JP2006104902A - コンクリートパネルの耐震目地構造 - Google Patents

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【課題】 コンクリートパネルの表面に無公害なロックウール等の無機繊維層が設けられた断熱構造において、地震等の振動時に、構造躯体の層間変形に対する追随が容易な耐震性に優れたコンクリートパネルの耐震目地構造を提供すること。
【解決手段】複数枚のコンクリートパネル21a,21bを並べて構成した壁体の屋外側表面上に、無機繊維層29が積層された断熱構造において、前記コンクリートパネル21a,21bの周縁部の目地部23に、断熱性素材からなる成形目地材25を介在させる。また、前記成形目地材25の部位における成形目地材25の頂部22と無機繊維層29の表層部までの厚さを10mm以下とする。
【選択図】図2

Description

発明の詳細な説明
本発明は、コンクリートパネル(以下、パネル)の耐震目地構造に関し、さらに詳しくは、ロッキング構法等により建築物の壁面等に取付けられるパネルの外表面にロックウール等の無機繊維層が形成された断熱構造において、その隣接するパネル間の目地部に成形目地材を設け、耐震安全性を向上させたコンクリートパネルの耐震目地構造に関するものである。
一般に、建築物の壁等は、建築基準法に基づいて一定の耐火性能、断熱性能、耐震性能を備える必要がある。また、建築物の居住性を向上させるために、断熱性を備える必要があり、壁や屋根等に各種の断熱材が多く用いられている。
例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)パネルは、断熱性が高く、軽量であるため、戸建て住宅や店舗併用住宅、あるいは工場、高層共同住宅の外壁等に多く使用されている建材である。しかし、昨今の省エネルギーに対する社会的ニーズの高さから、ALCパネルに他の断熱材料を複合し、さらに断熱性能を高める構法も採用されてきた。
この場合、壁一面に、壁面の凹凸の有無に関わらず一様に途切れることがなく、断熱層を形成できる構法として、発泡ウレタン等を付す方法が用いられてきた。しかし、発泡ウレタンは、フロンガスを用いることによる環境汚染や、非常に燃えやすいことによる工事現場での管理の難しさ、火災による類焼の危険等の問題があった。
それらの問題点を解決する方法として、従来、耐火被覆材として用いられてきた吹付けロックウールを断熱材として壁面に吹付ける工法が用いられるようになってきた。図4(a)および(b)は、その断面構造を示したものである。また、図4(b)は、図4(a)の目地部43付近の拡大図である。すなわち、複数枚のALCパネルを並設して相互に隣り合う両ALCパネル41a,41bがその目地部43同士が嵌合された状態で躯体に取付けられ、その各ALCパネルの外表面に、前記目地部43も含めて、全外表面に亘ってロックウール層45が吹付け工法により形成されている。
ところで、近年、ALCパネル等のコンクリートパネルは、耐震安全性の確保の観点から、構造躯体の変形に対して追随するロッキング構法等が採用されてきた。ロッキング構法は、地震や風圧等による構造躯体の層間変形に対して、各パネルが一枚ずつ微小回転し、全てのパネル間目地がずれることにより、その層間変形に追随する取付構法である。
図5は、その構造躯体の層間変形に対してパネルが追随している状態を示す。すなわち、地震等により構造躯体である梁54,55に取付けられたパネル51が、前記梁54,55の長さ方向からの水平応力Aにより、層間変形lを生じるが、各パネル51が一枚ずつ微小回転し、隣接するパネル間の目地部53がずれることにより、構造躯体の層間変形に対してパネル51が追随している状態を示す。
このようなロッキング構法によれば、従来使用されてきた発泡ウレタンは、目地部付近から破断することにより、パネルのロッキング挙動に追随する。しかし、吹付けロックウールは、発泡ウレタンよりも引張り強度が高く、パネルのロッキング挙動による目地部付近からの破断は生じない。すなわち、パネル面に吹付けたロックウールがパネルのロッキング挙動を妨げ、壁面の耐震安全性を損なうこととなる。
そこで、本出願人は、パネルの外表面にロックウールのような無機繊維質の層を形成して、発泡ウレタンのような環境汚染の問題がなく、耐火被覆性能にも優れたパネルの断熱構造において、ロッキング挙動による目地部の破断が生じることによって、耐震安全性も具備させることができないかと考えた。
