JP2006091703A - 光学補償フイルム、楕円偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】表示下方向の階調反転現象の改良と上下左右方向でのコントラスト視野角の拡大を両立する液晶表示装置、及び光学補償フイルムを提供する。
【解決手段】液晶セルを挟持する一対の偏光子の少なくとも一方と前記液晶セルとの間に配置された少なくとも一枚の光学補償フイルムを有し、光学補償フイルムを抜いた状態で黒又は白の輝度を示すON電圧に対して、前記の少なくとも1枚の光学補償フィルムを配置した状態で10%〜35%低い駆動電圧で等しい正面輝度を示す様に設定し、該10%〜35%低い電圧で駆動するとともに、全ての光学補償フイルムを法線方向から見た場合に、合成された面内のレターデーションを5nm〜35nmとし、且つ該合成された面内のレターデーションの遅相軸方向が、液晶セルの配向方向を規定する上下基板の配向軸の交差角の2等分線に直交する方向となるように、液晶セルに対して配置された液晶表示装置。
【選択図】 図1

Description

本発明は、円盤状化合物から形成された光学異方性層を有する光学補償フイルム、ならびにそれを用いた楕円偏光板及び液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、液晶セル、偏光素子および光学補償フイルム(位相差板)からなる。透過型液晶表示装置では、二枚の偏光素子を液晶セルの両側に配置し、一枚または二枚の光学補償フイルムを液晶セルと偏光素子との間に配置する。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚の光学補償フイルム、そして一枚の偏光素子の順に配置する。液晶セルは、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、棒状液晶性分子の配向状態の違いで、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence )、反射型については、TN、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest−Host)のような様々な表示モードが提案されている。
光学補償フイルムは、画像着色を解消し、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。光学補償フイルムとしては、延伸複屈折ポリマーフイルムをはじめとして、透明支持体上に円盤状化合物、又は液晶性分子から形成された光学異方性層を有する光学補償フイルムが一般に使用されている。光学補償フイルムの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定される。様々な表示モードに対応した種々の光学補償フイルムが、提案されている。
ここで、TNモードの液晶セル中における棒状液晶分子の電圧印加時の配向状態の一例について、棒状液晶分子の極角方向の傾きと液晶層の厚さ方向の位置との関係を図10に、棒状液晶分子の方位角方向の傾きと液晶層の厚さ方向の位置との関係を図11に示した。図中の曲線は、液晶層への数十点の印加電圧に対応する。なお、図10でのθ極角方向とは、液晶層の層平面をxy平面とした場合に、z軸方向の傾きをいい、極角=0°は液晶層平面に平行で、極角=90°は液晶層の法線方向に一致する。また、図11でのφ方位角方向とは、層平面内の直交する軸の一方に対する傾きであり、例えば、液晶セルに向って右側、水平方向をx軸+側とした場合の反時計回りのx軸と成す角を意味する。また、図10及び図11は、液晶表示器用設計シミュレーションソフトウェアによるTN液晶表示モードの一般的配向状態の一例である。
このようなTNモード液晶層液晶表示セルの視野角を拡大する光学補償フイルムとして、円盤状化合物をハイブリッド配向させた状態で固定化した補償フイルムが実用化されている(例えば、特許文献1)。この方法では、棒状液晶からなるネマチック液晶セルを、円盤状化合物によって補償しているため、斜めからの入射光に対しても補償が可能であり、表示視野角を格段に拡大することが可能である。この場合、図12に示すように、棒状状分子52がねじれネマチック配向したTN液晶セル51に対して、円盤状化合物53からなる補償フイルム54a、54bを表示面側及びバックライト55が配置された背面側に配置する。円盤状化合物が配向している方位角方向は、一般的に使用されているノーマリーホワイトモードのTN液晶表示装置では、電圧印加された、黒表示を効果的に補償することによって、上下左右方向の黒透過率を小さくし、視野角を拡大するように設計されている。
視野角を拡大することは円盤状化合物によって達成されたが、表示下方向に発生する階調の反転現象は解消されなかった。これを説明するために図13に、駆動状態におけるTN液晶モードの液晶セルの液晶層51断面におけるネマチック液晶52のねじれ配向の模式図を示す。紙面に向って左側が表示下方向、右側が上方向を示す。A、B及びCの矢印は、観察者の観察方向の例を示す。B方向からの視点を矢印2の方向に移して行く時、レターデーションは減少し、その後、視点を矢印1の方向に動かして行く時、レターデーションは増加して行く。C方向から液晶層を観察した場合、レターデーションは最小となり、A方向及びB方向からは、レターデーションが同じ値となる。従って、この2方向において透過率は同じとなり、C方向が最も透過率は低い傾向となる。この透過率の極角方向における最も低い角度が階調レベルによって異なる角度で発生するために、階調レベルの交差(透過率の反転現象)が発生してしまう。この現象は前述の円盤状化合物を用いた特許文献1による手段によっても解消されなかった。この場合の表示面下方向に階調反転が発生する様子を図14に示す。図14は市販TN型液晶TVにおいて、前述の円盤状化合物による視野角拡大のための光学補償フイルムを用いた場合である。正面の輝度レベルを7分割し、その上下方向の輝度変化をプロットすると下33°付近でL1とL2が交差すること、階調が反転することが分かる。この階調反転が発生する方向を、TNモード液晶表示ディスプレイにおいては目立ち難い方向である下方向に向けるのが通常の表示装置の設計となっている。
TNモード液晶表示の表示特性を改良する方法として、光学補償フイルム側にもねじれ構造を導入した液晶性光学補償フイルムが提案されている(特許文献2)。ディスコティック液晶の円盤面とフイルム平面法線とが成す角度が、フイルムの厚さ方向に変化した状態、所謂ハイブリッド配向状態にねじれ構造を導入し固定化したものである。特許文献2によると、その方法では、ノーマリーホワイトのTN液晶において、コントラスト30が得られる極角角度は、上32°下41°左38°右38°であったことが示されている。
特許第2587398号公報 特許第3445689号公報
前述の特許文献1及び特許文献2に示される方法によって、TN液晶表示の高いコントラスト維持できる視野角領域(コントラスト視野角)が拡大された。しかし、未だ下方向に発生する階調反転は解決されていなかった。今日、TNモード液晶表示装置が、ノート型パソコン、モニター及びTV等より広く使用されるようになるにつれて、この下方向の階調反転を解決する必要に迫られている。このような状況に鑑み、本発明は、TN液晶モードの使用領域を更に拡大するために、上下左右方向でのコントラスト視野角を維持したまま、下方向の階調反転の改良を工業的に実現することにある。ここで、階調反転の指標として、前述のL1とL2の交差する角度を、階調反転角度として定義する。この階調反転角を基準に液晶表示装置を評価したところ、反転角は37°以上を有することが望ましいことが判明した。
本発明はTNモード液晶表示装置において下方向につくられる階調反転現象の軽減に寄与する光学補償フイルム及び楕円偏光板を提供することを課題とする。また本発明は、下方向につくられる階調反転現象が軽減された液晶表示装置、特にTNモードの液晶表示装置を提供することを課題とする。
本発明者は、図10に示す様に液晶層への印加電圧が低ければ、液晶分子はセル内であまり立ち上がらないため、図13示すBの方向は、非常に低い角度となり、階調反転が目立たないことに着目し、印加電圧を小さくした状態で表示装置として十分なコントラストを得る方法について鋭意検討を行った。その結果、印加電圧を低減した場合には、液晶セル中の液晶分子の配向方向を規定する上下基板の配向軸2等分線の方向と、これに直交する方向の位相差(レターデーション)が増加することによって、正面コントラストの低下が生じていることが判明した。光学的に等価な屈折率楕円体を仮定した場合、その遅相軸は表示面上下方向に形成されていることがわかった。さらにこの知見に基いて、さらに鋭意検討した結果、この弊害は、光学的に等価な屈折率楕円体を、遅相軸を表示面左右方向に向けて、積層することによって解消し得ることを見出した。つまり、印加電圧の低減により発生するレターデーションと同じ大きさで、屈折率楕円体を仮定した場合には、その遅相軸が表示面左右方向となる構造を形成することによって弊害を解消することができる。この考えに基いて、正面コントラストの低下を回避しつつ、階調反転を改良できる構造を見出し、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 液晶セルと、該液晶セルを挟持する一対の偏光子と、該一対の偏光子の少なくとも一方と前記液晶セルとの間に配置された少なくとも一枚の光学補償フイルムを有する液晶表示装置であって、
