耐火物の残厚を精度良く測定することで、高炉の操業を最適化して高炉の寿命を延命することや、高炉の寿命や改修時期を適切に予測することが可能となる。
上記のような耐火物の厚さを測定する方法として最も普及している方法は、耐火物に温度計を設置して、炉心側から鉄皮側へ伝わる熱流束を測定する方法である。この方法では、炉壁の周囲の100箇所以上に温度計を設置して熱流束を測定し、その結果をもとに熱伝導方程式を解くことで耐火物の厚みを推定する。
しかしながら、熱流速を測定して熱伝導方程式を解く方法では、熱伝導方程式を解く際に、耐火レンガ、スタンプ材などの熱伝導率を用いる必要がある。実際の操業では、炉心側から凝固層、脆化層が耐火レンガの裏側に生じており、これらが付着した場合の耐火レンガの熱伝導率が不明であるため、正確な厚みを推定することができないという問題がある。
上記以外の方法として、弾性波(超音波)を用いて耐火物の厚みを測定する下記(a)〜(d)の方法が知られている。
(a)非破壊的な計測方法である衝撃弾性波法。鉄皮をハンマーあるいは打撃装置により加振して弾性波を発生させて、鉄皮・スタンプ材・耐火レンガを伝搬する弾性波の往復時間を測定することで耐火物の厚みを測定する方法である。(例えば、特許文献1参照。)
(b)衝撃弾性波共振法。低い周波数をつかい、共振周波数を求めることで厚さ測定を行う方法である。鉄皮、スタンプ材の、厚さと音速値とをあらかじめ調べておくことで弾性波の炉壁内部における共振周波数から耐火レンガの厚さを計算することができる(例えば、特許文献2参照。)。
(b)衝撃弾性波共振法。低い周波数をつかい、共振周波数を求めることで厚さ測定を行う方法である。鉄皮、スタンプ材の、厚さと音速値とをあらかじめ調べておくことで弾性波の炉壁内部における共振周波数から耐火レンガの厚さを計算することができる(例えば、特許文献2参照。)。
(c)鉄皮を開口し超音波で探傷する方法(一探触子法)。この方法では、まず、鉄皮とスタンプ材(またはスタンプ材の一部)を開口し、開口孔に充填材を充填させる。次に、充填材が完全に硬化した状態で、充填材の上から一探触子法で耐火レンガの厚み計測をおこなう。開口を行うことにより、鉄皮とスタンプ材によるノイズを低減させることができる(例えば、特許文献3参照。)。
(d)鉄皮を開口し超音波で探傷する方法(二探触子法)。送信と受信を別々の探触子を用いる二探触子法により測定を行うことで、(c)の一探触子法で生じる送信波の直接的な探触子への漏れこみを防ぐことができる(例えば、特許文献4参照。)。開口部は1ヶ所である。
特開昭62−297710号公報
特開平8−219751号公報
特開平8−110217号公報
特開平9−61144号公報
しかし、上記の(a)〜(d)の技術には、以下に述べる問題がある。
(a)非破壊的な計測方法である衝撃弾性波法は、スタンプ材と鉄皮による多重反射により信号とノイズとの比(S/N)が低く計測が困難である。
(b)衝撃弾性波共振法は、スタンプ材を鉄皮と耐火レンガとの間に圧入する際の圧入具合が、同じ高炉の炉壁であっても場所によって微妙に異なることと、操業年数が経つにつれスタンプ材の状態が変化するため、スタンプ材の正確な音速値を知ることは非常に困難である。したがって、衝撃弾性波法による厚さ測定の精度は低い。
(c)鉄皮を開口し超音波で探傷する方法(一探触子法)は、一探触子法では、送信と受信を同一の探触子を用いるため、送信波が直接探触子に漏れこみ強いノイズとなり、不感帯が発生するという問題がある。図9に一探触子法で生じる不感帯の例を示す。不感帯Yがあると、耐火レンガの厚さが薄い場合、耐火レンガの裏面からの反射波Zが不感帯Yに埋もれてしまい計測が不可能となる。図9の場合は、耐火レンガが薄くなり反射波を受信するのにかかる時間が300μsec以下になると、計測が困難になることが分かる
また、耐火レンガは超音波が強く散乱するため、散乱波によるノイズによりS/Nが高い状態で計測できないという問題がある。更に、充填材は断熱効果がある材質を用いているため、開口部分の冷却能力が低くなり耐火物に負担がかかる。
また、耐火レンガは超音波が強く散乱するため、散乱波によるノイズによりS/Nが高い状態で計測できないという問題がある。更に、充填材は断熱効果がある材質を用いているため、開口部分の冷却能力が低くなり耐火物に負担がかかる。
