JP2006134737A - イオンビーム加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明はイオンビーム加工装置に関し、TEMに用いて好適な試料を遮蔽板を使用せずに作製することができるイオンビーム加工装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 イオンビームを用いて試料を加工する装置において、イオン源1と試料4の間にウィーンフィルタ2を配置し、イオン源1からのイオンビームを前記ウィーンフィルタ2を通すことで、ビームの形状を試料の加工に適した形に整形するように構成する。このように構成すれば、TEMに用いて好適な試料を遮蔽板を使用せずに作製することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明はイオンビーム加工装置に関し、更に詳しくは電子顕微鏡に用いる試料をイオンビームを用いてを作製するイオンビーム加工装置に関する。透過型電子顕微鏡では、試料の両面を削り、薄い薄片を作製しなければならない。
電子顕微鏡による複合材料などの観察では、試料作製は機械的研磨で行われてきた。機械的研磨法では、硬さの異なる材料の接合部や界面等を平滑に研磨することが困難であった。柔らかな部分が先に削れるため、凹凸ができるのである。また、硬い材料が柔らかい材料に埋め込まれることが起こる。また、柔らかい材料の場合、空隙があると材料が変形する、空隙に材料が埋め込まれる、研磨表面の歪みによって、結晶の情報が得にくくなるという問題を有している。
従来のこの種の装置としては、荷電粒子のエネルギーの広がりを抑えて、システムの色収差を減らすことにより電流密度を高めるため、集束イオンビームの解像度をイオンビームの経路の中にエネルギーフィルタを挿入することにより最適化したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、ターゲットに供給された作業物質と材料を堆積させるための若しくは除去するためのターゲットとの間の反応を促すための低電流密度及び成形されたエッジを有するイオンビームを提供する装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
特開2001−222969号公報(段落0007〜段落0013、図1) 特表2003−520409号公報(段落0025〜段落0036、図1)
前述した従来の技術の機械研磨の欠点を克服する方法としてFIB(集束イオンビーム加工観察装置)法がある。しかしながら、FIB法では細かく絞ったイオンビームが用いられるため、微小領域を狙った加工には適するものの、広い範囲の試料作製には長い時間を要していた。即ち、先ず大まかに穴を開けるには、図10の(a)に示すような大きなサイズのビームを用いる。図10はビーム形状と強度分布の説明図である。(a)は太いビームのビーム形状と強度分布を示し、(b)は細いビームのビーム形状と強度分布を示している。
しかしながら、太いビームを用いる場合には、ビームの電流分布が広いため、加工される試料のエッジがシャープに加工されない。そこで、ビームを細かく絞り、図10の(b)に示すように小さい直径のビームで仕上げ加工を行なう。サイズが小さければその電流分布もシャープになるので、小さく絞ったビームでシャープな加工を行なうことができる。これによって、数10nm或いはnmレベルの加工が可能である。
この場合の問題点は、ビームを小さく絞るに際し、通常電流が著しく減少することである。このため、加工に長時間を要することになる。
この欠点は、CP法と呼ばれるペニン型アルゴンイオン銃を用いて高い電流密度の大きなサイズのイオンビームを用い、ビームの片側を遮蔽板によってさえぎり、半円状のビームを試料に当てる加工を行なう方法によって解決した。この場合、大きなビームのままで片面はシャープなビーム形状にすることができる。
この方法によって、試料の片側の面を加工すればよいSEMの試料を容易に得ることができるようになった。しかしながら、この方法を透過型電子顕微鏡(TEM)の試料の作製に応用しようとすると、遮蔽板を機械的に反転させなければならない。この時、TEMの試料厚さとして要求される0.1μm以下の精度で遮蔽板を設定することができないため、実質的には遮蔽板を用いる方法は、TEMの試料作製には応用できなかった。遮蔽板は機械的に移動されるため、TEM試料で必要とされる0.1μm以下の試料厚さにするためのステージの移動コントロールが困難であったことによる。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、TEMに用いて好適な試料を遮蔽板を使用せずに作製することができるイオンビーム加工装置を提供することを目的としている。
