JP2006141106A - ハイブリッド型モータまたは発電機およびこれを利用したモータまたは発電機駆動システム - Google Patents

ハイブリッド型モータまたは発電機およびこれを利用したモータまたは発電機駆動システム Download PDF

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Nobuyuki Matsui
信行 松井
Taku Kosaka
卓 小坂
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Abstract

【目的】永久磁石エネルギーのロスを減少させ、速度とトルクの可変範囲が広範にした、風力発電機や自動車駆動モータ等に特に有効であるハイブリッドモータを提供する。
【構成】ステータコアの外周部、およびロータコアの内側を、積層鋼板から積層しない塊状コアに置き換え、モータの両端部に2つの界磁極を新たに設け、各界磁極は、コアとコイルにより構成される。
【選択図】 図3

Description

本発明は、永久磁石と多極構造を持つ同期型モータおよび発電機(モータと発電機は同じ構造の電気機械で使い方が異なるだけであるため、以下単にモータという)に関するものである。
従来、永久磁石と多極構造を持つ同期型モータとして図1に示すような永久磁石式ハイブリッド多極同期モータの構造が知られている。図1に示すようにステータ(固定子)は内側に複数の突起(歯)を持つコア(鉄心)と、歯の周辺に巻かれた複数の組のコイル(電機子巻線)から構成される。各歯の先端にさらに小さな多数の歯が形成される場合もある。ロータ(回転子)はシャフトと一体になって回転するコアと永久磁石から構成される。永久磁石は、N極・S極が軸方向に並ぶように設置される。コアは永久磁石によりN極とS極に2分割され、各極はその表面に互いに1/2周期位相がずれた多数の歯を持つ。
ステータとロータの歯の相対位置の関係を、図2の断面図に示す。この例ではステータコアは大小2組の歯を持ち、コイルは大歯に巻かれている。軸に垂直な断面図に示すように、ある磁極(電機子巻線によって励磁されたN極・S極の組)ではステータとロータの歯が正対し、空隙の磁気抵抗(リラクタンス)は最小となっている。このとき、隣の磁極では両者の位置が正対位置から少しずれる。このずれは磁極が移るに従って大きくなり、あるところで1/2周期のずれとなりリラクタンスが最大となる。すなわち回転方向に沿って空隙のリラクタンスは磁極の配置に対応した周期の波になる。一方、軸に平行な断面図に示すように、ステータコアと各ロータコアは、変動磁界が誘起する渦電流による損失を防止するため、薄い電磁鋼板を軸方向に積層した構造となっている。
以上のように構成されたモータのステータの各磁極のコイルに通電(励磁)すると、永久磁石の磁界が電機子電流と鎖交することにより、トルクが発生する。通電電流を時間的に位相が異なった多相交流とすることにより、第1の回転トルクとなる。同時に、励磁されたステータ磁極ではリラクタンスが最小になるようにロータにトルクが発生する(リラクタンストルク)。空隙には多相交流により複数のN極・S極の組(多極)が空間的に回転する、いわゆる回転磁界が形成されるので、これが第2の回転トルクとなる。リラクタンストルクは、N極のロータでは吸引力、S極では反発力となり、トルクが倍増する。このように2種類のトルクにより回転力を発生するモータが、いわゆるハイブリッドモータ(以下、「HBM」という。)である。
HBMは同じ大きさの他のモータに比較して、低速で大トルクが発生できる長所を持ち、ロボット等を駆動するサーボモータとして、広く使われている。しかし、この従来の構造では、モータを動力用モータ、あるいは風力用発電機として使う場合に、以下のような課題があった。
課題(1)
HBMにおいては、永久磁石が作る磁束は図2に矢印で示すように、ロータN極→空隙→ステータコア→空隙→ロータS極へと流れる。このうち、シャフトに平行に流れる磁束は、ロータコアとステータコアの積層鋼板の中を積層方向に沿って流れる。鋼板間の絶縁層は磁気的には空気層と等価であるので、この部分で永久磁石エネルギーのロスが発生してモータの効率が低下するという問題点があった。高い効率が要求される動力用モータあるいは風力発電機には、この永久磁石エネルギーのロスを減少させることが課題になる。
課題(2)
HBMも含め、永久磁石を利用するモータに共通する問題点は、速度とトルクの可変範囲が狭いことである。