液晶セルと一対の偏光子との間に配置された全ての光学補償フイルムのみを抜いた場合に黒又は白の輝度を発揮するON電圧に対して、前記少なくとも1枚の光学補償フイルムを配置した状態で、等しい正面輝度が得られる駆動電圧が、10%〜35%低く、且つ該10%〜35%低い電圧で駆動すると共に、
前記液晶セルと前記一対の偏光子との間に配置された全ての光学補償フイルムのみを、その相対角度を維持したままフイルム法線方向から見た場合に、合成された面内のレターデーションが5nm〜35nmであり、且つ該合成された面内のレターデーションの遅相軸方向が、液晶セルの配向方向を規定する上下基板の配向軸の交差角の2等分線に直交する方向となるように、液晶セルに対し配置された液晶表示装置とする。
[2] [1]の液晶表示装置に用いる光学補償フイルムとして、円盤状化合物からなる光学異方性層と透明支持体とを有し、該光学異方性層中の円盤状化合物の平均傾斜角β値が、30°〜45°であって、液晶セルに近い表面側から観察した場合に、前記円盤状化合物の分子の配向方向が、近傍に配置された偏光子の吸収軸と平行な面内軸に対して時計回りに1°以上10°以下回転している光学補償フイルムを用いる。
[3] [1]の液晶表示装置に用いる光学補償フイルムとして、円盤状化合物よりなる光学異方性層、透明支持体及び少なくとも1層の位相差板からなる光学補償フイルムを用いる。
[4] [1]の液晶表示装置に用いる光学補償フイルムとして、円盤状化合物よりなる光学異方性及び透明支持体を有し、該透明支持体が有する面内のレターデーションの遅相軸が近傍に配設される偏光子の吸収軸に対して回転し、これによって液晶表示装置に配設された全ての光学補償フイルムのみを相対角度を維持したまま積層して、法線方向から測定した面内レターデーションが5nm〜35nmである光学補償フイルムを用いる。
[5] [1]の液晶表示装置に用いる光学補償フイルムとして、[2]〜[4]の複数の手段を組合せた光学補償フイルムを用いる。
[6] [1]の液晶表示装置に用いる偏光子と光学補償フイルムとして、透明保護膜、偏光膜及び[2]〜[4]のいずれか、又は複数の組合せによる光学補償フイルムを有する楕円偏光板を用いる。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)は自動複屈折計 KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフイルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフイルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフイルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーションの計3つの方向で測定したレターデーションを基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フイルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フイルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
本発明で開示する光学補償フイルムを、液晶セルと上下の偏光膜との間に配置することで、従来と変らぬ広いコントラスト視野角を維持しながら、高い正面コントラストと階調反転の改善を両立することが可能となる。ノーマリーホワイト表示における黒電圧、又はノーマリーブラック表示における白電圧を低下させることで、消費電力を低減すること、更にはより低耐圧で安価な液晶駆動用ICを用いることが可能となる。
発明の実施の形態
以下、本発明について詳細に説明する。
1)まず、液晶表示装置の駆動電圧を低下させることと、階調反転の改善効果との関係について説明する。
TN型液晶表示装置から光学補償フイルム、及び液晶セルを挟持する偏光子を取除き液晶セルのみとし、その液晶セルの黒又は白の透過率を発揮するON電圧を徐々に低下させながら液晶セル面内のレターデーションを測定した。図2に汎用偏光解析装置(OPTIPRO H33 シンテクック(株)製)にて測定した一般的な液晶セルのΔnd(Δn:液晶分子の屈折率差、d:液晶セル間隙寸法)360nm、390nm、410nm、460nmの場合の駆動電圧と、液晶セル面内のレターデーションを示す。ON電圧の低下に伴いセル内の液晶分子は、通常よりも基板法線から倒れていく。そのため液晶セル面内のレターデーションはON電圧低下に従って増加していく。ここで、偏光膜と液晶セルとの間に、液晶セルに発生しているレターデーションと等量で、且つ屈折率楕円体を仮定すると、その遅相軸が直交する光学補償フイルムを挿入すると、液晶層に発生したレターデーションをキャンセルすることができ、ON電圧を低減しても、通常の輝度を得ることができる。ON電圧を低下させた状態では図13に示すB方向は、低い角度となり、階調反転は目立たない。
図3に、Δnd=410nmの場合において、駆動電圧を低下させた場合に、液晶層に発生したレターデーション量、及びその駆動電圧におけるレターデーションをキャンセルした場合の下方向の階調反転角の関係を示す。駆動電圧を約35%低減した状態において、液晶セルに発生するレターデーションは33nmに達する。この状態でのレターデーションをキャンセルした場合、下方向反転角は、51°となる。この結果は、予め測定によって求めた液晶層のレターデーションの半分のレターデーションを有するフイルムを作製し、液晶層と上下の偏光子の間に2枚挿入して、階調反転角を求めたものである。用いた2枚の光学補償フイルムは、2枚積層することによって液晶層に発生したレターデーションと等量のレターデーションを合成するものであり、且つその合成レターデーションの遅相軸が、液晶層に発生したレターデーションの遅相軸と直交する様に配置して、階調反転角を求めたものである。
以上の様に、液晶セルへの印加電圧を35%まで低減するとともに、これによって発生するレターデーション35nmをキャンセルすることによって、階調反転角としては、通常の33°〜51°まで拡大できる。駆動電圧10%〜35%の低減によって、液晶セルΔndの違いを考慮しても液晶層に5nm〜35nmのレターデーションが発生し、これをキャンセルする、遅相軸が直交、且つ等量のレターデーションを光学補償層に付与することで階調反転の改良が実現できることが証明された。
2) 上記した液晶セルの液晶層中に生成するレターデーションと、略等量のレターデーションを発生させるには、円盤状化合物からなる光学異方性層の配向方向を、液晶表示装置を構成する上下2枚の偏光膜の吸収軸方向から僅かに回転させることによって容易に発生させることができる。
透明支持体と円盤状化合物からなる光学異方性層によって構成される光学補償フイルムをTN型液晶表示装置に使用するにあたっては、例えば自動複屈折計(KOBRA 21ADH王子計測機器(株)製)等が出力する光学異方性層の平均傾斜角βの範囲を30°〜45°にすることが十分な正面コントラストを得るために必要である。図5に自動複屈折測定器によるこのβ値と正面コントラストの関係を示す。したがって、駆動電圧を10%〜35%低減することによって液晶層に発生するレターデーションをキャンセルする場合においても、このような測定によるβ値の範囲として30°〜45°が必要である。
このβ値の上限と下限、30°と45°である光学異方性を有する光学補償フイルムを実際に作製し、液晶表示装置に配設する上下2枚の相対角度にて測定した面内レターデーションと、偏光子吸収軸と、円盤状化合物の配向方向とのなす角との関係を図4に示す。図4に示す結果から、レターデーション5〜35nmを発生させるには、β値の範囲30°〜45°の補償フイルムにおいて1°以上10°以下、偏光子吸収軸から回転させるとよいことが理解できる。
偏光子の吸収軸と光学異方性層の配向方向とのなす角度は、配設された際に、液晶層から見て時計回りに回転していることが望ましい。この様にして2枚の補償フイルムの相対角度を維持したまま、それらを液晶セルと上下2枚の偏光子間に挿入し、駆動電圧を10%〜35%低下させることによって、液晶層に発生したレターデーションを打消すことで、従来と変らぬ正面コントラストを発揮すると同時に階調反転の改良を実現することができる。
3) また、上記した液晶層中に生成されるレターデーションと略等量のレターデーションを発生させるためには、前述の光学異方性層の配向方向を回転させる他に、液晶セルと上下2枚の偏光膜との間に位相差板を挿入することによっても実現できる。この場合、挿入する位相差板は1枚でも複数枚でもよく、挿入した位相差板相互の相対角度を維持したまま、位相差板を表示面法線方向から見た場合に、TN液晶セルのツイスト角を規定する上下基板の配向軸角の2等分線に直交する方向に、位相差板による遅相軸がつくられ、それらが生成する合成レターデーションが5nm〜35nmとなるよう、挿入される位相差板相互の角度、レターデーション量を選択するとよい。