(d)鉄皮を開口し超音波で探傷する方法(二探触子法)は、二探触子法の場合、図10に示すように、表面波による直接波が影響してノイズとなり、一探触子法に比べると小範囲ではあるが、やはり不感帯Yが発生する。
表面波による影響を抑えるために、受信探触子に移動ステージとリニアガイドをとりつけて、受信探触子の計測位置を少しずつ移動させながら複数の信号を計測し加算平均をおくことで、S/Nを改善することができるが、開口した孔の中で探触子を移動させながら計測するために、孔が十分な大きさを有するように、大きく開口する必要があり、炉壁の強度の点で好ましくない。また、開口部が大きいと耐火物の冷却も不十分であり耐火物に負担がかかる。
以上のように、従来の技術では、鉄皮を開口しないとS/Nが十分に高くなるように計測することは困難である。しかし、鉄皮を開口した場合も、一探触子法で計測を試みた場合、散乱波と不感帯により、S/Nが低下して、高精度の測定は困難である。また、二探触子法で計測した場合は、表面波によって生じる不感帯によってS/Nが低下し、やはり高精度の測定は困難であるだけでなく、開口する孔が大きくなるので炉壁の強度の低下や耐火物の冷却能力が低下する。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、高炉等の炉壁に使用されている耐火物の厚さを、鉄皮を大きく開口することなく、精度良く測定することを可能とする、弾性波を用いた耐火物の残厚測定方法を提供することにある。また本発明の他の目的は、耐火物の残厚測定方法を用いて炉の寿命予測方法および炉の改修方法を提供することにある。
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)、鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉において、前記耐火物の厚さを弾性波を用いた反射法により測定する方法であって、前記耐火物の表面位置から該耐火物内部へ弾性波を発信し、該弾性波の前記耐火物の炉内側表面からの反射波を鉄皮表面位置において受信することで、前記耐火物の厚さを測定することを特徴とする炉耐火物の残厚測定方法。
(2)、鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉において、前記耐火物の厚さを弾性波を用いた反射法により測定する方法であって、鉄皮表面位置から前記耐火物内部へ弾性波を発信し、該弾性波の前記耐火物の炉内側表面からの反射波を前記耐火物の表面位置において受信することで、前記耐火物の厚さを測定することを特徴とする炉耐火物の残厚測定方法。
(3)、弾性波の送信または反射波の受信を行なう耐火物の表面を、鉄皮に開口部を形成して、前記開口部を通じて露出させた耐火物表面としたことを特徴とする(1)または(2)に記載の炉耐火物の残厚測定方法。
(4)、鉄皮の開口部部分に着脱自在のキャップを設置することにより開閉可能として、残厚測定時には前記キャップを取り外し、残厚測定後は前記キャップにより開口部を閉塞することすることを特徴とする(3)に記載の炉耐火物の残厚測定方法。
(5)、鉄皮に形成された同じ開口部を用いて耐火物の厚さを繰り返し測定することを特徴とする(3)または(4)に記載の炉耐火物の残厚測定方法。
(6)、鉄皮表面位置での反射波の受信または鉄皮表面位置での弾性波の送信を複数個所で行なうことを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載の炉耐火物の残厚測定方法。
(7)、(1)ないし(6)のいずれかに記載の炉耐火物の残厚測定方法を用いて、炉壁の耐火物の厚さを所定の期間測定し、測定された前記耐火物の厚さから、前記耐火物の寿命を推定することで、炉の寿命を予測することを特徴とする、炉の寿命予測方法。
(8)、(7)に記載の炉の寿命予測方法を用いて予測した炉の寿命に基づいて、炉の改修時期を決定して、炉の改修を行うことを特徴とする炉の改修方法。
(1)、鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉において、前記耐火物の厚さを弾性波を用いた反射法により測定する方法であって、前記耐火物の表面位置から該耐火物内部へ弾性波を発信し、該弾性波の前記耐火物の炉内側表面からの反射波を鉄皮表面位置において受信することで、前記耐火物の厚さを測定することを特徴とする炉耐火物の残厚測定方法。
