JP2006131927A - 長尺物の熱処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 歪みの発生を抑えた長尺物の熱処理方法を提供すること。
【解決手段】 クランクシャフトやカムシャフトなど中心軸Cに対して非対称な部分11を有する長尺物10を、その長手方向を上下にして吊り下げた状態のまま焼入れや焼なましなどの熱処理を施すようにした方法であって、長尺物10の中心軸Cが垂線Dから所定の角度θ傾いた状態になるように当該長尺物10を配置した熱処理方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、中心軸に対して非対称な部分を有する長尺な金属材料であるワークを融点以下の適当な温度に加熱し、冷却速度を加速して所要の組織、性質を与える、例えば焼入れ、焼きもどし、焼きなまし、焼きならしなどの熱処理方法であって、特に吊した状態で行う場合にワーク自身の重さによって生じる歪みを抑えた長尺物の熱処理方法に関する。
熱処理の一つである焼入れにおいては、例えば従来の方法として、図10に示すようにワークであるクランクシャフト10を垂直に吊した状態で、高温に保たれた加熱炉の中に投入し、そこで一定時間加熱した後、焼入れ油を貯留した油槽内にも、図示するように吊した状態のままの浸漬させて焼入れを施す。こうして焼入れを施すことにより、ワークはマルテンサイト化が進行して硬度を増すことができる。
図示するようなクランクシャフト10やその他カムシャフトなどの長尺物は、加熱炉から油槽へと吊した状態で搬送され、それぞれの工程でも吊した姿勢のまま加熱および冷却が行われる。
また、熱処理には焼入れの他、ワークを適当な温度に加熱した後ゆるやかに冷やして常温にする焼なましや、ワークをオーステナイト範囲に加熱して静かに空気中で放冷する焼ならし、あるいは再加熱による焼き戻し等があるが、ワークが長尺物の場合には、こうした熱処理においても図10に示すように吊り下げ管50に吊り下げピン40を通した吊り下げ状態で各処理が行われたりする。
ところで、前述したいわゆる油焼入れでは、油槽内における焼入れ油の温度を均一にしてワークの各部位を同一の温度の焼入れ油で焼入れするため、油槽内に設けた回転体によって焼入れ油の攪拌が行われる。そして、特に下記特許文献1では、回転体を単に一定速度で回転させているだけでは、回転体に近いワークの部位と遠い部位とではマルテンサイト変態が開始される時期が異なって歪が発生してしまうことから、ワークの表面から等しくマルテンサイト化が進行するように回転体の回転速度を調整する方法が採られている。
特開2000−309821号公報(第2−3頁、図1)
しかしながら、図10に示すように長尺物であるワークを吊り下げた姿勢で焼入れを行う場合、クランクシャフト10などのように中心軸Cに対して対称でない形状のワークは、その自重による応力集中によって変形が生じてしまう。図10のクランクシャフト10の場合では、最上部のピン11に最も応力が集中し、上下のカウンタウエイト18,19が開方向に変形を起こしてしまう。
そうした場合、ローラ機構などによって荷重をかけてクランクシャフト10の曲がりを矯正したり、切削などの後工程が行われる。しかしながら、外部から荷重をかけて矯正を行う場合には割れが発生する可能性があり、完全に矯正することもできない。また、ある程度矯正によって歪みを取っても、矯正時に残った残留応力が使用による温度上昇によって解放され、元の曲がった状態に戻ってしまうことがある。一方、切削によって形状を整える方法では、そうした後工程用の取り代が大きいほど切削に時間がかかってしまい効率が悪かった。
更には、歪みが生じないように焼入れ油の油面圧の適正化を図ること等も行われているが、最適な条件設定が困難なため焼入れ時の冷却速度にバラツキが生じてしまい、多大な時間を要するものの十分な効果は得られなかった。
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、歪みの発生を抑えた長尺物の熱処理方法を提供することを目的とする。
