JP2006112214A - 屋内環境改善建物 - Google Patents

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JP2006112214A JP2005142407A JP2005142407A JP2006112214A JP 2006112214 A JP2006112214 A JP 2006112214A JP 2005142407 A JP2005142407 A JP 2005142407A JP 2005142407 A JP2005142407 A JP 2005142407A JP 2006112214 A JP2006112214 A JP 2006112214A
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Abstract

【課題】 高気密・高断熱住宅の普及を図り、夏季の遮熱対策に冬季に求められる断熱性能を活かし、その上、地熱・放射冷却又は深夜電力を活用する為に断熱性能に背反する伝熱性能を併せ持つことで、含水率管理のもと湿気と太陽熱エネルギーを処理し、昼間のエネルギー消費を抑えて輻射冷房効果を実現し、ヒートアイランド化を抑える。更に、冬季の輻射暖房効果を実現する。
【解決手段】 気密断熱層は、H2Oの相変化を媒介し吸放湿性を具備する断熱材で構成され、換気システムにより屋内側から地熱・エアコン等の冷却エネルギーを供給され、H2Oの液化・気化と吸放湿との連携を経て屋外側へ冷却エネルギーを伝熱し、太陽熱エネルギーを吸収する。湿気という潜熱の形で屋外へ排熱しながら、除湿・遮熱効果を得られる。又、躯体に加えて蓄熱体を利用し、深夜電力を効率的に利用できる。冬季は、断熱性能を活かし、伝熱性を抑制し、暖房効果を得られる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、高温・多湿の地域での高気密・高断熱住宅の普及を図るべく、省エネルギーを実践する手段として建築的工夫を重ね、建物内を24時間換気し、躯体の含水率管理を視野に入れながら、吸放湿並びにH2Oの相変化(液化・気化)との連携を制御して、気密断熱層における断熱と伝熱の背反する関係を止揚し、地熱・放射冷却等の自然エネルギーに深夜電力をエネルギー源とし、夏季の日射により注がれる太陽熱を吸収し、夏季の温湿度調節並びに空気浄化に繋げ、更に、エネルギー消費効率を改善して輻射冷暖房効果の実現を図る屋内環境改善建物に関する。
社会的背景について。
産業革命以後、化石エネルギーに依存する社会構造が定着し、そのお陰で我々は豊かな生活を送ることができた。ところが、今日社会的レベルで活動の活発化する一方で、地球環境への悪影響が強く意識され、広くその対策が議論される様になった。その方向は、京都議定書に表わされている。
ところで、個人レベルでは住宅で消費されるエネルギーが大きな割合を占めている。最近では、夏・冬の冷暖房による室内の空調は当たり前の時代である。それで、省エネルギーを実践しながら、快適な生活を送れる工夫が求められ、社会的コンセンサスを得られるに至った。
その様な時代背景の下、我々生活者の高まる欲求を満たしながら、自然エネルギーあるいは余剰の深夜電力の活用並びに高性能住宅の普及を通じて、省エネルギー広くはヒートアイランド化・地球温暖化等の環境問題への取組の一助にするものである。
寒冷地では、一般に暖房の為に消費するエネルギー量は多く、家計には大きな負担となっている。高気密・高断熱住宅は、開発された厳寒地では冬季に求められる省エネルギー効果は著しく、しかも、快適な住環境を提供しえるので、費用対効果を認められて普及しつつある。
ところが、温暖地においては省エネルギーによる費用対効果が小さく、又、冬でも氷点下に気温が下がることは稀で、住環境面でも寒冷地に比較する程の改善効果が認められがたい。更に、決定的な所は、夏季の遮熱対策が未だ不十分であるというところにある。
高気密・高断熱住宅には一般に、熱損失の少ない合成樹脂系の断熱材が使用されている。冬には断熱性能の高さが発揮されるので、寒冷地向けの断熱材としては最適な資材である。又、結露の発生を阻止する上では、断熱性能に加えて気密性能の高さが求められる。その面でも、ボード状の合成樹脂系の断熱材は最適な資材である。
ところが、夏季は事情が逆転し、太陽の日射により壁体・天井等に用いられる断熱材は長時間加熱に曝される。断熱材は熱を吸収・蓄えて高温となり、又、その蓄熱効果によって発生する輻射熱により好適な室温を維持するのに支障が出てくる。
更に、昼間断熱効果によって蓄熱した分を、外側通気層を通じて夜間に放熱して冷却するものの、断熱材はその熱容量によって蓄熱体となる為、冷却するのに時間がかかる。冷却が進むまで、室内への輻射熱となり、室内の冷房負荷の増大要因となる。
以上の様な事情から、温暖地ほど夏季の遮熱対策は不可欠となり、これまで、不十分ながらも実施されているものを検討する。
特許第3251000号公報(特許文献1)並びに特開2003−328464号(特許文献1)において、日射取得された太陽熱エネルギーが断熱材内での蓄熱効果によって輻射熱と化して、室内の冷房負荷を増大させることを指摘し、太陽光を遮蔽することで断熱材内での蓄熱を阻止する手段を提供している。
簡単に記すと、「断熱材の表面の熱反射箔による太陽熱の反射によって、断熱材の表面への熱伝導が大幅に軽減でき、断熱材自体への加熱と蓄熱が減少するため、居室への天井・壁等の外周からの貫流熱量が減少され、その結果、居室内の冷房に要するエネルギー量を削減できる。」
上記手段は、室内の温度上昇を抑制し、冷房負荷の増大を抑える面では効果を現わす。しかし、この遮熱の手段は、建築的工夫による屋内の湿度調節並びに空気浄化機能を備えるに至っていない。又、遮熱された太陽熱エネルギーは顕熱の形でしか排熱されない。更に、熱反射箔は、季節に関係なく太陽熱を反射する。それで、太陽熱エネルギー利用の必要性の高い冬季に、熱反射により太陽熱エネルギーの利用を阻まれ、形を変えた熱損失を被る。
更に、冬季壁体内通気を利用したエネルギー変換の結果得られる輻射暖房効果を目的とする場合、熱反射箔によって昼間の日射による太陽熱エネルギーの取得を抑制すると、その効果に影響を及ぼす熱損失となりかねない。それで、熱反射箔を利用する遮熱の方法は好適ではない。
実用新案公報平5−38168号(特許文献1)二開示された中で、「二つの通気層を隔絶し、互いに気密・断熱を図りながら、夏と冬とで相反する性能を具備する手段」が提供された。
冬は、床下の換気口を閉じて気密性を高め、夏は、床下の換気口を開いて通風性を高め、冬と夏とで相反する性能を備えることが図られている。
それで、夏季に限れば、内側通気層は通気性を確保され、熱気・湿気は屋内に過剰には籠らない。更に、日射による熱気の一部は外側通気層を通じて屋外に排出される。ところが、顕熱による排熱の方法は一般にその目論見に反して効果を表わさない。それは、排熱しながらも、一方で躯体への加熱・蓄熱は避けられないからである。更に、湿気の過剰の籠りは避けられるものの、屋内の湿度を調節する機能を持たない。しかも、熱気・湿気は絶えず屋外から供給されるので、室内を除湿・冷房する負荷は増加する。それに対し、除湿・冷房を行なわなければ、不快指数の上昇を多少抑える効能を持つものの、快適な屋内環境を実現するほどの効能は現さない。
日本に昔から伝統的な工法として伝わっている土壁造りの建物は、土の吸放湿機能を活かし、土の含水率と相対湿度との関係並びに運動エネルギーの供給による相変化を伴う放湿の際に発生する気化熱によって、太陽熱の日射により建物の屋根・壁に蓄熱した結果発生する輻射熱を抑制するものである。夏季に限定すれば、放射冷却エネルギーを得られる範囲に限られるとはいえ、遮熱効果を得られる。
只、土壁は熱伝導率が高いので、断熱性の確保が難しい。又、乾燥するほどに日々割れが進み、気密性を確保するのは更に難しい。それで、建物の基本性能として重要な気密・断熱性能の内、特に気密性能の面で問題が大きい。
気密性能が低いと、湿気を多量に含む空気の浸入を阻止できず、土壁の吸湿機能のもたらす湿度調節の効果を好適に維持できない。更に、建物内の空気循環の流路の確保並びに流路内の流通の制御が困難である。それで、湿気の供給及び吸湿促進、並びに、冷却エネルギーの供給及び吸収促進を好適に制御できない。結局、地熱の供給による冷却エネルギーの利用が出来ず、相対湿度の変化及びH2Oの相変化による吸湿促進を図れない。吸湿及び液化の促進、並びに、吸湿とH2Oの相変化の連携の比率、更に、吸放湿の方向については、全ては自然の通風による風任せに終わり、それが、屋内環境改善の限界である。
夏季に吸放湿により温度上昇を抑える効果を現す半面で、冬季に吸放湿による熱損失を被る場合がある。その熱損失を阻止する為には、建物内の空気循環の流路の確保並びに流路内の流通の制御が必要である。しかし、好適に制御できず、熱損失は免れない。
ところで、特開平6−3000386号(特許文献1)に開示の通り、「水の蒸発する際に生じる気化熱を利用して、太陽熱の輻射熱による住宅の小屋裏内の温度上昇を抑え、それを室温上昇の抑制に繋げ、エアコンの冷房効果を高めることを目指す」小屋裏排熱方法が提供された。
前記発明は、「水分を吸収及び放出する吸放湿材を小屋裏に内装しておき、夜間に小屋裏をファンにより強制換気して、外気に含まれる水分を吸放湿材に吸収させ、昼間に、小屋裏をファンにより強制換気して吸放湿材に吸収させた水分を気化させ、水分の気化潜熱により小屋裏を冷却する」ことにある。
「要するに、水分の気化には多量の熱が必要であるから、気化潜熱による小屋裏の冷却能力は極めて高く、たとえ夏季であっても、太陽の日射による小屋裏の温度上昇を十分に抑制でき、室内の温度上昇を十分に抑制できる。」
その結果、初期の目的である室内でのエアコン使用に伴う省エネルギー効果は上げられる。概ね、10%程度の消費エネルギーの削減効果を示している。只、吸放湿材からの放湿が、液体状のH2Oの相変化によりもしくは気体状のH2Oの放出されたものかのいずれであるかによって、気化潜熱の効果で冷却能力を得られるか否かが定まる。そこら辺りが判然としていないのも難点である。
但し、吸放湿とH2Oの相変化との連携の下に、屋内の湿気を液化により吸収し、且つ、屋内で供給された冷却エネルギーを伝熱して、気化熱により太陽熱エネルギーを吸収し、湿気の形で排熱し、結果として、屋内の湿気を屋外に排出して除湿し、遮熱する機能を備えるに至っていない。
高気密・高断熱住宅に限らず、夏の高温・多湿の地域では、不快指数が高く、過ごしづらい。そこで、温度調節のみならず、一般的に除湿機・エアコンの除湿機能を用い、電気エネルギーを消費する形で室内空間の湿気を取り除いている。しかも、エアコンに依存して除湿する場合、冷房に比較して電気エネルギーの消費は多い。更に、除湿に伴い、水と凝縮熱を生成する。この凝縮熱は都会におけるヒートアイランド現象の一要因でもある。
さて、エアコンを用いた室内の温度調節の際は、室内に冷気を導入し、室内の熱気を屋外に排出する。この場合、室内に導入された冷気はいづれ屋外に排出され、先に排出された熱気と融合する。それで、排出した熱気の環境に及ぼす影響は中立的である。只、エアコンの稼動の為に消費するエネルギーの影響は残る。
湿度調節にエアコン等を用いると、空気中の湿気を液化する際に凝縮熱を生じる。つまり、室内の湿度調節を行なう際、エアコン等の稼動の為に電気エネルギーを消費するのみならず、水と凝縮熱を生成し、屋外に排出される。それで、周囲の環境に影響する。それは、社会問題化しているヒートアイランド現象を助長する要因となっている。結局、エアコンを利用する場合、湿度調節が温度調節よりも環境に及ぼす影響は大きい。それで、屋内の湿度調節に関し、部分的にしろエアコンの機能に代替できれば、環境負荷を軽減することができる。
壁体内空気循環システムを利用するにしても、春夏秋冬のスパンで見れば、夏の間は構造材・仕上げ材に用いる木材・土類の吸放湿材は湿気を吸収するのみである。しかも、含水率と平衡含水率と間の乖離はいずれ消滅し、吸湿余力は無くなる。冬の間は、吸放湿素材は湿気を放出する。それで、屋内の湿気の一部は壁体内空気循環システムによって建物外に放出される。
室内の除湿を行なうに当たり、一部は構造材・仕上げ材に用いる木材・土類の吸放湿野季節的変動を利用して建物外に放出されるにしろ、大部分は除湿機・エアコンの除湿機能により、電気エネルギーを消費して行なわれる。その際、生成される凝縮熱の排出は避けられない。
最近の高気密・高断熱住宅は24時間換気システムが必需品である。そして、換気の際に湿気の除去を行なう機能を備える全熱交換式換気扇を用いられる。それは、外気を取り入れる際に熱交換を行い、それと同時に湿気の除去を行なうものである。只、排気・給気の単純な換気に比較すれば、エネルギー消費は増加する。しかも、全熱交換式換気扇は、温暖・湿潤地においてそれだけで温湿度に関し、好適な室内環境を作り出せるほどの性能を備えていない。そして、必要不可欠の換気機能に湿度調節の機能を促進する効果が現れる程のシステムの向上に至っているわけでもない。
壁体内二重通気システムが開発され、そのシステムを利用した様々な方法が開発・提案されてきた。一つの方向として、内側の通気層(インナーサーキット)を空気の通気手段としてのみでなく、 (イ) 換気システムの一部を構成し、(ロ) エネルギー供給上の流路並びに流通を確保し、(ハ) エネルギー移転並びにエネルギー変換の機構の一部として活用される。建築的工夫に依存して建物の働きを高める代表的なものである。
特許第2905417号公報(特許文献1) に開示の通り、屋内外の換気の手段を冬季の暖房システムと一体化しながら運用する方法が提供された。具体的には、「空気循環建物は床下全体を建物全体で共通の空気の流通空間とし、この床下空間から空気を上昇させるようにして壁体の内側及び各室内内に空気を流通させる。」そして、「内壁部に設けた開口部は室内内にエアーを流入させるためのもの」と。
ところで、この記載の通り、天井裏空間は空気の流通空間を構成していない。それは、以下の様な事情による。夏季の太陽の日射により取得される熱エネルギーの天井裏の断熱材への蓄熱の結果生じる輻射熱の天井裏空間への影響により、床下空間から流通する冷気を天井裏空間まで維持・流通するのが難しいという事情があるからである。あるいは、普通に換気機能のみを期待する場合、流通する空気は、天井裏空間を経由する過程で先の輻射熱の影響を受けて暖められ、それが室内に流入し、室内の温熱環境の悪化を招くからである。更に、開発された地域の気候特性から、夏季に求められる効果よりも、冬季に求められる効果の方が重要視されたからである。
それは、結局、前記空気循環建物は換気の手段を冬季の暖房時のエネルギー移動・エネルギー移転と連携して効果を上げることを目指すものであって、夏季の冷房時に効率的にエネルギー移動を行なうことに効果を上げることを目指すものではないからである。しかしながら、夏季の対策が全く不要であるわけではない。本来、壁体内を利用した空気循環システムは天井裏空間を含めて空気の流路として活用するものである。しかし、夏季の効率を考慮すると、天井裏空間での太陽熱エネルギーの影響を軽減することは重要である。それで、軽減する為の妥協の産物ではあるが、天井裏空間を流通空間から除外する手段として、空気が室内空間へ流入するための開口部の設置場所は天井部を除外し、内壁部が選択された。それで、床下空間から壁体の内側通気層及び室内空間に至る空気の流路を形成し、天井裏空間を経由した場合に比較しての熱損失を軽減しようとするものである。
以上を裏付ける様に、文献の図1では、内側通気層と天井裏空間は連通していない。特許請求の範囲並びに発明の詳細な説明の項目に具体的な記述は無いものの、図1の表記では、内側通気層と天井裏空間との間を隔てる壁が設けられている。この壁によって、内側通気層と天井裏空間との間の空気の流通は阻止されている。
