本発明は、圧力変動吸着式ガス分離装置を用いて空気などから窒素富化ガスを分離するための方法に関する。
空気から分離して得られる窒素ガス(窒素富化ガス)は、多様な用途に利用されている。例えば、窒素ガスは、ゴミ溶融炉や化学プラントにおけるガスシールやパージング、熱処理炉の雰囲気ガス調整、食品の包装用ガスシールなどに、利用されている。
空気から窒素ガスを分離するのに実用的な手法として、圧力変動吸着法(PSA法)が知られている。PSA法による窒素ガスの分離においては、一般に、酸素を優先的に吸着するための吸着剤が充填された2本の吸着塔を具備するPSA装置が用いられ、各吸着塔において、少なくとも吸着工程および再生工程を含む1サイクルが繰り返される。吸着剤としては、例えば、高圧なほど酸素吸着容量が増大し且つ低圧なほど酸素吸着容量が減少する分子ふるい炭素が採用される。吸着工程では、吸着塔に空気を導入して当該空気中の酸素を高圧条件下で吸着剤に吸着させ、空気よりも窒素濃度が高められたガス(窒素富化ガス)が塔から導出される。原料ガスである空気は、圧縮機により所定圧力に圧縮されて吐出されることにより、吸着塔に供給される。再生工程では、再度の吸着工程に吸着塔を備えさせるべく、例えば洗浄ガス(窒素富化ガス)を塔内に通流させつつ、吸着塔内を減圧して吸着剤から酸素を脱着させ、酸素に対する吸着剤の吸着性能を回復させる。このようなPSA方式の窒素ガス分離方法は、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
特開昭57−10313号公報
特開2001−342013号公報
特開2002−159820号公報
上述のようなPSA方式の窒素ガス分離方法においては、吸着工程終了時の吸着塔内に残存する窒素を回収して窒素取得率を向上すべく、1サイクル中の吸着工程と再生工程の間および再生工程と吸着工程の間に、いわゆる均圧工程が行われる場合が多い。均圧工程では、吸着工程を終えて塔内圧力が高く且つ比較的高濃度の窒素ガスが塔内に残存する第1の吸着塔と、再生工程を終えて塔内圧力が低い第2の吸着塔とが連通され、二塔間の圧力差を利用して、当該高濃度窒素ガスの多くが第1の吸着塔から第2の吸着塔に移送(回収)される。このようにして第2の吸着塔に回収された高濃度窒素ガスは、この後に第2の吸着塔で行われる上述のような吸着工程において、窒素富化ガスの一部として第2の吸着塔から導出される。
従来の技術では、特許文献1〜3に記載されているように、上述のような均圧工程にある吸着塔に対しては圧縮機から原料空気は供給されず、従って、均圧工程の全期間にわたって圧縮機は空運転される。そのため、従来の技術においては、窒素富化ガス分離方法を適切に実行するうえで採用すべき圧縮機の圧縮機容量について、均圧工程中の圧縮機の空運転を考慮して大きく選定する必要がある。均圧工程期間が長いほど、圧縮機の空運転期間も長く、選定すべき圧縮機容量は増大する。選定すべき圧縮機容量の増大は、窒素ガス取得コストの増大や、システムの肥大化を招来し、好ましくない。
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、吸着塔へ原料ガスを供給するための手段として圧縮機容量の小さな圧縮機を用いて効率よく窒素富化ガスを取得するのに適した方法を提供することを、目的とする。