(2)、鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉において、前記耐火物の厚さを弾性波を用いた反射法により測定する方法であって、鉄皮表面位置から前記耐火物内部へ弾性波を発信し、該弾性波の前記耐火物の炉内側表面からの反射波を前記耐火物の表面位置において受信することで、前記耐火物の厚さを測定することを特徴とする炉耐火物の残厚測定方法。
(3)、弾性波の送信または反射波の受信を行なう耐火物の表面を、鉄皮に開口部を形成して、前記開口部を通じて露出させた耐火物表面としたことを特徴とする(1)または(2)に記載の炉耐火物の残厚測定方法。
(4)、鉄皮の開口部部分に着脱自在のキャップを設置することにより開閉可能として、残厚測定時には前記キャップを取り外し、残厚測定後は前記キャップにより開口部を閉塞することすることを特徴とする(3)に記載の炉耐火物の残厚測定方法。
(5)、鉄皮に形成された同じ開口部を用いて耐火物の厚さを繰り返し測定することを特徴とする(3)または(4)に記載の炉耐火物の残厚測定方法。
(6)、鉄皮表面位置での反射波の受信または鉄皮表面位置での弾性波の送信を複数個所で行なうことを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載の炉耐火物の残厚測定方法。
(7)、(1)ないし(6)のいずれかに記載の炉耐火物の残厚測定方法を用いて、炉壁の耐火物の厚さを所定の期間測定し、測定された前記耐火物の厚さから、前記耐火物の寿命を推定することで、炉の寿命を予測することを特徴とする、炉の寿命予測方法。
(8)、(7)に記載の炉の寿命予測方法を用いて予測した炉の寿命に基づいて、炉の改修時期を決定して、炉の改修を行うことを特徴とする炉の改修方法。
本発明によれば、鉄皮を有する炉で使用される耐火物の残厚を、操業中に高精度で測定できる。また測定の度に煩雑な作業を行う必要がなく、耐火物に負担をかけずに、繰り返し残厚の測定が可能となる。また炉の寿命を、高精度に予測し、適切な時期に改修できる。
本発明は、鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉において、前記耐火物の厚さを弾性波を用いた反射法により測定する方法であって、弾性波の発信と受信とを鉄皮表面位置と耐火物表面位置において行い、前記耐火物内部へ弾性波を発信し、前記弾性波の前記耐火物の炉内側表面からの反射波を受信することで、前記耐火物の厚さを測定することを特徴とする。すなわち、弾性波の発信を耐火物表面位置で行なう場合には受信を鉄皮表面位置において行ない、弾性波の発信を鉄皮表面位置で行なう場合には受信を耐火物表面位置において行なうものである。
耐火物表面位置において弾性波の発信または受信を行なうために、具体的には、鉄皮の一部を除去して耐火物の表面に到達する開口部を形成する。この開口部を通じて耐火物の表面を露出させ、開口部から耐火物内部へ直接弾性波を送信して得られる耐火物の炉内側表面からの反射波を、鉄皮表面位置において受信することで、前記耐火物の厚さを測定する。または鉄皮表面位置から耐火物内部へ弾性波を送信して得られる耐火物の炉内側表面からの反射波を、開口部で直接受信することで、耐火物の厚さを測定する。鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉としては、例えば、高炉、ガス化溶融炉、RH炉などの工業用炉がある。
本発明を、高炉を用いて詳しく説明する。
高炉の炉壁は、外側から鉄皮、スタンプ材、耐火レンガの順に構成された多層構造である。本発明で残厚を測定する耐火物は溶銑に常にさらされて損耗する耐火レンガの部分である。スタンプ材は鉄皮と耐火レンガとの間に圧入する不定形耐火物であるが、損耗にいたることはないので、測定が必要な耐火物は耐火レンガ部分である。
図1に本発明の一実施形態の概略図を示す。本発明では高炉の表面の鉄皮1を一部除去して、除去した鉄皮の下のスタンプ材2を除去して耐火物の炉外側の表面に到達する開口部3を形成する。そして、第一の探触子4を開口部3に設置して、第二の探触子7を開口部3以外の、鉄皮1の表面位置に設置する。開口部3に設置した第一の探触子4により耐火物(耐火レンガ)5内部へ直接に弾性波6を送信して耐火レンガの裏側からの反射波を、鉄皮表面に設置した第二の探触子7で受信する。これとは逆に、鉄皮表面に設置した第二の探触子7により耐火レンガ5内部へ弾性波を送信して耐火レンガ5の裏側からの反射波を、開口部3に設置した第一の探触子4により受信しても良い。受信した信号を解析して、耐火レンガの厚さを測定する。