この問題に対して、例えば、特許文献1に、壁パネル間の目地部にタイル伸縮目地が設けられた構造が提案されている。これを図6に示して説明すると、複数枚の壁パネル61間の目地63に打設されたシーリング材65の表面にバックアップ材67を固着し、そのバックアップ材67をパネル表面よりも突出させ、バックアップ材67の仕上がり高さをパネル61面に張り合わされるタイル60の接着剤層69の仕上げ表面近傍とすることにより、壁パネル面へのタイル張りの施工管理を容易としたものである。
しかしながら、この特許文献1に示されたようなタイル張り仕上げの伸縮目地構造は、耐震安全性を確保するというよりも、タイル目地を設けることにより前記接着剤層69の引張り応力を分散する目的で設けられた構造であり、その構造が複雑で、施工費が嵩むという問題がある。また、パネルにロックウール等の無機繊維材を吹付けた断熱構造に適用しようとしてもその施工は容易ではなく、施工管理も複雑で、作業効率が低下するという問題がある。
特開2003−206613号公報
本発明の解決しようとする課題は、ロッキング構法等により構造躯体に取付けられたコンクリートパネルの外表面に無公害なロックウール等の無機繊維層が設けられた断熱構造において、地震等の振動でパネルにロッキング挙動が生じた場合に、目地部近傍で前記無機繊維層が破断し、構造躯体の層間変形に対する追随が容易な耐震性に優れたコンクリートパネルの耐震目地構造を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明のコンクリートパネルの耐震目地構造は、請求項1に記載のように、複数枚のコンクリートパネルを並べて構成した壁体の屋外側表面上に、無機繊維層が積層された断熱構造において、前記コンクリートパネルの周縁部の目地部に、断熱性素材からなる成形目地材を介在させたことを要旨とする。
この場合に、前記成形目地材の部位における成形目地材の頂部と無機繊維層の表層部までの厚さは、10mm以下であると好適である。より好ましくは、3mm〜6mmの範囲とされる。
さらに、前記無機繊維層は、ロックウールがコンクリートパネルの表面に吹付けられて形成されたものであると好適である。
本発明の請求項1に記載のコンクリートパネルの耐震目地構造によれば、ロッキング構法等により構造躯体に取付けられたコンクリートパネルにおいて、隣接するパネル間の目地部に成形目地材が介在され、その上に無機繊維層が形成されており、他の部位における無機繊維層の厚みよりも薄くすることにより、引張り強度が低くなるようにした。このことで、地震等の振動によって、構造躯体にロッキング挙動が生じ、その結果、無機繊維層が薄い目地部で破断し、該コンクリートパネルの耐震安全性を確保することができる。
そして、成形目地材の部位における成形目地材の頂部と無機繊維層の表層部までの厚さを、10mm以下とすることにより比較的大きな地震や風圧に対して、破断感応性が高められ、耐震安全性がより確実なものとなる。
また、無機繊維層としてロックウールがコンクリートパネル表面に吹付けられると、パネルの板厚が薄くても、耐火性、断熱性および曲げ強さ等が高められる。また、発泡ウレタンを用いないため、環境汚染物質の解消および火災等による被害が防止できるという利点を有する。
以下に本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1(a),(b)は本発明の一実施形態に係るコンクリートパネルの目地構造の断面図である。本発明に係るコンクリートパネルは、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル11a,11bの表面に無機繊維断熱材として、ロックウール層13が吹付けられ、断熱性を有する壁として建築物を構成している。
この場合、前記コンクリートパネルは、吹付けロックウールとの接着における適合性があるものであれば、例えば、ケイ酸カルシウム成形板、木毛セメント板、パルプセメント板、石綿セメントパーライト板、PC板、石膏板、スレート板、押出成形板等に適用することも可能である。
そして、前記建築物は、複数枚のALCパネルを並設して、相互に隣り合う両ALCパネル11a,11b間の目地部15に、該目地部15に沿ってかつALCパネル表面19に対して垂直となる方向に一定の厚みをもって成形目地材17を介在させたのち、ALCパネル表面19および前記成形目地材17表面に、前記ロックウールを吹付け完成する。また、ロックウールは、一般に鉱物繊維をセメントに混入したものが用いられる。
また、成形目地材17は、目地部15の断熱性能が損なわれないように、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレンあるいはフェノールフォーム製等の断熱性能を有する材料を使用することが望ましい。