ところで、これまでの空気循環の方法では、夏季にどの様な流路を選択するにしろ、太陽熱エネルギーの蓄熱の結果である輻射熱のもたらす熱損失を避けられない。それは、熱損失を小さくするために、天井裏空間への流通を避けたとしても同様で、壁体を通じた熱損失は避けられないのである。しかも、開発された信州の地に比較して、温暖な地域では夏季の熱損失は更に大きくなり、夏季のエネルギー移動の手段の側面から見れば、上記空気循環の方法は不適である。更に、常温の空気を送るにしろ、冷気を送るにしろ、室内の温熱環境を良好に保つ上では不適である。
湿度調節に関しては、壁体内二重通気システムと全熱交換式換気扇との連携による除湿効果を狙っている。先に説明したように、全熱交換式換気扇は温湿度調節に関して好適な環境を実現できる能力を備えていない。そして、前記空気循環建物は温湿度調節に関して、全熱交換式換気扇の備える性能以上の性能を備えるに至っていない。
それを具体的に述べると、文献番号3で開示された技術とエアサイクルの技術の流れで、壁体に二重通気層を備え、内側の通気層は空気を流通している。只、内側の通気層は換気のための空気の流路に活用されるものの、気密断熱層によって隔絶される外側の通気層との間に、その繋がりを断たれる工夫が重視され、その二つの通気層の間に補完的連携を創出・活用する発想・工夫は見出されない。
結局、温暖・湿潤の地域では大半をエアコンの除湿・冷房の機能に依存しなければ、昼夜を問わず、夏季の好適な屋内環境を実現できない。
ところで、夏季の輻射冷房効果の実現を目的に、天井裏空間にエアコンを設置し、そこから冷却エネルギーを放出しても、冷却エネルギーの円滑な循環を図れない。それは、先に説明した太陽熱エネルギーのもたらす熱損失に加えて、空気の循環流路内での気圧差が阻害要因となっている。
そこで、特開2003−120957号(特許文献1)に開示されたように、床下空間の空気圧を負圧に保つことによって、2階天井裏に設置されたエアコンから放出された冷気が壁体内空間を下降し、建物全体を循環できるようにしたものである。この技術によれば、冷房時に建物内の空気の循環を好適に確保できるので、十分な冷却エネルギーを供給できれば、寒冷地では身体に優しい輻射冷房を利用することができる。
これは、冷房時の空気の循環を円滑に行なえるという観点では意義あるものであるが、それだけで、直ちに冷房効果が上がるわけではない。温暖地で冷房効果を上げられるには、太陽熱の蓄積の結果生じる輻射熱を抑えるために断熱材を冷やさざるを得ず、結局、社会的に電気使用量の多い夏季の昼間に大量の電気を消費し、大量に冷却エネルギーを供給せざるを得ない。又、床下空間と天井裏空間との気圧差を作り出すにも、送風ファンの駆動エネルギーを消費する。結局、 温暖・湿潤の地域で、太陽熱エネルギーの蓄熱の結果断熱材内で生じる輻射熱を抑制して、省エネルギーあるいは昼間の電力使用量の抑制を実現しながら、冷房の効果を効率的に得られる迄には至っていない。
更に、高気密・高断熱住宅に必要不可欠の換気の機能を備えていないので、別系統にしろ何らかの方法による換気の手段が必要になる。更に遡及すれば、送風ファンを用いて気圧差を作り出さないと、大量のエネルギー供給を円滑に行なうことができない。しかも、大量のエネルギー供給の為にエアコンを用いると、冷媒による冷却のために電気エネルギーを消費し、更に、屋外機を通じた排熱は昼間に集中するので、社会問題化しているヒートアイランド化を助長するものとなる。
その上、除湿に関してはエアコンの機能に全面的に依存するので、除湿の結果生成される凝縮熱の屋外への排出によるエネルギーの放出・移転は避けられない。それは、一層のヒートアイランド化を助長するものである。
何れも、日本国内の地理的条件で言えば、寒冷地に属する地域での発明であり、その地域特有の気候の下では有効なものである。気候的特性から、断熱気密は、寒さ対策に重点をおいた温度管理の重要な手段であった。
冬季に限れば、寒冷地に限らず、温暖な地域でも最良の選択である。しかし、夏季に限れば、それだけでは温度管理は十分ではなく、特に温暖な地域では、夏の強い日差しが直接照射される屋根、外壁の南面・東面・西面は日中の温度は60℃〜70℃に達し、その熱気をエネルギー源とする壁体等に発生する輻射熱は室内の温熱環境に多大の影響を及ぼしてきた。
何れにせよ、冬季に求められる断熱性能の高さ(熱貫流率の低さ)が逆に夏季には断熱材内における蓄熱効果を生み、輻射熱という厄介な存在を生み出す。それで、夏季の輻射熱対策は重要であるが、上記の発明では何れも、この輻射熱に対する対策は施されていない。その上好適な湿度調節並びに空気浄化の機能をも備えていない。
以上のごとく、IV・V地域の所謂高温・多湿の地域においては、夏季の湿気・猛暑対策が格別に重要である。夏に比較的に過ごしやすい北海道・信州とは比較できないほど重要である。
先の二つの発明では、壁体内は、通気と換気の機能を兼ね、エネルギーの流路並びに流通を担い、更に、エネルギー移動並びに変換の機構を担うことで、特色ある機能を備えるに至った。
ところが、実用新案公報平5−38168号[特許文献1]二開示された様に、「断熱材の使用は、気密・断熱を図る上で目的とする二つの通気層の隔絶性を確保できるものとして使用された。それは冬季に特徴的な結露を防止するには、その源である湿気の侵入を阻止する」と言う意識を視野に考案されたものである。
以後、壁体内二重通気システムを採用した高気密・高断熱住宅は、結露防止というその発想の呪縛から逃れられずに今日に至っている。それで、吸放湿性が無く、透湿抵抗が高い、気密断熱性能の高い合成樹脂系のボード状の断熱材が暗黙の内に広く用いられてきた。
ところで、高気密・高断熱住宅の開発された寒冷地では、断熱性能の高さのもたらす寒さ対策が優先される地域の気候特性もあり、断熱性能の低下並びに結露の発生に対するリスクを侵してまで、吸放湿性を備える断熱材を使用する必要性が乏しいのが実情である。
それにも拘らず、そのリスクを抑えて、吸放湿性を備える断熱材を採用するメリットをもたらす要因の一つは「強制的に潜熱式の排熱」を行い、屋内での湿気の滞留による吸放湿材の含水率の上昇を抑制できる可能性を孕むところにある。その可能性とは、H2Oに屋内で液化に必要な冷却エネルギーを供給し、相変化を媒介する断熱材を経由すると、日射取得する太陽熱エネルギーをH2Oの気化によって吸収し、その際湿気という潜熱の形に閉じ込めて屋外に排熱することが出来る。結局、太陽熱を顕熱から潜熱の形に閉じ込めながら、屋内の湿気を屋外へ排出する手段を提供できる。(以後、気密断熱層で隔絶された内側を屋内、外側を屋外と称す)
只、その可能性は、昔から日本の住宅を蝕んできた「結露」を活用するところに開けてくる。そこが、現実の住宅の性能・耐久性の問題に止まらず、人間の意識の上で克服すべき課題を提供している。
ところで、高気密・高断熱住宅ではないが、断熱材に吸放湿性の素材を用いることで、屋内に滞留する湿気・熱気を屋外に排出し、結露を防止する手段を特許第2585458号(特許文献1)において提供された。
請求項1に「建築物の壁体内に断熱層と壁体内の湿気を通す透湿性防水・防風層を組み合わせた構成よりなる透湿性断熱層を設け、・・・・床下に公知の開閉式換気口を設け、・・・・小屋裏換気口より排出せしめたり・・・・湿気と熱気とを排出せしめ、・・・・」の記載の通り、床下換気口より風を取り入れて流通させるので、屋内に滞留し易い熱気を排出することに関しては効果を望める。しかし、湿気に関しては床下換気口を通じて絶えず屋外から新たに供給され、しかも、気密性能が高いわけではないので、何処からでも湿気は浸入してくる。それで、屋内に滞留し易い湿気を風の流通によって透湿性の断熱層を経由しながら屋外に排出する効果は見込めるものの、湿度に関して室内環境の改善効果を表わすほどではない。
快適な室内の温湿度環境を求める人にとっては、湿度に限っても十分とは言えず、エアコン等の機器の除湿機能に頼らざるを得ない。その際、気密性の確保されていない部分に加えて、透湿性の断熱層を通じ屋外から屋内への湿気の浸入(逆流)は増加し、除湿による凝縮熱生成の増加に繋がり、ヒートアイランド化を助長する。それで、透湿性の断熱層を設ける利点は見出せない。あるいは、エアコン等の機器に頼らないことを前提にしているのであれば、それが実現できる温湿度環境は自然志向の人でも大きな我慢を強いられざるを得ない。
しかも、東西南北の壁体は、吸放湿性を具備する断熱材を用いる場合、太陽熱エネルギーを直接日射取得できるか否かで、その影響は大きく異なる。日射取得できれば、放湿を促し、断熱材は含水率を下げることが出来る。日射取得できなければ、湿気を呼び込む形で吸湿を促し、含水率は高止まりする。結局、含水率管理を好適に行い、高いレベルで躯体の健康と快適な住環境の実現を両立するまでに至らない。
更に、熱気の排出に当たり、透湿性の断熱層の媒介による相変化が見られず、湿気という潜熱の形に閉じ込める機能が見られない。即ち、熱気は顕熱の形で通気層を通じて排出されるに止まる
只、壁内に滞留する湿気の吸放湿性の断熱材を経た排出は、壁体内での結露の発生を阻止するという課題に答えるもので、重要である。しかし、湿気は結露防止の為に除去すべき対象ではあるが、湿気の内包するエネルギーを利用して、断熱材の媒介するH2Oの相変化との連携のもと屋内からのエネルギー移動を実現し、太陽熱エネルギ―の潜熱化を図るところまでは想定されていない。
実用新案出願公開昭63−58103号(特許文献1)において、室内の除湿方法が提供された。
「建物の天井及び壁の少なくとも一方に設けた内装材を通気性とし、この内装材の室外面に吸放湿材を設けたので、居室内の水分を含んだ空気は、内装材を通過して吸放湿材に水分を吸収される。この吸放湿材に風を触れさせる通風路を形成した通風路形成材を設けたので、吸放湿材の水分は通風路内に蒸発していく。この様に、居室内の空気に含まれている水分を居室外に出すことが出来るので、居室内を常に低湿度の状態に保てる。又、内装材の室内面に結露が発生するのも防止できる。」とするものである。
要点は、室内空間の湿気を吸放湿材に吸収し、室外側の通風路に放湿し、室内の湿気を除去し、低湿度の状態を保つと伴に、結露の発生を防止するものである。この点は、前項の文献の内容と同様の課題・効果である。更に、エネルギー移転の利用に関しても、湿気の内包するエネルギーを利用して、断熱材の媒介するH2Oの相変化との連携の下エネルギー移動を実現し、太陽熱エネルギ―の潜熱化を図るところまでは想定されていない。つまり、空気中の湿気は湿気として吸放湿材を透過し、湿気として放出されるに止まり、相変化の際のエネルギー移転を利用して、断熱性に背反する伝熱性を創出し、屋内からの冷却エネルギーの供給を太陽熱エネルギーの吸収に繋げて、除湿・遮熱の効果を実現するまでには至らない。前二者ともに、吸放湿速度は吸湿が放湿に比べて優れているので、太陽熱を直射により獲得できない「北面の断熱材の含水率は高止まり」する。更に、吸放湿材の吸放湿性を利用して、湿気を除去し、結露を防止することが課題となっているように、「結露」は避けるべきものとして強く意識されている。
前記の小屋裏排熱方法は、H2Oの相変化によって太陽熱エネルギーを吸収・潜熱化するというこれまでに無い発想に基づくものであり、多様な可能性を内包するものである。
只、発明の発想に「室内の湿度調節という意識が希薄であった」のと「断熱材は気密性と断熱性の面で隔絶するものという過去の呪縛」によって、屋内の湿気を建物外へ排出し、又、屋内で供給された冷気を伝熱し、屋内の除湿効果と遮熱効果を同時に実現できる機能を備えるに至らなかった。
更に付言すれば、H2Oの相変化に伴うエネルギー移転に対する「認識」の違いから来るものである。即ち、H2Oの相変化によって、熱の移転が伴うのであり、相変化を伴わない吸放湿は熱エネルギー移転を伴わない。しかも、吸放湿性を具備する断熱材が湿気を吸収した後に、湿気の状態を保つのか、あるいは、液化した水の状態を保つのかという認識も重要である。断熱材に湿気の状態で保持され、断熱材から湿気として放出されても、エネルギー移転は生じない。その場合、冷却効果は現れない。
冷却効果の現れるエネルギー移転を生じるには、液化の相変化を経ることが必要である。そこで、相変化を促進する上でも、液化の際に生じる凝縮熱の処理の問題が出てくる。
具体的に言及すると、ファンによる強制換気により、小屋裏空間からの吸湿は効率的に行われても、天井裏空間からの断熱材を通じた吸湿の効率を高めることに繋がっていない。しかも、屋内からの冷却エネルギー供給を通じ吸湿の際に吸冷する潜熱的蓄冷は、湿気の伝導性を利用して断熱性に背反する伝熱性の創出に繋っていない。これは、断熱材は気密断熱性能によって、それを境に隔てられた通気層相互間を断絶するものであるという過去の呪縛からくるものである。
更に、吸湿し相変化する際に生成される凝縮熱に対する対策が考慮されていない。
二つの通気層の補完関係を確保し・機能せしめるには、湿気の吸収を促す要因としての吸放湿材の平衡含水率と含水率の兼ね合い、そこからくる通気層内の相対湿度との関係をH2Oの相変化「液化・気化」によるエネルギー移転の枠内で十分に把握しなければならない。
しかし、その把握が十分でないままに、吸湿し相変化する際に生じる凝縮熱は、知らない内に結果として、放射冷却により温度低下した外気によって冷却され、相対湿度の上昇と相まって、湿気の吸収余力が生じてくる。それで、昼間の太陽熱により生じる輻射熱を抑制する為に必要な水分の補給は行われ、水の水蒸気に相変化する際に奪われる気化熱によって室温の上昇は抑えられ、不十分ながら、初期の目的・効果は得られる。
以上を裏付けるごとく、吸放湿材が湿気を吸収し、相変化する際に生ずる凝縮熱について並びにその対策について言及している文面は見当たらない。凝縮熱についての認識が十分でなければ、冷却エネルギーを活用した湿気の吸収促進並びに「液化の促進」という発想は出てこない。更に、屋内から供給・吸収される冷却エネルギーを、背反する伝熱性と断熱性を止揚して、屋外側から日射取得する太陽熱エネルギーを吸収し、屋外へ湿気の形での排熱に利用する発想は出てこない。
只、液化は所謂結露と同義語であり、日本の気候の特性に由来する結露に対する忌避・嫌悪からすれば、液化を作用として利用することが無意識の内に避けられたのは当然である。
更に、前記記載でも露呈しているけれども、「水」と言う言葉で気体状のH2Oと液体状のH2Oは混同して用いられている。これに限らず、これまでの技術では大半が混同したまま、あるいは明確に区別されずに論じられている。そして、何処からか生成・供給された液体状のH2Oは、蒸発する際に周囲から奪われる気化熱の利用に繋げられる。いずれにしろ、気体状のH2Oと液体状のH2Oとの区別を明確に出来ない段階では、屋内からの冷気供給を通じた液化及び屋外からの運動エネルギー取得を通じた気化を経たH2Oの相変化に伴うエネルギー移転を、背反する断熱性と伝熱性を止揚したエネルギー移動に利用する発想には至らない。
従来、湿気・化学物質等は珪藻土等の壁等の仕上げ材の機能を活かして、吸湿し、吸着させることで、室内の空気環境を良好に保つ工夫がされてきた。只、無限に吸収できるものではなく、更に、壁等が吸収したものの一部は再び居室に放出され、室内の空気は汚染されるので、必ずしも空気浄化に繋がらない。
国内の電力需給の現状について。発電の面では、そのエネルギーを原子力に依存する割合が高まっている。原子力に発電のエネルギーを依存するメリットとしては、化石エネルギーを燃焼する際に発生する二酸化炭素の抑制に繋がることである。それで、地域によっては、その割合は50%を超えている。
需給面では、民需全般に一日の内での使用量に偏りがある。又、季節的な要因によって、一日の内での電力消費量の偏りは一層大きくなる。具体的には、夏季の冷房・除湿の必要な時期・時間帯に消費量は増加する。
以上の様な事情により、昼間に比較すると夜間の時間帯に、発電に必要なエネルギーは余剰となっている。それで、余剰のエネルギーの利用を促進する為の工夫として、多額の費用を要する揚水発電所を設置し、電力の再利用が図られている。結局、消費量の少ない深夜電力の使用を促すことは、社会的レベルで見れば、電力消費の平準化に繋がるのみならず、余剰のエネルギーの効率的利用に繋がる。