4) 上記した液晶層に生成されるレターデーションと略等量のレターデーションを発生させるためには、液晶表示装置を構成する液晶セルと上下2枚の偏光膜との間に少なくとも1枚配設される光学補償フイルムを構成する透明支持体の遅相軸を上下2枚の偏光膜の吸収軸から回転させることによっても実現することができる。補償フイルムの相対角度を維持したまま法線方向から見た場合に、液晶セルの配向軸を規定する上下基板の配向軸角の2等分線に直交する角度方向に遅相軸がつくられ、その1枚又は複数枚からなる合成レターデーションが5nm〜35nmとなるようにレターデーションの大きさを決定するとよい。
2)、3)及び4)の方法をいずれか2以上組合せても実現できることはいうまでもない。
なお、光学補償フイルムは偏光子と共に使用するものであるから、予め、透明保護膜及び偏光膜と積層し楕円偏光板としておくと使用する上で効率的であり、有益である。
本発明では、前述の如く低電圧駆動化することによって、階調反転の観察される角度を低い角度とし、階調反転を改良する。図1に、TN型液晶表示装置について、低駆動電圧化によって液晶層に生じるレターデーションの遅相軸と、液晶層のねじれ配向を制御する観察者側基板の対向面のラビング軸及びバックライト側基板面のラビング軸との関係の一例を模式的に示した。図1中、低駆動電圧化によって液晶層に生じるレターデーションの遅相軸は白抜け矢印で示されていて、ねじれ角の中心軸方向、即ち、液晶層の配向方向を規定する上下基板のラビング軸の交差角の2等分線の方向(図1中では、表示上下方向)になる。この発生したレターデーションは、正面コントラストの低下という弊害を招く。そこで本発明では、この弊害を解決するため、1枚又は2枚以上の光学補償フイルムを液晶表示装置に組み込んで、組み込まれた光学補償フイルム全体による合成面内レターデーションを5〜35nmにするとともに、合成レターデーションの遅相軸を、図1中、黒塗り矢印で示される方向、即ち、液晶層の配向方向を規定する上下基板のラビング軸の交差角の2等分線の方向に垂直な方向(図1中では、表示左右方向)にする。以下に、上記2)〜4)の方法を利用して、かかるレターデーションを上下1枚ずつ、合計2枚の光学補償フイルムによって合成して、階調反転現象を軽減した実施の形態について説明する。
図6は、本発明を透過型液晶表示装置に適用した一実施形態である。図6の液晶表示装置は、一対の基板5a及び5bと、それに挟持される液晶層6とからなる液晶セルを中心として、バックライト(BL)側及び表示面側に、表面に透明保護膜1a及び1bをそれぞれ有する偏光膜2a及び2bが、各々配置されている。偏光膜2a及び2bと液晶セルとの間には、円盤状化合物から形成された光学異方性層4a及び4bと、透明支持体3a及び3bとをそれぞれ有する光学補償フイルムが各々一枚ずつ、合計2枚配置されている。光学異方性層4a及び4bのそれぞれにおいて、円盤状化合物の分子は、平均傾斜角30°〜45°で配向し、光学異方性層4a及び4bの全体として5〜35nmの面内レターデーションを示す。さらに該レターデーションの遅相軸は、基板5a及び5bの対向面にそれぞれ形成されたラビング軸の交差角の2等分線に直交する方向になっていて、低駆動電圧化に伴って液晶層6に生じるレターデーションの遅相軸と直交している。
通常、円盤状化合物の配向によって発現された光学異方性を有する光学異方性層は、ラビング処理されたアルコール系配向膜の表面に円盤状化合物を含有する組成物を適用して、円盤状分子を所望の方向に配向させ、その配向状態に固定することで作製することができる。本実施の形態では、光学異方性層4a及び4bを形成する際に用いる配向膜のラビング軸を調整することで、合成レターデーションの遅相軸を、前記した所望の方向にすることができる。図7に、光学異方性層4a及び4bの形成時に利用する配向膜のラビング軸と、バックライト側偏光膜2aの吸収軸及び観察者側偏光膜2bの吸収軸、それぞれとの関係の一例を模式的に示した。従来のOモード、ノーマリーホワイト型液晶表示装置用の光学補償フイルムでは、円盤状化合物からなる光学異方性層のための配向膜の配向方向は、近傍側偏光膜の吸収軸と略同一方向であり、駆動される液晶のラビング軸方向とも略同一方向に配置されていた。例えば、図12に示す様に配置されていた。本実施形態では、図7に示す様に、偏光膜の吸収軸とは一致させず、該吸収軸より内側に1°以上10°以下にずらす。例えば液晶セルの液晶層ツイスト角が90°、即ち、基板5aと5bのラビング軸が90°で交差する場合は、光学異方性層4a及び4bの形成のために用いる配向膜のそれぞれのラビング軸がそれぞれ内側に1°〜10°ずらされるのが好ましく、光学異方性層4a及び4bの形成のために用いる配向膜のラビング軸の交差角は、88°〜70°程度であるのが好ましい。円盤状化合物の場合、その化合物の円盤面内に遅相軸を有するために、このようにラビング軸を内側にずらすことによって、上下2つの光学異方性層4a及び4bによって合成されたレターデーションの遅相軸は、表示装置での左右方向につくられる。
なお、遅相軸の方向、生成されるレターデーションの大きさは、前述の自動複屈折計によって求めることができる。
図8は、本発明を透過型液晶表示装置に適用した他の実施形態である。なお、図6と同一の部材については同一の番号を付し、説明は省略する。図8の液晶表示装置は、上記実施形態に用いた光学補償フイルムに代えて、透明支持体3a及び3bと、円盤状化合物の配向によって発現した光学異方性を示す光学異方性層4a’及び4b’と、位相差板7a及び7bとをそれぞれ有する光学補償フイルムを上下一枚ずつ、合計で2枚有する。本実施形態では、位相差板7a及び7bによって生成する面内レターデーションが5〜35nmであり、且つその遅相軸が、基板5a及び5bの対向面にそれぞれ形成されたラビング軸の交差角の2等分線に直交する方向になっていて、低駆動電圧化に伴って、液晶層6に生じるレターデーションの遅相軸と直交している。
位相差板7a及び7bの合成として、液晶層6に発生するレターデーションと略等量となるレターデーションを有する位相差板を用い、且つ液晶層6に生じるレターデーションの遅相軸に、その遅相軸が直交する様に配置することによって、低駆動電圧化に伴い、液晶層6に生じるレターデーションをキャンセルすることができる。位相差板としては、溶液流延、溶融押し出し又は縦、横方向に一軸延伸された各種のフイルム、セルロースアセテート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど各種のフイルムを用いることができる。更には、棒状化合物を配向後、硬化、固定することによってフイルム化したものも使用することが可能である。
なお、本実施形態では、光学異方性層4a’及び4b’は、低駆動電圧化に伴う液晶層6に生じるレターデーションのキャンセルに寄与していなくてもよい。従って、光学異方性層4a’及び4b’の形成のための配向膜のラビング軸は、液晶層6の配向規制のためのラビング軸とそれぞれ一致していてもよい。
図9は、本発明を透過型液晶表示装置に適用した他の実施形態である。なお、図6と同一の部材については同一の番号を付し、説明は省略する。図8の液晶表示装置は、上記実施形態に用いた光学補償フイルムに代えて、所定のレターデーションを有する透明支持体3a’及び3b’と、円盤状化合物の配向によって発現した光学異方性を示す光学異方性層4a’及び4b’とをそれぞれ有する光学補償フイルムを上下一枚ずつ、合計で2枚有する。本実施形態では、透明支持体3a’及び3b’によって生成する面内レターデーションが5〜35nmであり、且つその遅相軸が、基板5a及び5bの対向面にそれぞれ形成されたラビング軸の交差角の2等分線に直交する方向になっていて、低駆動電圧化に伴って、液晶層6中に生じるレターデーションの遅相軸と直交している。
透明支持体3a’及び3b’の遅相軸を、偏光膜2a及び2bの吸収軸からそれぞれ回転させて配置することによって、透明支持体3a’及び3b’によってレターデーションを発生させ、これによる合成レターデーションの遅相軸が補償する方向となるように角度設定する。
なお、本実施形態でも、光学異方性層4a’及び4b’は、低駆動電圧化に伴う液晶層6に生じるレターデーションのキャンセルに寄与していなくてもよい。従って、光学異方性層4a’及び4b’の形成のための配向膜のラビング軸は、液晶層6の配向規制のためのラビング軸とそれぞれ一致していてもよい。
以下、本発明の光学補償フイルムの材料及び作製方法等について、詳細に説明する。本発明の光学補償フイルムの例には、透明支持体と、円盤状化合物の配向によって発現した光学異方性を有する光学異方性層とを有する態様が含まれる。また、光学補償フイルムのさらに上に、延伸高分子フイルム等からなる位相差板を有する態様も含まれる。
[支持体]
本発明の光学補償フイルムを構成する支持体は、透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上であるのが好ましい。その材料については特に制限はなく、ガラス板及びポリマーフイルム等を用いることができる。中でも、ポリマーフイルムが好ましい。ポリマーフイルムを構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースのモノ乃至トリアシレート体)、ノルボルネン系ポリマーおよびポリメチルメタクリレートが含まれる。市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、アートン及びゼオネックスいずれも商品名))を用いてもよい。又、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現し易いポリマーであっても、WO00/26705号明細書に記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、本発明の光学フイルムに用いることもできる。