鉄皮と鉄皮の下のスタンプ材とを除去して開口部を形成することで、弾性波の送受信の際に、鉄皮とスタンプ層の影響を除くことができる。かつ探触子を2つ設置する二探触子法を用いることで、直接探触子に送信波が漏れこむことによって発生する不感帯を取り除いてS/Nを改善することができる。また、開口部を形成することで、弾性波の送信部分と受信部分とを空間的に分離して、探触子間で直接に伝搬する表面波による計測への影響を抑えることができる。また、二探触子法なので散乱波による影響を防ぐことができる。さらに、開口部の形成が受信側または送信側のみでよいため、開口部の形成が容易であり、炉壁への負担も軽減でき、また、鉄皮表面位置での弾性波の送受信を任意の位置で行なえるため複数個所での測定による耐火物の残厚のプロフィールも容易に得ることができる。
開口部は、例えばボーリングで鉄皮とスタンプ材とを除去して、一つの底面を耐火レンガとし、側面をスタンプ材と鉄皮とした円筒形状の穴部として形成することができる。ボーリングによる開口作業が他の開口作業よりも容易であるので、開口部は円筒形状であることが望ましい。開口部の耐火物上および鉄皮上での面積は、高炉の安全な強度に影響を与えないためには小さいほうが好ましいが、一方でノイズレベルが上昇するという問題がある。探触子として直径20mmのものを用いる場合には、開口部の直径を約20mmとすることも可能である。
鉄皮に形成された同じ開口部を用いて耐火物の厚さを繰り返し測定することが望ましい。開口作業の手間を減らし、同一個所で炉耐火物の残厚を管理することができる。
鉄皮を切断した開口部は、繰り返し耐火物の残厚測定に用いることが望ましい。開口部をキャップまたは蓋で水漏れしないように閉塞できる構造にしておくことで、厚さ測定後に再びスタンプ材を圧入して開口部を閉じることができ、しかも開口部を容易に再開口して、厚さ測定を行うことができる。開口部の形成を容易にすることで、繰り返し長期に渡って、厚さを測定することが容易になり、同一個所での残厚の傾向管理や、他の残厚測定方法の校正方法(例えば、操業中は炉壁に設定してある温度計や、衝撃弾性波共振法等の鉄皮を開口しない方法でレンガ残厚を推定し、休風時に本発明方法で計測したデータをもとに操業中に測定する残厚の計測精度を上げる方法。)として利用することができる。また、冷却能力を損なわれることがないので、冷却能力の低下による耐火物への負担を防ぐことができる。
開口部にキャップを取り付ける場合の一実施形態を図2を用いて説明する。まず鉄皮1とスタンプ材2とをくりぬいて、直径60mmの円筒形状の開口部3を形成する。次に鉄皮1の開口部周辺に、内径87.3mm、外形114.3mm、長さ60mmに作成したSUS304製の短管10を取り付ける。開口部3の耐火レンガ上での中心と短管10との中心とが、鉄皮1表面の法線方向に平行な同一直線上となるように短管10の位置を決めて、短管10と鉄皮1の内側と外側から溶接して固定する。開口部3を閉塞するためのキャップ11は、外形140mm、長さ60mmとして、内側にネジきりを施し、短管10の外側にもネジきりを施すことで、キャップ11を短管10に取り外し可能に取り付けて、開口部3の閉塞を可能とする。
探触子と耐火物との接触面に断熱材を設置することが好ましい。耐火物の表面は、通常は80℃程度であるが、耐火物が損耗して薄くなると、表面温度も上昇する。探触子の耐熱温度は100℃程度であるため、探触子と耐火物との表面接触面側に断熱材を取り付けることで、耐火物の温度が高温となった場合にもその影響を受け取ることなく残厚を測定することができる。
図3に探触子と耐火物との接触面に耐熱板を取り付ける場合の一例を示す。断熱板12は、例えば探触子4、7先端部分と同じ直径48mmの円形で、厚さ10mmのアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂製の板等を用いる。また、図4は耐火物表面に探触子を接触させて耐火物の厚さを測定する際の、耐火物表面と探触子の耐火物との接触面の温度の時間変化であり、耐火物の表面温度とアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂製の厚さ20mmの板を断熱材として用いた場合の探触子表面の温度との比較により、断熱板の効果を示すものである。図4によれば、耐火物の探触子との接触面の温度が300℃前後であっても、断熱材を用いた場合の探触子の表面は50℃程度にしか上昇しないことが分かる。
