JP2006151835A - サルビアノール酸b等含有神経細胞退化等起因疾病治療剤等 - Google Patents

サルビアノール酸b等含有神経細胞退化等起因疾病治療剤等 Download PDF

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Abstract

【課題】新しい神経細胞退化等起因疾病治療剤及びその有効成分、その有効成分調整法等これに必要な物質と技術を提供すること。
【解決手段】サルビアノール酸B及びその光学又は幾何異性体でサルビアノール酸Bと同様の作用を有するもの及びそれらのプロドラッグ、ならびに上記化合物又はそれらのプロドラッグの薬学的に許容することのできるそれらの塩ならびにそれらの水和物から選ばれる化合物に、神経幹細胞及びその分化細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する作用を見つけ、これらを有効成分とすることを特徴とする神経系細胞作用剤、当該作用剤による神経系細胞作用法、当該作用法による神経系細胞含有液調整法、当該調整法による神経系細胞含有液、当該作用剤及び/又は当該神経系細胞含有液を有効成分とする神経細胞退化等起因疾病治療剤を開発した。
【選択図】図4

Description

本発明は、神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤及びその有効成分並びにその調整法等を提供することに関する。
サルビアノール酸B(別名:サルビアノリック・アシッドB又はリソスペルミン酸B又はシナバル・フェニック・アシドB、英語名:Salvianolic・acid・B又はLithospermic・acid・B又はCinnabar・phenic・acid・B、中国名:丹フン酸B又は丹フン酸乙、但し、フンに該当する中国字は酉偏に分と書く。以下、Sal・Bと略称する。)はシソ科の植物の1種である丹参(学名:Labiatae・Salvia・miltiorrhiza・Bunge)等の水溶性成分の一つで、図1に示される立体構造を有する(特許文献1、非特許文献1)。
Sal・B及びその関連化合物であるサルビアノール酸A、サルビアノール酸C、サルビアノール酸D、サルビアノール酸E、サルビアノール酸F、サルビアノール酸G、サルビアノール酸H、サルビアノール酸I、サルビアノール酸J、イソサルビアノール酸C(Isosalvianolic・acid・C)、サルビアフラシド(Salviaflaside)、プルゼワルスキン酸A(Przewalskinic・acid・A)、リソスペルミン酸(Lithospermic・acid)、ロスマリン酸(Rosmarinic・Acid)(以下、順にSal・A、Sal・C、Sal・D、Sal・E、Sal・F、Sal・G、Sal・H、Sal・I、Sal・J、Isosal・C、Sfside、PrzA、Lith・A、Ros・Aと略称する。)の化学構造は図2に示される(非特許文献2)。
Sal・Bは、腎機能改善作用、リボキシゲナーゼ作用と抗アレルギー作用、肝機能改善作用、心室心筋細胞と大動脈内皮細胞障害の抗酸化作用による保護作用、TNFによる微小血管内皮細胞障害の保護作用、酸化低密度リポタンパク質誘導心臓血管系炎症障害保護作用、血圧降下作用心臓血管系細胞に対する作用、抗糖尿病作用、抗ウイルス作用、体重過剰症改善作用等が認められる他、更に、一酸化窒素遊離を減少させることにより(非特許文献3)、或はベーターアミロイドの線維化を阻害することにより(非特許文献4)、或はベーターアミロイドによるパル4(Par‐4)発現の増加を予防することにより(非特許文献5)ベーターアミロイドの神経細胞毒を軽減し、脂質過酸化の減少と遊離ラジカルの除去等により虚血‐再潅流による脳障害を保護し(非特許文献6)、一過性脳虚血に対し記憶機能を保護し(非特許文献7)、局地的脳血流速度を改善し、血小板凝集を阻害する(非特許文献8)。
Sal・Bの関連化合物の1つであるSal・Aは、Sal・Bより強い抗酸化作用を有し(非特許文献9)、その抗酸化作用により脳虚血‐再潅流による記憶障害を予防する(非特許文献10)が、神経幹細胞増殖作用と神経幹細胞分化作用はない(非特許文献11)。従って、Sal・Aは抗酸化作用により脳虚血‐再潅流による記憶障害を予防するにしても、神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病に対しては効果が期待できず、Sal・Bも同様に期待できないと考えられた。
一方、胎児性及び成人性神経幹細胞は既に齧歯類の中枢神経系からのみならず、ヒトの中枢神経系からから分離されている。神経幹細胞は神経細胞、アストロサイト、オリゴデントロサイトに分化し、興奮性神経シナプスと抑制性神経シナプスに分化し、活性の神経系ネットワークを形成する(非特許文献12)。
ラットの脳動脈を一時的に止めて脳虚血にして海馬の神経細胞に傷害を与えると、一旦神経幹細胞が脳内に出現するが、神経細胞等に分化する前に死滅する。神経成長因子(NGF)を注入すると、神経幹細胞が増殖分化して、失われた神経細胞の4割が回復するという報告がある(非特許文献13)。
又、機能を失った組織に対して、神経幹細胞を移植し、個々の生体機能を発現する細胞へ特異的に分化させることにより、当該病態を改善・治療する試みが行われている。例えば、パーキンソン病に関し、神経幹細胞を線条体内部へ移植すると、細胞が生き残り臨床効果を得(非特許文献14)、脳梗塞の関し、神経幹細胞の移植により脳梗塞の改善が見られる(非特許文献15)。
これらデーターは脳内神経幹細胞とその分化細胞を保護しつつ、脳内神経幹細胞を増殖及び/又は分化することにより、或は神経幹細胞の分化細胞の脳内移植により、或は神経幹細胞の脳内移植とそれに続く脳内での神経幹細胞の分化により、神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病が治療できることを示している。
しかし、神経幹細胞の増殖、分化に関し、多くの特許が出願され、公開されているが、いずれも、生物学的因子を用いる方法であり、実際の使用に当たり、解決すべき課題を残している。実際の使用に当たり、解決すべき課題の少ない非高分子の神経幹細胞増殖剤としてはベンゼン環縮合5員複素環式化合物(特許文献2)、又は薬用人参中のサポニン類のギンセノシドRg1(英語名:Ginsenoside Rg1)(特許文献3,4,5)が報告されているに過ぎない。また、Sal・Bの抽出源の一つである丹参の薬効に関する特許も多いが、その多くは丹参の主薬効から類推可能な血管系に関する薬効である。痴呆薬に関する特許公開公報が存在するが、丹参の他、種々の生薬の配合剤に関する特許出願である(特許文献6)。
以下に先行文献を特許文献と非特許文献に分けて表示する。
特開平1−268682号公報 特開2003−81959号公報 特開2000−191539号公報 特開2000−302798号公報 特開2001−139483号公報 特開平6−56684号公報 C.B.Aiら、J.Nat.Prod.1988年51巻1号145頁‐149頁 L.N.Liら、J.Chinese・Pharmaceutical・Sciences、1997年6巻2号57頁‐64頁 Z.Fengら、J.Acta・Pharmaceutica・Sinica、2000年35巻12号881頁‐885頁 M.K.Tangら、Acta・Pharmacologica・Sinica、2000年35巻12号881頁‐885頁 M.K.Tangら、Jpn.J.Pharmacology、2002年88巻4号422頁‐447頁 Y.H.Chenら、Acta・Pharmacologica・Sinica、2000年21巻5号463頁‐466頁 G.H.Duら、J.Asian・Natural・Products・Research、2000年2巻2号145頁‐152頁 M.K.Tangら、Phytomedicine、2002年9巻5号405頁‐409頁 G.T.Liuら、Biochemical・Pharmacology、1992年43巻2号147頁‐152頁 G.H.Duら、Acta・Pharmacologica・Sinica、1995年30巻3号184頁‐190頁 L.H.Shenら、Acta・Pharmacologica・Sinica、2003年38巻10号735頁‐738頁 S.K.Mistryら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2002年99巻1621頁‐1626頁 H.Nakatomiら、Cell、2002年110巻4号429頁‐441頁 P.Hagellら、J.Neuropathol.Exp.Neurol.2001年66巻8号741頁‐752頁 T.Veizovicら、Stroke、2001年32巻4号1012頁‐1019頁
本発明の目的は、「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤」を提供することにあり(課題1)、そのために、当該治療剤の有効成分として、「脳内の神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞からなる神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する神経系細胞の作用剤」(課題2)と「神経系細胞含有液」(課題3)、その中で特に「移植可能な神経系細胞含有液」(課題4)を提供することにあり、そのために、「神経系細胞含有液の調整法」(課題5)、その中で特に「移植可能な神経系細胞含有液の調整法」(課題6)を提供することにあり、そのために、「体外で神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する神経系細胞作用法」(課題7)、その中で特に、「移植可能な神経系細胞含有液の製法に必要な神経系細胞作用法」(課題8)を提供することにあり、そのために、その作用法に使用する作用剤として、「体外で神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する神経系細胞の作用剤」を提供することにあり(課題9)、更に、「より安定な当該治療剤、脳内神経系細胞作用剤、神経系細胞含有液、移植可能な神経系細胞含有液、神経系細胞含有液調整法、移植可能な神経系細胞含有液調整法、神経系細胞作用法、移植可能な神経系細胞作用法、体外神経系細胞作用剤」を提供することにあり(課題10)、更に、「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療法」を提供することにある(課題11)。
そこで、本発明者は先ず、体外で神経幹細胞を増殖する非高分子化合物を探索したところ、驚くべきことに、Sal・Aの作用からの予想と異なり、Sal・Bに増殖作用を見出し、更に種々研究した結果、サルビアノール酸Bを有効成分とする神経幹細胞増殖剤の発明を完成し、特許出願した(特願2004−264016)。本発明者は、更により良い効果が期待される体外で神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞からなる神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する非高分子化合物を探索したところ、驚くべきことに、Sal・Aの作用からの予想と異なり、Sal・Bに当該作用を見出し、更に種々研究した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、課題9「体外で神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する神経系細胞の作用剤の提供」として、(1)「サルビアノール酸B及びその光学又は幾何異性体でサルビアノール酸Bと同様の作用を有するもの及びそれらのプロドラッグ、ならびに上記化合物又はそれらのプロドラッグの薬学的に許容することのできるそれらの塩ならびにそれらの水和物から選ばれる化合物を有効成分とし、神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化することを特徴とする神経系細胞の作用剤」を提供する。