中でもセルロースエステルが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。特に、炭素原子数が2〜4のセルロースアシレートが好ましい。セルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。又、セルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.0〜1.65であることがさらに好ましい。
また、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度は、57.0〜62.0%であることがさらに好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算によって求められる。
通常、セルロースアセテートは、セルロースの2位、3位、6位のヒドロキシルが均等に置換されるのではなく、6位の置換度が小さくなる傾向がある。前記透明支持体に用いるセルロースアセテートは、セルロースの6位置換度が、2位、3位に比べて同程度または多い方が好ましい。2位、3位、6位の置換度の合計に対する、6位の置換度の割合は、30〜40%であることが好ましく、31〜40%であることがさらに好ましく、32〜40%であることが最も好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。
これらの具体的なアシル基、及びセルロースアシレートの合成方法は,発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行 発明協会)の9ページに詳細に記載されている。
光学補償フイルムの支持体のレターデーションを、低駆動電圧化に伴う液晶層に生じるレターデーションをキャンセルするのに利用するためには、透明支持体として用いるポリマーフイルムのレターデーションを調整する必要がある。ポリマーフイルムのレターデーションを調整するためには、延伸のような外力を与える方法が一般的である。又、必要であれば、光学異方性を調節するためのレターデーション上昇剤、光学的異方性を低下させるために化合物、又は波長分散調整剤をポリマーフイルム中に添加してもよい。セルロースアシレートフイルムのレターデーションを調整するには、芳香族環を少なくとも二つ有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。例えば、欧州特許0911656A2号明細書、特開2000−111914号、同2000−275434号公報等記載の化合物等が挙げられる。
以下にポリマーフイルムの光学的異方性を低下させるための化合物として使用可能な例示化合物、及び波長分散調整剤として使用可能な例示化合物を示すが、以下の化合物に限定されるものではない。
Figure 2006091703
Figure 2006091703
更には、前記透明支持体として用いるセルロースアセテートフイルムの吸湿膨張係数は、30×10-5/%RH以下であるのが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料長の変化量を示す。
この吸湿膨張係数を調節することで、光学補償フイルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇(歪みによる光漏れ)を防止することができる。
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。作製したポリマーフイルムから幅5mm。長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げた。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L0)を測定した。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、長さ(L1)を測定した。吸湿膨張係数は下式により算出することができる。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用する。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0
ポリマーフイルムの吸湿による寸度変化を小さくするには、疎水基を有する化合物又は微粒子等を添加することが好ましい。疎水基を有する化合物としては、分子中に脂肪族基や芳香族基のような疎水基を有する可塑剤や劣化防止剤から選択するのが好ましい。これらの化合物の添加量は、調整する溶液(ドープ)に対して0.01〜10質量%の範囲にあることが好ましい。又、ポリマーフイルム中の自由体積を小さくすればよく、具体的には、後述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少ない方が自由堆積が小さくなる。セルロースアセテートフイルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.00質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。
ポリマーフイルムに添加する上記した添加剤又は種々の目的に応じて添加する添加剤(例えば、紫外線防止剤、剥離剤、帯電防止剤、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、赤外吸収剤を等)は、固体でもよく油状物でもよい。また、フイルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。これらの詳細は、上記の公技番号 2001−1745号技法の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。各素材の添加量は、その機能が発現する限りにおいて特に限定されないが、ポリマーフイルム全組成物中、0.001〜25質量%であるのが好ましい。
[ポリマーフイルムの製造方法]
ポリマーフイルムは、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマー材料を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。前記ソルベントキャスト法では、ドープをドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100〜160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
これらのソルベントキャスト方法の製造工程については、前記の公技番号 2001−1745の22頁〜30頁に詳細に記載され、溶解、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
前記支持体として用いるフイルムの厚さは、15〜120μmであるのが好ましく、30〜80μmであるのがより好ましい。
[ポリマーフイルムの表面処理]
ポリマーフイルムは、表面処理を施すことが好ましい。表面処理には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理および紫外線照射処理が含まれる。これらについては、詳細が前記の公技番号 2001−1745の30頁〜32頁に詳細に記載されている。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフイルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、鹸化液中に浸漬、鹸化液を塗布する等何れでもよいが、塗布方法が好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理液は、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0Nの範囲にあることが好ましい。更に、アルカリ処理液として、フイルムに対する濡れ性が良好な溶媒(例、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、メタノール、エタノール等)、界面活性剤、湿潤剤(例えば、ジオール類、グリセリン等)を含有することで、鹸化液の透明支持体に対する濡れ性、鹸化液の経時安定性等が良好となる。具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
表面処理の代わりに、表面処理に加えて下塗り層(特開平7−333433号公報記載)、或は疎水性基と親水性基との両方を含有するゼラチン等の樹脂層を一層のみ塗布する単層法第1層として高分子フイルムによく密着する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として配向膜とよく密着するゼラチン等の親水性の樹脂層(以下、下塗第2層と略す)を塗布する所謂重層法(例えば、特開平11−248940号公報記載)の内容が挙げられる。
