本発明による液晶表示装置は、反射表示部の液晶配向と透過表示部の液晶配向とが、同時刻に異なる状態を取り得ることを特徴としている。ここで、液晶配向とは、液晶層のある点での液晶分子の平均配向方位だけではなく、層状の液晶層の層の法線方向にとった座標に対する平均配向方位の座標依存性をも示すものとする。そこで、本発明では、反射表示部と透過表示部とで異なる液晶配向を実現する方法並びに該方法に用いられる配向機構に関し、大きく3種類に分類して説明する。
第1の方法は、液晶層のある条件が透過表示部と反射表示部とで異なるように作製された配向機構を用いることにより反射表示部の液晶配向と透過表示部の液晶配向とを異ならせる方法である。
上記第1の方法としては、具体的には、例えば、(1) 液晶配向が透過表示部と反射表示部とで全く異なるツイスト角を有するようにツイスト配向させる配向機構を用いる方法、(2) 液晶配向の基板に対する傾斜角を大きく変更させる配向機構を用いる方法等が挙げられる。また、上記第1の方法には、(3) 透過表示部と反射表示部とで異なる液晶材料を配置する方法や、(4) 液晶材料に混入される色素の種類や濃度を、透過表示部と反射表示部とで異ならせる方法(この場合、透過表示部と反射表示部とで、同様の液晶材料を用いてもよい)等が含まれ、本発明にかかる液晶表示装置は、このような方法を実現する際になされた機構を、本発明の配向機構として具備している。また、上記第1の方法並びに該方法に用いられる配向機構は、これら(1) 〜(4) の方法を組み合わせたものであってもよく、これらの方法並びに該方法に用いられる配向機構により、反射表示部と透過表示部とで異なる液晶配向を実現することができる。
第2の方法は、時間の経過に伴って表示内容を書き換える表示内容書換手段により液晶配向を透過表示部と反射表示部とで異ならせる方法(即ち、液晶配向を透過表示部と反射表示部とで異ならせる配向機構が、表示内容書換手段と同一である方法)である。この方法を採用する場合に用いられる、表示内容書換手段としては、既存の、表示の書き換え手段を用いることができる。
上記第2の方法としては、具体的には、例えば、(5) 透過表示部と反射表示部とで異なる電極を配向機構として用いる等の方法により、液晶配向を書き換える方法、即ち、表示内容書換手段として用いられる電圧そのものを、透過表示部と反射表示部とで変更する方法を採用することができる。また、上記第2の方法として、(6) 電極は同一であるが、液晶配向に実質的に印加される電圧を変更する方法を用いてもよい。上記(6) の方法を採用する場合、例えば、液晶層とそれを駆動する電極との間に、反射表示部と透過表示部とで異なる層厚の絶縁体(例えば絶縁膜)を配置することにより、共通の電極で駆動される透過表示部の液晶配向と反射表示部の液晶配向とを変化させてもよい。また、(7) 透過表示部と反射表示部とで電界の方向を異ならせる方法を用いてもよい。例えば、液晶層を挟持する基板の一方に平行に配置され、液晶層に各々異なる電位を与える電極群によって、液晶配向方向を液晶層面内で変更して表示を行う場合、電極間と電極上とでは液晶配向が大きく異なるため、この液晶配向が異なる領域を各々反射表示と透過表示とに用いてもよい。さらに、同様の電極群によって、基板に対して垂直に配向した液晶層に各々異なる電位を与える方法を採用してもよい。上記第2の方法を採用する場合、上記の方法を実現する際に用いられた例えば電極や絶縁体、あるいはこれらの組み合わせ等が、本発明の配向機構に相当し、得られた液晶表示装置は、これらの配向機構を具備したものとなっている。
第3の方法は、液晶配向そのものは大きくは違わないが、光学特性を決定する要素である液晶層の層厚を、反射表示部と透過表示部とで異ならせる方法であり、この方法の実現には、例えば、反射表示部と透過表示部とで異なる膜厚に形成された絶縁膜や、反射表示部と透過表示部とで異なる層厚あるいは形状に形成された基板等が、上記配向機構として用いられる。
上記第3の方法を採用する場合、液晶配向には、例えば、偏光板を2枚用いる液晶表示装置で用いられるTN方式のように、一様にツイストした液晶配向を用いていてもよい。この場合、液晶配向は、液晶層を挟持する基板間で基板に対して平行に配向し、その配向方向は一方の基板からの距離に応じて基板平面内で方向を変えながらツイスト配向している。この液晶配向を液晶層厚を変更して反射表示部と透過表示部とに用いれば、光学特性は液晶層厚によって異なるため、反射表示部と透過表示部とで共に良好な表示が実現できる。
また、GH方式においても、液晶層厚の変化によって実質的に色素濃度を変更した場合と同様の効果があるため、液晶配向そのものは反射表示部と透過表示部とでほぼ同様であっても、反射表示部と透過表示部の各々に良好な表示を実現することができる。
以上のように、反射表示部と透過表示部とで異なる液晶配向を実現する方法並びに該方法に用いられる配向機構は、大きく3種類に分類されるが、これらの方法や配向機構により実現される本発明にかかる液晶表示装置において用いられる液晶表示方式は、液晶の配向変化を表示に用いる方式群から適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。本発明において用いられる上記の液晶表示方式としては、具体的には、液晶組成物のネマティック相を表示に利用するモードである、例えば、TN方式、STN方式、ネマティック双安定モード、垂直配向モード、ハイブリッド配向モード、ECB(electrically controlled biriefringence ;電界制御複屈折)モード等の各種モードを使用することができる。また、散乱を利用するモードである、例えば、高分子分散型液晶モード、ダイナミックスキャッタリング方式等も本発明において用いられる上記液晶表示方式として利用することができる。さらに、強誘電性液晶組成物を用いた表面安定化強誘電液晶表示方式や、反強誘電性液晶を用いた無閾スイッチング反強誘電液晶表示方式も、配向変化を表示に用いるため、本発明において用いられる上記液晶表示方式として利用可能である。
また、上記第3の方法を採用する場合、本発明において用いられる上記液晶表示方式は、TN方式のように旋光性の変調を用いる方式であってもよく、ECBモードのようにリタデーションの変調を用いる方式であってもよく、GH方式のように光の吸収率(吸光度)が変調される方式であってもよい。上記第3の方法を採用する場合には、これらの方式を含めて、液晶層厚が光学特性の主要な決定要因となっている方式であって、透過表示部で液晶層厚を厚く設定し、反射表示部で液晶層厚を薄く設定することが良好な表示特性実現の効果を有する全ての方式を採用することができる。
本発明では、以上のように、液晶表示装置が、対向する表面に配向手段が施された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを有する液晶表示素子を備えた液晶表示装置であって、上記液晶層における表示に利用される任意でかつ異なる領域に同時に少なくとも二種類の異なる配向状態をとらせるための配向機構を具備し、かつ、上記液晶層において異なる配向状態を示す領域のうち少なくとも一つの領域に反射手段が配され、上記異なる配向状態を示す領域が、反射表示を行う反射表示部と、透過表示を行う透過表示部とに用いられていることで、液晶層の配向状態に応じた光学的物理量の変調量の大きさに基づく透過率または反射率を得ることができ、視差がなく、高コントラスト比を実現することができる。この結果、周囲が暗い場合の視認性を向上させることが可能であると共に、周囲光が強い場合でも良好な視認性を得ることができる。
また、光の吸収量や光学異方性による位相差等の各光学的物理量の変調量の程度を反射表示部と透過表示部とで独立に変更する場合、電圧の印加による液晶の配向方向が、液晶層の表示に利用するための領域全体でほぼ同様である場合でも、液晶層の液晶層厚が異なる領域では、実質的に、該領域において液晶層の配向方向を変更した場合と同様の作用を有することから、本発明にかかる液晶表示装置は、対向する表面に配向手段が施された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを有する液晶表示素子を備えた液晶表示装置であって、上記液晶層における表示に利用される領域が、少なくとも二種類の異なる液晶層厚を有する領域よりなり、かつ、上記液晶層厚が異なる各々の領域が反射表示部と透過表示部とに用いられていると共に、少なくとも反射表示部には反射手段が配され、上記反射表示部の液晶層厚は透過表示部よりも小さく設定されている構成としてもよい。
上記の構成においても、液晶層厚が異なる領域における光学的物理量の変調量の大きさに基づく透過率または反射率を得ることができ、これにより、透過表示部と反射表示部とで光学パラメータを独立に設定することが可能となる。従って、上記の構成によれば、視差がなく、高コントラスト比を実現することができ、周囲が暗い場合の視認性を向上させることが可能であると共に、周囲光が強い場合でも良好な視認性を得ることができる。
以下、特に、反射表示部と透過表示部とで液晶層厚を変更することにより、良好な反射表示並びに良好な透過表示を行う液晶表示装置について、主に、実施の形態1および実施の形態2により説明する。
〔実施の形態1〕
本実施の形態では、GH方式を用いた液晶表示装置について、主に図1を参照して以下に説明する。
図1は、本実施の形態1に係る液晶表示装置の要部断面図である。該液晶表示装置は、図1に示すように、液晶セル100(液晶表示素子)を備えると共に、必要に応じて、背景照明手段としてのバックライト13(照明装置)を備えている。これら液晶セル100、バックライト13は、観察者(使用者)側から、液晶セル100、バックライト13の順で配置されている。
液晶セル100は、図1に示すように、液晶層1が、該液晶層1と接する側(液晶層1に接する第1の基板上の界面)に配向膜2を備えた電極基板101(第1の基板)と、液晶層1と接する側(液晶層1に接する第2の基板上の界面)に配向膜3を備えた電極基板102(第2の基板)とによって挟持された構成を有している。
上記電極基板101には、透光性を有するガラス基板等からなる基板4上に、液晶層1に電圧を印加するための電極6(電圧印加手段)が設けられ、該電極6を覆うように、ラビング処理が施された配向膜2(配向機構)が形成されている。
一方、液晶層1を挟んで上記電極基板101に対向して設けられた上記電極基板102には、液晶層1に電圧を印加すべく、透光性を有する基板5上に、絶縁膜11を介して、電極6に対向する対向電極としての電極7(電圧印加手段)が形成されている。
上記絶縁膜11は、上記液晶層1における表示に利用される領域が少なくとも二種類(本実施の形態では二種類)の異なる液晶層厚を有するように、上記液晶層1における表示に利用される領域に対応する領域において、部分的に異なる膜厚を有するように形成されている。より詳しくは、上記絶縁膜11は、透過表示部10に対応する領域で、反射表示部9に対応する領域よりも膜厚が薄くなるように形成されている。
上記電極基板102における反射表示部9に対応する領域には、上記電極7を覆う反射膜8(反射手段)が形成され、さらに、ラビング処理が施された配向膜3(配向機構)が、これら電極7並びに反射膜8を覆うように形成されている。
ここで、電極6・7は、例えば、ITO(インジウムすず酸化物)によって形成された透明電極である。また、電極6・7には、液晶層1に電界を生じさせるための電圧が印加されるようになっており、表示内容に即した電圧が印加されることで表示が制御されるようになっている。
また、反射膜8は、光反射性を有し、例えば、アルミニウムや銀等の金属や、誘電体多層膜ミラー等によって作製される。反射膜8が導体で作製された場合には、該反射膜8は、電極7の代わりに電極としての機能を兼務していてもよい。即ち、反射膜8は、液晶層1を駆動する液晶駆動電極と反射手段とを兼ねる反射画素電極であってもよい。さらに、上記反射膜8は、可視光より適宜選択された波長帯域の光を反射する色彩反射膜であってもよい。
尚、上記電極基板101・102を構成する各部材の材質や形成方法等は、必ずしも上記の記載に限定されるものではなく、従来公知の材料および常用の方法を用いることができる。また、上記液晶表示装置の構成も上記の構成に限定されるものではなく、例えば、後述する実施の形態にて説明するタッチパネル(押圧座標検出型入力手段)等からの信号により、液晶セル100の外部から直接、反射表示部9および透過表示部10に対応する電極6・7に電圧が印加される構成を有していてもよい。また、スイッチング素子として、TFT素子、MIM等のアクティブ素子が設けられている構成を有していてもよい。
上記電極基板101・102は、図1に示すように、配向膜2・3が対向するように対向配置され、封入シール剤等を用いて貼り合わされ、その空隙に液晶組成物を導入することにより、液晶層1が形成されている。
また、バックライト13は、観察者(使用者)から見て上記液晶セル100の背面側、即ち、電極基板102裏面側に配置される。該バックライト13は、主として光源13aおよび導光体13bによって構成されている。光源13aは、例えば、導光体13bの側面に沿って配設され、これにより、導光体13bは、例えば光源13a配設側の側面を入射面とし、光源13aから入射した光を被照明物である液晶セル100へ出射するようになっている。尚、上記バックライト13としては、既存の照明装置を用いることができる。
上記の構成を有する液晶表示装置において、反射膜8が形成された反射表示部9では、基板4側、即ち観察者側から表示面に入射する周囲光の反射強度を、液晶配向の変化によって制御し、表示を行うようになっている。また、反射膜8が形成されていない透過表示部10では、基板5側から表示面へ入射する光の透過光強度を液晶配向の変化によって制御し、表示を行うようになっている。この場合、必要に応じて、液晶セル100背面に設置したバックライト13による照明光を利用してもよい。
図1に示す上記液晶表示装置は、上述したように、反射表示部9と透過表示部10とで異なる液晶層厚に作製されている。これにより、上記液晶表示装置は、反射表示部9と透過表示部10とで実質的に異なる液晶配向を有している。
ここで、反射表示部9と透過表示部10とで異なる液晶膜厚を得るための液晶表示装置の構成について以下に説明する。
反射表示部9と透過表示部10とで異なる液晶膜厚を得るためには、例えば、図1に示すように、絶縁膜11を、反射表示部9と透過表示部10とで異なる膜厚を有するように形成すればよい。
尚、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚を変化させるための構成は、液晶を挟持している基板(即ち、上記電極基板101・102)の少なくとも何れか一方が有してさえいればよい。
従って、上記絶縁膜11は、基板5上ではなく、基板4上に配されていてもよい。但し、このような場合であっても、反射膜8は、電極基板102側(即ち、表示面側(電極基板101側)とは、液晶層1を挟んで反対側)の基板5上に形成される。
尚、図1に示す液晶表示装置では、絶縁膜11における、反射表示部9に対応する領域と透過表示部10に対応する領域とで、絶縁膜11の膜厚を変更することにより反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚を変化させる構成としたが、基板4あるいは基板5そのものを、図1に示す絶縁膜11と同様の形状に形成することにより、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚を変化させる構成としてもよい。
また、絶縁膜11における、反射表示部9に対応する領域と透過表示部10に対応する領域とで、その膜厚を変更する場合、図1に示すように、透過表示部10に対応する領域の絶縁膜11が、反射表示部9に対応する領域の絶縁膜11の膜厚よりも薄くなるように形成してもよいし、あるいは、反射表示部9に対応する領域には絶縁膜11が形成されていて、透過表示部10に対応する領域には絶縁膜11が形成されていない構成としてもよい。
さらに、反射表示部9および透過表示部10における液晶層1の液晶層厚を所定の値に保つために、液晶層1には、スペーサ(図示せず)を配してもよく、他の手法によって液晶層厚が所定の値に保たれていてもよい。例えば液晶層1に球状のスペーサを配する場合、液晶層厚が薄い反射表示部9における液晶層厚がこのスペーサの直径にほぼ等しい層厚となる。
以上のようにして準備された基板対、即ち、上記電極基板101・102によって挟持された液晶層1は、上述したように液晶組成物からなっている。該液晶層1による液晶表示方式としては、例えば、図1に示すように、二色性色素12を液晶に混入させた液晶組成物を使用し、液晶層1に電界を生じさせて液晶配向を制御すると同時に二色性色素12の配向方向を同時に変化させ、二色性による吸収係数の変化を用いて表示を行うGH方式を用いることができる。
次に、GH方式による液晶層1の動作、並びに、反射表示部9における液晶膜厚と透過表示部10における液晶層厚とが異なる場合の表示原理について、図1を参照して以下に説明する。
図1に示す液晶表示装置を用いて表示を行う場合、透過表示部10では、矢印で示すように、バックライト13等、液晶層1後方からの光を、液晶層1を一度だけ通過させて表示面から出射し、表示光とすることで表示を行うようになっている。このとき、液晶層1に配された液晶組成物中に混入された二色性色素12は、液晶配向によって光の吸収率が変化する。このため、透過表示部10は、透過表示部10aに示すように、液晶が表示面(電極基板101)に対して平行に配向(以下、平行配向と称する)しているときには、この部分における二色性色素12が液晶層1を通過する光を強く吸収することから暗表示となり、透過表示部10bに示すように、液晶が表示面(電極基板101)に対して垂直に配向(以下、垂直配向と称する)しているときには、二色性色素12による光の吸収が弱いことから明表示となって表示が可能になる。
これに対し、反射表示部9では、観察者側から表示面に入射した光を表示に利用する。つまり、表示面に入射した光は、矢印で示すように、液晶層1を通過した後、反射膜8によって反射され、再び液晶層1を通過し、表示面から出射して表示光になる。このとき、反射表示部9は、反射表示部9aに示すように、液晶が平行配向しているときには、この部分における二色性色素12が光を強く吸収することから暗表示となり、反射表示部9bに示すように、液晶が垂直配向しているときには、二色性色素12による光の吸収が弱いことから明表示となって表示が可能になる。
従って、電極6と電極7との間に電位差を与えて液晶配向を制御することで明表示と暗表示とが可能になる。尚、この場合、液晶の初期配向状態は、特に限定されるものではなく、例えば、電圧を印加しないときに平行配向していてもよく、さらにツイストしていてもよいし、逆に、電圧を印加しないときに垂直配向していてもよい。前者の場合(即ち、電圧を印加しないときの液晶配向が平行配向であるか、あるいは、さらにツイストしている場合)、液晶には、誘電率異方性が正の液晶を使用することができる。一方、後者の場合(即ち、電圧を印加しないときの液晶配向が垂直配向である場合)、液晶としては、誘電率異方性が負の液晶を使用することができる。このように、液晶の初期配向状態は、特に限定されるものではないが、使用する液晶配向の形態に適した液晶層厚が得られるように、絶縁膜11の膜厚を調整することが必要である。
また、図1に示すように、液晶層1を容易に作製するためには、通常の液晶表示装置と同様、液晶層1が、反射表示部9および透過表示部10、あるいは、複数の表示画素に渡って連通した構造を有していることが好ましい。
このように液晶層1が反射表示部9と透過表示部10との間で連通している場合であっても、液晶層厚が透過表示部10と反射表示部9とで異なる場合、最終的に表示光となる光が液晶層1を通過する間の距離は、この光が、透過表示部10において液晶層1を一度だけ通過する距離と、この光が、反射表示部9において、液晶層1を往復する距離とで、ほぼ同様に設定することが可能となる。
このため、反射表示部9の反射明度と透過表示部10の透過明度とは、ほぼ同程度に設定することができると共に、反射表示部9におけるコントラスト比と透過表示部10におけるコントラスト比とをほぼ同程度に設定することができる。換言すると、二色性色素12による光の吸収を利用するGH方式において、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚を変更することは、実質的に、色素濃度を変更した場合と同様の効果があるため、透過表示部10と反射表示部9とで液晶層厚を変更することにより、液晶組成物に対する、反射表示部9に適した二色性色素12の混入濃度と透過表示部10に適した二色性色素12の混入濃度とをほぼ等しくすることができる。従って、反射表示部9と透過表示部10とが連通している液晶層1によって、反射表示部9と透過表示部10とが、同時に良好な表示を実現することができる。即ち、反射表示部9と透過表示部10とで、表示コントラスト比が同程度で、かつ、明表示の明度も同程度になる。
尚、この場合の明度は、反射表示部9または透過表示部10において、液晶層1に入射する光のうち、表示光として観察者に観察される割合を示し、コントラスト比は、明表示の明度を暗表示の明度で除して定義するものとする。
また、一般に、反射表示に適したコントラスト比と透過表示に適したコントラスト比とを比較した場合、反射表示に適したコントラスト比よりも透過表示に適したコントラスト比の方が高いことが要求される。従って、この要求を満たすために、反射表示部9におけるコントラスト比と透過表示部10におけるコントラスト比とを等しく設定するよりも、透過表示部10における液晶層厚を反射表示部9における液晶層厚よりも厚く設定し、透過表示部10におけるコントラスト比が反射表示部9におけるコントラスト比を上回るようにすることが、良好な表示を行う上で、有効である。
以下、本実施の形態に係る液晶表示装置について、上述した表示原理に基づいて、図1〜図3を参照して、具体的な実施例および比較例を挙げて説明するが、本実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例では、液晶層1に電圧を印加していない時に液晶が表示面法線に対してほぼ垂直に配向し、液晶層1に電圧を印加することによって、液晶が表示面に対して傾斜して配向する、誘電率異方性が負の液晶を用いたGH方式の液晶層1を表示に用いる液晶表示装置について説明する。先ず、該液晶表示装置の製造方法について以下に説明する。
先ず、透明な基板4上に、にスパッタリングによってITOを140nm形成し、フォトリソグラフィーを用いてエッチング処理することによって所定のパターンの電極6(透明電極)を作製した。尚、上記基板4としては、ガラス基板を用いた。
次に、この基板4における電極6形成面上に、さらに、垂直配向膜をオフセット印刷によって配置し、これを200℃のオーブンにて焼成することにより、配向膜2を形成した。その後、ラビングにより配向膜2に配向処理を施し、観察者側基板としての電極基板101を作製した。
ここで、垂直配向膜は、液晶を膜面の法線方位に配向させる性質を有し、さらにラビング等の配向処理によって、その法線方向から液晶配向を数度程度傾斜配向させる性質を有する。この傾斜のため、電圧印加後の液晶配向は、上記配向処理方向に向かってさらに大きく傾斜する。
一方、基板5上に、絶縁性を有する感光樹脂をスピンコートによって塗布し、さらに紫外光のマスク照射によって、透過表示部10には感光樹脂が残存せず、反射表示部9では、該感光樹脂が3μmの層厚に形成されるように絶縁膜11をパターン形成した。このとき、絶縁膜11のパターンエッジ部分は、後工程にて形成される電極7が、該絶縁膜11の段差によって断裂されることがないように、十分になだらかな段差形状に形成した。尚、上記基板5には、基板4と同様の透明なガラス基板を用いた。
さらに、この基板5における絶縁膜11形成面上に、スパッタリングによってITOを140nm成膜し、その上に、さらに、光反射性の電極として機能するアルミニウムをスパッタリングによって200nm成膜した。次いで、得られたアルミニウム膜を、該アルミニウム膜が反射表示部9(即ち、絶縁膜11を形成すべく感光樹脂をパターニングする際に、感光樹脂を残存させた部分)にのみ残存するようにフォトリソグラフィーとドライエッチングによってパターニングして反射膜8を形成した。そして、さらに、この反射膜8の下層のITO膜を、フォトリソグラフィーを用いてエッチング処理することによって所定のパターンの電極7(透明電極)を作製した。
次に、この基板5における上記電極7、反射膜8形成面上に、観察者側基板である上記電極基板101の配向膜2と同様の方法により、配向膜3を形成した。その後、ラビングにより上記配向膜3に配向処理を施し、電極基板102を作製した。
上記のようにして作製された電極基板101・102のうち、一方の電極基板の周囲に、封入シール剤としてのシール樹脂(図示せず)を配し、他方の電極基板における配向膜形成面上に、直径4.5μmの球状のプラスティックスペーサを散布し、図1に示すように、電極面を対向させてシール樹脂を加圧下にて硬化し、液晶注入用の液晶セルを作製した。この液晶注入用の液晶セルの反射表示部9および透過表示部10における液晶注入用空隙の厚み(即ち、液晶層1の層厚)を反射光スペクトルの測定によって計測したところ、反射表示部9では4.5μm、透過表示部10では7.5μmであった。
さらに、誘電率異方性が負の液晶に二色性色素12を混入してなる液晶組成物を上記液晶注入用の液晶セルに導入するにあたり、二色性色素12の濃度は、反射表示部9と透過表示部10とで十分なコントラスト比が得られるような濃度に調整した。さらに、上記液晶組成物に、液晶の配向に捩じれを付与するカイラル添加剤を添加し、配向膜2・3に施した配向処理とともに、液晶層1の上下の電極基板101・102間での液晶配向の捩じれが、暗表示に用いる電圧印加状態での反射表示部9と透過表示部10とで、同様になるように設定した。さらに、液晶組成物を真空注入法によって上記液晶注入用の液晶セルに導入し、液晶表示装置を作製した。
得られた液晶表示装置における反射表示部9の反射率および透過表示部10の透過率を顕微鏡によって測定しながら液晶層1に電圧を印加したところ、図2に示す表示特性が得られた。液晶層1に印加した電圧は、17msecごとに極性反転している矩形波であり、図2において、横軸は印加電圧の実効値を示し、縦軸は明度(反射率または透過率)を示す。また、同図において、曲線111は、反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線112は、透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
曲線111、曲線112に示すように、上記の液晶表示装置では、反射表示部9および透過表示部10における明度(反射率または透過率)が、共に、電圧の印加に伴って低下している。また、印加電圧が1.8Vのとき、反射表示部9の反射率は55%であり、透過表示部10の透過率は52%であり、また、印加電圧が5Vのとき、反射表示部9の反射率は11%、透過表示部10の透過率は10%であった。
即ち、上記の液晶表示装置によれば、反射表示部9に対しても透過表示部10に対しても、共に、明表示の明度が50%を超える高い値を示すと共にコントラスト比が約5であり、視認性に優れた表示を実現することができた。
〔比較例1〕
ここで、上記の実施例1の比較例を示す。該比較例1では、実施例1に示すGH方式を用いた液晶表示装置において、反射表示部9における液晶層厚と透過表示部10における液晶層厚とが同じになるように設計した以外は、実施例1に示す液晶表示装置の製造方法に準じて比較用の液晶表示装置を作製した。
より具体的には、本比較例では、実施例1の基板5上に作製したような絶縁膜11を作製せず、反射表示部9における液晶層厚と透過表示部10における液晶層厚とが共に4.5μmの液晶表示装置を作製した。つまり、液晶層1を挟んで対向する上下の電極基板が、共に、反射表示部9と透過表示部10とで平滑な液晶注入用の液晶セルを作製し、この液晶注入用の液晶セルに実施例1と同様の二色性色素12とカイラル添加剤とを混入した液晶組成物を導入することにより、液晶表示装置を作製した。
得られた液晶表示装置における反射表示部9の反射率と透過表示部10の透過率とを実施例1と同様の方法により測定して得られた表示特性を図3に示す。
〔比較例2〕
該比較例2では、比較例1と同様の液晶セルに、比較例1よりも二色性色素12の濃度を高くした液晶組成物を導入し、透過表示部10の明度とコントラスト比とが最適となるように設定した液晶表示装置を作製した。
得られた液晶表示装置における反射表示部9の反射率と透過表示部10の透過率とを実施例1と同様の方法により測定して得られた表示特性を、比較例1の結果と併せて図3に示す。
図3において、横軸は印加電圧の実効値を示し、縦軸は明度(反射率または透過率)を示す。また、同図において、曲線121は、比較例1の反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線122は、比較例1の透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。また、曲線123は比較例2の反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線124は比較例2の透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
曲線121、曲線122に示すように、比較例1で得られた液晶表示装置では、反射表示部9および透過表示部10における明度(反射率または透過率)は、共に、電圧の印加に伴って低下しているが、印加電圧が1.8Vのときの反射表示部9の反射率が51%であったのに対し、透過表示部10の透過率は66%であり、また、印加電圧が5Vのときの反射表示部9の反射率は11%、透過表示部10の透過率は22%であった。