次に、高炉の耐火物の残厚測定の具体的なプロセスの一実施形態を図5を用いて説明する。図5は本発明の耐火物の残厚測定方法を実施するための説明図である。計測工程は以下の(A)〜(D)からなる。
(A)、鉄皮1とスタンプ材2を開口し、耐火物5(耐火レンガ)の表面に探触子4(送信用探触子)を接触できる状態にする。鉄皮1、スタンプ材2、耐火物5の表面はやや傾斜しているので、探触子4を接触させやすいように傾斜に対して法線方向に孔を開口して開口部3を形成して、耐火物表面を露出させる。開口角度を耐火物5の表面に対して法線方向とすることで、計測作業が容易となる。さらに、開口部3にキャップを取り付けられるように短管10などを溶接する工事を行い、閉塞できる構造とすることが望ましい。
(B)、弾性波が伝搬しにくい素材で作られた治具等を用いて固定した探触子4を開口部3の耐火物表面に設置する。探触子4の耐火物5との接触面に、樹脂で作られた厚さ10mmの断熱板を取り付ける。
(C)、パルサー20にて送信波形を作成して開口部3の耐火物表面に設置した探触子4にて送信波6を耐火物内部へ送信する。波形はバースト波やチャープ波など任意の波形でよい。耐火物5の裏側からの反射波を鉄皮表面に設置した探触子7(受信用探触子)にて計測する。鉄皮表面に設置した探触子7で受信された反射波はアンプ21とバンドパスフィルター22を経てA/D変換器(デジタルオシロ)23にてA/D変換され表示される。A/D変換器(デジタルオシロ)23で離散値変換された波形情報をGPIBインターフェース等のデータ入力手段を用いて計算機24に取り込み、解析をして残厚を算出する。
計測された反射波形の例を図6に示す。耐火物の裏側からの反射波の受信信号が十分に良好なS/Nで受信できていることが分かる。反射波の受信信号Zから伝搬時間tを読み取り、残厚Lを算出する。このとき、鉄皮の厚さDf、鉄皮中の音速Vf、スタンプ材の厚さDs、スタンプ材中の音速Vs、耐火物中の音速Vtとすると、これらの値は既知であり、これら既知の値から伝搬時間tとなる耐火物の残厚である厚さLを算出する。炉によって使用している耐火物が異なるので、耐火物中の音速値を事前に調査し、データベース化しておくことが好ましい。弾性波の鉄皮1、スタンプ材2、耐火物5中での入射角、反射角を図8に示すようにθ1、θ2、θ3とすると、探触子4と探触子7との間隔がWの場合、伝搬時間tと耐火物の厚さLとは下記(E)式の関係がある。
したがって、所定の探触子間隔Wについて(E)式に基づいて伝搬時間tと耐火物の厚さLとの関係の近似式を予め求めておけば、伝搬時間tを測定することで耐火物の厚さLを算出できる。
(D)、耐火物5の厚さ測定が終了後、開口部3を閉塞する。探触子4を耐火物表面から取り外した後、開口部3にスタンプ材を再び圧入する。スタンプ材の圧入後に、開口部3の短管10部分にキャップを取り付けて、開口部内へ水漏れがしないように閉塞処理を行う。キャップが取り付けられるような処理を行わない場合には、開口部にスタンプ材を圧入して鉄板等を溶接して閉塞する。開口部を完全に閉塞すると、再度測定を行う際の開口の手間が大きく、頻繁に残厚測定を行う場合はキャップ等の取付けを行なうことが効率的である。
再び、同位置で耐火物の残厚の測定を行う場合、キャップを取り外し、開口部に圧入したスタンプ材を取り除いて耐火物表面を露出させた後、上記(B)〜(D)の工程を再度実行する。開口部が形成されていれば、一回の測定を30分程度の短時間で完了させることができる。
上記(C)の工程において、鉄皮とスタンプ層を除去した開口部で、耐火物表面に設置した探触子から弾性波を発信し、耐火物の炉内側表面からの反射波を鉄皮上の複数個所で受信して耐火物の厚さを算出することで、耐火物の残厚のプロフィールを得ることができる。受信側の探触子は鉄皮上の任意の位置に設置できるので、広範囲の耐火物の残厚を測定することが可能である。