[光学異方性層]
本発明の光学補償フイルムは、円盤状化合物から形成された光学異方性層を有するのが好ましい。以下、光学異方性層の好ましい態様について詳細を記述する。
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するように設計することが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶化合物の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なる。この液晶セル中の液晶化合物の配向状態と補償フイルムの配向の関係に関しては、IDW’00、FMC7−2、P411〜414に記載されている。
前記光学異方性層において、円盤状化合物はハイブリッド配向しているので、円盤状化合物の長軸(円盤面の長径)の層平面に対する傾斜角度の平均は、光学異方性層の深さ方向、透明支持体界面からの距離の増加と共に増加または減少している。傾斜角度の平均は、距離の増加と共に増加することが好ましい。前記円盤状化合物単位の面の角度(傾斜角)は、局所的なある深さでは揺らぎを持っているが、光学異方層全体として見ると、一般に、光学異方層の深さ方向でかつ光学異方層の底面からの距離の増加と共に増加または減少している。上記傾斜角は、この揺らぎを持ちつつ、距離の増加と共に増加することが好ましい。さらに、傾斜角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。本発明では、傾斜角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、傾斜角度は連続的に変化することが好ましい。また、光学異方性層のレターデーションを、低駆動電圧化にともなって液晶層に生じるレターデーションをキャンセルするのに利用する場合は、円盤状化合物の配向の傾斜角βは、上記した様に、30〜45°に調整するのが好ましい。
前記光学異方性層は、液晶性円盤状化合物を含有する組成物を透明支持体表面に適用して、必要であれば加熱等して、形成することができる。液晶性円盤状化合物を、上記した所望の配向状態にするためには、配向膜や、カイラル剤、界面活性剤、ポリマー等の液晶性分子の配向を制御する材料を用いるのが好ましい。例えば、配向膜を用いると、配向膜界面における液晶性円盤状化合物の長軸の配向方向を、配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、所望の方向に調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状化合物の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状化合物あるいは円盤状化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。その他、光学異方性層形成用の組成物中には、液晶性円盤状化合物を固定するのに利用される重合性モノマー及び開始剤等を含有させてもよい。
[円盤状化合物]
本発明に使用可能な円盤状(ディスコティック)化合物の例には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状化合物の例には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。
[光学異方性層の添加剤]
光学異方性層形成用の組成物中には、上記の円盤状化合物の他、カイラル剤をはじめ、種々の添加剤を含有させることができる。添加剤の例には、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等が含まれる。これらの添加剤は、塗工膜の均一性、膜の強度、又は円盤状化合物の配向性等を向上させるのに寄与する。界面活性剤としては、例えば以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。
Figure 2006091703
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
円盤状化合物とともに使用するポリマーは、円盤状化合物の傾斜角に変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性円盤状化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性円盤状化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい
[光学異方性層の形成]
光学異方性層は、液晶性円盤状化合物、及び必要に応じて添加剤等を含む塗布液を、配向膜の表面に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
[円盤状化合物の固定]
液晶性円盤状化合物を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性円盤状化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
[配向膜]
配向膜は、円盤状化合物の配向方向を規定する機能を有する。液晶性円盤状化合物を、上記配向状態とするためには、配向膜を用いることが好ましいが、液晶性円盤状化合物を配向後に、その配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを透明支持体上に転写して、本発明の光学補償フイルムを作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。
ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償フイルムの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。が発生することがある。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なって良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、透明支持体表面、又は所望により透明支持体の上に下塗層を設けた場合は、下塗り層表面に形成することができる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより作製してもよい。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。なお、光学異方性層のレターデーションを低駆動電圧化にともなって液晶層に生じるレターデーションのキャンセルに利用する場合は、上記した様に、ラビング軸の方向を、液晶層中の液晶の配向規制のためのラビング軸との関係で決定する。
次に、配向膜を機能させて、配向膜の上に設けられる光学異方性層の液晶性円盤状化合物を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させてもよいし、又は架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させてもよい。
配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
[楕円偏光板]
本発明の光学補償フイルムは、液晶セルを補償するために用いられる際は、偏光膜と液晶層との間に挿入、積層、光学密着させて使用するものであるから、事前に偏光膜と本発明の光学補償フイルムとを接着・貼合した楕円偏光板としておくとより有用である。本発明の光学補償フイルムは、偏光板と貼り合せてもよいし、偏光膜の保護フイルムとして使用することもできる。偏光膜の保護フイルムとして使用すると、液晶表示装置の薄層化に寄与する。
また、前記光学異方性層を、偏光膜の表面に直接形成することも可能である。具体的には、上記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフイルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作製される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示する。
[偏光膜]
本発明に使用可能な偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素または二色性色素からなる偏光膜が好ましい。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
市販の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、10μm以上の厚みの偏光膜を用いるのが好ましい。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