建物の空調システムにおける深夜電力の利用は、冬季の暖房に関しては多様な手段が提供されており、実用化されている。ところが、夏季の冷房・除湿に関しては氷蓄冷システム以外に特段の手段は提供されていない。
氷蓄冷システムは住宅への普及は進んでいない。それは、費用対効果の面で実用性に乏しいし、又、除湿の手段を別途必要とするという事情が重なっている。更に、氷蓄冷システムを冬季の暖房システムに応用することは難しく、夏と冬とで別個の空調設備を必要とする難点を抱えている。
ところで、深夜電力の利用料金は、季節別時間帯別契約の普及により、夏季の昼間の利用については超割高に設定されて、深夜に比較して粗5倍に達する。それで、この発明により深夜電力の利用を主体に夏季の温湿度調節を図ることが出来れば、家計の面でも大きな貢献をもたらす。
湿度調節に関しては、特開平8−193744号(特許文献1)において、深夜電力を利用する室内の湿度調節方法が提供された。
それは、深夜電力を利用できる時間帯に、設定湿度50%で除湿装置を稼動し、経済モードでは、昼間は設定湿度90%に達すると除湿装置は再稼動し、快適モードでは、昼間は設定湿度70%に室内の湿度が達すると除湿装置は再稼動する。
上記方法では、経済モードでは昼間の電気使用は避けられ、当初の深夜電力利用の目的は達成される。しかし、湿度90%では過ごしづらい。それに対して、快適モードでは、湿度70%を保持されるので過ごしやすいが、昼間に頻繁に除湿装置を稼動することとなり、深夜電力利用で経済的に快適な室内湿度を達成することが出来ない。
凝固・融解の相変化による潜熱式蓄熱の方法は、熱伝導の効率・熱損失の抑制等を考慮して床暖房のエネルギー供給手段として実用化されている。それは、深夜電力を利用して蓄熱し、昼間の通電しない時間帯に放熱し、暖房のエネルギーに利用するものである。社会的に余剰のエネルギーを安価に有効活用できる点では、社会的にも個人的にもメリットは大きい。
只、これまでの利用の方法では、エネルギー消費効率は良くない。それは、潜熱式の採用で蓄熱容量は増大するものの、空調システムとしてのエネルギー消費効率を向上させる意図・手段の構成に繋がっていないからである。
更に、夏季の冷房・除湿に必要な冷却エネルギーの安定した供給を深夜電力から確保する手段のシステム的構成は未だ提供されていない。又、氷蓄冷システムとの比較で言及すると、冷房の効果は得られるものの、本発明の除湿効果および遮熱効果による二重の意味でのヒートアイランド化抑制効果には及ばない。結局、エアコン・蓄熱体のいずれも、単なる「置換」によっては、際立って優れた効果・異質の効果を奏することは出来ない。
特許第3251000号公報 特開2003−328464号 実用新案公報平5−38168号 特開平6−3000386号 特許第2905417号公報 特開2003−120957号 特許第2585458号公報 実用新案出願公開昭63−58103号 特開平8−193744号
季節間の地域の気候特性を加味しながら、風土の特徴を取り入れて空調システムの一部とする自然志向の空調システムから、設備機器を効率的に利用しながら環境と共生する形で輻射冷房・輻射暖房の効果を実現できる空調システムまで、住む人の好みに応じて多様な空調システムを選択できる、換気機能を備えた高気密・高断熱住宅を提供できることを課題とする。
各請求項の構成要素の課題を記すと。
1 夏季の含水率管理と冬季の結露防止及び熱損失の防止を両立。
2 含水率管理に日射取得する太陽熱エネルギーを活用。
3 夏季の遮熱機能の向上と冬季の断熱性能の向上を両立。具体的には、断熱材の属性である熱貫流率の数値以上の断熱性能を実現する。
4 気密断熱層を通じた冬季の熱損失を軽減。
5 含水率管理と屋内からの冷却エネルギー吸収の効率向上を両立。
6 含水率管理と屋内の除湿及びH2O移動の効率向上を両立。
7 昼間の遮熱及び夜間の除湿に必要な冷却エネルギー源に深夜電力を利用し、ランニングコストの低減及び省エネルギー効果を実現。
8 含水率管理と安価なエネルギーの安定供給を両立し、更に、夏季の輻射冷房効果及び冬季の輻射暖房効果を、エネルギー消費効率を高めて実現。
気密断熱層を境に隔絶した二つの空間相互間で断熱性を保持しながら、必要なエネルギー移動を円滑に行うことを課題とする。具体的には、断熱性と伝熱性という背反的性能を、吸放湿機能とH2Oの相変化「液化・気化」に伴うエネルギー移転との連携を活用することで止揚し、太陽熱エネルギーを遮熱する手段を提供することを課題とする。更に、吸湿に伴う含水率の上昇を抑えながら、遮熱に利用できるエネルギー移動の量を増加することを課題とする。
前記高気密・高断熱住宅の気密断熱層において、屋根・壁に日射取得され・蓄熱される太陽熱エネルギーを、地熱・放射冷却をエネルギー源とするH2Oの液化・気化の相変化によって吸収し、湿気という潜熱の形で屋外へ排熱し、更に、太陽熱エネルギーによって生じる内外の相対湿度の高低差並びに気密断熱層の平衡含水率と含水率との乖離を利用して屋内の湿気を屋外へ排出し、気密断熱層との間の湿気・冷気のやり取りを制御「促進・抑制」することで屋内の空気環境を改善することを課題とする。
更に、建築的工夫を通じ断熱材の属性である湿気伝導率を超えて湿気移動の効率を高め、屋内側での吸湿・吸冷野効率向上と呼応して、含水率上昇を抑制しながら除湿・遮熱の効率向上を実現することを課題とする。
前項に記載の湿気・冷気のやり取りの制御・促進にCOPの高いエアコンの供給する冷エネルギーを利用し、且、深夜電力主体で昼間の電気使用量を抑制しながら、遮熱・除湿効果及びエアコンの生成する凝縮熱削減効果と併せてヒートアイランド化抑制効果を上げ、その上で、顕熱的蓄冷の効果でエネルギー変換に繋げ、輻射冷房効果を実現する。更に、深夜電力に限定してランニングコストを軽減しながら、輻射冷房効果を24時間・安定的に実現することを課題とする。
梅雨時の太陽の日射取得を得られない時期、エアコンの除湿機能の稼動は深夜電力の利用できる時間帯に限定し、自然志向の人にとってあるいは快適志向の人にとって、昼夜を問わず所要の室内湿度を保持することを課題とする。
夏季における気密断熱層の除湿・遮熱機能を利用した高効率の輻射冷房システムを実現するに当たり、冬季に期待される輻射暖房効果の効率的実現を見据えたリスク管理をバランスよく行なうことを課題とする。
先の課題を解決する手段として、本発明は次の構成を行なう。

第一に、建物を囲む気密断熱層を境に、建物外と密閉状態のもと、前記建物の床下空間と内側通気層と天井裏空間とを連通し、前記内側通気層もしくは天井裏空間の何れかと室内空間とを連通口により連通し、前記建物の室内側から、壁仕上げ材、内側通気層、壁下地材、気密断熱層、外壁下地材、外側通気層、外壁で構成され、前記建物の屋根棟下空間と屋根通気層とを連通し、屋根棟下空間の上端は棟換気口を通じて常時外気に開放され、屋根通気層の下端は常時外気に開放され、前記建物の小屋裏空間と外側通気層とを連通し、小屋裏空間の上端は開閉式の通気口により屋根棟下空間に連通し、外側通気層の下端は外気に開放され、前記建物の室内側から、天井仕上げ材、天井裏空間、天井下地材、気密断熱層、小屋裏空間、断熱層、屋根下地材、屋根棟下空間及び屋根通気層、屋根材で構成され、前記気密断熱層は吸放湿性を具備する断熱材を用い、前記気密断熱層の内、全ての気密断熱層は、H2Oの相変化(液化・気化)を媒介する断熱材の吸放湿機能により吸湿・吸冷し、30℃の常温で気化・蒸発し、屋外に排出し、その上、北側の壁体を除いた気密断熱層は、高温・湿潤の季節に日射される太陽熱エネルギーを吸収し、湿気という潜熱の形に閉じ込めて屋外に排出し、前記小屋裏空間の上端は、送風ファンと連通管とから構成される送風設備に連結する屋根棟下換気口を通じて外気に開放され、前記建物外と室内空間とを排気用連通管により連通し、前記建物外と床下空間とを給気用連通管により連通し、前記排気用連通管及び給気用連通管は送風機能を具備する全熱交換式換気扇に連通し、前記排気用連通管の一端を便所・浴室・押入を含む各居室に連結して建物外に排気し、前記給気用連通管を通じて外気を取り入れ、床下空間・内側通気層・天井裏空間を経由する中で前記気密断熱層は建物内の湿気・汚染物質及び有害な揮発性の化学物質を吸収し、外側通気層、小屋裏空間を経て建物外に排出し、居室空間の空気環境(酸素濃度、温度、湿度、揮発性の化学物質濃度)を好適に保つことを特徴とする屋内環境改善建物。
第二の構成は、前記気密断熱層の内、北側の壁体の気密断熱層は吸放湿性を具備せず透湿抵抗値の大きい断熱材を用い、東・西・南側の壁体の気密断熱層並びに天井裏空間と小屋裏空間とを隔てる気密断熱層は、吸放湿性を具備する断熱材を用い、前記気密断熱層の内、北側の壁体を除いた気密断熱層は、H2Oの相変化(液化・気化)を媒介する断熱材の吸放湿機能により吸湿・吸冷し、30℃の常温で気化・蒸発し、屋外に排出し、その上、高温・湿潤の季節に日射される太陽熱エネルギーを吸収し、湿気という潜熱の形に閉じ込めて屋外に排出することを特徴とする請求項1 に記載の屋内環境改善建物。
第三の構成は、前記気密断熱層の内、壁体の気密断熱層は吸放湿性を具備せず透湿抵抗値の大きい断熱材を用い、天井裏空間と小屋裏空間とを隔てる気密断熱層は、吸放湿性を具備する断熱材を用い、前記気密断熱層の内、天井裏空間と小屋裏空間とを隔てる気密断熱層は、H2Oの相変化(液化・気化)を媒介する断熱材の吸放湿機能により吸湿・吸冷し、30℃の常温で気化・蒸発し、屋外に排出し、その上、高温・湿潤の季節に日射される太陽熱エネルギーを吸収し、湿気という潜熱の形に閉じ込めて屋外に排出することを特徴とする請求項1に記載の屋内環境改善建物。
第四の構成は、前記壁体の気密断熱層の内、東・西・南側の壁体の気密断熱層は、屋内側から吸放湿性を具備しない断熱材と透湿防風防水シートと吸放湿性を具備する断熱材との三層構造により構成することを特徴とする請求項2に記載の屋内環境改善建物。
第五の構成は、前記気密断熱層の内、壁体の気密断熱層は、吸放湿性を具備する断熱材と透湿防風防水シートと吸放湿性を具備する断熱材との三層構造により構成し、冬季に液化の際に生成する凝縮熱により屋外からの夜間の冷気を吸収することを特徴とする請求項1に記載の屋内環境改善建物。
第六の構成は、前記東・西・南側の壁体の気密断熱層は、吸放湿性を具備する断熱材と透湿防風防水シートと吸放湿性を具備する断熱材との三層構造により構成し、冬季に液化の際に生成する凝縮熱により屋外からの夜間の冷気を吸収することを特徴とする請求項2に記載の屋内環境改善建物。
第七の構成は、前記の送風ファンは夏季の昼間に限定して稼動し、日没後は稼動しないことを特徴とする請求項1又は2又3又は5に記載の屋内環境改善建物。
第八の構成は、前記の送風ファンは夏季の昼間に限定して稼動し、日没後は稼動しないことを特徴とする請求項4又は6に記載の屋内環境改善建物。
第九の構成は、土間コンクリートの下部に断熱材を敷き置きすることを特徴とする請求項7又は8に記載の屋内環境改善建物。
第十の構成は、前記内側通気層もしくは天井裏空間の何れかと室内空間とを開閉可能な連通口により連通し、連通する前記床下空間と内側通気層と天井裏空間の間に形成される空気の流路を夏と冬で変更することを特徴とする請求項7又は9に記載の屋内環境改善建物。
第十一の構成は、連通する前記床下空間・内側通気層・天井裏空間で構成する流路内に、高効率のヒートポンプ式空気調和機(エアコン)を設置することを特徴とする請求項10に記載の屋内環境改善建物。
エアコンを複数設置する場合は、床下空間と天井裏空間にそれぞれ設置して利用する。冷気の循環の効率の上で、好適である。
一台のエアコンで賄う場合は、床下空間に設置する。
第十二の構成は、前記の吸放湿性を具備する断熱材に、屋内からの吸湿の際の冷却エネルギー吸収の効率化により液化を促し、H2Oの液体の状態で吸収できる断熱材を用いることを特徴とする請求項11に記載の屋内環境改善建物。
第十三の構成は、連通する前記床下空間・内側通気層・天井裏空間で構成する流路内に、温度域21℃から23℃を中心に凝固・融解の相変化する蓄熱材から構成される蓄熱体を備え、前記エアコンの駆動エネルギーを深夜の時間帯に限定して利用できることを特徴とする請求項11又は12に記載の屋内環境改善建物。
蓄熱体を構成し、相変化を生じる蓄熱材としては、塩化カルシュウム6水塩、硫酸ナトリュウム10水塩等が知られている。
前記の蓄熱材は、融解温度以上の温度で液状になるので、伝熱性の密閉容器に封じ込めて蓄熱体を構成する。
蓄熱体は、エアコンから放出される対流エネルギーからエネルギーの供給を受けるので、エアコンを設置する床下空間、天井裏空間に設置するのが望ましい。又、設置する際に蓄熱体の上下に隙間を確保する。
深夜の時間帯は、各電力会社との契約内容によって変わる。普及している時間帯は、夜の22時から翌朝8時まで利用できる内容である。又、夏季の昼間の時間帯の料金は割高に設定されている。深夜料金との比較では概ね5倍に達する。
壁下地材は、柱・土台・桁・間柱の構造材から構成され、壁仕上げ材及び気密断熱層によって内側通気層を構成する。壁仕上げ材は両面ともに吸放湿性を備える杉板・檜板もしくはプラスターボード下地に珪藻土塗り仕上げ・プラスターボード下地に紙クロス等を用いる。
気密断熱層は、断熱材の一部を柱と柱との間に配置し、残りの部分を柱の外側に配置し、断熱材相互の繋ぎ目は気密テープを用いて気密を確保する。断熱材を柱の内外の位置に配分すると、外壁の荷重を支えるのに好適である。もしくは、断熱性能と外壁の加重の支えを両立できれば、柱の外側のみに配置することも出来る。
気密断熱層を二層構造とする場合、一層目の断熱材は柱と柱との間に配置し、断熱材と柱・土台・桁との間は気密テープを用いて気密を確保する。その上、透湿防風防水シートで全体を囲み、気密性の向上を図る。最後に、二層目の断熱材を柱の外側に配置する。更に、二層目の断熱材相互の繋ぎ目を気密テープで塞ぐ。二層目の断熱材は、一層目の気密シートを外からの暑さ・寒さから保護する役割を果たし、耐久性を増すことで、長期間の性能の維持に貢献する。
外壁下地材は竪胴縁からなり、気密断熱層及び外壁によって外側通気層を構成する。
天井下地材は、桁・梁等の構造材から構成され、天井仕上げ材及び気密断熱層によって天井裏空間を構成する。天井仕上げ材は両面とも吸放湿性を備える桐板等の自然素材もしくは同様の吸放湿性を備える素材を用いる。
基礎部分は、その立ち上がり部分は断熱材を用いて断熱処理をおこなう。
エネルギー源として地熱を利用する場合、土間コンクリート部分は断熱処理を行わず、コンクリートを通じた伝熱の効率を上げる。
地熱を利用しない場合、土間コンクリートの下部に断熱材を敷き置きする。床下空間から地中への伝熱による熱損失を防ぐことが出来る。寒冷地における、冬季の輻射暖房効果を上げるのに効果を表す。
気密断熱層には、湿気を吸収し、放出する吸放湿機能を具備し、十分な断熱・気密性能を有する断熱材を用いる。
吸放湿機能を具備し、十分な断熱・気密性能を有する断熱材は、太陽熱エネルギーから気化に必要な運動エネルギーを獲得するのに有効な建物の南面・東面・西面の壁体の気密断熱層、並びに、天井裏空間と小屋裏空間とを隔てる気密断熱層に限定して用いる。該断熱材は、昼間は外側通気層・小屋裏空間を通じて排出するので、含水率を下げる要因を自ら抱えています。
気密断熱層は太陽熱エネルギーから直接運動エネルギーを得て気化を促せないと、元々遮熱の効果を得ることは出来ない。又、高温・多湿の時期に放湿により含水率低下を促すことも難しい。むしろ逆に、含水率は高止まりしてしまう。それで、太陽熱エネルギーを日射取得できない北面の壁体の断熱材に関しては、昼間ですら含水率を低下させる効果を多く見込めない。その結果、北側の壁体の断熱材は、結露を「作用」として活用するメリットの小さい反面、結露のもたらす弊害は現れ易いこととなる。以上の様な事情を考慮した上で、北面の壁体には吸放湿性を具備せず、透湿抵抗値の大きい断熱材を用いて気密断熱層を構成する。一方、それによって吸放湿性を具備する断熱材の含水率の好適な管理に道が開かれる。
屋根面の断熱層は、小屋裏空間への放湿による湿度上昇を避ける為、吸放湿性を具備せず、透湿抵抗値の大きい断熱材を用いる。
