JP2006127767A - マイクロ波発振素子 - Google Patents
マイクロ波発振素子 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2006127767A JP2006127767A JP2004310302A JP2004310302A JP2006127767A JP 2006127767 A JP2006127767 A JP 2006127767A JP 2004310302 A JP2004310302 A JP 2004310302A JP 2004310302 A JP2004310302 A JP 2004310302A JP 2006127767 A JP2006127767 A JP 2006127767A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- radio wave
- cap
- microwave
- wave absorber
- cathode
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】 入力部から漏洩するマイクロ波を効率よく吸収しながら、パルス動作をする場合でも、パルス特性に影響を与えない構造のマイクロ波発振素子を提供する。
【解決手段】 入力電力を供給する導電性部品(支持管51、カソード端子52、ヒータ端子53、カソード用リード線54、ヒータ用リード線55)およびその導電性部品相互間を電気的に分離する絶縁物56、57を有する入力部5と、その入力部5から供給される電力に基づいてマイクロ波を発振する発振部4(アノード1、カソード部2、ポールピース3)とを有しており、少なくとも一部の導電性部品(カソード用リード線54、ヒータ用リード線55)が貫通するようにキャップ8が被せられ、そのキャップの内側に電波吸収体9が設けられている。
【選択図】 図1
【解決手段】 入力電力を供給する導電性部品(支持管51、カソード端子52、ヒータ端子53、カソード用リード線54、ヒータ用リード線55)およびその導電性部品相互間を電気的に分離する絶縁物56、57を有する入力部5と、その入力部5から供給される電力に基づいてマイクロ波を発振する発振部4(アノード1、カソード部2、ポールピース3)とを有しており、少なくとも一部の導電性部品(カソード用リード線54、ヒータ用リード線55)が貫通するようにキャップ8が被せられ、そのキャップの内側に電波吸収体9が設けられている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、マイクロ波を発振するマグネトロン、クライストロン、進行波管、固体発振素子などのマイクロ波発振素子に関する。さらに詳しくは、入力部からのスプリアスの漏洩を低減した構造のマイクロ波発振素子に関する。
マイクロ波を発振する素子としては、マグネトロン、クライストロン、進行波管、固体発振素子などが用いられているが、これらのいずれの場合も、入力部に少なくとも2つの導電性部品が絶縁性部品を介して設けられ、その入力部から電気エネルギーを供給することによりマイクロ波を発振させる構造になっている。この入力部の導電性部品は、ヒータ端子、カソード端子、アノード端子またはこれらに接続されたリードなどにより構成されている。このような構造では、マイクロ波の発振を行うと、発振したマイクロ波の極めて僅かの信号が入力部に伝わり、入力部から漏洩電波として放射されるという不都合が生じる。このような不都合は、上記のマイクロ波発振素子に共通して起こる問題である。
たとえばマイクロ波を発振する素子の一例であるマグネトロンは、図8に一般的な構造の断面説明図が示されるような構造で、つぎのように動作する。すなわち、カソード21を中心として、その周囲を囲むようにアノードシェル11に固着されたベーン12からなるアノード1が配置され、カソード21から放出された電子は、周囲のアノード1の方向へと走行する。このとき、一対のポールピース3によりカソード21とアノード1の間の作用空間に加えられた磁界により、電子はカソード21の周りを周回する方向に走行方向が変えられる。このカソード21から電子を放出するため、カソード21の温度を上昇させて熱電子放出を促す方法がとられ、カソード21の近傍にヒータ22が設けられてカソード部2が構成されている。そのため、図8に示される例では、入力部5は、カソード21を支持する支持管51、絶縁物56、57、カソード端子52、ヒータ端子53、カソード用リード線54、ヒータ用リード線55およびアノード1と電気的に接続された部分からなっている。