即ち、上記比較例1で得られた液晶表示装置によれば、反射表示部9では50%を超える高い明度と、5程度のコントラスト比とが得られたものの、透過表示部10では、該透過表示部10における液晶層厚が反射表示部9における液晶層厚と同じであることから、液晶層1の明度は高いものの、コントラスト比が3程度と低く、表示品位が低いものであった。
また、曲線123、曲線124に示すように、比較例2で得られた液晶表示装置では、反射表示部9および透過表示部10における明度(反射率または透過率)は、共に、電圧の低下に伴って低下しているが、印加電圧が1.8Vのときの反射表示部9の反射率が29%であったのに対し、透過表示部10の透過率は51%であり、また、印加電圧が5Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は10%であった。
即ち、上記比較例2で得られた液晶表示装置によれば、透過表示部10では50%を超える高い明度と、5程度のコントラスト比とが得られたものの、反射表示部9では、該反射表示部9における液晶層厚が透過表示部10における液晶層厚と同じであることから、コントラスト比は10程度と高いものの、明度が30%に満たず、暗い表示となった。
上記実施例1と比較例1・2との比較から明らかなように、GH方式の液晶表示装置において、透過表示部10のコントラスト比を、反射表示部9のコントラスト比と同等かまたはより高くするには、透過表示部10の液晶層1の層厚を反射表示部9の液晶層1の層厚よりも大きく設定することが有効であることが判った。
〔実施の形態2〕
前記実施の形態1では、GH方式を用いた液晶表示装置について説明したが、本発明に係る液晶表示方式としては、上記GH方式以外にも、図4に示すように、基板4・5を偏光板14・15で挟持し、液晶層1のリタデーションや旋光(以下、まとめて偏光変換作用と略記する)を表示に利用する方式を採用してもよい。
そこで、本実施の形態では、上記偏光変換作用を表示に利用した液晶表示装置について、主に図4を参照して以下に説明する。尚、説明の便宜上、前記実施の形態1と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
図4は、本実施の形態に係る液晶表示装置の要部断面図である。図4に示す液晶表示装置は、液晶セル200(液晶表示素子)を備えると共に、必要に応じて、前記バックライト13(照明装置)を備えている。これら液晶セル200、バックライト13は、観察者(使用者)側から、液晶セル200、バックライト13の順で配置されている。
液晶セル200は、図4に示すように、液晶層1が、該液晶層1と接する側(液晶層1に接する第1の基板上の界面)に配向膜2を備えた電極基板201(第1の基板)と、液晶層1と接する側(液晶層1に接する第2の基板上の界面)に配向膜3を備えた電極基板202(第2の基板)とによって挟持され、さらに、電極基板201の外側(即ち、電極基板202との対向面とは反対側)に、位相差補償板16と偏光板14とを備えると共に、電極基板202の外側(即ち、電極基板201との対向面とは反対側)に、位相差補償板17と偏光板15とを備えた構成を有している。尚、上記位相差補償板16・17は、必要に応じて設けられ、使用される。
本発明において必要に応じて使用される上記の位相差補償板16・17には、延伸高分子フィルム、液晶配向固定高分子フィルム、液晶性高分子フィルム等の各種位相差補償板を利用することができる。その光学的作用は、位相差補償板16・17を用いられないときにしばしば見られる着色の防止、電極6・7の電位差に対する明度の依存性の変更、さらに、表示視野角の変更等のために使用される。
また、上記電極基板201には、透光性を有するガラス基板等からなる基板4上に、液晶層1に電圧を印加するための電極6が設けられ、該電極6を覆うように、ラビング処理が施された配向膜2が形成されている。
一方、液晶層1を挟んで上記電極基板201に対向して設けられた上記電極基板202には、液晶層1に電圧を印加すべく、透光性を有する基板5上に、絶縁膜11を介して、電極6に対向する対向電極としての電極7が形成されている。但し、図4に示す液晶表示装置では、反射表示部9における電極7と透過表示部10における電極7とは電気的に絶縁されていて液晶セル外部から別々に電圧が印加されるような構成を有している。そして、上記電極基板202における反射表示部9に対応する領域には、反射膜8が形成され、さらに、ラビング処理が施された配向膜3が、これら電極7並びに反射膜8を覆うように形成されている。また、上記絶縁膜11は、該絶縁膜11における、透過表示部10に対応する領域の膜厚が、反射表示部9に対応する領域の膜厚よりも薄くなるように形成されている。
上記電極基板201・202は、図4に示すように、配向膜2と配向膜3とが対向するように対向配置され、封入シール剤等を用いて貼り合わされ、その空隙に液晶組成物を導入することにより、液晶層1が形成されている。
上記液晶表示装置では、明表示において、上述した液晶組成物からなる液晶層1が、反射表示部9と透過表示部10との間で連通した構造を有している。この液晶層1の液晶は、図4において、反射表示部9bおよび透過表示部10bに示すように平行配向しているときには、液晶層1を通過する光に対して偏光変換作用が生じ、暗表示となる。一方、反射表示部9aおよび透過表示部10aに示すように、液晶層1の液晶が垂直配向しているときには、偏光変換作用は弱く、明表示となる。
従って、反射表示部9a・9b、透過表示部10a・10bにおける配向変化を、液晶層1を挟持して配置されている表示面側の偏光板14とバックライト13側の偏光板15とによる直線偏光選択透過作用で、表示光の強度変化として表示に利用することで、明表示と暗表示とが可能になる。尚、前述のように、この場合、液晶層1の屈折率差の波長依存性を補償するため、あるいは、必要に応じて液晶層1で変調される明度の電圧依存性を変更するため、あるいは、表示の視野角を変更するため、図4に示すような、位相差補償板16・17が用いられていてもよい。
このように光学異方性を表示に利用する場合にも、液晶の初期配向状態は、特に限定されるものではなく、例えば、電圧無印加状態での液晶層1が、表示面に対して平行に配向した状態であってもよく、垂直に配向した状態であってもよい。前者の場合(即ち、電圧無印加状態での液晶配向が平行配向である場合)、液晶には、誘電率異方性が正の液晶を使用することができる。一方、後者の場合(即ち、電圧無印加状態での液晶配向が垂直配向である場合)、液晶としては、誘電率異方性が負の液晶を使用することができる。
このように、光学異方性を表示に利用する場合にも、液晶の初期配向状態は、特に限定されるものではないが、使用する液晶配向の形態に適した液晶層厚が得られるように、絶縁膜11の膜厚を調整することが有効である。
上記反射表示部9で暗表示を実現するためには、まず、偏光板14で直線偏光にした光を準備する。そして、必要に応じて位相差補償板16によって偏光状態を変化させ、透過表示部10よりも層厚が薄く設定された、反射表示部9の液晶層1で、さらに偏光状態を変化させる。この時、理想的な暗表示に必要な条件は、結果として反射膜8上での偏光状態を、左右どちら廻りでもよい円偏光とすることである。また、同じ反射表示部9で理想的な明表示を実現するために必要な条件は、反射膜8上での偏光状態を直線偏光とすることである。そして、この暗表示と明表示との間で電気的に液晶配向を制御できれば、表示の切り替えが可能になる。
つまり、暗表示を実現する場合に液晶層1に入射した光が反射膜8に到達するまでに液晶層1が光に対して与える位相差(反射膜8上での表示光の位相差)と、明表示を実現する場合に液晶層1に入射した光が反射膜8に到達するまでに液晶層1が光に対して与える位相差(反射膜8上での表示光の位相差)との間に、実質的に1/4波長(概ね90度)の差異があり、それを実現する液晶配向が、例えば電気的に制御可能、即ち、暗表示における円偏光と明表示における直線偏光との間で制御可能であればよい。この時、明表示を実現する反射膜8上での直線偏光の偏光方位は任意の方位でよい。
また、透過表示部10では、偏光板15で直線偏光にした光を、その偏光状態を必要に応じて位相差補償板17で変化させ、次いで、反射表示部9よりも層厚が厚く設定された液晶層1で変化させ、さらに、必要に応じて位相差補償板16によって変化させて偏光板14から出射することで表示が行われる。
この場合、表示に利用するのは、偏光板14に入射する直前での偏光状態の変化である。従って、明表示を行う場合には、偏光板14に入射する直前での偏光状態を、偏光板14の透過軸方位の振動方向を有する直線偏光となるように調整すればよく、暗表示を行う場合には、偏光板14に入射する直前での偏光状態を、偏光板14の吸収軸方位の振動面を有する直線偏光となるように調整すればよい。
つまり、明表示を行う場合に透過表示部10の液晶層1を通過する光に与える位相差(液晶層1を出射する表示光の位相差)と、暗表示を行う場合に透過表示部10の液晶層1を通過する光に与える位相差(液晶層1を出射する表示光の位相差)との差が、実質的に1/2波長(概ね180度)となるように液晶層1の配向の変化を電圧の印加により電気的に制御すれば、表示の切り替えを行うことが可能である。
ここで、1/2波長の位相制御とは、液晶層1側より偏光板14に入射する直線偏光の偏光方位を制御することに相当し、屈折率主軸が一様に平行に配向したリタデーションによる位相差の制御だけでなく、液晶層1の屈折率主軸が液晶配向の捩じれに伴って捩じれ、その配向の捩じれの電圧による変化に伴って直線偏光の偏光方位が変化する旋光現象等も含む偏光変換作用である。これを実現する液晶層1の偏光変換作用は、位相差補償板16や位相差補償板17の適用も考慮した場合には、一般の直交した偏光状態間での偏光変換作用である。
以上のような偏光状態の制御(光の位相制御)を実現する偏光変換作用を可能とする液晶配向は、基板4・5に平行(表示面に対して平行)かつ一様な平行配向(ホモジニアス配向)であってもよく、基板4・5に平行(表示面に対して平行)かつ基板4・5間(液晶層1を挟んで対向した上下基板間)で捩じれた配向(ツイスト配向)であってもよく、また、基板4・5に垂直(表示面に対して垂直)な垂直配向(ホメオトロピック配向)であってもよい。さらに、液晶層1の一方の界面が平行配向で、他方が垂直配向であるハイブリッド配向等も利用可能である。
この場合、上記ツイスト配向としては、具体的には、上記基板4・5間で60度以上、100度以下に設定されているか、あるいは、0度以上、40度以下に設定されていることが望ましい。
この理由は、透過表示部10と反射表示部9とでラビング方位を変更しなくても、反射表示部9に適した条件と透過表示部10とに適した条件とを両立させることが可能となるためである。
液晶表示装置を量産する場合、最も好ましい液晶層1の光学設計としては、液晶層1に印加する駆動電圧の範囲の上限と下限との間で、表示明度(反射率または透過率)が単調増加または単調減少するように変化する設計である。
以上の駆動の条件を考慮する場合、最も単純な液晶層1の光学設計は、表示面に実質的に垂直に配向した液晶と、表示面に実質的に平行に配向した液晶との間で、表示明度が単調増加または単調減少するように表示が制御される電気光学特性が達成されるような設計である。
この場合、特に、平行配向膜を使用して、電圧無印加での液晶配向として表示面に平行な液晶配向を実現した場合には、反射表示に適した条件と透過表示に適した条件とが明確に存在する。そこで、この条件を、いわゆる、Jones マトリクス法による計算によって求め、ツイスト角の適切な範囲を求めた。
この結果、反射表示で良好な表示を得るためには、ツイスト角が0度以上、100度以下に設定されている必要があることが明らかになった。
つまり、まず、本願発明者等は、反射表示において良好な表示を実現する液晶層1では、偏光変換作用を有する液晶配向(平行配向膜を使用した場合には実質的に電圧無印加の場合の液晶配向に等しい)において、円偏光を直線偏光に効率よく変換する作用が必要であることを見い出し、これを評価するために、液晶層1に円偏光を入射した場合の反射率を上記計算法によって求めた。尚、計算は、光が、偏光板14、90度の位相差を与える位相差補償板16、液晶層1、反射膜8の順に液晶セル200に入射し、これを逆に反射膜8から偏光板14までを伝播して出射した光の反射率を求めた。
その結果、液晶層1のツイスト角毎に液晶層1の液晶の屈折率差(Δn)と液晶層厚(d)との積(Δn・d)を調整することにより、ツイスト角が0度以上、70度以下の範囲内では、円偏光を完全な直線偏光に変換することが可能であることが明らかとなった。また、70度を越えて100度までの範囲内では、円偏光を完全な直線偏光にすることはできないが、良好な表示は可能であることを見い出した。そして、ツイスト角が70度までの反射率の、可視波長における最大値を100%とした場合には、ツイスト角毎に液晶層1のΔn・dを調整することにより、特定の波長における、ツイスト角が80度での反射率は97%、ツイスト角が90度での反射率は83%、ツイスト角が100度での反射率は72%となり、良好な反射率を得ることができる。しかしながら、ツイスト角が100度を越えると、例えばツイスト角が110度での反射率は54%、ツイスト角が120度での反射率は37%となり、円偏光を直線偏光に効率良く偏光することは不可能となる。つまり、反射表示部9における液晶層1では、ツイスト角を、0度以上、100度以下の範囲内に設定することが必要である。
尚、上記の説明では、反射表示部9における液晶層1の偏光変換作用を評価するために円偏光を計算に用いたが、実際の表示においては、反射表示部9の液晶層1に必ずしも円偏光を入射させる必要はなく、液晶層1を上述したように設計し、該液晶層1に直線偏光を入射させても、反射表示部9で良好な表示を得ることができる。
一方、透過表示部10で良好な表示を得るためには、液晶配向が、ツイスト角が小さい(0度以上、40度以下)配向であるか、あるいは、ツイスト角が大きい(60度以上、110度以下)配向である必要がある。
透過表示部10で良好な表示を得るために必要な偏光変換作用は、基本的な光学作用(第1の条件)と、この基本的な光学作用(第1の条件)と反射表示部9との関連によって決まる現実的な光学作用(第2の条件)とを満たす必要がある。
その理由は、例えば、上記第1の条件の場合、偏光変換作用を有する液晶配向(平行配向膜を使用した場合には、実質的に電圧無印加の場合の配向に等しい)において、透過表示部10における液晶層1では、ある偏光(直線偏光、円偏光、あるいは楕円偏光であって、偏光状態が指定された偏光)を、効率良く、それに直交する偏光(直線偏光の場合は光の振動電界が含まれる面が直交する直線偏光、円偏光の場合は回転方向の反転した円偏光、楕円偏光の場合は楕円主軸方位が直交した同じ楕円率の楕円偏光で、回転方向が反転した楕円偏光)に変換する作用を必要とするためである。
そこで、本願発明者等は、透過表示部10に必要な性質として上記の作用を評価するために、偏光変換作用を上記計算法(Jones マトリクス法)によって求めたが、このために必要なツイスト角の範囲に反しては、特に制限はないことが明らかとなった。
また、上記第2の条件は、本発明においては、反射表示部9と透過表示部10とで共通の表示面側の光学フィルム(偏光板14および位相差補償板16)を使用するために生じる制約である。反射表示部9および透過表示部10における光学フィルムは、反射表示を良好に行うように設定されている。そして、液晶表示装置の表示面と逆の面には、異なる光学フィルムの設定が可能であるが、この光学フィルムは、透過表示部10の表示を、表示面側の光学フィルムである上記偏光板14および位相差補償板16と、透過表示部10側の液晶層1と協動して良好にするような配置に設定することが好ましい。このような設定を行うためには、透過表示部10における液晶層1の偏光変換作用は、単に、上記第1の条件を満たすだけではなく、円偏光を逆廻りの円偏光に良好に変換できること、あるいは、直線偏光を直交する直線偏光に良好に変換できることが重要である。
そこで、透過表示部10における液晶層1に対する、上記第2の条件を満たす具体的な条件を評価するために、液晶層1に円偏光を入射したときに、逆廻りの円偏光になる光の強度を上記の計算法によって求めた。尚、計算は、光が、第1の偏光板としての偏光板15、90度の位相差を与える第1の位相差補償板としての位相差補償板17、液晶層1、90度の位相差を与える第1の位相差補償板と直交した遅相軸を有する第2の位相差補償板としての位相差補償板16、上記第1の偏光板と直交する第2の偏光板としての偏光板14の順に伝播した場合の透過率を求めた。
この結果、本願発明者等は、ツイスト角毎に液晶層1のΔn・dを調整すると、ツイスト角が0度以上、40度以下の範囲内にあるときには、円偏光が逆廻りの円偏光に良好に変換されることを見い出した。具体的には、ツイスト角0度のときの可視波長における光の透過率を100%とした場合、ツイスト角が30度のときの光の透過率は88.6%、ツイスト角が40度のときの光の透過率は80.8%、ツイスト角が50度のときの光の透過率は72.0%、ツイスト角が60度のときの光の透過率は62.4%となり、円偏光を逆廻りの円偏光に変換する偏光変換作用を透過率で評価した場合、透過率はツイスト角の増大とともに低下する。このため、ツイスト角の上限は、上記の結果から、40度程度に定めることが適当であるとの結論を得た。
一方、直線偏光を直交する直線偏光に効率良く変換する透過表示部10のツイスト角の設定は、光の波長を一つの波長に限定した場合には、ツイスト角が0度以上の任意のツイスト角で、充分に効率の良い透過率が実現できる。しかし、可視波長の広い領域で高い透過率を得るには、ツイスト角に最適値が存在する。具体的には、ツイスト角を変更して、可視波長範囲の中心波長である550nmが最大透過率となるように液晶層1のΔn・dを調整し、550nmの透過率を100%としたときに、90%以上の透過率が得られる波長の上限と下限とを除いた波長幅を求めた。尚、透過率の計算は、光が、上記第1の偏光板としての偏光板15、液晶層1、第1の偏光板と直交する第2の偏光板としての偏光板14を通過するとき、液晶層1の層厚方向の中央にある液晶配向が、偏光板14・15の透過軸とは45度の角をなすように配置し、そのときの透過率を求めている。
この結果、ツイスト角が0度のときの波長幅(波長範囲)は230nm、ツイスト角が10度のときの波長幅は235nm、ツイスト角が20度のときの波長幅は240nm、ツイスト角が30度のときの波長幅は245nm、ツイスト角が40度のときの波長幅は250nm、ツイスト角が50度のときの波長幅は255nm、ツイスト角が60度のときの波長幅は265nm、ツイスト角が70度のときの波長幅は280nm、ツイスト角が80度のときの波長幅は310nm、ツイスト角が90度のときの波長幅は330nm、ツイスト角が100度のときの波長幅は305nm、ツイスト角が110度のときの波長幅は255nm、ツイスト角が120度のときの波長幅は210nmとなった。
以上のような検討から、ツイスト角が60度以上、110度以下の範囲内で高い透過率が広い波長幅(波長範囲)で実現し、良好な偏光変換作用が実現され、良好な表示が可能となることが判った。従って、以上の円偏光に対する偏光変換作用および直線偏光に対する偏光変換作用から、上記第2の条件を満たす透過表示部10の液晶のツイスト角は、0度以上、40度以下の範囲内、または、60度以上、110度以下の範囲内に限定される。
以上のようにして、反射表示部9には0度以上、100度以下の範囲内、透過表示部10には0度以上、40度以下の範囲内、または、60度以上、110度以下の範囲内のツイスト角が良好な表示を与えることが明らかとなった。つまり、本発明の実施の形態の一例として、反射表示部9と透過表示部10とで共に良好な表示を得るためのツイスト角としては、0度以上、40度以下の範囲内、あるいは、60度以上、100度以下の範囲内が適当である。
尚、以下に示す実施例において、反射表示部9と透過表示部10とにおける液晶層1のツイスト角が等しい例(実施例2〜実施例9、および実施例11)においては、ツイスト角が0度で円偏光を使用する典型的な例は、実施例11であり(液晶配向は垂直配向)、ツイスト角が0度で直線偏光を使用する典型的な例は実施例3(位相差補償板により良好な明表示となるように調整している)である。また、ツイスト角が70度付近で直線偏光を使用する典型的な例は、実施例5(位相差補償板により良好な明表示となるように調整している)である。
上述した検討によれば、反射表示部9と透過表示部10とで、ともに良好な表示を得るための液晶層1のツイスト角は、0度以上、40度以下の範囲内、または、60度以上、100度以下の範囲内となる。
以上の説明においては、ツイスト角の大きさを正の符号に関してのみ説明したが、絶対値が同じで負の符号(ツイスト方向が逆に捩じれているもの)に関しても、同様の議論が有効であることは言うまでもない。
ツイスト角を小さく設定する場合、何れの場合にも、偏光状態の変化が屈折率差(Δn)と液晶層厚(d)との積(Δn・d)の関数になり、しかも、反射表示部9では入射光が液晶層1を往復し、透過表示部10では入射光が液晶層1を一度だけ通過することから、透過表示部10における液晶層厚は反射表示部9における液晶層厚に比して厚く設定されることが望ましい。
尚、通常の旋光を利用するTN液晶表示装置においても、液晶層厚が薄い場合には、旋光とリタデーションによる偏光状態の変化とが区別できない状態になり、一般的には楕円偏光を表示に利用するため、上記TN液晶表示装置において用いられる旋光を、上述した偏光変換作用を用いた明表示および暗表示に用いることができることは言うまでもない。本発明における偏光変換作用には、これら旋光による透過光強度の変調も含まれる。
さらに、上記偏光変換作用において、偏光状態を変化させ得る液晶配向の変化には、上述したように、液晶の配向状態が基板4・5に平行であるか垂直であるかを制御するもののみならず、表面安定化強誘電性液晶や反強誘電性液晶のように、液晶が、基板4・5にほぼ平行な配向方位を保ったまま配向方向のみが変化するものや、ネマティック液晶を利用し、電極構造を変更して液晶の配向方向を表示面に平行な面内に保ったまま配向方位を変化させるものも含まれる。
また、上記の液晶表示装置において、偏光板14・15の設置方位(貼付方位)は、適宜設定することができる。例えば、反射表示部9に合わせて偏光板14の設置方位を設定すれば、必然的に、透過表示部10を透過する表示光に対しても同じ偏光板14が作用するため、該偏光板14の設置方位に合わせて偏光板15の設置方位を定めればよい。
以上のように、捩じれを持たない液晶配向を表示に用いる場合、反射表示部9が、例えば暗表示を示すときに、透過表示部10も、同様に、例えば暗表示を示した。しかしながら、例えば、偏光板14の設置方位はそのままで偏光板15の設置方位を90度変更すると、反射表示部9と透過表示部10とで表示の反転が起こる。つまり、そのままでは、良好な表示が得られない。そこで、このような表示の反転を防止するためには、偏光板15の設置方位を元に戻すか、あるいは、反射表示部9と透過表示部10とに各々独立した電極を与えて、電気的駆動そのものを反射表示部9または透過表示部10の一方のみで反転させて表示の明暗を一致させてもよい。
次に、図4に示す液晶表示装置における反射表示部9および透過表示部10での表示原理についてさらに詳細に説明する。
まず、反射表示部9での表示原理について以下に説明する。尚、説明を簡略化するため、以下の説明では位相差補償板16・17を用いることなく、また、液晶層1の液晶配向は、反射表示部9bおよび透過表示部10bで捩じれを有していないものとする。さらに、波長550nmの光が液晶層1を1度だけ透過する場合に、反射表示部9b、透過表示部10bが、各々、1/4波長、1/2波長の位相差を有するように、反射表示部9および透過表示部10の層厚が調整されているものとし、液晶組成物は正の誘電率異方性を有し、電圧無印加の場合の液晶配向は基板4・5に対し概ね平行であり、その配向方位は偏光板14の吸収軸方位に対し、45度の角度をなしているものとする。
この場合、電圧無印加状態における反射表示部9および透過表示部10での液晶配向は、反射表示部9bおよび透過表示部10bに示す液晶配向となり、電圧の印加によって変化した、反射表示部9および透過表示部10での液晶配向は、反射表示部9aおよび透過表示部10aに示す液晶配向となる。
上記反射表示部9bでは、液晶組成物の屈折率差(Δn)と液晶層厚(d)との積(Δn・d)は、1/4波長条件が成立している。このため、周囲光は入射の際、偏光板14で直線偏光となり、さらに液晶層1のリタデーションによって、反射膜8に到達するときは円偏光となる。このとき、入射光は、反射膜8で進行方向が反転し、円偏光は振動電界の回転方向を保存して進行方向のみが反転するために、入射時の偏光に対して直交した円偏光、つまり、左右が反転した円偏光になる。この円偏光は、再び反射表示部9bの液晶層1を通過して偏光板14の吸収軸方位と平行な直線偏光になり、偏光板14によって吸収され、暗表示となる。
また、このとき、透過表示部10bでは、液晶組成物の屈折率差(Δn)と液晶層厚(d)との積(Δn・d)は1/2波長条件が成立している。このため、液晶層1は、入射した直線偏光の振動面の方位を液晶配向方向に対して線対称に変換する作用を有している。従って、透過表示部10bへの光の入射側の偏光板15の吸収軸方位は、液晶層1の上述した作用を受けて、偏光板14を通過する光が偏光板14によって吸収されて暗表示となるように、偏光板14および偏光板15の透過軸方位と平行になるように決定される。
このように、偏光板14および偏光板15が、それらの透過軸方位が平行、かつ、該透過軸方位から液晶配向が45度の角度をなすように配置されると、反射表示部9b、透過表示部10bが共に暗表示になることが判った。
次に、上記反射表示部9bおよび透過表示部10bに示す電圧無印加状態(液晶の初期配向状態)から、電極6および電極7に電位差を与えることにより、液晶の配向状態を、反射表示部9aおよび透過表示部10aに示すように、表示面に対してほぼ垂直に変化させた場合の作用について以下に説明する。
この場合、反射表示部9aでは、周囲光が偏光板14によって直線偏光になり、液晶層1はその直線偏光に対してリタデーションを持たないため、入射光は、偏光状態が変化することなく反射膜8に到達し、さらに進行方向が反転した後、液晶層1を再び通過し、偏光板14の吸収軸方位に直交した直線偏光の方位を保ったまま偏光板14から出射する。
また、透過表示部10aにおいても、反射表示部9aと同様に、入射光が偏光板15によって直線偏光になり、その直線偏光の方位を概ね維持したまま偏光板14を通り抜ける。
以上のような光学異方性による偏光変換作用を表示に利用する場合、この偏光変換作用の量は、例えば、液晶が平行配向していて液晶層1に電圧が印加されていない場合には、液晶層1の配向のツイスト角と、液晶層厚(d)と液晶組成物の屈折率差(Δn)との積(Δn・d)とで決定される。このため、本発明のように透過表示部10が反射表示部9よりも厚い液晶層厚を有することは、透過光および反射光を表示に利用する液晶表示装置において、表示の明度およびコントラスト比を、反射表示部9および透過表示部10で共に両立させるために有効である。尚、ツイスト角は、反射表示部9と透過表示部10とで各々異なっていても構わない。
また、上記液晶表示装置が、位相差補償板16・17を備えている場合、可視光域の複数の波長の光に対して、十分な明度とコントラスト比とを確保することができ、この結果、さらに良好な表示が実現可能である。
また、液晶層1の液晶組成物や配向が上記の説明と同様であっても、位相差補償板16・17の作用によって、上記の表示の変化を反転させることが可能である。つまり、例えば位相差補償板16・17として1/4波長板を用いれば、反射表示部9bでは、周囲光は、位相差補償板16によって、液晶層1に入射の際に円偏光になり、さらに、液晶層1の光学異方性による偏光変換作用によって、反射膜8に到達するときは直線偏光になり、反射膜8で進行方向が反転した後、偏光板14の透過成分に再び変換されて偏光板14から出射されることから、明表示になり、液晶配向が、反射表示部9aに示すように変化した場合には、周囲光は、円偏光のまま反射膜8に到達するため暗表示になる。
また、上記の説明では、電極6と電極7との電位差の増加に伴って、暗表示から明表示へと表示が変化する場合について説明したが、該表示の変化は、これに限定されるものではなく、例えば、前述したように、液晶層1に用いる液晶組成物の誘電率異方性を負にし、液晶の初期配向状態を垂直配向とすることで、反転することができる。
ここで、液晶の初期配向状態を垂直配向に設定する場合には、初期配向の偏光変換作用が液晶層厚の作製精度に大きく影響されることがないという技術的特徴を備えている。従って、この特徴を生かすために、表示品位を大きく左右する黒表示が安定するように、初期配向状態を黒表示に割り当てることは、量産性の高い手段となり得る。特にこれを実現するには、垂直に配向した液晶層1の偏光変換作用がほぼ消失した状態で表示を黒にする必要があり、位相差補償板16には、良好な円偏光化作用が必要である。つまり、位相差補償板16としては、可能な限り広い波長で円偏光となるような構成を有していることが重要である。
また、透過表示部10は、例えば、位相差補償板17と位相差補償板16とが直交する遅相軸方位を有するように配置され、かつ、偏光板14と偏光板15とが、互いに直交する吸収軸方位を有するように配置されている場合に、透過表示部10bに示す液晶配向で明表示、透過表示部10aに示す液晶配向で暗表示となる。
液晶層1の配向が、平行配向、垂直配向の何れの場合であっても、本発明にかかる液晶表示装置において、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚を変化させた場合、反射表示部9と透過表示部10とで、明度とコントラスト比とを両立させるためには、上述したように、反射表示部9では、表示面側から液晶層1を通って入射した光が再び液晶層1を通って表示面側に出射することにより表示を行い、透過表示部10では、背面側(バックライト13側)から入射した光が液晶層1を一度だけ通過して表示面側に出射することにより表示を行うときに、透過表示部10における液晶層厚が、反射表示部9における液晶層厚よりも厚く設定され、その結果として、前述の条件を満足することが有効である。
