JP2006119420A - 光スキャナ - Google Patents

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修 稲垣
Kazuhiko Yamaguchi
和彦 山口
Katsuharu Kosaka
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Abstract

【課題】 外乱加速度の印加時にも安定した走査が可能であり、小型で量産性に優れた光スキャナを提供する。
【解決手段】 光源からの入射光を反射する反射面33を備えた可動部3を、ハウジング2に軸支される支持軸43によって揺動自在に支持する。また、可動部3の動作を規制するための弾性力を、可動部3の突出部32に埋設された可動側マグネット41、及びハウジング2の突出部23に埋設された固定側マグネット42からなり、物理的な変形を必要としない磁気バネ40によって得る。
【選択図】 図2

Description

本発明は、光源からの入射光を反射し、その反射光により対象物を走査する光スキャナに関する。
従来より、自動車の障害物検知センサとしてレーザレーダが用いられており、このレーザレーダを大衆車にまで展開させるためには、レーザ光を走査するために用いるスキャナを小型かつ低コスト化することが望まれている。
この種のスキャナの一つとして、図6に示すように、走査用の反射ミラーを備えた可動部110を、板バネ131,132を立体交差させてなる支持部130によって、ハウジング150に対して揺動自在に支持する構造の光スキャナ100が知られている。
この光スキャナ100において、支持部130を構成する板バネ131,132は板面と交差する方向へは容易に弾性変形し、板面に沿った方向へは容易に弾性変形しないことを利用して、回転軸Xを中心とする揺動方向Rにのみ変形し易い構造となるように組み付けられている。
また、可動部110やハウジング150に対する支持部130の固定は、可動部110やハウジング150の端部に形成された折返部110a,150aに、板バネ131,132の端部を挟持させてカシメることにより行われている。
更に、可動部110を揺動駆動する駆動部170は、可動部110と一体に固定された永久磁石171と、永久磁石171と対向して配置され、永久磁石171の両磁極を交互に吸引,反発させる磁力を発生させる電磁石172とにより構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2002−14298号公報
しかし、上述の光スキャナ100では、自動車が急加速又は急減速する等して、その加速度(外乱加速度)に基づく外力が支持部130に作用すると、支持部130を構成する板バネ131,132は圧縮又は伸張し、支持部130の弾性係数が変化する。すると、可動部110と支持部130とからなる振動系の共振周波数が変化してしまい、可動部110の揺動状態(特に振幅)が乱れ、走査範囲が変化してしまうという問題があった。
また、光スキャナ100では、精度よく走査を行うためには、支持部130が揺動方向以外に振動することを抑制する必要があり、そのためには、板バネ131,132の剛性を高める必要がある。そして、板バネ131,132の剛性を高めると弾性係数が低下するため、共振周波数を一定に保つためには、その弾性係数の低下分を可動部110を重くすることで補償しなければならない。しかし、可動部110を重くすると、上述した外乱加速度に基づく共振周波数の変化を増大させてしまうという問題もあった。即ち、同じ加速度であれば質量が大きい分だけ支持部130に作用する力が大きくなるからである。
更に、可動部110の揺動駆動のために、可動部110には、別途、永久磁石171を設けなければならず、可動部110を更に重くしてしまうだけでなく、多くの構成部品を要するという問題もあった。
また、光スキャナ100では、支持部130の固定にカシメを用いており、支持部130の特性が組付作業の精度に左右されるため、光スキャナ100にとって重要な特性である原点の角度や共振周波数のバラツキが大きく、量産性に乏しいという問題もあった。
