JP2006109964A - 光生体計測装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 少なくとも3つの異なる波長λn(但しn≧3)にて吸光度変化量を測定して測定吸光度変化量ΔAm(λn)を取得する光学測定部10と、測定吸光度変化ΔAm(λn)に基づいて、最小自乗法により、オキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[deoxyHb]を算出する濃度変化量・平均光路積演算部22と、計算により計算吸光度変化量ΔAc(λn)を算出する計算吸光度変化量演算部23と、測定吸光度変化量ΔAm(λn)と計算吸光度変化量ΔAc(λn)とに基づいて残差自乗和D、または、残差自乗和率Eを算出する残差自乗和/残差自乗和率演算部24と、残差自乗和D、または、残差自乗和率Eを、基準値Rと比較することにより、アーチファクトを含むか否かの判定を行う判定部25とを備える。
【選択図】図1
Description
近赤外光のこのような性質は、近年、脳、各種臓器、筋肉等の生体の活動状態を、非侵襲で計測する近赤外分光分析法(Near infrared spectroscopy、以下NIRSと略す)と呼ばれる計測方法に利用され、脳機能測定装置や酸素モニタとして実用されている。
図9は、トレッドミル走行によって運動負荷を与えたときの測定データに基づいて算出されたオキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、全ヘモグロビン濃度の経時変化データを、図8に示した36個の測定チャンネル(#1〜#36)ごとに、並べて画面に一覧表示したときの画面表示例である。
そして、吸光度信号にアーチファクトが重畳された信号を検出プローブで検出することにより、吸光度信号に基づいて算出されるオキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、全ヘモグロビン濃度(オキシヘモグロビン濃度とデオキシヘモグロビン濃度の和)のような生体信号の経時データについても、アーチファクトの影響が重畳されてしまうようになる。
しかしながら、アーチファクトが含まれているか否かの判別を、測定者の経験に基づく視覚的な評価のみで、的確に行うことは困難である。
しかしながら、実際に、この方法を用いて判定した場合であっても、信号のなかには、生体信号と考えられるが、信号が元の値に戻りきらない判定困難なデータも出現することがある。
しかしながら、運動負荷によって汗が徐々に発生し、入射プローブ51または検出プローブ52の光路に汗が入り込んで影響をおよぼす場合には、急激な変化が発生することがないため、階段状の変化が見られないアーチファクトとなる。
このような急激な変化が見られないアーチファクトは、汗に起因するものだけではなく、その他の原因によっても生じることがあり(原因が不明の場合もある)、その場合は、検出信号の単位時間あたりの変化率をモニタする方法では、アーチファクトと判定することが困難であった。
また、アートファクトが含まれる生体信号である場合に、どの時点でアーチファクトが含まれるようになったかを、的確に判断することができる光生体計測装置を提供することを目的とする。
ΔA(λn)=E0(λn)×[oxyHb]+Ed(λn)×[deoxyHb] ・・・・(1)
ただし、E0(λn)はオキシヘモグロビンの吸光度係数、Ed(λn)はデオキシヘモグロビンの吸光度係数である。
D=(ΔAm(λ1)−ΔAc(λ1))2+(ΔAm(λ2)−ΔAc(λ2))2+・・・+(ΔAm(λn)−ΔAc(λn))2 ・・・・(2)
また、残差自乗和率Eは、次式(3)で定義される。
E=D/((ΔAm(λ1))2+(ΔAm(λ2))2+・・・+(ΔAm(λn))2)
・・・・(3)
ΔAm(λ1)=E0(λ1)×[oxyHb]+Ed(λ1)×[deoxyHb]
ΔAm(λ2)=E0(λ2)×[oxyHb]+Ed(λ2)×[deoxyHb]
ΔAm(λ3)=E0(λ3)×[oxyHb]+Ed(λ3)×[deoxyHb]
・・・(4)
[oxyHb] =K11ΔAm(λ1)+K12ΔAm(λ2)+K13ΔAm(λ3)
[deoxyHb]=K21ΔAm(λ1)+K22ΔAm(λ2)+K23ΔAm(λ3)
・・・(5)
例えば、λ1=780nm、λ2=805nm、λ3=830nmとした場合は、Matcher S. J. らにより、E0(λ1)〜Ed(λ3)は、以下のように求められている。
E0(780)=0.7360、E0(805)=0.8973、E0(830)=1.0507
Ed(780)=1.1050、Ed(805)=0.8146、Ed(830)=0.7804