以下、本実施の形態に係る液晶表示装置のうち、偏光板14・15を使用して液晶層1の偏光変換作用による偏光状態の変化を表示に利用する液晶表示装置について、図4〜図8を参照して、具体的な実施例および比較例を挙げて説明するが、本実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例2〜実施例4〕
実施例2〜実施例4では、実施例1の液晶注入用の液晶セルの作製方法と同様の方法により、透過表示部10が7.5μm、反射表示部9が4.5μmの液晶層厚(d)を有している液晶注入用の液晶セルを作製した。つまり、実施例2〜実施例4においても、透過表示部10には感光樹脂が残存せず、反射表示部9では、該感光樹脂が3μmの層厚に形成されるように絶縁膜11をパターン形成することにより、反射表示部9よりも透過表示部10の方が液晶層厚が厚くなるように設定した。但し、実施例2〜実施例4では、図4に示すように、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とが電気的に絶縁されていて、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とに、外部から別々に電圧が印加されるように電極パターンを作製した。
さらに、実施例2〜実施例4では、上記液晶注入用の液晶セルに、カイラル剤を含まない液晶組成物の屈折率差(Δn)が0.065であり、正の誘電率異方性を有する液晶組成物を、真空注入法によって導入することにより、液晶層1を形成した。
そして、このようにして得られた液晶セルにおける各電極基板の外側に、位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付して液晶表示装置を作製した。このとき、実施例2〜4では、位相差補償板17を2枚の位相差補償板で構成し、位相差補償板16を、実施例3では1枚の位相差補償板で構成し、実施例2・4では2枚の位相差補償板で構成した。これら位相差補償板16・17および偏光板14・15の貼付方位は、液晶の配向方向(配向方位)に対応して決定した。
また、実施例2では、液晶配向はホモジニアス配向とし、表示には、NB(ノーマリーブラック)モードを用いた。実施例3では、液晶配向はホモジニアス配向とし、表示には、NW(ノーマリーホワイト)モードを用いた。そして、実施例4では、これらを混合(反射表示にNBモードを使用し、透過表示にNWモードを使用)したものを用いた。
但し、電圧を印加しないときに液晶が表示面に平行に配向するように、上記実施例2〜実施例4では、配向膜2・3に、平行配向性の配向膜を用いると共に、配向膜2・3のラビング交差角を180度に設定して配向処理を行った。
ここで、ラビング交差角とは、図5に示すように、液晶注入用の液晶セルにおいて、液晶層1を挟持する一対の電極基板のうち、観察者側基板である電極基板における配向膜2(即ち、基板4側の配向膜2)の配向処理方位であるラビング方位Xを基準にして、他方の電極基板における配向膜3(即ち、基板5側の配向膜3)の配向処理方位であるラビング方位Yを反時計周りに測定した角度と定義する。
配向処理された配向膜2・3によって挟持されている液晶層1における液晶分子の配向状態は、電界、磁界等が存在しない場合、配向膜2・3の配向性と、液晶に固有のツイストを与えるカイラル添加剤の添加量と、ラビング交差角とによって決定される。
ラビング交差角が例えば180度のとき、カイラル添加剤が混入されていない液晶組成物は、ツイストすることなく配向する。また、カイラル添加剤が例えば液晶に左捩じれのツイストを誘起する場合には、カイラル添加剤の添加量が、ある一定量に達するまでは液晶層1はツイストせずに配向し、ある一定量を越えると180度左巻きにツイスト配向(180度左ツイスト配向)する。そして、上記カイラル添加剤の添加量をさらに増加すると、カイラル添加剤の増加にしたがって、180度の整数倍だけのツイストが実現する。
従って、本実施の形態において、上述したラビング交差角(180度)によって実現する配向膜3上の液晶の配向方位は、液晶層1の上側の電極基板に配された配向膜2のラビング方位Xをx度とする場合には、カイラル添加剤を添加しない場合にはx度、カイラル添加剤を増量して上下の電極基板間で180度左にツイストしている場合には、(180+x)度と表現することとする。
尚、このような配向処理において、配向膜2・3が、液晶を配向膜面に対して平行に配向させるいわゆる平行配向膜であり、カイラル添加剤が混入されていない、誘電率異方性が正のネマティック液晶を用いる場合には、液晶分子は、電圧を印加しない場合には、液晶層1を挟む上下の電極基板にほぼ平行で捩じれのない配向(即ち、ホモジニアス配向)状態をとり、電圧の印加に伴って、液晶層1の層厚方向中央部の液晶から電圧に応じて配向変化が生じる。
表1に、実施例2〜実施例4で得られた各液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を各々の例において共通の方位の基準を用いて示す。
尚、表1に示す光学配置は、観察者が表示面を観察するときの、表示面での各々の光学要素配置であり、位相差補償板16あるいは位相差補償板17が複数の位相差補償板によって構成されている場合には、上記位相差補償板16・17を構成する各位相差補償板は、観察者側からの実際の配置の順に記載している。
また、液晶層1はツイストしない配向をとっているため、電圧無印加時の液晶層1全体の配向方位(液晶分子長軸の配向方位)を記載しているが、この配向方位は、基板4側の配向膜2に施された配向処理の方位である。
尚、各々の方位は、表示面上に任意にとった基準方位からの方位を度の単位で表し、各位相差補償板のリタデーション(即ち、位相差補償板の面内の屈折率差と厚みとの積)は波長550nmの単色光に対する値をnm単位で示す。
また、上記実施例2、実施例3、実施例4で得られた各液晶表示装置の表示特性を、各々、図6、図7、図8に示す。尚、これらの表示特性は、何れも、実施例1と同様の方法により測定したものであり、上記各図において、横軸は印加電圧の実効値を示し、縦軸は明度(反射率または透過率)を示す。また、偏光板14・15が共に貼付されていない透過表示部10の透過率を透過率100%とし、偏光板14を貼付する前の反射表示部9の反射率を反射率100%とする。
図6において、曲線211は、実施例2で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線212は、実施例2で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図6に示すように、実施例2では、印加電圧が1V〜2Vの区間では、印加電圧の上昇に伴って反射率、透過率が共に上昇している。また、印加電圧が1Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は2%であり、印加電圧が2Vのときの反射表示部9の反射率および透過表示部10の透過率は共に40%であった。
また、図7において、曲線221は、実施例3で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線222は、実施例3で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図7に示すように、実施例3では、印加電圧が1V〜2Vの区間では、印加電圧の上昇に伴って反射率、透過率が共に減少している。また、印加電圧が1Vのときの反射表示部9の反射率および透過表示部10の透過率は共に40%であり、印加電圧が2Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は2%であった。
また、図8において、曲線231は、実施例4で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線232は、実施例4で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図8に示すように、実施例4では、印加電圧が1V〜2Vの区間では、印加電圧の上昇に伴って反射率が上昇する一方、透過率は減少している。また、印加電圧が1Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は40%であり、印加電圧が2Vのときの反射表示部9の反射率は40%、透過表示部10の透過率は2%であった。
以上のように、上記実施例2〜実施例4で得られた液晶表示装置は、何れも、該液晶表示装置への印加電圧の変化に伴って、透過率並びに反射率が変化するものであり、反射表示と透過表示とが共に可能であった。
さらに、目視観察を実施したところ、実施例2および実施例3においては、反射表示部9における電極7と透過表示部10における電極7とに対して同一の電圧を印加することにより、電極6と電極7とによって液晶層1に加えられる電圧を反射表示部9と透過表示部10とで同様に保って表示を行っていることから、反射表示部9と透過表示部10とで明暗の変化が同様であり、表示の明暗の反転が生じないことを確認した。また、この表示の際に、周囲光の強度を観察途中で変化させても表示内容の変化は見られなかった。つまり、反射表示部9が暗表示のときに透過表示部10も暗表示となり、反射表示部9が明表示のときに透過表示部10も明表示となった。このため、前記図1に記載のように反射表示部9と透過表示部10とに同一の電極7を用いて駆動した場合においても表示の反転は生じなかった。
これに対し、実施例4においては、実施例2および実施例3と同様に電圧を印加した場合、つまり、1Vの電圧を印加した場合、透過表示部10は明表示となり、反射表示部9は暗表示となった。また、2Vの電圧を印加した場合、透過表示部10は暗表示となり、反射表示部9は明表示となった。このため、透過表示部10と反射表示部9とでは、表示の明暗が反転した。この反転のため、周囲光の弱い環境で表示を行い、主に透過表示部10を観察している場合に周囲光を強くして反射表示を行うと、表示の明暗が反転し、表示内容の確認に困難を生じた。このことから、実施例4に示すように、反射表示部9における電極7と透過表示部10における電極7とに対して同一の電圧を印加した場合、NBとNWとの混合モードとすると、反射表示部9と透過表示部10との表示の反転が大きく、視認性を悪化させることが確認された。
一方、実施例4において、反射表示部9が明表示のときに同時に透過表示部10も明表示となり、反射表示部9が暗表示のときに同時に透過表示部10も暗表示となるように、反射表示部9における電極7と透過表示部10における電極7とに対して異なる電圧を印加、つまり、電極6・7(配向機構)により反射表示部9に、該反射表示部9が暗表示を示す電圧(1V)を印加するときには、透過表示部10には、該透過表示部10が暗表示となる電圧(2V)を印加し、反射表示部9に、該反射表示部9が明表示となる電圧(2V)を印加するときには、透過表示部10には、該透過表示部10が明表示となる電圧(1V)を印加することで、表示の明暗の反転が解消し、実施例2および実施例3と同様の良好な表示状態が得られた。
以上のことから、上記実施例2〜実施例4の各液晶表示装置は、何れも、反射表示部9に対しても透過表示部10に対しても共に明表示の明度とコントラスト比とを両立することができると共に、反射表示部9と透過表示部10とで表示の明暗を一致させることができ、視認性に優れた表示を実現することができることが判る。また、上記実施例2〜実施例4の各液晶表示装置は、何れも、透過表示部10におけるコントラスト比が反射表示部9におけるコントラスト比を上回ることから、より一層表示品位を高め、良好な表示を行うことができることが判る。
次に、本実施の形態に係る液晶表示装置のうち、液晶層1のツイスト配向による液晶層1の偏光変換作用を表示に利用する液晶表示装置について、図9及び図10を参照して、具体的な実施例および比較例を挙げて説明するが、本実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例5〕
本実施例では、実施例1の液晶注入用の液晶セルの作製方法と同様の方法により、透過表示部10が7.5μm、反射表示部9が4.5μmの液晶層厚を有している液晶注入用の液晶セルを作製した。つまり、本実施例においても、透過表示部10には感光樹脂が残存せず、反射表示部9では、該感光樹脂が3μmの層厚に形成されるように絶縁膜11をパターン形成することにより、反射表示部9よりも透過表示部10の方が液晶層厚が厚くなるように設定した。
但し、本実施例では、実施例2〜4と同様、図4に示すように、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とが電気的に絶縁されていて、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とに、外部から別々に電圧が印加されるように電極パターンを作製した。
また、上記の液晶セルにおける各電極基板の外側には、位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付した。尚、本実施例では、位相差補償板17を1枚の位相差補償板で構成し、位相差補償板16を2枚の位相差補償板で構成した。これら位相差補償板16・17および偏光板14・15の貼付方位は、液晶の配向方向(配向方位)に対応して決定した。
本実施例では、液晶層1のツイスト配向(液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)が70度となるように、液晶表示装置を作製した。具体的には、配向膜2・3に、電圧を印加しないときの液晶配向が平行配向となるように、平行配向性の配向膜を用い、そのラビング交差角が250度となるようにラビング処理を施すことにより、配向処理を行った。尚、ラビング交差角は、前述の定義に従うものとする。そして、上記液晶注入用の液晶セルにおける電極基板間に、屈折率差(Δn)が0.065の正の誘電率異方性を有する液晶組成物を真空注入法によって導入することにより、液晶層1を形成した。このような配向処理と液晶組成物に添加したカイラル添加剤の作用により、上述したように、液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)を70度とすることができる。このように配向させられた液晶層1は、電圧の印加に伴って、液晶層1の層厚方向中央部の液晶から電圧に応じて配向変化が生じる。
表2に、本実施例で得られた液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
〔実施例6〕
本実施例でも、実施例5と同様、実施例1の液晶注入用の液晶セルの作製方法と同様の方法により、透過表示部10が7.5μm、反射表示部9が4.5μmの液晶層厚(d)を有している液晶注入用の液晶セルを作製した。また、図4に示すように、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とが電気的に絶縁されていて、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とに、外部から別々に電圧が印加されるように電極パターンを作製した。
上記の液晶セルにおける各電極基板の外側には、位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付した。尚、本実施例では、位相差補償板16および位相差補償板17に、各々、1枚の位相差補償板を用いた。これら位相差補償板16・17および偏光板14・15の貼付方位は、液晶の配向方向(配向方位)に対応して決定した。
本実施例では、液晶層1のツイスト配向(液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角))が90度となるように、液晶表示装置を作製した。具体的には、配向膜2・3に、電圧を印加しないときの液晶配向が平行配向となるように、平行配向性の配向膜を用い、そのラビング交差角が270度となるようにラビング処理を施すことにより、配向処理を行った。尚、ラビング交差角は、前述の定義に従うものとする。そして、上記液晶注入用の液晶セルにおける電極基板間に、屈折率差(Δn)が0.065の正の誘電率異方性を有する液晶組成物を真空注入法によって導入することにより、液晶層1を形成した。このような配向処理と液晶組成物に添加したカイラル添加剤の作用により、上述したように、液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)を90度とすることができる。このように配向させられた液晶層1は、電圧の印加に伴って、液晶層1の層厚方向中央部の液晶から電圧に応じて配向変化が生じる。
表2に、本実施例で得られた液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
尚、表2に示す光学配置は、観察者が表示面を観察するときの、表示面での各々の光学要素配置であり、位相差補償板16あるいは位相差補償板17が複数の位相差補償板によって構成されている場合には、上記位相差補償板16・17を構成する各位相差補償板は、観察者側からの実際の配置の順に記載している。
また、液晶層1の配向方位(液晶分子長軸の配向方位)は、基板4側では、基板4側の配向膜2に施されたラビング処理の方位に等しく、基板5側では、基板5側の配向膜3に施されたラビング処理の方位に等しい。但し、配向膜2に接する液晶の配向方位を配向膜3側まで追跡した場合には、左90度ツイスト配向をしている。このように液晶配向を追跡した場合には、配向膜2へのラビング処理方位を基板4側の配向方位(以下、基板4配向方位と略記する)と考えた場合には、配向膜3のラビング方位は、液晶の配向をツイストにしたがって追跡した方位とは180度反転した方位となる。以下、基板5側の配向方位(以下、基板5配向方位と略記する)を、基板4配向方位から液晶の配向をツイストにしたがって追跡した基板5上の液晶配向として定義する。
尚、表2における各々の方位は、表示面上に任意にとった基準方位からの方位を度の単位で表し、各位相差補償板のリタデーションは波長550nmの単色光に対する値をnm単位で示す。
また、上記実施例5、実施例6で得られた各液晶表示装置の表示特性を、各々、図9、図10に示す。尚、これらの表示特性は、何れも、実施例1と同様の方法により測定したものであり、上記各図において、横軸は印加電圧の実効値を示し、縦軸は明度(反射率または透過率)を示す。また、偏光板14・15が共に貼付されていない透過表示部10の透過率を透過率100%とし、偏光板14を貼付する前の反射表示部9の反射率を反射率100%とする。
図9において、曲線241は、実施例5で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線242は、実施例5で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図9に示すように、実施例5では、印加電圧が1.2V以上の区間では、印加電圧の上昇に伴って反射率、透過率が共に上昇している。また、印加電圧が1Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は2%であり、印加電圧が4Vのときの反射表示部9の反射率は41%、透過表示部10の透過率は40%であった。
また、図10において、曲線251は、実施例6で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線252は、実施例6で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図10に示すように、実施例6でも、実施例5同様、印加電圧が1.2V以上の区間では、印加電圧の上昇に伴って反射率、透過率が共に上昇している。また、実施例6では、印加電圧が1Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は2%であり、印加電圧が4Vのときの反射表示部9の反射率は35%、透過表示部10の透過率は37%であった。
以上のように、上記実施例5、実施例6で得られた液晶表示装置は、何れも、該液晶表示装置への印加電圧の変化に伴って、透過率並びに反射率が変化するものであり、反射表示と透過表示とが共に可能であった。
さらに、目視観察を実施したところ、実施例5および実施例6においては、反射表示部9における電極7と透過表示部10における電極7とに対して同一の電圧を印加することにより、電極6と電極7とによって液晶層1に加えられる電圧を反射表示部9と透過表示部10とで同様に保って表示を行っている場合においても、反射表示部9と透過表示部10とで明暗の変化が同様であり、表示の明暗の反転が生じないことを確認した。また、この表示の際に、周囲光の強度を観察途中で変化させても表示内容の変化は見られなかった。つまり、反射表示部9が暗表示のときには透過表示部10も暗表示となり、反射表示部9が明表示のときには透過表示部10も明表示となった。このため、上記実施例5、実施例6において、前記図1に記載のように反射表示部9と透過表示部10とに同一の電極7を用いて駆動した場合においても表示の反転は生じなかった。
従って、上記実施例5および実施例6の各液晶表示装置は、何れも、反射表示部9に対しても透過表示部10に対しても共に明表示の明度とコントラスト比とを両立することができると共に、反射表示部9と透過表示部10とで表示の明暗を一致させることができ、視認性に優れた表示を実現することができる。また、上記実施例5および実施例6の各液晶表示装置は、何れも、透過表示部10におけるコントラスト比が反射表示部9におけるコントラスト比を上回ることから、より一層表示品位を高め、良好な表示を実現することができる。
また、実施例6は、実施例5と比較して使用する位相差補償板の枚数が少なく、視認性に優れ、かつ、高解像度な色彩表示(カラー表示)が可能な、反射光と透過光とを共に表示に利用する液晶表示装置をより安価に提供することができる。
以上の実施の形態では、反射表示部と透過表示部とで液晶層厚を変更することにより、良好な反射表示並びに良好な透過表示を行う液晶表示装置について説明した。以下の説明では、反射表示部における液晶層厚と透過表示部における液晶層厚とが等しくなるように設定し、かつ、良好な反射表示並びに良好な透過表示を行う液晶表示装置について説明する。
〔実施の形態3〕
本実施の形態では、反射表示部における液晶層厚と透過表示部における液晶層厚とが等しい場合に、反射表示部と透過表示部とで印可する電圧を変更して液晶配向を反射表示部と透過表示部とで異ならせることにより、良好な反射表示並びに良好な透過表示を実現する液晶表示装置について説明する。
本実施の形態では、このような液晶表示装置について、前記実施の形態2に記載の、偏光板14・15を使用し、液晶層1のリタデーションを表示に利用する液晶表示装置において、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚が等しくなるように設定した場合を例に挙げて、図4および図11〜図16を参照して、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。しかしながら、本実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
尚、説明の便宜上、前記実施の形態1および実施の形態2と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。また、本実施の形態にかかる液晶表示装置の具体的な全体構成については、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚が等しくなるように設定されている以外は前記実施の形態2と同様であるので、ここではその説明は省略する。
本実施の形態に示すように反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚が等しくなるように設定するためには、例えば、前記基板5上に形成した絶縁膜11を形成することなく、基板5上に、電極7を直接形成すればよい。
〔実施例7〕
本実施例では、実施例1において、基板5上に、絶縁性を有する感光樹脂からなる絶縁膜11を形成せず、また、図4に示すように、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とが電気的に絶縁されていて、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とに、液晶セル外部から別々に電圧が印加されるように電極パターンを作製した以外は、実施例1の液晶注入用の液晶セルの作製方法と同様の方法により、反射表示部9および透過表示部10が、共に4.5μmの液晶層厚(d)を有している液晶注入用の液晶セルを作製した。
そして、上記液晶注入用の液晶セルに、カイラル剤を含まない液晶組成物の屈折率差(Δn)が0.065であり、正の誘電率異方性を有する液晶組成物を、真空注入法によって導入することにより、液晶層1を形成した。
上記の液晶セルにおける各電極基板の外側には、位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付した。尚、本実施例では、位相差補償板17を2枚の位相差補償板で構成すると共に、位相差補償板16を2枚の位相差補償板で構成した。これら位相差補償板16・17および偏光板14・15の貼付方位は、液晶の配向方向(配向方位)に対応して決定した。
本実施例では、液晶層1に、液晶が、基板4・5に対して平行(表示面に対して平行)に配向し、かつ、ツイスト配向していない液晶層を用いると共に、液晶表示方式として、液晶層1のリタデーションを表示に利用する複屈折モードを用いた。
また、本実施例では、反射表示に適したリタデーションを透過表示部10に用いた。ここで、反射表示部9は、前記実施の形態2における実施例2の反射表示部9と同様に設定されているが、透過表示部10は、その液晶層厚が反射表示部9と等しく設定されており、実施例2とは異なっている。このため、本実施例では、実施例2において、再度、光学設計を行って、偏光板14・15の光学配置並びに位相差補償板16・17の光学配置を決定している。本実施例では、これら偏光板14・15並びに位相差補償板16・17の光学配置を、透過表示部10の暗表示が良好となるように設定した。
また、本実施例では、前記実施例2と同様、電圧を印加しないときに液晶が表示面に平行に配向するように、配向膜2・3に、平行配向性の配向膜を用いると共に、配向膜2・3のラビング交差角を180度に設定して配向処理を行った。
このような配向処理では、液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)は0度であり、電圧の印加に伴って、液晶層1の層厚方向中央部の液晶から電圧に応じて配向変化が生じる。
表3に、本実施例で得られた液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
〔比較例3〕
ここで、上記の実施例7の比較例を示す。該比較例3では、実施例7に示す液晶表示装置において、位相差補償板16を2枚の位相差補償板で構成する一方、位相差補償板17を1枚の位相差補償板で構成し、透過表示部10の明表示が良好となるように偏光板14・15並びに位相差補償板16・17の光学配置を設定した以外は、実施例7に示す液晶表示装置と同様に設計された液晶表示装置を作製した。上記位相差補償板16・17および偏光板14・15の貼付方位は、液晶の配向方向(配向方位)に対応して決定した。
また、本比較例でも、前記実施例7と同様、電圧を印加しないときに液晶が表示面に平行に配向するように、配向膜2・3に、平行配向性の配向膜を用いると共に、配向膜2・3のラビング交差角を180度に設定して配向処理を行った。
このような配向処理では、液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)は0度であり、電圧の印加に伴って、液晶層1の層厚方向中央部の液晶から電圧に応じて配向変化が生じる。
表3に、本比較例で得られた液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
〔実施例8〕
本実施例では、実施例7に示す液晶表示装置において、反射表示部9における液晶層厚(d)と透過表示部10における液晶層厚(d)とが共に7.5μmであり、透過表示に適したリタデーションを反射表示部9に用いて、反射表示が良好となるように偏光板14・15並びに位相差補償板16・17の光学配置を設定した以外は、実施例7に示す液晶表示装置と同様に設計された液晶表示装置を作製した。
より具体的には、本実施例では、実施例1において、基板5上に、絶縁性を有する感光樹脂からなる絶縁膜11を形成せず、また、図4に示すように、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とが電気的に絶縁されていて、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とに、液晶セル外部から別々に電圧が印加されるように電極パターンを作製した以外は、実施例1の液晶注入用の液晶セルの作製方法と同様の方法により、反射表示部9および透過表示部10が、共に7.5μmの液晶層厚(d)を有している液晶注入用の液晶セルを作製した。
そして、上記液晶注入用の液晶セルに、カイラル剤を含まない液晶組成物の屈折率差(Δn)が0.065であり、正の誘電率異方性を有する液晶組成物を、真空注入法によって導入することにより、液晶層1を形成した。
上記の液晶セルにおける各電極基板の外側には、位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付した。尚、本実施例では、位相差補償板17を2枚の位相差補償板で構成すると共に、位相差補償板16を2枚の位相差補償板で構成した。これら位相差補償板16・17および偏光板14・15の貼付方位は、液晶の配向方向(配向方位)に対応して決定した。
