JP2006093994A - スピーカ用振動板及びその形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 難燃性を有するスピーカ用振動板を得るに際して、各種特性の安定性が得られスピーカの音響特性が低下しないこと、また、良好な音響特性が得られること。
【解決手段】 各種繊維(天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等)と膨張性黒鉛とを混抄して(S11:各種繊維と膨張性黒鉛の混抄工程)、この抄紙スラリーを調整し、これを用いて膨張性黒鉛が膨張するのに十分な成形温度で加熱して抄造・成形し(S12:抄造・成形工程)、膨張剤の加熱膨張による難燃層を有する振動板基材の抄造物を形成する。そして、この振動板基材を難燃性付与成分含有液に含浸させ(S13:難燃性付与成分含有液への含浸工程)、その後、これを乾燥して(S14:乾燥工程)、外内径切断等の仕上げを行って(S15:仕上げ工程)、充分な難燃性を有するスピーカ用振動板を得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、スピーカ用振動板及びその形成方法に関するものである。
スピーカ用振動板は、目的とする再生帯域に応じた諸特性が得られるように材質の選択がなされるが、更には、スピーカ装置の設置環境に応じた耐環境性が求められる。特に、車載用等の火災に対する対策が求められる環境に設置されるスピーカ装置では、難燃性を有するスピーカ用振動板が求められており、難燃性振動板として下記特許文献1,2に記載の従来技術が提案されている。
すなわち、下記特許文献1には、セルロース繊維を主体としたコーンの少なくとも一部以上に、低ホル型メラミン樹脂を混合した有機含隣含窒素化合物を浸漬、スプレー法等により含浸させ、これを加熱乾燥したスピーカ用振動板であって、難燃性にして良好な音質が得られるものが記載されている。また、下記特許文献2には、りん酸系セルロース繊維又はりん酸系ポリビニルアルコール繊維に金属繊維、カーボン繊維、ガラス繊維等の無機繊維を混抄してなる難燃性振動板が記載されている。
特開昭58−1397号公報 特公昭60−12840号公報
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術のように、スプレー又は浸漬によって難燃剤を振動板材料に含浸させるものでは、難燃剤の濃度や含浸量の影響によって一定の品質を得ることが難しく、また、難燃剤の多くは吸湿性があるため、空気中の湿気によって影響を受けて振動特性が経時的に変化してしまうという問題がある。車載用のスピーカ装置では、車室内が多湿になることが多いので、その影響が特に問題になる。
また、特許文献2に記載された従来技術のように、りん酸系セルロース繊維又はりん酸系ポリビニルアルコール繊維に金属繊維、カーボン繊維、ガラス繊維等の無機繊維を混抄したものでは、充分な難燃性或いは耐熱性が得られ、吸湿性の改善から安定性のあるスピーカ用振動板が得られるものの、ヤング率などの物理特性が充分なものにはならず、スピーカの音響特性として良好なものが得られないという問題があった。
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、充分な難燃性を有するスピーカ用振動板を得るに際して、各種特性の安定性が得られスピーカの音響特性が低下しないこと、また、良好な音響特性が得られること等が本発明の目的である。
このような目的を達成するために、本発明によるスピーカ用振動板及びその形成方法は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
[請求項1]難燃性を有するスピーカ用振動板であって、天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤とを混抄し、該膨張剤の加熱膨張によって形成された難燃層を有する振動板基材からなり、該振動板基材が低吸湿性の難燃性付与成分を含有していることを特徴とするスピーカ用振動板。
[請求項3]難燃性を有するスピーカ用振動板の形成方法であって、天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤とを混抄し、該膨張剤の加熱膨張によって難燃層を有する振動板基材を形成する工程と、前記振動板基材を、トリフェニルホスフェート(TPP)を主体とした難燃性付与成分の溶解液又は液状体に含浸させる工程とを有することを特徴とするスピーカ用振動板の形成方法。
[請求項4]難燃性を有するスピーカ用振動板の形成方法であって、天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤とを混抄し、該膨張剤の加熱膨張によって難燃層を有する振動板基材を形成する工程と、トリフェニルホスフェート(TPP)を主体とした難燃性付与成分を含有する塗工液を形成し、前記振動板基材に該塗工液を塗布する工程とを有することを特徴とするスピーカ用振動板の形成方法。
[請求項5]難燃性を有するスピーカ用振動板の形成方法であって、天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤とを混抄する際に、トリフェニルホスフェート(TPP)を主体とした難燃性付与成分の粉砕物を分散し、前記膨張剤の加熱膨張によって難燃層を有する振動板基材を形成する工程を有することを特徴とするスピーカ用振動板の形成方法。