本発明の第1の側面によると、原料供給端および窒素導出端を各々が有し且つ各々の当該両端の間に吸着剤が充填された複数の吸着塔を用い、窒素を含む原料ガスから窒素富化ガスを分離するための方法が提供される。本方法では、各吸着塔において、吸着工程、回収減圧工程、再生工程、および回収昇圧工程を含む1サイクルを、繰り返す。吸着工程では、原料供給端から原料ガスを導入し、当該原料ガスに含まれる不要成分を吸着剤に吸着させ、窒素導出端から窒素富化ガスを導出する。回収減圧工程では、吸着塔の窒素導出端から回収ガスを導出して当該吸着塔の内部圧力を降下させる。再生工程では、吸着塔に対して窒素導出端から窒素富化ガスを導入しつつ、当該吸着塔内の吸着剤から不要成分を脱着させて原料供給端から排出する。回収昇圧工程では、吸着塔に対して窒素導出端から回収ガスを導入するとともに原料供給端から原料ガスを導入し、当該吸着塔の内部圧力を上昇させる。また、本方法では、吸着工程中の吸着塔から導出される窒素富化ガスの一部は、再生工程中の吸着塔に導入され、回収減圧工程中の吸着塔から導出される回収ガスは、回収昇圧工程中の吸着塔に導入される。本方法における回収ガスは、吸着工程を終えて塔内圧力が相対的に高い吸着塔内に残存する高濃度窒素ガスであり、再生工程を終えて塔内圧力が相対的に低い他吸着塔内に回収されるガスである。回収減圧工程は、このような回収対象のガスを導出することにより塔内圧力が降下する工程であり、回収昇圧工程は、当該回収対象ガスを回収することにより塔内圧力が上昇する工程であり、従って、これら2つの工程は、いわゆる均圧工程に相当する。
このような構成の窒素富化ガス分離方法においては、各吸着塔について吸着工程、回収減圧工程、再生工程、および回収昇圧工程が順次実行されるところ、一の吸着塔が吸着工程にあるとき及び回収昇圧工程にあるときに当該一の吸着塔に対して原料ガスが供給され続ける。また、当該一の吸着塔が回収減圧工程にあるときには、他の吸着塔は回収昇圧工程にあって原料ガスが供給され続け、且つ、当該一の吸着塔が再生工程にあるときには、当該他の吸着塔は吸着工程にあって原料ガスが供給され続ける。すなわち、本方法においては、いわゆる均圧工程(回収減圧工程,回収昇圧工程)の期間をも含めて絶えず、原料ガスは、いずれかの吸着塔に供給され続けるのである。そのため、原料ガスを供給する手段として圧縮機を採用する場合には、本方法によると、当該圧縮機を空運転させる必要はなく、従って、圧縮機の圧縮機容量について、いわゆる均圧工程中の空運転を考慮して大きく選定する必要はない。選定すべき圧縮機容量の抑制は、窒素ガス取得コストの抑制や、システムの小型化を図るうえで、好ましい。このように、本方法は、吸着塔へ原料ガスを供給するための手段として圧縮機容量の小さな圧縮機を用いて効率よく窒素富化ガスを取得するのに適しているのである。
本発明の第2の側面によると、原料供給端および窒素導出端を各々が有し且つ各々の当該両端の間に吸着剤が充填された複数の吸着塔を用い、窒素を含む原料ガスから窒素富化ガスを分離するための別の方法が提供される。本方法では、各吸着塔において、吸着工程、第1回収減圧工程、第2回収減圧工程、再生工程、第1回収昇圧工程、および第2回収昇圧工程を含む1サイクルを、繰り返す。吸着工程では、原料供給端から原料ガスを導入し、当該原料ガスに含まれる不要成分を吸着剤に吸着させ、窒素導出端から窒素富化ガスを導出する。第1回収減圧工程では、吸着塔の窒素導出端および原料供給端から回収ガスを導出して当該吸着塔の内部圧力を降下させる。第2回収減圧工程では、第1回収減圧工程から引き続いて吸着塔の窒素導出端から回収ガスを導出して当該吸着塔の内部圧力を降下させる。再生工程では、吸着塔に対して窒素導出端から窒素富化ガスを導入しつつ、当該吸着塔内の吸着剤から不要成分を脱着させて原料供給端から排出する。第1回収昇圧工程では、吸着塔に対して窒素導出端および原料供給端から回収ガスを導入して当該吸着塔の内部圧力を上昇させる。第2回収昇圧工程では、吸着塔に対し、第1回収昇圧工程から引き続いて窒素導出端から回収ガスを導入するとともに、原料供給端から原料ガスを導入し、当該吸着塔の内部圧力を上昇させる。また、本方法では、吸着工程中の吸着塔から導出される窒素富化ガスの一部は、再生工程中の吸着塔に導入され、第1回収減圧工程中の吸着塔から導出される回収ガスは、第1回収昇圧工程中の吸着塔に導入され、第2回収減圧工程中の吸着塔から導出される回収ガスは、第2回収昇圧工程中の吸着塔に導入される。