(1)請求項1記載の発明は、イオンビームを用いて試料を加工する装置において、イオン源と試料の間にウィーンフィルタを配置し、イオン源からのイオンビームを前記ウィーンフィルタを通すことで、ビームの形状を試料の加工に適した形に整形するようにしたことを特徴とする。なお、ここで定義するウィーンフィルタは、E×Bフィルタも含むものとする。
(2)請求項2記載の発明は、試料から薄片を作り出すために、ウィーンフィルタの電場・磁場の極性を何れも反転し、ビームの加工に使用する側の面を反転させることができるようにしたことを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、前記イオンビームの形状を縦方向に長く、横方向に短くしたことを特徴とする。
(4)請求項4記載の発明は、横方向ビームの片側において、イオン密度を反対側より高め、鋭い加工面が得られようにしたことを特徴とする。
(5)請求項5記載の発明は、イオンビームを作製するために、ウィーンフィルタの収差を利用するようにしたことを特徴とする。
(6)請求項6記載の発明は、イオンビームをビームの長手方向に走査できるようにしたことを特徴とする。
(7)請求項7記載の発明は、前記試料の両側より加工を行なうに際し、縦長ビームのイオンの密度が高い側を三日月状に張り出させ、両面から加工を施した時に試料の中心付近に穴をあけることができるようにしたことを特徴とする。
(8)請求項8記載の発明は、前記三日月状イオンビームを発生させるため、ウィーンフィルタの収差を利用したことを特徴とする。
(9)請求項9記載の発明は、エネルギーの広がりによるイオンビームの発散を防止するため、分散方向に2回のフォーカス合わせを行わせ、分散をキャンセルするようにしたことを特徴とする。
(10)請求項10記載の発明は、ウィーン条件をわずかに外して、ビームを偏向することによって加工位置をずらす機構を設けたことを特徴とする。
(11)請求項11記載の発明は、ウィーンフィルタの電場・磁場の条件をスポットビームが得られる条件に変更し、このスポットビームを試料上にスキャンし、試料から反射される2次電子を用いて試料像を得るようにしたことを特徴とする。
(12)請求項12記載の発明は、前記ウィーンフィルタとして、磁場発生の電磁石ギャップと電場発生の電極対の間隔を等しくしたものを用いることを特徴とする。
(13)請求項13記載の発明は、前記ウィーンフィルタとして8極子フィルタを用いたことを特徴とする。
(14)請求項14記載の発明は、前記ウィーンフィルタとして12極子フィルタを用いたことを特徴とする。
(15)請求項15記載の発明は、縦長のビームを作るために、ウィーンフィルタの電場作用のみをフォーカスさせ、磁場方向にはフォーカスを行わないか、或いは電場方向に比べて弱いフォーカス作用としたことを特徴とする。
(16)請求項16記載の発明は、縦長のビームを作るために、ウィーンフィルタの2次収差を作り出し、これを縦方向に大きくしたことを特徴とする。
(17)請求項17記載の発明は、イオン源とフィルタの間、或いはフィルタと試料ステージの間に磁界型電子レンズを設けてイオンビームを収束させることを特徴とする。
(18)請求項18記載の発明は、イオン源とフィルタの間、或いはフィルタと試料ステージの間に電界型電子レンズを設けてイオンビームを収束させることを特徴とする。
(19)請求項19記載の発明は、ウィーンフィルタの代わりに、4極子レンズ又はスティグメータを用いて、一方向にビームを収束、他方に発散させてビーム形状を鋭い形にしたことを特徴とする。
(20)請求項20記載の発明は、イオン源と試料の間にウィーンフィルタと4極子レンズを配置し、ウィーンフィルタと4極子レンズを組み合わせて用いることを特徴とする。
(1)請求項1記載の発明によれば、イオン源と試料との間にウィーンフィルタを配置することで、ビームの形状を試料の加工に適した形に整形することができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、試料の加工に適したイオンビームを得ることができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、縦方向に長く横方向に短いイオンビーム形状とすることにより、TEMに用いて好適な試料を遮蔽板を使用せずに作製することができる
(4)請求項4記載の発明によれば、イオン密度を高めた側のビームで試料に照射することにより、シャープなエッジの試料面を作製することができる。
(5)請求項5記載の発明によれば、ウィーンフィルタの収差を利用して試料作製に好適なイオンビームを作製することができる。
(6)請求項6記載の発明によれば、イオンビームをビームの長手方向に走査することで、試料薄片の形を整えることができる。
(7)請求項7記載の発明によれば、縦長ビームの形状を三日月状に整形することで、試料の中心付近に穴をあけることができる。TEM像を得るのに好適な試料を作製することができる。