本発明は、上記問題点を解決するために、外乱加速度の印加時にも安定した走査が可能であり、小型で量産性に優れた光スキャナを提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明の光スキャナでは、可動部を固定部に対して揺動自在に支持する支持部が、可動部の揺動中心に設けられ、固定部に形成された一対の軸受け部にて両端が軸支された支持軸と、固定部と可動部との間に発生させた磁力のバランスにより、予め設定された静止位置に可動部が保持されるように可動部を付勢する磁気バネとからなる。
つまり、可動部は支持軸によって支持され、しかも、可動部の動作を規制するための弾性力を、物理的な変形を必要としない磁気バネを用いて得るようにされている。
従って、本発明の光スキャナによれば、外乱加速度に基づく外力が作用しても、支持部の特性(特に磁気バネの弾性力)、ひいては可動部と支持部とからなる振動系の共振周波数が変化してしまうことがなく、可動部の揺動状態(振幅や周波数)を一定に保持することができる。
また、磁気バネの弾性力は、板バネとは異なり他の構成に影響を与える(例えば、所望の共振周波数を得るために可動部の重量増を強いる)ことなく、任意の大きさに設定可能であるため、可動部の重さも任意に設定することができ、その結果、可動部の軽量化を図ることができる。
更に、本発明の光スキャナでは、支持軸で可動部を支持しているため、支持部の特性が、組付作業の精度によって左右されることがなく、部品の加工精度によって決まる。つまり、製造工程で生じる特性のばらつきが小さいため、量産性に優れるという効果を得ることができる。
しかも、物理的な変形を必要としない磁気バネは、耐久性に優れ、板バネと比較して特性の温度変動も小さいため、高い信頼性,安定性を得ることができる。
なお、支持軸と軸受け部とが接触する部位には摺動抵抗が存在し、この摺動抵抗は、外乱加速度に基づく外力が作用すると増大して、可動部の振動状態に影響を及ぼす可能性がある。このため、支持軸及び軸受け部は、耐磨耗性のある材料により、互いに接触する接触面の部分を滑らかに形成し、且つ支持軸の強度が許す限り小径に形成して、支持軸の周速や摺動抵抗を可能な限り小さくすることが望ましい。
ところで、磁気バネは、例えば、可動部に設けられた可動側マグネットと、固定部に設けられ、可動側マグネットの揺動方向両側にて、同極性の端部が互いに対向するように配置された一対の固定側マグネットとにより構成することができる。
この場合、一対の固定側マグネットの対向配置された側の端部を作用端として、その作用端の極性と同じ極性を有する可動側マグネットの端部である同極端が、作用端の極性とは異なる極性を有する可動側マグネットの端部である異極端より、作用端に接近した位置に配置すればよい。
これにより、可動側マグネットの同極端(即ち、可動部における可動側マグネットの取付端)は、一対の固定側マグネットの双方から受ける反発力により、その反発力が等しければ、一対の固定側マグネットの作用端から等距離の位置に保持されることになる。
更に、可動側マグネットは、一対の固定側マグネットの作用端の中心同士を結ぶ線より支持軸側に配置され、且つ、異極端と作用端との間に吸引力が作用する形状に形成されていることが望ましい。
この場合、可動部全体が作用端側に吸引されることにより、可動部と一体に形成された支持軸は軸受け部の一方向に接触するように付勢されるため、支持軸と軸受け部との間のクリアランスによる支持軸のがたつきを防止することができ、可動部の揺動状態をより安定したものとすることができる。
なお、外乱加速度がスキャナに作用することによって、可動部が直接回転方向への力を受けないようにするため、可動側マグネットを含んだ可動部の重心が、支持軸上に位置することが望ましい。
また、可動部の軽量化および簡素化を図るために、可動部の反射面は蒸着によって形成することが望ましい。
また、駆動部は、例えば、外部から印加される電気信号に従って、一対の固定側マグネット間の磁力のバランスを変化させる電磁石により構成することができる。
この場合、周期的に変化する電気信号を印加することにより、電磁石が発生させる磁力、ひいては一対の固定側マグネット間の磁力のバランスを周期的に変化させることで、可動部を揺動運動させることができる。そして、可動部及び支持部からなる振動系の共振周波数で揺動運動をさせれば、小さな駆動力で大きな振幅を得ることができる。