本実施例では、液晶層1に、液晶が、基板4・5に対して平行(表示面に対して平行)に配向し、かつ、ツイスト配向していない液晶層を用いると共に、液晶表示方式として、液晶層1のリタデーションを表示に利用する複屈折モードを用いた。
また、本実施例では、透過表示に適したリタデーションを反射表示部9に用いた。ここで、透過表示部10は、前記実施の形態2における実施例2の透過表示部10と同様に設定されているが、反射表示部9は、その液晶層厚が透過表示部10と等しく設定されており、実施例2とは異なっている。このため、本実施例では、実施例2において、再度、光学設計を行って、偏光板14・15の光学配置並びに位相差補償板16・17の光学配置を決定している。本実施例では、これら偏光板14・15並びに位相差補償板16・17の光学配置を、反射表示が良好となるように設定した。
また、本実施例では、前記実施例2と同様、電圧を印加しないときに液晶が表示面に平行に配向するように、配向膜2・3に、平行配向性の配向膜を用いると共に、配向膜2・3のラビング交差角を180度に設定して配向処理を行った。
このような配向処理では、液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)は0度であり、電圧の印加に伴って、液晶層1の層厚方向中央部の液晶から電圧に応じて配向変化が生じる。
表3に、本実施例で得られた液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
尚、表3に示す光学配置は、観察者が表示面を観察するときの、表示面での各々の光学要素配置であり、位相差補償板16あるいは位相差補償板17が複数の位相差補償板によって構成されている場合には、上記位相差補償板16・17を構成する各位相差補償板は、観察者側からの実際の配置の順に記載している。
また、液晶層1はツイストしない配向をとっているため、電圧無印加時の液晶層1全体の配向方位(液晶分子長軸の配向方位)を記載しているが、この配向方位は、基板4側の配向膜2に施されたラビング処理の方位である。
尚、各々の方位は、表示面上に任意にとった基準方位からの方位を度の単位で表し、各位相差補償板のリタデーションは波長550nmの単色光に対する値をnm単位で示す。
〔比較例4〕
本比較例では、実施例7に示す液晶表示装置において、液晶層1に、液晶が、基板4・5に対して平行(表示面に対して平行)に配向し、かつ、70度ツイスト配向した液晶層を使用し、この液晶層1のツイスト配向による液晶層1の偏光変換作用を表示に利用した以外は、実施例7に示す液晶表示装置と同様に設計された液晶表示装置を作製した。
より具体的には、本比較例では、実施例1において、基板5上に、絶縁性を有する感光樹脂からなる絶縁膜11を形成せず、また、図4に示すように、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とが電気的に絶縁されていて、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とに、液晶セル外部から別々に電圧が印加されるように電極パターンを作製した以外は、実施例1の液晶注入用の液晶セルの作製方法と同様の方法により、反射表示部9および透過表示部10が、共に4.5μmの液晶層厚(d)を有している液晶注入用の液晶セルを作製した。
また、上記の液晶セルにおける各電極基板の外側には、位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付した。尚、本比較例では、位相差補償板17を2枚の位相差補償板で構成すると共に、位相差補償板16を2枚の位相差補償板で構成した。これら位相差補償板16・17および偏光板14・15の貼付方位は、液晶の配向方向(配向方位)に対応して決定した。
さらに、本比較例では、配向膜2・3に、電圧を印加しないときの液晶配向が平行配向となるように、平行配向性の配向膜を用い、そのラビング交差角が250度となるようにラビング処理を施すことにより、配向処理を行った。尚、ラビング交差角は、前述の定義に従うものとする。そして、上記液晶注入用の液晶セルにおける電極基板間に、屈折率差(Δn)が0.065の正の誘電率異方性を有する液晶組成物を真空注入法によって導入することにより、液晶層1を形成した。このような配向処理と液晶組成物に添加したカイラル添加剤の作用により、上述したように、液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)を70度とすることができる。尚、上記カイラル添加剤は、上記したツイスト角が得られるようにその添加量を調整している。このように配向させられた液晶層1は、電圧の印加に伴って、液晶層1の層厚方向中央部の液晶から電圧に応じて配向変化が生じる。
また、本比較例では、反射表示に適した液晶組成物の屈折率差(Δn)と液晶層厚(d)との積(Δn・d)を透過表示部10に用いた。ここで、反射表示部9は、前記実施の形態2における実施例5の反射表示部9と同様に設定されているが、透過表示部10は、その液晶層厚が反射表示部9と等しく設定されており、実施例5とは異なっている。このため、本比較例では、実施例5において、再度、光学設計を行って、偏光板14・15の光学配置並びに位相差補償板16・17の光学配置を決定している。本比較例では、これら偏光板14・15並びに位相差補償板16・17の光学配置を、透過表示部10の暗表示が良好となるように設定した。
表4に、本比較例で得られた液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
〔比較例5〕
本比較例では、比較例4に示す液晶表示装置において、透過表示部10の明表示が良好となるように偏光板14・15並びに位相差補償板16・17の光学配置を設定した以外は、比較例4に示す液晶表示装置と同様に設計された液晶表示装置を作製した。即ち、本比較例では、実施例7に示す液晶表示装置において、透過表示部10の明表示が良好となるように偏光板14・15並びに位相差補償板16・17の光学配置を設定し、かつ、液晶層1に、液晶が、基板4・5に対して平行(表示面に対して平行)に配向し、かつ、70度ツイスト配向した液晶層を使用し、この液晶層1のツイスト配向による液晶層1の偏光変換作用を表示に利用した以外は、実施例7に示す液晶表示装置と同様に設計された液晶表示装置を作製した。
表4に、本比較例で得られた液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
〔実施例9〕
本実施例では、実施例8に示す液晶表示装置において、位相差補償板16を2枚の位相差補償板で構成する一方、位相差補償板17を1枚の位相差補償板で構成し、液晶層1に、液晶が、基板4・5に対して平行(表示面に対して平行)に配向し、かつ、70度ツイスト配向した液晶層を使用し、この液晶層1のツイスト配向による液晶層1の偏光変換作用を表示に利用した以外は、実施例8に示す液晶表示装置と同様に設計された液晶表示装置を作製した。
より具体的には、本実施例では、実施例1において、基板5上に、絶縁性を有する感光樹脂からなる絶縁膜11を形成せず、また、図4に示すように、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とが電気的に絶縁されていて、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とに、液晶セル外部から別々に電圧が印加されるように電極パターンを作製した以外は、実施例1の液晶注入用の液晶セルの作製方法と同様の方法により、反射表示部9および透過表示部10が、共に7.5μmの液晶層厚(d)を有している液晶注入用の液晶セルを作製した。
また、上記の液晶セルにおける各電極基板の外側には、位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付した。尚、本実施例では、位相差補償板17を1枚の位相差補償板で構成し、位相差補償板16を2枚の位相差補償板で構成した。これら位相差補償板16・17および偏光板14・15の貼付方位は、液晶の配向方向(配向方位)に対応して決定した。
そして、本実施例では、液晶層1のツイスト配向(液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角))が70度となるように、液晶表示装置を作製した。具体的には、配向膜2・3に、電圧を印加しないときの液晶配向が平行配向となるように、平行配向性の配向膜を用い、そのラビング交差角が250度となるようにラビング処理を施すことにより、配向処理を行った。尚、ラビング交差角は、前述の定義に従うものとする。そして、上記液晶注入用の液晶セルにおける電極基板間に、液晶組成物の屈折率差(Δn)が0.065の正の誘電率異方性を有する液晶組成物を真空注入法によって導入することにより、液晶層1を形成した。このような配向処理と液晶組成物に添加したカイラル添加剤の作用により、上述したように、液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)を70度とすることができる。尚、上記カイラル添加剤は、上記したツイスト角が得られるようにその添加量を調整している。このように配向させられた液晶層1は、電圧の印加に伴って、液晶層1の層厚方向中央部の液晶から電圧に応じて配向変化が生じる。
また、本実施例では、透過表示に適した液晶組成物の屈折率差(Δn)と液晶層厚(d)の積(Δn・d)を反射表示部9に用いた。ここで、透過表示部10は、前記実施の形態2における実施例5の透過表示部10と同様に設定されているが、反射表示部9は、その液晶層厚が透過表示部10と等しく設定されており、実施例5とは異なっている。このため、本実施例では、実施例5において、再度、光学設計を行って、偏光板14・15の光学配置並びに位相差補償板16・17の光学配置を決定している。本実施例では、これら偏光板14・15並びに位相差補償板16・17の光学配置を、反射表示が良好となるように設定した。
表4に、本実施例で得られた液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
尚、表4に示す光学配置は、観察者が表示面を観察するときの、表示面での各々の光学要素配置であり、位相差補償板16あるいは位相差補償板17が複数の位相差補償板によって構成されている場合には、上記位相差補償板16・17を構成する各位相差補償板は、観察者側からの実際の配置の順に記載している。また、表4における各々の方位は、表示面上に任意にとった基準方位からの方位を度の単位で表し、各位相差補償板のリタデーションは波長550nmの単色光に対する値をnm単位で示す。
以上のように、4.5μmの液晶層厚(d)を有する、実施例7および比較例3〜5にかかる液晶表示装置では、液晶層厚を、反射表示に適するように設定している。このため、上記実施例7および比較例3〜5では、反射表示のみに関係している偏光板14と位相差補償板16との光学配置は反射表示に適するように設定している。一方、透過表示部10は、その液晶層厚が、前記実施の形態2の各実施例における液晶表示装置の透過表示部10の液晶層厚とは異なる液晶層厚に設定されている。このため、上記実施例7および比較例3〜5では、各々の液晶表示装置の透過表示部10の光学特性に併せて位相差補償板17および偏光板15の光学配置を設定した。つまり、実施例7および比較例4では、良好な暗表示を実現することができる液晶表示装置を作製し、比較例3および比較例5では、良好な明表示を実現できる液晶表示装置を作製した。
これに対し、7.5μmの液晶層厚(d)を有する、実施例8および実施例9にかかる液晶表示装置では、液晶層厚を、透過表示に適するように設定している。このため、上記実施例8および実施例9では、透過表示に関係している偏光板14、位相差補償板16、位相差補償板17、偏光板15の光学配置を、透過表示に適するように設定している。従って、上記実施例8および実施例9では、反射表示部9は、透過表示に合わせて設定された偏光板14および位相差補償板16の光学配置によって表示特性が決定される。
また、上記実施例7、比較例3、実施例8、比較例4、比較例5、実施例9で得られた各液晶表示装置の表示特性を、各々、図11、図12、図13、図14、図15に示す。尚、これらの表示特性は、何れも、実施例1と同様に顕微鏡を用いて測定したものであり、上記各図において、横軸は印加電圧の実効値を示し、縦軸は明度(反射率または透過率)を示す。また、偏光板14・15が共に貼付されていない透過表示部10の透過率を透過率100%とし、偏光板14を貼付する前の反射表示部9の反射率を反射率100%とする。
図11において、曲線261は、実施例7で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線262は、実施例7で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図11に示すように、実施例7では、印加電圧が1V〜3Vの区間では、印加電圧の上昇に伴って透過率が上昇する一方、反射率は、印加電圧が1V〜2Vの区間では印加電圧の上昇に伴って上昇し、それ以降は印加電圧の上昇に伴って減少している。また、印加電圧が1Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は3%であり、印加電圧が2Vのときの反射表示部9の反射率は40%、透過表示部10の透過率は18%であり、印加電圧が3Vのときの反射表示部9の反射率は28%、透過表示部10の透過率は33%であった。
また、図12において、曲線271は、比較例3で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線272は、比較例3で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図12に示すように、比較例3では、印加電圧が1V〜2Vの区間では、印加電圧の上昇に伴って反射率、透過率が共に上昇している。また、印加電圧が1Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は18%であり、印加電圧が2Vのときの反射表示部9の反射率は40%、透過表示部10の透過率は40%であった。
図13において、曲線281は、実施例8で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線282は、実施例8で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図13に示すように、実施例8では、印加電圧が1V〜2Vの区間では、印加電圧の上昇に伴って透過率が上昇する一方、反射率は、印加電圧が0.7V〜1.2Vの区間で印加電圧の上昇に伴って上昇した後、一旦、印加電圧が1.2V〜1.7Vの区間で印加電圧の上昇に伴って減少し、その後、印加電圧が1.7V〜2.3Vの区間で、再度、印加電圧の上昇に伴って上昇している。また、印加電圧が1Vのときの反射表示部9の反射率は24%、透過表示部10の透過率は3%であり、印加電圧が1.2Vのときの反射表示部9の反射率は40%、印加電圧が1.7Vのときの反射表示部9の反射率は3%であり、印加電圧が2Vのときの反射表示部9の反射率は27%、透過表示部10の透過率は39%であった。
図14において、曲線291は、比較例4で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線292は、比較例4で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図14に示すように、比較例4では、印加電圧が1.2V〜3Vの区間では、印加電圧の上昇に伴って反射率、透過率が共に上昇している。また、印加電圧が1.2Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は1%であり、印加電圧が3Vのときの反射表示部9の反射率は36%、透過表示部10の透過率は16%であった。
図15において、曲線311は、比較例5で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線312は、比較例5で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図15に示すように、比較例5では、印加電圧が1.2V〜3Vの区間では、印加電圧の上昇に伴って反射率、透過率が共に上昇している。また、印加電圧が1.2Vのときの反射表示部9の反射率は3%、透過表示部10の透過率は21%であり、印加電圧が3Vのときの反射表示部9の反射率は39%、透過表示部10の透過率は35%であった。
図16において、曲線321は、実施例9で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線322は、実施例9で得られた液晶表示装置における電極6と電極7との間の電圧に対する透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図16に示すように、実施例9では、印加電圧が1.2V〜3Vの区間では、印加電圧の上昇に伴って透過率が上昇する一方、反射率は、印加電圧が0.9V〜1.7Vの区間で印加電圧の上昇に伴って、一旦、減少し、それ以降、印加電圧の上昇に伴って上昇している。また、印加電圧が1.2Vのときの反射表示部9の反射率は7%、透過表示部10の透過率は32%であり、印加電圧が1.7Vのときの反射表示部9の反射率は3%であり、印加電圧が3Vのときの反射表示部9の反射率は37%、透過表示部10の透過率は36%であった。
以上の実施例および比較例から明らかなように、偏光板14・15を使用して液晶層1のリタデーションや旋光等の偏光変換作用による偏光状態の変化を表示に利用する液晶表示装置において、液晶層1の液晶層厚を反射表示部9と透過表示部10で一致させた場合、反射表示部9における電極7と透過表示部10における電極7とに対して同一の電圧を印加したとき(反射表示部9と透過表示部10とを共通の電圧で駆動したとき)には、実施例7および比較例3〜5に示すように、明表示の明度とコントラスト比とを反射表示部9で十分に両立できる電圧の印加時には透過表示部10の明表示の明度とコントラスト比との両立が十分でなく、実施例8および実施例9に示すように、明表示の明度とコントラスト比とを透過表示部10で十分に両立できる電圧の印加時には反射表示部9の明度の変化と透過表示部10の明度の変化とが一致せず、良好な表示にならない。
しかしながら、実施例7、実施例8、および実施例9で得られた液晶表示装置は、何れも、反射表示部9における電極7と透過表示部10における電極7とに対して異なる電圧を印加する(反射表示部9と透過表示部10とを異なる電圧で駆動する)ことで、良好な表示とすることができる。
つまり、上記実施例7〜実施例9の各液晶表示装置は、何れも、反射表示部9における電極7と透過表示部10における電極7とに対して異なる電圧を印加することで、反射表示部9に対しても透過表示部10に対しても共に明表示の明度とコントラスト比とを両立することができると共に、反射表示部9と透過表示部10とで表示の明暗を一致させることができ、視認性に優れた表示を実現することができることが判る。
本実施の形態と前記実施の形態2とを比較した結果、偏光板14・15を使用して液晶層1のリタデーションや旋光等の偏光変換作用を表示に利用する液晶表示装置において、反射表示部9と透過表示部10とで共に明表示の明度とコントラスト比とを両立させるには、透過表示部10における液晶層1の層厚を反射表示部9における液晶層1の層厚より大きく設定することが有効であることが判る。
尚、本実施の形態および前記実施の形態2における各実施例では、液晶表示モードとして、電圧を印加していない状態での液晶配向が表示面の平面方向に対して平行なものを示したが、上記各実施例で例示した液晶材料とは異なる性質の液晶材料を用いたり、例示した配向膜とは異なる性質の配向膜を用いることにより、垂直配向モードや、ハイブリッド配向モード等を使用することができることは言うまでもない。
さらに、液晶表示モードが、液晶層1のリタデーションまたは旋光を利用した何れのモードであっても、液晶層厚が光学特性に影響し、反射表示部9における液晶層厚が、透過表示部10における液晶層厚よりも薄い方が適するものは、全て本発明によって良好な光学特性が実現することは言うまでもない。
また、実施例4および実施例7〜実施例9は、電極6・7(配向機構)によって反射表示部9と透過表示部10とで異なる電圧を与えることで、良好に表示することが可能となることが判る。この場合、例えば、実施例4および実施例7では、透過表示部10に電圧を十分に印加することで透過表示部10の表示も良好にすることが可能になる。また、実施例8および実施例9は何れも反射表示部9の電圧を調整することにより、良好な表示が可能になる。従って、本実施の形態並びに前記実施の形態2によれば、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚を変更する方法以外にも、反射表示部9と透過表示部10とで電圧が変更できるように液晶セルを予め作製することで、良好な表示を実現することができることが判る。
〔実施の形態4〕
本実施の形態では、液晶配向を決定する基板上の配向処理方位(ラビング方位)、即ち、各電極基板に設けられた配向膜の配向処理方位を反射表示部と透過表示部とで変更して液晶配向を反射表示部と透過表示部とで異ならせることにより、良好な反射表示並びに良好な透過表示を実現する液晶表示装置について説明する。
本実施の形態では、液晶層を一様に配向させるために、いわゆるラビング法を使用する。本実施の形態では、各電極基板に設けられた配向膜の配向処理方位を反射表示部と透過表示部とで変更するために、配向膜のラビング処理に際し、配向膜表面をフォトレジスト等で覆っておくことで、少なくとも2種類の液晶配向を実現することが可能である。該方法によれば、反射表示に適した液晶配向と、透過表示に適した液晶配向とを同時に実現することができ、この結果、良好な反射表示並びに良好な透過表示を実現することが可能となる。
以下、本実施の形態にかかる液晶表示装置についてより詳細に説明するが、説明の便宜上、前記実施の形態1〜実施の形態3と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
先ず、図17および図18(a)〜(e)を用いて、本実施の形態にかかる液晶表示装置に用いる基板(電極基板40)の配向処理工程を説明する。
先ず、図18(a)に示すように、液晶セルを構成する基板41(電極6形成後の基板4あるいは電極7形成後の基板5に相当)における液晶層1との接触面に配向膜材料を塗布し(S1)、プリベーク(S2)、キュアリング(S3)を行って、上記基板41における液晶層1との接触面に配向膜42(配向膜2または配向膜3に相当)を形成する。
次いで、上記配向膜42をラビング処理することにより、上記基板41上における液晶層1との界面に配向膜42を備えた電極基板40の配向処理を行う。この際、本実施の形態では、先ず、図18(b)に示すように、ラビング処理が部分的に行われるように、ラビング処理スクリーン用のレジスト43によるスクリーンが行われる。この場合、先ず、上記配向膜42上に、ラビング処理スクリーン用のレジスト材料を塗布し(S4)、プリベーク(S5)後、上記配向膜42の一部(第1の配向処理領域42a)が露出されるように、UVマスク露光(S6)、現像(S7)、キュアリング(S8)を行い、その後、上記第1の配向処理領域42aにラビング処理を施す(S9)。次いで、このラビング処理後の電極基板40を洗浄(S10)した後、図18(c)に示すように、上記レジスト43を剥離する(S11)。
続いて、上記第1の配向処理領域42aにおける液晶配向とは異なる液晶配向を実現するために、図18(d)に示すように、既にラビングされた部分(第1の配向処理領域42a)をラビング処理スクリーン用のレジスト44により保護し、未処理部分のラビング処理が行われる。つまり、レジスト43を剥離した配向膜42上にラビング処理スクリーン用のレジスト材料を塗布し(S12)、プリベーク(S13)後、上記配向膜42上における、第1の配向処理領域42a以外の配向処理領域(第2の配向処理領域42b)が露出されるように、UVマスク露光(S14)、現像(S15)、キュアリング(S16)を行い、その後、上記第2の配向処理領域42bに、上記第1の配向処理領域42aとは処理方位が別々になるようにラビング処理を施す(S17)。次いで、このラビング処理後の電極基板40を洗浄(S18)した後、図18(e)に示すように、上記レジスト44を剥離する(S19)。これにより、二種類の異なる方位に配向処理された配向膜42(配向機構)が得られた。
このように、本実施の形態では、レジストによってパターニングされた配向処理が2回以上行われる。このとき、配向処理毎に処理方位を変更する(上記の説明では、2回の配向処理により、2方位の配向処理が行われている)ことで、少なくとも2種類の液晶配向(例えば、配向方向の異なる複数種類の平行配向)を実現することが可能である。そして、このように、配向処理方位を少なくとも一方の基板(電極基板)で変更することにより、反射表示部9と透過表示部10との配向を独立して設定することができ、良好な表示が可能となる。
次に、上述した方法により反射表示部9と透過表示部10とで異なる液晶配向を実現すると共に偏光板14・15を使用した液晶表示装置について、具体的な実施例を用いて以下に説明する。しかしながら、本実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例10〕
本実施例では、前記比較例5に示す液晶表示装置の製造方法に準じて液晶表示装置の作製を行った。具体的には、実施例1において、基板5上に、絶縁性を有する感光樹脂からなる絶縁膜11を形成せず、また、図4に示すように、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とが電気的に絶縁されていて、反射表示部9の電極7と透過表示部10の電極7とに、外部から別々に電圧が印加されるように電極パターンを作製した以外は、実施例1の液晶注入用の液晶セルの作製方法と同様の方法により、反射表示部9および透過表示部10が、共に4.5μmの液晶層厚(d)(セルギャップ)を有している液晶注入用の液晶セルを作製した。そして、この液晶セルにおける各電極基板の外側に、位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付した。上記位相差補償板16および位相差補償板17は、各々、2枚ずつの位相差補償板で構成した。
但し、本実施例では、図17および図18(a)〜図18(e)に示した方法と同様の方法により、配向膜3のラビング処理に際して配向分割を行った。つまり、本実施例では、基板4側の配向膜2に対しては、反射表示部9と透過表示部10とで同じ方位にラビングを行い、基板5側の配向膜3(配向機構)に対しては、反射表示部9と透過表示部10とで液晶配向方位が異なるように、反射表示部9と透過表示部10とで異なる方位にラビングを行った。
また、本実施例では、反射表示部9には、表示面に平行(基板4・5に平行)で、かつ、ツイストした液晶配向を利用した液晶表示モードを使用し、透過表示部10には、表示面に平行(基板4・5に平行)で、かつ、ツイストしていない液晶配向を利用した表示モードを使用した。
また、本実施例では、反射表示部9における液晶層1のΔn・dが約270nm、かつ、液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)が70度であり、透過表示部10における液晶層1のΔn・dが約270nm、かつ、液晶の配向の捩じれ角(ツイスト角)が0度の液晶表示装置を作製した。この結果、反射表示部9と透過表示部10とで連通した液晶層1を有し、セルギャップを変更することなく、反射表示部9と透過表示部10とで共に良好な表示を行うことが可能な液晶表示装置が得られた。
表5に、本実施例で得られた液晶表示装置の反射表示部9並びに透過表示部10における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
尚、表5に示す光学配置は、観察者が表示面を観察するときの、表示面での各々の光学要素配置であり、上記位相差補償板16・17を構成する各位相差補償板は、観察者側からの実際の配置の順に記載している。また、表5における各々の方位は、表示面上に任意にとった基準方位からの方位を度の単位で表し、各位相差補償板のリタデーションは波長550nmの単色光に対する値をnm単位で示す。
次に、本実施の形態における各光学素子の動作について以下に説明する。
先ず、液晶層1に電圧が印加されていない場合について説明する。この場合、上記液晶層1における液晶は、該液晶層1に接する基板界面の配向、即ち、各電極基板に設けられた配向膜2・3の配向処理方位にしたがって配向している。例えば、上記実施例10で得られた液晶表示装置では、液晶組成物にカイラル添加剤を混入しない場合、反射表示部9では左70度にツイスト配向し、透過表示部10ではツイストしていない、0度ツイスト配向状態となっている。
このため、液晶層1に電圧が印加されていない場合、反射表示部9では、液晶層1のΔn・dが270nm程度に設定されていると、該液晶層1は、円偏光が入射すると、それを直線偏光に変換して透過させるように作用する。偏光板14側から液晶層1に入射する光は、位相差補償板16によって円偏光に変換され、液晶層1によって円偏光から直線偏光にさらに変換されて反射膜8に到達して反射される。反射膜8で反射された光は、反射膜8上で直線偏光である場合、偏光板14の透過成分に再び変換されることから、上記の液晶表示装置において、液晶層1に電圧が印加されていない場合、反射表示部9の表示は明表示となる。