それらの建材の性能を総合した熱損失係数(Q値)は、次世代型省エネルギー住宅の基準を上回るものとする。更に、隙間相当面積(C値)は1.0未満とする。
断熱材の機能・特性を表す具体的資材、構成等を次に示す。
A : 吸放湿機能を具備する断熱材
−1 ケイ酸カルシウム主成分(ヒューミライト等)の一層又は二層構造
−2 インシュレーションボード+透湿性の気密断熱ボードの二層構造
−3 セルロースファイバー +透湿性の気密断熱ボードの二層構造
B : 吸放湿機能を具備しない断熱材+吸放湿機能を具備する断熱材
−1 プラスチック系断熱材 +インシュレーションボードの二層構造
C : 吸放湿機能を具備しない断熱材
−1 プラスチック系断熱材 +プラスチック系断熱材の二層構造
同等の性能を備えるものであれば、上記の資材に限定されるものではない。
次に、部位別・地域の気候特性・目的別に好適な断熱材の組合せを例示する。
壁(北側) 壁(その他) 天井裏
(イ) C C A
(ロ) C B A
(ハ) C A A
(二) A A A
A :吸放湿機能を具備する断熱材の内、機能の違いにより二種類に分類し、
X :気体状のH2O、液体状のH2Oのいずれをも吸収できる断熱材
代表例 ケイ酸カルシウム主成分(ヒューミライト等)
Y : 気体状のH2Oのみ吸収できる断熱材
代表例 杉無垢板
上記の組み合わせの内、気密断熱層を3層構造にする場合、断熱材AはX+X、X+Y、Y+Yの3通りの重ね合わせから選択する。尚、上記の代表例に限定するものではなく、同等の性能を持つものであれば各種の断熱材を使用できる。
選択の際、地域の気候条件を考慮することは重要である。X+Xの重ね合わせは、断熱材の属性によって吸湿・吸冷野効率を高めることが出来るので、夏季の遮熱・除湿の効率を高める上では貢献する。只、冬季氷点下の気候条件のもとでは、先のXを用いると結露を通り過ぎて氷結する可能性がある。そのマイナス面は、氷結の際の水の膨張の影響が懸念される。氷結と融解を繰り返す内に、耐久性の阻害される恐れがある。それで、内側にX、外側にYの重ねあわせを採用すると互いの長所を活かし、短所を縮減することが出来る。
熱貫流率で表される断熱性能は、暖かい空間から冷たい空間への熱エネルギーの移動に関するもので、冬季の寒さ対策を構築する上で重要で、その断熱性能を数値的に表わす上で役に立つものである。
さて、夏季の暑さ対策を構築する上では、冬季の貢献に比較すると一様ではない。それは、夏季に日射取得する太陽熱エネルギーの大きさから来るものである。具体的には、熱貫流率で表わされる断熱性能が高くても、一部は反射もせず、伝熱もせず、断熱材内に滞留する。夏季の日射取得される太陽熱エネルギーの量は膨大で、その一部が断熱材内で滞留するのみでも、その影響は大きい。具体的には、断熱材内に滞留し、蓄積された熱エネルギーは放射熱エネルギーの形で屋内の温熱環境に影響する。所謂輻射熱は対流熱エネルギーに比較すると、その影響は異なる。熱源である太陽の日没後も断熱材からの輻射熱の影響は持続し、更に、エアコンにより冷却エネルギーを対流熱エネルギーの形で供給しても、伝熱しにくい断熱材を対象とするので、冷却効果が出るには時間がかかる。つまり、断熱性能が高くても、放射熱エネルギーの発生を阻止できないので、日没後も屋内の温熱環境への影響は持続する。
結局、夏季の暑さ対策の構築に当たっては、熱還流率で表わされる断熱性能にのみ依存しても夏季に求められる性能を確保できないので、太陽熱エネルギーを吸収するか、反射するかの手段を備える必要がある。つまり、太陽熱エネルギーを吸収・反射して放射熱エネルギーの発生・影響を抑制し、断熱する方法である。以後、この方法を遮熱と呼ぶ。
従来の技術では、断熱層に吸放湿性を具備する断熱材を用いるにしろ、吸放湿性を具備しない断熱材を用いるにしろ、概ね日射取得する太陽熱エネルギーを如何に効率よく排熱するかを課題としている。それも、顕熱の形での排熱である。
それに対して、顕熱の形での排熱を否定するものではないが、逆に、太陽熱エネルギーを作用の一部として活用を図る。同様に、壁体等で生じる結露に関して、従来は防止すべきものとして大きな課題と見做されてきた。ここでは、逆に結露を作用の一部として活用を図る。しかも、この結露と潜熱的排熱とはそれぞれ独立した作用でありながら、気密断熱層によって隔絶される二つの空間の補完的連携、並びに、常温・通常気圧の下での吸放湿とH2Oの相変化との連携、この二つの連携の交差に結びつけ、しかも、断熱性と伝熱性という背反するものを止揚する契機を見出すところに、この発明の発想の独自性がある。更に、従来相変化によるエネルギー移転は、常温での液体状のH2Oから気体状のH2Oへの変化及び気化熱の利用について注目されてきた。ここでは更に進んで、太陽熱エネルギーから放射熱エネルギーとして運動エネルギーを取得し、相変化(気化)のエネルギーとし、太陽熱エネルギーを湿気という潜熱の形に閉じ込めることが、伝熱性による冷却エネルギー供給の制御の可能性により、制御(促進)出来る点、並びに、屋内側での液化を経て屋内の湿度調節に繋げられる点で画期的である。
さて、日射取得する太陽熱エネルギーを屋外で吸収する冷却エネルギーを気密断熱層を介して屋内から供給するには、断熱材に伝熱性を確保しなければならない。只、伝熱性は冬季に求められる断熱性とは背反し・矛盾するものである。この発明は、冬季に求められる断熱性能によって太陽熱エネルギーを遮り、且つ、伝熱性能によって太陽熱エネルギーを吸収し、断熱性と伝熱性という背反する機能を止揚して、遮熱機能を高めるものである。
太陽熱エネルギーを作用の一部として活用を図る上で、気密断熱層によって隔絶された二つの空間の補完的連携は不可欠である。更に、気密断熱層で起こる湿気移動の方向性及びエネルギー移動の方向性を制御できなければ、好適な温湿度を実現できず、それらが逆転するとエネルギー損失を招く。具体的には、屋内の湿気を取り除いても、屋外から気密断熱層を通じて湿気の浸入を招き、屋内湿度の顕著な改善に支障が出る。又、冬季は屋内を暖房中に屋外の冷気を誘引し、エネルギー損失を招く。
湿気移動に関する補完的連携の制御(促進・抑制)をまとめると、
「相変化を媒介する吸放湿を意図する方向に促進する補完的連携」は、屋内側で冷却エネルギーを供給され、相対湿度上昇及び相変化(液化)促進による吸湿促進、且つ、屋外側で日射取得する太陽熱エネルギー及びファン稼動により、相対湿度低下・相変化(気化)促進による放湿(平衡含水率との乖離・運動エネルギーの供給)及び気圧上昇の抑制もしくは気圧低下の誘引による放湿(気圧と沸点の関係)を促し、気密断熱層内でのH2O移動の圧力を方向付け、保持される。尚、吸放湿機能とH2Oの相変化との連携により断熱性に背反する伝熱性を生み、太陽熱エネルギーを湿気という潜熱の形で吸収し、屋外から建物外へ排出できる。
「相変化を媒介する吸放湿を意図しない方向を抑制する補完的連携」は、屋内側で冷却エネルギーを供給され、且つ、屋外側でファン停止により、保持される。
さて、内側通気層・天井裏空間の流路を通じて冷却エネルギーを屋内側から気密断熱層に供給する。その冷却エネルギーを屋内側でのH2Oの液化の制御・吸湿の制御に活用し、太陽熱エネルギーを屋外側でのH2Oの気化の制御・放湿野制御に活用する。そして、吸放湿とH2Oの相変化に伴うエネルギー移転との連携によって、気密断熱層における伝熱性を確保する。その伝熱性によって、屋内側で供給する冷却エネルギーを、気密断熱層を通じたエネルギー移動を可能にし、その上で、屋外側での太陽熱エネルギーの吸収に活用する。更に、太陽熱エネルギーの効率的排熱という課題に対し、湿気という潜熱の形で排熱する新規な手段により応える。
ところで、以上に見られる様に、冷却エネルギーの屋内での供給による、エネルギー伝熱の方向並びに吸放湿の方向は、屋外での太陽熱エネルギーの日射取得も合わさり、同一方向に促進される。それで、H2Oの相変化に伴うエネルギー移転と吸放湿機能との連携は好適に保持され、吸放湿を利用した気密断熱層内でのエネルギー移動が可能となる。
吸放湿性を具備する断熱材は、その吸湿の特徴から二つに別けることが出来る。一つは、H2Oの液体の状態で吸収し、且、湿気の状態でも吸収出来る。一つは、H2Oの液体の状態では吸収できないが、H2Oの気化した状態では吸収できる。前者の例は、ケイ酸カルシュウムを主成分とする断熱材である。後者の例は、自然素材の代表格である杉板等である。
エネルギー移転である潜熱的蓄冷との関連で言及すると、前者の例では、H2Oの液体の状態で吸収できるので、吸湿直前に冷気の吸収の効率を高めて飽和状態に至れば、液化を促し、液体の状態のまま吸収される。潜熱的蓄冷の一例である。又、湿気の状態での吸湿・放湿煮は、空気中の相対湿度と素材の含水率との関係が影響する。それは、空気中の温度を下げれば相対湿度は上昇し、平衡含水率との乖離が生じ、その分吸湿は促される。逆に、空気中の温度が上昇すれば相対湿度は下降し、平衡含水率との乖離が生じ、その分放湿派促される。この吸放湿の過程で液化という相変化を生じると、併せて凝縮熱を生じる。この凝縮熱を吸収することで、潜熱的蓄冷を行なうことが出来る。潜熱的蓄冷は、湿気を液化するために冷却エネルギーを投入し、相変化を伴う。
前者の例に示されるように、H2Oの液体の状態でも吸収出来る素材から作られる断熱材を用いると、前記二種類の潜熱的蓄冷手段を冷却エネルギー移転に利用する上では好適である。
さて、一般にH2Oの沸点は1気圧のもとでは100℃である。只、多孔質の物質の介在により運動エネルギー吸収の効率を高めると、1気圧のもと30℃前後の常温で、液体から気体への相変化である気化を生じる。具体的には、30℃の水リットルが気化する際、周囲から588Kcalを奪う。これが気化熱の冷却エネルギーである。
これを吸放湿の見地から表現すれば、相変化を伴なう放湿である。前記二種類の潜熱的蓄冷手段と合わさり、H2Oの相変化を媒介する吸放湿性を具備する断熱材は、吸放湿煮当たり、液化により液体状の水と凝縮熱を生成し、気化により水蒸気(湿気)と気化熱を生成する。しかし、吸放湿速度に関しては相変化を伴う場合、吸湿に比較して放湿速度は劣る。それで、太陽熱エネルギーの日射取得がないと、含水率は高止まりする。それで、含水率管理に太陽熱は不可欠である。
相変化を伴わない放湿では、湿気の状態を保持されて、そのまま放出される。通常、相対湿度の変化による放湿の一部がこれに当たる。尚、相変化を経る場合でも、断熱材の内部で必要量の運動エネルギーを供給されて気化を生じる場合は、吸放湿材の表面では相対湿度の変化に応じて放湿できる。
尚、上記の通り、1気圧・30℃の下、太陽熱エネルギーの日射取得を得られない場合でも、吸放湿材の媒介によってH2Oの相変化(気化)による冷却エネルギーの利用は可能である。只、気化熱の影響で周囲に冷却効果が現れ、温度低下すれば、相変化は持続しない。それに対し、太陽熱エネルギーを日射取得できれば、放射熱エネルギーの効果により、気密断熱層に運動エネルギーを直接・持続的に供給できる。それで、相変化は持続する。かかる効果の有無を考慮のうえで、北側の気密断熱層は仕様を変更し、吸放湿性を具備しない断熱材を用いる。
断熱されていながら「吸放湿とH2Oの相変化の連携による伝熱手段」を確保し、屋内への冷却エネルギー供給によって隔絶された領域での太陽熱エネルギーの吸収・排熱を方法的・量的に制御することが出来る。
ところで、二種類の吸湿を促進すると、断熱材内の含水率は高まる。又、気密断熱層を移動する圧力を保つ上では、屋内側の含水率は高止まりせざるを得ない。只、含水率は高すぎると弊害を生む可能性がある。そこで、出来るだけ含水率の上昇を避けながら断熱性に背反する伝熱性を保持するには、吸放湿とH2Oの相変化との連携の比率を高く維持することが重要である。「連携の比率」を高く維持するには、一つには、相変化を伴わない吸湿を抑えることが大切で、課題となり、一つには、吸湿の際に効率よく冷却エネルギーを供給・吸収し、液化を促進する。それで、液体状のH2Oを吸収でき、結露を起こさない断熱材を用いる。更に、湿気の吸収後に冷却エネルギー吸収等により液化を経れば、連携の比率は高まる。
さて、隔絶性を構成する気密性と断熱性の内、気密性を高めると屋内への湿気の浸入を阻止できる。それは、吸湿すべき湿気の量の削減に繋がり、冷却エネルギー供給に対して吸放湿とH2Oの相変化の「連携の比率」を高める効果を表わす。それで、含水率上昇の抑制を視野に入れながら、潜熱的蓄冷手段を効果的に利用することが出来る。尚、含水率の計算上、吸放湿材の保持する気体状・液体状のH2Oの割合は考慮されず、保持するH2Oの重量比で算出される。
さて、相対湿度と平衡含水率との乖離により吸湿を促し含水率を上げたとしても、直ちに断熱材内での相変化(液化)の促進に繋がるわけではない。液化の促進は液化に伴い生成する凝縮熱を処理できる冷却エネルギーの吸収促進に依存する。ところが、断熱材はその断熱性により内部に冷却エネルギーを伝導する能力は低い。つまり、冷却エネルギーの伝導が緩慢な分、液化も緩慢である。潜熱的蓄冷を図るにしても、効率はよくない。それでは、たとえ冷却エネルギーの供給を増加したとしても、吸冷出来ない。それで、効率的な潜熱的蓄冷を図ることが課題となる。
以上を潜熱的蓄冷の過程との関係で把握すれば、気密断熱層の表面で液化したH2Oを吸収できる特性を備える断熱材を用いると、空気中の湿気を吸収する際に凝縮熱を吸収し・液化を促進し、かつ、液体状のH2Oを吸引・吸収することで、吸放湿とH2Oの相変化の「連携の比率」を高く維持することに貢献する。それで、昼間含水率の低下した場合でも、冷却エネルギーの吸収・保持に繋げて、効率的なエネルギー移動を継続し、遮熱・除湿効果の維持に繋げることができる。尚余談ながら、潜熱的蓄冷が顕熱的蓄冷に比較して周囲の温度低下を招かないのは、冷却エネルギーが凝縮熱の吸収に用いられるからである。
さて、液体状のH2Oを吸収・吸引できる断熱材は、表面に多孔質の形質を保持している。しかも、湿気伝導率との関係で連続した空隙は多い。それで、円滑なH2Oの移動に乗ってエネルギーの移動も可能となる。ところが、断熱材内の空隙の連続性が増すと気密性に問題が出てくる。具体的に記すと、断熱材に液体状のH2Oを含水する量の多い夏季と液体状のH2Oを含水する量の少ない冬季とを比較すると、エネルギーの伝導性とともに気密性能に差が出てくる。その差の生じる源は断熱材内の空隙にある。しかも、空隙の連続性を保持された断熱材ほど湿気伝導率は高い。只、湿気伝導率が高いと気密性の保持が困難で、湿気の浸入を制御することが難しくなる。その意味から、湿気の移動は断熱材の属性である湿気伝導率に依存してその効率を向上させる試みは限界を持っている。
それで、素材と素材以外の要素の組み合わせの中で、湿気移動の効率を向上することが求められる。あるいは、湿気伝導率の異なる断熱材の重ね併せにより課題を解決する。
そこに送風ファンの力を借りると、昼間断熱材の屋外側で含水率の著しい低下を招く。それは、H2Oの移動の圧力となり、先の空隙の浸透をより促進することとなり、同時に、空隙内の気圧の低下を通じ更なるH2Oの気化を促進する。つまり、H2Oの相変化に伴い生じる気圧の上昇の結果である湿気の浸透との相乗効果により、太陽熱エネルギー吸収を伴うH2O移動の圧力を創出・保持することが出来る。このH2O移動の圧力を活用することで、エネルギー移動及び太陽熱エネルギー吸収(遮熱)の効率の向上を図れる。又、湿気の移動によって、断熱材内の気圧の低下を促された分、空隙内で更なるH2Oの気化を促進することが出来る。
具体的には、連通する外側通気層・小屋裏空間を通じて排熱・排湿を促進する送風ファンの働きを利用します。つまり、日没後も送風ファンを稼動すると、逆に屋外からの吸湿・吸冷を促す。それを阻止する為に、日没後は停止します。停止によって屋外からの湿気の吸収を抑制し、創出・保持されたH2O移動の圧力を日没後も保つことが出来ます。しかも、内側通気層・天井裏空間でのエアコンを通じた大量の冷却エネルギーの供給と連携して別種の作用を促進します。即ち、断熱材に液体状のH2Oを吸収できれば、吸冷煮は液化の際に吸湿が伴うので、屋内の除湿効果は高まります。吸湿とH2Oの相変化との連携の比率が高いので、断熱材内でのH2O移動の効率向上は屋内からの吸湿・吸冷の効率の向上に直結し、含水率の高低に係り無く除湿効率を高めます。