ヒータ22の電力は、カソード端子52とヒータ端子53との間に電圧を印加することにより供給され、電流がヒータ端子53、ヒータ22、支持管51、およびカソード端子52の順番またはその逆方向に流れることにより、ヒータ22が加熱され、カソード21を昇温する。
一方、アノード1からカソード21へ陽極電流を流すための電力供給は、最終的にカソード部2とアノード1との間に高電圧を印加することにより行われる。これにより、前述の作用空間での電子の運動によるエネルギーがアノードにおいて高周波エネルギーに変換されて発振する。高電圧は、たとえばアノード1をアース(接地)にするとカソード部2には、負の高電圧が印加されることになる。この電圧は、図8において、カソード端子51に印加されるが、アノード1との間には、数千Vの電圧が印加されることになり、絶縁のための距離が必要となる。この絶縁物56は、真空を保持し、また、マグネトロンが高温となってもガスの発生を起こさず、絶縁耐力が大きい材料という制約の下に素材が選択される。その結果、この絶縁物56は、セラミックスやガラスにより形成さることが多い。
このようなセラミックスやガラスは、マグネトロン管球部(発振部)で発振したマイクロ波を透過させるため、発振部で発生したマイクロ波が、支持管51や空間などを伝わって入力部5から漏れるという現象が発生する。漏れるマイクロ波は、マグネトロンが発振した基本波とその高調波、他のモードでの発振波が考えられる。
このような入力部からの漏れ電力を低減する手段として、電子レンジなどに用いられるCW動作のマグネトロンでは、コア型チョークコイルおよび空芯型チョークコイルと貫通型コンデンサとからなるフィルタ部をマグネトロンの入力部に設けてシールドケースにより被覆する構造にし、周波数特性の相違するコアを設けたり(たとえば特許文献1参照)、シールドケース内に設けられたフィルタのチョークコイルの陰極端子側導線部に円筒状の電波吸収体を挿入させることにより、漏洩するマイクロ波を吸収、減衰させたりする方法も考えられている(たとえば特許文献2参照)。
特開平6−104081号公報
特開2003−257327号公報
上述のようなシールドケースを使用する方式では、端子やリード線からの絶縁距離を確保するために、非常に大きなスペースが必要になるという問題がある。また、リード線をシールドケースの一部から貫通させて外部に出す必要があり、この場合にもリード線との間隔を大きくする必要があるため、本来の目的であるマイクロ波の漏洩を充分に抑えることができない。そのため、絶縁材でモールドされた貫通コンデンサを使用したり、モールド型のターミナルをシールドケースに装着して、外部へのリード線引出しを行う必要がある。この場合、リード線および絶縁のための空間を伝送線路として不要なマイクロ波が伝送されるため、それを減衰するためにチョークコイルやコンデンサを取り付けて伝送線路のマイクロ波に対するインピーダンスを高めることが行われていた。
この場合、CWで用いられるマグネトロンに対する影響は小さいが、パルスで用いられる場合、このリード線をパルス電流が流れるため、上記の高い周波数での静電容量やインダクタンス特性が、パルスの立上りや立下りに影響を与えてしまうという問題が生じてきた。パルス波形が乱れると、パルス発振出力特性や、パルス波形が歪むことにより、スペクトラムに影響を与え、大きな問題となる。また、シールドケースでは、不要なマイクロ波を反射するため、入力部を通じてマグネトロン管球内部に戻り、モジュレーションを起こすようなこともある。このとき、基本波のローブ付近の出力特性に影響を与え、スペクトラムを悪化させ、スプリアスレベルを上昇させるという問題がある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、入力部から漏洩するマイクロ波を効率よく吸収しながら、パルス動作をする場合でも、パルス特性に影響を与えない構造のマイクロ波発振素子を提供することを目的とする。
本発明によるマイクロ波発振素子は、入力電力を供給する導電性部品および該導電性部品相互間を電気的に分離する絶縁物を有する入力部と、該入力部から供給される電力に基づいてマイクロ波を発振する発振部とを有するマイクロ波発振素子において、前記導電性部品の少なくとも一部が貫通するように貫通孔が設けられたキャップが被せられ、該キャップの内側に電波吸収体が設けられている。