更に、本発明は、課題7「体外で神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する作用法の提供」として、(2)「上記(1)に記載する作用剤を要すれば賦活化後体外で神経系細胞に投与することを特徴とする体外での神経系細胞作用法」を提供する。
更に、本発明は、課題8「移植可能な神経系細胞含有液の製法に必要な作用法の提供」として、(3)「他家又は異種の血清、塩基性繊維芽細胞増殖因子及び神経成長因子を含まない培養液を用いることを特徴とする上記(2)に記載する作用法」を提供する。
更に、本発明は、課題5「神経系細胞含有液の調整法の提供」として、(4)「上記(2)と(3)に記載する作用法で処理することを特徴とする神経系細胞含有液の調整法」を提供する。
更に、本発明は、課題6「移植可能な神経系細胞含有液の調整法の提供」として、(5)「上記(4)において、上記(3)に記載する作用法で処理することを特徴とする移植可能な神経系細胞含有液の調整法」を提供する。
更に、本発明は、課題3「神経系細胞含有液の提供」として、(6)「上記(4)と(5)に記載する調整法で調整された神経系細胞含有液」を提供する。
更に、本発明は、課題4「移植可能な神経系細胞含有液の提供」として、(7)「上記(6)において、(5)に記載する調整法で調整された移植可能な神経系細胞含有液」を提供する。
更に、本発明は、課題2「脳内の神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する神経系細胞の作用剤の提供」として、(8)「上記(1)に記載する作用剤と同一の作用剤」を提供する。
更に、本発明は、課題1「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤の提供」として、(9)「上記(8)に記載する作用剤及び上記(7)に記載する移植可能な神経系細胞含有液の少なくとも一つから選ばれるものを有効成分とすることを特徴とする神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤」を提供する。
更に、本発明は、課題10「より安定な当該治療剤、脳内神経系細胞作用剤、神経系細胞含有液、移植可能な神経系細胞含有液、神経系細胞含有液調整法、移植可能な神経系細胞含有液調整法、神経系細胞作用法、移植可能な神経系細胞作用法、体外神経系細胞作用剤の提供」として、(10)「サルビアノール酸B、亜硫酸塩及びビタミンC以外の薬学的に許容することのできる抗酸化剤から選ばれる抗酸化剤を少なくとも1種類を添加することを特徴とする上記(9)に記載する治療剤、上記(8)に記載する脳内神経系細胞作用剤、上記(6)に記載する神経系細胞含有液、上記(7)に記載する移植可能な神経系細胞含有液、上記(4)に記載する神経系細胞含有液の調整法、上記(5)に記載する移植可能な神経系細胞含有液の調整法、上記(2)に記載する神経系細胞作用法、上記(3)に記載する移植可能な神経系細胞作用法、上記(1)に記載する体外神経系細胞作用剤」を提供する。
更に、本発明は、課題11「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療法の提供」として、(11)「上記(9)と(10)に記載する治療剤を投与することを特徴とする神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療法」を提供する。
本発明の神経系細胞作用剤は、(1)「体外で神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞からなる神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する神経系細胞作用剤」として有用であり、(2)「体外で神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する神経系細胞作用法に用いる主たる薬剤」として有用であり、(3)「移植可能な神経系細胞含有液の製法に必要な神経系細胞作用法に用いる主たる薬剤」として有用であり、(4)「神経系細胞含有液の調製法に用いる主たる薬剤」として有用であり、(5)「移植可能な神経系細胞含有液の調製法に用いる主たる薬剤」として有用であり、(6)「脳内の神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する神経系細胞作用剤」として有用であり、(7)「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤の有効成分」として有用であり、(8)「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療法に用いる治療剤の主たる有効成分」として有用である。
本発明の体外での神経系細胞作用法は、(1)「体外で神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化する神経系細胞作用法」として有用であり、(2)「神経系細胞含有液の調整法の工程」として有用であり、更に、当該作用法の中で、他家又は異種の血清、塩基性繊維芽細胞増殖因子及び神経成長因子を含まない培養液を用いる神経系細胞作用法は、(3)「移植可能な神経系細胞含有液の調整法中の工程」として有用である。
本発明の神経系細胞含有液の調整法は、(1)「神経系細胞の供給源として有用な神経系細胞含有液の調整法」として有用であり、更に、当該調整法の中で、他家又は異種の血清、塩基性繊維芽細胞増殖因子及び神経成長因子を含まない培養液を用いる神経系細胞含有液の調整法は、(2)「移植可能な神経系細胞含有液の調整法」として有用である。
本発明の神経系細胞含有液は、(1)「神経系細胞の供給源」として有用であり、更に、当該神経系細胞含有液の中で、移植可能な神経系細胞含有液は(2)「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤の有効成分」として有用である。
本発明の治療剤は、「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤」として有用ある。
本発明の抗酸化剤を添加する体外神経系細胞作用剤、神経系細胞作用法、移植可能な神経系細胞作用法、神経系細胞含有液調整法、移植可能な神経系細胞含有液調整法、神経系細胞含有液、移植可能な神経系細胞含有液、脳内神経系細胞作用剤、神経細胞の退化等起因疾病治療剤、は、より安定な当該作用剤、作用法、調整法、細胞含有液、治療剤として有用である。
本発明の治療法は「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療法」として有用ある。
本発明の1つは体外又は脳内で神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞からなる神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化することを特徴とする神経系細胞の作用剤である。本発明の作用剤の有効成分はSal・B及びその光学又は幾何異性体でSal・Bと同様の神経系細胞作用を有するもの及びそれらのプロドラッグ、ならびに上記化合物又はそれらのプロドラッグの薬学的に許容することのできるそれらの塩ならびにそれらの水和物から選ばれる化合物である。Sal・Bの光学又は幾何異性体の中で、Sal・Bと同様の神経系細胞作用を有しないものは、本発明の神経系細胞作用剤の有効成分として用いることはできない。これに対し、Sal・Bと同様の神経系細胞作用を有するSal・Bの光学又は幾何異性体は本発明の神経系細胞作用剤の有効成分として用いることができる。しかし、Sal・B及びその光学又は幾何異性体でSal・Bと同様の神経系細胞作用を有するものの中でSal・Bに関するデーターが一番蓄積されているので、Sal・B及びそのプロドラッグ、ならびに薬学的に許容することのできるそれらの塩ならびにそれらの水和物から選ばれる化合物がより好ましく、Sal・B及び薬学的に許容することのできるその塩ならびにそれらの水和物から選ばれる化合物が更により好ましい。
Sal・Bは、シソ科の植物の1種である丹参(学名:Salvia・miltiorrhiza・Bunge)、テン丹参(学名:Salvia・yunnanensis・C.H.Wright)、血盆草(学名:Salvia・cavaleriei・Levl.var.simplicifelia・Peter‐Stibal)、アキノタムラソウ(学名:Salvia・chinensis・Benth)、サルビア・カバレリエイ・レブル(学名:Salvia・cavaleriei・Levl.)、サルビア・フラバ・フォレスト・エクス・ディールス(学名:Salvia・flava・Forrest・ex・Diels)、サルビア・ボウレヤナ・ドゥン(学名:Salvia・bowleyana・Dunn)、サルビア・プリオニティス・ハンセ(学名:Salvia・prionitis・Hance)(L.N.Liら、J.Chinese・Pharmaceutical・Sciences、1997年6巻2号57頁‐64頁)等から水、熱湯、メタノール‐水溶液等で抽出後、カラムクロマトグラフィーやカウンター・カレント・クロマトグラフィーで精製される。例えば、丹参の抽出液をpH2−4に調整した後、これをカラムクロマトグラフィーにかけてSal・Bを吸着させ、これに酢酸マグネシウム、又は酢酸カルシウム等の酢酸塩水溶液を流した後、メタノール溶液を用いて溶出した区分を分取し、さらにこれを精製する(特開平1−268682号公報)か、丹参の熱湯抽出物を樹脂カラムに吸着させ、50%‐95%エタノールで溶離する(米国特許2001年6,299,910号公報)か、抽出液丹参のエタノール・水溶液抽出物をノルマル‐ヘキサン・エチル酢酸・エタノール・水(3:7:1:9容量/容量)からなる二層溶媒系の高速カウンター・カレント・クロマトグラフィーで精製する(H.B.Liら、J.Chromatogr.A.2002年943巻2号235頁‐239頁)等して得られる。取得したSal・Bの品質管理は、例えば、Sal・B試料を分析用オー・ディ・エス・カラム(ODS・column)に吸着させ、メタノール・5%酢酸溶液(35:65容量/容量)で溶離する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を281ナノメーターの波長で検出する(Q.W.Zhangら、Zhongguo・Zhong・Yao・Za・Zhi、2001年26巻12号848頁‐849頁)か、Sal・B試料20マイクロリットルをディスカバリーC18(Discovery・C18、4.6ミリメーターX25センチメーター)カラムに吸着させ、メタノール‐水‐氷酢酸(40:60:2、容量/容量)で流速0.5ミリリットル/分で溶離するHPLCを286ナノメーターの波長で検出する(曲桂武ら、http://www.ndcenter.com.cn/tongxun/2/quguiwu1.pdf.)等して行う。しかし、これらの植物以外のSal・B含有植物があれば、その植物から分離してもよく、合成が可能な場合は合成品でもよい。現在Sal・Bは中国(景天生物工程有限公司)と米国(Ivy・Fine・Chemicals・Corporation社)等で市販されている。Sal・Bは単離精製物の他、単離したが精製が十分でないもの、単離未精製物、未単離物等他の化合物が混在する場合でも、その混在する化合物が、本発明の目的を阻害しない限り、用いることができる。Sal・B含有植物も用いることができる。単離精製物、単離したが精製が十分でないもの、単離未精製物、未単離物、Sal・B含有植物の順に有用である。