また、液晶層1に電圧が印加されていない場合、透過表示部10では、液晶層1のΔn・dが250nm〜270nm程度に設定されていると、液晶層1が1/2波長板として作用する。つまり、液晶層1に入射された円偏光は、入射された円偏光と直交する円偏光となり、例えば、右円偏光(右回り円偏光)が入射された場合には、該右円偏光は左円偏光(左回り円偏光)に変換され、左円偏光が入射された場合には、該円偏光は右円偏光に変換される。透過表示部10に入射した光は、偏光板15を通過し、位相差補償板17によって円偏光に変換されて液晶層1に入射される。上記実施例10では、上記位相差補償板17から液晶層1に入射される円偏光は、偏光状態がほぼ左回りの円偏光になっており、この円偏光が液晶層1に入射して右回りの円偏光に変換される。そして、位相差補償板16では、右回り円偏光は、偏光板14の透過軸方向の直線偏光に変換され、左回り円偏光は吸収軸方向の直線偏光に変換されるため、上記の液晶表示装置において液晶層1に電圧が印加されていない場合、透過表示部10の表示は明表示となる。
次に、液晶層1に電圧が印加された場合について説明する。液晶層1に電圧が印加されていると、該液晶層1における液晶は、反射表示部9であるか透過表示部10であるかに拘らず、電圧に応じて基板4・5に垂直に配向し、それに伴って上記の偏光変換作用が弱まる。つまり、位相差補償板16・17によって準備された円偏光がそのまま液晶層1を通過するため、反射表示部9においても透過表示部10においても暗表示が実現する。
尚、上記実施例10では、位相差補償板17には、115nmのリタデーションの位相差補償板を用いている。位相差補償板17のみで良好な円偏光を実現するには、該位相差補償板17のリタデーションは、135nm程度であることが望ましいが、透過表示部10の液晶層1は、実用的な電圧においてはそのリタデーションが完全には消失しないため、これを考慮して良好なコントラストが得られるように上記位相差補償板17のリタデーションが設定されている。
また、位相差補償板16は、反射表示部9の液晶層1に入射する光の偏光状態を広い波長の円偏光に変換する作用を有している。そして、上記の液晶表示装置では、反射表示部9における液晶層1は、70度ツイスト配向し、そのΔn・dは270nmに設定されている。このため、上記の液晶表示装置における反射表示部9では、液晶層1に入射する光は円偏光であり、この円偏光は、液晶層1で直線偏光に変換されて液晶層1を通過して反射膜8へと到達する。そして、反射膜8上で直線偏光となった光は、反射膜8の鏡面で反射し、それまでとは逆の順序で各光学素子を通過して、最終的に偏光板14の透過軸方位の振動電界を有する直線偏光になる。このため、上記反射表示部9では明表示となる。
また、使用した液晶組成物には、液晶の配向に固有の左捩じれを生じさせるカイラル剤が混入されている。このカイラル剤は、その添加量によって、該カイラル剤が混入された液晶組成物に固有のヘリカルピッチを変化させる。このため、このヘリカルピッチを調整し、ヘリカルピッチによって液晶配向が変化し始める最小の電圧が変化することを利用して反射表示部9と透過表示部10とで明度の電圧依存性を一致させることが可能になる。
このようにして作製された、実施例10に記載の液晶表示装置の表示特性を図19に示す。尚、図19に示す表示特性は、実施例1と同様の方法により測定したものであり、横軸は印加電圧の実効値を示し、縦軸は明度(反射率または透過率)を示す。
図19において、曲線331は、実施例10で得られた液晶表示装置における反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線332は、実施例10で得られた液晶表示装置における透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図19から判るように、実施例10で得られた上記の液晶表示装置は、電圧を印加しないときには明表示を行うようになっており、該液晶表示装置では、電圧の印加に伴って反射率および透過率が減少するいわゆるノーマリーホワイト(NW)モードによる表示が実現した。また、上記の液晶表示装置は、反射表示部9と透過表示部10とでコントラスト比をほぼ同程度に設定することができると共に、反射表示部9と透過表示部10とで表示の明暗を一致させることができ、視認性に優れた表示を実現することができる。
以上のように、液晶配向を反射表示部9と透過表示部10とで変更するための具体的な手段として、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層1のツイスト角が異なるように設定することは、反射表示部9と透過表示部10とで共に良好な表示を実現するために有効である。
尚、上記の実施例10では、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層1のツイスト角を変更するために、反射表示部9と透過表示部10とで異なる方位のラビング処理を行い、反射表示部9の液晶層1はツイスト配向しているが、透過表示部10の液晶層1はツイスト配向していない組み合わせを用いたが、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層1のツイスト角を変更するための手段は、特に限定されるものではない。
例えば、実施例10に示す上記の組み合わせ以外に、(1) 反射表示部9における液晶層1と透過表示部10における液晶層1とは共にツイスト配向しているがそのツイスト角やツイストの向きが異なっている組み合わせや、(2) 反射表示部9における液晶層1はツイストしていないが透過表示部10における液晶層1はツイストしている組み合わせを使用してもよく、(3) 基板4・5に対する液晶の傾斜(いわゆるプレティルト)が反射表示部9と透過表示部10とで異なっている組み合わせであってもよい。また、(4) 基板界面での液晶配向の変化を本発明の他の手段と組み合わせるものであってもよく、(5) 反射表示部9と透過表示部10とでセルギャップが異なるものや、(6) 反射表示部9と透過表示部10とで電界が異なるものであってもよい。
〔実施の形態5〕
前記実施の形態2〜4における各実施例では、基板に対して液晶が平行に配向している液晶表示装置を用いて良好な反射表示並びに良好な透過表示を実現するための構成について説明したが、本実施の形態では、前記実施の形態1における実施例1同様、液晶の配向方位が基板に対して垂直な液晶表示装置について説明する。但し、本実施の形態では、液晶層に二色性色素を混入することなく、偏光板を使用して液晶の複屈折または旋光性(偏光変換作用)を利用した表示を行うための設計を行った。尚、説明の便宜上、以下、前記実施の形態1〜実施の形態4と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態にかかる液晶表示装置では、液晶層1に、誘電率異方性が負の液晶を使用する。また、液晶層1を挟持する配向膜2・3に、液晶を垂直に配向させる垂直配向膜を用いる。この場合、液晶分子は、液晶層1に電圧を印加していない時には基板4・5(表示面)に対してほぼ垂直に配向しているが、電圧の印加とともに、基板4・5の法線方向から傾斜して配向し、層状の液晶層1の層の法線方向に通過する光に対して偏光変換作用を生じる。
液晶が基板に平行に配向する配向膜2・3を用いた液晶表示装置と本実施の形態にかかる液晶表示装置との違いは、本実施の形態にかかる液晶表示装置では、電圧を印加しなくても液晶層1における電極基板との界面の層まで、液晶が基板4・5の法線方向に配向することである。そこで、これを有効に利用するため、本実施の形態では、表示に、電圧を印加しない場合には黒表示になるNB(ノーマリーブラック)モードを用いる。具体的には、反射表示部9では、液晶層1に円偏光を入射させて表示を行う。また、透過表示部10では、反射表示にも利用される位相差補償板16が液晶層1からの出射光の偏光に作用することから、上記液晶層1を、反射表示部9と透過表示部10とを電気的に接続する電極対で駆動し、かつ、同時に暗表示を実現するために、透過表示においても液晶層1が基板4・5に垂直に配向していることを考慮して液晶層1に円偏光を入射する。このため、偏光板14・15と位相差補償板16・17との組み合わせにおいて、位相差補償板17を構成する複数の位相差補償板のうち、液晶層1により近い側に配置された位相差補償板のリタデーションを135nmに設定する。これにより、本実施の形態では、良好なNB表示を実現することができる。
次に、偏光板14・15と位相差補償板16・17との上述した組み合わせにおいて、良好な明表示を与える液晶層1の設定について説明する。
本実施の形態では、液晶層1は、上述したように、電圧の印加とともに基板4・5の法線方向から傾斜して配向する。該液晶層1としては、該液晶層1に十分に電圧を印加した状態では、反射表示部9に対しては、円偏光を直線偏光に変換するように作用し、透過表示部10に対しては、円偏光を、逆廻りの円偏光に変換するように作用することが望ましい。上記液晶層1が上記の変換作用を奏する場合には良好な明表示を実現することができる。
上記液晶層1が上記の変換作用を奏するためには、例えば、液晶にツイストを生じさせないように配向膜2・3を配向処理し、液晶組成物にはカイラル添加剤を使用しないことが望ましい。つまり、液晶層1のリタデーションが、該液晶層1への電圧の印加によって、入射光の波長をλとしたとき、反射表示部9ではλ/4変化し、透過表示部10ではλ/2変化するように液晶層1が設定されていることが望ましい。
反射表示部9における液晶層1の層厚と透過表示部10における液晶層1の層厚とが異なるように設定されている場合、液晶層1が上記の変換作用を奏するべく、液晶層1を上述したように設定することは容易である。
以下、本実施の形態にかかる液晶表示装置について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例11〕
本実施例では、実施例1の液晶注入用の液晶セルの作製方法と同様の方法により、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚が異なる液晶注入用の液晶セルを作製し、配向膜2・3に、液晶を基板4・5に対して垂直に配向させる作用を有する垂直配向膜を用いた。上記配向膜2・3には、ラビングにより、液晶が、基板4・5の法線方位(垂直方向)から若干傾斜して配向するように配向処理を行った。
但し、本実施例では、反射表示部9における液晶層厚(d)を3μm、透過表示部10における液晶層厚(d)を6μmとし、液晶材料に、屈折率差(Δn)が0.06の負の誘電率異方性を有する液晶を用いて液晶層1を形成すると共に、上記の液晶セルにおける各電極基板の外側に、位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付して液晶表示装置を作製した。上記位相差補償板16および位相差補償板17は、各々、2枚ずつの位相差補償板で構成した。
表6に、本実施例で得られた液晶表示装置の反射表示部9並びに透過表示部10における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
尚、表6に示す光学配置は、観察者が表示面を観察するときの、表示面での各々の光学要素配置であり、上記位相差補償板16・17を構成する各位相差補償板は、観察者側からの実際の配置の順に記載している。また、表6における各々の方位は、表示面上に任意にとった基準方位からの方位を度の単位で表し、各位相差補償板のリタデーションは波長550nmの単色光に対する値をnm単位で示す。
このようにして作製された、本実施例に記載の液晶表示装置の表示特性を図20に示す。尚、図20に記載の表示特性は、実施例1と同様の方法により測定したものであり、横軸は印加電圧の実効値を示し、縦軸は明度(反射率または透過率)を示す。
図20において、曲線341は、実施例11で得られた液晶表示装置における反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線342は、実施例11で得られた液晶表示装置における透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。
図20から判るように、実施例11で得られた上記の液晶表示装置は、電圧を印加しないときには暗表示を行うようになっており、該液晶表示装置では、電圧の印加に伴って反射率および透過率が増加するいわゆるNBモードによる表示が実現した。また、上記の液晶表示装置は、反射表示部9と透過表示部10とでコントラスト比をほぼ同程度に設定することができると共に、反射表示部9と透過表示部10とで表示の明暗を一致させることができ、視認性に優れた表示を実現することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、反射表示部9と透過表示部10とで、同時に異なる液晶配向を実現する本発明にかかる液晶表示装置において、反射表示部9または透過表示部10のうち少なくとも一方に、液晶を、該液晶(液晶層1)に接する基板面に垂直に配向させる配向手段(垂直配向膜)を用いることにより、反射表示部9と透過表示部10とで共に良好な表示を行うことができる半透過型の液晶表示装置が実現することが確認された。
〔実施の形態6〕
本実施の形態では、液晶配向を電圧で変化させて表示を行うときに、反射表示部または透過表示部の少なくとも一方において、液晶の配向状態を表示面(基板)に対して平行な状態に維持したまま、液晶の配向方位を変更して表示を行う液晶表示装置について説明する。即ち、本実施の形態にかかる液晶表示装置では、液晶分子が、反射表示部または透過表示部の少なくとも一方において、電圧の印加により表示面(基板)に対して平行に回転するようになっている。
以下、本実施の形態にかかる液晶表示装置について、具体的な実施例を用いて説明するが、本実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。尚、説明の便宜上、前記実施の形態1〜実施の形態5と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
〔実施例12〕
本実施例では、透過型液晶表示装置で広視野角を実現するために用いられているIPS(インプレインスイッチング)モードを半透過型液晶に利用することで、基板に対して面内方向の横電界で液晶分子を基板に対して平行に回転させ、光スイッチ機能をもたせた液晶表示装置について、図21(a)および図21(b)を参照して以下に説明する。
尚、従来、IPSモード自体は、透過型液晶表示装置の分野において使用されてはいるが、該IPSモード使用時に用いられる櫛形電極上では液晶配向変化が透過表示には不十分なため、上記櫛形電極上の液晶配向は表示に寄与せず、良好な表示を実現することはできなかった。しかしながら、本実施例によれば、従来のIPS方式では使用できなかった櫛形配線上の領域で反射表示が実現し、光の利用効率が高い半透過型の液晶表示装置を得ることができる。
図21(a)は、本実施例にかかる液晶表示装置の電圧無印加時における要部断面図であり、図21(b)は、図21(a)に示す液晶表示装置の電圧印加時における要部断面図である。尚、図21(a)および図21(b)は、何れも、該液晶表示装置における液晶セルを、該液晶セルに設けられた櫛形電極の電極配線(端子)が延びる方位に垂直な面で切断したときの断面を示す。
図21(a)および図21(b)に示す液晶表示装置は、液晶層1が、透光性を有する基板51と、光反射性を有する櫛形電極53(表示内容書換手段、電圧印加手段、配向機構)を備えることで光反射性を具備する基板54とで挟持され、さらに、基板51の外側(即ち、基板54との対向面とは反対側)に、位相差補償板16と偏光板14とを備えると共に、基板54の外側(即ち、基板51との対向面とは反対側)に、位相差補償板17と偏光板15とを備えた構成を有している。尚、本実施例では、位相差補償板16を1枚の位相差補償板で構成し、位相差補償板17を2枚の位相差補償板で構成した。
本実施例でも、上記液晶表示装置は、上記液晶層1を挟んで設けられた一対の基板のうち、一方の基板54(電極基板)において、ガラス基板52上に、絶縁性を有する感光樹脂をスピンコートによって塗布し、さらに紫外光のマスク照射によって、透過表示部10には感光樹脂が残存せず、反射表示部9では、該感光樹脂が所定の層厚に形成されるように絶縁膜11(配向機構)がパターン形成されている。これにより、透過表示部10における液晶層1の層厚は、反射表示部9における液晶層1の層厚よりも薄く設定されている。
また、本実施例にかかる上記の液晶表示装置において、上記ガラス基板52上には、上記絶縁膜11を覆うように、光反射性を有する櫛形電極53(配向機構)が形成されている。該櫛形電極53は、液晶層1を駆動する液晶駆動電極と反射膜(反射手段)とを兼ねる反射画素電極であり、光の反射率の高い金属で作製されている。
上記液晶表示装置において、透過表示部10では、櫛形電極53によって印可されている電界によって液晶分子1aの配向状態が変化する。また、反射表示部9では、上記櫛形電極53による電界で液晶層1が駆動されると共に、上記櫛形電極53の反射作用を表示に用いている。
尚、本実施例では、反射手段に、櫛形電極53の配線を用いているが、該櫛形電極53には、光散乱性を付与するために、その表面に凹凸構造が形成されていてもよく、また、ガラス基板51の外側における櫛形電極53に対向する領域に、光散乱性を有する膜がさらに形成されていてもよい。
図21(a)および図21(b)に示す液晶表示装置において、互いに隣り合う櫛形電極53a・53bには、互いに異なる電位が与えられ、上記櫛形電極53a・53b間には電界が生じる。図21(b)に示すように、透過表示部10は櫛形電極53a・53bの間隙部に相当し、この部分では、液晶配向は、上記櫛形電極対(櫛形電極53a・53b)によってその配向方位がガラス基板52に平行な方位を保って大きく変化する。また、反射表示部9は、櫛形電極53(櫛形電極53a・53b)の直上に相当し、この部分では、液晶配向は、ガラス基板52の平面に沿った方位の変化だけでなく、ガラス基板52に対して垂直な方位にも変化する。これは、図21(b)に示すように、透過表示部10では電気力線(図中、破線で示す)がガラス基板52に対してほぼ平行に延びているのに対し、反射表示部9では電気力線がガラス基板52に垂直な成分を有しているためである。
表7に、本実施例にかかる液晶表示装置の反射表示部9並びに透過表示部10における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
尚、表7に示す光学配置は、観察者が表示面を観察するときの、表示面での各々の光学要素配置であり、上記位相差補償板17を構成する各位相差補償板は、観察者側からの実際の配置の順に記載している。
また、液晶層1の配向方位(液晶分子1aの長軸の配向方位)は、基板51側では基板51表面におけるラビング処理方位に等しく、基板54側では、基板54表面におけるラビング処理方位に等しい。以下、基板51側の液晶層1の配向方位を基板51配向方位、基板54側の液晶層1の配向方位を基板54配向方位と記す。
また、表7における各々の方位は、表示面上に任意にとった基準方位からの方位を度の単位で表し、各位相差補償板のリタデーションは波長550nmの単色光に対する値をnm単位で示す。
ここで櫛形電極53の電極配線(端子)が延びている方向は、65度方位であり、電圧の印加に伴って、液晶配向は、透過表示部10と反射表示部9とで、共に75度方位を向いている液晶分子1aが75度方位よりも大きな方位を有するように変化した。また、上記液晶表示装置において、反射表示部9における液晶層1のΔn・dは130nm前後、透過表示部10における液晶層1のΔn・dは240nm前後に設定されている。
上記のように設定された液晶表示装置では、液晶層1に電圧を印加しないときには反射表示部9および透過表示部10は共に暗表示になる。そして、この状態から液晶層1に電圧を印加すると、液晶分子1aは、櫛形電極53の電極配線(端子)が延びる方位(上記設定では65度方位)から逸れるように、その配向方位が変化する。従って、上記の液晶表示装置では、電圧印加時の液晶の配向方位を変化させることにより、明表示を実現している。
このようにして作製された、本実施例にかかる液晶表示装置の表示特性を図22に示す。尚、図22に記載の表示特性は、実施例1と同様の方法により測定したものであり、横軸は印加電圧の実効値を示し、縦軸は明度(反射率または透過率)を示す。
図22において、曲線351は、実施例12で得られた液晶表示装置における反射表示部9の反射率の電圧依存性を示し、曲線352は、実施例12で得られた液晶表示装置における透過表示部10の透過率の電圧依存性を示す。尚、反射表示部9は、櫛形電極53上の位置によって光学特性に違いがあるが、ここでは代表的な部分の光学特性を記載している。
図22から判るように、実施例12で得られた上記の液晶表示装置は、電圧を印加しないときには、反射表示部9および透過表示部10は共に暗表示を行うようになっており、該液晶表示装置では、電圧の印加に伴って反射率および透過率が増加する。また、印加電圧が2Vのときの反射表示部9の反射率および透過表示部10の透過率は共に3%であり、印加電圧が5Vのときの反射表示部9の反射率は35%、透過表示部10の透過率は38%であった。従って、上記の液晶表示装置によれば、反射表示部9に対しても透過表示部10に対しても共に明表示の明度とコントラスト比とを両立することができ、視認性に優れた表示を実現することができる。また、上記の液晶表示装置によれば、透過表示部10におけるコントラスト比が反射表示部9におけるコントラスト比を上回ることから、より一層表示品位を高め、良好な表示を行うことができる。
以上のように、上記実施例12によれば、従来のIPS方式では表示に使用できなかった櫛形配線53上の領域で反射表示が実現し、光の利用効率が高い半透過型の液晶表示装置を得ることができることを確認した。
本実施の形態において、上述した液晶配向を実現する方法としては、上述したIPSモードのようにネマティック液晶を利用する方法以外にも、強誘電性液晶表示モードを利用する方法や反強誘電性液晶表示モードを利用する方法等を用いることができる。
そこで、以下の実施例13では、上述した液晶配向を実現する他の液晶表示装置として、強誘電性液晶表示モードを表示に使用した液晶表示装置について説明する。
〔実施例13〕
本実施例では、実施例1に示す液晶表示装置において、液晶材料に表面安定化強誘電性液晶を使用し、液晶層厚(d)が透過表示部10で1.4μm、反射表示部9で0.7μmとなるように設定し、該液晶層1のΔn・dが反射表示部9で130nm、透過表示部10で260nm程度となるように設定すると共に、反射表示部9に対応する電極7上に反射膜8を形成する代わりに、電極として、反射表示部9に対応する領域に反射電極を用いた以外は、実施例1に示す液晶セルと同様に設計された液晶セルを作製した。
具体的には、基板5(ガラス基板)上に、透過表示部10には感光樹脂が残存せず、反射表示部9では、該感光樹脂が0.7μmの層厚に形成されるように絶縁膜11をパターン形成し、該絶縁膜11形成部(反射表示部9)には反射電極を作製し、絶縁膜11非形成部(透過表示部10)には透明電極を作製した。そして、この基板5における上記電極形成面上に配向膜3を形成し、ラビングにより配向処理を施すことにより、電極基板を作製した。尚、該電極基板に対向配置する電極基板(対向基板)の構成は、実施例1に記載のものと同様である。そして、上記の両電極基板間に上記表面安定化強誘電性液晶を含む強誘電性液晶組成物を導入して液晶セルを作製し、該液晶セルにおける各電極基板の外側に位相差補償板16・17および偏光板14・15を貼付して液晶表示装置を作製した。尚、本実施例では、位相差補償板16を1枚の位相差補償板で構成し、位相差補償板17を2枚の位相差補償板で構成した。
表8に、本実施例で得られた液晶表示装置における、偏光板14・15、位相差補償板16・17、および液晶層1の光学配置(即ち、偏光板14・15および位相差補償板16・17の貼付方位、並びに、明表示および暗表示の液晶の配向方位)を共通の方位の基準を用いて示す。
尚、表8に示す光学配置は、観察者が表示面を観察するときの、表示面での各々の光学要素配置であり、上記位相差補償板17を構成する各位相差補償板は、観察者側からの実際の配置の順に記載している。また、表8における各々の方位は、表示面上に任意にとった基準方位からの方位を度の単位で表し、各位相差補償板のリタデーションは波長550nmの単色光に対する値をnm単位で示す。
このようにして作製された液晶表示装置は、反射表示部9と透過表示部10とでどちらも良好な明度とコントラスト比とを有する液晶表示装置であった。
以上のように、反射表示部9と透過表示部10とで、同時に異なる液晶配向並びに液晶層厚を実現する液晶表示装置であれば、電圧の印可による液晶層1の配向変化方向が液晶層平面内で変化するものであっても、本発明の半透過型の液晶表示装置として良好な表示を得ることができる。そして、上記液晶表示装置がIPSモードを利用したものである場合には、同じくIPSモードを利用した従来の透過型液晶表示装置よりも光の利用効率を改善することが可能である。また、本実施の形態にかかる上記の液晶表示装置は、強誘電性液晶等のモードによっても使用可能である。
〔実施の形態7〕
本実施の形態では、本発明にかかる液晶表示装置の構成を可能にするアクティブマトリクス駆動の具体的な素子基板およびカラーフィルタ基板について説明する。
画像表示を目的として本発明にかかる液晶表示装置を作製する場合、透過表示部と反射表示部との比率は、透過表示に利用する場合と、反射表示に利用する場合との使用頻度に応じて設計することが実用上、重要である。
つまり、第1の使用形態は、現在用いられている透過型液晶表示装置と同様に、背景照明手段としての照明装置(バックライト)からの透過光を主たる表示に用い、反射表示部をウォッシュアウトの防止に用いる使用形態(以下、透過主体半透過と略す)である。
また、第2の使用形態は、反射表示を主たる表示に用いる使用形態であり、電力消費の大きいバックライトは状況に応じてしばしば消灯して消費電力の低減を図ると共に、周囲の照明光が弱く、反射表示のみでは表示内容の確認ができない場合にはバックライトを点灯して使用する使用形態(以下、反射主体半透過と略す)である。
このような二通りの使用形態においては、主たる表示を透過表示にて行うか反射表示にて行うかが異なるため、透過表示部と反射表示部との表示面積の比率や、カラー表示の場合のカラーフィルタの色彩の設計がそれぞれ異なったものになる。
そこで、先ず、アクティブマトリクス方式の一つであるTFT素子を表示に用いる液晶表示装置を例に挙げて、透過を主体とした透過主体半透過型の液晶表示装置について、以下に説明する。尚、説明の便宜上、前記実施の形態1〜実施の形態6と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
先ず、TFT素子を表示に用いる透過主体半透過型の液晶表示装置の基板構造について、図23(a)〜図25を参照して以下に説明する。
図23(a)は、本実施の形態7にかかる透過主体半透過型の液晶表示装置を実現するためのTFT素子基板の要部平面図であり、図23(b)は、図23(a)に示すTFT素子基板における反射表示部9(図1、図4、図24、図25参照)の駆動電極19を示す図であり、図23(c)は、図23(a)に示すTFT素子基板における透明画素電極20を示す図である。
また、図24は図23(a)に示すTFT素子基板のA−A’線矢視断面図であり、より詳しくは、図23(a)に示すTFT素子基板を、TFT素子21から駆動電極19と透明画素電極20とを通ってさらに補助容量部26を通る断面にて示す図である。さらに、図25は、図23(a)に示すTFT素子基板のB−B’線矢視断面図であり、隣り合う画素同士の境界部分の断面構造を示している。
液晶層1(図1および図4参照)を駆動する画素電極18は、図23(a)、図24、および図25に示すように、反射表示部9の駆動電極19(表示内容書換手段、電圧印加手段)とITOからなる透明画素電極20(表示内容書換手段、電圧印加手段)とによって構成されている。尚、上記の駆動電極19はそれ自身が反射性を有する反射電極であってもよい。また、駆動電極19と透明画素電極20とは、表示に利用する液晶表示方式が同じ電圧で表示を行っても明暗の反転を示さない表示方式の場合、互いに電気的に接続されていてもよい。
上記駆動電極19と透明画素電極20とは、表示に用いる電圧を各画素単位で制御するTFT素子21のドレイン端子22に接続されている。また、駆動電極19には、透過表示用開口部19aが形成され、上記の駆動電極19が反射電極である場合には、この透過表示用開口部19a形成領域が透過表示部10として、透過表示に用いられる。
上記駆動電極19の下層には、TFT素子21、配線23および配線24、補助容量部26および補助容量線27が配置されている。但し、これらの構成要素には金属等の遮光性のある材質が用いられるため、本実施の形態では、これらの構成要素が透過表示用開口部19a内に配置されないように上記TFT素子基板を作製している。尚、図23(a)では、駆動電極19を二点鎖線にて示す。
また、図24に示すように、画素電極18を構成している反射表示部9に電圧を印加する、該反射表示部9の駆動電極19の主たる部分は、上記TFT素子21の駆動用の配線23・24および上記TFT素子21が形成された基板19表面(TFT素子基板面)とは、有機絶縁膜25によって隔てられている。この有機絶縁膜25は、誘電率の低い有機絶縁材料にて形成され、かつ、膜厚が3μmとなるように形成されている。これは、TFT素子21のゲート配線となる配線23やTFT素子21のソース配線となる配線24と画素電極18との間に形成される寄生容量成分が、TFT素子21の開閉動作を制御するゲート信号波形やソース信号波形を遅延させたり歪ませることを防止し、解像度の高いドットマトリクス表示を可能にするためであると同時に、本実施の形態にかかる液晶表示装置における反射表示部9および透過表示部10での光学特性を良好にするためである。
