JP2006137975A - 鉄損に優れた無方向性電磁鋼板ならびに無方向性電磁鋼板用溶鋼の取鍋精錬方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質量%で、C:0.01% 以下、Si:0.1〜4%、Al:0.1〜3%、Mn:0.1〜2%、REM:0.0015〜0.02% 、Ti:0.005% 以下、S:0.003%以下、N:0.003%以下、Ca:0.01%以下、残部鉄及び不可避的不純物からなり、かつ、鋼板内にCaを含有したREM オキシサルファイドあるいはサルファイドを含有し、その介在物中のCa濃度が 0.1〜50% であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
【選択図】 図2
Description
結晶粒成長を阻害する主たる要因の一つは、鋼中に微細に分散する介在物である。製品中に含まれる介在物の個数がより多くなるほど、また大きさが小さくなるほど、結晶粒成長が阻害されることが知られている。
すなわち、ゼナー(Zener)が提示したように、介在物の球相当半径rと鋼中に占める介在物の体積占有率fで表されるr/f値がより小さいほど、結晶粒成長はより悪化する。したがって、結晶粒成長を良好化するためには、介在物の個数をより少なくすることは勿論、介在物の大きさをより粗大化させることが肝要である。
これらの微細介在物を除去あるいは必要充分なレベルにまで減少させるために、溶鋼段階で高純化を図ればよいことは自明である。しかし、微細介在物を除去、あるいは必要充分なレベルにまで減少させるために、溶鋼段階で高純化を図ることは、製鋼コストアップが避けられないので、好ましくない。
酸化物に関しては、技術進歩により、強脱酸元素であるAlを充分量添加し、酸化物の浮上除去時間を充分に採ることにより、溶鋼段階で酸化物を除去し無害化することが可能となっている。
硫化物に関しては、例えば特許文献1〜4などに開示されるように、脱硫元素である希土類元素(以下REMと記述)などの添加によってSを固定する方法が知られている。
窒化物に関しては、特許文献5あるいは6などに開示されるように、B添加によって粗大介在物としてNを固定する方法が知られている。
この原因は、焼鈍段階において、製品板の一部分に含まれる0.1μm未満の微細な含Ti化合物、TiNやTiSが結晶粒の成長を阻害するためであることを知見し、本発明者らの数名が特願2004−135675号として出願した。
その骨子は、鋼中にREMを添加し、かつAl,Ti,N濃度を適正範囲に制御することでREMオキシサルファイドあるいはREMサルファイドを生成し、かつその上にTiNを複合析出させることで、上述の微細な含Ti化合物の個数密度を低減することを狙ったものである。
しかしながら、TiNの析出サイトとして活用するREMオキシサルファイドあるいはREMサルファイドはAl2 O3 と同様にクラスター化しやすく、取鍋からタンディッシュに、またタンディッシュから鋳型内に溶鋼を耐火物製ノズルを介して注入する際、耐火物内壁面にREMオキシサルファイドあるいはREMサルファイドが付着し、付着厚みが過大となった場合には閉塞に至り、鋳造を中断せざるを得ないという問題が発生した。
(1)質量%で、
C :0.01%以下、 Si:0.1〜4%、
Al:0.1〜3%、 Mn:0.1〜2%、
REM:0.0015〜0.02%、 Ti:0.005%以下、
S :0.003%以下、 N :0.003%以下、
Ca:0.01%以下、
残部鉄および不可避的不純物からなり、かつ、鋼板内にCaを含有したREMオキシサルファイド及び/又はサルファイドを含有し、その介在物中のCa濃度が質量%で0.1〜50%であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
(2)前記(1)において、鋼板内に含まれるCaを含有したREMオキシサルファイド及び/又はサルファイドの球相当径が0.1〜10μmで、かつその個数密度が1000個〜106 個/mm3 であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
(3)前記(1)又は(2)において、鋼板内に含まれるCaを含有したREMオキシサルファイド及び/又はサルファイドの個数あたり少なくとも5%以上にTiの窒化物が複合析出していることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