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係るスピーカ用振動板は、難燃性を有し、スピーカ用振動板の各種特性の安定性が得られ、スピーカの良好な音響特性が低下しないことを目的にしたものであって、天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤とを混抄し、該膨張剤の加熱膨張によって形成された難燃層を有する振動板基材からなり、該振動板基材が低吸湿性の難燃性付与成分を含有したものである。
更に具体的には、膨張剤として、例えば、黒鉛に化学物質をインターカレーションした膨張性黒鉛を用い、これと前述した各種繊維とを混抄したスラリー混合物を加熱して抄造・成形することで、内部に膨張性黒鉛の加熱膨張によって形成された難燃層を有する振動板基材を得る。この難燃層を有する振動板基材によると、スピーカ用振動板に適したヤング率等の物理的特性が得られるが、この抄造物による振動板基材のみでは充分な難燃性が得られないため、これに、例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)を主体とした難燃性付与成分を含有させて、必要な難燃性の確保を図る。また、この難燃性付与成分として、低吸湿性のものを用いることで、経時的な物理的特性の低下や音響的特性の劣化を防止する。
ここで重要な点は、膨張性黒鉛の加熱膨張によって形成された難燃層を有する振動板基材をトリフェニルホスフェート(TPP)によって難燃処理することで、難燃性の更なる向上に加えて、音響物理特性の改善が得られることである。これによって、充分な難燃性と良好な音響特性、更には多湿状況下での安定性を共に確保した優れたスピーカ用振動板を得ることができる。
以下、図1〜図3によって、本発明の実施形態に係るスピーカ用振動板の形成方法を説明する。
図1は、第1の実施形態を示すフロー図である。この実施形態に係る形成方法によると、各種繊維(天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等)と膨張性黒鉛とを混抄して(S11:各種繊維と膨張性黒鉛の混抄工程)、この抄紙スラリーを調整し、これを用いて膨張性黒鉛が膨張するのに十分な成形温度で加熱して抄造・成形し(S12:抄造・成形工程)、膨張剤の加熱膨張による難燃層を有する振動板基材の抄造物を形成する。そして、この振動板基材を難燃性付与成分含有液に含浸させ(S13:難燃性付与成分含有液への含浸工程)、その後、これを乾燥して(S14:乾燥工程)、外内径切断等の仕上げを行って(S15:仕上げ工程)、充分な難燃性を有するスピーカ用振動板を得る。
ここで、難燃性付与成分含有液としては、例えば、TPPを可溶性溶媒(有機溶剤等)に溶解した溶液であってもよいし、或いは、TPPを融点まで加温して液状にした液状体であってもよい。
図2は、第2の実施形態を示すフロー図である。この実施形態に係る形成方法によると、各種繊維(天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等)と膨張性黒鉛とを混抄して(S21)、この抄紙スラリーを調整し、これを用いて膨張性黒鉛が膨張するのに十分な成形温度で加熱して抄造・成形し(S22)、膨張剤の加熱膨張による難燃層を有する振動板基材の抄造物を形成するところまでは、前述した実施形態と同様である。そして、この振動板基材に対して難燃性付与成分含有液を塗布し(S23:難燃性付与成分含有液の塗布工程)、その後、これを乾燥して(S24)、外内径切断等の仕上げを行って(S25)、充分な難燃性を有するスピーカ用振動板を得る。
ここで、この際の難燃性付与成分含有液としては、前述したようなTPPを可溶性溶媒(有機溶剤等)に溶解した溶液、TPPを融点まで加温して液状にした液状体を用いて、振動板基材にスプレー等で塗布するようにしてもよいし、或いは、TPPを粉末状等に粉砕したものをバインダー性又は接着性を有する樹脂等に混合させるか、セメント等の無機物質に混合させたものを、振動板基材に塗布するようにしてもよい。
図3は、第3の実施形態を示すフロー図である。この実施形態に係る形成方法によると、各種繊維(天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等)と膨張性黒鉛とを混抄して(S31)、この抄紙スラリーに難燃性付与成分を混入する(S32:難燃性付与成分混入工程)。この際の難燃性付与成分としては、固体のTPPを粉砕したものを抄紙スラリーに分散することで、均一に成分を混入させることができる。そして、この難燃性付与成分を混入した抄紙スラリーを加熱して抄造・成形し(S33)、膨張剤の加熱膨張による難燃層を有する振動板基材を形成し、その後、外内径切断等の仕上げを行って(S34)、充分な難燃性を有するスピーカ用振動板を得る。
以下、本発明のスピーカ用振動板及びその形成方法に係る更に具体的な実施例を説明する。形成方法は、前述した第1の実施形態(図1参照)に応じて行い、下記表1の具体的材料を用いた。
Figure 2006093994
(実施例1)
抄造工程においては、繊維として木材パルプ(針葉樹クラフトパルプ)を90重量部、膨張剤として膨張性黒鉛を10重量部の割合で混抄し抄紙スラリーを形成した。この繊維の混合例は一例であり、一般に難燃性又は不燃性の繊維を混抄することで難燃性を向上させることができる。ここでは、混入される膨張性黒鉛は、抄紙し得る粒径50メッシュ以上のものを使用した。