(8)請求項8記載の発明によれば、ウィーンフィルタの収差を利用して縦長ビームの形状を三日月状に整形することができる。
(9)請求項9記載の発明によれば、エネルギーの広がりによるイオンビームの発散を防止することができる。
(10)請求項10記載の発明によれば、ウィーン条件をわずかに外してビームを偏向することで、試料の加工位置をずらすことができる。
(11)請求項11記載の発明によれば、試料作製用の縦長ビームを丸くして試料面を走査し、その反射信号を検出して画像表示することで、試料面の画像を得ることができる。
(12)請求項12記載の発明によれば、磁場発生の電磁石ギャップと電場発生の電極対の間隔を等しくすることにより、イオンビーム加工装置に用いて好適な電場と磁場を作ることができる。
(13)請求項13記載の発明によれば、8極子フィルタを用いてウィーンフィルタを実現することができる。
(14)請求項14記載の発明によれば、12極子フィルタを用いてウィーンフィルタを実現することができる。
(15)請求項15記載の発明によれば、ウィーンフィルタの電場作用のみをフォーカスさせるか磁場方向にはフォーカスを行わないか弱めることにより、縦長のビームを作製することができる。
(16)請求項16記載の発明によれば、ウィーンフィルタの2次収差を利用して縦長のビームを作製することができる。
(17)請求項17記載の発明によれば、イオン源とフィルタの間、或いはフィルタと試料ステージの間に磁界型レンズを設けてイオンビームを収束させることができる。
(18)請求項18記載の発明によれば、イオン源とフィルタの間、或いはフィルタと試料ステージの間に電界型電子レンズを設けてイオンビームを収束させることができる。
(19)請求項19記載の発明によれば、ウィーンフィルタの代わりに4極子レンズ又はスティグメータを用いて縦長のビームを作製することができる。
(20)請求項20記載の発明によれば、イオン源と試料の間にウィーンフィルタと4極子レンズを配置してイオンビームを好適な形状に整形することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を詳細に説明する。
本発明は、遮蔽板によるビーム形状の整形ではなく、イオンビームの形状を光学系によってコントロールすることにより、細長い或いは片面をシャープにした形状のイオンビームを作り、広い利用域を一度に整形するばかりでなく、遮蔽板を使わなくてもシャープな加工ができるイオンビーム加工装置を提供することをめざしたものである。
その方法は、一方向収束を用いるものである。今、図11の(a)に示すような大きなビームがイオン銃から発射されたものとする。試料の加工には、ビームの一方向だけが絞られてシャープな電流分布を持っていればよいので、円筒レンズを用いて一方向だけのレンズ作用を持たせる。こうして、(b)に示すように一方向だけシャープにしたビームは、電流量の減少も一方向だけであるからそれほど大きくはならない。例えばスポットビームにした時の電流が1/100に減少するとした場合、細長ビームではこれを1/10に抑えることができる。
一方向収束を行わせる円筒レンズとしては、いろいろなものが考えられるが、ウィーンフィルタ(Wien Filter)はその代表的なものである。ただ、ウィーンフィルタを用いた場合には、エネルギー分散によって、分散方向にビームの広がりを起こすので、分散方向に2回の収束を行わせ、分散をキャンセルして用いれば、イオン源から放出されるビームに大きなエネルギーの広がりがあったとしても、これによる収束方向のビーム幅を広げることがない。また、この時、2次収差の多くも同時にキャンセルされるので、収差によるビームのボケが小さいビームを得ることができる。
図1は本発明の一実施の形態例を示す構成図である。図において、1はイオンビームを出射するイオン銃、3は試料を作製するための物質が載置された試料ステージ、4は試料ステージ3に載置された試料、2はイオン銃1と試料ステージ3の間に配置されたウィーンフィルタである。ただし、ここでイオンはウィーンフィルタ2のZ方向に通る。
イオンビーム装置の構成は、図1に示すように、イオン銃1と試料ステージ3の間にウィーンフィルタ2を配置したものである。イオンはアルゴン等の気体を放電させて発生させる。発生したイオンは、電界によって加速される。ただし、ここでは、イオン銃の形式にこだわるものではなく、液体金属イオン源等のように、細いビームを作ることのできるイオン銃を用いれば、更に性能のよいビームを形成できることはいうまでもない。
従来のイオンビーム加工装置では、イオンビームを収束するためのレンズ系を備えたもの、或いは収束していない広がったビームを用いて、試料近傍に遮蔽板を置いて加工領域を制限したもの等いろいろあるが、いずれの装置に対しても、付加的にウィーンフィルタをはめ込んで使用することができる。