ここに「導電性部品」とは、たとえばマグネトロンのカソードを支持する支持管、カソード端子、カソード用リード線、ヒータ端子、ヒータ用リード線、アノード接続部品(アースに接続し得る部品)など、マイクロ波発振素子に入力電力を印加するため発振部に接続される導電性部品の一部や、マイクロ波発振素子に給電を行うため電流が流れる部品の一部を意味し、「導電性部品の少なくとも一部」とは、たとえばアース接続部品などは含まれなくてもよいことを意味する。
前記電波吸収体は、長さ方向の少なくとも一部が錐状体に形成され、該錐状体の頂部側が前記アノード部側を向き、かつ、該錐状体の中心部を前記導電性部品が貫通するように設けられると、漏洩電波が電波吸収体に垂直に当らないため、反射させないで電波吸収体内に入射させやすく、漏れてきたマイクロ波などを効率よく吸収することができる。ここに「頂部側」とは、錐状体の細くなる側を意味する。
前記キャップの少なくとも一面が導電性部材からなり、前記電波吸収体が前記キャップの内面に密着させて設けられると共に、該電波吸収体の厚さが、減衰させる電波の波長をλとして電気長でλ/4以下の厚さに形成されることにより、少ない電波吸収体により効率的に漏洩電波を減衰させることができ、キャップ部分を小さくすることができる。
前記キャップに設けられた貫通孔から導出される前記導電性部品にフェライトリングが挿入されることにより、キャップの貫通孔から漏れてくる電波を吸収して減衰させることができるため好ましい。
前記導電性部品が導出される前記キャップの貫通孔から、前記電波吸収体の一部も該キャップの外側に導出されることによっても、貫通孔からの電波漏れを防止することができる。
本発明の構成にすることにより、シールドケースやフィルタなどにより漏洩電波が外に漏れ出ることを防止するのではなく、漏れ電波を吸収して消滅させているため、アノードに戻ってモジュレーションを引き起こすようなこともなくなり、さらにパルス動作をさせても有効に電波漏れを防止することができる。その結果、大きなスペースを必要とせず、マイクロ波発振素子の発振パルス波形や、スペクトラムの劣化を起こさずに入力部からのマイクロ波漏洩電力を低減できるマイクロ波発振素子が得られる。
つぎに、図面を参照しながら本発明のマグネトロンについて説明をする。本発明によるマイクロ波発振素子は、図1にその一実施形態であるマグネトロンの断面説明図が示されるように、入力電力を供給する導電性部品(支持管51、カソード端子52、ヒータ端子53、カソード用リード線54、ヒータ用リード線55)およびその導電性部品相互間を電気的に分離する絶縁物56、57を有する入力部5と、その入力部5から供給される電力に基づいてマイクロ波を発振する発振部4(アノード1、カソード部2、ポールピース3)とを有しており、少なくとも一部の導電性部品(カソード用リード線54、ヒータ用リード線55)が貫通するようにキャップ8が被せられ、そのキャップの内側に電波吸収体9が設けられている。
図1に示される例はマグネトロンの例で、その発振部4は前述の図8に示される従来例と同様の構造をしており、円筒状のアノードシェル11の内周に複数個のベーン12が中心に向かって放射状に設けられることによりアノード1が形成され、そのアノード1の中心部にアノードシェル11の軸方向に沿ってカソード21およびその内部に設けられるヒータ22からなるカソード部2が設けられている。ヒータ22はカソード21から熱電子放出を促すため、カソード21を昇温するためのものである。そして、ベーン12の先端部とカソード21との間の作用空間にカソード21とほぼ平行な磁界を印加し得るように一対のポールピース3が設けられている。この構造で、真空管とされたアノード1とカソード部2間に高電圧が印加されることにより、カソード21から放出された電子が作用空間で、電磁界の作用により回転運動をして電子のエネルギーをアノード1に与えてマイクロ波を発振させる。