(Matcher S. J., Elwell C.E., et al. Performance comparison of several published tissue near-infrared spectroscopy algorithms. Analytical Biochemistry 227:54-68(1995))
この値を用いて、最小自乗法による演算を行うことによって、K11〜K23の値は、以下のように求められる。
K11=−1.4887、K12=0.5970、K13=1.4847
K21=1.8545、K22=−0.2394、K23=−1.0947
以上の計算により、算出されたオキシヘモグロビン濃度変化・平均光路長積[oxyHb]およびデオキシヘモグロビン濃度変化・平均光路長積[deoxyHb]は、生体(例えば脳)の活動データを示す生体信号として、利用することになる。
例えば、上述したように、3つの近赤外波長(λ1、λ2、λ3)で吸光度を測定したときは、計算吸光度変化量ΔAc(λ1)、ΔAc(λ2)、ΔAc(λ3)は、次式(4)で与えられる。
ΔAc(λ1)=E0(λ1)×[oxyHb]+Ed(λ1)×[deoxyHb]
ΔAc(λ2)=E0(λ2)×[oxyHb]+Ed(λ2)×[deoxyHb]
ΔAc(λ3)=E0(λ3)×[oxyHb]+Ed(λ3)×[deoxyHb]
・・・(6)
残差自乗和を算出するのは、以下の理由による。すなわち、濃度変化量・平均光路積演算部が(5)式の計算を行う際に、上述したように最小自乗法を用いているが、これは、(2)式の残差自乗和の値が最小になるように、[oxyHb]および[deoxyHb]の値を算出していることを意味する。したがって、残差自乗和を利用すれば、算出した[oxyHb] [deoxyHb]の値の最小自乗誤差の大きさを、定量的に判断することができることになる。
そして、体動にともなう急激な変化が生じるアーチファクトであれ、その他の急激な変化が生じない場合のアーチファクトであれ、その原因に関わらず、アーチファクトの影響の大きさは、最小自乗誤差の大きさの変化として現れる。
上記発明において、光学測定部は、時々刻々、測定吸光度変化量ΔAm(λn)を取得するとともに、濃度変化量・平均光路積演算部、計算吸光度変化量演算部、残差自乗和/残差自乗和率演算部、判定部が、取得した測定吸光度変化量ΔAm(λn)に基づいて経時的に算出、判定を行い、さらに、判定部によりアーチファクトを含む判定がなされた場合にアーチファクト発生時点を記憶するアーチファクト発生時記憶部を備えるようにしてもよい。
これによれば、光学測定部が、時々刻々変化する吸光度信号を経時的に測定し、測定した吸光度信号に基づいて、濃度変化量・平均光路積演算部、計算吸光度変化量演算部、残差自乗和/残差自乗和率演算部、判定部がそれぞれ動作して、アーチファクトが含まれるか否かの判定を経時的に行う。そして、判定部によりアーチファクトを含む判定がなされた場合に、アーチファクト発生時記憶部がアーチファクト発生時点を記憶するので、生体信号の経時的な変化において、アーチファクトが含まれるようになった時点を決定することができる。
したがって、測定者が測定結果を検討する際に、アーチファクトが発生する時点までのデータのみを採用したり、アーチファクト発生時点以後のデータについては、適当は補間を行って生体信号を利用したりすることができるようになる。
これによれば、オキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[deoxyHb]、全ヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[totalHb]の少なくともいずれかの経時データが、表示部に表示されるとともに、アーチファクトが含まれると判定された場合には、アーチファクトを含む領域と含まない領域とが識別可能に表示されるので、測定者は、アーチファクトの影響の有無を考慮しながら、測定結果を検討することができる。
これによれば、複数の測定チャンネルからのデータが並べて表示され、さらに、アーチファクトを含む測定チャンネルと含まない測定チャンネルとを識別する識別記号が表示されるので、アーチファクトが含まれる場合に、アーチファクトが含まれる測定チャンネルの位置関係を検討することで、そのアーチファクトの発生原因(例えば、入射プローブが原因か、検出プローブが原因かの識別)を特定することが容易になる。
図1は、本発明の一実施形態である光生体計測装置の構成を示す図であり、より具体的には、オキシヘモグロビン濃度やデオキシヘモグロビン濃度から脳活動状態を測定する脳機能測定装置の構成を示す図である。この光生体計測装置は、主として、光学測定部10、光生体計測装置全体の制御を行う制御部20、アプリケーションプログラムや測定データを記憶する記憶部30、設定画面や測定結果を表示する表示部40とから構成される。