なお、ここでウィーンフィルタとは、荷電粒子ビームの進行方向と直交する方向に、互いに直交して電場と磁場を加えたフィルタのことである。電場によるビームの偏向と、磁場による偏向とがキャンセルして特定の重さとエネルギーを持つビームを直進させる性質をもっている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
一般に、ウィーンフィルタは一様電場と一様磁場を用いた時、電場方向に収束作用を持ち、磁場方向にレンズ作用を持たないことが知られている。今、イオン銃1で発生したイオンビームが試料4に近づくにつれて発散する。そこで、イオン銃1と試料4との間にレンズを入れれば、試料4上に収束ビームを作ることができる。
この時、ある方向(x:この場合は電場方向)には収束作用を持ち、他の方向(y:磁場方向)にはレンズ作用を持たないウィーンフィルタをビーム経路の途中に入れると、そのビームはy方向ではレンズ作用がないため発散し、x方向のみに収束する。この様子を図2に示す。
図2はウィーンフィルタのイオンビーム軌道例を示す図である。(a)はウィーンフィルタのみを用いた場合のイオンビーム軌跡である。x方向には収束機能が働くので、イオンビームは収束する。これに対して、y方向は収束作用が働かないので発散している。これに対して、(b)は4極子電場又は磁場を加算した時のイオンビームの軌跡を示す。x方向又はy方向の何れの方向にも収束することができる。なお、破線はエネルギーの異なるビームについての軌跡である。
4極子電場又は磁場を加算すると、4極子場は一方向で収束、多方向で発散するので、(b)に示すように両方向に収束するビームを作ることができる。このことは、完全に発散する場合から、両方向に収束する場合への途中の段階も自由に作ることができることを意味している。
即ち、ビームの形を自在に調整することができる。図1に示したウィーンフィルタでは、上下に磁場用のポールピースを持ち、左右に電場用の電極を配置してある。磁極と電極の両方を4極子と見立てて電圧をかければ、電場4極子として使うことができる。この装置で磁場4極子を作るには磁極片を傾斜すればよいが、その場合、4極子磁場の大きさを変えることはできない。
前述したように、ウィーンフィルタをイオン銃と試料4の間に配置すると、電場方向には収束作用が働き、磁場方向には発散する。しかしながら、この発散によるビームの縦方向の長さが所定の範囲以内に収まっておれば、ウィーンフィルタを通過したイオンビームをそのまま用いて、試料の加工を行なうことができる。ここで、磁場方向の長さが厳密に規定されているような場合には、前述したように、ウィーンフィルタに4極子電場又は磁場を加算する。これによれば、規定の長さの細長いビームを作製することができる。
このように、この実施の形態例によれば、イオン源と試料の間にウィーンフィルタを配置することで、ビームの形状を試料の加工に適した形に整形することができる。また、本発明によれば、ビーム形状を縦方向に長く横方向に短い形状とすることにより、TEMに用いて好適な試料を遮蔽板を使用せずに作製することができる。
また、本発明によれば、イオン密度を高めた側のビームで試料に照射することにより、シャープなエッジの試料面を作製することができる。また、本発明によれば、ウィーン条件をわずかに外してビームを偏向することで、試料の加工位置をずらすことができる。また、本発明によれば、ウィーンフィルタの電場・磁場の条件をスポットビームが得られる条件に変更し、このスポットビームを試料上にスキャンし、試料から得られる2次電子を用いて試料像を得ることができる。このようにすれば、試料断面の形状を把握することができる。また、本発明によれば、ウィーンフィルタの電場作用のみをフォーカスさせるか磁場方向にはフォーカスを行なわないか弱めることにより、縦長のビームを作製することができる。また、本発明によれば、ウィーンフィルタとして、磁場発生用の電磁石ギャップと電場発生用の電極対の間隔を等しくしたものを用いることができる。このようにすれば、好適な電場と磁場を作ることができる。
図3はウィーンフィルタの構成断面例を示す図である。図において、10は磁性材、11は該磁性材10で作られた磁極、12は該磁極に巻回されたコイルである。13は対向配置された電極である。図1に示した型のウィーンフィルタでは、電極間距離に対して電極の高さが小さいため、電場の均一性が保証されない。これに対して、図3に示すように電極13を同心円状に加工すれば、一様電場が得られる。一方、磁場に関しては、磁極面の広さを磁極間距離に対して大きくとることができるので、均一性は十分である。
電場の均一性が保たれない場合には、ビームの形状は図4に示すような三角形になりがちで、4極子電場の調節によっても二等辺三角形を細長くしたような形にしかできない。これは、電場の不均一性が大きく効いているためである。そこで、図3に示すように一様電場を作れる電極形状にすることは、イオンビームをイオンナイフとして働かせるために必要な機能である。
