JP2006137659A - 低温・高速焼成用素地調合とその焼成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 屑ガラスの特性を認識した上で、その欠点をカバーして多種多様なタイル製品に対応する適正な素地調合と焼成方法を提供する。
【解決手段】 現有調合の一部を屑ガラス50%で置換した調合に、製造上最低限度必要な粘土、珪砂を補填し、その相当量を屑ガラス量から差し引いた試行調合を用意する。次に、現焼成炉の焼成時間配分を維持し、その高温焼成帯温度を一定単位で段階的に切下げて試験焼成し、過焼成の場合は焼成時間を短縮し、焼不足の場合は焼成時間を延長して理想的燒結条件を設定する。即ち、焼成品の燒結度の調節を、原料調合やバーナーで調節することではなく、焼成スピードを調節することによって焼成炉全体で微調整することで安定的焼成幅を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、タイルの製造にかかるコスト削減のための、低温焼成および高速焼成ならびに軽量化を図る素地の調合方法とその焼成方法の改善技術に関する。
技術背景
従来のタイル製造業は長石・珪砂・カオリン・粘土等を用いた調合素地を1,200℃〜1,250℃で焼成し、大量の熱源を使用しているエネルギー多消費型業種である。今日の原油価格の急騰によりなお一層の省エネ技術の開発は業界の緊急課題である。
一方、国内に出まわっている屑ガラスは廃ビンだけでも年間百十万トン(2002年)排出され、そのうち三十万トンの雑色廃ビンを如何に処理あるいは廃棄するかが、集積場担当者および廃棄処理業者の頭痛の種になっている。本発明はこの廃棄されている屑ガラスを有効に活用しようとするものである。
本発明が解決しようとしている課題
本発明は、従来のタイル用原料に、大量に廃棄されている廃ビンを活用することで、タイルの低温焼成化による省エネと、高速焼成化ならびに重量の軽量化による生産性の向上と運送費の軽減によるコストの削減を図ろうとするものであるが、屑ガラスの軟化点700℃は従来使用されている長石のそれより400℃〜450℃低く、焼成温度に対して過敏で焼成幅が狭くなってしまう欠点がある。本発明では、この屑ガラスの特性を認識した上で、その欠点をカバーして多種多様なタイル製品に対応する適正な素地調合と焼成方法を探ろうとするものである。
課題を解決するための手段
従来使い慣れしているタイル用現有調合の一部を屑ガラスに置換して試行用の素地調合を準備することからスタートする。しかる後、この試行調合素地を用いて、その最適焼成温度ならびに焼成速度における焼成幅を安定させる最適焼成環境を策定する。
更に、この焼成環境を用いることで請求項1の試行調合から離脱し、請求項2の開発用基礎調合に移行し、粘土、珪石ならびに屑ガラスによる調合限度範囲と焼成試験方法を開発する。
次に、請求項2の開発用基礎調合の一部を石灰・珪藻土・沸石等に置換した品種別派生調合素地を、開発用基礎調合の最適焼成環境を利用して、壁タイル、軽量タイル、熱伝遮断タイル、呼吸性タイル、発泡タイルあるいは超低温焼成タイル等の原料調合と焼成方法を開発する。
発明の効果
イ.廃ビンの有効利用によるクリーン・エコロジー効果。
タイルの製造に使用されているローラーハースキルン一基あたりの平均的原料使用量は年間二万四千トンであり、これに30%使用するとキルン一基あたり7,200トンの屑ガラスが有効利用できる。日本における雑色廃ビンは年間300,000トンであるから、当該キルンの約40基分に相当することになる。このキルンは中国だけで一千数百基と言われ世界中に何万基あるかを知る者はいない。本発明技術が普及すれば雑色廃ビンの排出量は需要の1%を満たすこともできないであろう。
ロ.燃料消費節減による地球温暖化対策効果。
ローラーハースキルン一基あたりの年間ディゼルオイル換算使用量は約2,600klである。本発明の1,100℃焼成における省エネ期待値を、1,230℃焼成と比較して、14%とすれば一基あたり年間360klの燃料節減になる。雑色廃ビン300,000トンを全量活用できれば年間約15,000トンのディゼルオイルを節約でき、その二酸化炭素ガス排出係数2.64kg−CO/L換算で約1,000トン弱のCOガス排出抑制効果がある。