入力部5は、この発振部4にアノード1とカソード部2間の高電圧およびヒータ22を加熱するための電圧を印加するために、発振部1から引き出された部分をいい、図1に示されるマグネトロンの例では、カソード21に接続されると共に、カソード21を支持する支持管51、その端部に形成されるカソード端子52、そのカソード端子52に接続されるカソード用リード線54と、ヒータ22の端部に接続されるヒータ端子53、そのヒータ端子53に接続されるヒータ用リード線55と、カソード端子52をアノード1と電気的に絶縁しながら保持すると共に、カソード21側を真空に保持するための真空外囲器とする第1の絶縁物56、カソード端子52と電気的に絶縁する第2の絶縁物57とから構成されている。なお、図1において、6はポールピース3を介して作用空間に磁界を印加するためのマグネット、7はそのマグネット6の磁気回路を接続するヨークである。
図1に示される例では、入力部5の支持管51、カソード端子52、およびヒータ端子53まではマグネット6で被覆されており、カソード用リード線54およびヒータ用リード線55が外部に導出されているため、そのカソード用リード線54およびヒータ用リード線55を被覆するようにキャップ8が被せられ、その貫通孔8aからカソード用リード線54およびヒータ用リード線55が導出されている。そして、そのキャップ8内に電波吸収体9が設けられることにより、入力部5側に漏れてきたマイクロ波を吸収し得る構造にされている。
キャップ8は、金属製でも、プラスティックの少なくとも内面または外面にメッキや蒸着などにより導電性部材を付着させたものでもよく、また、プラスティックなどの非導電性材料のみからなるものでもよく、目的に応じて使い分けられる。すなわち、後述するように、電波吸収体9の厚さが充分で、漏洩電波がキャップ8に達するまでに殆ど減衰してしまう程度の厚さの電波吸収体9であれば、キャップ8は非導電性材料で形成されてもよく、図4に示されるように、電波吸収体9の厚さが薄く、漏洩マイクロ波の1回の進行で完全に漏洩電波を吸収することができない場合には、キャップ8の少なくとも一面に導電性部材が設けられることにより、漏洩マイクロ波を反射させ、キャップ8内で反射を繰り返すことにより、漏洩マイクロ波を完全に吸収することができる。実験によれば、電波吸収体9のみでも、後述する浸透深さの2〜3倍以上の厚さがあれば、マイクロ波の漏洩を15〜30dB程度減衰させることができた。この減衰能力は、通常のマイクロ波漏洩電力を想定した場合、非常に大きな減衰効果となり、マイクロ波に対する感度が著しく高い機器においても、影響を完全になくすることができるレベルとなる。なお、キャップ8をたとえば金属で形成する場合には、金属を切削加工したり、キャストにより成型することにより製造することができる。
電波吸収体9は、たとえばSiC、カーボン混入樹脂、導電性ゴムなどを使用することができるが、誘電体損失係数の大きいものほど薄くて短い(図1のtおよびdが小さい)電波吸収体9で漏洩マイクロ波を吸収することができる。厚さtは、垂直および斜め方向から入射する漏洩マイクロ波に影響し、垂直および斜め方向に進む漏洩マイクロ波も吸収し得る厚さがあればキャップ8を導電性材料で形成する必要はないが、逆にキャップ8の少なくとも表面に導電性部材(電波反射部材)が設けられていれば、電波吸収体9を薄く形成することができる。具体例について、以下に検討する。
(1)キャップが非導電性部材で形成されていてもよい場合
たとえば、吸収する電波の周波数における誘電体損失係数が、0.2以上の数値をもつ誘電体とすると、その周波数の電波の吸収を効率よく行うことができ、また、反射波が生じにくく、良好であることが判明した。たとえば入力部5から漏洩するマイクロ波の周波数が、18GHzであるとし、この周波数における電波吸収体9の誘電体損失係数を0.2とすると、比誘電率εrが2で、誘電体損失角tanδが0.1の誘電体、たとえばSiCなどを電波吸収体9として用いることにより、浸透深さが18.8mmとなり、18.8mm以上の長さの電波吸収体9を用いることにより、電波吸収体9のみで殆ど完全に吸収することができる。すなわち、
誘電体損失係数=比誘電率(εr)×誘電体損失角(tanδ)
今、誘電体損失係数=0.2とし、εr=2、tanδ=0.1とすると、
マイクロ波の浸透深さdは、d=λ/2π・(εr)1/2・tanδ=18.8mm
となる。ここに、λは漏洩するマイクロ波の波長(mm)である。この18.8mmという寸法は、入力部5のスペースを大きく取らずに実現可能となる寸法である。なお、上式よりも誘電体損失係数が大きくなるほど、この浸透深さは減少する。