本発明に係る長尺物の熱処理方法は、中心軸に対して非対称な部分を有する長尺物を、その長手方向を上下にして吊り下げた状態のまま熱処理を施すようにした方法であって、長尺物の中心軸が垂線から所定の角度傾いた状態になるように当該長尺物を配置したことを特徴とする。
また、本発明に係る長尺物の熱処理方法は、垂線に前記長尺物の中心軸が重なる状態をゼロ度として当該中心軸の角度を徐々に大きくしていった場合に、各角度における長尺物の自重による曲がり量を求め、その曲がり量がゼロ度のときの値よりも小さい値となる傾斜角で長尺物を傾けるようにすることが好ましい。
また、本発明に係る長尺物の熱処理方法は、前記長尺物が、上端に連結した吊り下げ治具を介して吊り下げるようにしたものであって、その中心軸からオフセットした位置に形成された吊り下げ治具のピン穴に吊り下げピンを差し込み所定の角度傾けるようにすることが好ましい。
また、本発明に係る長尺物の熱処理方法は、前記長尺物が、上端に連結した吊り下げ治具を介して吊り下げるようにしたものであって、長尺物の中心軸からオフセットした位置を中心軸の連結位置よりも高くするように、吊り下げ治具を所定量突き上げた状態で支えることにより所定の角度傾けるようにしたことを特徴とする。
また、本発明に係る長尺物の熱処理方法は、前記長尺物が、底面が傾斜した固定ブロックに対し、中心軸に直交する上端面を突き当てて固定することにより所定の角度傾けるようにしてもよい。
また、本発明に係る長尺物の熱処理方法は、前記長尺物が、中心軸の延長上に設けられた支点で吊り下げられ、その支点を中心にして所定の角度に傾けた状態を維持すべく下端部分を支持部材によって支えるようにしてもよい。
更に、本発明に係る長尺物の熱処理方法は、前記支持部材が、前記長尺物の下端部分を傾き方向に押し出すようにして支える押出し治具、若しくは前記長尺物の下端部分を傾き方向から横に引っ張るようにして支えるワイヤ、又は前記長尺物の下端面に対してほぼ垂直方向に下から突き上げるようにして支える押上げ治具とすることができる。
よって、本発明に係る長尺物の熱処理方法によれば、長尺物を所定の角度傾けた状態で熱処理することにより、中心軸に対して非対称な部分の自重による応力集中を低減し、吊り下げた状態で行う熱処理での歪みの発生を抑えることができる。これにより、例えば焼入れ後に矯正を行う場合であっても歪みが小さいため歪み取りの効果が大きく、また、切削によって形状を整える場合でも歪みが小さい分、後工程用の取り代を小さくでき、切削時間も短縮できる。
中心軸に対して非対称な部分を有する長尺物を傾ける角度は、長尺物が自重による応力集中で曲げ歪みを生じる場合、傾斜角がゼロの状態から徐々に大きくなる過程で最小値をとる傾向があるため、有限要素法(FEM)解析によるシュミレーションなどによって好適な角度を求めることができる。そして、その角度で長尺物を傾斜させて配置するにも、前記吊り下げ治具や支持部材を利用することにより簡易な方法で行うことができる。
次に、本発明に係る長尺物の熱処理方法について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。熱処理には、前述したように焼入れの他、焼なましや焼ならしなどがあるが、本実施形態でも油焼入れを例にとって説明する。また、ワークにはクランクシャフト10を採用し、従来の熱処理方法との比較を示しながら説明する。
すなわち、本実施形態の焼入れでは、クランクシャフト10を吊した状態で高温に保たれた加熱炉の中に投入し、そこで一定時間加熱した後、焼入れ油を貯留した油槽内に浸漬させて冷却がおこなわれる。これにより、クランクシャフト10は、表面だけでなく内部までもマルテンサイト化が進行して高硬度の部品とすることができる。
本実施形態の熱処理方法でも、長尺なクランクシャフト10は吊り下げられた姿勢のまま加熱炉での加熱と焼入れ油の中での冷却とが行われる。しかし、従来は図10に示すようにクランクシャフト10を垂直に吊り下げていたが、本実施形態では、図1に示すように中心軸Cを所定の角度θで傾斜させた姿勢で吊り下げるようにした。それには、クランクシャフト10を吊り下げるための吊り下げ治具30が使用され、その吊り下げ治具30は、吊り下げピン40を通して引っ掛けるピン穴31がクランクシャフト10の中心軸Cに対してオフセットした位置に形成されている。