ハ.燃料コストの削減効果。
タイルの製造にかかる売上高対燃料費は30%から40%を占め、加えるに、今日原油相場が2003年末に比較して倍率高騰しており、タイル業界にとって燃料費の削減は緊急の課題になっている。また前述のように、屑ガラスを30%添加して1,250℃の焼成温度を1,100℃に引下げることで、燃料コストを14%削減する効果を生むことが期待できる。加えるに、焼成温度の低温化はローラーパイプの損耗を防ぎ、屑ガラスの湿式粉砕によるアルカリ溶出はその解こう性によって泥しょう密度を高めて噴霧乾燥費を削減できる。また、泥しょうのアルカリ過多に対応するため短時間粉砕するので、ボールミル運転時間の短縮につながり電力費を削減できる、等々のコスト削減効果がある。
ニ.生産性の向上効果。
本発明の焼成温度の降下と焼成速度の加速により、焼成速度を55分にして1,100℃焼成時の最長時間焼成で焼成速度は自動的に2.7%の生産性向上できる。もしも同温度で焼成速度を55分から40分に短縮すれば18%生産性のアップも期待できる。ローラーハースキルン一基の投資額が付帯関連投資を含めて数億円かかる装置産業であるから生産性の向上による固定費率の逓減は多大な利益を生むことになる。
ホ.操業の安定化効果。
天然原料を主成分とするタイル原料は品質にバラツキがある。トラブルが発生すると焼成温度の上げ・下げで対応しがちであるが、多数のバーナーの調整と炉内圧あるいは雰囲気まで適切に調整しなければならない。本発明は、屑ガラスの低軟化点に由来する対熱過敏性に対応するために個々のバーナーやダンパーの調節を避け、焼成速度だけを調節して燒結具合を管理するので安定的操業が保証される利点がある。
ヘ.多様な特性をもつ多種新製品開発への発展的効果。
本発明の、新製品開発用基礎調合の粘土と屑ガラスを必須の原料とし、これに珪藻土、石灰あるいは沸石等を選択的に加えることで、軽量タイル、熱伝遮断タイル、壁タイル、呼吸性タイル、発泡タイルあるいは超低温焼成タイル等を低温焼成域で高速焼成できる。いずれも低燃費で軽量であるから低コストで製造できる効果がある。それぞれの建材的特性を利用することで新市場開拓の可能性が広がるものと考える。
イ.試行調合の策定
まず始めに粘土30%、珪砂20%、長石・カオリンその他50%の現有調合の、半分量50%を屑ガラスで置換した試行調合を用意する。
この置換した調合の粘土15%は成形性が落ちるので、更に15%補充して30%に戻し、珪砂の10%は熱膨張限界の調整のために5%補充して15%にする。これらの補充した分量を置換した屑ガラスから差し引く。この結果、試行調合は、粘土30%、珪砂15%、長石・カオリン長石・カオリンその他は変わらず25%、屑ガラス30%になる。
ロ.試行焼成温度の設定と焼成速度の調整
まず、素地の挿入から冷却完了までを55分の焼成速度で稼動中の、現焼成炉の1,200℃から1,250℃までの高温焼成帯の25分間を維持し、最高温度を1,100℃の恒温に設定してから、前項の試行調合の試験体を少ロット挿入して焼成する。このときテストピースの燒結度が過焼成ならば焼成速度を50分に短縮し、なおまだ過焼成なら45分で焼成し、やや焼成不足が発生したときは速度を戻して、たとえば46分を最適速度とする。
このように、本発明では燒結具合の調整を個々のバーナー温度の調節によることなく、焼成速度の調節で微調整する。
ハ.本発明の開発用基礎調合と焼成温度の範囲設定
本発明の開発用基礎調合は前項の試行調合から離脱するが最適焼成環境はこれを利用する。まず、粘土を最高40%、珪砂を20%、残余を屑ガラスで補う基礎調合を用意する。
これを既に安定焼成の確立した前項の焼成環境のもとで、最高焼成温度を1,100℃ににして、53分の焼成速度で少ロットを流して試験焼成し、前項と同様に燒結具合を焼成速度で微調整する。安定が確認されたらこれを本発明の開発用基礎調合として新製品開発用のベース調合にする。
本件においても前述の操作と同様に、燒結具合の調整を個々のバーナーの温度調節ではなく焼成速度で微調整する。
ニ.派生調合群の各種素地調合とその焼成温度の調整