たとえば、吸収する電波の周波数における誘電体損失係数が、0.2以上の数値をもつ誘電体とすると、その周波数の電波の吸収を効率よく行うことができ、また、反射波が生じにくく、良好であることが判明した。たとえば入力部5から漏洩するマイクロ波の周波数が、18GHzであるとし、この周波数における電波吸収体9の誘電体損失係数を0.2とすると、比誘電率εrが2で、誘電体損失角tanδが0.1の誘電体、たとえばSiCなどを電波吸収体9として用いることにより、浸透深さが18.8mmとなり、18.8mm以上の長さの電波吸収体9を用いることにより、電波吸収体9のみで殆ど完全に吸収することができる。すなわち、
誘電体損失係数=比誘電率(εr)×誘電体損失角(tanδ)
今、誘電体損失係数=0.2とし、εr=2、tanδ=0.1とすると、
マイクロ波の浸透深さdは、d=λ/2π・(εr)1/2・tanδ=18.8mm
となる。ここに、λは漏洩するマイクロ波の波長(mm)である。この18.8mmという寸法は、入力部5のスペースを大きく取らずに実現可能となる寸法である。なお、上式よりも誘電体損失係数が大きくなるほど、この浸透深さは減少する。
上記例は、円柱状の電波吸収体9の中心部にリード線54、55を貫通させる貫通孔が形成された場合の例であるが、この電波吸収体9の形状を円柱状ではなく、たとえば図2または図3に示されるように、軸方向に沿った長さ方向の一部または全部を錐状体に形成することにより、漏洩マイクロ波に対して、電波吸収体9が垂直にならないで、鋭角で入射するため、反射が発生しなくなり、漏洩電波の吸収に有効になる。
すなわち、マグネトロンの発振部4で発生したマイクロ波は、ポールピース3に貫通させた支持管51との隙間(図1参照)を通り入力部5の方向に伝達される。入力部5は、第1の絶縁物56により絶縁されているが、誘電体であるが故に、マイクロ波は透過することになる。第1の絶縁物56の長さは、絶縁を得るための距離が必要となり、印加する陽極電圧や第1の絶縁物56の絶縁耐力により差異はあるが、通常15mm以上を要する。たとえば、発振周波数が9410MHzでは、その高調波となる2倍波では、波長が15.9mmとなり、丁度輻射しやすい寸法となることが考えられる。このようにして漏洩したマイクロ波は、キャップ8方向に伝達される。したがって、電波吸収体9へのマイクロ波の入射角は、この第1の絶縁物56側から向かう角度となる。これに対し、電波吸収体9を図2または図3に示される構造にすることにより、漏洩したマイクロ波は、電波吸収体9の平面と対面するのではなく、錐状の傾斜面に入射することになる。したがって、漏洩したマイクロ波は、反射することなく電波吸収体9に入射しやすい。この角度を適宜選択すると、平面で入射した場合に比較して、10dB程度以上の減衰量の増加を得ることができた。
図2および図3は、電波吸収体9の構造のみが図1に示される構造と異なり、その近傍のみが示されており、同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略すると共に、図示しない発振部などの構造は図1と同じであるので、図およびその説明を省略する。図2の例は、電波吸収体9の図示しない発振部側の一部のみを錐状体にしたもので、このような構造にすることにより、図1の場合に比べて反射が発生し難くなる。また、図3の例は、電波吸収体9を全長に亘って錐状体にしたもので、このような構造でも、反射が発生し難くなる。なお図3の場合において、電波吸収体9の長さがとれず(浸透深さより短い場合)、減衰量が減る場合がある。従って、εr、tanδ、周波数に応じて適宜有効な寸法を選ぶことで、良好な減衰特性を得ることができる。
(2)キャップが導電性部材で形成される場合
キャップ8が金属またはいずれかの面に金属が被覆された樹脂などにより形成されている場合には、図4に同様の一部断面説明図が示されるように、電波吸収体9をキャップ8の内側に薄い層で密着させて配置しても漏洩マイクロ波を減衰させることができる。すなわち、金属表面では電界が0になるが、そこから1/4波長の距離分離れたところが電界最大点となる。この間に誘電率の大きい素材で、かつ、電波吸収特性のよい素材からなる電波吸収体9を配置することにより、減衰効果を大きくとることが可能となる。この場合、電波吸収体9の誘電体に金属やフェライト、カーボンなどを適量混入すると、減衰効果が著しく増大する。誘電率の増加による波長の短縮も起こり、薄い電波吸収体9により1/4波長の電気長を得ることができ、より一層薄くすることができる。