また、この場合、駆動部は、磁気バネを利用して駆動力を得るようにされているため、駆動のためだけに、可動部に新たな部品を追加する必要がなく、可動部の軽量化、装置全体の簡略化を図ることができる。
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、実施形態の光スキャナ1の全体構成を示す斜視図、図2は、(b)が左側面図、(a)がそのA−A断面図である。
図1及び図2に示すように、光スキャナ1は、装置の筐体等に固定されるハウジング2と、光源からの入射光を反射する反射面33を備え、先端部分に永久磁石(以下「可動側マグネット」と称する。)41が埋設された可動部3と、可動部3をハウジング2に対して揺動自在に支持する支持部4と、可動部3を揺動駆動するための駆動部5とを備えている。
このうち、可動部3は、長方形の板状に形成され、一方の板面に光の反射物質を蒸着することによって上記反射面33が形成された可動部本体31と、可動部本体31の反射面33とは反対側の面に突設された突出部32とからなり、これら可動部本体31と突出部32とは、比重の小さい非磁性体材料(本実施形態では合成樹脂)により一体成形されている。
なお、光源から反射面33への入射光が均一な特定波長(例えばレーザ光線)を有している場合、反射面33は、その特定波長を反射する薄膜により形成してもよい。
そして、可動部本体31と突出部32との境界部分には、可動部3を揺動運動させる際に、揺動中心となる支持軸43が埋設され、更に、可動側マグネット41を含む可動部3全体の重心は、この支持軸上43に位置するように設定されている。
次に、ハウジング2は、長方形の板状に形成されたハウジング本体21の一方の板面(以下「正面」と称する。)21aに突設され、支持軸43を支持するための軸受け部が先端に形成された一対のアーム部22と、同じくハウジング本体21の正面21aに突設され、永久磁石(以下「固定側マグネット」と称する。)42がそれぞれ埋設された一対の突出部23とからなり、これらハウジング本体21,アーム部22,突出部23は、非磁性体材料(本実施形態では銅)により一体成形されている。また、ハウジング本体21には、当該光スキャナ1を筐体等に取り付ける際に使用する一対の取付穴21cが形成されている。
なお、ハウジング本体21の正面21aが図1中Y軸方向に直交するように配置されているものとして、一対のアーム部22同士は、Y軸方向と直交するZ軸方向に沿って、互いに対向するように配置され、一方、一対の突出部23同士は、Y軸方向及びZ軸方向のいずれにも直交するX軸方向に沿って、互いに対向するように配置されている。
つまり、支持軸43はZ軸方向に沿って配置され、この支持軸43によって揺動自在に支持される可動部3は、その突出部32の先端部分が、ハウジング2に形成された一対の突出部23の間に位置するように設定されている。
そして、ハウジング2の突出部23に埋設された一対の固定側マグネット42は、同極性側(本実施形態ではN極)を互いに対向させ、且つ着磁方向と配列方向(即ちZ軸方向)とが一致する向きで一直線上に並ぶように配置されている。以下では、一対の固定側マグネット42の互いに対向配置された側の端部を作用端42aと称する。
一方、可動部3の突出部32に埋設された可動側マグネット41は、固定側マグネット42の作用端42aの極性と同じ極性を有する端部(以下「同極端」と称する。)41aが、突出部32の先端側に、作用端の極性とは異なる極性を有する端部(以下「異極端」と称する。)41bが、可動部本体31側に向くように配置され、即ち、同極端41aが異極端41bより作用端42aに接近した位置に配置されている。
但し、可動側マグネット41は、固定側マグネット42の作用端42a同士を結ぶ中心線Lと交わることのないように配置され、また、固定側マグネット42の形状(特に長さ)や、固定側マグネット42の作用端42a間の間隔は、同極端41aと両作用端42aとの間に生じる反発力の合成力(図1中Y軸方向でハウジング本体21から離れる方向への力)が、異極端41bと両作用端42aとの間に生じる吸引力の合成力(同じくY軸方向でハウジング本体21に接近する方向への力)より小さくなるように設定されている。
このように配置された可動側マグネット41及び固定側マグネット42は、これらの間に作用する磁力(反発力/吸引力)によって可動部3の動作を規制する磁気バネ40を構成し、この磁気バネ40と上述の支持軸43とが支持部4を構成する。