結局、送風ファンの活用によって、含水率管理の上では、吸湿とH2Oの相変化との連携を高め、太陽熱エネルギーの日射取得等を活用し、断熱材の属性の改良にのみ依存せずに、屋内から大量に供給された冷却エネルギーを効率的に吸収し、効率的なエネルギー移動に繋げながら、遮熱・除湿の効果を高めて課題を解決するものです。エアコンの冷却エネルギー生成・供給能力を活かし、断熱材の伝熱性能を飛躍する上で、構成する要素の組み合わせの妙といえます。この組み合わせによって、際立って優れた効果・異質の効果を奏する。
1:太陽熱エネルギーの日射取得による含水率低下の機能を持たないものの、北面の壁体の断熱材の含水率上昇のもたらす弊害を予め除去することで、結露を作用として活用する道を開く上で必要な他の断熱材の含水率の好適な管理に繋げることが出来る。
B:冬季、寒気により生じる結露の防止に繋がる。冬季の断熱性能の低下並びに熱損失の増加を防止する。
C:循環流路内の暖気の流通のもたらす冬季の熱損失を、夏・冬での流路の変更により軽減する相乗効果を得られる。
2A:前記1の効果をもたらす手段との組み合わせにより、昼間の太陽熱エネルギーの日射取得により断熱材からのH2Oの気化・放出は促進され、昼間・夜間を通して、断熱材内で生じる気圧差により過度の含水率上昇を必要とせずに、H2Oの屋内側から屋外側への移動の適度の圧力を生じ、そこに生じる含水率の乖離を利用して、屋内側からの吸湿・吸冷を促せる。
B:吸放湿とH2Oの相変化の連携の比率を高めることが出来、効率的な蓄冷および効率的なエネルギー移動に繋がる。
3A:冬季、気密断熱層に用いる断熱材の夜間の断熱性能面は熱貫流率で表わされる数値以上の断熱性能を実現する。
B:寒冷地において、冬季に懸念される暖気の流路内の流通を通じた熱損失(H2Oの相変化を利用した冷却エネルギーの屋外から屋内への逆移動に因る)を避けることが出来る。また、除湿・遮熱システムを温暖地から寒冷地まで熱損失を増加せずに活用できる。
C:寒冷地において、夏季の昼夜の温度差を利用して、夜間の放射冷却エネルギーを相変化により断熱材に蓄冷し、昼間の放冷のエネルギー源とし、液化・気化・放湿煮夜遮熱効果を得られる。
4:夏季は、冷気・湿気の供給に好適な循環流路を確保し、冬季は流路を変更することで熱損失を軽減する。
夏季は除湿・遮熱機能により調湿・輻射冷房、冬季は顕熱的蓄熱により輻射暖房の実現に貢献する。
冬季の外側通気層を断熱空気層として利用して壁体全体の断熱性能を向上し、気密断熱層からの熱損失を軽減。輻射暖房の実現に貢献する。
5A:気密断熱層を構成する断熱材の含水率の上昇を伴わず、遮熱のエネルギー源である潜熱的蓄冷つまり吸冷を促進できる。液化したH2Oは空隙内で湿気浸透の壁となり、気化の際の気圧上昇によるH2O移動の効率向上及び屋内から屋外への方向性の保持に貢献する。
B:その上、断熱材を除く躯体のその他の部位の含水率を抑える含水率管理を好適に行なうことが出来る。
6A:昼間は送風ファン稼動により気密断熱層における屋外への湿気の放湿を促し、液体状のH2Oの気化・膨張により生じる圧力との相乗効果により、断熱材内での屋内側から屋外側へのH2O移動の圧力は高まり、断熱材の吸湿・吸冷野高い効率と併せて屋内の除湿の効率を向上することが出来る。
夜間は送風ファンを停止し、屋外からの吸湿・吸冷を抑制する。抑制できた量を屋内からの吸湿・吸冷煮より余分に補充し、その分屋内からの除湿の効果は高まる。
昼間・夜間の何れも、素材(断熱材)の備える湿気伝導率を越えて屋内側から屋外側へのH2O移動の圧力を創出・保持し、内側通気層・天井裏空間を通じた吸湿の促進並びに含水率回復を促すことを通じて、含水率の上昇を抑えながら屋内側での吸湿・吸冷野効率を向上し、屋内の除湿の効率を向上させることが出来る。
B:夏季に限定せず、屋内の湿気の吸収を促し、屋外へ排出する機構の働きを利用して屋内の空気中に浮遊する揮発性の化学物質を除去することが出来る。低い含水率でも湿気の移動の効率を保持できるので、屋内の相対湿度を必ずしも高く維持する必要は無い。それで、屋内の空気浄化の機能は夏季以外にも活用できる。
7A:エアコンの稼動に当たり、放射冷却により温度低下した夜間の外気を利用でき、少ないエネルギー消費で昼間の遮熱に必要な冷却エネルギーを循環流路に供給でき、省エネルギー効果を得られる。
B:循環流路への冷気の継続的供給を通じ、低い含水率の場合でもH2Oの相変化を利用した冷却エネルギーの移動を好適に確保できる。
C:昼間エアコンから冷却エネルギーを供給することで、昼間の吸放湿の方向性を制御でき、24時間を通じて屋内の除湿効果を得られる。
D:気密断熱層の低い含水率にも係わらず、吸湿とH2Oの液化の連携の比率を高く維持することで、上記効果並びに5・6の効果に加え、室内の湿度管理を睨みながら、併せて、背反する躯体の含水率管理と潜熱的蓄冷とを好適に行い、更に、冷却エネルギーの供給能力の向上に相応しい効率的吸冷能力並びに効率的エネルギー移動の能力を得て、それらの相乗効果により一層の遮熱効果・除湿効果及びヒートアイランド化抑制の効果を得られる。
そして、エアコンの除湿機能への依存の低下した度合いに応じて、除湿の際にエアコンから放出する凝縮熱を削減できる。しかも、この削減は、エアコンの生成・供給する冷却エネルギーで太陽熱エネルギーを潜熱的に吸収することによって担保される。つまり、凝縮熱という新たな熱の発生量を削減し、その上、建物外へ顕熱のまま放出する太陽熱のエネルギー量を削減し、二重の意味でヒートアイランド化抑制を実践しながら、快適な屋内環境を実現できる。
8A:深夜電力を利用して生成する冷却エネルギーの蓄冷手段を躯体と蓄熱体に分散でき、躯体(木質系の構造材・断熱材等)から吸湿・吸冷野負担に伴う悪影響(カビ・腐朽菌等の繁殖、断熱性能の低下)を軽減できる。更に、安価な繊維質の断熱材の利用に道が広がる。
B:エネルギー消費効率の高いエアコンと蓄熱体との組み合わせで深夜電力のみを利用しても、24時間継続的に安定して安価な冷却エネルギーを対流熱の形で直接循環流路に供給出来る。同じく、暖房のエネルギーを一日中継続して安定して安価に対流熱の形で直接循環流路に供給できる。更に、省エネルギー効果を得られる。
C:深夜電力のみを冷房のエネルギー源としながらも、冷気の24時間を通しての継続的供給を通じて昼間の吸放湿の方向性を制御でき、低コストで24時間を通じて屋内の除湿効果を高められる。
D:冷気の継続的供給を通じ、低い含水率の場合でもH2Oの相変化を利用した冷却エネルギーの移動を好適に確保できる。更に、連携の比率と背理関係にあるH2Oの移動の効率を向上し、屋内の除湿効果を高められる。
E:蓄熱体に蓄冷する際、寒冷地程放射冷却により温度低下した夜間の外気を利用でき、COPの数値を超えて少ないエネルギー消費で昼夜の冷房・除湿・遮熱に必要な冷却エネルギーをエアコンから循環流路に供給でき、結局、機器の性能と使用する環境の両面から一層の省エネルギー効果を得られる。
F:蓄熱材の融解時に利用できる対流熱エネルギーのままでは、23℃の冷気は特に夜間は直接人肌に触れるには低すぎる。循環流路を流通する過程で、躯体に吸冷・蓄冷され、輻射冷房のエネルギー源として人肌に優しい空調のエネルギーを供給する。
21℃乃至23℃に限定された温度領域での相変化を利用したエネルギーの放出を、循環流路内での躯体との顕熱的エネルギー移転により吸収し、冬季の輻射暖房と夏季の輻射冷房とを、夏季の遮熱・除湿効果と冬季のエネルギー損失軽減効果とを両立しながら安価なエネルギーを利用して24時間安定して好適に実現する。又、請求項2に比較して、深夜電力の更なる有効活用を通じ、尚一層の省エネルギー効果・エネルギーコストの低下および好適な含水率管理のもと一層のヒートアイランド化抑制効果を得られる。
9:梅雨時等太陽の日射取得による調湿効果を十分に得られない場合でも、安価な深夜電力を利用してエアコンの除湿機能を稼動し、吸湿機能の蘇生を通じて24時間快適な室内環境を保持することが出来る。
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示す概略断面図。図2及び図3は、図1に示す建物の壁体の斜断面図である。図4は、実施例を示す建物壁体の詳細断面図である。図5は、夏季の空気循環流路内の流通を示す。図6は、冬季の空気循環流路内の流通を示す。
これらの図において、1は棟換気口、2は屋根棟下空間、3は通気口、4は屋根材、5は屋根下地材、6は屋根通気層、7は断熱層、8は気密断熱層、9は外側通気層、10は小屋裏空間、11は天井裏空間、12は内側通気層、13は床下空間、14は壁下地材、15は壁仕上げ材、16は屋根棟下換気口、17は送風ファン、18は連通管、19は給気用連通管、20は排気用連通管、21は外壁下地材、22は外壁、23は天井仕上げ材、24は室内空間、25はコンクリート、26は熱交換式換気扇、27は連通口、28は透湿防風防水シート、29はエアコン、30は床、31は開閉式連通管、32は開閉式連通口、33は中壁、34は蓄熱体を示している。
先願である特願2004−090531号と後願である本出願の関係について。先願は、気密断熱層で断熱する一方、日射取得する太陽熱エネルギーをH2Oの気化熱で吸収し、湿気という潜熱の形に閉じ込めて屋外に排出します。只、気化熱のエネルギー源は、屋内からの空気循環流路を通じた冷却エネルギーの供給に依存しています。具体的には、冷却エネルギーとして請求項1では地熱・放射冷却の自然エネルギーにより、請求項2では深夜電力を利用したエアコンにより冷却エネルギーを供給し、相対湿度上昇により屋内側から供給する流路内の湿気の吸収を促し、H2Oの相変化である液化を経て生成する「水と凝縮熱」の内凝縮熱を吸収します。そして、太陽熱エネルギーの日射取得により運動エネルギーを獲得し、気化を促されます。つまり、吸放湿とH2Oの相変化(液化・気化)との連携の中で、冷却エネルギーを屋内から屋外に伝導し、伝熱します。しかも、太陽熱エネルギーを吸収する際には、湿気という潜熱の形に閉じ込めて排熱します。それで、断熱性に背反する伝熱性を利用した遮熱・除湿機構を構成・機能します。
先願では、壁体を構成する気密断熱層は、東西南北を問わず吸放湿性を具備する断熱材から構成されています。そして、遮熱・除湿機構の運用・稼動を促す上では、屋内の流路に給冷・給湿し、断熱材への潜熱的蓄冷の促進に伴い、吸湿は促進されます。その結果、目的とする断熱材を含めた躯体の含水率上昇は達成されます。その効果として、H2Oの持つ伝熱性を備え、更に、屋内側と屋外側で生じる含水率の高低差によって、気密断熱層における屋内側から屋外側へのH2O移動の圧力も生じます。
さて、先の「液化」は所謂結露の意味です。結露は、昔から建物に被害をもたらすものとして、忌避されてきました。それだけに、結露を「作用」として利用することには精神的な葛藤・飛躍が必要です。只、精神的葛藤・飛躍だけで済むものではありません。具体的には、断熱材を含めた躯体の含水率の上昇は避けられず、含水率上昇に伴う弊害に留意が必要です。
ところで、躯体の含水率上昇は、カビ・腐朽菌の繁殖を招きやすい環境を醸成し勝ちです。その意味で、含水率の上昇は必ずしも好ましいものではありません。しかし、遮熱・除湿機構の効率的運用・稼動を図るには、含水率は高く維持せざるを得ません。謂わば、二律背反性を内包しています。只、先願の請求項には、この二律背反するものを止揚する対策・手段は示されていません。それで、躯体の含水率の上昇を抑えながら、つまり、躯体の含水率を好適に管理しながら、吸湿・吸冷野効率向上および放湿・吸熱の効率向上とを連携し、遮熱・除湿機構の効率的運用・稼動を図ることは今後に残された大きな課題となっています。
構造材・仕上げ材・断熱材の具備する吸放湿機能は、一日の内の温度の変化、相対湿度の変化によって左右される短期的なサイクルのものから、夏季の湿度の高い時期にもっぱら吸湿し、冬季の湿度の低い時期にもっぱら放湿する四季を通じての含水率増減の長期的なサイクルのものまで見られる。
夏季の一日で見ると、夜間、室内側では壁体は概ね吸湿活動に励み、含水率は高まる。昼間、室温の上昇に伴い相対湿度は低下するので、壁体から放湿する。只、吸湿量と放湿量とを比較すれば、吸湿量が多い。それは、四季を通じての長期的な変動からも言える。
具体的に説明すると、梅雨から夏季にかけては放湿量よりも吸湿量が多く、壁体へのH2Oの蓄積は最大となる。それは、相対湿度の上昇に応じて壁体の平衡含水率も上昇するからである。しかも、一日の内での相対湿度の変化に対応して壁体の平衡含水率も上下する。平衡含水率が高くなれば、含水率との乖離は大きくなり、その分湿気を吸収する圧力は大きくなる。
壁体の外側では、夏季の昼間の太陽の日射取得により、外壁は60℃〜70℃の温度に達する。それで、外側通気層内の相対湿度は極端に下降する。その分湿気を放出する圧力は高くなる。しかも、多孔質の建材から構成される壁体は、昼間の太陽の日射取得によりH2Oの蒸発に必要な運動エネルギーの供給を受ける。その結果、夜間に蓄えられたH2Oは多孔質の建材から容易に放湿し、蒸発する。
ところで、夜間に壁体に吸湿する際の相対湿度は周囲の温度低下により上昇し、吸湿の圧力は高まるが、その際、H2Oの相変化によって液化を生じると、同時に生成する凝縮熱により温度上昇要因を生むこととなる。結局、液化を生むだけの冷却エネルギーの供給が持続しなければ、相変化も持続しない。
H2Oが相変化して蒸発する際には、周囲から気化熱が奪われる。この気化熱の発生が持続すると、気化熱の蓄積によって太陽熱の日射取得に因る壁体の温度上昇は抑えられる。
ところで、壁体に液体状の「水」を直接吸収させれば、それが蒸発する際に周囲から気化熱を奪うので、継続して昼間太陽熱を吸収し、蒸発することが可能である。只、水を直接吸収させる方法を採用していないので、これまでの方法では周囲から継続して気化熱を奪うことはない。
それで、「水」の吸収に代わるものとして、湿気の吸収並びに冷却エネルギーの吸収を連携して行い、壁体での凝縮熱及び水の生成に繋がる相変化である潜熱式蓄冷が重要となる。しかも、相変化を経て液化する際に生じる凝縮熱を吸収する為に投じられた冷却エネルギーの総量(放射冷却・地熱)の範囲内で、潜熱を利用した遮熱の効果を得られる。
壁体への湿気の供給、並びに、冷却エネルギーの供給を制御できない場合でも、吸放湿とH2Oの相変化との連携は見られる。
その連携を具体的に記すと、土壁から形造られる古来の住宅は、通風を旨とし、しかも、真壁造りとなっている。それで、通風によって湿気並びに放射冷却エネルギーの供給が行なわれる。そして、土壁への湿気の吸収及び放射冷却吸収の連携により、夜間潜熱式の蓄冷は可能である。只、湿気を吸収することと液体状のH2Oを吸収することとの相違について、手段・効果の面で曖昧なまま区別されることも無く処理されてきた。それが、従来の技術水準である。
そして、昼間の太陽の日射取得の際に、放湿並びに相変化による気化熱の発生は起こる。これが、湿気の吸収・放出と放射冷却の吸収・放出との連携の中で、遮熱に繋がる機構の原始的なものである。但し、湿気の吸収の方向付け並びに湿気の放出の方向付けの制御が行われていないので、昼間屋内の湿度調節の効果は小さい。又、結露(液化)を作用としてエネルギー移転から見直し、伝熱性のエネルギー移動の一部として捉え、太陽熱エネルギーの日射取得の有無を含水率管理に利用しながら、除湿・遮熱の効果を高めることも無かった。結局、吸放湿とH2Oの相変化との連携を、その方向等に関して制御できる高度の遮熱・除湿機構への展開には繋がらない。更に、伝熱性の制御が出来ないので、冬季にエネルギー損失の発生を抑える手段を持たない。