本方法における回収ガスは、吸着工程を終えて塔内圧力が相対的に高い吸着塔内に残存する高濃度窒素ガスであり、再生工程を終えて塔内圧力が相対的に低い他吸着塔内に回収されるガスである。第1および第2回収減圧工程は、このような回収対象のガスを導出することにより塔内圧力が降下する工程であり、第1および第2回収昇圧工程は、当該回収対象ガスを回収することにより塔内圧力が上昇する工程であり、従って、これら4つの工程は、いわゆる均圧工程に相当する。
このような構成の窒素富化ガス分離方法においては、各吸着塔について吸着工程、第1回収減圧工程、第2回収減圧工程、再生工程、第1回収昇圧工程、および第2回収昇圧工程が順次実行されるところ、一の吸着塔が吸着工程にあるとき及び第2回収昇圧工程にあるときに当該一の吸着塔に対して原料ガスが供給され続ける。また、当該一の吸着塔が第2回収減圧工程にあるときには、他の吸着塔は第2回収昇圧工程にあって原料ガスが供給され続け、且つ、当該一の吸着塔が再生工程にあるときには、当該他の吸着塔は吸着工程にあって原料ガスが供給され続ける。すなわち、本方法では、いわゆる均圧工程(第1および第2回収減圧工程,第1および第2回収昇圧工程)以外の期間に加えて、均圧工程の一部(第2回収減圧工程,第2回収昇圧工程)の期間においても、原料ガスは、いずれかの吸着塔に供給され続けるのである。そのため、原料ガスを供給する手段として圧縮機を採用する場合には、本方法は、当該圧縮機について短い空運転期間を達成するのに適しており、従って、選定すべき圧縮機容量を抑制するうえで好適である。選定すべき圧縮機容量の抑制は、窒素ガス取得コストの抑制や、システムの小型化を図るうえで、好ましい。このように、本方法は、第1の側面の方法と同様に、吸着塔へ原料ガスを供給するための手段として圧縮機容量の小さな圧縮機を用いて効率よく窒素富化ガスを取得するのに適しているのである。
好ましくは、第1回収減圧工程の期間は、第2回収減圧工程の期間より短く、且つ、第1回収昇圧工程の期間は、第2回収昇圧工程の期間より短い。このような構成は、原料ガスを供給する手段として圧縮機を採用する場合に当該圧縮機について短い空運転期間を達成するのに好適である。
従来の技術においては、高圧側の吸着塔(第1の吸着塔)と低圧側の吸着塔(第2の吸着塔)との間でのいわゆる均圧工程を実行する場合、均圧工程は比較的に短期間(例えば0.5〜2秒間)に設定される。第1の吸着塔内の窒素導出端側にて吸着剤に非吸着の状態で滞留している高濃度窒素ガスを、両塔の窒素導出端を連通して第2の吸着塔内に適切に回収するためには、第1の吸着塔内の吸着剤から吸着ガスが有意に脱着し始める時間との関係から、均圧工程は短期間で終えるのが望ましいと考えられているからである。全体として効率のよい1サイクルを実現するためには、この短期間内に第2の吸着塔内を所定以上に昇圧するのが望ましいが、0.5〜2秒間程度の短期間では、圧縮機により第2の吸着塔内を有意に昇圧するのは困難な場合が多い。そのため、従来の技術においては、均圧工程にて、圧縮機を空運転させたうえで、両塔の空気供給端をも連通することによって第1の吸着塔の高圧状態を利用して第2の吸着塔内を昇圧するという手法が採られる場合が多いのである。しかしながら、この手法を採用する場合、短期間での均圧工程では、第2の吸着塔内に回収される高濃度窒素ガスは、窒素導出端から当該第2の吸着塔内に急激に吹き込まれ、吸着剤を動かし互いに擦らせ、吸着剤の吸着性能の劣化原因の一つである「粉化」を誘発してしまう。吸着剤の機械的強度が弱いほど、吸着剤はこのような粉化を生じやすく、従って劣化しやすい。機械的強度が弱い吸着剤を使用する場合、吸着剤の粉化を抑制するためには均圧工程期間を所定程度に長く確保するのが有効であり、均圧工程期間が所定程度に長い場合には、当該期間中における第2の吸着塔内(低圧側の吸着塔内)の昇圧を、圧縮機のみにより又は圧縮機を部分的に利用して、達成することが可能である。すなわち、本発明は、例えば吸着剤の機械的強度が弱いために、均圧工程期間を比較的に長く設定する場合に、特に好適に実施することができるのである。