つまり、支持軸43によって揺動自在に支持された可動部3において、突出部32の先端部分(即ち可動側マグネット41の同極端41a)は、固定側マグネット42の両作用端42aから受ける反発力(付勢力)によって、ハウジング2に形成された一対の突出部23の中心付近(両作用端42aから等距離の位置)に保持される。これと同時に、可動部3全体は、上記合成力によって、ハウジング本体21に接近する方向に付勢されることになる。
次に、駆動部5は、一端が固定側マグネット42と接触すると共に、他端がハウジング本体21の背面21b側に突出し、ハウジング2を両側面から挟持するように設けられた一対のヨーク51と、この一対のヨーク51の突出端の間に保持された鉄心52と、鉄心52に巻回された駆動コイル53とからなり、これらヨーク51,鉄心52,駆動コイル53は、馬蹄形の電磁石を形成する。
つまり、この電磁石の両磁極のそれぞれに、固定側マグネット42が配置されており、駆動コイル53に電流を流すことで電磁石に磁気を発生させると、一対の固定側マグネット42の作用端42aのうち、一方では同じ極性の磁気が加わるため、可動側マグネット41の同極端41aとの間の反発力が増大し、他方では異なる極性の磁気が加わり磁気が相殺されるため、可動側マグネット41の同極端41aとの間の反発力が減少する。この磁気バランスの変化によって、可動部3を駆動するための駆動力を得るようにされている。
従って、駆動コイル53に、正弦波や矩形波等の周期的な駆動信号を印加して、駆動部(電磁石)5に交番磁界を発生させると、一対の固定側マグネット42間の磁気バランスが周期的に変化することにより、可動部3が支持軸43を中心に揺動する。
その結果、可動部3の反射面33に照射された光ビームは、可動部3の揺動方向に沿って反射方向が直線的に変化するため、この反射面からの反射光を用いることにより、支持軸43(Z軸方向)に直交する面に沿った一次元的な走査を行うことが可能となる。
なお、光ビームの走査速度は、可動部3の揺動周期、即ち、駆動信号の周波数(以下「加振周波数」と称する。)にて制御され、また、光ビームの走査範囲は、可動部3の揺動の大きさ、即ち駆動信号の振幅にて制御される。
ここで、図3は、光スキャナ1を駆動信号の周波数(以下「加振周波数」と称する。)を徐々に変化させて、可動部3の振幅を測定することで得られた周波数特性を示すグラフである。図中において、◆印は、加振周波数を低から高へ変化させた場合の測定結果であり、●印は、加振周波数を高から低へ変化させた場合の測定結果である。
また、図4は、駆動信号の波形と可動部3の共振波形とを示すグラフであり、(a)は、加振周波数が28.0Hzの場合、(b)は加振周波数が29.4Hzの場合、(c)は加振周波数が31.0Hzの場合である。
但し、駆動コイル53は、巻線の直径がφ0.07、巻数が2000tであり、また、駆動信号の電圧は3.3V(ピークは±2.5V)、デューティは50%である。
図3に示すように、周波数26.5Hz〜29.0Hzの間は、加振周波数の変化方向によって振幅・位相が大きく異なる2通りの共振現象が現れ(不安定域)、周波数29.0Hz以上では、振幅・位相が一意に決まる安定した共振現象が現れる(安定域)。なお、このような傾向は、非線形バネの場合に発生する現象で、板バネでも観測されるものである。
つまり、加振周波数を安定域に設定して駆動すれば、可動部3を所望の周波数で共振させることができ、特に、安定域の中でも、周波数29.0Hz〜29.5Hzの間では、30°以上の振幅が得られ、自動車の障害物検知センサにおいて一般的に必要とされる20°(±10°)以上の振幅(光の反射角は、反射面の動作角度の2倍となることから走査範囲としては、±20°)を確保できることがわかる。
以上説明したように、本実施形態の光スキャナ1では、可動部3は支持軸43によって支持され、しかも、可動部3の動作を規制するための弾性力を、物理的な変形を必要としない磁気バネ40(可動側マグネット41,固定側マグネット42)を用いて得るようにされている。
従って、本実施形態の光スキャナ1によれば、外乱加速度に基づく外力が作用しても、可動部3及び磁気バネ40からなる振動系の特性(特に磁気バネ40の弾性力)、ひいては振動系の共振周波数が変化してしまうことがなく、可動部3の揺動状態(振幅や周波数)を一定に保持することができる。