キャップ8が金属またはいずれかの面に金属が被覆された樹脂などにより形成されている場合には、図4に同様の一部断面説明図が示されるように、電波吸収体9をキャップ8の内側に薄い層で密着させて配置しても漏洩マイクロ波を減衰させることができる。すなわち、金属表面では電界が0になるが、そこから1/4波長の距離分離れたところが電界最大点となる。この間に誘電率の大きい素材で、かつ、電波吸収特性のよい素材からなる電波吸収体9を配置することにより、減衰効果を大きくとることが可能となる。この場合、電波吸収体9の誘電体に金属やフェライト、カーボンなどを適量混入すると、減衰効果が著しく増大する。誘電率の増加による波長の短縮も起こり、薄い電波吸収体9により1/4波長の電気長を得ることができ、より一層薄くすることができる。
本発明者らがさらに鋭意検討を重ねた結果、この厚さtを、吸収させるマイクロ波が垂直入射したときに本来最も減衰する厚さより、薄い厚さの電波吸収体9とすることにより、減衰効果がさらに増大することを見出した。すなわち、図5に本発明者らが実験で測定した電波吸収体9の厚さtと減衰量との関係を示す。この電波吸収体9は、垂直入射をしたときの最も減衰量が大きい厚さは1.8mmのものである。図5に示されるように、1.8mmよりも若干薄い1.6mmの厚さで大きな減衰量が得られていることが分かる。これは、垂直方向以外の入射に対して、漏洩電波の浸透距離が最も減衰量が大きい1.8mmに近くなるためと考えられる。
上記のような電波吸収体9の利用では、厚さや形状により減衰量が変化することになる。また、周波数により減衰量に差が生じ、周波数特性をもつことになる。そこで、前記電波吸収体9の減衰する周波数をマグネトロンの基本波発振周波数に対して高調波となる周波数とし、とくに大きいリーク量を示す漏洩マイクロ波の周波数を狙い減衰させることが好ましい。一例として、9410MHzの基本波発振周波数であるマグネトロンに対し、電波吸収体9の減衰する周波数を第2高調波となる18820MHzや、第3高調波に当る28230MHzとする。これにより、高調波の減衰を最も効率よく行うことができるようになり、スプリアス漏洩を抑制することができる。このような減衰周波数を調整するには、たとえば図1〜3や後述する図6に示される構造では、電波吸収体9の誘電体損失係数とキャップ形状(とくに深さ)を変えることにより行え、図4に示される構造では、電波吸収体9に含まれる金属やフェライト粉の量や電波吸収体の板厚を変えることにより調整することができる。
入力部5には、給電を行うリード線などの導電性部品が設けられているため、キャップ8には、その導電性部品を貫通させる貫通孔8aが必ず必要となる。そして、導電性部品とキャップ8の貫通孔8aの内壁との間に隙間が生じ、また、導電性部品であるリード線の被覆体はマイクロ波の伝送線路になることがあり、この隙間や被覆体を介してマイクロ波が漏洩することがある。そこで、図6に示されるように、貫通孔8aから導出された導電性部品(図1の例では、カソード用リード線54およびヒータ用リード線55)にフェライトリング10が挿入されることにより、このような漏洩するマイクロ波を充分に減衰させることができた。なお、このようにフェライトリング10を設けても、マグネトロンに給電されるパルス陽極電圧および電流波形に変化は生じず、発振に影響が出ないことが確認された。
また、このような貫通孔8a近傍からのマイクロ波の漏洩を減衰させる他の方法として、図7に示されるように、電波吸収体の一部9aを、貫通孔8a内を介してキャップ8の外に延出させることによっても同様に漏洩マイクロ波を減衰させることができる。このような構造にすることにより、入力部5に前述のように高電圧が加わる場合が多いが、キャップ8と入力部5とは、誘電体が主体である電波吸収体9の介在により、絶縁特性を向上させることができながら、入力部5の方向から漏洩するマイクロ波に対して充分な減衰量を確保することができる。なお、この貫通孔8aからのマイクロ波漏洩を防止するフェライトリング10や電波吸収体の一部9aを貫通孔8a近傍または貫通孔8a内に設ける構造は、図6および図7に示される電波吸収体9の構造とは関係なくいずれの構造でも適用することができる。
前述の各例では、発振素子としてマグネトロンの例であったが、マグネトロンに限らず、クライストロンや進行波管などの他の電子管および固体発振素子の入力部にも同様に適用することができる。