図5は8極子ウィーンフィルタの断面構成例を示す図である。磁極、電極の双方を磁性材料で作製する。V1,V2は電圧、NI1は磁極のアンペア・ターンである。V1+V2,−V1+V2は電極としてのみ動作し、V1、V2にNI1が加算され、或いは引算されている極子は電極と磁極とを構成している。この型のフィルタでは、磁極の形と電極の形が同じであるので、ビームがフィルタに入射する時のフリンジ場の形を電場と磁場で同じにすることができるので、ビームの偏向を防ぐことができる。
このように構成された装置において、図6は8極子フィルタを用いた場合のビーム形状を示す図である。本発明によれば、細長いビームを作ることができる。ただし、図に示す2本の接近したビームは加速電圧1kVに対して1eVのエネルギーのずれがあった場合を示している。このような分散によるビームの広がりは、図7に示すように、フィルタ内でビームを2回フォーカスさせることにより、除くことができる。
図7において、左から入った2種類のエネルギーを持ったビームが1回目のフォーカスでは、分散を起こして2つに分裂しているが、2回目のフォーカスでは一点に収束する様子を示している。この図は、分散方向のみを示している。分散と垂直な方向ではレンズ作用がないため、ビームはイオン源から放射されたままで進行する。
この図7に示すような方法による欠点は、磁場発生用の磁石に必要なパワーが2倍になることである。試料上を図8に示すようにウィーンフィルタによって細長い形状に変形されたビームを照射して穴を開ける。ついで、ビームを偏向してその位置をずらして、再び試料に穴を開ける。両ビームの間隔を十分狭くすれば、薄片を製作することができ、透過型電子顕微鏡用の試料も製作することができる。図8において、4は試料、20は該試料4にイオンビームで開けられた穴、21はこれら2つの穴間に形成された薄片である。
この時、ビームのシャープな面を互いに向き合うようにするために、フィルタの電場と磁場の極性を一度に反転させる機構を備えさせる。もちろん、収差のない場合には、ビームの両サイドが同一の形状になるが、通常は2次収差を含むため、片側がシャープで反対側がなだらかな電流分布を持つビームの形状をとる場合が多い。その場合には、ビームの移動ではなく、反転によって描かせればよいわけである。ビームを反転させるには、電場と磁場の極性を両方同時に反転させればよい。このようにして、試料の加工に適したイオンビームを得ることができ、TEMに用いて好適な薄片を作製することができる。
図6を見ると分かるように、ビームは縦長の形状をしているのみではなく、右側に凸の形状(三日月形状)をしている。これはフィルタの収差によるものである。ここでは、ウィーンフィルタの収差を利用して縦長ビームの形状を三日月状に整形することができる。この凸になった方を最終加工面になるようにして試料を加工し、ビームを反転して反対側から再び加工を施せば、でき上がった試料は、その厚みが次第に減少し、中心で穴の空いたTEMの試料として適した形状に加工することができる。
なお、ビームを走査して試料薄片を作製する場合、図8において、ビームをビームの長手方向に走査して試料を作製することもできる。このようにすれば、処理薄片の形を整えることができる。
図9は12極子フィルタの断面構成例を示す図である。図において、30は一様磁場発生用コイル、31は4極子磁場発生用コイル、32は電極である。このフィルタは、先端を12極子フィルタにした場合で、一様磁場用のコイルの他、4極子磁場発生用のコイルも備えた場合を示している。12極子を用いると、磁場フォーカスに必要な4極子を磁場によって作ることもできる。勿論、この場合も4極子電場も発生させることができる。
本発明の一実施の形態例を示す構成図である。 ウィーンフィルタのイオンビーム軌道例を示す図である。 ウィーンフィルタの構成断面例を示す図である。 ウィーンフィルタによって作られたビーム形状例を示す図である。 8極子ウィーンフィルタの断面構成例を示す図である。 8極子フィルタによるビーム形状例を示す図である。 8極子フィルタを用いた場合のビーム形状例を示す図である。 薄片形成の説明図である。 12極子フィルタの断面構成例を示す図である。 ビーム形状と強度分布の説明図である。 ビーム形状と強度分布の説明図である。
符号の説明
1 イオン銃
2 ウィーンフィルタ
3 試料ステージ
4 試料

Claims (20)

  1. イオンビームを用いて試料を加工する装置において、
    イオン源と試料の間にウィーンフィルタを配置し、イオン源からのイオンビームを前記ウィーンフィルタを通すことで、ビームの形状を試料の加工に適した形に整形するようにしたことを特徴とするイオンビーム加工装置。
  2. 試料から薄片を作り出すために、ウィーンフィルタの電場・磁場の極性を何れも反転し、ビームの加工に使用する側の面を反転させることができるようにしたことを特徴とする請求項1記載のイオンビーム加工装置。