光源12は、発光波長が異なる3つのレーザ光源が用いられ、例えば、λ1(780nm)、λ2(805nm)、λ3(830nm)の3波長の光が、図示しない切替え機構により選択的に発光するように構成されている。
入射プローブ14は、送光ファイバ13を介して送られてくる光が頭部へ入射するように、先端が頭皮に密着する状態にしてプローブホルダ53により固定してある。
検出プローブ16についても、同様であり、プローブ先端が頭皮に密着する状態にしてプローブホルダ53により固定してある。そして、検出プローブ16により検出した光は、検出器18に送られるようにしてある。検出器18には、フォトマルチプライヤ、フォトダイオードなどの受光素子が用いられている。
そして、後述する光学測定部制御部21による制御により、一対の入射プローブ14と検出プローブ16の組み合わせが選択され、その組み合わせにより定められる測定チャンネル(図8の♯1〜♯36)のひとつについての測定が行われる。このとき、互いに光が干渉しないような組み合わせを選択することで、複数の測定チャンネルを同時に測定してもよい。
検出器18で受光した信号(吸光度信号)は、増幅器36、A/D変換器37を介して、制御部20に送られる。
この制御部20を、実行する機能に基づいて分けると、光学測定部制御部21、濃度変化量・平均光路積演算部22、計算吸光度変化量演算部23、残差自乗和/残差自乗和率演算部25、判定部25、表示制御部26とに分類することができる。
また、複数の測定チャンネルについての経時データを並べて表示する(図9参照)。この場合に、アーチファクト発生時のデータが記憶されている測定チャンネルについては、該当する経時データの背景色を他のチャンネルの背景色と異なる色にしたり、該当する経時データを太枠で囲んだりして、目立つようにする。
まず、各測定チャンネル(#1〜#36)について、3つの異なる波長にて、測定により、吸光度変化量(ΔAm)を採取する(s101)。
続いて、測定吸光度変化量(ΔAm)を用いて、平均光路長は一定として最小自乗法により、(5)式による計算を行い、オキシヘモグロビン濃度変化量[oxyHb]、デオキシヘモグロビン濃度変化量[deoxyHb]を算出し、さらに全ヘモグロビン濃度変化量[totalHb]を算出する(s102)。
さらに、測定吸光度変化(ΔAm)と計算吸光度変化(ΔAc)とに基づいて、残差自乗和D((2)式)、残差自乗和率E((3)式)を算出する(s104)。
比較の結果、基準値Rより大きいときは、アーチファクトが含まれていると判定され、アーチファクトが発生したチャンネルであることを示す背景色で表示し、また、経時データを表示しているときは、経時データのなかでアーチファクトが発生している領域の色を変えたり、マークをつけたりして目立つように表示する(S107)。
測定チャンネルは、図8に示したものと同様の配置となるように設定し、合計36個のチャンネルで信号を採取した。測定終了後に、36個の測定チャンネルからの生体信号データは、並べて表示された(図9参照)。
以下に、これらのチャンネルで採取した信号のなかから典型的な信号データについて説明する。
例えば、90秒の時点における図4(a)、図5(a)の具体的には、0.0005、0.00006であった。
したがって、残差自乗和率Eにより、アーチファクトを含むか否かを判定しようとする場合には、上記データから、基準値Rを0.00006よりも大きく、0.0005よりも小さい値を選ぶこととし、例えば0.0001程度に設定することにより、Rがこれより小さいときにはアーチファクトが含まれていないと判定できるようにする。
また、36個の測定チャンネルからの脳賦活データを、並べて表示画面に表示したときは(図9参照)、基準値Rを超えたチャンネルは、脳賦活データの背景色が変えられて表示される。図9の表示例によれば、例えば、#2、#3、#8、#9の4つの測定チャンネルについて、異なる背景色で表示される。この結果、これら4つチャンネルの測定の際に共通して使用されていた特定の入射プローブ14が位置ずれしたものと、簡単に判断することができるようになる。
図6、図7に見られる3本の直線は、(6)式の3つの方程式それぞれに対応し、2本の直線の交点は、(6)式の3つの式うち、2つの方程式を用いて解いた場合の解を示している。このときの2つの方程式は、3通りの組み合わせを取りうるので、交点が3つ、すなわち解が3つできることになる。
この交点のばらつきが小さい場合は、MLB則に合致した、すなわち、アーチファクトの影響がない脳賦活信号であることになる。一方、ばらつきが大きい場合は、脳賦活信号だけではなく、アートファクトが含まれた信号であることになる。なお、ばらつきが大きい場合は、残差自乗和率Eが大きくなる。
12:光源
14:入射プローブ
15:入射部
16:検出プローブ
18:検出器
19:検出部