それに対し、新しい技術では、確保された流路を空気が流通する中で、放射冷却・地熱のもたらす冷却エネルギーを供給する。同時に流路の確保によって、湿気の供給及び吸湿活動を制御し、促進することが出来る。しかも、吸湿に液化の相変化を伴う場合、冷却エネルギーを気密断熱層に移転した後の空気は温度上昇する。それで、湿気を吸収された後の相対湿度の低下した空気及び温度の上昇した空気の流通及び室内への流入が可能である。同時に、新たな冷却エネルギーの流通・供給が継続的に必要かつ可能である。それで、吸湿と液化の連携の比率を制御することが出来、断熱性に背反する伝熱性を保持し、エネルギー移動の量の制御に繋がる。これは、壁体内二重通気システムと建物内の換気システムとの連携した24時間換気システムによって可能になる。
更に、相変化の有無に関わらず、壁体からの湿気の放出及び通気層を通じた排湿活動を促進することが出来る。又、屋外から取得する運動エネルギーの量に制約されるが、屋内からのエネルギー移動を可能にする。この湿気の形での排熱システムと、先の24時間換気システムの備える給湿・給冷システムとの補完的な連携によって、補完的連携による制御(促進・抑制)を通じた屋内の調湿効果と温度上昇抑制効果が繋がる高度の遮熱・除湿機構へと発展することが出来る。
前記の屋内の吸放湿機能とH2Oの相変化とを連携する機構の働きを意図する方向に導き、より快適な室内環境をもたらすには、それぞれの役割を担う機能が更に効率を高めなければならない。
前記の屋内の吸放湿機能とH2Oの相変化とを連携するには、断熱材によって互いに隔てられる外側通気層と内側通気層並びに天井裏空間と小屋裏空間が互いの補完関係を意図し、強化し、それぞれの機能の効率を追求する中で、吸放湿性を具備する断熱材の表面並びに内部で起こる「H2Oの相変化」に伴うエネルギー移転を迅速に実現しなければならない。
小屋裏空間と外側通気層は連通し、通常、その下端から外気を導入し、外壁を通じて太陽熱で熱せられて膨張すると、自然に上昇し、連通する屋根棟下空間・棟換気口を通じて建物外へ放出される。熱を吸収した空気の相対湿度は低下し、断熱材の平衡含水率も低下する。その分従前の含水率との乖離は大きくなり、放湿の圧力は大きくなる。又、日射取得により断熱材自身は熱を蓄え、断熱材内での運動エネルギーの移転は容易となり、気化による膨張で空隙内の気圧上昇し、H2Oの相変化(気化)に伴う湿気の伝導および放湿の圧力は更に高まる。それで、導入された外気は断熱材から放出された湿気(相変化を伴う湿気・相変化を伴わない湿気)を大量に含み、湿気を運び出す役割を担う。
日射取得される太陽熱エネルギーを排熱するに当たっては、従来の壁体内二重通気システム並びに吸放湿性の断熱材を用いたシステムでは、顕熱の形で空気と一緒にエネルギーを建物外に排出するのに対して、新しい技術では、湿気という潜熱の形に閉じ込めて空気及び残余の顕熱と一緒にエネルギーを屋外から建物外に排出する。
さて、小屋裏空間と屋根棟下空間を連通する開閉式の通気口を閉じた上で、小屋裏空間から屋根棟下換気口に通じる連通管・送風ファンを駆動し、小屋裏空間の空気を強制的に建物外に排出する。すると、気圧の関係で、小屋裏に連通する外側通気層を通じた外気の流量は増大する。空気の流れが活発化すれば、相対湿度の上昇並びに気圧上昇は阻止され、むしろ、相対湿度の低下並びに気圧低下のもたらす沸点の低下により断熱材からの放湿は持続的に促進される。つまり、放湿の効率向上である。
気密断熱層の断熱材からの放湿が継続・強化されれば、断熱材の含水率は表面ほど急激に低下する。それで、H2Oの補充が必要になる。
夜間、送風ファンを駆動すると、昼間の放湿煮よって断熱材の含水率の低下した分の補充を、外側通気層を通じて取り入れる外気に含まれる湿気から積極的に行なう結果となる。そこでは、湿気の吸収及び相変化に伴い生じる凝縮熱に対しても、放射冷却による温度低下によって、前記の外側通気層の下端から取り入れる外気は冷却され、その冷却エネルギーの効果で、前記の凝縮熱は処理される。断熱材に熱は籠らないので、湿気の吸収は効率よく継続・維持される。
請求項2における発明では、上記の送風ファンの駆動は昼間のみに限定し、放湿の効率の向上の方策として活用する。夜間は、送風ファンを駆動せず、前記の流路での空気の流れを抑制し、外側通気層・小屋裏空間を通じた湿気の供給を抑える。
この件を更に詳しく説明する。昼間、送風ファンを駆動して相対湿度並びに気圧を低下させると、断熱材内の平衡含水率並びにH2Oの沸点は低下し、放湿する。その結果、断熱材の含水率は従前より低下する。
夜間、外気温が低下すると相対湿度は上昇し、断熱材内の平衡含水率は上昇し、断熱材内の含水率との乖離が生じ、含水率の回復余力が生じる。
通常、含水率の回復は断熱材内部からの補充及び外側通気層・小屋裏空間を通じた吸湿により行なわれる。昼間、送風ファンを用いた分前記の「乖離」の幅は大きくなり、夜間送風ファンを用いてその「乖離」の幅の増大した分を埋めない限り、断熱材内部からの補充に対する依存度は大きくなる。それは結果として、断熱材内での内側から外側に向かってのH2O移動の圧力となる。それで、夜間送風ファンを停止して用いない場合に、このH2O移動の圧力は最大となる。
さて、連続した空隙を多く設ける等、素材の属性にのみ依存して湿気伝導率を高めると、気密性能、更に、冬季に必要な断熱性能の維持に支障が出る。それで、素材の性能と素材の性能以外の要素の組み合わせにより性能を高める。
昼間は送風ファン稼動により気密断熱層における屋外への湿気の放湿を促し、液体状のH2Oの気化・膨張により生じる湿気伝導の圧力との相乗効果により、断熱材内での屋内側から屋外側へのH2O移動の圧力は高まり、断熱材の吸湿・吸冷野高い効率と併せて屋内の除湿の効率を向上することが出来る。
夜間は送風ファンを停止し、屋外からの吸湿・吸冷を抑制する。抑制できた量を屋内からの吸湿・吸冷煮より余分に補充し、その分屋内からの除湿の効果は向上する。
昼間・夜間の何れも、素材の備える湿気伝導率を越えて屋内側から屋外側へのH2O移動の圧力を創出・保持し、内側通気層・天井裏空間を通じた吸湿の促進並びに含水率回復を促すことを通じて、含水率の上昇を抑えながら屋内側での吸湿・吸冷の効率を向上し、屋内の除湿の効率を向上させることが出来る。
湿気の供給サイドである内側通気層・天井裏空間の働きを中心に、湿気の供給並びに吸湿の高い効率を如何にして実現するか。
外気は、熱交換式換気扇の稼動により、給気用連通管を通じ直接床下空間に放出される。床下空間は内側通気層・天井裏空間に連通し、取り入れた外気は流路内を流通する圧力を生じる。同じく、熱交換式換気扇の稼動により、空気は排気用連通管を通じ建物内の各居室から建物外に排出される。その結果、各居室の空気圧は負圧となり、内側通気層・天井裏空間と連通口を通じて連通し、空気の流入を無理なく可能にする。つまり、熱交換式換気扇の稼動により、居室に負圧を生じ、床下空間に正圧を生じ、その結果、屋内に気圧差を設ける。取り入れた外気の流通は、居室・床下空間と連通する内側通気層・天井裏空間を流路として、その気圧の差によって円滑に行なわれる。しかも、24時間継続する。
夏に例を取れば、床下空間に取り込んだ外気は、湿気が豊富で、湿度も高い。ところで、床下では基礎の土間コンクリートを媒体に地熱を取り入れることが出来る。夏は、地熱は20℃以下であるから、取り入れた外気を冷却することが出来る。その結果、温度低下によって、もともと高い相対湿度は更に高くなる。それを、先の空気循環の流路に乗せて、内側通気層・天井裏空間に供給する。
更に詳しく説明する。夜間導入された外気は夏の季節的要因により相対湿度は高い。それで、吸湿する側の平衡含水率は高く維持され、断熱材内の含水率との乖離は大きく、その分、吸湿のエネルギーは大量に確保されている。
さて、昼間の太陽熱エネルギーの吸収の結果として、北側の壁体の気密断熱層以外の断熱材内でH2O移動の圧力は増大し、しかも、内側通気層・天井裏空間に近い断熱材内の含水率は一層低下している。
以上二つの要因により、夜間断熱材内における含水率と平衡含水率との乖離は更に拡大し、吸湿のエネルギーは増大する。そこに、相対湿度の高い空気が接触するわけである。自然と、内側通気層・天井裏空間を通過する空気中に含まれる湿気は断熱材に吸収される。特に、夜間はその動きは一層促進され、昼間に比較して吸湿の効率は高い。只、北側の壁体を構成する気密断熱層は、吸放湿性を具備しないので、吸湿によって含水率の上昇することはない。それで、含水率を管理しながら、除湿・遮熱の効果を実現することが出来る。
さて、断熱材が湿気を吸収し、相変化で液化する過程で凝縮熱が生成される。その熱によって、吸湿機能は低下する。昼間は通常、外気の温度上昇も加わり吸湿機能は低下する。昼と逆で夜は、外気は放射冷却が加わり温度低下する。更に、温度低下した外気は24時間稼動する空気循環システムで確保される流路を経由する中で、温度の低い地熱との相乗効果により、断熱材・仕上げ材等の吸放湿材の吸湿・相変化し、液化に伴い生成する凝縮熱を吸収する。冷却エネルギーの移転を伴う潜熱的蓄冷により、吸湿は更に促進される。
只、この段階で活用できる冷却エネルギーは、放射冷却・地熱のもたらすものに限られる。それで、吸湿とH2Oの相変化との連携により生じる伝熱性のもたらすエネルギー移動は量的に限られ、太陽熱エネルギーを吸収し、遮熱する能力は限定的である。そこが、自然志向に止まる場合の屋内環境改善の限界でもある。
さて、放射冷却・地熱から得られるエネルギー以外に冷却エネルギーを求める場合、同じ効果をより高い水準で得られることが重要である。その点から言えば、吸湿は更に促進され、液化の相変化も更に促進され、その上、吸湿と液化に伴うエネルギー移転の連携の比率は高まり、含水率上昇の抑制を睨みながら連携の比率の上昇を実現できることが重要である。それで、エアコンを利用して新たな冷却エネルギーを供給した場合に、何等エネルギー損失を生じることなく、同じ効果をより高い水準で得られるか否かが問題である。
断熱材は空気中の湿気を吸収する過程で、同時に、空気中の揮発性の化学物質・汚染物質を吸収する。断熱材の保水力によって、化学物質・汚染物質は溶解し、H2Oの移動とともに断熱材の内部を移動する。それで、最後は断熱材からH2Oが水蒸気として外部に放出される際に、一緒に排出される。肝心なことは、化学物質・汚染物質は吸着材である断熱材に蓄積される一方ではなく、居室を経由せずとも適宜建物外に排出される手段が用意されている。
結局、外気を取り入れた際に含まれる揮発性の化学物質・汚染物質は24時間稼動する空気循環システムの流路を経由する過程で浄化され、室内には浄化された空気が流れ込む。その上、湿度を調節され、温度を調節された空気環境の下で過ごすことが出来る。
ここで、消費するエネルギーについて説明する。
送風ファンは、湿気の放出を促しながら、遮熱機能により太陽熱エネルギーの吸収を促し、外側通気層・小屋裏空間を通じた屋外への湿気の排出を促す。しかも、温暖地では昼間の使用に限定されるので、電力使用量は極僅かである。
内側通気層・天井裏空間を通じた湿気の吸収促進には、熱交換式換気扇の稼動による空気の流通を活用する。この場合、温湿度調節・空気浄化の為の電力消費量は実質的に零である。
以上から、温湿度調節・空気浄化の為のエネルギー消費効率は高いといえる。
さて、換気の主たる機能は、屋内の空気と屋外の空気を入れ替え、人間の生命維持活動に影響する二酸化炭素を排出し、必要な酸素を導入するところにある。その他、臭い・粉塵等の排出あるいは装置に依存した熱回収及び湿気の除去等が付随的な機能として実施されている。
換気システムの簡単なものは、自然排気・自然給気によるものである。只、最近は機械による排気・給気が主流である。それは、屋外と居室とをダクトによって連結し、換気扇の送風力によって強制的に排気・給気を行なうものである。
この発明は、気密断熱層によって隔絶された二つの通気層を補完的に活用することで、換気システムの新たな機能を効率的に提供する。新たな機能によって、エアコン等の除湿機能に頼らずに、建築的な工夫を活用して僅かのエネルギー消費で、温湿度の調節並びに空気浄化の手段を得られる。つまり、これまでの換気システムは新たな機能を付加された空調システムへと進化し、更に、究極の省エネルギー・健康・快適住宅の実現に貢献する。
自然志向の空調システムとして、その実現できる性能は革命的である。尚、夏を旨とする性能の実現の為には、含水率管理を考慮すると断熱材の組み合わせは(ハ)の事例が好適である。
請求項1に対応する発明では、循環流路内で、断熱材が吸湿し、液化の相変化を遂げる際に生じる凝縮熱を抑え、更に、相対湿度の上昇をもたらし、吸湿を促進する手段として、地熱の持つ冷却エネルギーを利用した。
自然志向の空調システムとしては、最適の手段であり、その意図する性能を好適に実現することが出来る。さて、個人の好みは多様である。自然志向の空調システムの意図する性能・操作性に満足しない人も存在する。以下の手段は、その様な人向けの空調システムを簡便に提供する。
先のシステムからもっと吸湿の効率を上げ、潜熱式の蓄冷の効率を上げるには、エアコンを用い、深夜電力の利用できる時間帯に限って、冷却エネルギーを供給する。吸放湿による除湿、並びに、H2Oの相変化に伴うエネルギー移転を利用した空調システムの効率向上に繋がる。
これは、深夜電力を利用した躯体への蓄冷機構として捉えることが出来る。即ち、従来の氷蓄熱(冷)装置に代わり、建物の建築上の工夫によって、躯体を用いた蓄冷装置の役割を果たす。
具体的には、夜間、深夜電力を利用してエアコンから冷気を放出し、それを空気の流路に従い循環する過程で、流路内の相対湿度を上げ、建物を構成する吸放湿素材を冷却する。冷却されることで、吸湿を促し・相変化(液化)によって生成される凝縮熱を吸収する。その結果、室内に流入する空気は、湿度を調整され、適温に調整される。
昼間は逆に、太陽熱の日射取得により、躯体は断熱材を含め暖められる。相対湿度との関係で、あるいは、気化に必要な運動エネルギーへと転化して、吸放湿の素材からは放湿し、気化熱により躯体を冷却する方向に働く。さて、二つの通気層の補完関係によって、断熱材に吸収された湿気の一部は断熱材を通過・透過し、H2Oの相変化を経て、外側通気層・小屋裏空間を通じ建物外に排出される。それで、室内の湿度は高くならず、又、躯体を通じた伝熱による温度上昇は抑えられ、住みよい環境を形成する。しかも、日射取得された太陽熱は全て顕熱の形で建物外に排出されるのではなく、一部は湿気という潜熱の形で建物外に排出される。但し、窓を通じての太陽熱エネルギーの浸入及び換気時の熱損失は避けられないので、その影響による温度上昇を抑制し、快適な室内の温熱環境を実現するために昼間エアコンから冷却エネルギーを供給する。更に、昼間も輻射冷房の効果を実現するには、エアコンから昼間空気の循環流路内に冷却エネルギーを供給する。何れも、断熱材に蓄熱して発生する輻射熱を抑える為に用いるわけではないので、昼間の電気使用量が著しく増加するわけではない。
ところで、潜熱式の排熱は無限に行なえるわけではない。即ち、断熱材が吸湿・放湿するに当たり、H2Oの相変化の一面である液化により生成する凝縮熱をエアコンの冷却エネルギーによって吸収する量に応じて、気化熱により太陽熱エネルギーを吸収する量が限定される。そして、その限定された範囲ではあるが、輻射熱の影響を軽減し、屋内の温度上昇の抑制に貢献できる。(地熱・放射冷却を考慮しない場合)
結局、深夜電力を利用してエアコンを稼動し、冷却エネルギーを供給することで、そのエネルギーの一部を潜熱的に仕上げ材・構造材・断熱材に蓄冷し、昼間の暖かくなった時点で放冷し、屋内の温度上昇を抑えることが出来る。又、気化熱による太陽熱エネルギーの吸収は、湿気という潜熱の形に変えた熱エネルギーの放出・移転である。その上、冷却エネルギーの一部は夜間・昼間を問わず顕熱的に蓄冷され、エネルギー変換を遂げて輻射冷房の効果を与え、昼間の電気使用量を抑えながら快適な温熱環境の実現に貢献する。
さて、エアコンを流路内の床下空間・天井裏空間の両方に配設すると、冷却エネルギーは流路を好適に流通する。但し、床下空間にのみ配設する場合、流路内の流通に工夫を要する。具体的には、床下空間から送風ファン・連通管を通じて天井裏空間に冷却エネルギーを送ると、流路内での流通並びに部材への供給は好適に行なわれる。