永久磁石モータの速度起電力は回転速度に比例して大きくなり、これが印加電圧と釣り合うとそれ以上は速度が上がらない。速度起電力はステータの電機子巻線に鎖交する磁束に比例するので、さらに速度を上げるためには磁束鎖交数を減らすしかない。永久磁石の磁束は変えられないので、電機子巻線の中に、本来のトルクを発生させるトルク電流成分とは別に、永久磁石の磁界を打ち消す電流(界磁弱め電流)を流すことにより磁束鎖交数を減少させる。こうすれば速度の限界値を大きくできるものの、永久磁石に逆向きに強い磁界を加えると減磁作用により磁石の性能が低下するので、自ずから限度がある。
一方、トルクは電機子電流に比例するので、この電流を増やせばトルクは大きくなるが、電機子巻線のスペースが限られているので、これにも限度がある。
広い速度〜トルク制御範囲を要求される動力用モータあるいは風力発電機には、永久磁石を減磁させることなく磁束鎖交数を減らすことおよび電機子巻線スペースの制約を受けないでトルクの上限値を大きくすることが課題である。
本発明は、かかる観点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、上述の課題を解決するHBMを提供することにある。
上述した課題(1)および課題(2)を解決するためのそれぞれの手段について本発明のHBMの構造を示す断面図である図3を用いて説明する。
課題(1)の解決手段
図3の断面図に示すように、ステータコアの外周部、およびロータコアの内側(シャフ
トに近い部分)を、積層鋼板から積層しない塊状コアに置き換える。
界磁コイル電流が無いときの、永久磁石磁束の流れを、図4に示す。この流れに対応させると、永久磁石から見た磁気等価回路(磁気回路を、起磁力を電圧源、磁気抵抗を電気抵抗、磁束を電流に対応させた電気回路として表現した図)は図5のようになる。ロータの永久磁石のN極から発した磁束は、従来構造のモータと同様な流れ1と、界磁極を通って流れる新たな流れ2に沿ってS極へ戻る。このときRFG≫RN(=RS)であるため、流れ2は少なく無視できる。またコアの積層部の積層方向に沿った磁気抵抗は塊状部よりも大きいので、ステータ、ロータともに軸方向の磁束の流れは塊状部でバイパスされ積層方向に流れる磁束は大幅に減少する。図5で言えばRN、RSが従来のモータより小さくなるので、磁石のエネルギーロスが減少する。
課題(2)の解決手段
図3に示すように、モータの両端部に2つの界磁極を新たに設ける。各界磁極は、コアとコイルにより構成される。コアは、シャフトを同心円で囲む2つの塊状リングと、それらを背面でつなぐ塊状の円盤から構成される。外リングはステータコアの塊状部と一体につなぎ、内リングは適当な空隙を隔ててロータコアの塊状部に正対させる。2つの界磁コイルは、内リングの周辺に巻くとともに直列につなぎ、半導体スイッチング素子を介して直流電源に接続する。動力用モータを制御するインバータの直流電源をと共用する場合は、インバータに一般的に内臓されている回生ブレーキ回路に、界磁コイルを接続する。
界磁コイルに界磁弱め方向の電流を流したときの、永久磁石磁束の流れを図6に示す。この流れに対応した磁気等価回路は図7のようになる。永久磁石磁束は両端の界磁起磁力NIFに誘導されてRNとRSには流れにくくなる。このことは図6の矢印に示すように、磁束が電機子巻線に鎖交せずに外側の塊状コアを通って短絡されることになり、界磁弱めと同等の効果を得る。理想的には、NIF=RFG・φmとなるように界磁コイル起磁力を設定すれば、完全に永久磁石磁束を磁気的に短絡することができる。NIFの向きは永久磁石の起磁力の向きと同じであるから、永久磁石の減磁を考慮することなく十分な界磁弱め制御をすることができる。
一方、界磁コイルに界磁強め方向の電流を流したときの、永久磁石磁束の流れを図8に示す。この流れに対応した磁気等価回路は図9のようになる。両端の界磁起磁力NIFは永久磁石起磁力とは逆方向に与えられる。これにより全ての磁石磁束は電機子巻線に鎖交するとともに、界磁巻線によって発生する磁束も電機子巻線へ鎖交する。界磁電流の調整によって、電機子巻線への磁束鎖交数をNA(φm‘+φF)に増加できる(NA:電機子巻線の巻数)。この結果、電機子巻線のスペースを増やすことなくトルクを増大させることができる。
界磁巻線は、半導体スイッチを介して直流電源に接続されているので、この半導体スイッチのオン/オフ時間を変えることにより、モータを駆動する主電源とは独立に、界磁弱め/強め制御を自在に行なうことが可能になる。さらに界磁巻線は、主電源であるインバータに内蔵されている回生ブレーキ回路に接続されているので、界磁制御用スイッチング素子の数は必要最小限に留めることができる。