尚、鉄皮表面に設置した探触子7(送信用探触子として使用)により耐火物5内部へ弾性波を送信して、耐火物5の裏側からの反射波を開口部3に設置した探触子4(受信用探触子として使用)により受信しても良い。この場合は鉄皮上の複数個所で弾性波を発信して、固定された開口部において弾性波の受信を行なうことで耐火物の残厚のプロフィールを得ることができる。
次に本発明を用いて、炉の寿命予測を行う方法について説明する。上記に記載の耐火物の残厚測定方法を用いれば、耐火物の正確な残厚が測定可能であるので、炉壁の耐火物の厚さを所定の期間測定して、測定された前記耐火物の厚さから、前記耐火物の寿命を推定することで、炉の寿命を予測することができる。
高炉の場合、上記の本発明方法を用いて高炉の炉底耐火物の正確な厚さ(残厚)を得ることで、操業中の高炉の余齢を推定することが可能となり従来以上に精度良く、かつ容易に、高炉の寿命を推定することができる。高炉の炉底部分の耐火物の厚さを本発明方法を用いて定期的に測定し、残厚の履歴データより、例えば、最小二乗法を用いて寿命を推定する。耐火物の損耗の激しい部分は経験的に知られているので、特に損耗の激しい部分の耐火物の残厚を測定することが好ましい。また、高炉の炉底に複数の測定個所を設けて、残厚を測定することが望ましい。操業開始時から耐火物の厚さを測定することが望ましいが、過去数年程度の耐火物の厚さデータが蓄積できれば、高炉の寿命予測は可能である。高炉の操業中は鉄皮の表面上を冷却水が流れているため測定は困難であるので、毎休風時に残厚を測定することが望ましい。図7に高炉の寿命予測を行う近似計算の例を示す。図7において、過去12年間の耐火レンガ厚さの測定データのうち、過去3年間の測定厚さをもちいて最小二乗法により近似直線を求め、この近似直線から、耐火レンガの厚さが寿命と考えられる厚さXとなる操業年数Fを計算している。高炉の現在の操業年数をPとすると、耐火物の余齢Crは下記(G)式で求めることができる。
Cr=F―P…(G)
N箇所で耐火レンガの厚さの測定を行う場合、耐火レンガの余齢がCr1、Cr2、・・・CrNとN個得られるので、下記(H)式に示すように、N個の余齢のうちの最小値を高炉の余齢Brとする。
N箇所で耐火レンガの厚さの測定を行う場合、耐火レンガの余齢がCr1、Cr2、・・・CrNとN個得られるので、下記(H)式に示すように、N個の余齢のうちの最小値を高炉の余齢Brとする。
Br=min[Cr1、Cr2、Cr3、……CrN]…(H)
以上の方法を用いて、炉の寿命を予測することができるので、予測した寿命に基づいて炉を停止して改修することが望ましい。すなわち、炉の耐火物の残厚を定期的に測定し、測定された残厚に基づいて炉の寿命を予測し、予測された寿命に基づいて炉の改修時期を決定し、炉の改修を実施することにより、適切な時期に炉の改修が可能であり、操業中に耐火物が破損する事故を防止して、寿命の上限近くまで炉を操業することが可能となる。炉の耐火物の残厚の測定は、ある程度の長期に渡って適当な間隔をおいて複数回行えば良く、常に同じ時間間隔で行う必要はない。
以上の方法を用いて、炉の寿命を予測することができるので、予測した寿命に基づいて炉を停止して改修することが望ましい。すなわち、炉の耐火物の残厚を定期的に測定し、測定された残厚に基づいて炉の寿命を予測し、予測された寿命に基づいて炉の改修時期を決定し、炉の改修を実施することにより、適切な時期に炉の改修が可能であり、操業中に耐火物が破損する事故を防止して、寿命の上限近くまで炉を操業することが可能となる。炉の耐火物の残厚の測定は、ある程度の長期に渡って適当な間隔をおいて複数回行えば良く、常に同じ時間間隔で行う必要はない。
1 鉄皮
2 スタンプ材
3 開口部
4 第一の探触子
5 耐火物(耐火レンガ)
6 弾性波
7 第二の探触子
10 短管
11 キャップ
12 断熱板
20 パルサー
21 アンプ
22 バンドパスフィルター
23 A/D変換器(デジタルオシロ)
24 計算機
Cr 耐火物の余齢
F 耐火レンガの厚さが寿命となる操業年数
P 高炉の現在の操業年数
t 伝搬時間
X 耐火レンガの寿命厚さ
Y 不感帯
Z 反射波
2 スタンプ材
3 開口部
4 第一の探触子
5 耐火物(耐火レンガ)
6 弾性波
7 第二の探触子
10 短管
11 キャップ
12 断熱板
20 パルサー
21 アンプ
22 バンドパスフィルター
23 A/D変換器(デジタルオシロ)