上記の画素電極18は、上記TFT素子21のドレイン端子22に接続されている。該ドレイン端子22は、n型にドープされたn+ アモルファスシリコン層であり、TFT素子21のドレイン電極として作用する。本実施の形態にかかる上記TFT素子基板では、このドレイン端子22に接するように配置されているITO層を透明画素電極20として利用し、さらにその透明画素電極20の一部を被覆するようにパターニングされた有機絶縁膜25上に、反射表示部9の駆動電極19が形成されている。つまり、図24に示すTFT素子基板を用いた透過主体半透過型の液晶表示装置では、透過表示に用いられる上記透明画素電極20と反射表示に用いられる上記駆動電極19とは、有機絶縁膜25のパターン境界部で電気的に接続されている。また、反射表示部9の駆動電極19には、表示面の鏡面化防止を目的として、図24および図25に示すように、その表面に、滑らかな凹凸が形成されていてもよい。
また、図25に示すように、上記TFT素子基板における隣り合う画素同士の境界部分では、有機絶縁膜25は、TFT素子21のソース端子28に接続された配線24を覆うように形成され、該有機絶縁膜25上に反射表示部9の駆動電極19が形成されている。
このように作製されたTFT素子基板は、有機絶縁膜25の膜厚と誘電率との関係を適切に設定することで、有機絶縁膜25を介して画素電極18と配線23・24とが形成する寄生容量成分を抑制することができるので、図23(a)に示すように、配線23・24の直上まで反射表示部9の駆動電極19を伸ばすことが可能である。この場合、隣り合う画素電極18同士の間隙を狭く設計することが可能になり、画素間隙では、配線23・24から液晶層1への漏洩電界が少なくなるため、液晶層1の配向が乱れにくい。従って、有機絶縁膜25の膜厚と誘電率との関係を適切に設定することで、液晶層1の液晶配向の制御が画素電極18同士の境界付近まで可能になり、いわゆる開口率の高い透過主体半透過型の液晶表示装置のTFT素子基板を作製することができる。本実施の形態では、上記有機絶縁膜25を、比誘電率が3.5の有機絶縁材料にて膜厚が3μmとなるように形成した。
上述のようにして、本実施の形態では、透過表示に利用できる面積が画素全体の面積の45%、反射表示に利用できる面積が画素全体の38%を占めるTFT素子基板を作製した。該TFT素子基板は、従来より広く用いられている透過型のTFT液晶表示装置の透過表示部の開口率が50%前後であることと比較して、ほぼ同等の透過表示部10の割合を確保し、かつ、反射表示部9の表示光強度が透過表示光に加算されて表示を行うため、表示に利用できる光の利用効率の高い透過主体半透過型の液晶表示装置のTFT素子基板であると言える。
このように、本実施の形態で高い光利用効率が実現できるのは、反射表示部9に、TFT素子21や配線23・24、補助容量部26、補助容量線27等の、光を透過しない構成要素を配置することが可能であるためであり、これらの構成要素によって液晶表示に利用する光が損なわれないためである。
次に、このように作製されたTFT素子基板に対向させて用いるカラーフィルタ基板について図26(a)および図26(b)を参照して以下に説明する。
上記カラーフィルタ基板には、図26(a)および図26(b)に示すように、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ61R・61G・61Bが形成されている。これら3色のカラーフィルタ61R・61G・61Bは、各々、顔料を分散した光感光性の樹脂によって形成され、フォトリソグラフィー技術によって、ガラス基板62上に、TFT素子基板の画素に合わせたストライプ状の平面形状に形成されている着色層であり、各色毎に隔てて形成されている。
さらに、上記ガラス基板62におけるカラーフィルタ61R・61G・61B形成面上には、図26(b)に示すように、これらカラーフィルタ61R・61G・61Bを覆うように、透明アクリル系樹脂によって平滑化層501が設けられ、その上に、TFT素子基板における画素電極18の対向電極502(表示内容書換手段、電圧印加手段)として、140nm厚のITOが、所定の領域以外を覆う遮蔽マスクを用いて、スパッタリングによって成膜されている。これにより、上記カラーフィルタ61R・61G・61Bは、各色毎に透明な領域で隔てられている。
上記カラーフィルタ基板とTFT素子基板との重ね合わせの位置関係は、図26(a)に示す通りであり、TFT素子基板の反射表示部9に形成された駆動電極19の透過表示用開口部19a(即ち、透過表示部10)が、R、G、Bのストライプ状のカラーフィルタ61R・61G・61Bによって完全に覆われる一方、反射表示部9では、上記駆動電極19におけるカラーフィルタ61R・61G・61Bの延伸方向の部分のみが上記カラーフィルタ61R・61G・61Bによって覆われ、このカラーフィルタ61R・61G・61B間の透明領域は、反射表示部9に形成された駆動電極19のその他の領域(上記カラーフィルタ61R・61G・61Bの延伸方向以外の部分)に対向配置されている。
図27に、反射表示部9および透過表示部10とカラーフィルタ61R・61G・61Bとの配置について、上記カラーフィルタ基板とTFT素子基板とを組み合わせて示す。図27は、カラーフィルタ基板とTFT素子基板とを液晶表示装置として使用する位置に重ね合せ、上記カラーフィルタ基板とTFT素子基板とを図26(a)におけるC−C’の位置で切断した、上記図26(a)に記載の液晶表示装置の要部のC−C’線矢視断面図である。
このように、透過表示部10には、各々、R、G、Bの何れかのカラーフィルタ61R・61G・61Bが形成され、反射表示部9における上記カラーフィルタ61R・61G・61Bの延伸方向以外の部分は、上記カラーフィルタ61R・61G・61B間の透明領域に対応している。
これにより、反射表示部9の一部に、透過表示に用いるカラーフィルタ61R・61G・61Bと同様のカラーフィルタ61R・61G・61Bが作用し、残りの反射表示部9には、カラーフィルタ61R・61G・61Bは作用しない。これによって、反射表示に対しても色彩表示(カラー表示)が可能になり、かつ、反射表示部に必要な反射率が確保できる。
尚、前記図26(a)および図26(b)に示すように作製されたカラーフィルタ基板を透過した光に現れる透過色は、R、G、B、各々の画素毎に、透過型液晶表示装置において用いられるR、G、Bの透過色と同様の色彩を有していてもよいし、さらに用途に応じて適宜調整されてもよい。
上記図26(a)および図27に示すTFT素子基板とカラーフィルタ基板との組み合わせにおいては、透過表示部10は、全て、カラーフィルタ61R・61G・61Bを通過する光で表示を行い、反射表示部9は、その一部は透過表示部10と同様のカラーフィルタ61R・61G・61Bを用いた表示を行い、残りの部分で、カラーフィルタ61R・61G・61Bを用いないで表示を行っている。これは、反射表示部9に透過表示部10のカラーフィルタ61R・61G・61Bをそのまま用いると明度が不足するため、カラーフィルタ61R・61G・61Bを用いない部分を反射表示部9に設け、明度を補うことを目的としているためである。
さらに、本実施の形態のように、反射表示部9には、カラーフィルタ61R・61G・61Bを表示光が2回通過することを考慮して、透過表示部10におけるカラーフィルタ61R・61G・61Bよりも明度の高いカラーフィルタ61R・61G・61Bを設けてもよい。
また、本実施の形態では、使用目的に合わせて、少なくとも透過表示部10にカラーフィルタ61R・61G・61Bを形成し、反射表示部9にはカラーフィルタ61R・61G・61Bを設けない領域(部分)を有する構成としてもよく、透過表示部10にのみカラーフィルタ61R・61G・61Bを用いて反射表示部9にはカラーフィルタ61R・61G・61Bを設けない構成としてもよい。
反射表示部9にカラーフィルタ61R・61G・61Bを設けない構成とする場合、透過表示に必要な表示電圧信号は色彩表示に適した信号であり、反射表示に必要な表示電圧信号は、白黒表示に適した信号である。このため、例えば、R、G、Bのそれぞれの画素が明度に寄与する割合が、透過表示部10では各色の視感透過率(Y値)に比例するが、反射表示部9では、各画素で全く等しくなるといった駆動上の問題点が生じる。
つまり、例えば、Bの画素だけが明表示である場合とGの画素だけが明表示である場合との表示の明度を比較した場合には、カラーフィルタ61R・61G・61Bが配置された透過表示部10では視感透過率を考慮した明度が異なっているが、カラーフィルタ61R・61G・61Bが配置されていない反射表示部9では明度が同じになってしまうという不具合である。
このような不具合を防止する方法としては、透過表示に用いるカラーフィルタ61R・61G・61BのR、G、Bの各色のY値に合わせて、反射表示部9の色彩表示を行わない領域の面積を、R、G、Bの各画素ごとに変更する方法が挙げられる。これにより、R、G、Bの各画素における反射表示部9の白黒表示からの明度への寄与を反射表示部9の面積を変更することによって調整し、この反射表示部9の面積に基づく白黒表示の明度を各色の表示輝度に反映させることができる。
また、反射表示部9のカラーフィルタ被覆率を小さい順からG、R、Bの順になるように設計することによっても同様の効果がある。この方法によれば、さらに、通常の偏光板に見られる若干の緑色の着色を補正できるという利点もある。また、図26(a)に示すようにカラーフィルタ基板とTFT素子基板とを重ね合わせて配置する場合、TFT素子基板とカラーフィルタ基板との重ね合わせの位置精度が比較的大きく取れるという利点もある。これは、一つの画素の両側に反射表示部9のカラーフィルタ非形成部が存在するために、それらのどちらかが位置ずれによって増加した場合には他方が減少するためである。
以上のようなTFT素子基板とカラーフィルタ基板とを用いると、透過表示を行っている場合には、背景照明手段としての照明装置(バックライト)の併用により、従来の透過表示のTFT液晶表示装置と同様の表示が可能になり、さらに、周囲光が非常に強い場合にも反射光が透過表示の表示内容に近い表示を行っているために、表示内容の確認が可能になり、周囲光が強い場合でもウォッシュアウトがなく、視差のない高解像度のカラー液晶表示装置を実現することができる。
次に、TFT素子基板とカラーフィルタ基板との構成を変更して、主たる使用状況を周囲光の反射光を表示に用いて消費電力の少ない液晶表示装置として用い、周囲光の強度が十分でない場合にのみ透過表示を用いるような反射主体半透過型の液晶表示装置の基板構造について、図28、図29(a)および図29(b)を参照して以下に説明する。
図28は、本実施の形態7にかかる反射主体半透過型の液晶表示装置を実現するためのTFT素子基板の要部平面図であり、反射を主体としたTFT素子基板の構成を示している。尚、図28では、駆動電極19を二点鎖線にて示す。
図28に示すように、上記反射主体半透過型の液晶表示装置は、駆動電極19における透過表示用開口部19aの大きさおよび透明画素電極20の大きさを、前記透過主体半透過型の液晶表示装置に用いられるTFT素子基板におけるそれよりも小さく設定した以外は、前記透過主体半透過型の液晶表示装置と同様の構成を有している。
つまり、上記反射主体半透過型の液晶表示装置においても、液晶層1(図1および図4参照)を駆動する画素電極18は、図28に示すように、反射表示部9の駆動電極19とITOからなる透明画素電極20とによって構成されており、上記駆動電極19と透明画素電極20とは、表示に用いる電圧を各画素単位で制御するTFT素子21のドレイン端子22に接続されている。また、駆動電極19には、透過表示用開口部19aが形成され、上記の駆動電極19が反射電極である場合には、この透過表示用開口部19a形成領域が透過表示部10(図24、図25、および図27参照)として、透過表示に用いられる。
また、上記駆動電極19の下層には、TFT素子21、配線23および配線24、補助容量部26および補助容量線27が配置され、これらの構成要素は上記透過表示用開口部19a内に配置されないように配置されている。
但し、図28に示すTFT素子基板は、図23(a)〜図27に示す前記透過主体半透過型の液晶表示装置に用いられるTFT素子基板よりも、透過表示部10の割合がより小さく、反射表示部9(図24、図25、および図27参照)の割合が大きくなるように設定されている。
このようにして、本実施の形態では、反射主体半透過型の液晶表示装置用のTFT素子基板として、透過表示に利用できる面積が画素全体の面積の13%、反射表示に利用できる面積が画素全体の70%を占めるTFT素子基板を作製した。
上記反射主体半透過型の液晶表示装置用のTFT素子基板における透過表示部10の割合は13%と、前記透過主体半透過型の液晶表示装置用のTFT素子基板における透過表示部10の割合と比較して小さい。しかしながら、該TFT素子基板を用いた反射主体半透過型の液晶表示装置は、反射表示によって表示内容が確認できない場合に限って透過表示を行う場合には、背景照明手段としての照明装置(バックライト)の点灯時間の制限により消費電力の低減を図ることができるため、十分な実用性を確保することができる。
次に、このTFT素子基板と組み合わせて用いるカラーフィルタ基板の構成について、図29(a)および図29(b)を参照して以下に説明する。
図29(a)および図29(b)に示すように、反射主体半透過型の液晶表示装置用のカラーフィルタ基板にも、図26(a)および図26(b)に示す透過主体半透過型の液晶表示装置用のカラーフィルタ基板と同様に、ガラス基板62上に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ61R・61G・61Bがストライプ状に形成され、上記ガラス基板62におけるカラーフィルタ61R・61G・61B形成面上には、これらカラーフィルタ61R・61G・61Bを覆うように、透明アクリル系樹脂によって平滑化層501が設けられ、その上にTFT素子画素電極の対向電極502として、ITOが、所定の領域以外を覆う遮蔽マスクを用いて、スパッタリングによって成膜されている。
但し、図29(a)および図29(b)に示す反射主体半透過型の液晶表示装置用のカラーフィルタ基板は、図26(a)および図26(b)に示す透過主体半透過型の液晶表示装置用のカラーフィルタ基板とはカラーフィルタ61R・61G・61Bの平面形状および各色毎の分光透過率が異なるように設定されている。
具体的には、反射主体半透過型の液晶表示装置用のカラーフィルタ基板では、TFT素子基板の反射表示部9をカラーフィルタ61R・61G・61B(着色層)で全て覆うようにカラーフィルタ61R・61G・61Bが形成されており、かつ、このカラーフィルタ61R・61G・61Bは、反射表示において良好な表示を示すように、反射表示部9では表示光がカラーフィルタ61R・61G・61Bを2回通過することを考慮し、表示光がカラーフィルタ61R・61G・61Bを2回通過して良好な明度になるように高明度に作製されている。
このため、反射表示部9では、上述したように反射表示部9の割合の大きいTFT素子基板と、上述したようにそれに合わせたカラーフィルタ基板との組み合わせによって、良好な反射表示が実現する。
また、透過表示部10では透過表示用開口部19aの割合は小さいが、背景照明手段としての照明装置(バックライト)の併用により、周囲光が不十分な場合に限って使用する透過表示においても、表示内容を確認することができる。この点で、本実施の形態にかかる反射主体半透過型の液晶表示装置は、従来の反射型液晶表示装置と異なっている。本実施の形態にかかる反射主体半透過型の液晶表示装置は、反射表示用に調整されたカラーフィルタ61R・61G・61Bによって透過表示を行った場合、彩度が不十分ではあるものの、表示色の確認は可能である。
そこで、上記反射主体半透過型の液晶表示装置にてカラー表示を行う場合、各画素には、少なくとも反射表示部にカラーフィルタ61R・61G・61Bを配してカラー表示を行い、かつ、透過表示部10には、カラーフィルタ61R・61G・61Bを用いないか、または、透過表示部10の少なくとも一部に反射表示部9に配したカラーフィルタ61R・61G・61Bと同等以上の彩度を有するカラーフィルタ61R・61G・61Bを配することが特に有効である。
このように、上記反射主体半透過型の液晶表示装置では、少なくとも反射表示部にカラーフィルタ61R・61G・61Bを形成し、透過表示部10はカラーフィルタ61R・61G・61Bを設けない領域(部分)を有する構成としてもよく、透過表示部10にはカラーフィルタ61R・61G・61Bを用いずに、透過表示部10で白黒表示を行ってもよい。後者の場合、光の透過率が上昇することから、透過表示部10をさらに小さく設定することが可能である。これにより、反射表示部9の面積をより大きく確保することができ、通常使用時の反射表示においてより良好な表示を得ることができる。
この場合、透過主体半透過型の液晶表示装置と同様に、上記反射主体半透過型の液晶表示装置においても、色彩表示を行わない表示部の面積、即ち、この場合は、透過表示部10の色彩表示を行わない領域の面積を、カラーフィルタ61R・61G・61BのR、G、Bの各色のY値に合わせて、R、G、Bの各画素ごとに変更してもよい。つまり、R、G、Bの各画素における透過表示部10の白黒表示の明度への寄与を、視感透過率を考慮して適正に設定するために、R、G、Bの画素毎に透過表示面積の割合が異なるように、上記の各基板を作製してもよい。
一方、背景照明手段としての照明装置(バックライト)点灯時の消費電力は増すものの、該照明装置(バックライト)の照明光を十分に強くすることで、透過表示部10に透過表示に合わせた高彩度のカラーフィルタを用いることも可能である。この場合、彩度のみならず、透過表示の色再現性を確保することもできる。何れの場合においても、上記照明装置(バックライト)の点灯時間を最小限にすることは、消費電力を低減させるために重要である。
以上のように、本実施の形態によれば、通常の使用においては消費電力を削減することができると共に、反射表示部9でウォッシュアウトを起こすことがなく、また、必要に応じて、背景照明手段(バックライト)を用いた透過表示を行うことができる反射主体半透過型の液晶表示装置を実現することができる。
尚、上記の説明では、アクティブマトリクス方式のスイッチング素子としてTFT素子21を用いると共に、該TFT素子21として、ボトムゲート型のアモルファスシリコンTFT素子を例に挙げて説明したが、本実施の形態において用いられる上記スイッチング素子としては、特にこれに限定されるものではなく、例えば、ポリシリコンTFT素子や、2端子素子であるMIM(Metal Insulator Metal )素子等であってもよい。また、これらのアクティブ素子を必ずしも用いる必要はないことは言うまでもない。
また、本実施の形態にかかる各液晶表示装置においては、上述したように、表示用電極である駆動電極19と配線23・24とを有機絶縁膜25で隔てた構造を有するTFT素子基板を用いることにより、有機絶縁膜25の膜厚だけ反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚を変更することが可能である。しかも、これらの液晶表示装置においては、上記有機絶縁膜25の膜厚を、TFT素子基板の配線抵抗、寄生容量の点から高容量表示が可能となる3μm程度の値に設定しても、前記実施の形態1および2に示したように、上記反射表示部9と透過表示部10とで共に良好な表示を実現することが十分に可能な液晶層厚差を得ることができる。
従って、図23(a)または図28に記載した構造を有するTFT素子基板と実施の形態1または2に記載の液晶表示方式とを採用することにより、高容量表示が可能な液晶表示装置を実現することができる。
さらに、上述したような有機絶縁膜25を用いた構造のTFT素子基板は、透過表示のみの通常のTFT素子駆動方式の液晶表示装置において、既に一部実用化されており、量産上も技術的課題が少なく、実用性が高い。
尚、本願発明者らは、反射型液晶表示装置において、表示面の鏡面化防止等の目的で、反射膜に滑らかな凹凸を付与し、良好な反射特性の反射膜の作製に関し検討を重ねている。この結果、本発明において用いる有機絶縁膜25においても、同様の凹凸面の作製が可能であることを見い出し、図23(a)〜図27に示す透過主体半透過型の液晶表示装置用のTFT素子基板においては、反射表示部9に対応する部分に凹凸を形成している。
以上のように、本実施の形態では、液晶表示装置の使用形態に、透過主体半透過型と反射主体半透過型との二通りの使用形態があり、主たる表示を透過表示にて行うか反射表示にて行うかによって、透過表示部と反射表示部との表示面積の比率や、カラー表示の場合のカラーフィルタの色彩の設計がそれぞれ異なることを説明した。
そこで、以下の実施の形態8では、本発明にかかる液晶表示装置における透過表示部と反射表示部との比率に関して説明する。
〔実施の形態8〕
透過表示部と反射表示部との比率は、視認性を考慮して設定される必要がある。人の視覚の適応現象を考慮した、視覚によって知覚される明るさ(知覚明度)は、Stevens 等(“Brightness Function : Effect of Adaptation”, Journal of the Optical Society of America, Vol. 53, No.3, p375) によって調査されている。この文献によると、人間の目は同じ輝度のものを見ているときであっても、知覚される明るさは順応している明るさに依存し、そこには数量的な関係があることが判る。
図30に、Stevens 等の文献から単位を変換して作製した、5bril〜45brilまでの等値の知覚明度を与える順応輝度とサンプル輝度との関係を示す。図30において、横軸は、これからサンプルを観察する人が、それまでに順応している順応輝度(単位:cd/m2 )を示し、縦軸は、その人に提示されたサンプルの輝度(サンプル輝度(単位:cd/m2 ))を示している。
図30において、点Aは、1cd/m2 の順応輝度に順応した人が10cd/m2 の輝度面を有するサンプルを観察したときの知覚明度であり、点Bは、1700cd/m2 の順応輝度に順応した人が300cd/m2 の輝度面を有するサンプルを観察したときの知覚明度を表している。図30から、点Aと点Bとで知覚明度が共に同じ値(9.4bril)であることから、人の知覚的な明度は、表示面の輝度だけでなく、順応輝度によっても影響されることが判る。
そこで、次に、液晶表示装置の表示面の観察者の順応について考察する。
先ず、観察者が順応する対象について考察する。人が、何らかの物を観察してその物の明るさに順応する場合、その順応する対象は、視環境の周囲の視認対象となる物の表面の輝度であり、この視認対象となる物の表面の輝度は、一般的には、様々な環境条件に依存する。しかしながら、一つの指標として、順応対象を考慮すること、即ち、観察対象物の表面が周囲光を反射する反射面と仮定し、この場合を考慮することは有用である。この理由は、室内であっても、屋外であっても、人が、発光している光源そのものを見てそれに順応する状況が、その光源によって照らされた物の反射面に順応する状況よりも少ないと考えることが自然であるためである。以下、視覚を観察対象物の反射面に順応させているような観察者の順応について考察する。
観察対象物の輝度面が反射面である場合、図30に記載の順応輝度とは、観察者が順応する対象面を照明する照明光源による、その対象面での照度に一定の値を乗じた値で示される。照度をL(単位:ルクス(lux))、輝度をB(単位:cd/m2 )とした場合、完全拡散反射面に対する反射率がRの反射率を有する面の輝度(B)は、B=L×R/πとなる。ここでは、通常の人間の観察対象の平均的な反射率を有しているといわれている、マンセル色票N5の面の反射率を用い、ある照度によって照らされたマンセル色票N5の面の輝度を順応輝度として考慮することが適当である。この場合、Rは0.2となる。
さらに、観察対象の代表であるマンセル色票N5の面を照明している照明光源は、順応対象、即ち、マンセル色票N5の面だけではなく、その順応条件のもとで知覚明度が評価される対象サンプル面も同時に照明していると仮定する。この仮定によって、液晶表示装置を観察する場合の反射表示部の知覚明度が、順応輝度を通じて、その液晶表示装置を照明する照度と結びつく。これによって、心理物理実験のデータに基づいて、反射率や、反射表示部の面積の割合の具体的な選択が可能となる。
本願発明者等の検討によると、知覚明度の具体的な目安は、表9に示すような明度に換言できる。これは、実際に順応輝度とサンプル輝度との組み合わせをいくつか再現し、このような明度表現が適当であるとの結論に至ったものであり、知覚明度による反射表示部の設定の尺度となる。
ここで、反射型液晶表示装置の代表的な反射率(R)は、偏光板方式で30%程度となるため、この数値を使用して、本発明にかかる半透過型の液晶表示装置の動作について説明する。
図30に記載の直線601は、反射率30%の液晶表示装置の表示の動作を示している。つまり、観察者が順応する輝度面を照明する照明光源の照度をL(単位:ルクス)とした場合、マンセル色票N5の面による順応輝度は、該マンセル色票N5の面の反射率(R=20%)が、同じ照明によって照らされた完全拡散反射面の輝度(L/π)にかかるため、0.2×L/πとなる。同様に、同じ照明によって照らされた反射率が30%の液晶表示装置(対象サンプル)の表示面のサンプル輝度は、0.3×L/πとなる。つまり、照度(L)を様々に変化させて、横軸0.2L/π、縦軸0.3L/πの関係を満たす点を各々プロットして得られた直線が、直線601である。また、30%の反射率を有する上記の液晶表示装置を対象サンプルとした場合と同様に、10%の反射率を有する液晶表示装置を対象サンプルとして、横軸0.2L/π、縦軸0.1L/πの関係を満たす点を各々プロットして得られた直線が直線602である。
次に、30%の反射率を有する上記の液晶表示装置の使用可能環境について以下に考察する。日常生活において人が体験する最も明るい照明条件である晴天時の直射目光の照度(約10万ルクス)においては、マンセル色票N5の面による順応輝度は、約6000cd/m2 となる。この時、30%の反射率を有する液晶表示装置の表示面の知覚明度は、図30に示すように、順応輝度6000cd/m2 を示す直線605と直線601との交点における知覚明度である約30brilとなり、表9に示したように、眩しさを感じる値である。また、これより暗い照明の下での知覚明度は上記の知覚明度よりも低い値であり、知覚明度10brilを確保出来る照度は、対応した順応輝度の数値を用いて前述した式を逆算することにより、約450ルクスとなる。つまり、仮に10bril以上、30bril以下の明表示を必要とする場合、最低照度が450ルクス、最大照度は10万ルクスとなり、上記の液晶表示装置は、通常の日中の屋外および450ルクス以上の照度となる室内(例えば450ルクス以上の照明をつけた室内)では使用可能であるが、それより暗い所では、照度が十分ではなく、知覚困難となる。
また、反射率を50%としたときの順応輝度とサンプル輝度との関係を直線603(図30)にて示す。該直線603から判るように、通常の白色の紙の様に、50%以上の反射率で反射表示が実現した場合、1800ルクス以上(例えば、明るい窓際の室内、直射日光下等)の高照度環境下では知覚明度が30brilを超えてしまう。これは、このような環境では白色の紙が眩しく感じることを示している。従って、このように50%以上の反射率を有する表示面を高照度環境下で使用することは視認性の点から不適当であり、このような環境下で反射表示を行う場合、表示面(輝度面)の反射率は30%程度であることが望ましいことが判る。
一方、直線601・602で示される、反射率30%での反射表示と反射率10%での反射表示とにおいて、10brilの知覚明度を与える照度は、各々、約450ルクスと3000ルクスである。つまり、反射率が1/3になると、6.7倍明るい照明を与える必要が生じる。このことは、液晶表示装置の反射率が落ちたために照明を強くすると、人の目が、液晶表示装置以外の明るい反射体に順応し、反射率の変化比の逆数以上に照明を強くする必要が生じることを示している。
さらに、図30から判るように、一定の輝度を有する表示体(例えば一般の発光型表示装置)における表示は、特に、周囲が明るい場合には、非常に暗く感じるという問題点を有している。
しかしながら、本発明にかかる半透過型の液晶表示装置では、透過表示部における背景照明光と透過率とによって決定される一定の輝度と、反射表示部における一定の反射率によって決定される輝度(サンプル輝度)との和が表示に利用される。つまり、本発明にかかる半透過型の液晶表示装置では、例えば、図30に示す曲線604に示す表示輝度による表示が実現する。この曲線604に示すように、本発明にかかる半透過型の液晶表示装置では、照明の照度が高い場合には、反射表示によって視認性を確保し、照明の照度が低い場合には、背景照明手段としての照明装置(バックライト)を使用した透過表示により、視認性を確保することができる。
さらに、上記半透過型の液晶表示装置の表示輝度を用いて照度を変化させて知覚明度を求めた結果を図31に示す。また、比較として、透過型の液晶表示装置における照度と知覚明度との関係、並びに、反射型の液晶表示装置における照度と知覚明度との関係を、図31に併せて示す。ここで、上記知覚明度の計算は、表示領域全てが反射カラー表示の場合の反射率を30%、表示領域全てが透過カラー表示の場合の透過率を7.5%、バックライト輝度を2000cd/m2 、観察者が順応している面での照度は、液晶表示装置の表示面での照度に等しく、順応対象面の反射率は、マンセル色票N5の明度を想定して20%とした。
図31において、照度を変化させたときの知覚明度の値は、上記半透過型の液晶表示装置における表示可能領域の反射表示部の割合(Sr)によって異なる。曲線611は、Sr=0、即ち、透過表示のみで反射表示を行わない通常の透過型液晶表示装置における照度と知覚明度との関係を示す。該透過型液晶表示装置における表示面の輝度は、150cd/m2 であり、照度が約6000ルクス以上のときには、知覚明度が10bril以下になる。従って、透過表示部の一部を反射表示部に変更することにより、10bril以上の知覚明度を確保するためには、曲線612に示すように、Sr=0.1、即ち、表示可能領域の1/10の面積を反射表示部とする必要がある。