上述したように、本発明によれば、次のような効果を実現できる。
(1) 永久磁石磁束の流れが塊状コアによってバイパスされるので、従来のように積層コアを流れるときの永久磁石のエネルギーロスが減少してモータの効率が向上する。
(2) 界磁極を設けて界磁コイルによって界磁弱め制御を行なうので、従来のように、界磁弱め制御を大きくしたときに永久磁石が減磁する、という問題が無くなる。これにより、モータの最高回転速度を引き上げることが可能になる。
(3) 界磁コイルの電流は電機子電流とは独立に制御できるので、従来のように、電機子巻線のスペースを増やすことなく鎖交磁束を増やすことができる。これにより、モータの最大トルクを引き上げることが可能になる。
(4) 界磁電流制御回路を、インバータモジュールに内臓されている回生ブレーキ回路と兼用することにより、スイッチング素子数を最小限に留めることが可能になる。
以上の効果は、効率とコストが重視され、広範な速度〜トルク特性が要求される風力発
電機や自動車駆動モータ等に特に有効である。
以下、図面を参照しながら本発明に係るモータの一実施形態である具体的構造について説明する。
図10に本発明のモータの構造を示す。シャフト(回転軸)に固定されたロータは、従
来のHBMと同様に、中央部に設置し永久磁石と、それを挟む円筒状の2つのコア(鉄心)
により構成される。N極とS極の2つのコアはともに、内側が塊状、外側が積層鋼板とい
う2重構造になっている。塊状コアには、圧粉材のような完全磁気等方性材料を用いる。
積層コアは、従来のモータと同様に薄い電磁鋼板を絶縁して軸方向に積層し、その外周に
多数の歯が設けた構造になっている。永久磁石には大きな磁気エネルギーを持つ希土類磁
石を用いるのが望ましい。
モータのケースは軸受けを介してシャフトに取り付けられ、その内側にはロータに対し
適当な空隙を隔ててステータが取り付けられている。ステータは従来のHBMと同様に、円筒状のコアと電機子巻線により構成される。コアは外側が塊状、内側が積層鋼板という2重構造になっている。塊状コアと積層コアの材料には、それぞれロータと同じ材料を用いる。ステータの内周部には多数の歯とスロット(溝)を設け、スロットの内部に電機子巻線を収納する。ステータ側の極数(N極・S極の組)、歯の数と形状、電機子巻線の相数(相互に位相をずらせた交流の数)、巻き方などは従来のHBMと同様である。図は3相交流の例を示し、端子a、b、cを設けてある。
ステータの両端に2つの界磁極を設ける。各界磁極のコアは、リング状の外側コアと内側コア、および両者を背面でつないで一体化する接続コアから構成される。外側コアはステータの塊状コアと接続し、界磁極とステータを一体化させる。内側コアは適当な空隙を隔ててロータの塊状コアの端部と正対させる。界磁極のコア全体は、塊状鉄心とし、ステータと同じ材料で構成する。各界磁極の内側コアの周囲に界磁コイルを配置する。2つのコイルは直列に接続し、端子d、eを設ける。
図11は本発明のモータを制御する電源の回路図である。従来の3相インバータに回生ブレーキ回路を接続した構成になっている。モータの電機子巻線端子a、b、cは、それぞれインバータ部のa相、b相、c相の端子に接続する。界磁コイルの端子は、回生ブレーキ回路のd、eに接続する。
上述した発明の効果より、本発明は、効率とコストが重視され、広範な速度〜トルク特
性が要求される風力発電機や自動車駆動モータ等に特に有効である。
従来の永久磁石式ハイブリッド多極同期モータ/発電機(HBM)の構成図 従来のHBMの断面図と磁束の流れを示す図 本発明のHBMの構造を示す断面図 本発明のHBMにおける磁束の流れ(界磁電流なしの場合)を示す図 図4に対応する磁気等価回路を示す図 本発明のHBMにおける磁束の流れ(界磁弱め制御の場合)を示す図 図6に対応する磁気等価回路を示す図 本発明のHBMにおける磁束の流れ(界磁強め制御の場合)を示す図 図8に対応する磁気等価回路を示す図 本発明のHBMの構成図 本発明のHBMを駆動するための電源回路を示す図

Claims (3)

  1. 回転軸に対し、ロータコアの内側とステータコアの外側の少なくとも一ヶ所が、塊状の鉄心であることを特徴とするハイブリッド型モータまたは発電機。
  2. ステータの両端に界磁極を設けたことを特徴とする請求項1のモータまたは発電機。
  3. 回生ブレーキ回路が内臓されたインバータモジュールの回生部に、請求項2のモータまたは発電機の界磁極の端子を接続したモータまたは発電機駆動システム。
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