上記のように、バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置で観察されなくなる。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋しているバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーを用いることができる。官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入して得られるバインダーを、光、熱あるいはpH変化により、バインダー間で反応させて偏光膜を形成することができる。また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。架橋は一般に、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行なうことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できれば良いため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なっても良い。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例としては、前記の配向膜で記載のポリマーと同様のものが挙げられる。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
偏光膜は、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。但し、残存する架橋剤の量は、配向膜中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、偏光度の低下を生じない。
架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。二色性色素の例としては、例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、58頁(発行日2001年3月15日)に記載の化合物が挙げられる。
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光板の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
[楕円偏光板の製造]
偏光膜は、歩留まりの観点から、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して、10〜80度傾斜して延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45゜である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45゜でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸工程は、斜め延伸を含め数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。斜め延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフイルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフイルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
ラビング法では、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフイルムのラップ角度は、0.1〜90゜が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360゜以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。長尺フイルムをラビング処理する場合は、フイルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフイルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60゜の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50゜が好ましい。45゜が特に好ましい。
次に、偏光膜の表面に、本発明の光学補償フイルムを貼り合せる。偏光膜に貼り合せる面は、透明支持体の裏面(光学異方性層が形成されていない側の面)であるのが好ましい。貼り合わせ時には、接着剤を用いることができる。接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。偏光膜及び/又は光学補償フイルムの貼り合わせ面に、前記接着剤を塗布して接着剤層を形成し、双方を重ねて、所望により加熱もしくは加圧して、貼り合せることができる。前記接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることが特に好ましい。
偏光膜の一方の表面に本発明の光学補償フイルムを貼り合わせ、他方の表面には、他のポリマーフイルム等を貼り合わせてもよい。該ポリマーフイルムは、偏光膜の保護フイルムとして機能し得る特性を有しているのが好ましい。また、該ポリマーフイルムは、その最表面が防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることができる。
[液晶表示装置]
本発明の光学補償フイルムは、液晶がねじれ配向している液晶セル、例えば、TNモードの液晶セル用の光学補償に、好ましく用いられる。
上記で説明した図6は、本発明の光学補償フイルムを備えた透過型液晶表示装置の基本的な構成例についての模式図である。再び図6を用いて、本発明の光学補償フイルムを備えた透過型液晶表示装置の基本的な構成例について説明する。
図6に示す透過型液晶表示装置は、バックライト(BL)側から順に、透明保護膜(1a)、偏光膜(2a)、透明支持体(3a)、光学異方性層(4a)、液晶セルの下基板(5a)、棒状液晶層(6)、液晶セルの上基板(5b)、光学異方性層(4b)、透明支持体(3b)、偏光膜(2b)、そして透明保護膜(1b)からなる。透明支持体および光学異方性層(3a、4aおよび4b、3b)が本発明の光学補償フイルムを構成する。そして、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学異方性層(1a〜4aおよび4b〜1b)が本発明の楕円偏光板を構成する。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
本実施例では正の誘電異方性を有するネマチック液晶を用いた例で説明する。
上下基板6a、6b間に誘電異方性が正で、屈折率異方性Δn=0.0854(589nm、20°C)、誘電率異方性Δε=+8.5程度の液晶を封入する。液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dは、0.2〜0.5μmとするのが好ましい。液晶層の配向制御は、上下基板6a、6bの内面に形成された配向膜の表面性状及びラビング軸により制御することができる。液晶分子の配向方向を示すダイレクタ、いわゆるチルト角は、約3°とするのが好ましい。ラビング方向は上下基板6a及び6bで互いに直交する方向に施し、その強さとラビング回数などでチルト角の大きさが制御できる。配向膜はポリイミド膜を塗布後、焼成して形成するのが好ましい。液晶層のツイスト角の大きさは、上下基板のラビング方向の交差角と液晶材料に添加するカイラル剤により決定される。例えば、ツイスト角が90°になるようにするためには、ピッチ60μm程度のカイラル剤を添加するのが好ましい。液晶層の厚さdは、例えば5μm程度としてもよい。用いる液晶材料LCは、ネマチック液晶であれば、特に限定されない。誘電率異方性Δεは、その値が大きいほうが駆動電圧が低減できる。屈折率異方性Δnは、小さいほうが液晶層の厚み(ギャップ)を厚くでき、ギャップばらつきを少なくすることができる。また、Δnが大きい方がセルギャップを小さくでき、高速応答が可能となる。また液晶層のツイスト角(ねじれ角)は、一般に光源側から表示観察側に向けて観察側から見て時計回りにねじらせ、90°近傍(85°から95°)が最適値となる。これらの範囲では白表示輝度が高く、黒表示輝度が小さいことから、明るくコントラストの高い表示装置が得られる。
上側偏光膜2bの偏光軸と下側偏光膜2aの偏光軸は概略直交に積層し、さらに液晶セルの上側偏光膜2bの偏光軸と上側基板6bのラビング方向は概略直交に、下偏光膜2aの偏光軸と下基板6aのラビング方向はそれぞれ概略直交になるように積層する。上基板6b及び下基板6aそれぞれの配向膜の内側には透明電極(図示せず)が形成されるが、電極に駆動電圧を印加しない非駆動状態では、液晶セル中の液晶分子は基板面に対して略平行に配向し、その結果液晶パネルを通過する光の偏光状態は液晶分子のねじれ構造に沿って伝播し、偏光面が90°回転して出射する。即ち、液晶表示装置では非駆動状態において白表示を実現する。これに対し、駆動状態では液晶分子は基板面に対してある角度をなす方向に配向しており、下側偏光膜2aを通過した光は、偏光状態を維持したまま液晶層7を通過し、偏光膜2bによって遮断される。換言すると、駆動状態において黒表示が得られる。この液晶表示装置は、本発明の光学補償フイルムを備えているので、観察方向に依存して生じる階調反転現象が軽減され、且つ視野角が改善されている。