(4)前記(1)乃至(3)のいずれか1項において、球相当径100nm未満のTiを含んだ介在物の個数密度が1×1010個/mm3 以下であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
先ず、C:0.0029%、Si:3.0%、Al:0.58%、Mn:0.2%、S:0.001%を含有した溶鋼を用い、表1に示すようにREM濃度が異なる条件で鋳造を行い、取鍋ノズル及び浸漬ノズル詰まり発生と鋼中REM濃度との関係を調査した。
ここでREMとは、原子番号が57のランタンから71のルテシウムまでの15元素に原子番号が21のスカンジウムと原子番号が39のイットリウムを加えた合計17元素の総称である。
REM添加はFe−Si−REM合金を用いて行った。その合金中には、セリウム(Ce),ランタン(La),ネオジウム(Nd),プラセオジウム(Pr)を含有しており、表1に示すREM濃度とは上記4成分の鋼中での質量%の総和を意味している。
ノズル閉塞に至ったノズルを切断し、ノズル内壁面を調査すると、REMオキシサルファイドあるいはREMサルファイドが多量に付着していた。
そこで本発明では、先ずSi,Al脱酸をした後に、CaO単体あるいはCaOとCaF2 等のさい化促進材との混合物を添加し、介在物をCaO−Al2 O3 に改質する。そしてREMを添加することとする。
REM添加はFe−Si−REM合金を用いて行った。その合金中には、セリウム(Ce),ランタン(La),ネオジウム(Nd),プラセオジウム(Pr)を含有しており、表2に示すREM濃度とは上記4成分の鋼中での質量%の総和を意味している。また、フラックス添加量とREM添加量を変化させた条件、比較のため、フラックスのみを添加した条件、REMのみを添加した条件についても行った。
エッチング方法は例えば黒沢らの方法(黒沢ら:日本金属学会誌,43(1979),p.1068)により非水溶溶媒液中でサンプルを電解腐食し、介在物を残したまま鋼のみを溶解させて介在物を抽出した。
先ず、フラックス添加とREM添加を組み合わせることで、本発明の一つの目的であったREM単独添加の場合に発生したノズル閉塞を回避することができた。特筆すべきはタンディッシュでのREM濃度が100ppmであったとしても、鍋ノズルならびに浸漬ノズル閉塞が発生しなかったことである。ただし、REM濃度が200ppmを超えると、ノズル詰まりの発生が顕著となり、No.7の条件では鍋ノズル、浸漬ノズルともにノズル閉塞が発生した。そこで、REM濃度の上限値は200ppmとする。
第一に、その球相当粒径が最小値が0.1μm、最大値が10μmであること、第二に、その個数密度が最小値が103 個/mm3 、最大値が106 個/mm3 であること、そして第三に、その介在物中のCa濃度が質量%で、最低値が0.1%、最高値が50%であることであった。なお、本発明でいうCaを含んだREMオキシサルファイドあるいはサルファイドとは、Ca濃度とREM濃度の和が60%以上であるものを意味する。他のAl,Si,Mn,Ti,Mgが介在物中に含まれていても差し支えない。
Caを含んだREMオキシサルファイドあるいはサルファイドが上記特徴を満足していれば、0.1μm未満の含Ti介在物の個数密度が1010個/mm3 未満であり、鉄損値は従来の製造コストが高い極低Ti材(表2−2のNo.12)とほぼ同じ鉄損値であった。
Caを含んだREMオキシサルファイドあるいはサルファイドの粒径については、0.1μm未満であれば、その介在物そのものが粒成長性に悪影響を及ぼすため、下限値は0.1μmとする。一方、上限値を10μmとしているのは、これを超えた介在物では、TiNを複合析出している介在物が観察されなかったからである。
Caを含んだREMオキシサルファイドあるいはサルファイドの個数密度については、106 個/mm3 を超えて存在している条件では鉄損の悪化傾向が認められたため、上限値は106 /mm3 とした。
一方、Caを含んだREMオキシサルファイドあるいはサルファイドの個数密度が103 個/mm3 よりも少ないとTiNの析出サイトとして充分機能しえず、TiN単独で析出する、あるいはより低温でTiS,TiCとして析出しており、その結果、微細な含Ti介在物個数密度が1010個/mm3 以上であった。そのため、Caを含んだREMオキシサルファイドの個数密度については、上限値を106 個/mm3 、下限値を103 個/mm3 とする。