図2は、図1(b)に示されるコンクリートパネルの目地構造の拡大断面図である。図示するように、複数枚のALCパネルを並設して、相互に隣り合う両ALCパネル21a,21b間の目地部23の面取り部24a,24bに、該面取り部24a,24bの断面形状に合わせ、底部が断面三角形状で、表層に向けて先細突形状をした成形目地材25を介在させた後、ALCパネル表面27および成形目地材25表面にロックウールを吹付けて、ロックウール層29を形成したものである。成形目地材25の頂部22の部位におけるロックウール層29の平均厚さ(h)を10mm以下にすることにより、ロックウール層29の破断強度が低くなるようにしてある。
また、ロックウールとの馴染み性の良いALCパネル21a,21bとロックウール層29との接合界面27の接着強度は、充分高いものとなっているが、材料的な馴染み性が低い成形目地材25とその表面に被着されるロックウール層29との接合界面20の接着強度は低いものとなっている。このため、成形目地材25が位置する部位におけるロックウール層29との接合界面20は、構造的にも低くなるようになっている。
したがって、地震等により、ALCパネル21a,21bにロッキング挙動が生じた場合、前記ALCパネル21a,21bの目地部23に設けた成形目地材25に沿って、微小なクラックが発生して、ロックウール層29が破断する。その結果、ALCパネル21a,21bの耐震安全性が確保されることになる。尚、成形目地材25とロックウール層29との接合界面には、離型剤が塗布されていると、ロッキング挙動に際し、追随させやすくなるため好適である。
次に、構造躯体に取付けたALCパネル(幅600mm×長さ2990mm×厚さ100mm)において、隣接するALCパネル間の目地部に成形目地材を設けてロックウールを吹付けた。その後、図5に示すように、構造躯体を面内方向に微震、中震、強震の3段階に振動させる実験を行い、ロックウール層の破断状況およびALCパネルのロッキング挙動を確認した。微震はパネルの変形角(ラジアン)が300分の1、つまり3mのパネルの層間変形lが10mm生じ、中震はパネルの変形角が200分の1、層間変形lが15mm生じ、強震はパネルの変形角が100分の1、層間変形lが30mm生じることを意味する。それについて以下に詳述する。
(実施例1〜5)
初めに本発明の実施例1〜5は、ALCパネル面の吹付けロックウール層29の平均厚さ(H)は20mmとし、成形目地材25の頂部22におけるロックウール層29の厚さ(h)は2,4,6,8,10mmとした。また、成形目地材は、ポリスチレン製のものを使用し、図1および図2に示したようにその低部が断面三角形状で表層に向けて先細突形状をしたものを用いた。
(比較例1,2)
比較例1,2は、実施例1〜5との比較のため実験を行なったもので、ALCパネル面の吹付けロックウール層29の平均厚さ(H)は20mmとし、成形目地材25の頂部22におけるロックウール層29の厚さ(h)は12,14mmとした。成形目地材は実施例1〜5と同じものを用いた。
(比較例3)
比較例3は、やはり実施例1〜5との比較のため行なった実験で、ALCパネル面の吹付けロックウール層29の平均厚さ(H)は20mmとし、成形目地材は用いなかった。
その結果を次の表1に示す。この表1では、上記実施例および比較例の構造躯体を面内方向に微震、中震、強震の3段階で振動させて、ロックウールの破断状況等を目視にて観察した結果、躯体の振動に追随するか、目地部に沿って微小クラックが発生し破断したものを良好(○印)、躯体の振動に追随せず目地部で破断しなかったものあるいは躯体の取付金具部でパネルの亀裂や破断が生じたものを不良(×印)、躯体の振動にある程度追随し、目地部の破断が生じるものの完全ではなかったものをやや良好(△印)として判定した。総合評価では、特に微震での追随性が良く、かつ中震・強震では目地部に沿って破断が生じて特性が極立って良好なものを◎印として判定している。
Figure 2006104902
この表1の結果から明らかなように、本発明の耐震目地構造(実施例1〜5)によれば、躯体に微震が与えられた場合には、実施例1では微震で若干の亀裂が確認されたものの、実施例2〜5は成形目地材部位のロックウールの厚さがいずれの場合も躯体の振動に追随し、目地部の破断が生じることはなく、軽微な地震や多少の風力等の微震に対しては、目地部のロックウール層は破断することなく、躯体の振動に追随し、耐震安全性が確保されることが確認された。