従って、ピン穴31に吊り下げピン40を差し込んでクランクシャフト10を吊り下げることで、支点が中心軸Cと重なっていないため図示するように垂線Vに対して所定の角度θで傾かせることができる。そのため、本実施形態の熱処理方法では、こうして傾かせたクランクシャフト10をその姿勢で加熱炉で加熱し、更にその姿勢のまま吊り下げて油槽内の焼入れ油に浸漬させて焼入れを行った。
そこで次に、図1に示す本実施形態のようにクランクシャフト10を傾けた姿勢で吊り下げた熱処理方法と、図10に示すようにクランクシャフト10を垂直に吊り下げた従来の熱処理方法とで焼入れ後の曲がり量の比較を行った。
図2は、クランクシャフト10の曲がり量をそれぞれプロットしたものであり、ジャーナル21〜26の変位量を測定している。具体的には、クランクシャフト10を両端面の中心点で回転可能に支持し、その中心点同士を結んだセンターラインに対するジャーナル21〜26部分の中心のズレ量を、クランクシャフト10を回転させた時のジャーナル21〜26の表面位置を測定することによって行った。
測定では図2に示すようにジャーナル21〜26の6箇所について行い、四角いポイントを結んだ実線のグラフAが本実施形態の熱処理方法を採用した場合であり、丸いポイントを結んだ波線のグラフBが従来の熱処理方法で行った場合の結果を示している。これから分かるように、いずれの方法を採ってもクランクシャフト10には歪みが生じて曲がってしまっているが、その曲がり量は本実施形態の方法を採用することによって従来の方法の場合に比べ大幅な改善が見られた。
すなわち、本実施形態の熱処理方法で焼入れを行った場合、プラス・マイナス方向にほぼ対称的に曲げが発生し、かつその曲げ量は最大値でも0.25mm程度であった。これに対して従来の熱処理方法で焼入れを行った場合には、吊り下げ状態の上部に偏って曲げが生じ、特にジャーナル22部分の曲げ量が1.0mm程の突出して大きな値を示した。
これは、クランクシャフト10を垂直に吊り下げた場合、ジャーナル22上のピン11に応力が集中して大きく変形を生じたからであると考えられる。すなわち、クランクシャフト10には、中心軸Cに対して3箇所に偏心したピン11〜13が設けられているが、その最上位にあって自重による引っ張り荷重を最も大きく受けるからである。
そこで、この結果から、長尺物を吊り下げた状態で行う熱処理では、クランクシャフト10のような中心軸Cに対して偏心した部分を有するワークの場合、ワークを傾斜させて吊り下げることが有効であることが分かる。そして、その自重による応力集中を回避して変形を抑え、全体的に歪みを小さくすることが必要であると考えられる。よって、今回、偏心部分を有する長尺物の自重による変形を抑えることを検討した。検討に当たっては有限要素法(FEM)解析によるシュミレーションを行った。
FEMは、熱や荷重などの負荷により変形する構造物(解析対象物)を多数の小さな領域(要素)に分割して、各要素についての力と変位の関係を有限な値を持つ関数で区分的に解を近似し、全体の変形や歪み分布、応力分布を数値計算によって求める方法である。今回の検討では、熱による変形を考慮せずに自重による歪みの影響について解析を行った。
FEM解析では、3次元キャドを用いて図3に示すように、クランクシャフト10全体についてモデルを作成し、その表面を仮想的に多数の要素に分割する。
モデリングしたクランクシャフト10には、実際の吊り下げと同様に吊り下げ治具30が取り付けられ、クランクシャフト10の自重を条件として入力する。更に、その吊り下げ治具30のピン穴31の位置を中心軸C上から徐々に遠ざけるようにしたオフセット量Xを入力し、クランクシャフト10に生じる傾き角θの条件を変化させる。こうして、吊り下げ治具30のピン穴31の位置の条件を変化させることによって、クランクシャフト10の傾き角θに対応した値をパラメータとして入力している。