図1は、本発明の第1の実施形態の窒素富化ガス分離方法を実施することのできるガス分離装置X1の構成を表す。ガス分離装置X1は、吸着塔1,2と、空気圧縮機3と、エアドライヤ4と、窒素回収タンク5と、配管11〜15と、これら配管11〜15に設けられた流量調節弁20および自動弁21〜27とを備える。
吸着塔1は、その一端に空気供給口1aを有し、その他端に窒素導出口1bを有する。空気供給口1aは、配管11および配管14に連結されており、窒素導出口1bは、配管12および配管13と連結されている。同様に、吸着塔2は、その一端に空気供給口2aを有して他端に窒素導出口2bを有し、空気供給口2aは、配管11および配管14と連結され、窒素導出口2bは、配管12および配管13と連結されている。また、吸着塔1,2の各々には、酸素吸着性の吸着剤が充填されている。吸着剤としては、高圧なほど酸素吸着容量が増大し且つ低圧なほど酸素吸着容量が減少する分子ふるい炭素が採用され、例えば、カーボンモレキュラーシーブなどを採用することができる。
空気圧縮機3は、本発明における原料ガス(本実施形態では空気)を吸着塔1,2に供給するためのものである。エアドライヤ4は、空気圧縮機3から吐出される圧縮空気を除湿するためのものである。
以上のような構成を有するガス分離装置X1を使用して、本発明の第1の実施形態の窒素富化ガス分離方法を実施することができる。具体的には、ガス分離装置X1の駆動時において、図2に示す態様で各自動弁21〜27を切り替えることにより、装置内において所望のガスの流れ状態を実現し、以下のステップ1〜4からなる1サイクルを繰り返すことができる。単一の吸着塔に着目すると、本窒素富化ガス分離方法の1サイクルにおいては、吸着工程、回収減圧工程、再生工程、および回収昇圧工程が順次行われる。図3は、ステップ1〜4におけるガス分離装置X1でのガスの流れ状態を表す。
ステップ1では、図2に示すように各自動弁21〜27の開閉状態が選択され且つ空気圧縮機3が作動することにより、図3(a)に示すようなガス流れ状態が達成され、吸着塔1,2において、各々、吸着工程および再生工程が行われる。
図1および図3(a)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ1では、窒素および酸素を主に含有する空気G1が、配管11および自動弁21を介して空気供給口1aから吸着塔1に導入される。吸着塔1では、塔内圧力が所定の高圧である状態において、空気G1に含まれる主に酸素が吸着剤により吸着除去され、空気よりも窒素濃度の高いガスが窒素富化ガスG2として窒素導出口1bから塔外に導出される。この窒素富化ガスG2は、そのほとんどが、自動弁25および配管12を介して窒素回収タンク5に回収され、部分的に、配管15および流量調節弁20を介して窒素導出口2bから吸着塔2に導入される。流量調節弁20は、所定流量までのガスが双方向に通過できるようにその開度が調節されている。吸着塔1の内部は、このような吸着工程中に、1サイクルにおいて最も高い圧力に到達する。
これとともに、後述のステップ4(回収減圧工程)を経た吸着塔2では、吸着塔1からの窒素富化ガスが窒素導出口2bから空気供給口2aに洗浄ガスとして通流されながら、吸着剤から主に酸素が脱着し、この脱着酸素および洗浄ガスを含む排出ガスG3が、空気供給口2aから塔外に排出される。この排出ガスG3は、自動弁24および配管14を介して装置外に廃棄される。吸着塔2におけるこのような再生工程により、吸着塔2内の吸着剤の酸素吸着性能が回復する。また、吸着塔2の内部は、このような再生工程中に、1サイクルにおいて最も低い圧力に到達する。