  3. 前記イオンビームの形状を縦方向に長く、横方向に短くしたことを特徴とする請求項1記載のイオンビーム加工装置。
  4. 横方向ビームの片側において、イオン密度を反対側より高め、鋭い加工面が得られようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のイオンビーム加工装置。
  5. イオンビームを作製するために、ウィーンフィルタの収差を利用するようにしたことを特徴とする請求項4記載のイオンビーム加工装置。
  6. イオンビームをビームの長手方向に走査できるようにしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のイオンビーム加工装置。
  7. 前記試料の両側より加工を行なうに際し、縦長ビームのイオンの密度が高い側を三日月状に張り出させ、両面から加工を施した時に試料の中心付近に穴をあけることができるようにしたことを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載のイオンビーム加工装置。
  8. 前記三日月状イオンビームを発生させるため、ウィーンフィルタの収差を利用したことを特徴とする請求項7記載のイオンビーム加工装置。
  9. エネルギーの広がりによるイオンビームの発散を防止するため、分散方向に2回のフォーカス合わせを行わせ、分散をキャンセルするようにしたことを特徴とする請求項1記載のイオンビーム加工装置。
  10. ウィーン条件をわずかに外して、ビームを偏向することによって加工位置をずらす機構を設けたことを特徴とする請求項1記載のイオンビーム加工装置。
  11. ウィーンフィルタの電場・磁場の条件をスポットビームが得られる条件に変更し、このスポットビームを試料上にスキャンし、試料から反射される2次電子を用いて試料像を得るようにしたことを特徴とする請求項1記載のイオンビーム加工装置。
  12. 前記ウィーンフィルタとして、磁場発生の電磁石ギャップと電場発生の電極対の間隔を等しくしたものを用いることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のイオンビーム加工装置。
  13. 前記ウィーンフィルタとして8極子フィルタを用いたことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のイオンビーム加工装置。
  14. 前記ウィーンフィルタとして12極子フィルタを用いたことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のイオンビーム加工装置。
  15. 縦長のビームを作るために、ウィーンフィルタの電場作用のみをフォーカスさせ、磁場方向にはフォーカスを行わないか、或いは電場方向に比べて弱いフォーカス作用としたことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載のイオンビーム加工装置。
  16. 縦長のビームを作るために、ウィーンフィルタの2次収差を作り出し、これを縦方向に大きくしたことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載のイオンビーム加工装置。
  17. イオン源とフィルタの間、或いはフィルタと試料ステージの間に磁界型電子レンズを設けてイオンビームを収束させることを特徴とする請求項1記載のイオンビーム加工装置。
  18. イオン源とフィルタの間、或いはフィルタと試料ステージの間に電界型電子レンズを設けてイオンビームを収束させることを特徴とする請求項1記載のイオンビーム加工装置。
  19. ウィーンフィルタの代わりに、4極子レンズ又はスティグメータを用いて、一方向にビームを収束、他方に発散させてビーム形状を鋭い形にしたことを特徴とするイオンビーム加工装置。
  20. イオン源と試料の間にウィーンフィルタと4極子レンズを配置し、ウィーンフィルタと4極子レンズを組み合わせて用いることを特徴とする請求項1乃至19の何れかに記載のイオンビーム加工装置。
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JP2008042049A (ja) * 2006-08-09 2008-02-21 Fujitsu Ltd 伝送線路型ブランキング装置及び電子ビーム露光装置
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DE112018006761B4 (de) 2018-03-30 2023-06-15 Hitachi High-Tech Corporation Einen strahl geladener teilchen anwendende vorrichtung

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