そして、自重による引っ張り荷重を受けたクランクシャフト10に関し、各要素内の変位と力の関係から全体の変形形状や応力分布を演算処理によって算出する。こうした有限要素法によるシミュレート結果は、ディスプレイ画面等に表示する方法が広く使われており、解析結果を視覚的に知ることができる。例えば、図4及び図5に示すように、色の濃淡を変化させるなどして応力の高い所を表示することができる。ここで、図4及び図5は、クランクシャフト10のピン11部分の拡大図であるが、これは特にピン11部分の応力集中が問題となっているからである。
図4は、クランクシャフト10の傾き角θがゼロである、図10に示す従来の熱処理方法の場合を示したものであるが、ピン11の中心軸側に色の濃い高い応力部分11aが存在していることが示されている。これは、ピン11に作用するそれ以下のクランクシャフト10の重さが、中心軸C上に作用しているからである。そして、ピン11にはこうして引張応力が作用することにより、その箇所が引っ張られて伸びて上下のカウンタウエイト18,19の間隔が広がってしまう。それが、図2に示したグラフBにおいて、ジャーナル22の曲がり量が突出して大きくなった原因である。
その一方で、図5は、クランクシャフト10を所定の傾き角θで傾けた図1に示す本実施形態の熱処理方法の場合を示している。この図からは、クランクシャフト10を傾けることにより、ピン11の中心軸側にあった応力集中がなくなり、このピン11を挟んだジャーナル21,22に色の濃い高い応力部分21a,22aが移ったことが分かる。
従って、こうしてクランクシャフト10を傾けた場合、垂直のままではピン11に集中していた応力がピン11以外の部分に分散して各部に生じる歪みを小さくしていると考えられる。そこで、更にクランクシャフト10の傾斜角θを変化させた際、どの角度でクランクシャフト10の曲げ量が最も小さくなるかを検討した。
図6は、傾斜角度θに対する曲がり比を示したグラフである。曲がり比は、任意の角度(本実施形態ではθ=5°)における曲げ量を1にとった場合の各角度における曲がり量の比をとったものである。今回の解析では、自重と傾きの条件だけを入力し、温度による強度変化を考慮に入れた絶対量を算出したものではなく、曲がりの傾向を見るようにしているからである。図6では、吊り下げ治具30のピン穴31のオフセット量Xを変化させることによりクランクシャフト10をの傾斜角θを徐々に大きくしていき、各傾斜角θにおける最も大きい曲げを生じる部分の曲げ量について比をとってプロットしている。
この図から分かるように、傾斜角θをあまり大きくすると傾斜角θがゼロ状態の場合を超えて曲げ量が大きくなってしまうが、傾斜角θをゼロから徐々に大きくしていくことである値までは曲げ量を小さくすることができることが分かる。そして、更に傾斜角θを大きくすることによって曲げ量が大きくなってしまう。従って、クランクシャフト10は、傾斜角θをゼロの状態からある程度傾けることによって最小値をとることが分かった。そして、今回の解析では、図6に示すように傾斜角θが1〜2°の間で最小値をとることが分かった。なお、図2に示したグラフAの曲がり量は、この結果を受けて傾斜角θを1.5°にとって焼入れを行った場合の結果を示している。
また、熱処理におけるクランクシャフト10の傾斜角θの最適値は、解析結果を基に実際に傾斜させた状態での曲げ量を計測することによって決定する。そこで、実際に各角度で傾斜させて焼き入れを行ったクランクシャフト10の曲がり量を測定した。その測定結果を示したのが図7である。横軸にクランクシャフト10を吊り下げた時の傾斜角θを示し、縦軸に焼き入れ後の曲がり量を示している。
この図に示された測定結果から分かるように、FEM解析で算出された結果と同じ傾向をとることが分かった。すなわち、あまり傾斜角θを大きくすると垂直状態の曲げ量を超えてが大きくなってしまうが、傾斜角θをゼロから徐々に大きくしていった場合ある角度で曲げ量を最小にすることができる。
以上のことから、FEM解析によって得られた図6に示すグラフと、実験結果のグラフとの傾向の一致が見られ、FEM解析による曲がり量と傾斜角との関係が正確であることが確認できた。
従って、FEM解析によって得られた最小の曲がり量に対する傾斜角θから、実際の熱処理においてワークの曲げを抑えるために好適な傾斜角θを得ることができる。更に、最適値を求めるには、FEM解析によって得られた最小の曲がり量に対する傾斜角θから所定範囲に絞った傾斜角θで行った実験によって確認できる。