Sal・B及びその光学又は幾何異性体でSal・Bと同様の神経系細胞作用を有するもののプロドラッグは加水分解等分解を受けてSal・B又はその光学又は幾何異性体に成るものであれば、薬学的に許容することのできる限り、どのようなものでもよい。当該プロドラッグの一つとしてSal・B分子中のカルボキシル基でのメチル又はエチルエステル誘導体やSal・B分子中のフェノール基でのアセチル誘導体等が挙げられるが、それらに限らない。将来合成されるものでも差し支えない。
Sal・Bの塩及びその光学又は幾何異性体でSal・Bと同様の神経系細胞作用を有するものの塩、及びそれらのプロドラッグの塩は薬学的に許容することのできる塩に限られる。薬学的に許容することのできる塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリエチルアミン、リジン、アルギニン等の有機アミンの塩、塩酸、臭化水素酸、硫酸等鉱酸との酸付加塩等が挙げられるが、それらに限らない。薬学的に許容することのできる塩であればよく、薬学的に許容することのできる限り、将来合成される有機化合物との塩でも差し支えない。
Sal・B及びその光学又は幾何異性体でSal・Bと同様の神経系細胞作用を有するもの及びそれらのプロドラッグ、ならびに上記化合物又はそれらのプロドラッグの薬学的に許容することのできるそれらの塩の水和物も本発明の神経系細胞作用剤の有効成分として用いることができる。
本発明の神経系細胞作用剤は酸素及び湿気のない状態では比較的安定である。しかし、抗酸化作用を有するので、空中及び水溶液中で比較的不安定である。水溶液中のSal・Bは高温で不安定で、摂氏80度で72時間加温すると35%変化し、チオ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、システイン塩酸塩、EDTA2ナトリウム塩を添加しても一部変化し、ビタミンCを添加した時のみ摂氏80度で72時間加温しても安定である(曲桂武ら、http://www.ndcenter.com.cn/tongxun/2/quguiwu2.pdf.)。
Sal・Bを保存する時は酸素や湿気の無い状態で保存することが好ましい。長期保存を考慮に入れると、本発明の神経系細胞作用剤又は当該疾病治療剤には有効成分の安定のため、他の抗酸化剤を添加することが好ましい。抗酸化剤としては薬学的に許容することのできる抗酸化剤に限られる。薬学的に許容することのできる抗酸化剤としては、アルファ・カロチン、ベータ・カロチン、リコペン、ルテイン、フラボノイド、カテキン、リザベラトール、イソフラボン、ビタミンA、ビタミンE、セレン、亜鉛、補酵素Q10、グルタチオン、エンゾジノール等が挙げられる。これらの抗酸化剤は高温の水溶液中のSal・Bの変化を抑える。亜硝酸塩はSal・Bの変化を完全には抑えない。したがって、亜硝酸塩は、単独では安定剤としては不十分である。ビタミンCはSal・Bの変化を抑える。したがって、ビタミンCはSal・B等の安定剤として使用は可能であるが、ビタミンC自体が空中及び水溶液中で比較的不安定であり、ビタミンCを多量に添加するか他の抗酸化剤との併用が必要になる。
本発明の神経系細胞作用剤は、「体外又は脳内で神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞からなる神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化することを特徴とする神経系細胞の作用法」に用い、又、「神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤」の有効成分としても用いる。本作用剤を体外での当該作用法に用いる場合は、通常、Sal・B換算で0.001から100マイクロモル濃度、好ましくは、0.01〜10マイクロモル濃度、より好ましくは、0.02から0.07マイクロモル濃度の範囲で用いるが、目的により、本作用剤の濃度を適宜変えても目的を達する限りよい。例えば、本作用剤を連続的に添加する場合は、より低濃度でも作用する。脳内での神経系細胞作用剤として用いる場合又は当該治療剤の有効成分として用いる場合は、本作用剤が脳内に到達して、神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞に作用するに十分な濃度になるような量が必要である。脳内到達量は当該脳内作用剤及び当該治療剤の経口剤、静脈内注射剤、脳内注射剤等剤型によって異なるが、目安として、体重60キログラム当たり、0.01〜1000ミリグラム、好ましくは、0.1〜100ミリグラムの範囲で、1日量を1日1回、あるいは2〜4回に分けて投与する。なお、週齢又は年齢、目的又は症状により適宜増減する。経口投与、静脈内投与、脳内投与の順に投与量は少なくなる。特に、脳内連続投与の場合は、体外での神経系細胞作用剤の項で述べた濃度で投与する。
本発明のもう1つは、体外又は脳内で神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞からなる神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化することを特徴とする神経系細胞の作用法である。
本発明の体外での神経系細胞作用法は、前述の本発明の神経系細胞作用剤を用いることを特徴とする。本作用法に用いる神経幹細胞及びその分化細胞は、使用目的によって限定の度合いが異なる。動物用の場合は、移植対象の動物と同じ系統の動物の胎児の脳より無菌的に採取した神経幹細胞及びその分化細胞を用いる。移植可能なヒト神経系細胞含有液の調製に用いる場合は、治療対象の患者又はその患者と主要組織適合抗原が実質的に同じ、又は非常に類似するヒト胎児の脳内より無菌的に採取した神経幹細胞及びその分化細胞を用いる。倫理的問題を考慮すると治療対象の患者の脳内より無菌的に採取するのが一番好ましい。前述したように、脳梗塞や脳出血を起きた場合に、脳内に一時的に神経幹細胞が出現するので、脳梗塞や脳出血に対する外科的治療の際に、この出現した神経幹細胞を採取するとよい。他の疾病の場合は、神経幹細胞の出現が少ないので、場合によっては、脳内の重要性のより低い局所での人工的虚血等による神経幹細胞の出現を利用することも考えられる。
本発明の作用剤を前述の濃度になるように加えた細胞培養液に神経幹細胞及びその分化細胞からなる神経系細胞を懸濁するか、当該細胞含有細胞培養液に本発明の作用剤を前述の濃度になるように加える。摂氏35度から摂氏39度、より好ましくは、摂氏36度から摂氏38度の範囲内で、4%から6%の炭酸ガス含有培養器内で2,3時間から10日間、より好ましくは、目的によるが、通常3日から5日間培養する方法により作用する。神経幹細胞の増殖を目的とする場合は、通常、培養液1ミリリットル当たり、神経幹細胞を1X10の4乗個から8X10の4乗個程度細胞培養液に懸濁して当該作用剤を作用させる。その間、要すれば、1日から3日おきに、細胞培養液を当該作用剤を当該濃度含む新しい細胞培養液と取り替えて作用させる。神経幹細胞の分化を目的とする場合は、通常、培養液1ミリリットル当たり、神経幹細胞を5X10の5乗個から5X10の6乗個程度細胞培養液に懸濁するか、前述の作用により増殖した神経幹細胞含有細胞培養液を摂氏35度から摂氏40度、より好ましくは、摂氏36度から摂氏38度の範囲内で、炭酸ガスインキュベーター内で更に数時間から10日間、より好ましくは、通常2日から5日間培養する方法により作用する。
本作用法に用いる細胞培養液は、本作用剤を用いる他は、例えば、下記に示す2%の培養用サプルメントN2含有ダルベッコ修正イーグル最少必須培地(DMEM)/ハムF12培地(DMEMとF12を1:1で混合したもの)の無血清培養液等公知の基本培養液を用いることができる。先行文献ではこれらの無血清培地に神経幹細胞増殖剤として、胎児性牛血清(FBS)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、NGF等神経細胞等のたんぱく質性の生体因子を添加する。本発明はこれらの血清又は生体因子の代わりに、本作用剤を用いるところに特徴がある。もちろん、目的によってはこれらの血清や生体因子を添加しても良いが、移植可能な神経系細胞含有液を調整する場合は、基本培養液にこれらの血清や生体因子を加えてはならない。他家又は異種の血清、塩基性繊維芽細胞増殖因子及び神経成長因子を含まない培養液を用いることが肝要である。
基本培養液の1例として、培養用サプルメントN2、DMEM、ハムF12培地等の組成を示す。神経系細胞を保護し、かつ神経幹細胞を増殖及び/又は分化する限り、組成は変更してもかまわない。
培養用サプルメントN2の組成(ミリグラム/リットル):インスリン:5、ヒトトランスフェリン:100、プロゲステロン:0.0063、プトレッシン16.11、亜セレン酸塩:0.0052.
DMEMの組成(ミリグラム/リットル):塩化カルシウム:200、硝酸鉄(三価)9水和物:0.1、塩化カリウム:400、硫酸マグネシウム:97.6、塩化ナトリウム:6,400、リン酸二水素ナトリウム2水和物:125、L‐アルギニン塩酸塩:84、L‐シスチン2塩酸塩:62.6、L‐グルタミン:584、L‐グリシン:30、L‐ヒスチジン塩酸塩1水和物:42、L‐イソロイシン:104.8、L‐ロイシン:104.8、L‐リジン塩酸:146.2、L‐メチオニン:30、L‐フェニルアラニン:66、L‐セリン:42、L‐スレオニン:95.2、L‐トリプトファン:16、L‐チロシン二ナトリウム塩:89.5、L‐バリン:93.6、パントテン酸カルシウム:4、コリン酒石酸水素塩:7.2、葉酸:4、イノシトール:7.2、ニコチンアアミド:4、ピリドキサール塩酸塩:4、リボフラビン:0.4、チアミン塩酸塩:4、デキストロース:1,000、ピルビン酸ナトリウム:110、フェノール・レッド:5。
培養用サプルメントB27の成分(G.J.Brewerら、J.Neurosci.Res.1993年35巻567頁‐576頁)(B27の組成は開示されていないので、B27そのものを使用する場合は市販品を購入せざるを得ないが、開示されている成分より、似たような効果を有する培養用サプルメントを作ることは可能である):ビオチン、L‐カルニチン、コルチコステロン、エタノールアミン、D(+)ガラクトース、還元型グルタチオン、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレッシン、レチニル酢酸、セレン、トリオド‐l‐チロミン、ビタミンE、ビタミンE酢酸塩、ウシアルブミン、カタラーゼ、インスリン、スーパーオキシド・ジスムターゼ、トランスフェリン。
ハムF12培地の組成:塩化カルシウム:33.3、硫酸銅(ニ価)5水和物:0.0025、硫酸鉄(ニ価)7水和物:0.834、塩化カリウム:224、塩化マグネシウム:57.1、塩化ナトリウム:7,600、リン酸水素二ナトリウム:142、硫酸亜鉛7水和物、L‐アラニン:8.9、L‐アルギニン塩酸塩:211、L‐アスパラギン1水和物:15.0、L‐アスパラギン酸:13.3、L‐システイン塩酸塩1水和物:35.1、L‐グルタミン酸:14.7、L‐グルタミン:146、L‐グリシ:7.5、L‐ヒスチジン塩酸塩1水和物:21.0、L‐イソロイシン:3.94、L‐ロイシン:13.1、L‐リジン塩酸塩:36.5、L‐メチオニン:4.48、L‐フェニルアラニン:4.96、L‐プロリン:34.5、L‐セリン:10.5、L‐スレオニン:11.9、L‐トリプトファ:2.04、L‐チロシン:5.44、L‐バリン:11.7、ビオチン:0.0073、パントテン酸カルシウム:0.477、塩化コリン:14.0、シアノコバラミン:1.355、葉酸:1.324、イノシトール:18.0、リポ酸:0.206、ニコチンアミド:0.0366、ピリドキシン塩酸塩:0.0617、リボフラビン:0.0376、チアミン塩酸塩:0.337、デキストロース:1,802、ヒポキサンチン:4.08、リノレイン酸:0.0841、ピルビン酸ナトリウム:110、チミジン:0.727、プトレッシン2塩酸塩:0.61、フェノール・レッド:1.242。