また、本発明品によれば、躯体に中震、あるいは強震が与えられた場合には、中震の場合に実施例1〜3は完全に目地部で破断され、実施例4および5は目地部全域で亀裂が確認されるものの、一部で無機繊維同士の結束が見られたが、成形目地材部位のロックウール厚さがいずれの場合も目地部の全長に亘って微小クラックが発生し、ロックウール層が破断し、耐震安全性が確保されることが確認された。そして本発明品の場合特に、成形目地材の頂部におけるロックウール層の厚さが3mm〜6mmの範囲において、軽微な地震や多少の風力に対して目地部のロックウール層が破断することもなく、また躯体の振動に追随し、しかし地震による強震あるいは、大型台風等の強風による躯体の振動に際しては、パネルのロッキング挙動を阻害することなく、目地部で破断することも確認された。したがって実施例2および3では総合評価として◎印と判定した。
これに対して比較品(比較例1〜3)によれば、まず成形目地材が介在されない比較例3においては、微震に対して躯体の振動に対する追随性が悪く、中震あるいは、強震では取付金具部でパネルの亀裂や破断が見られるのみで目地部での破断は全く認められなかった。これに対して比較例1,2では、微震に対して躯体振動への追随性はあまり良くないが、中震あるいは、強震に対しても目地部での破断はあるものの、取付金具部での亀裂や破断が認められ、評価としては本発明品よりは若干劣るものであった。
したがって、これらの結果より、本発明の耐震目地構造のように、ALCパネル表面にロックウール層を吹付けにより形成したものであって、ALCパネル間の目地部に成形目地材を介在させると、地震等の震動により目地部のロックウール層が破断し、ALCパネルは各々ロッキング挙動を示すことができる。また、成形目地材の部位における成形目地材の頂部とロックウール層の表層部までの厚さを10mm以下とすることにより、ロックウールの破断特性がより向上し、耐震安全性も向上することが明暸となった。
また、上記結果より、軽微な地震や多少の風力等の微震時には、ロックウール層が破断することがなく、躯体の振動に追随し、強い地震や大型台風等による強震時にはパネルのロッキング挙動に追随し、目地部が破断するためには成形目地材の頂部のロックウール層の厚さが3mm〜6mmが好ましいこともわかった。
なお、前記成形目地材の形態としては、図1および図2に示された以外のものも考えられる。例えば、図3に示すように、断面形状が円形状、半円形状、方形状、台形状、三角形状のものでも良く、構造躯体の振動時にパネルの目地部に沿って線上に集中させることができる形態のものであればよい。これら各種形態の成形目地材もその頂部におけるロックウール層厚さ(h)が10mm以下であれば、表1に示したものと同じ結果を得ることができる。
以上、本発明の各種の実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、前記実施例では、コンクリートパネル表面の無機繊維層としてロックウールの例を示したが、グラスウール等の繊維材を用いたものにも適用できる。また、ALCパネルの大きさは、上記実施例品に限られるものではなく、また、パネル面のロックウール層の吹付け量も上記実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
本発明の一実施形態に係るコンクリートパネルの目地構造を示した断面図である。 図1に示されるコンクリートパネルの目地構造を拡大して示した図である。 本発明に適用される成形目地材の他の実施形態を示した図である。 従来一般的に知られているロックウール表層コンクリートパネルの断面図である。 従来一般に知られているALCパネルのロッキング挙動の説明図である。 従来例としてのタイル張りコンクリートパネルのタイル伸縮目地構造を示した図である。
符号の説明
11a,11b ALCパネル
13 ロックウール層
15 目地部
17 成形目地材
21a,21b ALCパネル
23 目地部
25 成形目地材
29 ロックウール層
54,55 梁
A 水平応力
l 層間変形

Claims (3)

  1. 複数枚のコンクリートパネルを並べて構成した壁体の屋外側表面上に、無機繊維層が積層された断熱構造において、前記コンクリートパネルの周縁部の目地部に、断熱性素材からなる成形目地材を介在させたことを特徴とするコンクリートパネルの耐震目地構造。
  2. 前記成形目地材の部位における成形目地材の頂部と無機繊維層の表層部までの厚さを10mm以下としたことを特徴とする請求項1記載のコンクリートパネルの耐震目地構造。
  3. 前記無機繊維層は、ロックウールがコンクリートパネルの表面に吹付けられて形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリートパネルの耐震目地構造。
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