ところで、こうして求めたクランクシャフト10の傾斜角θは、吊り下げ治具30のピン穴31の位置を変化させて求めていたため、傾斜角θの決定により吊り下げ治具30のピン穴31の位置も決定する。
そこで、本実施形態の熱処理方法では、吊り下げ治具30にオフセットした所定箇所にピン穴31が形成され、そのピン穴31に吊り下げピン40を差し込んで吊り下げることによりクランクシャフト10が所定の角度で傾けられる。そして、その傾いた姿勢のクランクシャフト10をそのまま加熱炉では約900℃で所定時間加熱し、その後、やはり当該傾斜角θで吊り下げた状態のまま油漕内に浸漬させて冷却する。
その結果、従来の熱処理方法では、図2のグラフBに示すような曲げを生じたが、それ比べて本実施形態の熱処理方法では、図2のグラフAに示すような大幅な改善が見られ、曲げ量を小さく抑えることができるようになった。従って、例えば焼入れ後に外部から荷重をかけて矯正を行う必要のない場合もあり、一方で、矯正を行う場合であっても歪みが小さいため歪み取りの効果が大きい。また、切削によって形状を整える場合でも歪みが小さい分、後工程用の取り代を小さくでき、切削時間も短縮できる。
また、本実施形態の熱処理方法では、こうした効果を吊り下げ治具30のピン穴31の位置によってクランクシャフト10を傾けるだけの簡単な方法によって達成することができた。
更に、中心軸に対して非対称である長尺物が自重による応力集中で曲げを生じる場合、今回のFEM解析や実験によって、図6及び図7に示すように、傾斜角θがゼロから徐々に大きくなる課程で最小値をとる傾向があることを確認できた。従って、FEM解析によって求めた最小の曲がり量に対する傾斜角θから、実際に有効な傾斜角θをある範囲でとらえることができ、実際に行う熱処理によって最適値の決定が容易になる。
ところで、本実施形態の熱処理方法では、長尺物のワークを傾けた状態で焼入れなどを行うことが有効であることが分かった。そして、その方法として吊り下げ治具30のピン穴31をオフセットさせたものを示して説明したが、傾斜させる方法としては、その他にも様々なものが考えられる。
例えば、図8は図1と同様にクランクシャフト10の上端側で角度を決定するようにしたものであ。図8(a)は、吊り下げ治具30を中心軸Cからオフセットした位置をブロック33で持ち上げ、中心軸Cの連結位置よりも高くすることで傾斜角θを得るようにしたものである。また、図8(b)は、底面が傾斜した角度固定ブロック35を用意し、その底面に対してクランクシャフト10上端面を突き当ててボルト36で固定したものである。
一方、図9は、従来と同様に上端を中心軸C上で回転可能に支持するが、下端側で角度を決定するようにしたものである。その方法として、クランクシャフト10の下端部分を、図9(a)では押出し治具37で横から支え、図9(b)ではワイヤ38で引っ張り、更に図9(c)では押上げ治具39で支えている。更に、本形態のように下端側で支持するような場合には、下端側からモーメントが逆向きに作用するので、上端で支えるだけの図1や図8に示す場合とは反対に傾いている。
こうして、クランクシャフト10などの長尺物を任意に傾けて歪みの発生を抑えるようにすることは、様々の方法によって実現することができる。その際、図1や図8に示すように上端で支える治具によって角度を決定する場合と、図9に示すように下端側を支えて角度を決定する場合とでは、自重による各部への応力やモーメントのかかり方が異なる。そうした場合でも、それぞれFEM解析することによって図6に示す曲げの傾向、すなわち歪みの傾向をとらえることができ、好適な角度を決定することができる。そして、様々な方法で傾けた場合でも図1に示す実施形態と同様な効果を得ることができ、長尺物を傾斜させる熱処理方法が有効であることがわかった。
以上、本発明に係る長尺物の熱処理方法について一実施形態を示して説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、熱処理方法として焼入れの場合を例に挙げて説明したが、適当な温度に加熱した後ゆるやかに冷やして常温にする焼なましや、ワークをオーステナイト範囲に加熱して静かに空気中で放冷する焼ならし、あるいは再加熱による焼き戻し等についても本発明の熱処理方法は有効である。