なお、本発明の作用法に本作用剤としてプロドラッグを用いる場合には、プロドラッグによっては、培養中の細胞によりマスクが除かれ、活性体になるので、賦活化の必要が無い場合もあるが、プロドラッグによっては培養細胞により活性体にならない場合もある。したがって、要すれば、投与前に賦活化する必要がある。プロドラッグの性質に応じて、アルカリ処理又は酸処理して、マスクを外し、中和した後に、この作用剤を用いる。
本発明の脳内での神経系細胞作用法は、動物又はヒトに本発明の作用剤を前述の投与量を経口投与、静脈内投与、脳内投与等して行う。
本発明の更にもう1つは、神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞含有液の調整法である。本発明の神経系細胞作用法を用いることを特徴とする。その他は先行文献と同じである。即ち、海馬、線条体と大脳皮質を胎児ないし、2、3週齢の動物、又は堕胎したヒト胎児の脳から取り出す。これらを直ちにD‐ハンクス液等の緩衝液の中に入れ、0.1から0.2%のトリプシンと混合させ、これらを静かにピペットで吸い込み、吐き出す方法で、個々の細胞にし、網でろ過する。ろ過した細胞を1分当たり400回転から1,000回転の回転速度で5分ないし10分間遠心分離して、沈殿した細胞を分離し、分離した細胞を1%から3%の培養用サプルメントN2等神経細胞用サプルメンと1リットル当たり10から30マイクログラムのbFGF又はNGFと1ミリリットル当たり50から150単位のペニシリンと50から150マイクログラムのストレプトマイシンを含むダルベッコ修正イーグル最少必須培地等の最少必須培地とハムF12培地等アミノ酸等付加培地を例えば1:1で混合したものからなるの無血清培養液で洗浄後、当該培養液中に、1ミリリットル当たり4ないし6X10の4乗個の細胞密度になるように懸濁し、この懸濁した細胞を摂氏36度から38度で、4%から6%炭酸ガス中で炭酸ガス培養器で培養し、2日毎に培養液の半量を新しい培養液で置き換え、1週間後に形成した球形の最初の細胞塊を集め、これらをピペットで吸い込み、吐き出す方法で機械的に個々の細胞にばらし、前述の培養液で、1ミリリットル当たり4ないし6X10の4乗個の細胞密度で、再び培養する。5日後に再び形成する球形細胞塊を同様の操作により再び培養する。この操作を繰り返し、第5次の球形細胞塊を得、トリプシン処理により個々の細胞に分離された動物又はヒトの神経幹細胞を得る。神経幹細胞同定はネスチン(Nestin)免疫蛍光染色試験等による神経幹細胞特異マーカーの存否等公知の方法で行う。
細胞の分離や細胞の洗浄に用いる緩衝液の1例としてD‐ハンクス液、リン酸緩衝食塩水(PBS)、デルベッコのPBS(DPBS)等の組成を示す。後の操作に悪い影響を与えない限り、これ以外の緩衝液も用いることができる。
D‐ハンクス液の組成(ミリグラム/リットル):塩化カルシウム:185.5、塩化カリウム:400、リン酸二水素カリウム:60、硫酸マグネシウム:97.7、塩化ナトリウム:8,000、リン酸水素二ナトリウム:47.5、D‐グルコース:1,000。
PBSの組成(ミリグラム/リットル):塩化カルシウム:132.5、塩化カリウム:200、リン酸二水素カリウム:200、硫酸マグネシウム:59.2、塩化ナトリウム:8,000、リン酸水素二ナトリウム:1150。
DPBSの組成(ミリグラム/リットル):塩化カルシウム:100、塩化カリウム:200、リン酸二水素カリウム:200、塩化マグネシウム:100、塩化ナトリウム:8,000、リン酸水素二ナトリウム:1150。
RPMI1640の組成(ミリグラム/リットル):硝酸カルシウム:69.5、塩化カリウム:400、硫酸マグネシウム:48.8、塩化ナトリウム:6,000、リン酸水素二ナトリウム:801、L‐アルギニン:200、L‐アスパラギン1水和物:56.8、L‐アスパラギン酸:20、L‐システイン2塩酸塩:65.2、L‐グルタミン酸:20、L‐グルタミン:300、L‐グリシ:10、L‐ヒスチジン:15、L‐ヒドロキシプロリン:20、L‐イソロイシン:50、L‐ロイシン:50、L‐リジン塩酸塩:40、L‐メチオニン:15、L‐フェニルアラニン:15、L‐プロリン:20、L‐セリン:30、L‐スレオニン:20、L‐トリプトファ:5、L‐チロシン:20、L‐バリン:20、p‐アモノ安息香酸:1、パラビオチン:0.2、パントテン酸カルシウム:0.25、塩化コリン:3、シアノコバラミン:0.005、葉酸:1、イノシトール:35、ニコチンアミド:1、ピリドキシン塩酸塩:1、リボフラビン:0.2、チアミン塩酸塩:1、デキストロース:2,000、還元型グルタチオン:1、フェノール・レッド:5。
20倍SSCの組成(モル/リットル):塩化ナトリウム:3、クエン酸ナトリウム:0.3。
得られた神経系細胞を前述の神経系細胞培養液に懸濁し、本発明の作用法で神経系細胞を培養する。培養した神経系細胞を1分当たり400回から800回の回転速度で5分から10分間遠心し、上清を捨て、細胞を分離する。トリプシン処理をして細胞を個々の細胞にばらし、DPBSで洗浄し、目的の液、例えば、本発明の移植可能な神経系細胞含有液又は本発明の治療剤の有効成分である神経系細胞含有液を調整する場合は、移植又は治療対象の動物又は患者の血液に、1マイクロリットル当たり目的の細胞密度、例えば、移植や治療剤の目的の場合は、1マイクロリットル当たり3から7X10の4乗個の細胞密度になるように懸濁し、神経系細胞含有液を得る。
ところで、体外で増殖及び/又は分化した神経系細胞含有液は神経系細胞培養液としてどのような培養液を用いたか、或いは神経系細胞の作用剤としてどのような作用剤を用いたかにより、その質が異なる。例えば、神経系細胞培養液として血清含有培養液を用いた場合、或いは神経系細胞作用剤としてbFGFやNGFを加えて培養した場合は、調整した神経系細胞含有液に血清やbFGFやNGFが混入する。本発明の神経系細胞作用法で調整する神経系細胞含有液には本発明の神経系細胞作用剤が混入している。移植免疫の問題があるので、血清やbFGFやNGF等が混入する神経系細胞含有液は、移植に適さない。従って、神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤に用いることはできない。
公知の無血清の神経幹細胞培養液には血清は存在しないが、一般に、神経幹細胞増殖剤としてbFGFやNGFはは添加する。従って、移植可能な神経系細胞含有液調整法では、そのための、神経系細胞作用法を用いることが肝要である。神経系細胞含有液調整の最終工程ではこれらの因子を添加した培養液を用いないとが肝要である。前述の培養用サプルメントN2中にたんぱく質としてインスリンとヒトトランスフェリンが存在する。インスリン又はヒトトランスフェリン投与によりインスリン抗体やヒトトランスフェリン抗体が出現するものの、臨床上の抗原抗体反応としてはあまり問題にならない。もし、インスリンとヒトトランスフェリンの混入が問題になる場合は、本発明方法で培養した後に、培養液を捨て、インスリンとヒトトランスフェリンを除いたN2サプルメントと本発明の細胞系細胞作用剤を添加した細胞培養液で1日間培養することにより、混入するインスリンとヒトトランスフェリンを消化し尽くす方法を取ればよい。いずれにしろ、本発明の神経系細胞含有液に本発明の神経系細胞作用剤が混入するが、本発明の神経系細胞作用剤はSal・B及びその光学又は幾何異性体でSal・Bと同様の神経系細胞作用を有するもの及びそれらのプロドラッグ、ならびに上記化合物又はそれらのプロドラッグの薬学的に許容することのできるそれらの塩ならびにそれらの水和物から選ばれる化合物を含有するが、これらは抗原性は無い。
本発明の更にもう1つは、神経系細胞含有液である。上述の本発明の神経系細胞含有液調整法によって得られる。移植可能な神経系細胞含有液は、前述したように、その調整において、少なくとも最終工程では他家又は異種の血清、塩基性繊維芽細胞増殖因子及び神経成長因子を含まない培養液を用いる必要がある。調整した神経系細胞含有液は、1次抗体として、ネスチン(Nestin)等神経幹細胞特異マーカー、神経特異的エノラーゼ(NSE)等神経細胞特異マーカー、グリア繊維性酸性たんぱく質(GFAP)等アストロサイト特異マーカー等に対する特異抗体を用い、2次抗体として、これら特異マーカー特異抗体に対する蛍光色素標識した特異抗体を用いて、公知のネスチン(Nestin)免疫蛍光染色試験、神経特異的エノラーゼ(NSE)免疫蛍光染色試験、グリア繊維性酸性たんぱく質(GFAP)等を行い、神経幹細胞特異マーカー、神経細胞特異マーカー、アストロサイト特異マーカー等の存否等を検定する。本発明の神経系細胞含有液は可能な限り使用直前に調整することが好ましい。短期保存の場合は、移植又は治療対象が決まっている場合は、その対象患者の血液に懸濁して保存する。移植又は治療対象が決まっていない場合は、本発明の神経系細胞作用剤を含む無血清培地に懸濁して保存する。長期保存する必要がある場合は、本発明の神経系細胞作用剤を含むヒト胎児血清含有血清培地に懸濁し、DMSO等氷結保護剤を加えて、摂氏−80度で保存し、使用直前に、この保存細胞を用いて本発明の調整法により神経系細胞含有液を調整して治療剤として使用する。
本発明の更にもう1つは、神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤である。本発明の神経系細胞含有液を含有することを特徴とする治療剤と、本発明の神経系細胞作用剤を含有することを特徴とする治療剤とそれらの混合剤の3種類存在する。
神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病としては、例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、小脳変性症、交通性水頭症、ハンチントン病、前頭葉への照射後疾病、多発性硬化症、正常圧水頭症、パーキンソン病、ピック病、進行性多巣性白質脳症、進行性核上麻痺、拳闘家痴呆、脳外傷、外科手術、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫起因疾病、脳卒中(脳梗塞又は脳出血)起因疾病、脳血管性痴呆、ウィルソン病細菌性心内膜炎起因疾病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、HIV関連疾病、神経梅毒、結核性及び真菌性髄膜炎起因疾病、ウイルス性脳炎起因疾病、無酸素症、B12欠乏症、慢性的な薬物-アルコール-栄養性乱用起因疾病、葉酸欠乏症、副甲状腺機能亢進症に伴う高カルシウム血症、低血糖起因疾病、甲状腺機能低下起因疾病、肝性脳症、肺性脳症、尿毒素性脳症等の臓器系不全、ペラグラ等、繊維化、免疫反応、血管傷害、栄養と酸素欠乏、感染等により、神経細胞が退化、減少、細胞死し、又は傷害、除外されることにより、組織や臓器がその機能を失い発症する疾病が挙げられるが、これに限らない。神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病であればよい。
更に、本発明の治療剤の中で、神経系細胞作用剤含有治療剤は、神経幹細胞及びその分化細胞を保護する作用も有するので、神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失する可能性がある疾病の神経細胞保護のため、予防的に投与することも含まれる。
本発明の神経系細胞作用剤含有治療剤は、前述したように、有効成分が非高分子であることから、体外投与は勿論、経口投与又は非経口投与(筋肉内、皮下、静脈内、脳内、坐薬など)のいずれでも投与できる。体内投与の場合は体内でプロドラッグが活性化するので、体外での神経系細胞作用法の場合と異なり、プロドラッグを予め活性化しておく必要は少ない。