ステップ2では、図2に示すように各自動弁21〜27の開閉状態が選択され且つ空気圧縮機3が作動することにより、図3(b)に示すようなガス流れ状態が達成され、吸着塔1,2において、各々、回収減圧工程および回収昇圧工程が行われる。
図1および図3(b)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ2では、上述の吸着工程を経て吸着塔2よりも高圧状態にある吸着塔1の窒素導出口1bからガスG4が導出され、このガスG4は、回収ガスとして、主に配管13および自動弁27(部分的に配管15および流量調節弁20)を介して窒素導出口2bから吸着塔2に導入される。これにより、吸着塔1の塔内圧力は次第に降下する。これとともに、本ステップでは、空気G1が、配管11および自動弁23を介して空気供給口2aから吸着塔2に導入される。このようなガスG4(回収ガス)および空気G1の導入により、吸着塔2の塔内圧力は次第に上昇する。
ステップ3,4では、ステップ1,2で吸着塔1において行われたのと同様に、吸着塔2において吸着工程(ステップ3)および回収減圧工程(ステップ4)が順次行われ、ステップ1,2で吸着塔2において行われたのと同様に、吸着塔1において、再生工程(ステップ3)および回収昇圧工程(ステップ4)が順次行われる。
このような窒素富化ガス分離方法においては、吸着塔1,2の各々において吸着工程、回収減圧工程、再生工程、および回収昇圧工程が順次実行されるところ、吸着工程または回収昇圧工程にある吸着塔1または吸着塔2に対し、空気圧縮機3は、原料ガスである空気G1を絶えず供給し続ける。すなわち、本方法においては、いわゆる均圧工程(回収減圧工程,回収昇圧工程)の期間をも含め、空気圧縮機3が空運転する期間はない。したがって、空気圧縮機3の圧縮機容量について、従来方法がそうであったように均圧工程中の空運転を考慮して大きく選定する必要は、ない。選定すべき圧縮機容量の抑制は、窒素ガス取得コストの抑制や、システムの小型化を図るうえで、好ましい。このように、本窒素富化ガス分離方法によると、圧縮機容量の小さな空気圧縮機3を用いて効率よく窒素富化ガスを取得することができるのである。
図4は、本発明の第2の実施形態の窒素富化ガス分離方法を実施することのできるガス分離装置X2の構成を表す。ガス分離装置X2は、配管16および自動弁28を更に備える点において、上述のガス分離装置X1と異なる。
このような構成を有するガス分離装置X2を使用して、本発明の第2の実施形態の窒素富化ガス分離方法を実施することができる。具体的には、ガス分離装置X2の駆動時において、図5に示す態様で各自動弁21〜28を切り替えることにより、装置内において所望のガスの流れ状態を実現し、以下のステップ1〜6からなる1サイクルを繰り返すことができる。単一の吸着塔に着目すると、本窒素富化ガス分離方法の1サイクルにおいては、吸着工程、第1回収減圧工程、第2回収減圧工程、再生工程、第1回収昇圧工程、および第2回収昇圧工程が順次行われる。図6は、ステップ1〜6におけるガス分離装置X2でのガスの流れ状態を表す。
ステップ1では、図5に示すように各自動弁21〜28の開閉状態が選択され且つ空気圧縮機3が作動することにより、図6(a)に示すようなガス流れ状態が達成され、吸着塔1,2において、各々、吸着工程および再生工程が行われる。具体的には、第1の実施形態に関して上述したステップ1と同様である。
ステップ2では、図5に示すように各自動弁21〜28の開閉状態が選択されることにより、図6(b)に示すようなガス流れ状態が達成され、吸着塔1,2において、各々、第1回収減圧工程および第1回収昇圧工程が行われる。