また、本実施形態では、磁気バネ40の弾性力(磁気強度)を調整することで振動系の共振周波数を任意に設定可能なため、可動部3を任意の重さに設定することができ、しかも、可動部3の反射面33は蒸着によって形成されるため、可動部3の軽量化を図ることができる。
更に、本実施形態の光スキャナ1では、支持軸43で可動部3を支持しているため、振動系の特性が、組付作業の精度によって左右されることがなく、部品の加工精度によって決まるため、製造工程で生じる特性のばらつきが小さく、量産性に優れるという効果を得ることができる。
しかも、物理的に変形を必要としない磁気バネ40は、耐久性に優れ、板バネと比較して特性の温度変動も小さいため、高い信頼性,安定性を得ることができる。
また、本実施形態では、磁気バネ40の作用により、可動部3全体がハウジング本体21側に付勢され、可動部3と一体に形成された支持軸43は、常に軸受け部の一方向に接触するようにされているため、支持軸43と軸受け部との間のクリアランスによる支持軸のがたつきを防止することができ、可動部3の揺動状態をより安定したものとすることができる。
また、本実施形態では、可動側マグネット41を含んだ可動部3の重心が、支持軸上43に位置するようにされているため、外乱加速度が作用しても可動部を直接回転させるような力が作用せず、しかも、振動系の共振周波数を加振周波数とすることによって、小さな駆動力で大きな振幅を得ることができる。
また、駆動部5は、磁気バネ40を利用して駆動力を得るようにされているため、駆動のためだけに、可動部3に新たな部品を追加する必要がなく、可動部3の軽量化、装置全体の簡略化を図ることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な形態にて実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、固定側マグネット42を、ハウジング2の突出部23に単純に埋設しているが、固定側マグネット42を、その配列方向(X軸方向)に沿って移動可能に構成し、ヨーク51の先端部分に、ヨーク51と固定側マグネット42を接触させると共に、固定側マグネット42の配列方向に沿った位置を調整するための部材(例えばネジ)を設けてもよい。
この場合、固定側マグネット42の位置によって磁気バネ40の磁気バランスが変化するため、非駆動時の可動部3の向き(原点位置)や、共振周波数を簡単に調整することができる。
また、上記実施形態では、ハウジング2を銅、可動部3を合成樹脂により構成したが、ハウジング2や可動部3は、他の磁性体材料(例えばアルミニウム)にて構成してもよい。特に、ハウジング2のアーム部22に形成される軸受け部を、ポリアセタール樹脂等の耐磨耗性のある材料を選定すれば、軸受け部の磨耗を無給油でも非常に少ないレベルに保つことができ、メンテナンス要するコストを低く抑えることができる。
ここで、実際に軸受け部の磨耗量を求めた結果を以下に示す。
なお、図5は、算出条件を示す説明図であり、(a)(b)に示すように、支持軸Pを軸支するハウジングHは、13mmの間隔を空けて対向配置された2mmの厚さを有する一対のアーム部を備え、そのアーム部を貫通する穴を軸受け部Uとしている。つまり、2箇所で支持する滑り軸受け構造である。但し、(b)は正面図、(a)はその平面図である。
ハウジングHは、ポリアセタール樹脂からなるユピタール(登録商標)F20−03又はLO−21Aで形成され、軸受け部Uの穴径はφ0.5+0.02mmである。また、支持軸Pは、高炭素クローム軸受鋼SUJ2で形成され、軸径はφ0.5mmである。なお、支持軸Pは、HRC60程度の熱処理が施され、面粗度は0.2Raであるものとする。
そして、支持軸Pには、常時2g・fのラジアル荷重が加わっているものとして(図5(b)参照)、振幅30°の角度範囲(図5(a)参照)を、周波数30Hzでサインカーブの速度変化をしながら2.5万時間揺動運動させた時の軸受け部Uの磨耗量を求めた。但し、支持軸P及び軸受け部Uは無給油であり、ゴミ・ホコリは付着しないものとする。
この条件で、支持軸Pと軸受け部Uとの接触面に加わる面圧(単位面積当たりの圧力)Pは、(1)式で表され、P=0.1kgf/cm2 となる。但し、Wは総荷重(2g.f)、Dは軸径(φ0.5mm)、Lは軸受け長さ(2mm×2箇所)である。