経口用製剤を調製する場合、賦形剤、さらに必要に応じて、抗酸化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤などを加えた後、常法により、錠剤、被服錠剤、顆粒剤、カプセル剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、油性又は水性の懸濁液剤などとする。賦形剤としては、例えば、乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、ソルビット、結晶セルーロスなどが挙げられる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、デンプン、寒天、ゼラチン未、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストラン、ペクチンなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油などが挙げられる。着色剤としては、医薬品に添加することが許可されているものが使用できる。矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香酸、ハッカ油、竜脳、桂皮末などが使用できる。これらの錠剤は、顆粒剤には、糖衣、ゼラチン衣、その他必要により適宜コーティングしてもよい。
注射剤を調製する場合、必要により、グルコースや生理的食塩水等の等調液、pH調整剤、緩衝剤、抗酸化剤及びその他の安定化剤、保存剤などを添加し、常法により、皮下、筋肉内、静脈内、脳内注射剤とする。注射剤は、溶液を容器に収納後、凍結乾燥などによって、固形製剤として、用事調製の製剤としてもよい。また、一投与量を容器に収納してもよく、また、多投与量を同一の容器に収納してもよい。溶液の場合、酸素や湿気を遮断する方がよい。そのため、場合によってはアンプル型の容器に入れ、空気を抜くか、窒素ガス等で空気を置換しておく方がよい。公知の方法でよい。
本発明の神経系細胞作用剤含有治療剤の投与量は、脳内で神経系細胞作用剤の項で述べたように、経口剤、静脈内注射剤、脳内注射剤等剤型によって異なるが、ヒトの場合、成人1日当たり通常0.01〜1000ミリグラム、好ましくは、0.1〜100ミリグラムの範囲で、1日量を1日1回、あるいは2〜4回に分けて投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。経口投与、静脈内投与、脳内投与の順に投与量は少なくてよい。特に、脳内連続投与の場合は、Sal・B換算当たり、体外での神経系細胞作用剤の項で述べた濃度で投与する。
本発明の治療剤の中で、神経系細胞含有液含有治療剤は、前述の神経系細胞作用剤含有治療剤と異なり、より好ましくは、治療対象患者別に、使用直前に作られたものを使用する。即ち、移植可能な神経系細胞含有液の項で説明した様に、治療対象患者が決まった後に、本発明の移植可能な神経系細胞含有液調整法によって、本発明の移植可能な神経系細胞含有液を調整する。最終的には、当該移植可能な神経系細胞を1マイクロリットル当たり、1X10の3乗から1X10の5乗個、より好ましくは、1X10の4乗から8X10の4乗個を患者の血液に懸濁した治療剤、より好ましくは、これに本発明の作用剤がSal・B換算で0.02から0.04マイクロリットル含有しているものを調整する。
本発明の神経幹細胞含有液含有治療剤は神経幹細胞を含有しているため、動脈内注射剤、静脈内注射剤、又は脳内注射剤に限られる。この中で、静脈内注射が一番安全性に優れている。但し、動静脈投与は脳障害直後又は脳炎症中等脳血管バリアが壊れている時か、将来、人工的に中等脳血管バリアを壊した場合に限られる。脳内注射の場合は、そのような制限はない。中枢神経系に移植するのに適切であるように様々な方法で投与されうる。これに限定されるわけではないが、くも膜下腔投与、脳室内投与及び黒質内投与等が挙げられる。通常、患者の脳内に脳内血管の外壁に接触しないように注意して、1マイクロリットルから1ミリリットル投与する。病状により、適宜増減する。投与した治療剤中の自家血液が刺激になって、内在性の神経幹細胞が発生する場合は、効果が倍増する。しかし、この自家血が脳内血管の外壁に接触した場合、血管がレン縮する可能性もある。その危険を避けるためには、神経系細胞を自家血に懸濁した治療剤の代わりに、無血清培地に懸濁した治療剤を用いるか、又は、脳梗塞や脳内出血等で脳血管関門が壊れている患者に対しては、自家血に懸濁した治療剤を静脈内又は動脈内投与することも可能である。
本発明の治療剤を神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病患者に投与すると、(1)神経系細胞含有液含有治療剤の場合は、治療剤に含有される神経系細胞が疾病により失われた神経細胞部位に移動し、神経細胞又はアストロサイト又はオリゴデントロサイトの場合は直接、神経幹細胞の場合は移動先の環境により、神経細胞又はアストロサイト又はオリゴデントロサイトに分化した後、失われた神経細胞等が補充されることにより病状が改善され、(2)神経系細胞作用剤含有治療剤の場合は、その治療剤に含まれる神経系細胞作用剤が体内に内在する神経幹細胞の存在部位に浸透し、その内在神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞を保護しつつ神経幹細胞を増殖及び/又は分化する。即ち、内在神経幹細胞は増殖しつつ、失われた神経細胞部位に移動し、その移動先の環境により、神経細胞又はアストロサイト又はオリゴデントロサイトに分化する。これにより、失われた神経細胞等が補充され、病状が改善される。後者の治療剤の方が前者の治療剤の方より患者に対する負担が少ないので、通常、先ず、後者を投与して有効かどうかを調べ、無効の場合に前者の神経系細胞含有液含有治療剤を投与する方がよい。
既に述べたように、本発明の細胞系細胞作用剤、細胞系細胞作用法、細胞系細胞含有液調整法、細胞系細胞含有液、細胞系細胞作用剤含有治療剤、細胞系細胞含有液含有治療剤、細胞系細胞作用剤含有治療法、細胞系細胞含有液含有治療法は、いずれも、有効成分として、或は、その工程に使用する主たる薬剤として、Sal・B及びその光学又は幾何異性体でSal・Bと同様の作用を有するもの及びそれらのプロドラッグ、ならびに上記化合物又はそれらのプロドラッグの薬学的に許容することのできるそれらの塩ならびにそれらの水和物から選ばれる化合物を用い、特別の目的のためには最終工程で他家又は異種の血清、塩基性繊維芽細胞増殖因子及び神経成長因子を含む培養液を用いないことに特徴がある。
この特徴以外の試薬や操作や工程は公知の操作や工程でよく、それらは多くの先行文献に開示されている。例えば、齧歯類の胎児性神経幹細胞の分離技術はK.K.Joheらにより、Genes・Dev.1996年10巻3129頁に、齧歯類の成人性神経幹細胞の分離技術はA.Grittiらにより、Am.J.Neurosci.1996年16巻1091頁に、更にT.D.Palmerらにより、Neurosci.1997年8巻389頁に、ヒトの胎児性神経幹細胞の分離技術はO.Brustleらにより、Nat.Biotech.1998年16巻1040頁に、更にC.N.Svendsenらにより、Brain・Pathol.1999年9巻499頁に、ヒトの成人性神経幹細胞の分離はV.G.Kukekpvらにより、Exp.Neurol.1999年156巻333頁に、更にA.F.Paganoらにより、Stem・cells、2000年18巻295頁に、神経幹細胞からの神経、アストロサイト、オリゴデントロサイトへの分化技術と興奮性神経シナプスと抑制性神経シナプスへの分化技術はC.Vicario‐Abejonらにより、Eur.J.Neurosci.、2000年12巻677頁に、更にH.Todaらにより、Exp.Neurol.、2000年165巻66頁に、神経幹細胞の移植技術はP.Hagellらにより、J.Neuropathol.Exp.Neurol.、2001年60巻741頁に、更にO.Isacsonらにより、Ann.Neurol.、2003年53巻s135頁に、1‐メチル‐4‐フェニル‐1,2,3,6‐テトラヒドロピリジン起因パーキンソン病のマウスの作り方と当該マウスの脳への神経幹細胞の移植技術はX.Liらにより、Act・Pharmacol.Sin、2003年24巻1192頁に、脳梗塞患者への神経幹細胞の移植技術はT.Veizovicらにより、Stroke、2001年32巻1012頁に開示されている。神経細胞や神経幹細胞の培養法は各試薬メーカーの当該細胞培養試薬の使用説明書に、免疫染色方法は各試薬メーカーの当該免疫染色試薬の使用説明書に開示されている。以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
海馬、線条体と大脳皮質を2週齢のスプラグ‐ダウレイ(Sprague‐Dawley(SD))系の雄のラットの脳から取り出した。これらを直ちにD‐ハンクス液(HyClone・Laboratories・Inc社製)の中に入れ、0.125%のトリプシンと混合させ、これらを静かにピペットで吸い込み、吐き出す方法で、迅速に4回もみほぐして組織を個々の細胞にし、もみほぐした細胞を、最初網目の大きさが180マイクロメーターのナイロン性の網でろ過し、次いで網目の大きさが75マイクロメーターのナイロン性の網でろ過した。ろ過した細胞を回転速度800rpmで5分間遠心分離して、沈殿した細胞を分離し、分離した細胞を2%の培養用サプルメントN2(GIBCO社製)と1リットル当たり20マイクログラムのbFGF(PEPRO・TECH社製)と1ミリリットル当たり100単位のペニシリン(SIGMA社製)と100マイクログラムのストレプトマイシン(SIGMA社製)を含むダルベッコ修正イーグル最少必須培地/ハムF12培地(DMEMとF12を1:1で混合したもの、GIBCO社製)の無血清培養液で洗浄後、当該培養液中に、1ミリリットル当たり50,000個の細胞密度になるように懸濁し、この懸濁した細胞を摂氏37度で、5%炭酸ガス中で炭酸ガス培養器で培養し、2日毎に培養液の半量を新しい培養液で置き換えた。1週間後に球形の最初の細胞塊が形成された。この第1次球形細胞塊を集め、これらをピペットで吸い込み、吐き出す方法で機械的に個々の細胞にばらし、前述の培養液で、1ミリリットル当たり50,000個の細胞密度で、再び培養した。5日後に再び球形細胞塊が形成された。この操作を繰り返し、第5次の球形細胞塊を得た。