尚、エアコンの生成・供給する冷却エネルギーは地熱・放射冷却の自然エネルギーに比較すると圧倒的に大きい。それで、大きなエネルギー供給能力を活かすには、気密断熱層内における屋内からの吸湿・吸冷及び気密断熱層での屋内から屋外へのエネルギー移動・H2Oの移動及び屋外への潜熱的排熱のそれぞれの機能が効率を向上することが必要である。そして、それらの相乗効果によって最適な除湿・遮熱システムを得られる。
さて、気密断熱層に用いる断熱材は、北側の壁体を除いて吸湿の際に冷却エネルギーの吸収の効率を高めて液化を促し、液体の状態のまま吸収し、結露を生じない断熱材を用いる。エアコンによる冷却エネルギーの生成・供給の増加を遮熱・除湿の効果の向上に繋げるには、気密断熱層における断熱材の属性による吸湿・吸冷野効率向上が不可欠である。それで、気候特性によりX+X、X+Yの断熱材の重ね合わせを採用する場合、吸湿・吸冷する屋内側に必要な機能(X)を設ける。
に記載の通り、断熱材内でH2Oの気化・膨張に伴う湿気移動の圧力は高まる。一方、屋内からの吸湿・吸冷は、エアコンの冷却エネルギーの生成・供給能力及び断熱材の吸湿・吸冷能力の向上により高まり、液化し液体状のH2Oとして空隙内を埋める形で保持される。その分、断熱材の気密性能は向上する。それで、液体状のH2Oが気化・膨張し、湿気として伝導する際は、気密性能を高めて壁として湿気の伝導を阻止する。それで、屋内側への湿気の伝導は進まず、空隙を通じた屋外側への湿気の伝導は進展する。そして、屋外でのファンの働きとの相乗効果で、屋外への湿気伝導の効率は高まる。
ところで、液体状のH2Oの伝熱性を通じて空隙内の気体状のH2Oに冷却エネルギーを供給して液化を促し、あるいは、湿気伝導の効率の向上によって、気圧上昇した空隙内の気圧の低下に繋がり、新たな運動エネルギーを太陽熱エネルギーの日射取得により獲得して、屋内から供給された液体状のH2Oの気化を繰り返すことが出来る。つまり、液体状のH2Oの伝熱性およびH2Oの相変化を活用して断熱性に背反する伝熱性を創出し、屋内から屋外へのエネルギー移動を可能とする。しかも、H2O移動の効率向上にあわせて、冷却エネルギー移動の効率も向上する。結局、含水率の上昇を必要としないで、諸々の機能の効率を高め、又、それら機能の相乗効果によって、除湿・遮熱の効果を一層高めることが出来る。
エアコンはエネルギー消費効率の高く、性能のいいものを使用することで、省エネルギーに貢献する。更に、昼間に比較して夜間は、気温の低下により必要な冷房温度との差が小さくなり、少ないエネルギー消費で必要な冷房温度に達する。結局、機器の性能、あるいは、使用する環境の二つの面から、省エネルギー効果を上げられる。
ところで、給湯システムにも深夜電力の利用が図られている。具体的には、深夜電力を利用して熱湯を作る。深夜に貯湯された熱湯を、昼間から夜間の給湯のエネルギーとして利用する。それで、この熱湯を作る際に必要なエネルギーの一部を、深夜の冷房・除湿の為に稼動するエアコンから排出される凝縮熱等を活用して賄えれば、更にエネルギー消費効率の高い給湯システムを構築できる。
対流熱の形でエネルギーを供給できるエアコンは、対流熱エネルギーの形で空気の流路に供給し、蓄熱体・躯体に対しそのまま潜熱的に蓄冷・放冷し、冷房のエネルギーとして利用できるので、熱交換に伴う熱損失を避けられる好適な機器といえる。又、凝固・融解によって放熱・蓄熱する蓄熱体を循環流路内に配設するのは、対流熱エネルギーの形でエネルギー移動を行なう上では好適である。しかも、蓄熱体に夜間に蓄冷し、昼間に周囲の温度を感知しながら放冷するので、深夜電力のみをエネルギー源としながら、24時間安定して冷却エネルギーを供給し・利用することが出来る。
尚、エアコンは天井裏空間と床下空間のそれぞれには配設して利用するのが好適である。更に、蓄熱体と併せて用いると好適である。
通常、暖気は軽く上昇し易く、冷気は重く下降し易い。それで、エアコン並びに蓄熱体を床下空間に配設した場合、冷気は床下空間に滞留し易く、流路内を上昇する力は弱い。又、床面は断熱性能の高い杉板等を用いるので、床下空間は四方を断熱材で囲われた状態に等しい。それで、屋外の温度変化の影響を受けにくく、蓄熱体からの放冷は長時間持続でき、冷却エネルギーを安定して供給出来る。その結果、室内の温度が多少上がっても、床面を通じた輻射冷房効果を得られる。
躯体とは別に潜熱式の蓄冷手段を得られると、蓄冷量を躯体と蓄熱体の両方に分散することが出来る。それで、躯体への蓄冷の負担を軽減できる。その結果、躯体への潜熱式蓄冷による躯体の含水率の上昇を抑えることが出来る。それで、安価な繊維質の断熱材(インシュレーションボード等)の利用に道が拡がる。
更に、エアコンの機器は冬の間、暖房機器として使用できる。又、先の蓄熱体を併用することで、夜間の内にエアコンから供給された熱エネルギーを蓄え、昼間に周囲の温度を感知しながら放熱することで、一日中暖房のエネルギーとして利用できる。即ち、深夜電力を用いたエネルギー消費効率の高い輻射暖房システムを実現できる。
深夜電力は、社会的に見れば余剰の電力で、昼間の料金に比較して約25%の料金で利用できる。社会的エネルギー需給のバランスの上からも、個人の家計の負担軽減の上からも、選択の余地はある。
太陽の日射時間が少なく、雨の日が続く湿度の高い梅雨時、あるいは、断熱材の組み合わせによっては、屋内の湿度を快適な状態に保持するには工夫が必要である。
自然志向が強く、快適とされる湿度70%以下の実現を目安とする場合、季節的サイクルに基づく湿度の調節機能によって、目標とする室内環境は実現できる。具体的には、冬季の間、屋内の湿度は恒常的に40〜50%に保たれている。その湿度に対応して、吸放湿性の材料は放湿によって含水率を下げている。それで、梅雨時を迎えるに当たっては、所要の相対湿度との関係では吸湿余力を残している。それで、躯体の吸放湿機能によって、快適とされる室内の湿度を70%以下に保持することが出来る。
只、湿度60%辺りを湿度調節の目安とする場合、深夜電力の利用を検討する。 夜間は、設定湿度60%でエアコンの除湿機能を稼動すると、換気装置を経て床下空間に導入された外気は、循環流路を流通する過程で内装仕上げ材・構造材に含まれる余分な湿気の放湿煮より、湿度上昇し、更なる、流通過程で気密断熱層への吸放湿により湿度60%辺りに保持出来る。
昼間は、エアコンの除湿機能を稼動しない。同じく、外部から導入された外気は流路を流通する過程で、流路を構成する内装仕上げ材・構造材に調湿され、流路から室内に流入する際には快適な湿度とされる60%辺りを保持することが出来る。尚、床下空間で除湿する際の気温と室内に流入する際の気温の差によって、絶対湿度の上昇にも関わらず、相対湿度の数値は大きく変わらない。
その上更に、気密断熱層の具備する吸放湿機能による屋内から屋外への湿気の排出機能、並びに、建物を構成する構造材・仕上げ材あるいは炭等の調湿材の具備する保水・吸放湿機能を活用することによって、深夜電力を利用できる時間帯に除湿機能を稼動するのみで、24時間湿度60%辺りを保持できる。
炭・シリカゲル等の調湿材は床下空間に限らず、空気の循環流路内の何れかに分散して配置するも可である。
結論として、エアコンの除湿機能の稼動は、躯体の季節的サイクルによる調湿効果で室内の湿度を60%に保持できない場合に利用すると、少ないエネルギー消費で狙いとする調湿効果を得られる。又、躯体への吸湿を必要以上に促進しないので、含水率上昇による弊害を予め阻止することが出来る。
断熱材の組み合わせに(イ)を選択した場合の空気循環の流路について。
温暖地に比較して極寒地に近い気候の下では、暖房の結果、冬季は屋内と屋外との温度差は激しい。それで、気密断熱層を通じた湿気の出入り、並びにH2Oの相変化に伴う熱エネルギーの移動については、夏季と逆方向の動きをリスクとして対処することが肝要である。連通口を開閉する手段によって、冬季と夏季とで空気循環の流路を変更する。それによって、気密断熱層によって隔絶される天井裏空間と小屋裏空間の連携を好適に制御することが出来る。
冬季は、室内と天井裏空間を連通する連通口を閉じることで、天井裏空間から室内への空気の流れはなくなる。それで、天井裏空間への流路は空気循環路から外れ、空気の供給は促進されない。それで、気密断熱層によって隔絶される二つの空間の連携は絶たれる。その結果、気密断熱層を通じた天井裏空間と小屋裏空間との間の湿気の出入りは促進されず、それを要因とする熱損失は避けられる。
空気循環は、内壁に設けた連通口を通じて内側通気層と室内空間を連通し、給気用連通管により導入された外気は床下空間・内側通気層を通じた流路を経由する形で行なわれる。更に、床下空間で熱エネルギーの供給を受けると、床下空間・内側通気層を通じた流路を経由する過程で、熱エネルギーを移転し、顕熱的に効率よく蓄熱する。そこで、前項に記したエアコンから床下空間に熱エネルギーを供給すると、十分なエネルギー量が蓄熱され、輻射熱としての暖房効果を好適に得られる。
夏季は、内壁に設けた連通口の一部を閉じ、天井に設けた連通口を開放して天井裏空間と室内空間並びに内側通気層と室内空間を連通し、床下空間・内側通気層・天井裏空間を通じた流路を確保する。そこで、給気用連通管により導入された外気は、床下空間・内側通気層・天井裏空間を通じた流路を経由する。それで、気密断熱層によって隔絶される天井裏空間と小屋裏空間との連携は確保・促進される。そして、隔絶された二つの空間の連携を促進する機構の働きにより、流路を流通する湿気は気密断熱層を通じて小屋裏空間に放出される。
断熱材の組み合わせに(ロ)を選択した場合のリスク管理について。
空気循環に関しては、前項と同様に考え、天井裏空間を流路に編入するか、流路から外すかという季節の変化に伴う選択を行なう。
ところで、北側を除く壁体は断熱材を二層にし、透湿防風防水シートで三層構造に構成し、その外側は吸放湿機能を具備する断熱材とする。この場合、外側の断熱材は冬季の外気のもたらす冷気により冷やされる。只、断熱材の保持するH2Oの相変化によって、この冷気を吸収することが可能である。つまり、液化という相変化の際に生成される凝縮熱の働きを利用して、冷気を吸収する。それで、外気の冷たさは緩和される。
昼間は、太陽熱の日射取得により壁面は暖められ、外側通気層内の相対湿度は低下する。更に、冬季でも気化という相変化に必要な運動エネルギーを日射取得し、断熱材内での気化・膨張及び湿気の伝導を経て壁体からの放湿を促す。昼間のこの働きは、夜間の冷気を吸収する準備であると位置づけられる。
この凝縮熱の働きを勘案すると、断熱材の実際の断熱性能は、熱貫流率という数値で表される数値以上の性能を有することになる。それで、夜間の冷気による外壁を通じた熱損失を軽減することが出来る。更に、屋外の冷気により液化したH2Oは透湿防風防水シートを透過しない。それで、屋内の循環流路に暖気を供給したとしても、内側通気層を通じた熱損失を増幅することはない。輻射暖房効果を実現する場合に、好都合である。但し、これは地域の気候特性を参照しながら、採用しなければならない。
ところで、遮熱機構の働きの上で、液化による相変化を経て「水」を確保する。先に言及した様に、最初から「水」の状態で供給すれば、液化に必要な冷却エネルギーを消費することも無い。
そこで、断熱材を二層構造とした場合、外側の断熱材に直接「水」を吸収させても、透湿・防水フィルム並びに合成樹脂系の断熱材の働きにより、内部まで吸収されない。それで、太陽の日射取得及び相変化によって、屋外に湿気を排出できる。つまり、直接「水」を吸収し、その気化熱により太陽熱を吸収する効果を得ながら、吸収した水の弊害を抑えることが出来る。
これを、屋根の箇所で検討すると、民家造りに見られる茅葺きに同じ原理が応用されている。これは、雨水を茅葺き層に滞留し、太陽熱を運動エネルギーとして気化し、その気化熱によって太陽熱を吸収する。しかも、通風を確保することで、屋内への悪影響を阻止するものである。只、屋内側への湿気の排出も無視できないので、実用化を図るには更なる工夫が必要である。
更に、(ハ)の組み合わせを選択した場合のリスク管理について。
内側通気層を中壁により更に二つの通気層に区分する。その一つは、冬季用の通気層として活用し、その一つは夏季用の通気層として活用する。冬季用の通気層並びに夏季用の通気層の使い分けは、以下の様にして行なう。
夏季用の通気層(12−B)には室内空間との間に開閉式の連通管により連通する。又、二つの通気層は透湿性の中壁(プラスターボード等)により隔てられ、その下端で連通口により連通する(32)。
夏季は、開閉式の連通管を開放する。室内空間は屋外への排気により負圧に保たれているので、給気用連通管を通じて導入された外気は夏季用の通気層から開閉式の連通管を通じて室内に流入する。その空気の流れに従う形で、床下空間・連通口・夏季用の通気層・開閉式連通管・室内空間の流路が確保され、酸素・湿気・揮発性の化学物質等は流路を流通する。尚、内壁に設けた連通口の一部を閉鎖することで、気圧差を利用した空気循環の流通を好適に保つことが出来る。
冬季は、開閉式の連通管を閉じる。それで、夏季用の通気層は空気循環の流路から除外される。尚、二つの通気層を連通する連通口を開閉式と無し、冬季に閉じると流路からの除外は更に徹底的に行なわれる。開閉には、公知の技術である形状記憶合金の性質を利用すると好適である。その結果、冬季用の通気層(12−A)は空気循環の流路として好適に機能する。この時、夏季用の通気層は通気を断たれることで断熱空気層として働き、熱損失を軽減する。それで、輻射暖房効果を好適に得られる為に必要な熱エネルギーの供給及び蓄熱は、冬季用の通気層を通じて好適に行なわれる。
もしくは、0085に記載した様に、断熱材の重ね合わせにより、断熱材の断熱性能の表される熱貫流率の数値以上の性能を実現し、冬季の熱損失を軽減することでリスク管理を好適に行なう。
気密断熱層に吸放湿機能を具備しない場合、昼夜を問わず夏季の湿度調節という課題が残る。この場合でも、梅雨時の太陽の日射取得を得られない時期と同様の方法により、深夜電力の利用できる時間帯のみエアコンの除湿機能を稼動し、24時間常に室内の湿度を好適に保持することが出来る。
この場合、気密断熱層を通じた屋内から屋外への湿気の排出機能は無いので、屋内の調湿材の負担は増大する。それで、必要な吸放湿の容量・機能を確保するためには、構造材・仕上げ材等の吸放湿機能に加えて、炭・シリカゲル等の調湿材を別途空気の循環流路内に配置する。
前記(ハ)の断熱材の組み合わせを選択する場合は、自然志向の住宅選びが基準の一つに上げられる。それで、先の輻射暖房効果を得る為の熱エネルギーの供給源として、太陽熱エネルギー活用の可能性を開拓したい。具体的には、窓を通じて得られる日射取得に関わる太陽熱エネルギーにより昼間に必要な暖房のエネルギーを確保し、あるいは、屋根面に注がれる太陽熱エネルギーを公知の簡単な手段で集熱し、床下空間等の流路に配設された蓄熱体に供給し・蓄熱する。そして、蓄熱体を構成する蓄熱材の凝固・融解の相変化により、日没後の周囲の温度変化に応じて放熱し、日没後の暖房のエネルギーを供給する。
ところで、屋根面に日射する太陽熱は、屋根通気層を通じて屋根棟下空間において集熱する。そして、熱交換式換気扇に直結し、その送風能力によって床下空間に暖められた空気を送る。そして、循環流路を流通する過程で顕熱的効果によって、輻射暖房を実現できる。
この方法の利点は、換気システムの送風設備を活用することが出来るので、装置の上でも、あるいは、駆動エネルギーの上でも、二重の負担を生じないところにある。この時、換気扇の熱交換機能は停止する。そして、屋根面で集熱した暖かい空気は、適宜フィルターを用いて塵・虫等を除去された後、床下空間に導入され循環流路を経由して室内に流入する。
凝固・融解の相変化を蓄冷(熱)・放冷(熱)に活用できる蓄熱体は、その相変化の温度の設定によっては、蓄放冷・蓄放熱の両方の手段を提供する。
凝固・融解の温度を21℃から23℃近辺の温度域に設定できれば、深夜電力とエアコンの組み合わせの中で、夏季の輻射冷房並びに冬季の輻射暖房に必要なエネルギーの蓄放冷・蓄放熱の手段を好適に提供できる。
自然志向から冬季の太陽の日射取得により熱エネルギーを確保する場合、凝固・融解の温度は若干幅を大きくとり、19℃から23℃見当に設定すると太陽熱を好適に蓄熱し・活用できる。具体的には、日没後は周囲の温度に応じて蓄熱体から放熱し、床下空間に熱エネルギーを供給する。そして、循環流路を流通する過程で顕熱的蓄熱効果によって、輻射暖房を実現できる。