図4および図6(b)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ2では、上述の吸着工程を経て吸着塔2よりも高圧状態にある吸着塔1の窒素導出口1bおよび空気供給口1aからガスG4,G4’が導出され、ガスG4は、回収ガスとして主に配管13および自動弁27(部分的に配管15および流量調節弁20)を介して窒素導出口2bから吸着塔2に導入され、ガスG4’は、同じく回収ガスとして、配管16および自動弁28を介して空気供給口2aから吸着塔2に導入される。本実施形態では、本ステップの期間は後述のステップ3の期間より短く設定される。また、本ステップにおいては、吸着塔1の塔内圧力は次第に降下し、吸着塔2の塔内圧力はガスG4,G4’の導入により次第に上昇する。
ステップ3では、図5に示すように各自動弁21〜28の開閉状態が選択され且つ空気圧縮機3が作動することにより、図6(c)に示すようなガス流れ状態が達成され、吸着塔1,2において、各々、第2回収減圧工程および第2回収昇圧工程が行われる。
図4および図6(c)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ3では、吸着塔2よりも依然として高圧状態にある吸着塔1の窒素導出口1bから、ステップ2から引き続きガスG4が導出され、このガスG4は、回収ガスとして、主に配管13および自動弁27(部分的に配管15および流量調節弁20)を介して窒素導出口2bから吸着塔2に導入される。これとともに、本ステップでは、空気G1が、配管11および自動弁23を介して空気供給口2aから吸着塔2に導入される。吸着塔2では、このようなガスG4(回収ガス)および空気G1の導入により、塔内圧力が次第に上昇する。
ステップ4〜6では、ステップ1〜3で吸着塔1において行われたのと同様に、吸着塔2において吸着工程(ステップ4)、第1回収減圧工程(ステップ5)、および第2回収減圧工程(ステップ6)が順次行われ、ステップ1〜3で吸着塔2において行われたのと同様に、吸着塔1において再生工程(ステップ4)、第1回収昇圧工程(ステップ5)、および第2回収昇圧工程(ステップ6)が順次行われる。
このような窒素富化ガス分離方法においては、各吸着塔1,2について吸着工程、第1回収減圧工程、第2回収減圧工程、再生工程、第1回収昇圧工程、および第2回収昇圧工程が順次実行されるところ、吸着工程または第2回収昇圧工程にある吸着塔1または吸着塔2に対し、空気圧縮機3は、原料ガスである空気G1を供給し続ける。すなわち、本方法においては、いわゆる均圧工程(第1および第2回収減圧工程,第1および第2回収昇圧工程)以外の期間に加えて、均圧工程の一部(第2回収減圧工程,第2回収昇圧工程)の期間においても、空気圧縮機3は空運転せずに空気G1を何れかの吸着塔に供給し続けるのである。各吸着塔において第2回収減圧工程期間に対して第1回収減圧工程期間を短く設定するほど(即ち第2回収昇圧工程期間に対して第1回収昇圧工程期間を短く設定するほど)、空気圧縮機3の空運転期間を短く設定することができる。このような窒素富化ガス分離方法は、空気圧縮機3について短い空運転期間を実現するうえで好適であり、従って、選定すべき圧縮機容量を抑制するうえで好適である。選定すべき圧縮機容量の抑制は、窒素ガス取得コストの抑制や、システムの小型化を図るうえで、好ましい。このように、本窒素富化ガス分離方法は、圧縮機容量の小さな空気圧縮機3を用いて効率よく窒素富化ガスを取得するのに適しているのである。
本発明の実施例について、比較例とともに以下に記載する。
〔実施例1〕
図1に示すようなガス分離装置X1を使用し、図2および図3に示す吸着工程、回収減圧工程、再生工程、および回収昇圧工程からなる1サイクルを各吸着塔において繰り返すことにより、空気から窒素富化ガスを分離取得した。本実施例の窒素富化ガス分離方法は、上述の第1の実施形態に相当する。