1 アノード
2 カソード部
3 ポールピース
4 発振部
5 入力部
6 マグネット
7 ヨーク
8 キャップ
9 電波吸収体
10 フェライトリング
51 支持管
52 カソード端子
53 ヒータ端子
54 カソード用リード線
55 ヒータ用リード線
56 第1の絶縁物
57 第2の絶縁物
2 カソード部
3 ポールピース
4 発振部
5 入力部
6 マグネット
7 ヨーク
8 キャップ
9 電波吸収体
10 フェライトリング
51 支持管
52 カソード端子
53 ヒータ端子
54 カソード用リード線
55 ヒータ用リード線
56 第1の絶縁物
57 第2の絶縁物
Claims (5)
- 入力電力を供給する導電性部品および該導電性部品相互間を電気的に分離する絶縁物を有する入力部と、該入力部から供給される電力に基づいてマイクロ波を発振する発振部とを有するマイクロ波発振素子において、前記導電性部品の少なくとも一部が貫通するように貫通孔が設けられたキャップが被せられ、該キャップの内側に電波吸収体が設けられていることを特徴とするマイクロ波発振素子。
- 前記電波吸収体は、長さ方向の少なくとも一部が錐状体に形成され、該錐状体の頂部側が前記発振部側を向き、かつ、該錐状体の中心部を前記少なくとも一部の導電性部品が貫通するように設けられてなる請求項1記載のマイクロ波発振素子。
- 前記キャップの少なくとも一面が導電性部材からなり、前記電波吸収体が前記キャップの内面に密着するように設けられると共に、該電波吸収体の厚さが、減衰させる電波の波長をλとして電気長でλ/4以下に形成されてなる請求項1記載のマイクロ波発振素子。
- 前記キャップに設けられた貫通孔から導出される前記導電性部品にフェライトリングが挿入されてなる請求項1、2または3記載のマイクロ波発振素子。
- 前記導電性部品が導出される前記キャップの貫通孔から、前記電波吸収体の一部も該キャップの外側に導出されてなる請求項1ないし4のいずれか1項記載のマイクロ波発振素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004310302A JP2006127767A (ja) | 2004-10-26 | 2004-10-26 | マイクロ波発振素子 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004310302A JP2006127767A (ja) | 2004-10-26 | 2004-10-26 | マイクロ波発振素子 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006127767A true JP2006127767A (ja) | 2006-05-18 |
Family
ID=36722297
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2004310302A Pending JP2006127767A (ja) | 2004-10-26 | 2004-10-26 | マイクロ波発振素子 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2006127767A (ja) |
Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS51149703A (en) * | 1976-06-18 | 1976-12-22 | Toshiba Corp | High frequency leakage prevention device |
JPS5871698A (ja) * | 1981-10-23 | 1983-04-28 | 日本電気株式会社 | 電波吸収体 |
JPS6030599U (ja) * | 1983-08-08 | 1985-03-01 | 株式会社トキメック | 共振型電波吸収体 |
JPS6145537A (ja) * | 1984-08-09 | 1986-03-05 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | マグネトロン |
JPS6417355A (en) * | 1987-07-13 | 1989-01-20 | Toshiba Corp | Magnetron for electron range |