実施例1で得られた第5次の球形細胞塊の性質を調べるために、ネスチン(Nestin)免疫蛍光染色試験を行った。ネスチンは神経幹細胞に発現し、神経細胞には発現しない。したがって、この球形細胞塊がネスチン免疫蛍光染色試験陽性であれば、神経幹細胞を取得したことを意味する。そこで、得られた第5次の球形細胞塊を前述の方法により個々の細胞にばらし、その一部を5%の胎児性牛血清(FBS)を含む前述のDMEM/F12培養液で1ミリリットル当たり200,000個の細胞密度になるように懸濁し、スライドグラスの上の中央に100マイクロリットルだけ小分けし、2時間放置したところ、細胞がスライドグラスに付着した。この付着細胞を、付着した状態で、D‐ハンクス液で洗浄し、洗浄後の付着細胞を4%パラホルムアルデヒド含有0.1Mリン酸緩衝食塩水(PBS)(フナコシ社製)100マイクロリットルに摂氏4度で30分間浸す方法で固定した。この固定した細胞をPBSに室温で30分間浸す方法で3回洗浄した後、自然に乾燥させた。この乾燥させた固定化細胞に1ミリリットル当たり0.05マイクログラムのタンパク分解酵素を加え、摂氏37度で2分反応させた。引き続き、タンパク分解酵素処理をした固定化細胞を0.5%トリトン・エックス100(tritonX100)と5%ヤギ正常血清含有D‐ハンクス液(D‐ハンクスTS液)150マイクロリットルで摂氏37度で30分間浸した。次にこの固定した細胞に同液で100倍に希釈したマウスの抗ラットネスチン抗体(大日本製薬製)を加え、摂氏4度で一晩放置した。翌日、第1次抗体反応をさせた固定化細胞をD‐ハンクスTS液で室温で10分間浸す方法で3回洗浄した。この固定した細胞を同液に1ミリリットル当たり10マイクログラムの第2次抗体であるビオチン標識ヤギ抗マウスIgG抗体で、室温で2時間浸した。この第2次抗体処理した固定化細胞をD‐ハンクスTS液で室温で10分間浸す方法で3回洗浄した。この洗浄した固定化細胞を使用直前にアビジン‐ビオチン複合体(Avidin‐Biotin・Complex)溶液(Vector社のVectastain・Elite・ABC・Kit・Standard使用)用の溶液A(アビジン)10マイクロリットルと溶液B(ビオチン)10マイクロリットルとPBS500マイクロリットルを混合した液に室温で1時間浸し、直ちにPBSで3回洗浄した。このABC処理した固定化細胞を0.05%3,3‘‐ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(3,3’‐diaminobenzidine・tetrahydrochloride)(DAB、DojinDo社製)と0.1%過酸化水素を含むPBS200マイクロリットルで室温で10分間反応させた。DAB処理をした固定化細胞をPBSで室温で10分間浸す方法で3回洗浄した。この固定した細胞を70度のエチルアルコールに浸し、80度、90度、95度、100度のエチルアルコールに順次浸し、固定化細胞を脱水させた。キシレン1、キシレン2で各10分処理した後にエンテラン及びカバーグラスで細胞を封入し、標本を作製した。この標本を共焦点レーザー走査顕微鏡で観察し、標本が陽性に染色していることより、神経幹細胞を分離したことを確認した。一方、実施例1で得られた第5次の球形細胞塊について、前述の1ミリリットル当たり10マイクログラムの第2次抗体であるビオチン標識ヤギ抗マウスIgG抗体の代わりに、1ミリリットル当たり5マイクログラムの第2次抗体であるインドカルボシアニン(Indocarbocyanine:Cy3)標識ヤギ抗マウスIgG抗体を用いて、Cy‐3標識免疫染色も行った。
実施例1で得られた球状細胞塊をピペットで静かに吸い込み、吐き出すやり方を繰り返して、機械的に個々の細胞にばらばらにし、この細胞(神経幹細胞)を0.035マイクロモル濃度のSal・Bと2%のN2と1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと100マイクログラムのストレプトマイシンを含み、血清やbFGFを含まないDMEM/F12培養液(実験群)又は2%のN2と1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと100マイクログラムのストレプトマイシンを含み、Sal・Bと血清やbFGFを含まないDMEM/F12培養液(対照群)に1ミリリットル当たり50,000個の細胞密度になるように懸濁し、10枚の96穴(well)プラスチックプレートの中央の各20穴(well)に100マイクロリットルずつ小分けした。
神経幹細胞を小分けした実施例3の96穴(well)プラスチックプレートの1枚について対照群と実験群の培養前の神経幹細胞の細胞賦活評価試験(MTTアッセイ)を行った。MTTアッセイの原理は生きた細胞の糸粒体のコハク酸脱水素酵素が外来のMTTを酸化して細胞中に蓄積して、水不溶のロイヤル・パープル色のフォルマザンを形成するのに対し、死んだ細胞ではそのような現象が絶対に起こらないことにある。そこで、この神経幹細胞を懸濁したばかりの96穴(well)プラスチックプレートを回転速度800rpmで5分間遠心し、実験群と対照群各20個の穴(well)中の細胞を沈殿させて、その上清の培養液を捨て、摂氏37度に暖めたフェノールレッドを含まないRPMI‐1640液(フナコシ社製)で穴(well)中の細胞を洗浄した。1ミリリットル当たり0.5ミリグラムの濃度のメチルチアゾールテトラゾリウム(Methylthiazoletetorazoliumu:MTT)100マイクロリットルを洗浄後の各穴(well)に加え、炭酸ガス細胞培養器で摂氏37度で4時間反応させた。倒立顕微鏡で細胞を観察したところ、青みかかった紫色(ロイヤル・パープル色)の針状のフォルマザンが生きた細胞に見られた。そこで、96穴(well)プラスチックプレートを回転速度800rpmで5分間遠心し、各穴(well)中の細胞を沈殿させて、その上清を捨て、ジメチルスルフオキシド(DMSO)を100マイクロリットルずつ各穴(well)に加え、各穴(well)中でピペットで細胞とDMSOを吸い込み、吸い出すやり方で、細胞中の色素の結晶を溶解した。このプレートを回転速度1,000rpmで20分間遠心した。各穴(well)中の上清を新しい96穴(well)プラスチックプレートの各穴(well)に移し、ムルティスカン(Multiskan)プレート・リーダーを用いて、570ナノメーターの波長で各穴(well)の溶液の吸光度を測定した。対照群の20穴(well)の吸光度と実験群の20穴(well)の吸光度は共に平均値が0.065で標準偏差がプラスマイナス0.005であった。このことは、実験群20穴(well)と対照群20穴(well)に小分けした神経幹細胞の中で、生きた細胞は各穴(well)に約同数存在することを示している。
実施例4の培養前MTTアッセイ操作と並行して、神経幹細胞を小分けした実施例3の96穴(well)プラスチックプレートの別の4枚を摂氏37度で、5%炭酸ガス中で炭酸ガス培養器で6日間培養した。6日間培養した細胞の形態は実験群と対照群共に球状で神経細胞状の突起は出ていなかった。3枚のプラスチックプレートの実験群と対照群各5つの穴(well)の細胞につぃて、実施例2に記載の方法で、これらの細胞のネスチン陽性の有無を調べたところ、いずれも、ネスチン陽性であり、血清やbFGFを含まないDMEM/F12培養液で培養した場合、神経幹細胞は神経細胞に分化せずに神経幹細胞として存在すること確認した。図3参照。
実施例5で6日間培養した96穴(well)プラスチックプレート中の神経幹細胞の増殖の程度を測定するために、この培養した96穴(well)プラスチックプレーの1枚を用いて実施例4と同様の操作により、6日間培養した対照群と実験群の神経幹細胞のMTTアッセイを行った。対照群の20穴(well)の吸光度が平均値が0.204で標準偏差がプラスマイナス0.059に対し、実験群の20穴(well)の吸光度は平均値が0.375で標準偏差がプラスマイナス0.070、両群間でt検定でPが0.01以下で有意に差が認められた。MTTアッセイ自体は生きた細胞の数を測定するに過ぎないが、培養前と培養後の細胞のMTTアッセイをすることにより、細胞の増殖の度合いを測定することができる。本実施例の場合、培養後の対照群の吸光度は培養前に比べ、約3.1倍に増えたが、培養後の実験群の吸光度は培養前に比べ、約5.7倍に増えた。このことは、N2サプルメン添加培地により、神経幹細胞はある程度増殖するが、Sal・Bの添加により、増殖が促進したことを意味する。図3参照。これの実験と並行して、96穴(well)プラスチックプレーの1枚を用い、N2サプルメン添加培地の代わりに、N2サプルメンを添加しない培地を用いて、実施例4と同様の操作により、6日間培養した対照群と実験群の神経幹細胞のMTTアッセイを行ったところ、培養前と比較して、対照群の生細胞数は減少していたが、実験群の生細胞数は減少していなかった。このことはSal・Bが神経幹細胞を保護する作用があることを意味する。
Sal・Bの細胞増殖作用をDNAの複製レベルで観測するために、実施例3と同様の操作により得られた2枚の神経幹細胞を小分けした96穴(well)プラスチックプレートを摂氏37度で、5%炭酸ガス中で炭酸ガス培養器で3日間培養した。その中の1枚のプラスチックプレートの各穴(well)に静かに10マイクロリットルの1ミリモル濃度のブロモデオキシウリジン(BrdUrd)(Boehringer・Mannheim社製)のDPBS溶液を加え、他の1枚のプラスチックプレートの各穴(well)には10マイクロリットルのDPBS溶液を加え、摂氏37度で、5%炭酸ガス中で炭酸ガス培養器で40分間培養した。プラスチックプレートを回転速度800rpmで5分間遠心し、各穴(well)中の細胞を沈殿させて、その上清捨て、各穴(well)中の細胞を各穴(well)中でDPBS溶液で洗浄した。これらの細胞中のBrdUrdの取り込み量を抗BrdUrd抗体法で測定した。即ち、実施例2において、スライドグラスに付着した細胞の代わりに各穴(well)の底に付着した洗浄細胞を用い、実施例2と同様の操作を行い、細胞を固定化し、タンパク質分解酵素処理をする代わりにDNA分解酵素(DNase)処理を行い、D‐ハンクスTS液で100倍に希釈したマウスの抗ラットネスチン抗体の代わりにD‐ハンクスTS液で400倍に希釈したマウスのフルオレセイン・イソチオシャネート(FITC‐)標識アルファ‐抗BrdUrd抗体を用い、その他は実施例2と同様の操作を行い、細胞を免疫染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察し、BrdUrdの量を測定した。BrdUrdを加えないプラスチックプレートについても同様の操作を行い、バックグランド値とした。実験群(Sal・B添加群)の細胞のBrdUrdの取り込み量は対照群(Sal・B無添加群)に比較し、約2倍多かった。
実施例5で6日間培養したが、実施例6でMTTアッセイに用いなかった2枚の96穴(well)プラスチックプレートの実験群の各穴(well)の培養液を0.035マイクロモル濃度のSal・Bと2%のN2を含み、血清やbFGFを含まない新鮮なDMEM/F12培養液で入れ替えて、引続き炭酸ガス細胞培養器で摂氏37度で1週間培養した。実験群の細胞は培養液中で浮遊したまま集まり、数十個から数百個の細胞の球状集落を形成した。この細胞の一部を実施例2と同様の操作により免疫染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察したところ、細胞はネスチン陽性であった。
実施例8で得られた球状細胞塊を集め、この細胞塊をピペットで静かに吸い込み、吐き出すやり方を繰り返して、機械的に個々の細胞にばらばらにし、この細胞(神経幹細胞)を10%FBSと1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと100マイクログラムのストレプトマイシンを含むDMEM培養液に1ミリリットル当たり50,000個の細胞密度になるように懸濁し、96穴(well)プラスチックプレートの中央の20穴(well)に100マイクロリットルずつ小分けした。このプレートを摂氏37度で、5%炭酸ガス中で炭酸ガス培養器で6日間培養した。最初は細胞集落を形成したが、細胞集落の幾つかは自然に穴(well)の底に付着し、突起を出し、神経細胞やアストロサイト状の形態に変化した。10%FBSと1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと100マイクログラムのストレプトマイシンを含むDMEM培養液の代わりに、SAL・Bを0.035マイクロモル濃度含有し、1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと100マイクログラムのストレプトマイシンを含み、2%のN2サプルメントを含み、血清やbFGFを含まない新鮮なDMEM/F12培養液を用い、神経幹細胞を1ミリリットル当たり50,000個の細胞密度になるように懸濁する代わりに400,000個の細胞密度になるように懸濁し、同様の操作を行い、細胞集落の幾つかは自然に穴(well)の底に付着し、突起を出し、神経細胞やアストロサイト状の形態に変化することを確認した。