なお、これらの最適値は透過モードの値であり、反射モードでは液晶セル内の光路が2倍になることから、最適Δndの値は上記の1/2程度の値になる。また、ツイスト角は30°〜70°が最適値となる。
本発明の液晶表示装置は、図6に示す構成に限定されず、他の部材を含んでいてもよい。例えば、液晶セルと偏光膜との間にカラーフィルターを配置してもよい。冷陰極あるいは熱陰極蛍光管、あるいは発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを配置することができる。本発明の液晶表示装置は、透過と反射のモードの両立をはかるため,表示装置の1画素の中で反射部と透過部を設けた半透過型であってもよい。
本発明の液晶表示装置には、画像直視型、画像投影型や光変調型が含まれる。本発明は、TFTやMIMのような3端子または2端子半導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置に適用した態様が特に有効である。勿論、パッシブマトリックス液晶表示装置に適用した態様も有効である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例に制限されるものではない。
[例1]
トリアセチルセルロースフイルム:フジタックTD−80Uを透明支持基板として用意し、下記内容のアルカリ溶液を用いてWO02/46809号公報明細書実施例1記載のケン化処理と同様にして表面鹸化処理した。フイルム表面の水との接触角は32度、表面エネルギーは61mN/mであった。これをポリマー基材(PK−1)とした。
アルカリ溶液:
水酸化カリウム5.6質量部、イソプロピルアルコール65.5質量部、エチレングリコール12質量部、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日本インキ(株)製)1.0質量部及び水11.4質量部からなる混合溶液
<配向膜の形成>
上記フジタック上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布を行なった後、60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。透明支持基板の遅相軸から時計回りに4°回転した方向にラビング処理を実施し、配向膜とした。
<配向膜塗布液組成>
下記構造の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
Figure 2006091703
<光学異方性層の形成>
円盤状化合物(A)90質量部、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)10質量部、メラミンホルムアルデヒド/アクリル酸コポリマー(アルドリッチ試薬)0.6質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)3.0質量部および光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.0質量部をメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が38質量%の溶液を調製して塗布液とした。
Figure 2006091703
この塗布液を配向膜上に、#4.0のワイヤーバーで連続的に塗布し、130℃の状態で2分間加熱し、液晶性円盤状化合物を配向させた。
次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、液晶性円盤状化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層付き光学補償フイルム(KH−1)を作製した。形成された光学異方性層の厚みは2.6μmであった。この光学異方性層のみを透明支持基板から剥離し、自動複屈折計(KOBRA 21ADH王子計測機器(株)製)にてβ値を出力させたところ、38.5°であった。
(偏光子の作製)
平均重合度4000、鹸化度99.8mol%のPVAを水に溶解し、4.0%の水溶液を得た。この溶液をテーパーのついたダイを用いてバンド流延して乾燥し、延伸前の幅が110mmで厚みは左端が120μm、右端が135μmになるように製膜した。
このフイルムをバンドから剥ぎ取り、ドライ状態で45度方向に斜め延伸してそのままよう素0.5g/L、よう化カリウム50g/Lの水溶液中に30℃で1分間浸漬し、次いでホウ酸100g/L、よう化カリウム60g/Lの水溶液中に70℃で5分間浸漬し、さらに水洗槽で20度で10秒間水洗したのち80℃で5分間乾燥してよう素系偏光子(HF−01)を得た。偏光子は、幅660mm、厚みは左右とも20μmであった。
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、KH−1(光学補償フイルム)をポリマー基材(PK−1)面で偏光子(HF−01)の片側に貼り付けた。再度、別のトリアセチルセルロースフイルム:フジタックTD−80Uに、WO02/46809号公報明細書実施例1記載のケン化処理と同様にして表面鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
偏光子の吸収軸とポリマー基材(PK−1)の遅相軸とは平行になるように配置した。上記トリアセチルセルロースフイルムの遅相軸とも、平行になるように配置した。このようにして偏光子の吸収軸に対して円盤状化合物の配向方向が4°時計回りに回転した偏光板(HB−1)を作製した。(HB−1)2枚のみを液晶表示装置に挿入する場合と同様に、直交配置すると上下2層の円盤状化合物は82°の相対角を有することになる。これによって円盤状化合物層が有する面内の位相差(レターデーション)はキャンセルし合わない。2層の円盤状化合物層の法線方向から見た場合、屈折率楕円体を仮定するとのその遅相軸が鈍角の方向に形成される。表示装置に配置する場合、その透過な屈折率楕円体の遅相軸が表示面左右方向に形成される。
光学異方性層2枚を、配向軸相対角82°のまま、5cm角に切り出し、2枚重ねて合成自動複屈折計(KOBRA 21ADH王子計測機器(株)製)に装填し、そのレターデーションを測定した結果、Re(550)は23nmであった。
[例2]
[例1]と同様にして(PK−1)を作製し、配向膜を形成したが、例2においては、ラビング配向処理を(PK−1)の遅相軸と平行に行った。その後[例1]と同様にして光学異方性層を形成した。これを光学補償フイルム(KH−2)とした。
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学補償フイルム(KH−2)をポリマー基材(PK−1)面で偏光子(HF−01)の片側に貼り付けた。再度、別のトリアセチルセルロースフイルム:フジタックTD−80Uに、WO02/46809号公報明細書実施例1記載のケン化処理と同様にして表面鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
偏光子の吸収軸とポリマー基材(PK−1)の遅相軸とは平行になるように配置した。上記トリアセチルセルロースフイルムの遅相軸とも、平行になるように配置した。例2においては、位相差板としてノルボルネン樹脂フイルム(アートン:JSR(株)製)をKH−2側に粘着剤を用いて、その遅相軸を偏光子吸収軸から反時計回りに45°回転させて貼合した。このノルボルネン樹脂フイルムは、自動複屈折計(KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)によって面内レターデーションを測定した結果、Re(550)は11nmであった。このようにして偏光板(HB−2)を作製した。偏光子吸収軸を直交して液晶セルの上下に配置すると、上下の位相差板は同方向を向くことになり、それらの位相差は加算される。(HB−2)の場合、液晶セルに貼合した状態で22nmをつくる。
[例3]
(ポリマー基材の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート(リンター) 80質量部
酢化度60.8%のセルロースアセテート(リンター) 20質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
別のミキシングタンクに、酢化度60.9%のセルロースアセテート(リンター)4質量部、下記のレターデーション上昇剤10質量部、シリカ微粒子(粒径20nm,モース硬度約7)0.5質量部、メチレンクロライド87質量部およびメタノール13質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液464質量部にレターデーション上昇剤溶液22質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、2.0質量部であった。
Figure 2006091703
得られたポリマー基材(PK−3)の幅は1340mmであり、厚さは80μmであった。Re(550)=12nm、Rth(550)=38nmであった。