さて、寒冷地において冬季の間にヒートポンプ式エアコンの高いエネルギー消費効率(COP)を維持するには工夫が必要である。
エアコンのCOPの数値は、暖房時の室内温度20℃・屋外温度7℃の条件下でのエネルギー消費効率を示している。それで、屋内温度が7℃を下回る条件下では、エネルギー消費効率は低下する。換言すると、ヒートポンプ式エアコンの魅力が低下する。そこで、寒冷地でもヒートポンプ式エアコンを魅力あるものとするには、エネルギー消費効率の低下を避け、高い効率を維持できる工夫が求められる。具体的には、24時間換気システムの駆動の際に外部に放出される空気とともに排出される熱エネルギーの回収をエアコンの室外機を利用して行なう。以上の工夫を加えることで、ヒートポンプ式エアコンを寒冷地で使用する際に生じるエネルギー消費効率の低下を緩和することが出来る。
住宅の空調方法として、その快適さ・健康に及ぼす影響・蘇生力等の比較では、輻射冷房・輻射暖房に勝るものはない。それで、地域の気候特性・断熱材の組み合わせ・省エネルギー・ヒートアイランド化抑制等を勘案しながら、背理的機能である輻射冷房・輻射暖房効果の実現を、夏・冬の太陽熱エネルギー・深夜電力・HP式エアコン・潜熱式蓄熱体等エネルギー供給手段との好適な組み合わせの中で実施する。
断熱材の組み合わせは、いずれも選択できる。地域の気候特性に関わりなく、先のエネルギー供給手段の運用方法等によって、その違いを吸収する。尚、気密断熱層を通じた冬季の熱損失を避ける為、外側通気層を後記の断熱空気層として活用すると、寒冷地から温暖地まで、右実施例を好適に実施できる。
潜熱式蓄熱体の相変化(凝固・融解)の温度域を21℃から23℃の間を中心に設定する。
夏季は、夜間エアコンから冷却エネルギーを床下空間等の流路に放出する際の温度は凝固点を考慮すると、21℃以下である。昼間は、蓄熱体からのエネルギー移転により、融解点23℃と同程度の温度を床下空間で保持できる。
冬季は、夜間エアコンから融点23℃以上の温度で放出し、同程度の温度を床下空間で保持する。昼間は、蓄熱体からのエネルギー移転により、凝固点21℃程度の温度が床下空間で保持される。
上記の凝固・融解の温度は、冷暖房の方法をもっぱら対流熱エネルギーによる温熱環境の実現に依存する場合、冷房の温度としては低過ぎ、特に夜間の冷房エネルギー供給に関しては不適である。しかし、対流熱エネルギーを放射熱エネルギーに変換し、輻射式の冷暖房方法に依存すると事情は変わる。
夏、床下空間等の流路で22℃から23℃の間に保たれた空気は、内側通気層から天井裏空間へ通じる空気の流路を流通する過程で、内壁仕上げ材・柱等の構造材・断熱材の躯体に蓄冷する。エネルギーを躯体に移転した後の対流熱エネルギーは人肌に優しい温度に変わり、暑過ぎず・寒過ぎない好適な温熱環境を実現する。
夏季、建物内の流路を冷気が流通するのを阻害する最大の要因は、昼間の太陽熱の蓄熱効果により発生する輻射熱である。それで、輻射熱の発生を抑制することが大きな課題となる。ところで、遮熱対策として吸放湿機能を具備する断熱材を用い、構造材・仕上げ材等にも吸放湿機能が備わっているので、太陽熱から運動エネルギーを獲得してH2Oが相変化して気化する際に、輻射熱の発生を抑制する。それで、空気の流路は好適な状態を保持できる。
床下空間・天井裏空間で供給された冷却エネルギーは空気の流路を流通する過程で躯体に蓄冷するが、一方躯体は空気中の湿気を吸収し、相変化で液化する過程で凝縮熱を発生する。つまり、潜熱式の蓄冷効果によって、表面上の温度変化は起こらない。それで、対流熱エネルギーによる温度変化は最小限に抑えられる。
建築的な工夫により、床下空間・内側通気層・天井裏空間を連通する流路を確保し並びに流路を流通する過程で躯体に蓄冷(顕熱)し、対流熱エネルギーを放射熱エネルギーに変換する機構を形成する。対流熱エネルギーの一部を放射熱エネルギーに変換することで、室温の面で好適な環境の実現に貢献する。又、吸放湿機能を備える断熱材等の潜熱式の蓄冷により対流熱エネルギーは吸収される。更に、上記流路を流通する過程で熱損失により外部へのエネルギー移転も生じる。結局、床下空間で22℃から23℃に保たれた空気は、空気循環システムにより先の流路を流通する過程で様々な形でエネルギーを移転し、対流熱エネルギーの形で室温を形成する際には25℃から26℃の好適な環境を実現する。
輻射暖房の技術は公知の技術であるが、全国的には普及の途上にある。その技術の中核は、施工上の高い技能による高い気密性能の確保にある。設計上の工夫では、断熱材を二層構造とすることで高い気密性能・地域特性に応じた断熱性能を実現できる。施工技能に設計上の工夫を加えて、C値0.5以下、Q値1.8以下の高性能を実現できる。更に、設計段階では、建築的な工夫及び連通口の開閉により、床下空間・内側通気層から室内を連通する流路を確保し並びに流路を流通する過程で躯体に蓄熱し、対流熱エネルギーを放射熱エネルギーに効率的に変換する機構を形成する。対流熱エネルギーの一部を放射熱エネルギーに変換することで、室温の面で好適な環境の実現に貢献する。
昼間の太陽熱エネルギーもしくは深夜電力によりエネルギー消費効率の高いエアコンから供給される熱エネルギーを活かし、24時間を通し、好適な環境を実現する。
前記の手段で確保された熱エネルギーは一部を床下に配設された潜熱式蓄熱体に蓄熱される。それで、熱エネルギーが継続的に供給されなくとも、床下空間の温度が低下すると放熱し、一定の温度を保持する。ここでは、凝固・融解の温度を21℃から23℃の間に設定された潜熱式蓄熱体は、温度センサーの助けを借りずに、床下空間において蓄熱・放熱を繰り返し、熱エネルギーの安定供給に貢献する。
冬季、床下空間で21℃から23℃の間に保たれた空気は、空気循環システムにより冬季用の流路を流通する。
夜間、床下空間で23℃を保った空気は、前記流路を流通する過程で躯体への蓄熱あるいは外部へのエネルギー移転である熱損失により、連通口より室内に流入する際には、室温20℃前後を保持する。
昼間、床下空間で21℃を保った空気は、前記流路を流通する過程で躯体への蓄熱あるいは外部へのエネルギー移転である熱損失により、連通口より室内に流入する際に温度低下するものの、太陽の日射取得もあり、室温20℃までは低下しない。むしろ、太陽の日射による室温上昇に注意が必要である。
以上の効果で、外気の温度の高低に関わらず、室温は恒常的に20℃前後を確保できる。20℃の室温は対流熱エネルギー主体であれば必ずしも暖かいとは言えない。しかし、輻射暖房の特徴は、対流熱エネルギーの一部を放射熱エネルギーに変換することで、室温に関係なく直接住む人の身体の内部(細胞レベル)に放射熱エネルギーを伝えることにある。条件が整えば、床・壁・天井の六面から輻射熱エネルギーを受けることが出来る。室温20℃で暖かい好適な環境を実現出来るのは、輻射式暖房方法の優位なところと言える。
断熱材の組み合わせは、(ロ)もしくは(ハ)を選択するのが好適である。
寒冷地において請求項1に記載のシステムを利用する場合、その気候特性を考慮した利用によりランニングコストを抑えて好適な住環境を得られる。
夏季は、寒冷地と言えども昼間の気温は温暖地に比べて目立って変わらない。只、夜間に限れば温暖地に比較すると外気温の低下は著しい。それで、夜間の冷気を昼間に日射取得する太陽熱エネルギーの吸収に利用する。
請求項1に記載の技術により、換気システムにより夜間温度低下した外気を取り入れる。地熱と併せて、循環流路を流通する過程で気密断熱層に冷却エネルギーを供給し、潜熱的に蓄冷する。そして、H2Oの相変化と吸放湿機能との連携を日射取得する太陽熱エネルギーの吸収により促進し、昼間の遮熱・除湿に利用することが出来る。夜間の温度低下の大きさから、地熱と屋外側で供給する放射冷却エネルギーとを併せれば、昼間の遮熱・除湿効果は十分得られる。
冬季は、深夜電力利用による輻射暖房の効果を実現することは可能である。しかし、エアコンは一般に寒冷地ではエネルギー消費効率が低下する。それで、別のエネルギー供給手段を検討する。例えば、灯油を使ったボイラーを利用する。その場合、同じく循環システムを利用する為に床下にボイラーを設置する。床下で温められた空気は冬季用の循環流路を流通し、熱エネルギーを供給し、エネルギー変換を遂げた後の輻射熱の利用が可能である。冬季の空気循環の流路は、夏季と異なり、連通する空間から天井裏空間を除いて構成する。それで、天井裏空間と小屋裏空間とを隔てる気密断熱層を経た熱損失の増加を阻止出来る。
断熱材の組み合わせは、(ロ)もしくは(ハ)のいずれを採用するも可能である。尚、外側通気層への下端からの通気は、熱損失を招く冷却エネルギーを継続的に供給する。それで、熱損失を防ぐ手段として、外側通気層に空気流入を阻止する開閉弁を設けると、通気層が断熱空気層の役割を果たし、断熱性能を高める上で効果的である。しかも、気密断熱層への潜熱的蓄冷により、気密断熱層に熱還流率で表される数値以上の断熱性能を実現する。尚、地域の気候特性次第では、二種の断熱性能の向上策との併用も可能。
本発明の実施の形態を示す概略断面図である。 図1に示す建物の壁体の斜断面詳細図である。 図1に示す建物の壁体の斜断面詳細図である。 実施例を示す建物の壁体の断面詳細図である。 夏季の空気循環流路内の流通を示す。 冬季の空気循環流路内の流通を示す。
符号の説明
1.棟換気口 2.屋根棟下空間 3.開閉式通気口
4.屋根材 5.屋根下地材 6.屋根通気層
7.断熱層 8.気密断熱層 9.外側通気層
10.小屋裏空間 11.天井裏空間 12.内側通気層
13.床下空間 14.内壁下地材 15.壁仕上げ材
16.屋根棟下換気口 17.送風ファン 18.連通管
19.給気用連通管 20.排気用連通管 21.外壁下地材
22.外壁 23.天井仕上げ材 24.室内空間
25.コンクリート 26.熱交換式換気扇 27.連通口
28.透湿防風防水シート 29.エアコン 30. 床
31.開閉式連通管 32.開閉式連通口 33.中壁
34.蓄熱体

Claims (13)

  1. 建物を囲む気密断熱層を境に、建物外と密閉状態のもと、
    前記建物の床下空間と内側通気層と天井裏空間とを連通し、
    前記内側通気層もしくは天井裏空間の何れかと室内空間とを連通口により連通
    し、
    前記建物の室内側から、壁仕上げ材、内側通気層、壁下地材、気密断熱層、外壁下地材、外側通気層、外壁で構成され、
    前記建物の屋根棟下空間と屋根通気層とを連通し、屋根棟下空間の上端は棟換気口を通じて常時外気に開放され、屋根通気層の下端は常時外気に開放され、
    前記建物の小屋裏空間と外側通気層とを連通し、小屋裏空間の上端は開閉式の通気口により屋根棟下空間に連通し、外側通気層の下端は外気に開放され、
    前記建物の室内側から、天井仕上げ材、天井裏空間、天井下地材、気密断熱層、小屋裏空間、断熱層、屋根下地材、屋根棟下空間及び屋根通気層、屋根材で構成され、
    前記気密断熱層は吸放湿性を具備する断熱材を用い、
    前記気密断熱層の内、全ての気密断熱層は、H2Oの相変化(液化・気化)を媒介する断熱材の吸放湿機能により吸湿・吸冷し、30℃の常温で気化・蒸発し、屋外に排出し、その上、北側の壁体を除いた気密断熱層は、高温・湿潤の季節に日射される太陽熱エネルギーを吸収し、湿気という潜熱の形に閉じ込めて屋外に排出し、
    前記小屋裏空間の上端は、送風ファンと連通管とから構成される送風設備に連結する屋根棟下換気口を通じて外気に開放され、
    前記建物外と室内空間とを排気用連通管により連通し、
    前記建物外と床下空間とを給気用連通管により連通し、
    前記排気用連通管及び給気用連通管は送風機能を具備する全熱交換式換気扇に連通し、
    前記排気用連通管の一端を便所・浴室・押入を含む各居室に連結して建物外に排気し、前記給気用連通管を通じて外気を取り入れ、床下空間・内側通気層・天井裏空間を経由する中で前記気密断熱層は建物内の湿気・汚染物質及び有害な揮発性の化学物質を吸収し、外側通気層、小屋裏空間を経て建物外に排出し、居室空間の空気環境(酸素濃度、温度、湿度、揮発性の化学物質濃度)を好適に保つことを特徴とする屋内環境改善建物。
  2. 前記気密断熱層の内、北側の壁体の気密断熱層は吸放湿性を具備せず透湿抵抗値の大きい断熱材を用い、東・西・南側の壁体の気密断熱層並びに天井裏空間と小屋裏空間とを隔てる気密断熱層は、吸放湿性を具備する断熱材を用い、
    前記気密断熱層の内、北側の壁体を除いた気密断熱層は、H2Oの相変化(液化・気化)を媒介する断熱材の吸放湿機能により吸湿・吸冷し、30℃の常温で気化・蒸発し、屋外に排出し、その上、高温・湿潤の季節に日射される太陽熱エネルギーを吸収し、湿気という潜熱の形に閉じ込めて屋外に排出することを特徴とする請求項1 に記載の屋内環境改善建物。
  3. 前記気密断熱層の内、壁体の気密断熱層は吸放湿性を具備せず透湿抵抗値の大きい断熱材を用い、天井裏空間と小屋裏空間とを隔てる気密断熱層は、吸放湿性を具備する断熱材を用い、
    前記気密断熱層の内、天井裏空間と小屋裏空間とを隔てる気密断熱層は、H2Oの相変化(液化・気化)を媒介する断熱材の吸放湿機能により吸湿・吸冷し、30℃の常温で気化・蒸発し、屋外に排出し、その上、高温・湿潤の季節に日射される太陽熱エネルギーを吸収し、湿気という潜熱の形に閉じ込めて屋外に排出することを特徴とする請求項1に記載の屋内環境改善建物。
  4. 前記壁体の気密断熱層の内、東・西・南側の壁体の気密断熱層は、屋内側から吸放湿性を具備しない断熱材と透湿防風防水シートと吸放湿性を具備する断熱材との三層構造により構成することを特徴とする請求項2に記載の屋内環境改善建物。
  5. 前記気密断熱層の内、壁体の気密断熱層は、吸放湿性を具備する断熱材と透湿防風防水シートと吸放湿性を具備する断熱材との三層構造により構成し、冬季に液化の際に生成する凝縮熱により屋外からの夜間の冷気を吸収することを特徴とする請求項1に記載の屋内環境改善建物。
  6. 前記気密断熱層の内、東・西・南側の壁体の気密断熱層は、吸放湿性を具備する断熱材と透湿防風防水シートと吸放湿性を具備する断熱材との三層構造により構成し、冬季に液化の際に生成する凝縮熱により屋外からの夜間の冷気を吸収することを特徴とする請求項2に記載の屋内環境改善建物。
  7. 前記の送風ファンは夏季の昼間に限定して稼動し、日没後は稼動しないことを特徴とする請求項1又は2又3又は5に記載の屋内環境改善建物。
  8. 前記の送風ファンは夏季の昼間に限定して稼動し、日没後は稼動しないことを特徴とする請求項4又は6に記載の屋内環境改善建物。
  9. 土間コンクリートの下部に断熱材を敷き置きすることを特徴とする請求項7又は8に記載の屋内環境改善建物。
  10. 前記内側通気層もしくは天井裏空間の何れかと室内空間とを開閉可能な連通口により連通し、連通する前記床下空間と内側通気層と天井裏空間の間に形成される空気の流路を夏と冬で変更することを特徴とする請求項7又は9に記載の屋内環境改善建物。
  11. 連通する前記床下空間・内側通気層・天井裏空間で構成する流路内に、高効率のヒートポンプ式空気調和機(エアコン)を設置することを特徴とする請求項10に記載の屋内環境改善建物。
  12. 前記の吸放湿性を具備する断熱材に、屋内からの吸湿の際の冷却エネルギー吸収の効率化により液化を促し、H2Oの液体の状態で吸収できる断熱材を用いることを特徴とする請求項11に記載の屋内環境改善建物。
  13. 連通する前記床下空間・内側通気層・天井裏空間で構成する流路内に、温度域21℃から23℃を中心に凝固・融解の相変化する蓄熱材から構成される蓄熱体を備え、
    前記エアコンの駆動エネルギーを深夜の時間帯に限定して利用できることを特徴とする請求項11又は12に記載の屋内環境改善建物。


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