図2に示した介在物はCa濃度が48%と高いにも関わらず、TiNが複合析出している。特徴的なのは複合析出している面(図2の介在物の右側)は圧延時に破砕された形態を呈しており、その面にTiNが複合析出していること、一方、図2の左側の破砕されていない面にはTiNの複合析出が認められないことである。
つまり、Ca濃度が高い状態が圧延後も維持されればTiNの核生成サイトとして作用しないが、圧延によって介在物が破砕されその内部が外に顔をだすか、あるいは新生面が形成されることでTiNの核生成サイトとして作用することができる。
Ca濃度を0.1%から50%に限定した理由は、TiNの複合析出効果を得るためである。特に0.1%と低いのは、図3(b)の様に外層部が過小でその内部のCa濃度の分析値で代表した。一方、図3(a)のように外部の分析が可能な場合についてCa濃度の分析をすると、最大値50%以内に全ての介在物が含まれていた。そこで、上限値として50%とするが、Ca濃度が高くなるに従い、TiNの複合析出効果は小さくなるため、上限値としては30%が望ましい。
なお、このような介在物形態をとるのは、フラックス添加時に生成したCaO−Al2 O3 やCaSとREMが改質した結果、あるいはCaO−Al2 O3 、CaSとREMオキシサルファイドあるいはサルファイドが凝集合体した結果により生成すると考えられる。
図4は鋼板中に観察されたCaならびにREMオキシサルファイドならびにサルファイドの全個数に対するTiNが複合析出している介在物個数の割合と鉄損の関係を示したものである。図4からわかるように、5%未満であればTiをスカベンジできたとは言えず鉄損値も高い。5%以上でTiのスカベンジ効果が鉄損改善効果として現われてくることによる。また図4に示すように、TiNが複合析出している割合が増えれば鉄損が低減し、20%以上であればほぼその効果は同等であるため、好ましくは20%以上とする。
加えて、TiNが複合析出している割合が個数あたり5%以上となると、0.1μm未満の微細な含Ti介在物TiN,TiSに加えて、特にTiCの個数密度が1010個/mm3 以下となっていた。さらに割合が増えると上記微細な含Ti介在物の個数密度はさらに低減していた。
また、REMの元素であれば、1種だけ用いても、あるいは2種以上の元素を組み合わせて用いても、本発明の範囲内であれば上記の効果は発揮される。
[C]:Cは、磁気特性に有害となるばかりか、Cの析出による磁気時効が著しくなるので、上限を0.01%とした。下限は0%を含む。鋼中Tiの全てがTiNとして消費されない場合も起こり得るので、好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%以下がよい。
なお、Siは鋼中のTiの活量を上げる効果を有するため、Siがより高いとTi析出物の生成がより活発化し、Caを含んだREMオキシサルファイドへのTiNの複合析出がより促進され、Caを含んだREMオキシサルファイド1個あたりに固定されるTi量が増加し、鋼中の微細なTi析出物の個数密度がより減少する。このCaを含んだREMオキシサルファイドあるいはサルファイドにTiNが複合析出する効果はSi量の概ね2乗に比例するため、Si量はより高いほうが好ましい。
具体的には、鋼中における径100nm以下の微細Ti析出物の個数密度が、Si量が2.2%の場合に1×109 個/mm3 以下となり、Si量が2.5%の場合に5×108 個/mm3 以下となる。よって、Si量の下限値として、2.2%以上であることが好ましく、2.5%以上であればさらに好ましい。
またSi量の上限は、冷延性が良好な4.0%である。上限値が3.5%であれば、冷延性が一層良好となって一層好ましい。
また前記の理由により、Nはできる限り少ないほうが好ましいが、0%に限りなく近づけるには工業的な制約が大きいため、下限を0%超とする。なお、実用上の下限として0.001%を目安とし、0.0005%まで下げると窒化物が抑制されてより好ましく、0.0001%まで下げるとさらに好ましい。
なお、Tiは粒成長性を悪化させる元素であるために少ないほうが好ましいが、鋼中AlがAlNとして析出する前にTiNが析出することが必要であるため、0.0015%以上が好ましい。