また、曲線613は、Sr=1、即ち、反射表示のみを行う反射型液晶表示装置における照度と知覚明度との関係を示す曲線である。該反射型液晶表示装置の表示面の反射率は完全拡散反射面との比較で30%であり、照度が約450ルクス以下のときには、知覚明度が10bril以下になる。従って、反射表示部の一部を透過表示部に変更することにより、10bril以上の知覚明度を確保するためには、曲線614に示すように、Sr=0.9、即ち、表示可能領域の1/10の面積の透過表示部を設ける必要がある。
また、図31によれば、Sr値0.1〜0.9において、知覚明度が10bril以上、30bril未満の良好な表示を行うことができることが判ると共に、上記Srが0.30(曲線615)あるいは0.50(曲線616)に設定されている場合、知覚明度が20bril以上、30bril未満の、明るい良好な表示を行うことができることが判る。
また、液晶表示装置の表面には表面反射が生じる。この表面反射による表示妨害の作用は、周囲の照度が大きいほど顕著である。上記図31に、この表面反射による知覚明度と照度との関係を併せて示す(曲線617)。表面反射は、表面処理によって大きく影響されるが、曲線617では、屈折率1.5の媒体と空気との界面に生じる表面反射が、完全拡散面と同様の拡散性を有している場合(即ち、表面反射による反射率が4%の場合)の、その面の知覚明度と照度との関係を示す。従って、表面反射を考慮すれば、反射表示部の面積は、反射表示部の面積と透過表示部の面積との和の30%以上(即ち、Sr≧0.3)であることが、より良好な表示を行う上で好ましい。
以上の解析によれば、本実施の形態によれば、反射表示部と透過表示部とで共に色彩表示を行う場合、反射表示部の面積と透過表示部の面積との和における反射表示部の面積の割合が30%以上、90%以下である場合に良好な表示を行うことができることが判る。
尚、反射表示および透過表示のうち、少なくとも一方にカラー表示を用いない場合にも、上述した方法と同様の方法によって、良好な表示を行うための各表示部の面積の割合を解析することが可能であるが、何れの場合にも、反射表示部の面積と透過表示部の面積との和における反射表示部の面積の割合が上述した範囲内にある場合に良好な表示を実現することができる。尚、前述の実施の形態7に記載の透過主体半透過型の液晶表示装置および反射主体半透過型の液晶表示装置ともに、反射表示部の面積と透過表示部の面積との和における反射表示部の面積の割合は、上記の好ましい割合にて作製されている。
〔実施の形態9〕
本実施の形態では、前記実施の形態1および実施の形態2に記載の液晶表示方式を用いたアクティブマトリクス型の液晶表示装置、より具体的には、TFT素子基板を用いてカラー表示を実現した液晶表示装置について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
本実施の形態にかかる上記アクティブマトリクス型の液晶表示装置の作製工程は、TFT素子基板を作製する工程と、カラーフィルタ基板を作製する工程と、これらTFT素子基板およびカラーフィルタ基板を用いて液晶注入用の液晶セルを作製する工程と、得られた液晶注入用の液晶セルに液晶を注入して液晶表示装置として組み立てる工程とからなっている。
そこで、先ず、本実施の形態において以下の各実施例にかかるアクティブマトリクス型の液晶表示装置の製造方法について、上記TFT素子基板の作製工程から順に説明する。
TFT素子基板は、図23(a)〜図25に示すように、透光性を有する基板29上に、以下に示す工程によって、各画素毎にTFT素子21が形成された構成を有している。
上記TFT素子21を形成する上記基板29としては、アルカリ成分を含まない無アルカリガラス等からなるガラス基板を用いた。先ず、この基板29上に、ゲート配線としての配線23や補助容量線27となるタンタルをスパッタリングによって成膜し、さらにパターニングすることにより、配線23および補助容量線27を形成した。このとき、これら配線23および補助容量線27は、各配線(配線23、補助容量線27)の段差がなだらかになるようにパターニングし、これらの配線の上に形成される、後述の配線24の被覆性を良好にすることで断線を防止している。
さらに、上記配線23および補助容量線27には、陽極酸化工程によって酸化タンタル(Ta2 O5 )層を形成し、その上に、ゲート絶縁膜となる窒化シリコンを成膜した。さらに、その上に、TFT素子21のスイッチング領域となる真性半導体層(i層)としての水素化アモルファスシリコン層とエッチングストッパー層としての窒化シリコン層とを、この順に、モノシランガスを用いた化学気相成長(CVD)法およびスパッタリング(窒化シリコン)によって形成した。次に最上層のエッチングストッパー層としての窒化シリコン層をパターニングしたのち、フォスフィンガスを混合したモノシランガスを用いたCVDによって、TFT素子21のソース端子28およびドレイン端子22となるn+ 層を形成した。次いで、上記n+ 層およびi層をパターニングし、さらにゲート絶縁膜のパターニングを行った。このとき、配線23(ゲート配線)における表示領域外部の接続端子部分の窒化シリコンを併せて除去した。
次に、透明画素電極20となるITOを、ソース端子28およびドレイン端子22に接触するようにスパッタリングによって成膜し、さらに、ソース配線としての配線24となるタンタルをスパッタリングによって成膜した。このタンタルをパターニングして配線24とし、さらに、その下層に成膜されているITO膜をパターニングして透明画素電極20を形成した。この透明画素電極20は上述したようにソース端子28およびドレイン端子22と接しており、これらの端子(ソース端子28、ドレイン端子22)と配線23・24とのオーミックコンタクトを形成する役割も果たしている。
次に、上記TFT素子21上に反射表示部用絶縁膜として、表面に凹凸構造を有する有機絶縁膜25を形成し、この有機絶縁膜25に設けた透過表示用開口部となるコンタクトホールで透明画素電極20と接するように反射表示部9の駆動電極19となるアルミニウムをスパッタリングで成膜し、得られたアルミニウム膜をドライエッチングでパターニングすることにより、上記有機絶縁膜25表面の凹凸構造と同様の凹凸構造を有する、反射電極としての駆動電極19を形成した。
上記の各パターニング工程では、各構成要素を、フォトリソグラフィーの手法で設計に基づく必要な形状に形成している。これらフォトリソグラフィー工程には、感光樹脂膜(レジスト)塗布・乾燥工程、パターン露光工程、現像工程、レジスト焼成硬化工程、ドライエッチング工程やウェットエッチング工程、レジスト剥離除去工程を組み合わせて用いた。
また、反射表示部9に形成される凹凸構造は、絶縁性の光重合性樹脂材料を塗布し、パターン露光工程および現像工程および硬化処理工程を用いて作製した。つまり、現像工程でドット状のパターンが形成されるとともに、このドットパターンの上にさらに同様の材料にて平滑化層を形成した。尚、上記有機絶縁層25は、透過表示部10には形成していない。
上記のような工程で作製したTFT素子基板には、TFT素子21が各画素に配され、各画素は反射表示部9と透過表示部10とで構成されている。ここで、TFT素子基板は、図23(a)に示すTFT素子基板と図28に示すTFT素子基板との2種類を作製し、その透過表示部10と反射表示部9との割合は、前記実施の形態7において、各々の液晶表示装置の説明にて記載した通りの割合とした。
次に、カラーフィルタ基板の作製工程について説明する。カラーフィルタ基板の作製工程は、基板に、R、G、Bの着色層(カラーフィルタ)を作製する工程、該カラーフィルタ上に平坦化層を作製する工程、該平坦化層上に、前記TFT素子21によって駆動されるTFT素子基板側の透明画素電極20と対向する対向電極を形成する工程とからなっている。
本実施の形態において、上記カラーフィルタ基板は、図26(b)または図29(b)に示すように、ガラス基板62上に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ61R・61G・61Bをストライプ状に形成し、上記ガラス基板62におけるカラーフィルタ61R・61G・61B形成面上に、これらカラーフィルタ61R・61G・61Bを覆うように平滑化層501を形成し、その上に、対向電極502を形成することにより作製した。
上記カラーフィルタ基板の形成において、カラーフィルタ61R・61G・61Bは、光感光性樹脂に顔料を分散させた樹脂材料をフォトリソグラフィー法によりパターニングして形成した。尚、該カラーフィルタ61R・61G・61Bの製造方法としては、上記した顔料の分散を用いる方法以外の方法、例えば、電着法、フィルム転写法、染色法等を採用することができ、特に限定されるものではない。
平坦化層501は、上記ガラス基板62におけるカラーフィルタ61R・61G・61B形成面上に、光透過率の高いアクリレート樹脂を塗布し、熱によって硬化させて形成した。また、この平坦化層501上に形成された対向電極502は、TFT素子21により駆動される画素電極18に対向する対向電極であり、透明電極としてITOをスパッタリングによりマスクを通して堆積させ、必要な平面形状とすることにより形成した。
本実施の形態では、上記カラーフィルタ基板は、透過表示に合わせて彩度を高く設定したカラーフィルタ基板と、反射表示に合わせて明度を高く設定したカラーフィルタ基板との2種類を作製した。そして、彩度を高く設定したカラーフィルタ基板は、図26(a)および図26(b)に示すパターンに作製し、明度を高く設定したカラーフィルタ基板は、図29(a)および図29(b)に示すパターンに作製した。
次に、以上のようにして作製されたTFT素子基板とカラーフィルタ基板とを用いて液晶表示装置を作製するために、これらTFT素子基板とカラーフィルタ基板とを対向配置させて液晶注入用の液晶セルを作製する工程について説明する。
該工程においては、先ず、TFT素子基板およびカラーフィルタ基板における互いの対向面(上記TFT素子基板におけるTFT素子21形成面およびカラーフィルタ基板におけるカラーフィルタ61R・61G・61B形成面)における液晶表示領域に、可溶性ポリイミド溶液をオフセット印刷法によって配置し、乾燥、焼成工程を経て配向膜を形成した。さらに、この配向膜に、液晶配向方向を決める配向処理をラビング法によって行った。尚、配向膜が平行配向性であるか垂直配向性であるかは、後述する各例により異なっている。
続いて、このように処理したTFT素子基板およびカラーフィルタ基板の一方に、粒径の揃った球状スペーサを散布し、他方に、液晶層を封入すると共に上記TFT素子基板およびカラーフィルタ基板を固定するための封入シール剤を印刷すると共に、TFT素子基板側からカラーフィルタ基板側に対向電極502の導通をとる導電性ペーストを配置した。
そして、上記TFT素子基板におけるTFT素子21形成面とカラーフィルタ基板におけるカラーフィルタ61R・61G・61B形成面とを対向配置し、両基板(TFT素子基板およびカラーフィルタ基板)の位置合わせを行って加圧下で封入シール剤および導電ぺーストを硬化させた。
以上の工程により、液晶注入用の液晶セルが複数配置されたマザーガラス基板21を作製し、さらに、このマザーガラス基板を分断して液晶注入用セルを作製した。
その後、液晶未注入の上記液晶セルに、真空注入法によって液晶組成物を導入し、導入した液晶層が外気と触れることがないように、液晶導入口に光重合性樹脂を塗布して紫外光によって重合硬化することで、液晶セルを作製した。
次に、TFT素子21の静電破壊防止を目的として各配線端子を短絡するようにTFT素子基板端部に配置されているショートリング部分を除去し、TFT素子21を駆動する外部回路を接続した。さらに、透過表示の光源となるバックライトを配置して本実施の形態にかかるアクティブマトリクス型の液晶表示装置を作製した。
〔実施例14〕
本実施例にかかるアクティブマトリクス型の液晶表示装置は、GH方式を用いた、透過主体半透過型の液晶表示装置であり、前記実施の形態1の実施例1におけるGH方式を、表示に用いた液晶表示装置である。
本実施例に用いた液晶組成物は、前記実施の形態1の実施例1に合わせて調製されている。つまり、本実施例では、前記実施例1に記載の二色性色素(二色性色素12)を用いた液晶組成物を使用した。また、本実施例では、配向膜に垂直配向性を有する垂直配向膜を用い、一様な垂直配向が得られるようにラビングによる配向処理を行った。尚、本実施例では、液晶組成物に二色性色素を用いたGH方式を採用しているため、上記液晶セルに位相差補償板および偏光板は貼付していない。
また、本実施例では、透過表示を主に用いるため、カラーフィルタ61R・61G・61Bは、従来の透過表示方式のカラーフィルタと同様に彩度を高く設計し、カラーフィルタ基板は、図26(a)および図26(b)に示すように配置した。このカラーフィルタ基板に組み合わせるTFT素子基板は、図23(a)に示すように、透過表示用開口部19aが大きく、透過表示部10が広く設定されたTFT素子基板を用いた。
本実施例にかかる上記の液晶表示装置では、図26(a)および図26(b)に示すように、反射表示部9における駆動電極19は、その一部(駆動電極19における、カラーフィルタ61R・61G・61Bの延伸方向においてカラーフィルタ61R・61G・61Bと対向する部分)のみが、透過表示部10となる透過表示用開口部19a形成領域と同様のカラーフィルタ61R・61G・61Bによって覆われており、カラーフィルタが無く、白色光を通過させる表示部分も有している。
このようにして作製された上記の液晶表示装置に表示信号を入力し、目視観察を行った。この結果、本実施例では、常時バックライトの点灯が必要であった。しかしながら、バックライトを点灯した場合には、明度とコントラスト比とが共に良好であり、常に十分な表示が可能であった。また、直射日光下でも表示内容の視認が可能であり、ウォッシュアウトは生じなかった。
つまり、本実施例では、周囲光の弱い環境では従来の透過型液晶表示装置と同様にバックライトによって明度が高い液晶表示装置が実現する一方、周囲光が強い場合には、反射表示部9が周囲光に比例して明度を変化させるため、表示内容の確認が可能になり、従来の発光表示装置や透過型液晶表示装置で生じるウォッシュアウトが生じず、視差のない高解像度のカラー液晶表示装置を実現することができる。また、本実施例では、視差(二重像)のない非常に良好な反射表示が実現された。
〔実施例15〕
本実施例にかかるアクティブマトリクス型の液晶表示装置は、GH方式を用いた、反射主体半透過型の液晶表示装置であり、前記実施の形態1の実施例1におけるGH方式を、表示に用いた液晶表示装置である。
本実施例でも、上記実施例14同様、液晶組成物は、前記実施の形態1の実施例1に合わせて調製されている。つまり、本実施例でも、前記実施例1に記載の二色性色素(二色性色素12)を用いた液晶組成物を使用した。また、本実施例では、配向膜に垂直配向性を有する垂直配向膜を用い、一様な垂直配向が得られるようにラビングによる配向処理を行った。尚、本実施例では、液晶組成物に二色性色素を用いたGH方式を採用しているため、上記液晶セルに位相差補償板および偏光板は貼付していない。
また、本実施例では、反射表示を主に用いるため、カラーフィルタ61R・61G・61Bは、従来の透過型液晶表示装置に用いられているカラーフィルタよりも高明度となるように作製し、カラーフィルタ基板は、図29(a)および図29(b)に示すように配置した。このカラーフィルタ基板に組み合わせるTFT素子基板は、図28に示すように、透過表示用開口部19aが小さく、反射表示部9が大きく設定されたTFT素子基板を用いた。
このようにして作製された上記の液晶表示装置に表示信号を入力し、目視観察を行った。この結果、本実施例にかかる上記の液晶表示装置は、日中の照明・外光環境下では、バックライトの点灯は必要なく、反射表示が可能であった。本実施例では、視差(二重像)のない非常に良好な反射表示が実現された。また、反射光による観察が不可能な程度に周囲光が暗い場合には、バックライトを点灯することにより、表示内容の視認が可能であった。
つまり、本実施例では、上述したように、反射表示に合わせたカラーフィルタ61R・61G・61Bおよびカラーフィルタ基板を用いているため、反射光のみによるカラー表示が可能である。このため、通常の室内照明や日中の屋外ではバックライトを消灯して反射表示のみによって使用することが可能である。また、必要に応じてバックライトを点灯することにより、照明が暗い場合でも視認性を確保することができる。
本実施の形態にかかる液晶表示装置では、従来の透過型液晶表示装置のように、バックライトを常時点灯している必要はなく、消費電力を削減することができると共に、反射表示部9でウォッシュアウトを起こすことがなく、また、必要に応じて、バックライトを用いた透過表示を行うことができる。
〔実施例16〕
本実施例にかかるアクティブマトリクス型の液晶表示装置は、液晶層の偏光変換作用を表示に用いた、透過主体半透過型の液晶表示装置であり、前記実施の形態2の実施例5における偏光板方式を、表示に用いた液晶表示装置である。
本実施例に用いた液晶組成物は、前記実施の形態2の実施例5に合わせて調製されている。また、本実施例では、液晶が注入された液晶セル(TFT液晶パネル)に、位相差補償板(位相差補償板16・17)および偏光板(偏光板14・15)を貼付した。さらに、本実施例では、ラビング法により、ラビング交差角が250度となるように、平行配向性の配向膜に配向処理を行った。
また、本実施例では、前記実施例14同様、透過表示を主に用いるため、カラーフィルタ61R・61G・61Bは、従来の透過表示方式のカラーフィルタと同様の透過色彩に設計し、カラーフィルタ基板は、図26(a)および図26(b)に示すように配置した。このカラーフィルタ基板に組み合わせるTFT素子基板は、図23(a)に示すように、透過表示用開口部19aが大きく、透過表示部10が広く設定されたTFT素子基板を用いた。
本実施例にかかる上記の液晶表示装置では、図26(a)および図26(b)に示すように、反射表示部9の駆動電極19は、その一部(駆動電極19における、カラーフィルタ61R・61G・61Bの延伸方向においてカラーフィルタ61R・61G・61Bと対向する部分)のみが、透過表示部10となる透過表示用開口部19a形成領域と同様のカラーフィルタ61R・61G・61Bによって覆われており、カラーフィルタが無く、白色光を反射させる表示部分も有している。
このようにして作製された上記の液晶表示装置に表示信号を入力し、目視観察を行った。この結果、本実施例では、常時バックライトの点灯が必要であった。しかしながら、バックライトを点灯した場合には、明度とコントラスト比とが共に良好であり、常に十分な表示が可能であった。また、直射日光下でも表示内容の視認が可能であり、ウォッシュアウトは生じなかった。
つまり、本実施例では、周囲光の弱い環境では従来の透過型液晶表示装置と同様にバックライトによって明度が高い液晶表示装置が実現する一方、周囲光が強い場合には、反射表示部9が周囲光に比例して明度を変化させるため、表示内容の確認が可能になり、従来の発光表示装置や透過型液晶表示装置で生じるウォッシュアウトが生じないことが判る。また、本実施例では、視差(二重像)のない非常に良好な反射表示が実現された。
〔実施例17〕
本実施例にかかるアクティブマトリクス型の液晶表示装置は、液晶層の偏光変換作用を表示に用いた、反射主体半透過型の液晶表示装置であり、前記実施の形態2の実施例5における偏光板方式を、表示に用いた液晶表示装置である。
本実施例でも、上記実施例16同様、液晶組成物は、前記実施の形態2の実施例5に合わせて調製されている。また、本実施例でも、液晶が注入された液晶セル(TFT液晶パネル)に、位相差補償板(位相差補償板16・17;実施例5参照)および偏光板(偏光板14・15)を貼付した。本実施例では、ラビング法により、ラビング交差角が250度となるように、平行配向性の配向膜に配向処理を行った。
また、本実施例では、前記実施例15同様、反射表示を主に用いるため、カラーフィルタ61R・61G・61Bは、従来の透過型液晶表示装置に用いられているカラーフィルタよりも高明度となるように作製し、カラーフィルタ基板は、図29(a)および図29(b)に示すように配置した。このカラーフィルタ基板に組み合わせるTFT素子基板は、図28に示すように、透過表示用開口部19aが小さく、反射表示部9が大きく設定されたTFT素子基板を用いた。
このようにして作製された上記の液晶表示装置に表示信号を入力し、目視観察を行った。この結果、本実施例にかかる上記の液晶表示装置は、日中の照明・外光環境下では、バックライトの点灯は必要なく、反射表示が可能であった。本実施例では、視差(二重像)のない非常に良好な反射表示が実現された。また、反射光による観察が不可能な程度に周囲光が暗い場合には、バックライトを点灯することにより、表示内容の視認が可能であった。
つまり、本実施例では、上述したように、反射表示に合わせたカラーフィルタ61R・61G・61Bおよびカラーフィルタ基板を用いているため、反射光のみによるカラー表示が可能である。このため、通常の室内照明や日中の屋外ではバックライトを消灯して反射表示のみによって使用することが可能である。また、必要に応じてバックライトを点灯することにより、照明が暗い場合でも視認性を確保することができる。
本実施の形態にかかる液晶表示装置では、従来の透過型液晶表示装置のように、バックライトを常時点灯している必要はなく、消費電力を削減することができると共に、反射表示部9でウォッシュアウトを起こすことがなく、また、必要に応じて、バックライトを用いた透過表示を行うことができる。
以上のように、上記実施例14〜17により、本実施の形態によれば、前記実施の形態1および実施の形態2に示した液晶表示方式を実現する高解像度のアクティブマトリクス液晶表示装置を実現することができることが示された。
尚、上記実施例14〜17ではアクティブマトリクス基板(TFT素子基板)に、有機絶縁膜25(絶縁膜11に相当)により、反射表示部9と透過表示部10とで液晶層厚が異なる液晶表示装置を作製したが、その他の本願発明による液晶表示原理によっても、同様の効果が期待できることは言うまでもない。
〔実施の形態10〕
本実施の形態では、本発明にかかる液晶表示装置に用いられるバックライトの輝度の変更について以下に説明する。
バックライトの輝度を変更する目的は、主に3通りある。
第1の目的は、視認性の確保である。前記実施の形態8に示したように、人の知覚明度は、順応輝度と表示面の輝度とによって規定される。従って、良好な視認性の表示を実現するためには、順応輝度に応じてバックライトの輝度を人の目の知覚明度に合わせて変更することが有効であり、前記実施の形態8に示すように、知覚明度が10bril以上、30bril未満となるように、順応輝度に応じて、バックライトの輝度を制御することで表示面の輝度を変更することが望ましい。即ち、上記バックライトは、表示面輝度変更手段を兼ねている。これにより、透過表示が主に表示に寄与している状況での視認性を改善することができる。ここで、前記実施の形態8において規定した知覚明度の値は、人が順応している順応輝度に比例した表示面の輝度を想定しているため、概ね、上記知覚明度にしたがってバックライトの輝度を変化させることで、良好な表示を得ることができる。
第2の目的は、消費電力の低減である。バックライトを点灯しても消灯しても視認性に大きな影響を与えないような場合がある。例えば、液晶表示装置が半透過型の液晶表示装置であり、該液晶表示装置を周囲から照明する照明光の照度が十分に高く、表示面の輝度が主に反射表示部によって維持されている場合である。このような場合、たとえ透過表示における輝度が高くても、表示面の輝度に影響しない場合があり、このような場合には、消費電力の削減の為、バックライトが消灯されることが望ましい。
第3の目的は、反射表示および透過表示のうち何れか一方にのみ色彩表示が行われている場合に、バックライトの点灯により、色彩表示と白黒表示とが切り替えられるような使用状態を意図的に造り上げることで、一つの液晶表示装置に複数の機能を持たせることである。
例えば、反射表示部にはカラーフィルタを配置せず、白黒表示を行い、透過表示部にのみカラーフィルタを配置してカラー表示を行うとき、反射表示の解像度は、カラーフィルタを用いて複数の画素で一つの白黒単位を表示する透過表示部より高くとることが可能になるため、反射表示は、高い解像度の白黒表示を行い、透過表示は、解像度は高くないが色彩表示が可能である。また、逆に、反射表示においてのみカラーフィルタが使用されるようにすることも可能である。この場合、一つの液晶表示装置で異なる用途の機能を持たせることが可能になる。従って、バックライトの点灯によって色彩表示と白黒表示とを切り替えたり、発光色を変更することで、その点灯状態によって表示内容を大きく変更することが可能である。
上述したように、バックライトの輝度は、使用目的や使用状況に合わせて、その都度、適当な信号によって制御することができる。バックライトの輝度を上述した順応輝度にしたがって変化させる場合、上記バックライトの輝度は、視認性の向上を目的として、例えば、表示面に入射する照明の照度や液晶表示装置の表示の種類等、視環境に応じて制御することが可能である。
上記バックライトの輝度を照度によって制御する場合、照度が高い場合にはバックライトを消灯し、照度が低い場合には眩しさを避けるためにバックライトを弱く点灯し、照度がその中間の場合にはバックライトを強く点灯するといった、バックライトの点灯状態の制御を行うことが望ましい。
この場合、使用者の状態等に応じて、液晶セルあるいは液晶表示装置に接続された、外部の各種機器からの信号やタイマー制御等によって、バックライトの点灯の有無や輝度の制御を行えば、不必要な電力消費を削減することができる。
さらに、バックライトの輝度の制御に際し、例えば、使用者が、上記液晶表示装置を備えた機器に対して何らかの操作を加えた場合や、それから一定の期間にのみバックライトを点灯させることで、機器全体の消費電力の削減と、使用者に対する良好な表示の提供とを両立させることができる。尚、バックライトの輝度は、上記したように表示面に入射する照明の照度以外に、他の種々の信号によって制御されていてもよい。
また、使用者が液晶セルの表示面に重ねて配置したタッチパネル(押圧座標検出型入力手段)に入力した信号によりバックライトの点灯の有無や輝度、あるいは、反射表示部や透過表示部における液晶配向を制御したり、その他の使用者に何らかの注意を促す信号に連動させてバックライトの輝度を制御することも、上述した目的を達成する上で、非常に有効である。このように、表示面の輝度を、液晶セル外部から制御することで、視認性と低消費電力との両立が可能な液晶表示装置を得ることができる。
〔実施の形態11〕
本実施の形態では、本発明の液晶表示装置の主な利用分野である携帯機器における情報入力手段としてタッチパネル(押圧座標検出型入力手段)を用いた場合の、本発明にかかる液晶表示装置の具体的な構成について説明する。尚、説明の便宜上、前記実施の形態1〜10と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態では、前記実施の形態9における実施例17の液晶表示装置にタッチパネルを重ねて、入力装置一体型の半透過型の液晶表示装置を作製した。本実施の形態にかかる入力装置一体型の液晶表示装置の構成を図32に示す。尚、本実施の形態にかかる液晶表示装置における、タッチパネル71以外の基本的な構成、即ち、液晶セルおよびバックライト13の構成は、前記実施の形態9における実施例17および前記実施の形態2の実施例5と同様であるので、ここでは省略する。
上記タッチパネル71は、透明電極層72が設けられた可動基板73と、透明電極層74が設けられた支持基板75とを備えている。これら可動基板73と支持基板75とは、透明電極層72と透明電極層74とが互いに対向すると共に、通電状態において各々の透明電極層同士が接触しないように図示しないスペーサにより、所定の間隙を有して対向配置されている。これにより、上記可動基板73に設けられた透明電極層72と上記支持基板75に設けられた透明電極層74とは、通常状態においては互いに接触しないが、上記可動基板73が指あるいはペンで指示(押圧)されることにより、指示された箇所において互いに接触するようになっている。このため、上記タッチパネル71は、可動基板73に加えられた押圧力による、上記透明電極層72と透明電極層74との接触位置(座標位置)を検出することによって入力装置として機能する。
上記タッチパネル71は、上記可動基板73上に、位相差補償板16と偏光板14とを貼付することで、位相差補償板16と液晶セルの基板4との間に、上記位相差補償板16および偏光板14と一体的に配置されている。本実施の形態では、前記実施例17における偏光板の効果を、タッチパネル71上に貼付された偏光板14にて得るために、上記タッチパネル71を構成する可動基板73および支持基板75を、複屈折の無い材料にて作製している。
また、本実施の形態では、上記の液晶表示装置を、該液晶表示装置に、タッチパネル71と液晶セルの基板4との間で押圧力伝達防止効果を持たせるべく、タッチパネル71の支持基板75と液晶セルの基板4との間に間隙を設け、この間隙を一定に保つことによって、押圧力緩衝部材を用いることなく、タッチパネル71ヘの押圧力が液晶セルに伝わらない構成とした。
このように構成した上記入力装置一体型の液晶表示装置は、バックライト13の輝度をタッチパネル71の信号によって変化させることにより、使用者が表示を観察していない場合にはバックライト13を消灯し、タッチパネル71への情報の入力に伴ってバックライト13を点灯させることが可能である。従って、本実施の形態によれば、良好な表示と消費電力の低減とを両立した液晶表示装置を実現することができた。また、本実施の形態によれば、上記偏光板14とタッチパネル71と液晶セルとを上述した順に配置することで、偏光板14による吸収が、タッチパネル71による不要反射光をも吸収し、該不要反射光を低減することができるため、視認性を向上することができる。