24 計算機
Cr 耐火物の余齢
F 耐火レンガの厚さが寿命となる操業年数
P 高炉の現在の操業年数
t 伝搬時間
X 耐火レンガの寿命厚さ
Y 不感帯
Z 反射波
Claims (8)
- 鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉において、前記耐火物の厚さを弾性波を用いた反射法により測定する方法であって、前記耐火物の表面位置から該耐火物内部へ弾性波を発信し、該弾性波の前記耐火物の炉内側表面からの反射波を鉄皮表面位置において受信することで、前記耐火物の厚さを測定することを特徴とする炉耐火物の残厚測定方法。
- 鉄皮と耐火物とにより構成された炉壁を有する炉において、前記耐火物の厚さを弾性波を用いた反射法により測定する方法であって、鉄皮表面位置から前記耐火物内部へ弾性波を発信し、該弾性波の前記耐火物の炉内側表面からの反射波を前記耐火物の表面位置において受信することで、前記耐火物の厚さを測定することを特徴とする炉耐火物の残厚測定方法。
- 弾性波の送信または反射波の受信を行なう耐火物の表面を、鉄皮に開口部を形成して、前記開口部を通じて露出させた耐火物表面としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炉耐火物の残厚測定方法。
- 鉄皮の開口部部分に着脱自在のキャップを設置することにより開閉可能として、残厚測定時には前記キャップを取り外し、残厚測定後は前記キャップにより開口部を閉塞することすることを特徴とする請求項3に記載の炉耐火物の残厚測定方法。
- 鉄皮に形成された同じ開口部を用いて耐火物の厚さを繰り返し測定することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の炉耐火物の残厚測定方法。
- 鉄皮表面位置での反射波の受信または鉄皮表面位置での弾性波の送信を複数個所で行なうことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の炉耐火物の残厚測定方法。
- 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の炉耐火物の残厚測定方法を用いて、炉壁の耐火物の厚さを所定の期間測定し、測定された前記耐火物の厚さから、前記耐火物の寿命を推定することで、炉の寿命を予測することを特徴とする、炉の寿命予測方法。
- 請求項7に記載の炉の寿命予測方法を用いて予測した炉の寿命に基づいて、炉の改修時期を決定して、炉の改修を行うことを特徴とする炉の改修方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004342090A JP2006153557A (ja) | 2004-11-26 | 2004-11-26 | 弾性波を用いた炉耐火物の残厚測定方法及び炉の寿命予測方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004342090A JP2006153557A (ja) | 2004-11-26 | 2004-11-26 | 弾性波を用いた炉耐火物の残厚測定方法及び炉の寿命予測方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2006153557A true JP2006153557A (ja) | 2006-06-15 |
Family
ID=36632057
Family Applications (1)
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JP2004342090A Pending JP2006153557A (ja) | 2004-11-26 | 2004-11-26 | 弾性波を用いた炉耐火物の残厚測定方法及び炉の寿命予測方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2006153557A (ja) |
-
2004
- 2004-11-26 JP JP2004342090A patent/JP2006153557A/ja active Pending
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