P=W/(D×L) (1)
また、支持軸Pの周速Vは(2)式で表され、V=0.00784m/sとなり、更に、その走行距離は(3)式で表され、R=705.6kmとなる。但し、Nは回転数(30°×2×30Hz)、tは動作時間(25000h)である。
V=π×D×N (2)
R=V×t (3)
そして、磨耗量Mは(4)式、磨耗寸法Sは(5)式で表され(図5(c)参照)、軸受け部Uの材質がF20−03である場合、M=0.03528mm3 ,S=0.01764mmとなり、軸受け部Uの材質がLO−21の場合、M=0.01552mm3 ,S=0.00776mmとなる。但し、Aは材料特性(F20−03ではA=2.5,LO−21AではA=1.1)である。
M=A×0.01[mm3 /kgf・km]×W×R (4)
S=M/(D×L) (5)
このように、軸受け部Uがポリアセタール樹脂からなる場合には、磨耗量M,磨耗寸法Sが非常に小さく、無給油でも、十分に実用に耐え得ることがわかる。
実施形態の光スキャナの全体構成を示す斜視図。 (b)が光スキャナの側面図、(a)はそのA−A断面図。 可動部の振幅の周波数特性を示すグラフ。 駆動信号の波形と可動部の共振波形を示すグラフ。 軸受け部の磨耗量の算出条件を示す説明図。 従来装置の構成を示す斜視図。
符号の説明
1…光スキャナ、2…ハウジング、3…可動部、4…支持部、5…駆動部、21…ハウジング本体、22…アーム部、23…突出部、31…可動部本体、32…突出部、33…反射面、40…磁気バネ、41…可動側マグネット、41a…同極端、41b…異極端、42…固定側マグネット、42a…作用端、43…支持軸、51…ヨーク、52…鉄心、53…駆動コイル。

Claims (6)

  1. 被取付体に固定される固定部と、
    光源からの入射光を反射する反射面を有した可動部と、
    該可動部を前記固定部に対して揺動自在に支持する支持部と、
    前記可動部を予め設定された揺動方向に駆動する駆動部と
    を備え、前記反射面からの反射光により対象物を走査する光スキャナにおいて、
    前記支持部は、
    前記可動部の揺動中心に設けられ、前記固定部に形成された一対の軸受け部にて両端が軸支された支持軸と、
    前記固定部と前記可動部との間に磁力を発生させ、該磁力のバランスにより、予め設定された静止位置に前記可動部が保持されるように該可動部を付勢する磁気バネと、
    からなることを特徴とする光スキャナ。
  2. 前記磁気バネは、
    前記可動部に設けられた可動側マグネットと、
    前記固定部に設けられ、前記可動側マグネットの揺動方向の両側に、同極性の端部が互いに対向するように配置された一対の固定側マグネットと、
    からなり、
    前記一対の固定側マグネットの対向配置された側の端部を作用端として、該作用端の極性と同じ極性を有する前記可動側マグネットの端部である同極端が、前記作用端の極性とは異なる極性を有する前記可動側マグネットの端部である異極端より、前記作用端に接近した位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光スキャナ。
  3. 前記可動側マグネットは、前記一対の固定側マグネットの作用端の中心同士を結ぶ線より前記支持軸側に配置され、且つ、前記異極端と前記作用端との間に吸引力が作用する形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光スキャナ。
  4. 前記可動側マグネットを含んだ前記可動部の重心が前記支持軸上に位置することを特徴とする請求項2又は3に記載の光スキャナ。
  5. 前記可動部の前記反射面は蒸着により形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光スキャナ。
  6. 前記駆動部は、
    外部から印加される電気信号に従って、前記一対の固定側マグネット間の磁力のバランスを変化させる電磁石からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光スキャナ。
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