また前記の理由により、Sはできる限り少ないほうが好ましいが、0%に限りなく近づけるには工業的な制約が大きく、またREMオキシサルファイドの形成に必要であるため、下限を0%超とし、経済性などを考慮した実用上の下限として0.0005%を目安とする。
また前記の理由により、Oはできる限り少ないほうが好ましいが、0%に限りなく近づけるには工業的な制約が大きく、またREMオキシサルファイドの形成に必要であるため、下限を0%超とし、経済性などを考慮した実用上の下限として0.0005%を目安とする。
[P]:Pは材料の強度を高め、加工性を改善する。但し、過剰な場合は冷延性を損ねるため、0.1%以下が好ましい。
[Cu]:Cuは耐食性を向上させ、また固有抵抗を高めて鉄損を改善する。但し、過剰な場合は製品板の表面にヘゲ疵などが発生して表面品位を損ねるため、0.5%以下が好ましい。
[Cr]:Crは耐食性を向上させ、また固有抵抗を高めて鉄損を改善する。但し、過剰な添加はコスト高となるため、20%を上限とした。
[Sn]および[Sb]:SnまたはSbは偏析元素であり、磁気特性を悪化させる(111)面の集合組織を阻害し、磁気特性を改善する。これらは1種だけ用いても、あるいは2種を組み合わせて用いても、上記の効果を発揮する。但し、0.3%を超えると冷延性が悪化するため、0.3%を上限とした。
[V]:Vは窒化物あるいは炭化物を形成し、磁壁移動や結晶粒成長を阻害する。このため、0.01%以下とすることが好ましい。
次いで、850℃×30秒の仕上げ焼鈍を施し絶縁皮膜を塗布して製品板を製造し、さらに750℃×1.5時間の歪取り焼鈍を施した後に、製品板中の介在物調査、結晶粒径調査ならびに25cmエプスタイン法による磁気特性調査を行った。介在物調査はレプリカ法によって介在物を抽出した後にTEMを用いて観察し、結晶粒径は板厚断面を鏡面研磨し、ナイタールエッチングを施して結晶粒を現出させて平均結晶粒径を測定した。
表2−1,2−2から明らかなように、本発明に準拠する製品板は結晶粒成長ならびに鉄損値に関して良好な結果が得られた。一方、本発明範囲外であれば、ノズル閉塞の発生が見られ操業を中断せざるをえない場合が生じたり、製品板の鉄損値が劣る結果が得られた。
Claims (5)
- 質量%で、
C :0.01%以下、 Si:0.1〜4%、
Al:0.1〜3%、 Mn:0.1〜2%、
REM:0.0015〜0.02%、 Ti:0.005%以下、
S :0.003%以下、 N :0.003%以下、
Ca:0.01%以下、
残部鉄および不可避的不純物からなり、かつ、鋼板内にCaを含有したREMオキシサルファイド及びサルファイドのいずれか一方又は両方を含有し、その介在物中のCa濃度が質量%で0.1〜50%であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。 - 請求項1において、鋼板内に含まれるCaを含有したREMオキシサルファイド及びサルファイドのいずれか一方又は両方の球相当径が0.1〜10μmで、かつその個数密度が1000個〜106 個/mm3 であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
- 請求項1又は2において、鋼板内に含まれるCaを含有したREMオキシサルファイド及びサルファイドのいずれか一方又は両方の個数あたり少なくとも5%以上にTiの窒化物が複合析出していることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
- 請求項1乃至3のいずれか1項において、球相当径100nm未満のTiを含んだ介在物の個数密度が1×1010個/mm3 以下であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板用溶鋼を取鍋精錬する方法において、先ずSi,Alを用いて十分に脱酸し、その脱酸溶鋼中にCaO及びCaOを含んだ脱硫フラックスのいずれか一方又は両方を添加し、脱硫及び介在物の改質を行った後、REMを添加して真空脱ガスを含む取鍋精錬を行うことを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板用溶鋼の取鍋精錬方法。
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