長尺物の熱処理方法における一実施形態を示した図である。 クランクシャフトの曲がり量をジャーナル部分で測定してグラフに示した図である。 FEM解析によるシュミレーションでのモデル化したクランクシャフトのイメージ図である。 FEM解析によるシュミレーションで、クランクシャフトの傾斜角がゼロのときにピン部分に作用する応力状態を示した図である。 FEM解析によるシュミレーションで、クランクシャフトの傾斜角が所定の角度のときにピン付近に作用する応力状態を示した図である。 FEM解析により求めた傾斜角度θに対する曲がり比をグラフにして示した図である。 実際に各角度で傾斜させて焼き入れを行ったクランクシャフトの曲がり量をグラフにして示した図である。 長尺物の傾斜角を上端側でとるようにした熱処理方法の実施形態を示した図である。 長尺物の傾斜角を下端側でとるようにした熱処理方法の実施形態を示した図である。 長尺物の熱処理方法における従来例を示した図である。
符号の説明
10 クランクシャフト
11〜13 ピン
18,19 カウンタウエイト
21〜26 ジャーナル
30 吊り下げ治具
31 ピン穴
33 ブロック
35 角度固定ブロック
37 押出し治具
38 ワイヤ
39 押上げ治具
40 吊り下げピン

Claims (7)

  1. 中心軸に対して非対称な部分を有する長尺物を、その長手方向を上下にして吊り下げた状態のまま熱処理を施すようにした長尺物の熱処理方法において、
    長尺物の中心軸が垂線から所定の角度傾いた状態になるように当該長尺物を配置したことを特徴とする長尺物の熱処理方法。
  2. 請求項1に記載する長尺物の熱処理方法において、
    垂線に前記長尺物の中心軸が重なる状態をゼロ度として当該中心軸の角度を徐々に大きくしていった場合に、各角度における長尺物の自重による曲がり量を求め、その曲がり量がゼロ度のときの値よりも小さい値となる傾斜角で長尺物を傾けるようにしたことを特徴とする長尺物の熱処理方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載する長尺物の熱処理方法において、
    前記長尺物は、上端に連結した吊り下げ治具を介して吊り下げるようにしたものであって、その中心軸からオフセットした位置に形成された吊り下げ治具のピン穴に吊り下げピンを差し込み所定の角度傾けるようにしたことを特徴とする長尺物の熱処理方法。
  4. 請求項1又は請求項2に記載する長尺物の熱処理方法において、
    前記長尺物は、上端に連結した吊り下げ治具を介して吊り下げるようにしたものであって、長尺物の中心軸からオフセットした位置を中心軸の連結位置よりも高くするように、吊り下げ治具を所定量突き上げた状態で支えることにより所定の角度傾けるようにしたことを特徴とする長尺物の熱処理方法。
  5. 請求項1又は請求項2に記載する長尺物の熱処理方法において、
    前記長尺物は、底面が傾斜した固定ブロックに対し、中心軸に直交する上端面を突き当てて固定することにより所定の角度傾けるようにしたことを特徴とする長尺物の熱処理方法。
  6. 請求項1又は請求項2に記載する長尺物の熱処理方法において、
    前記長尺物は、中心軸の延長上に設けられた支点で吊り下げられ、その支点を中心にして所定の角度に傾けた状態を維持すべく下端部分を支持部材によって支えるようにしたことを特徴とする長尺物の熱処理方法。
  7. 請求項6に記載する長尺物の熱処理方法において、
    前記支持部材は、前記長尺物の下端部分を傾き方向に押し出すようにして支える押出し治具、若しくは前記長尺物の下端部分を傾き方向から横に引っ張るようにして支えるワイヤ、又は前記長尺物の下端面に対してほぼ垂直方向に下から突き上げるようにして支える押上げ治具であることを特徴とする長尺物の熱処理方法。
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