実施例9の10%FBS含有培地又は2%N2サプルメント含有培地で得られた神経細胞状の形態を有する細胞とアストロサイト状の形態を有する細胞について、実施例2と同様の操作により免疫染色し、顕微鏡及び共焦点レーザー走査顕微鏡で観察したところ、両者の細胞は共にネスチン陰性であった。このことは神経細胞状の形態を有する細胞はもはや神経幹細胞でないことを意味する。そこで、神経細胞状の形態を有する細胞につぃて、実施例2において、D‐ハンクスTS液で100倍に希釈したマウスの抗ラットネスチン抗体の代わりに、D‐ハンクスTS液で200倍に希釈したマウスの抗ラット神経特異的エノラーゼ(neuron・specific・enolase:NSE)抗体を用い、その他は実施例2と同様の操作により免疫染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察したところ、当該細胞はNSE陽性であった。NSEは神経特異的マーカーである。したがって、この神経細胞状の形態を有する細胞は神経細胞であり、神経幹細胞が神経に分化したことを意味する。次に、アストロサイト状の形態を有する細胞について、実施例2において、D‐ハンクスTS液で100倍に希釈したマウスの抗ラットネスチン抗体の代わりに、D‐ハンクスTS液で1,000倍に希釈したウサギの抗ラットグリア繊維性酸性たんぱく質(glial・fibrillary・acidic・protein:GFAP)抗体を用い、ビオチン標識ヤギ抗マウスIgG抗体の代わりに、ビオチン標識ヤギ抗ウサギIgG抗体を用い、その他は実施例2と同様の操作により免疫染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察したところ、当該細胞はGFAP陽性であった。GFAPはアストロサイト特異的マーカーである。したがって、このアストロサイト状の形態を有する細胞はアストロサイトであり、神経幹細胞がアストロサイトに分化したことを意味する。すなわち、Sal・Bで増殖した神経幹細胞は生体外で、10%胎児性牛血清存在下又は高密度の状態で2%N2サプルメンとの存在下で神経細胞とアストロサイトに分化したことを意味する。神経細胞が生じた穴(well)の培養液を捨て、0.035マイクロモル濃度のSal・Bと2%のN2と1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと100マイクログラムのストレプトマイシンを含み、血清やbFGFを含まないDMEM/F12培養液又はSal・Bを含まない当該培養液を加え、24時間摂氏37度で培養し、MTTアッセイをしたところ、Sal・Bを含まない培養液中の細胞数が減少したが、Sal・Bを含む培養液中の細胞数は減少しなかった。
実施例1で得られた第5次の球形細胞塊で、未使用の細胞塊をピペットで静かに吸い込み、吐き出すやり方で個々の細胞に分散させ、この細胞(神経幹細胞)を実施例3に記載の0.035マイクロモル濃度のSal・Bと2%のN2と1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと100マイクログラムのストレプトマイシンを含み、血清やbFGFを含まないDMEM/F12培養液に1ミリリットル当たり50,000個の細胞密度になるように懸濁し、摂氏37度で、5%炭酸ガス中で炭酸ガス培養器で6日間培養し、Sal・Bによる増殖神経幹細胞を得た。
実施例11で得られたSal・Bによる増殖神経幹細胞を10マイクロモル濃度のBrdUrdと0.035マイクロモル濃度のSal・Bと2%のN2と1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと100マイクログラムのストレプトマイシンを含み、血清やbFGFを含まないDMEM/F12培養液に1ミリリットル当たり50,000個の細胞密度になるように懸濁し、摂氏37度で、5%炭酸ガス中で炭酸ガス培養器で4日間培養した。培養プレートを回転速度800rpmで5分間遠心し、上清を捨て、細胞を分離した。トリプシン処理をして細胞を個々の細胞にばらし、DPBSで洗浄し、1マイクロリットル当たり50,000個の細胞密度になるように0.035マイクロモル濃度のSal・Bを含有するDPBSに懸濁した。
実施例12で得られたBrdUrdで標識した神経幹細胞を5マイクロリットル容量の26ゲイジのメモリが付いたハミルトン注射器で細胞懸濁液1マイクロリットルを麻酔した大人の雌のSDラットの背面の海馬にゆっくりと注入した。細胞懸濁液注入後1、4、8、12週間後にラットを3匹ずつ麻酔し、4%パラホルムアルデヒド含有リン酸緩衝液で還流した。脳を取り出し、50%ホルムアミド/2xSSC溶液中で摂氏65度で2時間加温し、引続き、2モル濃度の塩酸中摂氏37度で30分反応させた後に、脳冠状凍結ミクロトームで、脳組織を2ミリメートル間隔で7等分の環状ブロックに切断した。前頭面で各切断ブロックから6マイクロメートルの厚さの切片を作成した。
実施例10において、固定した神経細胞の代わりに、実施例13で得られたラットの固定した脳切片を用い、D‐ハンクスTS液で200倍に希釈したマウスの抗ラットNSE抗体の代わりに、D‐ハンクスTS液で400倍に希釈したマウスのFITC‐アルファ‐抗BrdUrd抗体と200倍に希釈したマウスの抗ラットNSE抗体を用い、その他は実施例10における固定した神経細胞に対する操作と同様の操作により免疫染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察したところ、NSE陽性でFITC陰性の神経細胞の他にNSEとFITCが共に陽性の神経細胞が観察された。NSE陽性でFITC陰性の神経細胞は内在性の神経細胞であることを意味し、NSEとFITCが共に陽性の神経細胞は外来性の神経細胞であること意味する。したがって、NSEとFITCが共に陽性の神経細胞の存在は脳内に注入した神経幹細胞が脳内で神経細胞に分化したことを示している。
実施例10において、固定したアストサイトの代わりに、実施例13で得られたラットの固定した脳切片を用い、D‐ハンクスTS液で1,000倍に希釈したウサギの抗ラットGFAP抗体の代わりに、D‐ハンクスTS液で400倍に希釈したマウスの蛍光イソチオシアネート(FITC‐)標識アルファ‐抗BrdUrd抗体と1,000倍に希釈したウサギの抗ラットGFAP抗体を用い、その他は実施例10における固定したアストサイトに対する操作と同様の操作により免疫染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察したところ、GFAP陽性でFITC陰性のアストロサイトの他にGFAPとFITCが共に陽性のアストロサイトが観察された。GFAP陽性でFITC陰性の神経細胞は内在性のアストロサイトであることを意味し、GFAPとFITCが共に陽性の神経細胞は外来性のアストロサイトであること意味する。したがって、GFAPとFITCが共に陽性のアストロサイトの存在は脳内に注入した神経幹細胞が脳内でアストロサイトに分化したことを示している。神経幹細胞が神経細胞に分化するかアストロサイトに分化するかは、脳内の部位の環境によると思われる。
体重300グラム前後の大人のSDラット10匹を4%イソフルラン、66%N2O、30%酸素の混合ガスで麻酔し、1.5%のイソフルラン、68.5%N2O、30%酸素の混合ガスで麻酔を維持した。血圧、血液冲のガス分圧、血糖値を左の大腿骨動脈でモニターした。直腸温度、中大脳動脈閉塞の反対側の側頭筋温度を常時モニターして、加熱パッドで摂氏37.0−37.5度に維持した。左外頚動脈を6−0絹縫合糸で結び、遠位を切開し、左内頚動脈を分離し、迷走神経から離した。左内頚動脈の頭蓋外枝をその枝分れの根元のところで、6−0絹縫合糸で結んだ。円形チップの付いた3−0外科用単層ナイロン縫合糸を外頚動脈断片を通して左内頚動脈に導き、その頚動脈の枝分れ部分より20ミリメートル過ぎたところで、90分間結び、その後直ぐ解き、縫合糸による閉塞による中大脳動脈閉塞を起したラットを作成した。このラット10匹に実施例12で得られたBrdUrd標識神経幹細胞をハミルトン注射器で細胞懸濁液1マイクロリットルを麻酔下で背面の海馬にゆっくりと注入した。
実施例16でBrdUrd標識神経幹細胞を海馬に注入した中大脳動脈閉塞ラットに対して、即日より殺す日まで毎日2ミリグラム/キログラムの割合でSal・Bを腹腔内投与した。対照として別のBrdUrd標識神経幹細胞を海馬に注入した中大脳動脈閉塞ラット10匹に対してSal・Bを投与しなかった。中大脳動脈閉塞後第1,3,7,14日にこれらのラット2匹ずつをキシラジン10ミリグラム/キログラムとケタミン80ミリグラム/キログラムで麻酔して殺した。直ちに、生理的食塩水で還流し、続いて4%パラホルムアルデヒドで還流した。脳組織を2ミリメートル間隔で7等分の環状ブロックに切断した。前頭面で各切断ブロックから6マイクロメートルの厚さの切片を作成した。
実施例14において、実施例13で作成した切片の代わりに、実施例17で作成した切片を用い、その他は実施例14と同様の操作をして、NSEとFITCに対する二重免疫標識した。Sal・Bを投与したラットは中大脳動脈閉塞後第2日に殺した群からNSEとFITCの二重陽性が認められ、日数に比例して二重陽性が強くなった。Sal・Bを投与しなかったラットは中大脳動脈閉塞後第2日に殺した群からNSEとFITCの二重陽性が認められなかったが、第4日になってNSEとFITCの二重陽性は確認できた。このことから、脳内に注入した神経幹細胞はSal・Bが存在しなくとも、脳内で神経細胞に分化するが、Sal・Bの投与により脳内で神経幹細胞が増殖し、その結果として神経幹細胞の神経への分化が促進されたと思われる。
実施例16と同様の操作により、中大脳動脈閉塞ラットを40匹作成し、その中で20匹の背面の海馬に実施例12においてBrdUrdを添加せずに他は実施例12と同様の操作をして得られたBrdUrd非標識の神経幹細胞を1マイクロリットル当たり50,000個の細胞密度になるように、0.035マイクロモル濃度のSal・Bを含有するDPBS(Sal・B投与群用)又はSal・Bを含有しないDPBS(Sal・B非投与群用)に懸濁した神経幹細胞含有液1マイクロリットルを5マイクロリットル容量のハミルトン注射器でゆっくりと注入した。増殖神経幹細胞含有液を注入したラット10匹と注入しないラット10匹に毎日2ミリグラム/キログラムの割合でSal・Bを3ヶ月間腹腔内投与した。一方、残りの増殖神経幹細胞含有液を注入したラット10匹と注入しないラット10匹にはSal・Bを投与しなかった。このラットについて高架式十字迷路試験を行った。高架式十字迷路試験とは高架式の十字形の細長い平板の一方にラットの餌を置き、他方の一つにラットを放すと、ラットは最初は試行錯誤で十字路の一方の行き止まりまで行き、そこに餌が無いことを知って、十字路にもどり、別の道を行く、そうこうしているうちにラットが餌の置いてある端にたどりつく。もう一度実験をすると記憶力のあるラットは迷うことなく、餌がおいてある道を進み餌にありつく。しかし、記憶力の悪いラットは1回目と同様に試行錯誤を繰返す。この試験によりラットの記憶力が測定できる。神経幹細胞含有液もSal・Bも投与しなかった対照群は餌にたどり着くまでに多くの時間を要し、記憶力が極度に低下していた。これに対し、Sal・Bだけを投与した群は餌にたどり着くまでの時間が短くなり、神経幹細胞含有液を注入した群は餌にたどり着くまでの時間が更に短くなり、神経幹細胞含有液注入後Sal・Bを投与し続けた群が餌にたどり着くまでの時間が一番短くなった。ラットが餌にたどり着くまでの時間が短くなったということは記憶力の回復を意味し、神経幹細胞含有液注入後Sal・Bを投与群、神経幹細胞含有液注入群、Sal・Bを投与群の順で神経細胞が再生し、かつ再生した神経細胞が機能していることを示している。