20:制御部
21:光学測定制御部
22:濃度変化量・平均光路長積演算部
23:計算吸光度変化量演算部
24:残差自乗和/残差自乗和率演算部
25:判定部
26:表示制御部
27:アーチファクト発生時記憶部
30:記憶部
40:表示部
Claims (4)
- 光を照射して生体内を散乱させ、生体内から再放出された光を検出することにより検出光に基づいて生体に関する情報を得る光生体計測装置であって、
生体内に光を照射する入射プローブと生体内から再放出された光を検出する検出プローブとにより、少なくとも3つの異なる波長λn(但し、n≧3)にて吸光度変化量を測定して測定吸光度変化量ΔAm(λn)を取得する光学測定部と、
オキシヘモグロビンの濃度変化量・平均光路長積[oxyHb]およびデオキシヘモグロビンの濃度変化量・平均光路長積 [deoxyHb]と、吸光度変化量ΔAとの間の関係式(LB)を利用して、前記測定吸光度変化ΔAm(λn)に基づいて、最小自乗法により、オキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[deoxyHb]を算出する濃度変化量・平均光路積演算部と、
算出したオキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[deoxyHb]に基づいて、再度、関係式(LB)を利用して、計算により計算吸光度変化量ΔAc(λn)を算出する計算吸光度変化量演算部と、
測定吸光度変化量ΔAm(λn)と計算吸光度変化量ΔAc(λn)とに基づいて残差自乗和D、または、残差自乗和率Eを算出する残差自乗和/残差自乗和率演算部と、
残差自乗和D、または、残差自乗和率Eを、基準値Rと比較することにより、アーチファクトを含むか否かの判定を行う判定部とを備えたことを特徴とする光生体計測装置。
ここで、
関係式(LB);
ΔA(λn)=E0(λn)×[oxyHb]+Ed(λn)×[deoxyHb]
ただし、E0(λn)はオキシヘモグロビンの吸光度係数、Ed(λn)はデオキシヘモグロビンの吸光度係数
残差自乗和D;
D=(ΔAm(λ1)−ΔAc(λ1))2+(ΔAm(λ2)−ΔAc(λ2))2+・・・+(ΔAm(λn)−ΔAc(λn))2
残差自乗和率E;
E=D/((ΔAm(λ1))2+(ΔAm(λ2))2+・・・+(ΔAm(λn))2) - 光学測定部は、時々刻々、測定吸光度変化量ΔAm(λn)を取得するとともに、濃度変化量・平均光路積演算部、計算吸光度変化量演算部、残差自乗和/残差自乗和率演算部、判定部が、取得した測定吸光度変化量ΔAm(λn)に基づいて経時的に算出、判定を行い、
さらに、判定部によりアーチファクトを含む判定がなされた場合にアーチファクト発生時点を記憶するアーチファクト発生時記憶部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光生体計測装置。 - 光生体計測装置は、さらに表示部および表示部の表示内容を制御する表示制御部とを備え、
表示制御部は、経時的に算出されるオキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[deoxyHb]、これら2つの和である全ヘモグロビン濃度変化量・平均光路長積[totalHb]の少なくともいずれかを、経時的データとして表示部に表示するとともに、判定部によりアーチファクトを含む判定がなされた場合に、アーチファクト発生時記憶部に記憶されたアーチファクト発生時点を参照して、前記経時的データにおけるアーチファクトを含む領域が識別可能なように表示する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の光生体計測装置。 - 光生体計測装置は、さらに表示部および表示部の表示内容を制御する表示制御部とを備え、
光学測定部は、複数の入射プローブと複数の検出プローブとを有し、入射プローブと検出プローブとの組み合わせによって定まる複数の測定チャンネルについて、それぞれの測定チャンネルの吸光度変化量を測定して複数の測定吸光度変化量ΔAm(λn)を取得し、
取得した複数の測定吸光度変化量ΔAm(λn)に対して、濃度変化量・平均光路積演算部、計算吸光度変化量演算部、残差自乗和/残差自乗和率演算部、判定部が、アーチファクトを含むか否かを判定するための演算、判定を行い、
表示制御部は、表示部に複数の測定チャンネルのデータを並べて表示するとともに、判定部の判定結果に基づいてアーチファクトを含む測定チャンネルと含まない測定チャンネルとを識別可能に表示する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の光生体計測装置。
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