本実施例において使用したガス分離装置X1の各吸着塔は円筒形状(内径65mm,内寸高さ600mm)を有する。各吸着塔には、3A型カーボンモレキュラーシーブを1030g充填した。各吸着塔に対しては吸着工程において平均810.6NL/hの速度で空気を供給し、吸着工程中の吸着塔内の最高圧力を0.65MPa(ゲージ圧)とし、回収減圧工程の吸着塔内の最終圧力(最低圧力)を0.43MPa(ゲージ圧)とし、再生工程の吸着塔内の最終圧力(最低圧力)を大気圧とし、装置周囲温度を約25℃とした。また、吸着工程は93秒間、回収減圧工程は7秒間、再生工程は93秒間、回収昇圧工程は7秒間行った。すなわち、本実施例における半サイクル時間は100秒である。また、本実施例においては、半サイクル中の空気圧縮機の空運転期間は0秒である。
本実施例によると、残留酸素濃度1.0%(体積百分率)の窒素富化ガスを0.156NL/h・gの量(1時間あたり且つ吸着剤1gあたりの標準状態体積)で窒素回収タンクに回収することができた。また、本実施例によると、空気圧縮機により供給した正味の原料空気量(即ち空気必要量)は0.787NL/h・gであった。これらの結果については、上述の半サイクル時間および空運転期間とともに図7の表にまとめる。
〔実施例2〕
図4に示すようなガス分離装置X2を使用し、図5および図6に示す吸着工程、第1回収減圧工程、第2回収減圧工程、再生工程、第1回収昇圧工程、および第2回収昇圧工程からなる1サイクルを各吸着塔において繰り返すことにより、空気から窒素富化ガスを分離取得した。本実施例の窒素富化ガス分離方法は、上述の第2の実施形態に相当する。
本実施例において使用したガス分離装置X2の各吸着塔は円筒形状(内径65mm,内寸高さ600mm)を有する。各吸着塔には、3A型カーボンモレキュラーシーブを1030g充填した。各吸着塔に対しては吸着工程において平均810.6NL/hの速度で空気を供給し、吸着工程中の吸着塔内の最高圧力を0.65MPa(ゲージ圧)とし、回収減圧工程の吸着塔内の最終圧力(最低圧力)を0.36MPa(ゲージ圧)とし、再生工程の吸着塔内の最終圧力(最低圧力)を大気圧とし、装置周囲温度を約25℃とした。また、吸着工程は93秒間、第1回収減圧工程は3秒間、第2回収減圧工程は4秒間、再生工程は93秒間、第1回収昇圧工程は3秒間、第2回収昇圧工程は4秒間行った。すなわち、本実施例においては、半サイクル時間は100秒であり、半サイクル中の空気圧縮機の空運転期間は3秒である。
本実施例によると、残留酸素濃度1.0%(体積百分率)の窒素富化ガスを0.155NL/h・gの量で窒素回収タンクに回収することができた。また、本実施例によると、空気圧縮機により供給した正味の原料空気量(即ち空気必要量)は0.764NL/h・gであった。これらの結果については、上述の半サイクル時間および空運転期間とともに図7の表にまとめる。
〔比較例〕
図4に示すようなガス分離装置X2を使用し、本比較例の窒素富化ガス分離方法を行った。具体的には、図5および図6に示すステップ3,6(第2回収減圧工程,第2回収昇圧工程)を実行しない(スキップする)以外は第2の実施形態と同様の態様で、吸着工程、回収減圧工程、再生工程、および回収昇圧工程からなる1サイクルを各吸着塔において繰り返すことにより、空気から窒素富化ガスを分離取得した。
本比較例において使用したガス分離装置は、具体的には実施例2において使用したものと同様である。また、本比較例では、各吸着塔に対しては吸着工程において平均847.5NL/hの速度で空気を供給し、吸着工程中の吸着塔内の最高圧力を0.65MPa(ゲージ圧)とし、回収減圧工程の吸着塔内の最終圧力(最低圧力)を0.32MPa(ゲージ圧)とし、再生工程の吸着塔内の最終圧力(最低圧力)を大気圧とし、装置周囲温度を約25℃とした。また、吸着工程は93秒間、回収減圧工程は7秒間、再生工程は93秒間、回収昇圧工程は7秒間行った。すなわち、本実施例においては、半サイクル時間は100秒であり、半サイクル中の空気圧縮機の空運転期間は7秒である。