上記開発用基礎調合をベースにして、例えば粘土40%以下、珪砂を最高20%の珪藻土で置換し残余を屑ガラスとする軽量タイル用素地調合を、既に安定焼成の確立した前項の焼成環境のもとで、最高焼成温度を1,100℃で恒温化し、53分以内の焼成速度で少ロットを流して試験焼成し、前項と同様に燒結具合の調整を焼成速度の微調整で行う。
同様に、開発用基礎調合をベースにして、例えば粘土40%以下、珪砂を15%以下、沸石を最高40%加えて残余を屑ガラスとする熱伝遮断タイル用素地調合を、前項の焼成環境のもとで、最高焼成温度を1050℃に引下げて恒温化し、52分以内の焼成速度で少ロットを流して試験焼成して、前項と同様に燒結具合の調整を焼成速度の微調整で行う。
また、開発用基礎調合をベースにして、例えば粘土40%以下、珪砂を15%以下、石灰を最高20%加えて残余を屑ガラスとする壁タイル用素地調合を、前項の焼成環境のもとで、最高焼成温度を950℃に引下げて恒温化し、48分以内の焼成速度で少ロットを流して試験焼成し、前項と同様に燒結具合の調整を焼成速度の微調整で行う。
同様に、開発用基礎調合をベースにして、例えば粘土40%以下、沸石を最高40%、石灰を最高20%加えて残余を屑ガラスとする呼吸性タイル用素地調合を、前項の焼成環境のもとで、最高焼成温度を950℃に引下げて恒温化し、42分以内の焼成速度で少ロットを流して試験焼成し、前項と同様に燒結具合の調整を焼成速度の微調整で行う。
また、開発用基礎調合をベースにして、例えば粘土10%以下、珪砂を10%以下、残余を屑ガラスとし、これに有機性バインダーを適宜添加した発泡タイル用素地調合を、前項の焼成環境のもとで、最高焼成温度を700℃に引下げて恒温化し、40分以内の焼成速度で少ロットを流して試験焼成し、前項と同様に燒結具合の調整を焼成速度の微調整で行う。
同じく、開発用基礎調合をベースにして、例えば屑ガラス100%に有機性バインダーを適宜添加した発泡タイル用素地調合を、前項の焼成環境のもとで、最高焼成温度を700℃に引下げて恒温化し、40分以内の焼成速度で少ロットを流して試験焼成し、前項と同様に燒結具合の調整を焼成速度の微調整で行う。
即ち、開発用基礎調合の、一部の調合原料を珪藻土、沸石、石灰等に置換したものを、安定焼成の確立した最適焼成環境を活用して、それぞれの主要原料の調合調整と焼成試験を個別に行うものである。
1.建築用赤レンガおよび舗道タイルの製造
従来の赤レンガ調合の、川砂あるいはシャモットの一部を最大20%の屑ガラスで置換する。ローラーハースキルンの焼成品は大型であるが肉厚が5mmから7mmであり、薄いのでコストの削減効果は大きいが、赤レンガは標準厚さ50mmであるから表面と内部の燒結度格差が起こりやすく高速焼成には不向きである。
粗砕屑ガラスを赤レンガ素地に混合し、これを低速焼成するが高温時の耐圧強度を維持するためには大量な屑ガラスの混合は望めない。舗道タイルも標準厚さ20mmで赤レンガと同様に高速焼成は困難である。屑ガラスの微粉末混合は焼成反応が敏感なので、これを避けて粗い粒子を使用した新製品が既に出まわっている。
2.熱伝遮断タイルの製造
外熱の屋内への熱伝導を抑制する外装タイルである。成型素地に施釉後1,100℃以下で焼成する。素地のもつ超微細な真空チューブにより熱遮断するが、外部に面した釉面は雨を透さない不透性のタイルである。
開発用調合の原料とその配分を参考にして適量の沸石を混合した新調合を、安定焼成の確立した本発明の最適焼成環境を利用して焼成すれば技術的問題は生じない。
今では消滅してしまった厚手のテラコッタタイルは素材粒子のポーラス空間によって熱遮断効果を有していたが、本発明品は沸石の、オームストロング単位の超微細中空チューブの空隙によって熱遮断するものであるから軽量化できる。外熱遮断は省エネ対策としてその必要性は認識されつつあるが、どの様にして市場に受容れてもらうかが今後の課題である。
3.呼吸性タイルの製造