含浸・乾燥工程においては、難燃性付与成分含有液(含浸液)として、トリフェニルホスフェートを30重量部、溶剤として芳香族炭化水素類等から成る混合溶剤を70重量部の割合で混合したものを用い、抄造・成形された振動板基材にムラなく充分に難燃性付与成分含有液を含浸させた後、温風乾燥させる(例えば、80℃雰囲気中で10分間乾燥処理を行う)ことで、所望の難燃性を有するスピーカ振動板を得ることができた。
(実施例2)
抄造工程における木材パルプと膨張性黒鉛の配合割合(木材パルプ:70重量部、膨張性黒鉛:30重量部)以外は実施例1と同様の処理工程で形成した。
(実施例の特性)
以下に、前述した本発明の実施例と比較例(実施例1,2においてTPPによる難燃処理を行わなかった抄造物からなるスピーカ用振動板)の物性を測定したところ、次表のような結果が得られた。これによると、TPPによる難燃処理は、難燃性を向上させることは勿論のこと、特に音響的物理性を併せて向上させることが確認できた。
Figure 2006093994
また、一方で、本発明の実施例の難燃性を確認すべく、前表の各試料について燃焼試験を行ったところ、炎から取り出した直後、比較例1,2の試料は燃焼を継続したが、実施例1,2の試料については、炭化、自己消化性により残炎が無く、UL規格94−V−0〜V−1に相当する優れた難燃性が確認された。また、難燃性付与成分として含有させたTPPは、吸湿性が微量である(低吸湿性である)ため、高湿環境下での使用に際しても、特性が安定であり、スピーカ音響特性の目立った低下は見られなかった。
以上説明したとおり、本発明の実施形態又は実施例に係るスピーカ用振動板及びその形成方法によると、充分な難燃性を有するスピーカ用振動板を得るに際して、各種特性の安定性が得られスピーカの音響特性が低下することがなく、また、良好な音響特性が得られる。
そして、天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤としての膨張性黒鉛とを混抄し、この膨張性黒鉛の加熱膨張によって形成された難燃層を有する振動板基材に、低吸湿性の難燃性付与成分であるトリフェニルホスフェート(TPP)を含有しているので、難燃層を有する振動板基材に対してTPPによる難燃処理を施すことで、更に充分な難燃性を確保することが可能なる。また、膨張性黒鉛の膨張による難燃層を有する振動板基材にTPPによる難燃処理を施すことで、難燃性の向上に加えてスピーカ用振動板の音響的物理性能を改善することもできる。更には、TPPは低吸湿性を有するので、高湿状況下の使用に際しても、吸湿に伴う音響特性の低下が生じ難い利点がある。
本発明の実施形態に係るスピーカ用振動板の形成方法を説明する説明図であって、第1の実施形態を示すフロー図である。 本発明の実施形態に係るスピーカ用振動板の形成方法を説明する説明図であって、第2の実施形態を示すフロー図である。 本発明の実施形態に係るスピーカ用振動板の形成方法を説明する説明図であって、第3の実施形態を示すフロー図である。
符号の説明
S11,S21,S31 各種繊維と膨張性黒鉛の混抄工程
S12,S22,S33 抄造・成形工程
S13 難燃性付与成分含有液への含浸工程
S14,S24 乾燥工程
S15,S25,S34 仕上げ工程
S23 難燃性付与成分含有液の塗布工程
S32 難燃性付与成分混入工程

Claims (5)

  1. 難燃性を有するスピーカ用振動板であって、
    天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤とを混抄し、該膨張剤の加熱膨張によって形成された難燃層を有する振動板基材からなり、
    該振動板基材が低吸湿性の難燃性付与成分を含有していることを特徴とするスピーカ用振動板。
  2. 前記膨張剤は膨張性黒鉛であり、前記難燃性付与成分はトリフェニルホスフェート(TPP)を主体とした成分であることを特徴とする請求項1に記載されたスピーカ用振動板。
  3. 難燃性を有するスピーカ用振動板の形成方法であって、
    天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤とを混抄し、該膨張剤の加熱膨張によって難燃層を有する振動板基材を形成する工程と、
    前記振動板基材を、トリフェニルホスフェート(TPP)を主体とした難燃性付与成分の溶解液又は液状体に含浸させる工程とを有することを特徴とするスピーカ用振動板の形成方法。
  4. 難燃性を有するスピーカ用振動板の形成方法であって、
    天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤とを混抄し、該膨張剤の加熱膨張によって難燃層を有する振動板基材を形成する工程と、
    トリフェニルホスフェート(TPP)を主体とした難燃性付与成分を含有する塗工液を形成し、前記振動板基材に該塗工液を塗布する工程とを有することを特徴とするスピーカ用振動板の形成方法。
  5. 難燃性を有するスピーカ用振動板の形成方法であって、
    天然繊維、化学繊維、無機繊維、或いはこれらから選択された異なる繊維の合成繊維等の各種繊維と膨張剤とを混抄する際に、トリフェニルホスフェート(TPP)を主体とした難燃性付与成分を混入し、前記膨張剤の加熱膨張によって難燃層を有する振動板基材を形成する工程を有することを特徴とするスピーカ用振動板の形成方法。
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