本比較例によると、残留酸素濃度1.0%(体積百分率)の窒素富化ガスを0.156NL/h・gの量で窒素回収タンクに回収することができた。また、本比較例によると、空気圧縮機により供給した正味の原料空気量(即ち空気必要量)は0.769NL/h・gであった。これらの結果については、上述の半サイクル時間および空運転期間とともに図7の表にまとめる。
〔評価〕
比較例の窒素富化ガス分離方法では、吸着塔に原料空気を供給するための空気圧縮機は、各吸着塔が回収減圧工程にあるとき及び回収昇圧工程にあるときに、空運転する。上述のように、本比較例における半サイクル時間は100秒であり、半サイクル中の空気圧縮機の空運転期間は7秒であり、空気必要量は0.769NL/h・gであるので、選定される空気圧縮機の圧縮機容量としては、0.769NL/Hr・gの約1.07倍、即ち約0.823NL/Hr・gが、要求される。
これに対し、実施例1の窒素富化ガス分離方法によると、吸着塔に原料空気を供給するための空気圧縮機は1サイクルにわたって絶えず何れかの吸着塔に原料空気を供給し続け、空運転しない。したがって、選定される空気圧縮機の圧縮機容量としては、空気必要量0.787NL/Hr・gで足りる。
また、実施例2の窒素富化ガス分離方法によると、吸着塔に原料空気を供給するための空気圧縮機は、各吸着塔が第1回収減圧工程にあるとき及び第1回収昇圧工程にあるときに空運転するが、各吸着塔が第2回収減圧工程にあるとき及び第2回収昇圧工程にあるときには空運転しない。上述のように、本実施例における半サイクル時間は100秒であり、半サイクル中の空気圧縮機の空運転期間は3秒であり、空気必要量は0.764NL/h・gであるので、選定される空気圧縮機の圧縮機容量としては、0.764NL/Hr・gの約1.03倍、即ち約0.787NL/Hr・gが、要求される。
このように、本発明に係る実施例1,2の窒素富化ガス分離方法によると、比較例の窒素富化ガス分離方法によるよりも、空気圧縮機に要求される圧縮機容量を抑制しつつ、残留酸素濃度および取得量について同等の窒素富化ガスを取得することができる。すなわち、本発明に係る実施例1,2の窒素富化ガス分離方法は、圧縮機容量の小さな圧縮機を用いて効率よく窒素富化ガスを取得するのに適しているのである。
本発明の第1の実施形態に係る窒素富化ガス分離方法を実施するための圧力変動吸着式のガス分離装置の概略構成を表す。
第1の実施形態に係る窒素富化ガス分離方法の各ステップについて、各吸着塔で行われる工程、図1に示すガス分離装置の各自動弁の開閉状態、および、当該ガス分離装置の空気圧縮機の状態を示す。
第1の実施形態の窒素富化ガス分離方法のステップ1〜4におけるガス流れ状態を表す。
本発明の第2の実施形態に係る窒素富化ガス分離方法を実施するための圧力変動吸着式のガス分離装置の概略構成を表す。
第2の実施形態に係る窒素富化ガス分離方法の各ステップについて、各吸着塔で行われる工程、図4に示すガス分離装置の各自動弁の開閉状態、および、当該ガス分離装置の空気圧縮機の状態を示す。
第2の実施形態の窒素富化ガス分離方法のステップ1〜6におけるガス流れ状態を表す。
実施例1,2および比較例について、半サイクル時間、半サイクル中の空気圧縮機の空運転期間、分離取得した窒素富化ガスの残留酸素濃度および取得量、並びに、空気必要量をまとめた表である。
符号の説明
X1,X2 ガス分離装置
1,2 吸着塔
1a,2a 空気供給口
1b,2b 窒素導出口
3 空気圧縮機
4 エアドライヤ
5 窒素回収タンク
11〜16 配管
21〜28 自動弁