CO・COガス等の室内汚染ガスあるいは湿気や悪臭吸着用の内装タイルである。前項と同様に沸石を素地に混合する。製造面では低コスト原料を使用し、焼成温度950℃で、収縮ゼロのため成型生産性もたかく高付加価値製品であるが、成型素地を焼成し、一旦無釉で窯だしをした後、消石灰系の釉薬を施釉する。焼成しないので施工後あるいは使用中の汚れは同色の消石灰釉を毛筆で上塗りすることで基の色に戻すことができる。また、ガスは透すが水分は不透性の水溶性珪酸系ナノコートの施釉が開発ずみであるが少々コスト高で未だ市場に受容れられていない。
4.発泡性タイルの製造
熱遮断と防音性をもつ膨張型軽量タイプの内装用壁用タイルである。比重0.9g/mg、膨張率プラス10%にして700℃の極低温焼成が可能であるが、寸法精度が低く、過焼すると、こう鉢や棚板に熔着する危険性もある。現時点においては透明ビン・茶色ビンあるいは緑色ビン等のカレットを利用する無釉タイルしか製造できてない。また、施釉後タイル裏面に充分なアルミナを塗布することが必須の条件である。
4.超低温焼成タイルの製造
微粉砕の屑ガラスにバインダーを加えて成型したものを、タイルとしては極限の低温度で焼成するものである。本発明の最適焼成環境の活用で実現するにもであるが屑ガラス100%の線熱膨張率は7.94×10−7と高く、熱膨張差を埋める釉薬に限りがあり雑色ビンの色をカバーする厚手の釉薬はまだ開発途上である。

Claims (2)

  1. 現有調合の一部を屑ガラス50%で置換した調合に、製造上最低限度必要な粘土、珪砂を補填し、その相当量を屑ガラス量から差し引いた試行調合を用意する。
    次に、従来の焼成帯入口から出口までの焼成帯温度の1,200℃から1,250℃を、100℃乃至150℃引下げて一定に等温化し、かつ、現在の焼成帯の通過時間を維持する焼成環境を用意する。
    この環境において試行調合素地を焼成し、焼成速度の上げ・下げによって素地の燒結度を調節する。また、更に屑ガラスの置換量を増やして低温・高速焼成を実現するために50℃単位あるいは100℃単位で段階的に切下げてその燒結状態を求める最適焼成環境の策定方法。
  2. 現有素地の利用から離脱し、請求項1の、試行調合素地の最適焼成環境のもとで、粘土を必須の原料とし必要な珪砂を加えて残余を屑ガラスとする施釉・無釉タイル用調合を用意して、これを新製品の開発用基礎調合とする。
    次いで開発用基礎調合の低温・高速特性を利用して派生調合を開発する。即ち、珪藻土を加えた軽量タイル調合と、沸石を加えた熱伝遮断タイル調合と、沸石と石灰を加えた呼吸性タイル調合と、石灰を加えた壁タイル用調合と、微量の粘土・石灰と成型バインダーを加えた膨張性タイル調合および全量屑ガラスに成型バインダーを加えた超低温焼成タイル調合等々の、低温・高速焼成と軽量化特性ならびに汚染ガス吸着性あるいは低熱伝導特性を備えた派生調合素地を、先述の開発用基礎調合に利用した最適焼成環境のもとで焼成する派生調合群の開発方法。
    本発明の特許請求の範囲;請求項1に記述した現有調合とは従来使用している調合であり、試行調合とは現有調合をその最適焼成環境のもとで低温・高速焼成化した調合である。また、請求項2に記述した開発用基礎調合とは試行調合の最適焼成環境を利用することで得られる関連新製品開発用の調合であり、派生調合とは開発用基礎調合の最適焼成環境のもとで生み出される個々の新製品用の調合であり、派生調合群とは低温化と高速化あるいは軽量化を図った開発調合の集まりである。
    また、最適焼成環境とは、請求項1の現有調合から試行調合を、請求項2の試行調合から開発基礎調合を、ならびに開発基礎調合から派生調合をいずれも安定的に導き出すための焼成環境である。
    なお、本発明において、試行調合素地あるいは開発用基礎調合素地を使用して製造に取りかかることも、本発明の特許請求の範囲に抵触することは申すまでもない。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2481301C1 (ru) * 2012-01-12 2013-05-10 Юлия Алексеевна Щепочкина Керамическая масса для изготовления облицовочной плитки

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