実施例19において、中大脳動脈閉塞ラット40匹の代わりに、24ヶ月齢の老齢のラット40匹を用いて同様の操作により、老齢のラットの記憶力を測定した。神経幹細胞含有液注入後Sal・Bを投与群、神経幹細胞含有液注入群、Sal・Bを投与群の順で記憶力が強かった。神経幹細胞含有液もSal・Bも投与しない対照群は餌にたどり着くまでに多くの時間を要した。
実施例19において、中大脳動脈閉塞ラット40匹の代わりに、脳外傷のあるラット40匹を用いて同様の操作により、脳外傷のあるラットの記憶力を測定した。神経幹細胞含有液注入後Sal・Bを投与群、神経幹細胞含有液注入群、Sal・Bを投与群の順で記憶力が強かった。神経幹細胞含有液もSal・Bも投与しない対照群は餌にたどり着くまでに多くの時間を要した。
実施例19において、中大脳動脈閉塞ラット40匹の代わりに、1‐メチル‐4‐フェニル‐1,2,3,6‐テトラヒドロピリジン(MPTP)塩酸塩(Sigma社製)をキログラム当たり40ミリグラムを16時間間隔で2度投与して作成したパーキンソン病モデルラット40匹を用いて同様の操作により、パーキンソン病モデルラットの記憶力を測定した。神経幹細胞含有液注入後Sal・Bを投与群、神経幹細胞含有液注入群、Sal・Bを投与群の順で記憶力が強かった。神経幹細胞含有液もSal・Bも投与しない対照群は餌にたどり着くまでに多くの時間を要した。
実施例19において、中大脳動脈閉塞ラット40匹の代わりに、臭化水素酸スコポラミン(メルク社製)の0.9%食塩水を臭化水素酸スコポラミン換算でキログラム当たり2ミリグラムを投与して作成したアルツハイマー病モデルラット40匹を用いて同様の操作により、アルツハイマー病モデルラットの記憶力を測定した。神経幹細胞含有液注入後Sal・Bを投与群、神経幹細胞含有液注入群、Sal・Bを投与群の順で記憶力が強かった。神経幹細胞含有液もSal・Bも投与しない対照群は餌にたどり着くまでに多くの時間を要した。
実施例3において、Sal・Bの代わりに、Sal・Bマグネシウム、Sal・Bエチルエステルをそれぞれ用い、その他は実施例3から実施例6と同様の操作を行い、Sal・Bについての結果と同様の結果を得た。
Sal・BのPBS溶液(1ミリグラム/2.5ミリリットル)を50マイクロリットルずつ、96穴(well)プラスチックプレートの中央16穴(well)に入れ、更に各々0.2%のアルファ・カロチン、ベータ・カロチン、リコペン、ルテイン、フラボノイド、カテキン、リザベラトール、イソフラボン、ビタミンA、ビタミンE、セレン、亜鉛、補酵素Q10、グルタチオン又はエンゾジノールのPBS溶液又は抗酸化剤が入ってないPBS溶液を50マイクロリットルずつ加え、摂氏80度で72時間加温し、加温前後の穴(well)中の溶液を286ナノメータで吸光度を測定した。抗酸化剤を加えたSal・Bの溶液の286ナノメータでの吸光度は加温前後で変化しなかったが、抗酸化剤を加えないSal・Bの溶液の吸光度は30%減少した。
実施例3において、実施例1で得られたラット神経細胞塊の代わりに、正常ヒト神経前駆細胞(Cambrex社製)1バイアルを用い、実施例3と同様の操作を行い、実施例4から実施例10までにおいて、ラット神経幹細胞の代わりに、購入した正常ヒト神経前駆細胞の増殖細胞を用い、実施例4から実施例10までと同様の操作を行い、正常ヒト神経前駆細胞もラット神経幹細胞と同様に、無血清培地中でSal・Bにより増殖し、血清培地中で神経細胞とアストロサイトに分化することを確認した。
アルツハイマー病に対する薬効評価。日本語で読み書きができ、自分の意志を医者に伝えることが可能であるがアルツハイマー病の可能性ありという臨床診断を受けている患者で、Sal・Bナトリウムに過敏症の既往歴がなく、腎機能と肝代謝が低下している疑いがなく、かつ妊娠又は妊娠している可能性のある人及び授乳婦以外の人に対して、下記ミニメンタルステート試験を行う。なお、患者は重症度の指標が25以下であることを確認し、重症度の指標が25以上の患者はいる場合は、重症度の指標が25以下である患者と入れ替える。また、測定前4ヶ月以内に治験薬を使用していた患者は除外する。また、シメチジン、プロプラノロール等親油性6遮断剤やクロニジン、抗コリン作動薬、及び抗コリン活性を有する抗うつ剤、神経弛緩剤、推定認識力増強物質及び中枢神経刺激物質、又は半減期が長いベンゾジアゼピンは投与を禁止する。
ミニメンタルステート試験の内容:見当識(1.今の年は?1点、季節は?1点、曜日は?1点、日付は?1点、月は?1点、2.私たちが今いる県の名前は?1点、郡の名前は?1点、市/町の名前は?1点、階数は?1点、は?1点、住所/建物の名前は?1点)、記銘力(3.医師が3つの物の名前を書く秒かけて言う。医師が言った後で次に患者に3つ全部の名前を尋ねる。患者が3つ全てを正しく言えるまで答えを繰返させる。3点)、注意と計算(4.100から続けて7を引かせる。正しい答え1つにつき1点与える。5回答えたところで終える。5点)、想起(5.質問3で覚えた3つの物の名前を尋ねる。正しい答え1つにつき1点与える。3点)、言語(6.医師が鉛筆と時計を指す。患者に医師が指した物の名前を言わせる。2点、7.患者に「いいえ、もし、そして、しかし」と言わせる。1点、8.患者に3段階の命令を与え、それにしたがってもらう。「右手で紙をつまみ上げてください。紙を半分に折ってください。紙を机の上に置いてください。」3点、9.患者に次の指示を読ませ、それにしたがってもらう。「目を閉じてください。」1点、10.患者に自由に1つの文章を書いてもらう。文章には守護つと目的語1つを含み、しかも意味をなしている必要がある。得点には書字の誤りは考慮しない。1点、11.1辺が約5センチメートルの2つの五角形が1頂点だけ重なった図形を見せ、患者に書き写させる。全ての角及び角度が保たれており、しかも交わった領域が四角形をなしていれば1点をあたえる。1点)、合計30点。
医師の管理下に被験者にSal・Bナトリウム2ミリグラム錠を1日2回、6ヶ月間投与する。6ヵ月後にミニメンタルステート試験を行う。ミニメンタルステート試験によりSal・Bナトリウム投与による見当識、記銘力、注意と計算、想起、言語の改善を確認できる。
実施例27において、アルツハイマー病が疑われる患者の代わりに、パーキンソン病、脳外傷、脳梗塞又は脳血管性痴呆が疑われる患者に対しても、実施例27と同様な薬効評価を行うことができる。
本発明の神経系細胞作用剤、神神経系細胞作用法、神経幹細胞含有液調整法、神経幹細胞含有液、神経細胞退化等起因疾病治療剤は、種々の産業に利用可能性があるが、特に、医療においては、当該治療剤はアルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、脳卒中(脳梗塞又は脳出血)起因疾病等神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤として、又はその有効成分として、又はその調整法として、又はその調整法の工程として適用される。
Sal・Bの立体構造式。構造式中で三角形状の太い実線ないし一部が太い実線で示す結合は紙面の上に突き出た結合を表し、点線で示す結合は紙面の下に突き出た結合を表す。 Sal・B及びその関連化合物の化学構造式。図中、R=Yの時の構造式1はサルビアノール酸A、R=Hの時の構造式1はサルビアノール酸F、R1=R2=Yの時の構造式2はSal・B、R1=R2=Hの時の構造式2はプルゼワルスキン酸A、R1=Y、R2=Hの時の構造式2はリソスペルミン酸A、R=Yの時の構造式3はサルビアノール酸C、R=Yの時の構造式4はサルビアノール酸E、R=Yの時の構造式5はイソサルビアノール酸C、R=Yの時の構造式6はサルビアノール酸H、R=Yの時の構造式7はサルビアノール酸I、R=Yの時の構造式8はサルビアノール酸J、R1=Y、R2=CH2COOH、R3=Hの時の構造式9はサルビアノール酸D、R1=Y、R2=R3=Hの時の構造式9はロスマリン酸、R1=Y、R2=H、R3=Glcの時の構造式9はサルビアフラシド、構造式10はサルビアノール酸Gの化学構造式を表す。 実施例5において、0.035マイクロモル濃度のSal・Bにより増殖したスプラグ・ダウレイ(SD)ラット脳の神経幹細胞のネスチンに対するインドカルボシアニン(Cy3)標識標本の共焦点レーザー走査顕微鏡写真(倍率100倍)。写真中央の明るい部分がネスチン陽性部分である。 実施例4と6において、0.035マイクロモル濃度のSal・Bを加えた群(実験群)と加えない群(対照群)の6日間培養前(実施例4)と培養後(実施例6)の神経幹細胞の細胞賦活評価試験値(MTTアッセイ)。縦軸は570ナノメーターにおける吸光度(OD)を示す。

Claims (14)

  1. サルビアノール酸B及びその光学又は幾何異性体でサルビアノール酸Bと同様の作用を有するもの及びそれらのプロドラッグ、ならびに上記化合物又はそれらのプロドラッグの薬学的に許容することのできるそれらの塩ならびにそれらの水和物から選ばれる化合物を有効成分とし、神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞からなる神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化することを特徴とする神経系細胞の作用剤。
  2. 化合物が、サルビアノール酸B及びそのプロドラッグ、ならびに薬学的に許容することのできるそれらの塩ならびにそれらの水和物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載する作用剤。
  3. 化合物が、サルビアノール酸B及び薬学的に許容することのできるその塩ならびにそれらの水和物から選ばれることを特徴とする請求項2に記載する作用剤。
  4. 請求項1から請求項3に記載する作用剤を要すれば賦活化後体外で神経系細胞に投与することを特徴とする体外での神経系細胞作用法。
  5. 他家又は異種の血清、塩基性繊維芽細胞増殖因子及び神経成長因子を含まない培養液を用いることを特徴とする請求項4に記載する作用法。
  6. 請求項4又は請求項5に記載する作用法で処理することを特徴とする神経系細胞含有液の調整法。
  7. 請求項6において、請求項5に記載する作用法で処理することを特徴とする移植可能な神経系細胞含有液の調整法。
  8. 請求項6又は請求項7に記載する調整法で調整された神経系細胞含有液。
  9. 請求項8において、請求項7に記載する調整法で調整された移植可能な神経系細胞含有液。
  10. 請求項1から請求項3に記載する作用剤及び請求項9に記載する移植可能な神経系細胞含有液の少なくとも一つから選ばれるものを有効成分とすることを特徴とする神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤。
  11. 請求項1から請求項3に記載する作用剤を有効成分とすることを特徴とする請求項10に記載する治療剤。
  12. 請求項9に記載する移植可能な神経系細胞含有液を有効成分とすることを特徴とする請求項10に記載する治療剤。
  13. サルビアノール酸B、亜硫酸塩及びビタミンC以外の薬学的に許容することのできる抗酸化剤から選ばれる抗酸化剤を少なくとも1種類を添加することを特徴とする請求項1から請求項3に記載する作用剤、請求項4及び請求項5に記載する作用法、請求項6及び請求項7に記載する神経系細胞含有液の調整法、請求項8及び請求項9に記載する神経系細胞含有液、請求項10から請求項12に記載する治療剤。
  14. 請求項10から請求項13に記載する治療剤を投与することを特徴とする神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療法。
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WO2024087945A1 (zh) * 2022-10-27 2024-05-02 广州白云山星群(药业)股份有限公司 一种夏桑菊颗粒定性和定量检测方法

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