以上のように、第1の液晶表示装置は、対向する表面に配向手段(例えば配向膜)が施された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを有する液晶表示素子を備えた液晶表示装置であって、上記液晶層における表示に利用される任意でかつ異なる領域に同時に少なくとも二種類の異なる配向状態をとらせるための配向機構(例えば上記液晶層における表示に利用される任意でかつ異なる領域に異なる電圧を与えたり、異なる電界を生じさせる電極や、印加された電圧、あるいは、上記液晶層における表示に利用される任意でかつ異なる領域に各々設けられ、少なくとも二種類の異なる方位に配向処理された配向膜、あるいは、上記液晶層における表示に利用される領域で少なくとも二種類の異なる厚みを有するように形成された絶縁膜や基板、特定の液晶材料、各々独立して駆動されるように形成された液晶層構造、偏光板、位相差補償板、あるいはそれらの組み合わせ等)を具備し、かつ、上記液晶層において異なる配向状態を示す領域のうち少なくとも一つの領域に反射手段(例えば反射膜や反射電極)が配され、上記異なる配向状態を示す領域が、反射表示を行う反射表示部と、透過表示を行う透過表示部とに用いられている構成を有している。
上記の構成によれば、液晶配向が同時に異なる配向状態を有することで、例えば、表示に二色性色素等の色素を用いる場合には光の吸収量(吸収率)、光学異方性を用いる場合には位相差といった各光学的物理量の変調量の大きさを、液晶配向が異なる領域毎に変更することが可能になる。このため、上記の構成によれば、液晶層の配向状態に応じた光学的物理量の変調量の大きさに基づく透過率または反射率を得ることができ、これにより、透過表示部と反射表示部とで光学パラメータを独立に設定することが可能となる。従って、上記の構成によれば、視差がなく、高コントラスト比を実現することができ、周囲が暗い場合の視認性を向上させることが可能であると共に、周囲光が強い場合でも良好な視認性を得ることができる。このため、上記の構成によれば、視認性に優れ、かつ、高解像度表示が可能であり、反射光と透過光とを共に表示に利用することができる半透過型の液晶表示装置を提供することができる。
さらに、第2の液晶表示装置は、第1の液晶表示装置において、上記配向機構が、時間の経過に伴って表示内容を書き換える表示内容書換手段である構成を有している。
上記の構成によれば、表示内容書換手段と上記配向機構とを同一の手段によって実現することができ、新たな構成を付加することなく、上記第1の液晶表示装置を得ることができる。この場合、液晶配向が異なった複数の状態をとるために用いられる上記表示内容書換手段としては、時間の経過に伴って表示内容を書き換えるために現在広く用いられている電気的な液晶配向制御手段、即ち、電極等の、電圧印加に用いられる各種手段であっても可能なことは言うまでもない。この場合、例えば、透過表示部と反射表示部とで異なる電極を用いたり、電圧そのものを、透過表示部と反射表示部とで変更することにより、液晶層内に、液晶配向が異なる配向状態を有する複数の領域を設けることができる。
また、光の吸収量や光学異方性による位相差等の各光学的物理量の変調量の程度を反射表示部と透過表示部とで独立に変更する場合、電圧の印加による液晶の配向方向が、液晶層の表示に利用するための領域全体でほぼ同様である場合でも、液晶層の液晶層厚が異なる領域では、実質的に、該領域において液晶層の配向方向を変更した場合と同様の作用を有する。特に、二色性色素等の色素を使用し、光の吸収を利用するGH方式や、複屈折や旋光現象を利用する偏光板方式において、液晶層で生じる光の吸収、複屈折の各現象は、何れも、光の伝播に伴う現象であり、各現象とも液晶層における光の伝播距離とそれらの現象の程度との間に関連性を有している。さらに、表示光は、反射表示部においては液晶層を、往復により二度通過し、透過表示部においては、液晶層を一度しか通過しないため、液晶配向がほぼ同様である場合に、液晶層厚が、反射表示部と透過表示部とで同様に設定されている場合は、十分な明度やコントラスト比が得られず、前記課題は解決されない。
そこで、第3の液晶表示装置は、対向する表面に配向手段(例えば配向膜)が施された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを有する液晶表示素子を備えた液晶表示装置であって、上記液晶層における表示に利用される領域が、少なくとも二種類の異なる液晶層厚を有する領域よりなり、かつ、上記液晶層厚が異なる各々の領域が反射表示部と透過表示部とに用いられていると共に、少なくとも反射表示部には反射手段(例えば反射膜や反射電極)が配され、上記反射表示部の液晶層厚は透過表示部よりも小さい構成を有している。
上記の構成によれば、液晶層厚が異なる領域における光学的物理量の変調量の大きさに基づく透過率または反射率を得ることができ、これにより、透過表示部と反射表示部とで光学パラメータを独立に設定することが可能となる。従って、上記の構成によれば、視差がなく、高コントラスト比を実現することができ、周囲が暗い場合の視認性を向上させることが可能であると共に、周囲光が強い場合でも良好な視認性を得ることができる。このため、上記の構成によれば、視認性に優れ、かつ、高解像度表示が可能であり、反射光と透過光とを共に表示に利用することができる半透過型の液晶表示装置を提供することができる。
第4の液晶表示装置は、上記第1〜第3の何れかの液晶表示装置において、上記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板における上記液晶層の表示に利用される領域に接触する接触面上の領域に、少なくとも二種類の異なる配向方向をそれに接する液晶層界面の配向に与えるように配向手段が施されている構成を有している。
このように、液晶配向が同時に異なる配向状態を有するための手段としては、例えば前記表示内容書換手段以外に、例えば、上記液晶層に接する基板上の界面に施され、少なくとも二種類の異なる配向方向をそれに接する液晶層界面の配向に与えるように配向処理された配向膜等を用いることができる。このように、上記基板表面における、上記液晶層の表示に利用される領域に接触する接触面上の領域に、少なくとも二種類の異なる配向方向をそれに接する液晶層界面の配向に与えるように配向手段が施されていることで、上記液晶層が、電圧印加時に、該液晶層における表示に利用するための任意でかつ異なる領域において、同時に少なくとも二種類の異なる配向状態を示し、上記液晶層における配向状態の異なる領域で反射表示と透過表示とを行うことができる。
この場合、液晶配向の基板に対する仰角や、その方位角を変更することで、光学特性を決定する液晶の配向と、電圧を印加した場合の配向変化との両方を変化させることができ、反射表示部と透過表示部とで各表示に適した表示を行うことが可能になる。
上述した手段や配向機構によれば、反射表示部と透過表示部とで共に良好な表示を実現することができるが、色彩表示(カラー表示)を行うか白黒表示を行うか、あるいは、反射表示を主体として表示を行うか透過表示を主体として表示を行うか等、所望する表示によって、反射表示部と透過表示部との比率には、良好な表示を行うための最適な比率が存在する。
つまり、第5の液晶表示装置は、第1〜第4の何れかの液晶表示装置において、上記反射表示部と透過表示部との合計の面積に対する反射表示部の面積の占める割合が、30%以上、90%以下である構成を有している。
上記の構成によれば、上記反射表示部と透過表示部とで共にカラー表示を行う場合に、上記反射表示部と透過表示部とで共に良好な表示を行うことができる。
また、視認性の観点からは、反射表示部と透過表示部とで表示内容が反転していないことが望ましい。これは、照明環境が変化したり、照明環境の変化が予測困難な状況において、反射表示部と透過表示部とで表示内容が反転していると、周囲光の強度によって表示のコントラスト比が大きく変動するためであり、視認性の点からは、このようなコントラスト比の変動は、ウォッシュアウトと同様の現象となり、視認性の大幅な悪化を招く。
そこで、透過表示部が明表示のときに反射表示部が明表示を同時に表示し、透過表示部が暗表示のときに反射表示部が暗表示を同時に表示することは、視認性を確保する上で、非常に重要である。
このため、第6の液晶表示装置は、第1〜第5の何れかの液晶表示装置において、上記透過表示部が明表示のときに同時に反射表示部が明表示となり、上記透過表示部が暗表示のときに同時に反射表示部が暗表示となる構成を有している。
上記の構成によれば、上記第6の液晶表示装置は、上記第1または第3の液晶表示装置の構成を備えることで、上記透過表示部が明表示のときに同時に反射表示部が明表示とし、上記透過表示部が暗表示のときに同時に反射表示部が暗表示とすることが可能である。特に、上記液晶表示装置によれば、そのままでは反射表示部と透過表示部とで表示内容が反転する場合であっても、例えば前記配向機構に、前記表示内容書換手段を用い、反射表示部と透過表示部とで表示内容の書き換えを個別に制御することで、容易に表示を揃えることができる。従って、上記の構成によれば、良好な視認性を確保することができる。
また、第7の液晶表示装置は、第1〜第6の何れかの液晶表示装置において、上記液晶層が、液晶に二色性を有する色素を混入してなる液晶組成物からなる構成を有している。
上記の構成によれば、上記液晶層が、液晶に二色性を有する色素を混入してなる液晶組成物からなることにより、反射表示部と透過表示部とで、光の吸収量を適正化することができる。
また、反射表示部と透過表示部とで共に良好な表示を行うための表示方式としては、偏光板を用いて複屈折や旋光現象を表示に利用する方式を用いることも有効である。
このため、第8の液晶表示装置は、第1〜第7の何れかの液晶表示装置において、上記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板における液晶層との非接触面側に偏光板が配置されている構成を有している。
上記の構成によれば、反射表示部と透過表示部とで、複屈折を適正化することができ、良好な表示を行うことができる。このとき、反射表示部に偏光板方式を用い、上記第3の液晶表示装置で透過表示部において十分な表示を確保するには、表示面側のみならず、透過表示部の光の入射側にも偏光板を有することが必要である。
また、上記第8の液晶表示装置において、液晶層の電圧による配向変化でもたらされる光の位相差の変化量は、反射表示部では液晶層を往復する光に適するように設定し、透過表示部では、液晶層を透過する光に適するように設定することが、表示の切り替えを行う上で望ましい。
このため、第9の液晶表示装置は、第8の液晶表示装置において、上記液晶層に電圧を印加する電圧印加手段(例えば電極)を備え、該電圧印加手段は、電圧印加時における反射表示部の反射手段上での表示光の位相差が、明表示のときと暗表示のときとで概ね90度の差異となり、かつ、透過表示部において液晶層を出射する表示光の位相差が、明表示のときと暗表示のときとで概ね180度の差異となるように電圧を印加する構成を有している。
この場合、上記液晶層における液晶配向は、具体的には、第10の液晶表示装置に示すように、上記液晶層が、上記一対の基板間で、60度以上、100度以下のツイスト角でツイスト配向しているか、あるいは、第11の液晶表示装置に示すように、上記液晶層が、上記一対の基板間で、0度以上、40度以下のツイスト角でツイスト配向していることが好ましい。
上記液晶層が、上記一対の基板間で、60度以上、100度以下のツイスト角でツイスト配向するように上記液晶表示装置を構成することで、透過表示部の液晶層においては、液晶の配向の捩じれにしたがった旋光に近い偏光の変化を表示に利用することができ、反射表示部においては、旋光とリタデーションとの制御による偏光の変化を表示に利用することができる。
また、上記液晶層が、上記一対の基板間で、0度以上、40度以下のツイスト角でツイスト配向するように上記液晶表示装置を構成することで、透過表示部の液晶層においても、反射表示部の液晶層においても、ともにリタデーションの変化を表示に利用することができる。
よって、第10の液晶表示装置は、上記液晶層が、上記一対の基板間で、60度以上、100度以下のツイスト角でツイスト配向している構成を有している。
第11の液晶表示装置は、上記液晶層が、上記一対の基板間で、0度以上、40度以下のツイスト角でツイスト配向している構成を有している。
上記第9〜第11の液晶表示装置によれば、反射表示部と透過表示部とで、各々反射表示あるいは透過表示に適した位相差の変化量を得ることができ、明表示と暗表示との表示の切り替えが可能となる。
また、上記第1〜第6、第8または第9の何れかの液晶表示装置においては、液晶の配向変化は、基板に平行な面内での方位の変更だけであっても、十分な表示が可能である。
即ち、第12の液晶表示装置は、第1〜第6、第8または第9の何れかの液晶表示装置において、上記液晶表示素子は、上記反射表示部および透過表示部のうち少なくとも一方で、液晶分子を基板に対して平行に回転させることにより液晶層の配向状態を変化させて表示を行う構成を有している。
さらに、以下の構成によれば、従来のインプレインスイッチング方式の課題である低い光透過率の原因となる液晶配向の不十分さを、反射表示として積極的に表示に利用することにより、インプレインスイッチング方式の光利用効率の低さを克服することができる。
即ち、第13の液晶表示装置は、第12の液晶表示装置において、上記液晶表示素子は、上記液晶層に基板の面内方向に電界を生じさせる電圧印加手段を、上記反射表示部および透過表示部のうち何れか一方に対応して備えている構成を有している。
また、液晶層の配向は、従来より表示に多く用いられている平行配向であってもよいが、液晶が基板に対して垂直に配向している垂直配向であってもよい。
第14の液晶表示装置は、第1〜第9、第12または第13の何れかの液晶表示装置において、上記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板は、上記液晶層との接触面における上記反射表示部および透過表示部のうち少なくとも一方に対応する領域に、垂直配向性を有する配向膜を備えている構成を有している。
このように、上記基板が垂直配向性を有する配向膜を備え、液晶が基板に対して垂直に配向している垂直配向である場合には、表示のコントラスト比が良好になる利点があり、しかも、第1〜第9、第12または第13の液晶表示装置において、良好な表示を行う上で有効に作用する。
また、第15の液晶表示装置は、第1〜第14の何れかの液晶表示装置において、上記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板が、上記反射表示部および透過表示部のうち少なくとも反射表示部に対応する領域に絶縁膜を備え、該絶縁膜は、その膜厚が、上記反射表示部に対応する領域の方が透過表示部に対応する領域よりも厚くなるように形成されている構成を有している。
つまり、上記の液晶表示装置は、液晶層を挟持する少なくとも一方のほぼ平滑な基板上に絶縁膜を有し、該絶縁膜は、透過表示部に対応する領域で、反射表示部に対応する領域よりも膜厚が薄くなるように形成されているか、あるいは、反射表示部に対応する領域にのみ絶縁層が形成されていて、透過表示部に対応する領域には絶縁膜が形成されていない。
上記の構成によれば、液晶層における表示に利用される領域が、少なくとも二種類の異なる液晶層厚を有する液晶表示装置(即ち、反射表示部と透過表示部とで液晶層厚の異なる液晶表示装置)を容易に得ることができる。
また、上記絶縁膜は、液晶層厚の調整手段として作用するのみならず、反射表示部において上記の絶縁膜が液晶層と接する面に表示用の電極を形成することで、液晶層を駆動する電圧を損失なく液晶層に印加することができる。
この場合、表示面側の基板と対向配置された基板に反射手段として光反射性を有する膜を形成し、該光反射性を有する膜が凹凸構造を有していることは透過表示部の表示性能を損なうことなく解像度を損なわない反射表示の鏡面性防止手段として有効であり、上記の絶縁膜が、上記光反射性を有する膜の凹凸構造と同様の凹凸構造を有することで、凹凸構造を有する上記光反射性を有する膜を容易に形成することができる。
また、上記各液晶表示装置を用いてカラー表示を行う場合、液晶層だけでなく、発色に重要なカラーフィルタ層の設計が重要である。本願発明者らの検討によると、半透過型の液晶表示装置の主たる使用形態は二通りある。
一つは、通常使用においては透過表示を主に利用し、反射表示を付加的に用いることにより、周囲光の非常に強い照明環境下でのウォッシュアウトを防止し、発光型表示装置や透過表示のみの液晶表示装置と比較して、使用可能な照明環境の大幅な多様性を確保する、透過表示を主体とする使用形態であり、もう一つは、通常使用においては、電力消費量が少ないという反射表示の性質を生かし、かつ、照明の弱い環境下では、いわゆるバックライトと呼ばれる照明装置を点灯して使用することにより、先の使用形態と同様に使用可能環境の大幅な多様性を確保する、反射表示を主体とする使用形態である。
先の使用形態(透過表示を主体とする使用形態)においては、上記一対の基板のうち一方の基板における、各画素の表示領域を構成する領域のうち少なくとも透過表示部に対応する領域に、透過色彩を有するカラーフィルタを配することで、視認性に優れ、かつ、高解像度なカラー表示が可能であり、反射光と透過光とを共に表示に利用することができる液晶表示装置を提供することができる。
そして、このようにカラー表示を行う場合、各画素には、少なくとも透過表示部に透過色彩を有するカラーフィルタを配し、かつ、反射表示部には、カラーフィルタを用いないか、または、反射表示部の少なくとも一部に透過表示部に配したカラーフィルタと同じ明度を有するカラーフィルタを配するか、それよりも明度の高い透過色彩を有するカラーフィルタを配することが特に有効である。
これは、カラー表示を行う場合、反射表示部に透過表示部のカラーフィルタをそのまま用いると明度が不足するためであり、反射表示部でもカラー表示を行う場合は、カラーフィルタを用いない領域を反射表示部に設けるか、反射表示部に透過表示部よりも明度の高い透過色彩を有するカラーフィルタを配することで、明度を補うことができ、反射表示に対してもカラー表示が可能になり、かつ、反射表示部に必要な反射率を確保することができるためである。
そして、反射表示部では、カラーフィルタを表示光が2回通過することを考慮すれば、反射表示部には、透過表示部よりも明度の高い透過色彩を有するカラーフィルタを配することが望ましい。
また、透過表示を主体とする使用形態において、反射表示部に、カラーフィルタを設けない領域を有する構成とする場合、透過表示に必要な表示電圧信号は色彩表示に適した信号であり、反射表示に必要な表示電圧信号は、反射表示部にカラーフィルタを全く使用しない例においては白黒表示に適した信号である。従って、反射表示部にカラーフィルタを設けない構成とする場合、各色の画素が明度に寄与する割合が、透過表示部では各色の視感透過率に比例するが、反射表示部では、各色で等しくなるため、反射表示部に、カラーフィルタを設けない構成とする場合には、透過表示に用いるカラーフィルタの各色の視感透過率に合わせて、反射表示部の色彩表示を行わない領域の面積を変更することが望ましい。
即ち、第16の液晶表示装置は、第1〜第15の何れかの液晶表示装置において、上記一対の基板のうち一方の基板における、各画素の表示領域を構成する領域のうち透過表示部に対応する領域に、透過色彩を有するカラーフィルタが配され、かつ、上記表示領域を構成する領域のうち反射表示部に対応する領域の少なくとも一部に、上記基板における透過表示部に対応する領域に配されたカラーフィルタと同じ明度を有するカラーフィルタが配されている構成を有している。
上記の構成によれば、明度を補い、透過表示のみならず反射表示に対してもカラー表示が可能になると共に、反射表示部に必要な反射率を確保することができ、透過表示を主体とし、カラー表示可能な半透過型の液晶表示装置を提供することができる。
また、第17の液晶表示装置は、第1〜第15の液晶表示装置において、上記一対の基板のうち一方の基板における、各画素の表示領域を構成する領域のうち透過表示部に対応する領域に、透過色彩を有するカラーフィルタが配され、かつ、上記表示領域を構成する領域のうち反射表示部に対応する領域の少なくとも一部に、上記基板における透過表示部に対応する領域に配されたカラーフィルタよりも明度が高い透過色彩を有するカラーフィルタが配されている構成を有している。
上記の構成によれば、カラー表示を行う場合に、明度を補い、透過表示のみならず反射表示に対してもカラー表示が可能になると共に、反射表示部に必要な反射率を確保することができ、透過表示を主体とし、カラー表示可能な半透過型の液晶表示装置を提供することができる。この場合、反射表示部では、カラーフィルタを表示光が2回通過する。このため、反射表示部に対応する領域に、上記基板における透過表示部に対応する領域に配されたカラーフィルタよりも明度が高い透過色彩を有するカラーフィルタを配することで、より明度を高め、より良好なカラー表示を行うことができる。
さらに、第18の液晶表示装置は、第1〜第17の何れかの液晶表示装置において、上記一対の基板のうち一方の基板における、各画素の表示領域を構成する領域のうち、少なくとも透過表示部に対応する領域に、透過色彩を有するカラーフィルタが配され、かつ、上記カラーフィルタの透過色彩の視感透過率に合わせて、反射表示部の色彩表示を行わない領域の面積が設定されている構成を有している。
上記の構成によれば、各色の画素が明度に寄与する割合を各色の視感透過率によって変更することができ、この結果、良好な表示を実現することができる。
また、二つ目の使用形態(反射表示を主体とする使用形態)においては、上記一対の基板のうち一方の基板における、各画素の表示領域を構成する領域のうち少なくとも反射表示部に対応する領域に、透過色彩を有するカラーフィルタを配することで、視認性に優れ、かつ、高解像度なカラー表示が可能であり、反射光と透過光とを共に表示に利用することができる液晶表示装置を提供することができる。
そして、このようにカラー表示を行う場合、各画素には、少なくとも反射表示部に透過色彩を有するカラーフィルタを配して色彩表示を行い、かつ、透過表示部には、カラーフィルタを用いないか、または、透過表示部の少なくとも一部に、反射表示部に配したカラーフィルタと同じ彩度を有するかそれよりも彩度の高い透過色彩を有するカラーフィルタを配することが特に有効である。
反射表示を主体とする使用形態において、透過表示部ではカラーフィルタを用いず、白黒表示を行った場合、光の透過率が上昇することから、透過表示部をさらに小さく設定することが可能である。これにより、反射表示部の面積をより大きく確保することができ、通常使用時の反射表示においてより良好な表示を得ることができる。
また、反射表示を主体とする使用形態において、反射表示に用いるカラーフィルタの各色の視感透過率に合わせて、透過表示部の色彩表示を行わない領域の面積を変更することにより、各画素における透過表示部の白黒表示の明度への寄与を、視感透過率を考慮して適正に設定することができる。
即ち、第19の液晶表示装置は、第1〜第15の何れかの液晶表示装置において、上記一対の基板のうち一方の基板における、各画素の表示領域を構成する領域のうち少なくとも反射表示部に対応する領域に、透過色彩を有するカラーフィルタが配されている構成を有している。
上記の構成によれば、反射表示を主体とする表示を行う場合に、視認性に優れ、かつ、高解像度なカラー表示を行うことができる液晶表示装置を提供することができる。この場合、特に、反射表示部ではカラー表示を行い、透過表示部ではカラーフィルタを用いずに白黒表示を行うことで、光の透過率が上昇する。このため、このような場合には、透過表示部をさらに小さく設定することが可能であり、反射表示部の面積をより大きく確保することができ、通常使用時の反射表示においてより良好な表示を得ることができる。
また、第20の液晶表示装置は、第19の液晶表示装置において、上記カラーフィルタの透過色彩の視感透過率に合わせて、透過表示部の色彩表示を行わない領域の面積が設定されている構成を有している。
上記の構成によれば、反射表示を主体とする表示を行う場合に、各画素における透過表示部の白黒表示からの明度への寄与を、視感透過率を考慮して適正に設定することができるので、より良好な表示を得ることができる。
さらに、第21の液晶表示装置は、第1〜第15の液晶表示装置において、上記一対の基板のうち一方の基板における、各画素の表示領域を構成する領域のうち反射表示部に対応する領域に、透過色彩を有するカラーフィルタが配され、かつ、上記表示領域を構成する領域のうち透過表示部に対応する領域の少なくとも一部に、上記基板における反射表示部に対応する領域に配されたカラーフィルタと彩度が同等以上の透過色彩を有するカラーフィルタが配されている構成を有している。
上記の構成によれば、反射表示部および透過表示部で共に良好なカラー表示を行うことができる、反射表示を主体とする半透過型の液晶表示装置を提供することができる。
また、上記の液晶表示装置は、上述したように反射表示部を備えているため、従来の反射型液晶表示装置における低消費電力という特徴を合わせて有している。しかしながら、消費電力の大きな照明光を用いて、これを点灯状態に保ち続けることは、消費電力の増大を招く。
そこで、第22の液晶表示装置は、第1〜第21の何れかの液晶表示装置において、上記液晶表示素子に該液晶表示素子の背面から光を入射する照明装置を備え、該照明装置が、表示面の輝度を変更する表示面輝度変更手段を兼ねている構成を有している。
上記の構成によれば、照明装置により表示面の輝度を変更することで、低消費電力と視認性との両立を図ることができる。
さらに、第23の液晶表示装置は、第22の液晶表示装置において、上記照明装置は、順応輝度に応じて、知覚明度が10bril以上、30bril未満となるように表示面の輝度を変更する構成を有している。
上記知覚明度は、順応輝度と表示面の輝度とによって規定される。このとき、上記の照明装置が、液晶表示装置の表示内容や、照明等の視環境によって変化する順応輝度に応じて、点灯、消灯、あるいは照明の強度を変更することで、上記の知覚明度が得られるように表示面の輝度を変更することは、低消費電力と視認性との両立を図る上で非常に好ましい。特に、上記照明装置がタッチパネル等の押圧座標検出型入力手段等により液晶表示素子外部から制御される場合、上記の効果はより一層顕著なものとなる。
また、上記の構成によれば、透過表示が主に表示に寄与している状況での視認性を改善することができ、良好な視認性を実現することができると共に、低消費電力化を図ることができる。
また、上記のような半透過型の液晶表示装置においては、いわゆるフロントライトを利用した反射型液晶表示装置と比較してタッチパネル等の押圧座標検出型入力手段の使用が容易であり、この点で大きな利点がある。従って、このような押圧座標検出型入力手段を用いた半透過型で良好な表示を実現することは、良好な入力装置一体型の消費電力の小さい液晶表示装置のために有効である。
即ち、第24の液晶表示装置は、第1〜第23の何れかの液晶表示装置において、表示面に重ねて配置され、押圧されることによって押圧された座標位置を検出する押圧座標検出型入力手段を具備している構成を有している。
よって、上記の構成によれば、良好な入力装置一体型の消費電力の小さい液晶表示装置を提供することができる。
さらに、このような押圧座標検出型入力手段を利用した場合には、該押圧座標検出型入力手段の信号によって、観察者が表示装置を使用していることが容易に検知されるため、この信号にしたがって液晶表示装置の消費電力を左右する照明装置の輝度を変更して表示面の輝度を変更することや、液晶配向を変更することは、消費電力の削減と良好な視認性とを両立するために有効である。
そこで、第25の液晶表示装置は、第22または第23の液晶表示装置において、表示面に重ねて配置され、押圧されることによって押圧された座標位置を検出する押圧座標検出型入力手段を具備し、上記照明装置は、上記押圧座標検出型入力手段の出力信号に連動して表示面の輝度を変更する構成を有している。
上記の構成によれば、上記押圧座標検出型入力手段の信号によって、観察者が表示装置を使用していることが容易に検知されるため、この信号にしたがって液晶表示装置の消費電力を左右する照明装置の輝度を変更し、表示面の輝度を変更すれば、消費電力の削減と良好な視認性とを両立することができる。
また、第26の液晶表示装置は、第1または第2の液晶表示装置において、表示面に重ねて配置され、押圧されることによって押圧された座標位置を検出する押圧座標検出型入力手段を具備し、上記配向機構は、上記押圧座標検出型入力手段の出力信号に連動して上記反射表示部および透過表示部のうち少なくとも一方における液晶層の配向状態を変更する構成を有している。
上記の構成によれば、上記押圧座標検出型入力手段の信号によって、観察者が表示装置を使用していることが容易に検知されるため、この信号にしたがって液晶配向を変更すれば、消費電力の削減と良好な視認性とを両立することができる。
また、上記の液晶表示装置が上記押圧座標検出型入力手段と偏光板とを共に備える場合、上記押圧座標検出型入力手段と偏光板とは、偏光板、押圧座標検出型入力手段、液晶表示素子の順に配置される。
即ち、第27の液晶表示装置は、第1〜第26の何れかの液晶表示装置において、表示面に重ねて配置され、押圧されることによって押圧された座標位置を検出する押圧座標検出型入力手段と偏光板とを具備し、上記偏光板と押圧座標検出型入力手段と液晶表示素子とがこの順に配置されている構成を有している。
上記の構成によれば、偏光板と押圧座標検出型入力手段とを備え、複屈折を表示に利用する、入力装置一体型の消費電力の小さい液晶表示装置を提供することができる。
また、上記偏光板と押圧座標検出型入力手段と液晶表示素子とをこのように配置することで、偏光板による吸収が、押圧座標検出型入力手段による不要反射光をも吸収し、該不要反射光を低減することができる。従って、上記の構成によれば、液晶表示装置の視認性を向上することができ、良好な視認性を実現する。