-
2004
- 2004-10-26 JP JP2004310302A patent/JP2006127767A/ja active Pending
Patent Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS51149703A (en) * | 1976-06-18 | 1976-12-22 | Toshiba Corp | High frequency leakage prevention device |
JPS5871698A (ja) * | 1981-10-23 | 1983-04-28 | 日本電気株式会社 | 電波吸収体 |
JPS6030599U (ja) * | 1983-08-08 | 1985-03-01 | 株式会社トキメック | 共振型電波吸収体 |
JPS6145537A (ja) * | 1984-08-09 | 1986-03-05 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | マグネトロン |
JPS6417355A (en) * | 1987-07-13 | 1989-01-20 | Toshiba Corp | Magnetron for electron range |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US3432721A (en) | Beam plasma high frequency wave generating system | |
US4163175A (en) | Magnetron for which leakage of H.F. noise is minimized | |
KR20040044707A (ko) | 전자레인지용 마그네트론 | |
US4742272A (en) | Magnetron | |
JP3277215B2 (ja) | マイクロウェーブオーブン用マグネトロンの不要電子波遮蔽構造 | |
EP0205316B1 (en) | Magnetron for a microwave oven | |
JPS589537B2 (ja) | マグネトロン | |
JP2006127767A (ja) | マイクロ波発振素子 | |
JPS61288347A (ja) | 電子レンジ用マグネトロン | |
AU2012208363B2 (en) | Electron tube | |
KR0139343Y1 (ko) | 마그네트론의 음극부구조 | |
KR100266604B1 (ko) | 마그네트론의 고주파 누설 방지구조 | |
KR100451234B1 (ko) | 마그네트론의 디스크구조 | |
JP3261726B2 (ja) | マグネトロン | |
KR200154588Y1 (ko) | 전자렌지의 도파관구조 | |
KR0139342Y1 (ko) | 마그네트론의 출력부구조 | |
KR200150804Y1 (ko) | 마그네트론 | |
KR100451235B1 (ko) | 마그네트론의 입력부 차폐구조 | |
KR810002105Y1 (ko) | 마그네트론 | |
KR0168176B1 (ko) | 마그네트론의 음극구조 | |
KR0139282Y1 (ko) | 마그네트론의 캐소드구조 | |
KR900010243Y1 (ko) | 마그네트론 | |
KR100269479B1 (ko) | 마그네트론의 음극부구조 | |
KR100222055B1 (ko) | 마그네트론의 전자파 차폐구조 | |
KR100251566B1 (ko) | 마그네트론 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20070629 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20100512 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20100518 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20100928 |