ラビング配向処理を(PK−3)の遅相軸から時計方向22.5°の角度方向から行った。その後[例1]と同様にして光学異方性層を形成した。この様にして光学補償フイルム(KH−3)を作製した。
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学補償フイルム(KH−3)をポリマー基材(PK−3)面で偏光子(HF−01)の片側に貼り付けた。トリアセチルセルロースフイルム:フジタックTD−80Uに、WO02/46809号公報明細書実施例1記載のケン化処理と同様にして表面鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
偏光子の吸収軸とKH−3の光学異方性層ラビング軸は一致させた。従ってPK−3の遅相軸は偏光子の吸収軸から22.5°反時計回りに回転した角度となる。このようにして偏光板(HB−3)を作製した。
液晶セルの上下に偏光子を貼合する場合、偏光子吸収軸は直交させるが、(PK−3)の遅相軸は相対角135°を有する関係になっている。この場合(PK−3)のリターデーションは打消し合わずに合成されることになる。光学補償フイルム(KH−3)2枚を重ねてレターデーションを求めたところ、Re(550)は、20nmであった。
例1〜3の偏光板(HB−1)、(HB−2)及び(HB−3)は、それぞれ液晶セルの上下に貼合する状態においては、その法線方向から見た場合にレターデーション20〜23nmがつくられる構造となっている。
[比較例]
従来型光学補償フイルム(富士写真フイルム(株)製)とヨウ素系偏光子、保護用TACフイルムが予め一体化された市販の広視野角偏光板(LPT−HL56−12、(株)サンリッツ製)を試作した例1〜例3と共に評価した。
(TN液晶セルでの評価)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC20C1S、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、その液晶層のレターデーション、液晶のねじれの向きをシンテック(株)製汎用偏向解析装置H33を用いて測定した。レターデーションは0.4μm程度、液晶セルは光源側から表示観察側に向けて、観察側から見て時計回りに約90°ねじれていることを確認した。次に液晶表示装置の駆動電圧を30%低下させる駆動回路の改造を行った。これによって、液晶層には23nm程度のレターデーションが発生することが図2から読取れる。(HB−1)〜(HB−3)が作り出すレターデーション量と略等量ということになる。
剥がした偏光板の代わりに、例1〜例3で作製した偏光板(HB−1)〜(HB−3)と市販広視野角偏光板を、光学補償フイルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側偏光板の吸収軸と観察者側液晶層のラビング軸とは平行に配置し、バックライト側の偏光板吸収軸とは直交となるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L0)から白表示(L7)までの8段階で視野角を測定した。実施例1〜例3、市販品比較例の液晶表示装置について、コントラスト比が10以上となる上下左右の視野角を表1に、例1の液晶表示装置について、コントラスト比が30以上となる上下左右の視野角を表2に示す。さらに、例1〜例3、及び市販品比較例について、階調反転角(階調レベルL1とL2の交差する角度)を表3に示す。
視野角:コントラスト比10以上の表示法線方向からの極角角度
Figure 2006091703
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例1は、発明の実施態様(1)に述べた円盤状化合物の配向軸角が偏光子の吸収軸から時計方向に回転した場合。例2は位相差板の遅相軸を表示左右方向に向け、光学異方性層と液晶層の間に配置した場合。例3は光学補償フイルムの透明支持体遅相軸が偏光子吸収軸から回転していることによって、レターデーションが存在する場合である。
コントラスト比30以上となる視野角は、特許文献2の実施例で評価している特性であり、本発明の特許文献2実施例に対する性能の優位性を示すために評価したものである。
例1〜3共に、正面方向のコントラストは、比較例と同等の値となっていることが解る。更に比較例に対して7°以上の階調反転角の改良を実現できている。例1〜3及び比較例の貼り付けられた液晶TVを肉眼で観察した所、比較例に対して例1〜3は下方向40°付近から見ても画像の反転は見られず、比較例に対して表示品位の高い優位性があることを確認できた。
TN型液晶表示装置における上下基板のラビング軸角と液晶層に発生するレターデーションの遅相軸方向及びキャンセルするレターデーションの遅相軸方向の関係を模式的に示す図である。 液晶セルの駆動電圧と液晶セルに発生する面内レターデーションの関係の一例を示すグラフである。 液晶セルの駆動電圧、液晶セルに発生する面内レターデーション、及び階調反転角の関係の一例を示すグラフである。 光学補償フイルムにおける偏光子吸収軸からの円盤状化合物の配向方向回転角と発生するレターデーションの関係の一例を示すグラフである。 円盤状化合物の円盤面と透明支持体界面、空気界面との成す角の平均a、bの平均βと正面コントラストの関係の一例を示すグラフである。 円盤状化合物と透明支持体よりなる光学補償フイルムを用いた透過型表示装置の一構成例の概略模式図である。 実施態様(1)に述べる液晶ラビング軸と円盤状化合物の配向軸角と合成レターデーションの遅相軸 実施態様(2)に述べる直線位相子を用いた透過型表示装置の構成例 実施態様(3)に述べる光学補償フイルムの透明支持体遅相軸を偏光板吸収軸から回転させて合成レターデーションの遅相軸を表示左右方向に生成する構成例 一般的なTNモード液晶セル中のネマチック棒状液晶の極角傾斜角と厚さ方向の関係を示すグラフである。 一般的なTNモード液晶セル中のネマチック棒状液晶のねじれ角と厚さ方向の関係を示すグラフである。 一般的なTNモード液晶セル中のネマチック棒状液晶のねじれの向きと、光学補償フイルムの液晶性円盤状化合物の配向方向を示す模式図である。 TNモード液晶セル中における階調反転の発生を説明するために用いられる模式図である。 従来の光学補償フイルムの一例を用いた液晶表示装置における上下視野角と輝度との関係を示すグラフであり、グラフ中に階調反転角を示す視野角を矢印で示した図である。
符号の説明
1a、1b 透明保護膜
2a、2b 偏光膜
3a、3b、3a’、3b’ 透明支持体
4a、4b、4a’、4b’ 光学異方性層
5a、5b 液晶セルの上下基板
6 棒状液晶層
7a、7b 位相差板
BL バックライト
51 液晶セル
52 棒状液晶性分子
53 円盤状化合物の配向方向を示すための模式図
54a、54b 従来、光学補償に用いられていた光学異方性層の一例

Claims (5)

  1. 液晶セルと、該液晶セルを挟持する一対の偏光子と、該一対の偏光子の少なくとも一方と前記液晶セルとの間に配置された少なくとも一枚の光学補償フイルムを有する液晶表示装置であって、
    液晶セルと一対の偏光子との間に配置された全ての光学補償フイルムのみを抜いた場合に黒又は白の輝度を発揮するON電圧に対して、前記少なくとも1枚の光学補償フイルムを配置した状態で、等しい正面輝度が得られる駆動電圧が、10%〜35%低く、且つ該10%〜35%低い電圧で駆動され、
    前記液晶セルと前記一対の偏光子との間に配置された全ての光学補償フイルムのみを、その相対角度を維持したままフイルム法線方向から見た場合に、合成された面内のレターデーションが5nm〜35nmであり、且つ該合成された面内のレターデーションの遅相軸方向が、液晶セルの配向方向を規定する上下基板の配向軸の交差角の2等分線に直交する方向となるように、液晶セルに対し配置された液晶表示装置。
  2. 請求項1に記載の液晶表示装置に用いられる光学補償フイルムであって、円盤状化合物からなる光学異方性層と透明支持体とを有し、該光学異方性層中の円盤状化合物の平均傾斜角β値が、30°〜45°であって、液晶セルに近い表面側から観察した場合に、前記円盤状化合物の分子の配向方向が、近傍に配置された偏光子の吸収軸と平行な面内軸に対して時計回りに1°以上10°以下回転している光学補償フイルム。
  3. 請求項1に記載の液晶表示装置に用いられる光学補償フイルムであって、円盤状化合物よりなる光学異方性層、透明支持体及び少なくとも1層の位相差板からなる請求項1に記載の液晶表示装置に用いられる光学補償フイルム。
  4. 請求項1に記載の液晶表示装置に用いられる光学補償フイルムであって、円盤状化合物よりなる光学異方性及び透明支持体を有し、該透明支持体が有する面内のレターデーションの遅相軸が、一対の偏光子の吸収軸に対して回転し、これによって液晶表示装置に配設された全ての光学補償フイルムのみを相対角度を維持したまま積層して、法線方向から測定した面内レターデーションが5nm〜35nmである光学補償フイルム。
  5. 透明保護膜、偏光膜及び請求項2〜4のいずれか1項に記載の光学補償フイルムを1枚又は2枚以上有する楕円偏光板。

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